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教育実習生の体育授業における教師行動と生徒の形成的授業評価に関する研究

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[論 文]

教育実習生の体育授業における教師行動と

生徒の形成的授業評価に関する研究

上 條 眞紀夫

※ Key words:授業研究、教育実習生、教師行動、授業成果、体育授業

Ⅰ 研究目的

学習成果を生み出す授業を実現するためには、教師の授業計画、学習資料や用具等の準備とと もに、授業場面での効果的な指導が重要である。 授業中の教師行動は、授業内容についての説明や準備・移動の指示といった学習内容に かかわる情報が教師から児童・生徒に直接伝達される「学習指導行動(Instruction)」、運動 学習と直接かかわらない用具の準備や片付け、整列や移動の指示といった「マネジメント行 動(Management)」、主に運動学習場面で教師と学習者で情報交換が行われる「相互作用行動 (Interaction)」、児童・生徒が運動に取り組んでいる状況や施設・用具等を観察する「巡視行動 (Monitoring)」の4つに大別される。その中で、子どもの形成的授業評価と有意に関係するのは 相互作用行動のみであり、肯定的・矯正的なフィードバックや励ましを積極的に与えることが有 効であるとされている。 また、教師行動に対応して、こどもの授業場面がどのように変容していったかを観察するに は、授業場面の期間記録法がある。ここでは授業場面を「マネジメント」(子どもが移動、待機、 準備している場面)、「学習指導」(教師からの説明や指示を聞く演示を見たり観察したりする)、 「認知学習」(子どもがグループで話し合ったり、学習カードに記入したりする場面)、「運動学 習場面」(子どもが準備運動、練習、ゲームを行っている場面)の4場面に分けコーディングす ることにより、子どもたちが授業でどのような活動をしていたか、授業がどのように進められて いったかを知ることが出来る。子どもが高い評価する体育授業では、運動学習場面に授業時間の 半分以上が配当されており、マネジメント時間や学習指導時間が低く抑えられていることが報告 されている。 さらに、子どもの形成的授業評価と有意に関係するのは相互作用行動のみであり、肯定的・矯 ※ 淑徳大学総合福祉学部教育福祉学科准教授

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正的なフィードバックや励ましを積極的に与えることが有効であるとされているが、肯定的・矯 正的なフィードバックや励ましを積極的に与えることが有効であると検証されている体育授業 は、学級担任による体育授業、もしくは体育授業担当教員が指導した授業である。 そこで、本研究では、教育実習生の教師行動の実態を教師のことばかけ(相互作用)を中心に 明らかにするとともに、教育実習生の教授行動により子どもがどのような時間配当で学びをして いたか、そして子どもは授業をどのように評価していたかを形成的授業評価の関連について検討 することにした。

Ⅱ 研究方法

1.対 象 平成27年度淑徳大学総合福祉学部教育福祉学科健康教育コースに所属する、保健体育科教員を 志望する4年生5名による、千葉県、および茨城県下の中学校の教育実習で実施された、6授業 を対象とした。   教育実習生により指導された教材は、下記の通りである。   器械運動   3  (鉄棒     2  マット運動  1)   ボール運動  2  (ソフトボール 1  バレーボール 1)   表現     1 2.期 日 実施された期間は、平成27年5月28日より平成27年6月17日である。 3.授業観察分析法 教育実習生の授業は全てビデオ撮影するとともに、教師役である教育実習生にピンマイクを着 けさせて音声を収録した。 (1)教師行動分析法 ビデオ収録された対象となる教育実習生の体育授業における教師行動を教師行動観察法に従っ て、4大教師行動、「マネジメント」、「学習指導」、「フィードバック(相互作用)」、「モニタリ ング(巡視)」の4つのカテゴリーに観察・記録した。 カテゴリーの分類のルールとして、子どもの集合や整列といったマネジメントでは、最後の一 人を集められた時点で終了とし、子どもが解散して運動学習など、次の学習課題へ向かう場合は、 クラスの半数以上の子をその課題に従事させられた時点でマネジメントから違うカテゴリーへ移 行したとした。各カテゴリー総時間数は、1授業の総時間数をもとにしてその割合を算出した。 この分析により、50分という限られた授業時間の中で、教育実習生が、有効な学習時間を確保

