• 検索結果がありません。

〈研究論文〉高温壁面上における燃料の蒸発特性

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "〈研究論文〉高温壁面上における燃料の蒸発特性"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)近畿大学工学部研究報告 No.45, 2011年, pp.99-102 Research Reports of the Faculty of Engineering, Kinki University No.45 2011, pp.99-102. 高温壁面上における燃料の蒸発特性. 嶽間沢秀孝*. Evaporation Characteristics of Fuel Droplet on Hot Surface Hidetaka GAKUMASAWA Synopsis It i s i m p o r t a n t t o c l a r i f y e va p o r a t i o n c h a r a c t e r i s t i c o f l i q u i d fue l such as gasol i ne and di ese l f uel . Thi s s tud y was co nd uct ed o n evapo ratio n phenome na o f a f ue l drop le t on a hot wa ll. S ever al ki nds of al co ho lic addi ti on f uel we re us ed as t he t est. The inf luence a l c o h o l i c a d d i t i o n f u e l af f e c t e v a p o r a t i o n l i f e t i m e w a s i n ve s t i ga t e d in d et ail. Key Words :. Evaporation, Hot Wall, Liquid Fuel, Evaporation Lifetime, Et h a n o l , Re gu l a r G a s o l i n e. 1. はじめに 燃料油が高温壁面に衝突し蒸発する現象は,エ ンジン燃焼室内で発生していると考えられてきた. これまでディーゼル機関の燃料室において,燃料 の一部がピストン表面あるいはシリンダ壁面に衝 突して蒸発する現象について,多くの研究が行わ れてきた.この状態を強制的に行わせて効果をあ げているのが MAN 社の M 燃料方式1) である. この壁面蒸発は重油の燃料器やジェットエンジン の燃料室などに見られる.近年普及しているガソ リン機関の直噴燃焼では,小型エンジンになるほ ど,燃料油の多くが壁面で衝突して蒸発している と予測される.衝突した燃料は,潤滑膜の破断や 未燃炭化水素の発生源になると指摘されている. 高温壁面での液滴の蒸発現象は,田村・棚沢 2) によって初めて解明され,壁面温度により非常に 特異な現象となることが示された.この実験は大 気圧下で行われなれたものだが,有意な資料を提 供し,後続の多くの研究の規範となっている.廣 安らは 3)広範囲に雰囲気温度,圧力を変化させて,. *近畿大学工学部知能機械工学科. 単一液滴の壁面蒸発について詳細に実験を行って いる.さらに,雰囲気気温度・圧力が燃料の臨界 温度・圧力を越えた場合についても実験 4-6) が行 われている.しかし,これまでの研究の多くは, 蒸発の遅い軽油やベンゼンを対象としたものであ る.直噴ガソリン機関は雰囲気がディーゼル機関 に比べ低圧であり,燃料のガソリンの蒸発が早い 現象であるが,その詳細は未だに明らかになって いない.これらの蒸発特性が直噴ガソリン機関の 燃焼特性を支配すると考えられ 7),蒸発特性の解 明は重要である. また,1997年に京都議定書が策定され,先 進諸国は地球温暖化の防止に向けた目標達成に向 けて最大限の努力を求められている.我が国でも, 温室効果ガスの削減を目標として,地球温暖化対 策推進大網に基づき諸対策が進められている. 著者らは,ガソリン中に含まれると考えられる 炭素数の炭化水素燃料について,壁面蒸発現象の 観察を行い,蒸発寿命時間の測定 8)と,燃料の蒸 発過程の観察を行ってきた.本研究では,レギュ. Department of Intelligent Mechanical Engineering School of Engineering, Kinki University. 99.

