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図書館における学生支援(利用者教育)のこれまでとこれから

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図書館における学生支援(利用者教育)のこれまでとこれから

三上 彰

キーワード:学生支援、学習支援、オリエンテーション、ガイダンス、レファレンス

概要

本稿では、図書館で行なっている学生の学習支援の取り組みの中心である、図書館ガイ ダンスやオリエンテーションと、レファレンスサービス等を題材として、それらの今まで の実践・取り組みと、問題点、今後の課題・改善すべき点等について報告を行う。 図書館では、図書館の基本的な利用に関することや、レポートやゼミ論・卒論等の執筆 のための情報の検索や資料の収集・入手方法等について、ガイダンスを行なっている。こ の図書館ガイダンスには、1 年生の基礎ゼミ(「リベラルアーツ(LA)セミナー」「ビジ ネスの基礎」など)で行なっているものと、3・4 年生のゼミ(専攻演習)の中で行なっ ているもの等がある。また、2009 年度からは基盤教育院のコア科目の授業と連携して行 なっているものもある。これらについて、今まで取り組んできたことと、そこから現場の 図書館スタッフが感じていること、試行錯誤していること、今後取り組むべきことの課題 等について述べる。

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1.はじめに

図書館では、学生の学習支援の取り組みとして、春・秋の各学期初めのオリエンテーシ ョン、ゼミや授業単位での図書館ガイダンス、図書館のカウンターでのレファレンスサー ビスなどを行なっている。学内での認知度はあまり高くないかもしれないが、図書館も学 生の学習支援という点では地道に活動しており、その一端をもっと知ってほしいという思 いもあり、今回は、これまでの取り組みとそこで感じた課題や問題意識、今後取り組んで いきたいこと、取り組んでいかなければいけないと感じていることなどについて、簡単に 報告していきたい。本稿では、これまでに行なってきたオリエンテーションおよびガイダ ンスの実施経緯や取り組み内容と、現場で試行錯誤しながら感じていることを中心に、述 べていきたい。

2.オリエンテーションやガイダンスなどの実践の取り組み

2−1 オリエンテーション これまで、各学期の初めのオリエンテーション期間中には、大半の学部・学群において、 約 30 分程度のオリエンテーションを実施してきている。内容としては、館内の施設や資 料の案内と、基本的な利用方法などについてであり、各フロアの特徴的なコーナーや資料 の紹介、利用の流れ等を、写真で示してまとめたパワーポイントを用いて説明している。 大学院においては、サテライトキャンパスである新宿キャンパスにおいて、2003 年頃から、 デリバリー便での図書の取り寄せ方法、雑誌論文・雑誌記事等の検索方法、学術雑誌の論 文等のコピーを取り寄せる文献複写の申し込み方法などについての説明を行なっている。 新宿キャンパスから四谷キャンパスに大学院の授業の場が移った 2008 年度以降は、四谷 キャンパスにおいて実施している。 今までに実施してきた学部・学群の新入生向けのオリエンテーションは、どのくらい効 果があるのか、何らかのかたちで検証してみないといけない時期に来ているのではないか とも感じている。これらのオリエンテーションは、サレンバーガー館や待望館の大きな教 室で、100 ~ 200 名程度の学生に対して行なうというかたちのものが多く、学生たちには、 新しい学生生活への期待や興奮で落ち着かない感じの学生や、オリエンテーションが続い て疲れてしまっている様子の学生も見られた。ある年の短期大学の新入生では、おしゃべ りしたり、居眠りしたり、半数くらいの学生が聞いていないのではないか、と思われるよ うなこともあった。私たち図書館職員の説明が退屈なものなのか、それとも、学生たちに あまり聞く気がないのか、両方が考えられるが、オリエンテーション期間中には、履修登