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できているか、授業の中で浪費している時間がどれくらいあるか、学習活動を円滑にテンポ良く 進められているかがわかる。 (2)教師のことばかけの記録 先にも述べたとおり、子どもの学習成果をプラスに導く教師行動は、フィードバック(相互作 用)行動の一部であり、その中でも、運動学習に対しての肯定的フィードバック(賞賛)、矯正 的フィードバック(助言、課題提示)、励ましと示唆されている。(高橋ほか、1989)ここでは、 教育実習生の授業中発言した全てのことばを書き出し(逐語記録)、そのことばを子どもの授業 成果に有意に作用する、肯定的フィードバック、矯正的フィードバック、励まし、発問の4カテ ゴリーと、指示・説明の合計5つのカテゴリーに分類し、そのことばかけの総数をカウントする とともに、その内容と質についても分析した。 授業成果に有意に作用しないことばについては、発言数のみを記録し、分析の対象外とした。 (3)授業場面の観察記録(授業場面の期間記録) ここでは授業場面を10秒単位で、「マネジメント」(子どもが移動、待機、準備している場面)、 「学習指導」(教師からの説明や指示を聞く演示を見たり観察したりする)、「認知学習」(子ども がグループで話し合ったり、学習カードに記入したりする場面)、「運動学習場面」(子どもが準 表1 教師行動観察法のカテゴリー マネジメント (管理的行動) M 授業に関わった教師の管理的行動を意味する。教師自身が準備、片付けを行 う、後片付けを行う、出席をとる、隊列を作る、グルービングを行うなどで ある。 学習指導 (説明・演示) I クラス全体の子どもたちに対して学習内容に関わった情報が伝達される行 動。具体的には、説明、講義、演示、指示である。 相互作用 (フィードバック) F 教師と生徒の間で情報交換がなされる行動。直接的指導では、情報が教師 から生徒へ一方的に伝達されるのに対して、相互作用では、教師と生徒の間 で双方向的に情報が交わされる。具体的には、発問・受理・フィードバック (賞賛、助言、叱責)、励ましなどである。 観察 (巡視) O 生徒の学習行動や学習環境を観察する行動。具体的な指導が表面に表れな い。一般に「巡視」と呼ばれる。 表2 授業場面の観察カテゴリー マネジメント (Management) M クラス全体が移動、待機、班分け、用具の準備、休憩などの学習成果につながらない活動に充てられている場面 学習指導 (Instruction) I 子どもたちが、先生の話を聞いたり、先生の演示を見たり、観察したりする 場面。しかし、教師の発問によって子どもの思考活動が中心になっている場 合はA1とする。 認知学習 (Activity 1) A1 子どもがグループで話し合ったり、学習カードに記入したりしている場面。ゲーム場面では作戦会議の場面など。 運動学習 (Activity 2) A2 子どもが準備運動、練習、ゲームを行っている場面。

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備運動、練習、ゲームを行っている場面)の4場面に分け記録することにより、授業で運動に関 わる学習場面がどれだけ確保されていたかどうかがわかる。  (4)生徒の形成的授業評価 授業の成果を評価するために、教育実習生の授業後、授業を受けた中学生に「成果」、「学び 方」、「意欲・関心」、「協力」の4次元、下位項目9項目から構成される、形成的授業評価アン ケートに答えてもらった。 アンケートの結果は、はい-3点、どちらでもない-2点、いいえ-1点に換算して集計し、 そこで得られた評価平均値を算出する。また、平均値を形成的授業評価の診断基準に照らして5 段階で評定した。 また、9項目のアンケートの後に「今日の体育で先生に声をかけてもらいましたか (はい  いいえ)」、(はい)と答えた生徒へ、「それはどのようなことでしたか」、「それは役に立ちまし 図1 期間記録法のコーディングシート 表3 形成的授業評価のアンケート集計用紙(抜粋) 次元   評価項目 評価平均値 評定ランク 成 果 1 心に残ったことや感動のある学習     2 技能の向上のある学習     3 新しい発見のある学習       次元の評価     意 欲 ・ 関 心 4 精一杯の運動を保証した学習     5 楽しい学習       次元の評価     学 び 方 6 自主的な学習     7 課題解決への継続的取り組み       次元の評価     協 力 8 友達との協力した学習     9 教え合い、助け合い学習     次元の評価     総合評価    

