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小池和男/洞口治夫編『経営学のフィールド・リサーチ―「現場の達人」の実践的調査手法』(PDF:407KB)

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Academic year: 2021

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1 冊の本をまえにして考え込んでしまった。 今年 1 月下旬に, 新会社立上げのための出張会議の合間 に読もうと思い購入した 経営学のフィールド・リ サーチ (日本経済新聞社) である。 本書は, 小池 和男・洞口治夫両氏の編集のもとに, 「プロローグ 経営学のフィールド・リサーチ」 (小池和男), 「第 1 章 私のフィールド・リサーチ遍歴 農業水利 から製品開発まで」 (藤本隆宏), 「第 2 章 マーケ ティング研究における取材の技法 成功と失敗の 軌跡」 (和田充夫), 「第 3 章 部分と全体 ケー ス・スタディをどう使うのか」 (三品和広), 「第 4 章 参与観察 製茶産業を体験して」 (櫻澤仁), 「第 5 章 エスノグラフィーで現象に迫る 暴走 族・現代演劇から経営へ」 (佐藤郁哉), 「第 6 章 調査屋の心構え 産業社会学とフィールド調査」 (川喜多喬), 「地域研究の経験則 タイ企業研究 から学んだこと」 (末廣昭), 「エピローグ 知的創 造としてのフィールド・リサーチ」 (洞口治夫) で 構成される。 まさに現代日本を代表する 「現場の達 人」 というべき錚々たる面々が, それぞれの調査研 究活動体験や自らの信条等を語ったものである。 たしかに各章で述べられている内容は, 個性豊か で魅力に溢れており, 出張の合間に断片的な時間を 捻り出して拾い読みするには格好の書である。 川喜多喬の 「調査は稼げる。 稼ぎに溺れて, 学者 ではなくなっている先生もいます。 研究室を商店と している教授がいるのです。 調査をやって政策に追 従すると補助金が出るので, 金儲けするために調査 をするシンクタンクも多いのです」 のくだりを, 帰 途の新幹線車中で読んだときは, 思わずビールを噴 き出しかけたくらいである。 また, 和田充夫のいう次のエピソードなど, 印象 に残る指摘が随所に満ちあふれていて, 好奇心を満 たしてくれる書であることは間違いない。 「ハーバード大学の学部には経営学部がありませ ん。 なぜ経営学部がないのか と友人に尋ねると, 高校を出てきたばかりで, ビジネスの経験もない 学生に経営を教えたって, 全く意味がないよ とい われました。 経営というものは実践とともにあるものだから, 実践の中でインタラクションしながら学んだり働い たりした, そういう人たちを訓練しなければ全く意 味がないのだ, というようなことをいっていたので す」 そして帰宅後, 私は本書を机の片隅に埋もれさせ ていたのであるが, いかなる巡りあわせからか 「こ の本について, 読書ノートを書け」 とのお話をいた だいてしまったのである。 それで慌てて, 再度読み 返してみて, はたしてこの書全体を通じて明らかに されたことは何であろうかと考え出したとき, 各氏 の手法や考え方が独自性・多様性に富み, かつトッ プレベルの成果を生み出していることは衆人の認め るところであるが, それゆえに全体像・共通性を語 ることは至難の業であると悟り, 締切り寸前まで悩 む羽目になってしまった。 本書は, 「調査の達人」 に関する調査研究といえ るが, そこから得られた知見は何であろうか。 出口 が見えないので, 洞口のエピローグから, そのまま No. 553/August 2006 92

読書ノート

小池和男/洞口治夫 編

経営学のフィールド・リサーチ

「現場の達人」 の実践的調査手法

中島 敬方 (株式会社クロスオーバー常務取締役) ● こ い け ・ か ず お 法 政 大 学 大 学 院 イ ノ ベ ー シ ョ ン ・ マ ネ ジ メ ン ト 研 究 科 教 授 。 ● ほ ら ぐ ち ・ は る お 法 政 大 学 大 学 院 イ ノ ベ ー シ ョ ン ・ マ ネ ジ メ ン ト 研 究 科 教 授 。 ●日本経済新聞社 2006 年 1 月刊 A5 判・264 頁・2940 円 (税込)

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●BOOK REVIEWS

引用してみよう。 その第一は 「各教授は, 例外なく 言語能力に優れていることである。 外国語に優れて いるばかりでなく, 日本語の運用能力においても秀 でている」, 第二は 「各教授が, すばらしいエンター ティナーであったことである。 聞く人を惹きつけて 放さない 語り口 の魅力があった」, 第三は 「本 書が, 学者という職業に関するオーラル・ヒストリー になっていることである。 (略) 研究の方法を語る ことは, 研究者の生涯を語ることにつながっていく」 であるという。 このまとめ方に異論はないが, 率直に言ってそれ は本書を読む以前から多くの読者が知っていたこと でもある。 むしろ, 「それぞれの章が案外に具体的 な聞き方, 観察方法を語っていない」 とか 「文献, 文書資料, 統計などを尊重し, 重視している」 とい う小池和男の指摘のほうが, 後進の研究者には示唆 となる要素が隠されているように思われる。 「数少 ない調査事例からいかに一般化できるか, 一見主観 的な聞き取りの答えから, いかに客観的で他に対し て説得的なものを引き出せるか」 という課題に挑戦 し成果を挙げている達人たちから, いったい何を盗 みだせるかである。 おそらく, その 「解」 は読み手の研究 (調査) 目 的や資質・性向によって一様ではなく, 自らも実践 することを通じて検証していく以外にはないのでは ないだろうか。 本書は, そのためのマニュアルでは ないがヒントに満ちた本であり, 単なる 「読み物」 としての価値を超えるかどうかは, 読者の能力・意 欲・実践力にかかっている。 日本労働研究雑誌 93

参照

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