Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
№32:要介護高齢者に対する洗口剤または保湿剤を用
いた舌清掃による舌背の微生物数の継時的変化
Author(s)
田嶋, さやか; 竜, 正大; 大神, 浩一郎; 上田, 貴之;
櫻井, 薫
Journal
歯科学報, 115(5): 486-486
URL
http://hdl.handle.net/10130/3837
Right
目的:気道に発生する隆起性病変は,全身麻酔導入 時に換気トラブルをきたすことがある。今回我々 は,気管挿管時に気管内膨隆を発見した症例を経験 したので報告する。今回の発表にあたり,患者本人 から文書による同意を得た。 症例(事例):患者は72歳男性。身長168cm,体重 56kg。下顎左側顎嚢胞,左側智歯周囲炎のため, 全身麻酔下に顎嚢胞摘出術と智歯抜歯術が予定され た。開口量は25mm で,頸部後屈にやや制限があっ た。その他の術前検査や既往歴で,問題となる所見 は認めなかった。 結果:通法に従い,レミフェンタニル塩酸塩,プロ ポフォール,ロクロニウム臭化物を用いて麻酔導入 を行った。開口量が不十分で,喉頭鏡を用いた喉頭 展開が困難だったため,気管支ファイバースコープ を用いた気管挿管を行った。声門下の気管膜様部側 に気管内膨隆を認めた。気管軟骨と輪状靭帯構造が 確認でき,腫瘍性病変ではないと判断し,挿管し た。内径7.0mm のカフ付チューブで挿管し,カフ は膨らまさなかった。 手術終了後,十分な自発呼吸があり,覚醒状態で あることを確認し,抜管した。抜管後に呼吸困難は 認められなかった。手術時間は1時間4分,麻酔時 間は2時間20分であった。術中輸液量は500ml,出 血量は少量であった。 後日,呼吸器内科で食道に限局した腫脹による気 管膜様部の内腔側への膨隆と診断されたが,確定診 断には至らなかった。専門医による経過観察を行う こととなった。 考察:気管内に膨隆がある場合,その大きさや,位 置によっては麻酔導入時に換気困難・挿管困難に陥 る可能性がある。本症例は気管支ファイバースコー プによる挿管を行ったことで事前に気管内膨隆を発 見することができ,安全に麻酔管理を行い得た。麻 酔導入後に換気困難が生じた場合は上気道閉塞や気 管支喘息だけでなく,気管内病変も考慮すべきであ る。また,病変の部位によっては,外科的気道確保 が必ずしも有効ではない可能性があるということを 承知しておく必要がある。 目的:舌背は口腔微生物の温床であり,効果的な舌 清掃により舌背の微生物数を抑制することで誤嚥性 肺炎の発症率を減少させることができると考えられ る。現在舌清掃には洗口剤や口腔保湿剤が多く用い られているが,それらの使用による舌背の微生物数 への影響は明らかではない。本研究は,非経口摂取 の要介護高齢者に対する洗口剤または保湿剤を用い た舌清掃による舌背の微生物数の継時的変化を検討 することを目的とした。 方法:非経口摂取で介護者による口腔清掃が必要な 65歳以上の要介護高齢者8名(男性3名,女性5 名,平均年齢78.3±5.3歳)を対象とし,舌清掃方 法の違いによるクロスオーバー試験を行った。舌清 掃を行わない非舌清掃群,舌清掃時に水を使用する 群,洗口剤を使用する群および保湿剤を使用する群 の4群を設定し,清掃順はランダム化して決定し た。規格化した歯面清掃後,各群の方法による舌清 掃を行った。口腔清掃前,清掃直後,清掃1,3, 5時間後における舌背の総微生物数を細菌数測定装 置(DU-AA01NP-H,パナソニックヘルスケア)を 用いて計測した。ウォッシュアウト期間は1週間と し た。各 群 間 の ベ ー ス ラ イ ン の 比 較 を Kruskal-Wallis 検定後 Steel-Dwass 法にて,また各群内にお け る 計 測 時 間 の 間 の 比 較 を Friedman 検 定 後 Scheffe 法にて行った(α=0.05)。本研究は東京歯 科大学倫理委員会の承認を受けて行われた(第453 号)。 結果および考察:ベースラインである口腔清掃前の 舌背の総微生物数(平均±S.D.)は,(2.7±0.4) ×107 CFU で各群間に統計学的有意差は認められな か っ た。洗 口 剤 使 用 群 で は,清 掃 直 後 に(5.7± 3.1)×106 CFU,1時間後に(6.5±5.8)×106 CFU となり舌清掃前との間に統計学的有意差を認めた。 保湿剤使用群では,清掃直後に(4.8±2.1)×106 CFU となり舌清掃前との間に統計学的有意差を認 めた。非舌清掃群および水使用群では,清掃前から 清掃後5時間後まで統計学的有意差は認められな かった。以上より,洗口剤または保湿剤を使用した 舌清掃により,清掃直後には舌背の微生物数が減少 し,さらに洗口剤を用いた舌清掃の方が舌背の微生 物数の減少時間がより長く持続することが明らかと なった。これは,保湿剤と比較して洗口剤の方がよ り粘性が低いため,舌乳頭間への浸透性が高かった ためと考えられる。