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たか」、(はい・どちらでもない・いいえ)、という記入項目を設けている。 この記述から、教師が行ったフィードバックを生徒がどのように受け止めているかを知ること が出来る。教師からの積極的なフィードバックも生徒に役立ったと思われなければ、学習成果に 結びつきにくい。

Ⅲ 結果と考察

1.6授業の教師行動 6授業の四大教師行動の割合は以下の結果となった。 高橋らの先行研究によると、高い授業評価を得ている体育授業のマネジメントの割合は、10% 以下であり、模擬授業や実習生の行う授業でも20%以内に抑えることが望ましいと指摘してい る。 教育実習生の授業のマネジメントは最大で20%であり、マネジメントが比較的低く抑えられ、 授業を円滑に進められたことが分かる。その理由としては、収録された授業の5つが精錬授業で あったため、指導案作成の時点から授業準備を事前に進めていたこと、指導教官の現職教師が TTとして用具の準備やライン引きなどを手伝い、実習生の授業マネジメントを補っていたこと があげられる。 学習指導に配当された時間は、マット運動の授業で33%、表現では68%もの時間が配当されて いる。学習指導の時間は授業の方向付け、課題提示のために無くてはならない時間であるが、多 くの時間を割いてしまうと子どもの学習意欲を削いでしまい、授業の勢いがなくなってしまう。 実習生の熱意が生徒の課題解決の時間を減らしてしまったと見ることができる。 もちろん、単元の最初やオリエンテーションの時間では学習指導の時間は多くなるが、今回の 授業は単元の中程の授業であったことを考えると、この配当時間は多すぎたと言わざるを得な 図2 教育実習生の四大教師行動の割合 教材名 マネジメント M) 学習指導(I) フィードバック・ 相互作用(F) 巡視(O) 総時間数 分 : 秒 鉄棒運動1 6:40(13.2%) 12:20(24.4%) 16:30(32.6%) 10:30(20.7%) 49:50 鉄棒運動2 8:50(18.2%) 4:00(12.3%) 15:00(30.8%) 18:50(38.7%) 50:40 マット運動 3:10 (6.1%) 31:30(60.7%) 9:50(18.9%) 8:40(16.7%) 55:00 ソフトボール 10:10(20.6%) 8:40(17.6%) 5:50(11.9%) 19:30(39.7%) 49:10 バレーボール 5:00(10.1%) 13:30(27.4%) 3:40(13.5%) 24:00(48.8%) 49:10 表現 2:30 (5.1%) 33:50(68.5%) 11:40(23.6%) 1:20 (2.7%) 49:20 *四大教師行動に属さない、教授行動と認められない行動は非機能とし、四大教師行動の割合には計算され ていない。そのため、数値の合計が100%にならない授業もある。