(2) 近畿大学工学部研究報告 No.45. 100. ラーガソリンとエタノールを使用して,エタノー ル混合率変化が変化させた場合 9)について燃料の 壁面蒸発現象を観察した. 2.実験装置および方法 図1に実験装置の概略を示す.高温壁面は下部 に設置した 1300W の電気ヒーターにより加熱し た.電圧は変圧器で調整し,実験中の壁面温度を 一定に保持した.壁面温度は,60℃から発火点 以下の300℃まで変化させた.燃料は,加熱壁 面上 30mmに垂直に固定された燃料供給装置か ら,壁面中央に向けて滴下した.壁面は直径 100mm,厚さ 30mm の鋼製である.燃料の壁面 蒸発中にライデンフロスト現象が生じ,燃料が壁 面外部に飛び出すのを防ぐため,上部を R168mm に凹面加工した.また,壁面表面の表面粗さは, 壁面蒸発現象に大きく影響をおよぼす支配因子の 一つであるため,2000 番のやすりで毎回磨いて使 用した. 燃料供給装置には,ニチリョウ製デジタルマイ クロピペット(NPX-100)を採用した.本研究では, 燃料の滴下は 10μℓ の単一液滴(真球直径 2.67 mm)として行った.燃料の壁面蒸発挙動は,現 象が遅い場合は直接目視にて観察した.壁面蒸発 の寿命時間の測定には,ストップウオッチを用い た.なお,寿命時間の定義は,燃料液滴が高温壁 面に到達してから燃料液滴が蒸発して完全になく なるまでの時間とした.. 3.結果と考察 3.1 n-へキサン単一液滴の壁面蒸発 本研究では,壁面温度と寿命時間の関係は,核 沸騰領域,遷移沸騰領域,膜沸騰領域を持つ沸騰 曲線を反転した形状になる. 図2にエタノール 85%添加ガソリン(E85)を 滴下させた場合の,壁面温度Tと寿命時間tの関 係を示す.また,図 3 に高温壁面上での液滴の蒸 発状態を示す. 図2の点A~Bの低温領域(核沸騰領域領域) では,高温壁面に到達した液滴は,壁面上で図3 (a)のように,凸レンズ状の液体膜を形成して広が る.その後,この形状のまま蒸発し小さくなり, やがて消滅する.この領域で,壁面温度を上昇す ると寿命時間は次第に短くなる.このときの凸レ ンズ状の液体膜では,ある程度の厚みがあり,伝 熱が表面からの熱伝導層と内部の飽和温度以下の 対流部分で構成されると考えられる.B点よりさ らに高温にすると,凸レンズ状の燃膜の厚さが薄 くなり,対流部分を維持できなくなり寿命時間が 短くなる. さらに壁温を 110℃以上に上昇させると,凸レ ンズ状の燃膜の中央部付近から激しく蒸気泡が発 生し,寿命時間が急激に短くなる. 点Cは最大蒸発率点で,壁面に到達した液滴が 図3(b)のように瞬間的に壁面上に広がりすぐに 消滅する.これは沸騰の極大値に相当する温度の 伝熱面上では,液滴の寿命時間はゼロに近い高速 現象であることを示している. 25. E85 20. A. t s. 15. D 10. B. C. 5. 0 60. 図1. 実験装置の概略. 90. 120. 図2. 150 T℃. 180. 240. E85 の寿命時間. 300.