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録や、奨学金、教科書販売等、学生生活にさしあたって必要なこと、重要性の高い事項に ついてのオリエンテーションも行なわれており、そちらをしっかり聞くだけで精一杯で、 今すぐには必要とならない図書館の利用方法等については、あまり印象に残っていないの ではないか、とも考えられる。 そこで、説明用のパワーポイントでは、図書館の館内の様子や具体的な資料のことなど について、写真を多用して、画面を次々切り替えてテンポ良くすすめていくようなかたち にして、少しでも興味・関心を持って聞いてもらえるようにと、年々刷新・改良を加えて いる。実際のところ、どこまで伝わっているのかはわからない部分でもあるが、ここ 3 年 くらいは、静かに聞いている学生が多くなってきたように感じている。ただ、長引く不況 等の経済事情の影響で、大学に進学する以上は目的意識をしっかり持っているという学生 の割合が高くなったから、という別の要因も考えられるのではないかと感じている。 新宿キャンパスおよび四谷キャンパスの大学院でのオリエンテーションでは、町田キャ ンパスの図書館本館の資料をデリバリー便で取り寄せする方法や、論文執筆にあたっての 資料収集として、雑誌論文・雑誌記事検索のデータベース(以下、DB)、図書館ホームペ ージ(以下、HP)からの文献複写の申込方法などを説明しているが、こちらは、社会人 学生も多く、学部・学群生よりはるかに意識の高い学生が多いと感じている。ただ、オリ エンテーション終了後の感想として、「便利なツールがたくさんあるのはわかりましたが、 1 回聞いただけでは覚えきれないですね」というような声も複数の学生からきかれた。ま た、老年学専攻などには年配の方も多く、パソコンの操作自体について、質問されたり相 談されることもあった。 2−2 ゼミや授業単位のガイダンス 以前から、主にゼミや授業単位で、要望のあった教員のクラスにおいて図書館のガイダ ンスを実施している。そのほかに、図書館独自で開催する情報検索のガイダンス、特定の DB 検索のガイダンスなども実施している。筆者が桜美林大学の図書館で奉職するように なった 2002 年度以降に限ってみても、学群体制に移行する前の 2005 年度までは、国際学 部、経済学部、言語コミュニケーション学科などを中心に、要望される先生のクラスで行 なってきた。1 年生の基礎演習のクラスと、3・4 年生の専攻演習のクラスで、2004 年度 は約 55 クラス、2005 年度は約 70 クラスで実施している。2006 年度からは、ビジネスマ ネジメント(BM)学群の 1 年生の基礎ゼミである「ビジネスの基礎」において、全クラ スで実施することとなった。従来通り、ゼミ単位で要望のあった教員のクラスでも実施し、 2006 年度は合計 80 クラス以上で実施した。2007 年度には、リベラルアーツ(LA)学群 が開設され、1 年生の基礎ゼミである「リベラルアーツ(LA)セミナー」でも、図書館 ガイダンスの時間を 1 回分組み込むこととなった。LA 学群はクラス数が多いため、2007

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年度以降、春学期だけで全体で 100 クラス以上で実施している。2009 年度からは、基盤 教育院のアカデミックガイダンス科目「大学での学びと経験」との連携授業も行なうよう になった。 これらのゼミ単位、授業単位のガイダンスにもいくつかのタイプがあるので、それぞれ について、その内容と取り組み、問題点等について述べていきたい。 • 1 年生の基礎演習でのガイダンス 学群制移行前は、前述のように、国際学部、経済学部、言語コミュニケーション学科な どを中心に、行なっていたものである。学群体制に移行後は、BM 学群と LA 学群で行な っているものであり、基本的な内容は、授業時間 1 コマ 90 分のうちの半分は図書館の館 内ツアー(本館とメディア室:分館統合前の 2005 年度までは、本館、分館、メディア室 の 3 ヶ所)で、残りの半分が、パソコンでの本や雑誌の検索方法(蔵書検索のデータベー スである OPAC の使い方や、雑誌記事・雑誌論文検索や新聞検索の DB の使い方)の実 習というかたちである。1 コマ 90 分という時間は長いようであるが、実際には 1 つ 1 つ の説明にかけられる時間は短く、授業開始時の学生の集合が遅かったり、館内ツアーでの 移動に時間がかかったり、私たち図書館職員の説明の要領が悪かったりすると、あわただ しく終わってしまうこともある。 学生数が同規模の他大学の図書館と比べるとやや規模の小さい本学の図書館であって も、館内の様々なコーナー・資料の場所等を 1 つ 1 つまわっていくと、30 ~ 40 分程度で はとてもまわりきれないため、入学したばかりの 1 年生に特に知っておいてほしいコーナ ーなど、優先順位の高いと思われるところを説明するようにしている。しかし、説明する ポイントをもっと絞り込んだ方が良いのではないかと感じたり、逆に、時間の許す限り、 少しでも多くのことを知ってもらえるよう説明を加えた方が良いのではないかと感じた り、絶えず試行錯誤しているところである。 ここで、クラス数の多い LA 学群の「LA セミナー」での図書館ガイダンスの実施に関 して、その経緯等にもふれておきたい。「LA セミナー」に関しては、LA 学群立ち上げの 際に、LA セミナー検討委員会の先生方で半期 15 回の授業の内容や進め方等が検討され、 15 回の授業のうちの 1 回に図書館のガイダンスが組み込まれることとなった。その当時 の LA セミナー検討委員会で検討された「LA セミナー」の授業の進め方や方針の骨子を 読むと、授業内容と学生に求めていることのレベルが思いのほか高く感じられ、図書館と してこれに応えることができるだろうか、という不安があった。LA 学群は学生数が多い こともあり、約 15 ~ 18 名程度に分けられた「LA セミナー」のクラスは 70 クラス以上 に及んだ。「LA セミナー」の時間割は、月・火・木・金曜日の 5 時限目ということで、