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い。先行研究によれば、学習指導時間を多くしても生徒の授業評価にプラスには作用しないため、 20%以下に抑えることが望ましいと指摘している。 フィードバック(相互作用)の時間は、授業によって差が見られた。子ども1人1人の学習活 動に関わってのフィードバックができていた授業では技術的なフィードバックを数多く与えられ ていたが、フィードバックの少なかった授業では単発なフィードバックが多くなっていた。この ことは実習生の教材に対しての知識や何を教えるかという目的を持って授業をしていたかどうか にも関わってくる。 子どもの運動学習従事時間の大部分、実習生は観察、巡視行動を行っていた。子どもを観察し ながら声をかけるのは、瞬時の対応が必要なため、教材や技能についての深い知識がないと、子 どものつまずきに適切なフィードバックを与えられないのであろう。 2.6授業の授業場面の観察記録(期間記録) 6授業の授業場面(期間記録)の記録は、図3のようになった。 子どもが運動に従事している時間、運動学習(A2)へどの程度の時間が配当されているかを 見てみると、50%以上の時間を配当できた授業が3つあった。運動学習時間が50%以上という数 値は、子どもが評価する体育授業の外的条件の1つであり、運動を中心に学習を進める体育授業 にとって教師が最も配慮すべき点である。 事実、今回分析した6授業の中で、運動学習時間が確保されていた授業は子どもの形成的授業 評価が高く、少なかった授業は授業評価が低くなる傾向が示された。このことから、運動学習時 間を授業の半分以上配当することが、教育実習生の授業でも良い体育授業を成立させる条件であ るという先行研究の結果と合致することが示された。 運動学習時間が少なくなってしまった原因は、学習指導に多くの時間が費やされたことにあ る。効率の良いマネジメントをしていたにも関わらず、子どもの学び方が確立していないため、 一つ一つの行動を教師が指示する教師中心・一斉指導型の学習が展開されていた。 図3 授業場面の観察記録(期間記録)

教材名 マネジメント(M) 学習指導(I) 認知的学習(A1) 運動学習(A2) 総時間数 鉄棒運動1 9:50(19%) 9:40(19%) 7:20(15%) 23:50(47%) 50:40 鉄棒運動2 12:10(25%) 1:30 (3%) 5:40(12%) 30:20(62%) 50:40 マット運動 12:51(23%) 18:39(34%) 2:01 (4%) 21:24(39%) 54:57 ソフトボール 8:30(17%) 6:10(13%) 5:20(11%) 29:10(59%) 49:10 バレーボール 5:40(12%) 9:10(19%) 9:50(20%) 24:30(50%) 49:10 表現 7:00(14%) 24:00(49%) 1:40 (3%) 16:40(34%) 49:20

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3.6授業の形成的授業評価 6授業の生徒による形成的授業評価を見ると、実習生の授業は評定ランク4ないし、5の評価 であり、中学生にある程度の評価を受けていることがわかる。 次元の評価でランク3の評価は、成果次元が2授業、意欲・関心次元と学び方次元が1授業 ずつであった。 4.6授業の教師のことばかけの記録 6授業の教師のことばかけの記録を見ると、実習生は授業中に多くのことばかけを生徒にして いることがわかる。特にマット運動と表現の授業では300回を超える教師の発言が記録されてい る。他の実習生が100回から150回程度であったことを見ると突出して多いことが分かる。実習生 がいずれも、積極的に子どもたちと関わり、授業を進めようとしている姿勢が顕著に表れている。 しかし、生徒の授業評価に有意に作用する教師のことばかけだけを抜き出し、集計してみると 全体の発言数の10%程度しかない。回数を見てみると、鉄棒運動の2回目授業を除くと、20回か ら40回で、熟練した体育教師の平均回数88回には遠く及ばないことが分かる。 また、有効な教師のことばかけの具体的な内容を逐語記録から、抜き出してみると、「いいね」、 「オーケー」、「うーん、もうちょっと」といった一般的肯定的フィードバック、一般的な矯正的 フィードバックが多く、具体的な内容を含んだフィードバックは数えるほどしかない。 実習生は、子どもとの双方向的な関わりを持つ回数自体も少なく、相互作用の質も具体的に 誉めたり、技術指導をしたりする教師としての実践的指導力が身についていないことがわかる。 このことは、形成的授業評価アンケートの後に「先生からの声かけの事例」欄の生徒の記述が フィードバックの回数よりも少ないことからも伺える。 反対に、突出して多くなったのが、指示・説明である。指示・説明は、授業を方向付け、子ど もたちに学習課題を与えるなど、授業には欠かせない教授行為であるが、あまり多すぎると、子 どもの学習をしばしば中断させることになり、授業の勢いを失わせ、学習活動の活気が失われて しまうことが多い。 図4 形成的授業評価 4次元の評点と評定 教材名 成果 評定 意欲・関心 学び方 評 協力 評 総評価 評 鉄棒運動1 2.77 5 2.97 4 2.71 4 2.90 5 2.83 5 鉄棒運動2 2.76 5 3.00 5 2.93 5 2.93 5 2.90 5 マット運動 2.40 3 2.70 3 2.64 4 2.71 4 2.59 4 ソフトボール 2.79 5 2.97 4 2.88 5 2.91 5 2.88 5 バレーボール 2.72 5 2.85 4 2.56 3 2.85 5 2.75 4 表現 2.35 3 2.91 4 2.60 4 2.74 4 2.68 4