(3) 高温壁面上における燃料の蒸発特性. 101. 45. E85 E50 E20 E10 E3 Ethanol Regular gasoline. 40. 35. 30. (a)A~B. t s. 25. 20. 15. (b)C. 10. 5. 0 60. 図3. (c)D 高温壁面上における燃料液滴の状態 (A~Dは図2に対応). T=150℃の点Dは,ライデンフロスト点で図3 (c)のように,壁面到達後の液滴が壁面上に単一球 となって,壁面上に安定して浮かび上がり,その まま蒸発を続けて,ある大きさまで小さくなると, 壁面に落下してすぐに消滅する.このため壁面温 度を最大蒸発率点(C点)からわずかに上昇する と,寿命時間が急に長くなる.壁面温度をライデ ンフロスト点以上に上昇させると,球状に浮かん でいる燃料液滴が小躍りしながら小さくなり,寿 命時間は短くなる. 図 4 にエタノールとエタノール添加ガソリン (エタノール添加率 3~85%),レギュラーガソリ ンの寿命時間を示す.また,図 5 に図 4 に示した寿 命時間を対数軸で表わしたものを示す. エタノ ール とレ ギュ ラー ガソ リン を比較 する と,エタノールの最大蒸発率点の温度が低い.また エタノール添加燃料では,エタノールの添加率が 大きな燃料ほど最大蒸発率点の温度が低くなる.. 図4. 90. 120. 150. 180 T ℃. 210. 240. 270. 300. エタノール,レギュラーガソリン及びエ タノール添加ガソリンの寿命時間. また,エタノール添加率の小さい燃料やレギュラ ーガソリンは,また,添加率が小さいほどライデ ンフロスト現象がはっきりと現れにくくなり,寿 命時間の変化がなだらかになる.これはレギュラ ーガソリンに含まれる界面活性剤などの各種添加 剤の影響と考えられる. また,添加率の小さい燃料は寿命時間がライデ ンフロスト点以上の高温域で短くなるため,目視 による測定では若干の実験誤差があると考えられ る.寿命時間が極端に短い場合には,目視以外に ビデオカメラによる撮影も試みたが,撮影間隔が 1/30 秒と長いためあまり有効な測定ができなか った. 4.結 言 エタノールとレギュラーガソリン,エタノール 混合燃料の混合率 85%,50%,20%,10%,3% (E85,E50,E20,E10,E3)の7種類の燃料を使用し,.

(4) 近畿大学工学部研究報告 No.45. 102. 壁面温度と寿命時間の関係について以下の結論を 得た. (1) エタノールの混合比率が大きいほど最大 蒸発率点及びライデンフロストポイント は低温となる. (2) 混合比が大きいと寿命時間は大きく変化 する. (3) 混合比が小さいと最大蒸発率点,ライデ ンフロストポイントはっきりと現れず, わかりにくくなる. 本実験は,平成 19 年度・20 年度の知能機械工 学科熱エネルギーシステム研究室の学部学生の卒 業研究の一部としておこなわれた.本研究に際し て,元近畿大学工学部教授 広安博之先生(広島 大学名誉教授)より多くのご助言をいただいた. ここに記して感謝の意を表する. 100. t s. 10. 1. E85 E50 E20 E10 E3 Ethanol Regular gasoline. 0.1 60. 図5. 90. 120. 150. 180 T ℃. 210. 240. 270. 300. エタノール,レギュラーガソリン及びエ タノール添加ガソリンの寿命時間 (対数時間軸). 参 考 文 献 1) たとえば,廣安,わかる内燃機関,p.149, 2) 日新出版, (1973). 2)田村・棚沢,Seventh Symp. on Combustion p.507,(1959). 3)廣安・他 2 名,機論,39, pp.3779-3787, (1973). 4)Adadevoh, J.K.,他2名,SAE Paper, No.701B, (1963). 5)西田・他 2 名,機論,59B,pp.2550-2554, (1993). 6)西田・他 2 名,機論,59B, pp.2555-2559, (1993). 7)Meurer, J.S, SAE Trans.70,pp.712-716, (1962). 8)嶽間沢・他 2 名,近畿大学工学部研究報告,36, pp.179-184. (2002). 9) 大聖泰弘,バイオエタノール最前線,工業調査 会,(2004).

(5)

参照

関連したドキュメント

1.4.2 流れの条件を変えるもの

High speed flow finishing method has recently developed, which has an excellent performance for polishing an inner wall of stainless steel capillary D Present paper focuses on

※IGF コード 5.5.1 5.5.2 燃料管. 機関区域の囲壁の内部のすべての燃料管は、 9.6

〔付記〕

【参考 【 参考】 】試験凍結における 試験凍結における 凍結管と 凍結管 と測温管 測温管との離隔 との離隔.. 2.3

一方、Fig.4には、下腿部前面及び後面におけ る筋厚の変化を各年齢でプロットした。下腿部で は、前面及び後面ともに中学生期における変化が Fig.3  Longitudinal changes

経済学研究科は、経済学の高等教育機関として研究者を

添付資料1 火災の影響軽減のための系統分離対策について 添付資料2 3時間耐火壁及び隔壁等の耐久試験について 添付資料3