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各曜日に約 15 ~ 20 クラスが割り振られていて、図書館ガイダンスを同一時間帯に最大 3 クラス実施しなければならないなど、運営面での不安もあった。特に初年度は、PC 教室 が確保できない曜日があり、PC を用いた検索実習を崇貞館(主に教員の研究室がある建物) にあるゼミ室で行なわなければならないことがあった。2008 年度からは、明々館(PC 教 室が多数ある建物)の PC 教室がいずれの曜日も確保できるようになった。 「LA セミナー」での図書館ガイダンスの内容は、当初は検索実習を中心としたものが 求められていたが、結局のところ、図書館の館内ツアーと PC 教室での検索の説明・実習 を半分ずつの時間で行なうこととなった。授業時間の途中で図書館と明々館の PC 教室を 移動しなければならないことや、PC 教室の収容可能人数などの面の制約から、このよう なかたちに落ちついた。図書館の館内ツアーと PC 教室での検索の説明・実習は、前半の 時間と後半の時間でクラスが入れ替わるかたちで行なっている。確保できる PC 教室の制 約等から、4 年目の 2010 年度もこの入れ替わり方式はほぼ同じかたちである。ただし、 当初はすべてのクラスで同じ内容 ・ 同じレベルのものを実施するということであったもの が、年を追うごとに少しずつ選択の幅が出てきており、「LA セミナー」での図書館ガイ ダンスは選択式(学生が選択するのではなく、各クラスの受け持ちの教員が図書館ガイダ ンスを組み込むかどうかを選択する)となり、2010 年度の実施クラス数は若干減少して いる。また、内容についても、教員から「館内ツアーは不要だから、課題をやるための検 索の時間を多くとってほしい」、逆に「最初の段階なので PC での検索は不要で、館内ツ アーのみで良い」といった希望等も出てくるようになり、できるだけそれに沿うかたちで 実施するようにしている。これらのガイダンスでの学生たちの反応は様々であり、どこま でのことを説明したら良いのかと迷う面もある。「LA セミナー」では、LA セミナー検討 委員会で議論・検討されて決められたガイドラインにそって、統一的な内容・レベルで行 なえることが本来の目指すべきかたちであると考えられるが、クラスによる差が大きいの が現実である。図書館ガイダンスを実施する週によっても、意識の差が出てしまっている ように感じられる。大半のクラスは、授業の前半の回(2 週目~ 8 週目くらい)に行なっ ているが、授業が始まって間もない 2・3 週目に実施するクラスと、中間のレポートや課 題へ取り組む時期に実施するクラスでは、意識も違うように感じられた。数あるクラスの 中には、おしゃべりがとまらないクラスもあり、先生方がクラスをまとめるのに苦労され ている一端をうかがい知ることもあった。 1 年生の基礎ゼミでのガイダンスは、LA 学群と BM 学群で毎年あわせて 100 クラス前 後に及ぶため、年度によってもクラスによっても様々である。おとなしく聞いているクラ ス、おとなしいけど「ここまでの説明で何かわからないところや質問はありますか?」と 問いかけても無反応なクラス、おしゃべりのとまらないクラス、おしゃべりしている学生 が多い一方で 2 ~ 3 名程度は黙って生真面目に聞いている学生がいるクラスなど、本当に