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特に、期間記録と合わせてみてみると、マット運動の授業では、指示・説明が150回を超え、 クラス全体を集めた回数も12回と多かった。(表現では、361回、19回)教育実習生は、精錬授業 という多くの参観者に見られる中で、授業をコントロールし、授業成果を上げようとするあまり、 指示や説明の回数が多くなったものと考えられる。 5.教育実習生の教師行動と生徒の形成的授業評価との関係 実習生の4大教師行動、授業場面の観察記録、教師のことばかけの記録は、生徒の形成的授業 評価の一つ一つについてその実態を述べてきたが、生徒の授業評価とどのような関係があったの であろうか。図6は、4大教師行動、授業場面の観察記録、教師のことばかけの記録全ての下位 項目と生徒の形成的授業評価とのビアソンの相関係数を求め、有意に相関があった項目のみを示 した図が、下記の図6である。 教師のマネジメント行動時間が多くなると通常は授業評価にマイナスに作用するが、今回の事 例では有意なマイナスの相関は得られなかった。先行研究が指摘するとおり、マネジメント時間 を20%程度に抑えることは、良い授業を実現する上での一つの指標であることが実習生の授業で も確認された。 教師の相互作用については、授業評価に有意に作用するとされる教師のことばかけと授業評価 との相関が全く摘出されなかった。これは先行研究の結果と逆の結果であるが、実習生の有効な フィードバックは鉄棒2の授業を除けばフィードバックの回数が50分で30回程度であり、しかも 子どもたちが役に立ったと答えている記述がほとんど無かったことを考えると授業評価に関与し なかったのは、当然の結果とも言える。 子どもの授業評価に有意に働くフィードバック行動は、言葉の内容に具体性があり、単発な発 言ではなく、子どもと双方向的なやりとりのあるフィードバックである。子どもの気持ちに寄り 添うフィードバックこそが、子どもに伝わるものだからである。 授業評価にプラスに働いていたのは、運動従事時間であった。運動学習時間が保証されていた 授業では、成果次元、協力次元での授業評価をプラスに導き、総合評価でも有意な相関が認めら れた。 図5 教師のことばかけの記録 ─授業評価に有意なことばかけを抽出─ 教材名 肯定的フィードバック 矯正的フィードバック 励まし 発問 指示説明 教師のことばかけ総計 鉄棒運動1 2 18 1 0 67 108 鉄棒運動2 17 44 0 7 76 195 マット運動 18 17 2 0 152 303 ソフトボール 15 10 0 0 83 139 バレーボール 6 9 3 6 79 123 表現 20 6 7 4 31 504

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運動従事時間が保証されている中で、子どもたちの課題と教師がともに向き合い、フィード バックを与えることで、フィードバックは学びを深めることができると見られる。 子どもの授業評価にマイナスに作用していたのが、学習指導時間の長さとその時間に発せられ た、多すぎる指示・説明の回数である。指導案で計画した授業内容を予定通りに進めようとする ため、指導場面が多くなることは実習生の授業では予想できることであるが、頻繁な説明や指示 が子どもたちの練習時間や運動学習の時間減らし、学習成果の次元の評価を下げている。さらに、 運動従事時間が減ると、友達と運動をする時間が減るだけでなく、友だちと課題解決をしたり、 共同学習をしたりする時間も減ってしまい、結果として、協力次元の評価を下げ、授業全体の総 合評価も下げてしまう原因となっている。

Ⅳ まとめ

教育実習生が単元計画や本時の展開を示した指導案を作成し、現場の先生方の見守る中で中学 生を指導した授業である。予定していた授業内容を時間通りに実施しつつ、いかに学習成果を生 み出すための声かけができるかが課題であったが、子どもへの教師のことばかけの回数は6名と も100回以上を超えており、300回を超える声かけをしていたことは、実習生の努力、奮闘が認め られるし、大学での学びの成果とも考えられる。 ただし、5つの授業では、子どもの学習に役立つ具体的なことばかけが少なく、指示や説明が 多くなってしまったことも事実である。そのような中で、鉄棒2の授業だけが、授業評価に有意 に作用することばかけの回数が70回以上あったことは特筆に値する。この授業は、実習中の鉄棒 授業5回目であり、観察者が参観した3回目の授業である。3回の授業毎に、実習生と授業後協 議をし、授業の反省点や授業改善へ向けた具体的指導を行ったことが、大きく教師行動を変容さ せた要因であろう。 授業評価には、魅力的な教材づくり、スムーズに授業が流れ、テンポのよい授業を生み出す基 になる先生と生徒の約束づくり、信頼関係、生徒相互のあたたかい人間関係、授業に勢いをつけ 図6  形成的授業評価と学習指導時間、運動従事時間、指示・説明の時間、教師のことばかけの頻度との 相関 (上段ピアソンの相関係数/下段 P 値) 有意な相関項目 成果 意欲・関心 学び方 協力 総合評価 教師行動 学習指導時間 -0.9285 P = 0.007 ** -0.5896472 有意性低 -0.75212 -0.92718 P = 0.007 ** -0.87324 P = 0.023 * 期間記録A2 運動学習時間 P = 0.022 *0.87624 有意性無0.4482 0.71203 P = 0.035 *0.84126 0.78413 ことばかけの記録 指示・説明 -0.91037 P = 0.011 * -0.29261 有意性無 -0.36388 有意性無 -0.76978 P = 0.073 -0.62245 *ピアソンの相関係数は、±0.40∼±0.70中程度、±0.70∼±0.90高い関係、±0.90∼±1.00非常に高い関係 と解釈する。( P<0.01 * P<0.001 ** P<0.0001 *** )

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る教師の表情や生徒への関わり方、ほめ方など、多様なことがらが関係している。したがって、 相互作用行動だけが形成的授業評価に強く影響を与えるなどとは考えにくい。今回の研究でもそ のことは示された。 しかし、授業の中で教師が積極的に生徒と関わっていかないかぎり、授業評価・成果の向上に むすびつきにくいのも事実である。 今後は、鉄棒2の事例が示すように、教師の成長は授業後の省察とその後の授業改善へ向けた 取り組みや行動であるという事実を踏まえ、可能であれば、1回だけの指導で終わるのではなく、 複数回の指導を通して、相互作用を始めとする教師行動の改善や生徒の学習内容(教材)に対し ての理解の深まりが表れてくるところまでを実習生に保証したい。また、体育科教育法、教育実 習事前指導などの授業を通して、体育の実践的指導力を持つより多くの教師を育てていきたい。 【参考文献】 深見英一郎・高橋健夫・日野克博・吉野聡 1997 体育授業における有効なフィードバック行動に関する研 究、体育学研究 42(3):167-179 シーデントップ 高橋健夫(訳)1988 体育の教授技術、大修館書店 高橋健夫・中井隆司ほか 1991 体育授業における教師行動の研究、体育学研究 36(3):193-208 高橋健夫編著 2002 体育の授業を創る(4版)、大修館書店 高橋健夫・岡澤祥訓ほか 1989 教師の相互作用行動が児童の学習行動及び授業成果に及ぼす影響、体育学 研究 34(3):191-200 高橋健夫・歌川好夫ほか 1996 教師の相互作用及びその表現のしかたが子どもの形成的授業評価に及ぼす 影響、体育学研究 34(3):191-200 高橋健夫・岡本洋 1999 よい体育授業と教師の力量?できない子どもの学習分析から 高橋健夫研究代表 平成9-10年度文部科学研究費研究成果報告書「よい体育授業の条件に関する実証 研究」pp.48-57 高橋健夫編著 2003 体育授業を観察評価する 明和出版

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