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様々である。館内ツアーの際に、コースをはずれて走り回る学生がいるクラスなどもあっ た。若手の教員のクラスでは、学生たちが先生のことを「○○ちゃん」と友人のように呼 んでいるクラスも時折見られるが、LA 学群のあるクラスで、PC 教室での検索実習終了後、 館内ツアーに移動という際に、「先生、私、今、お財布の中のレシートを整理するのに忙 しいから、先に行っといていいですよ。図書館ですよね、場所はわかりますから…」と言 い出す学生がいたことには、さすがに驚かされた。BM 学群の「ビジネスの基礎」は、現 在では、月・火曜日の 5 時限目に実施しているが、2006 年度は月曜日の 5 時限と火曜日 の 1 時限、2007 年度~ 2008 年度は月曜日の 1 時限と火曜日の 5 時限に実施していた。朝 の 1 時限に設定されていたクラスでは、とりあえず何とか集合場所までは来てみたけれど、 これ以上歩いて回るのが億劫です、と言わんばかりに、本館入口の階段に座り込んでしま って、「先生、歩けな~い」とか、「先生、引っ張って起こして~」などと言い出す学生が いるクラスもあった。月曜日の 1 時限では授業の開始時間に集まれない学生も多くて運営 が大変であるというような理由から、2009 年度から「ビジネスの基礎」も、月・火曜日 の 5 時限に変更になった。そのため、春学期の月・火曜日の 5 時限は、LA 学群で 3 クラス、 BM 学群で 1 クラスの合計 4 クラスの図書館ガイダンスを同時に実施しなければならない こともある。(新たに加わった BM 学群アビエーション学類のクラスでは、別の時間帯(PFC の 4 時限目)に実施している。) 前述したように、学生たちの反応や理解度が様々と思われる中で、私たちがどのように 説明をすすめていくか、どの程度のことまで説明したら良いのかということは、常に試行 錯誤しているところである。一から丁寧に説明すべきなのか、入学時に配布される利用案 内などに目を通していてある程度わかっている、あるいは、すでに何回か図書館を利用し たことがある、という前提で、ごく基本的なことは割愛した方が良いのか等、迷うところ である。ただ、「すでに図書館に来たことがある人はどのくらいいますか?」「ここの部分 はわかっていますか?」などと問いかけても、ほとんど反応がないことが多く、結局とま どってしまっている。おしゃべりしている学生が多いが、数名は黙って生真面目に聞いて いる、というようなクラスでは、どちらの学生にあわせて説明をしたらよいのか迷うとこ ろである。生真面目に聞いている数名の学生にあわせて説明をすすめてしまうのか、おし ゃべりの止まない学生たちに少しでも関心を持たせるような説明をすべきなのか、非常に 悩ましいところである。また、先生方やベテランの職員と比較するとまだまだ人生経験の 浅い若輩者の筆者が担当したクラスの中には、学生たちが馬鹿にして話をきかずにおしゃ べりしている、と感じるクラスもあった。そこでどのように対処するかであるが、やみく もに「静かにしてください!」「きちんと説明を聞いてください!」などと注意したとこ ろで、かえっておしゃべりがエスカレートするのではないかということは容易に想像でき たので、逆に「みなさん、楽しいおしゃべりにお忙しいかもしれませんが、ここだけはポ

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イントなので、一応聞いておいてくださいね。3・4 年生の先輩たちでも、結構知らない 人がいますからね。」などといいうかたちで、少しでも話を聞いたり関心を持ってくれる ように仕向けている。教育的指導という観点からは、注意をして、きちんと話を聞くよう にさせることが本来の姿と考えられるが、図書館の利用方法や図書館にどのような資料や コーナーがあるのか、といったことを学生たちに印象づけるためには、このような逆療法 的な対処の方が有効ではないか、と感じている。コースをはずれて違う場所に行ってしま う学生に対しては、他の学生たちに対して、「今あの彼がいるあたりが、△△コーナーです」 というようなかたちで説明を加えたりしている。そのようにすると、たいていの場合、他 の学生が「お~い、○○、お前のことがネタになってるぞ~」といったようなツッコミを 入れるので、その学生も恥ずかしさを感じて戻ってくる、というような感じである。雑誌 コーナー、新聞コーナー、メディア室の DVD コーナーなどで、こちらが説明を始める前に、 すぐにあれこれ手に取ってみる学生もいるが、そのような時は、「今、手にとっていただ いたのが、○○新聞です」「このあたりに映画の DVD があります」などと、それに関連 付けて説明をするようにして、何とか関心が向くようにしている。図書館にエレベーター やエスカレーターがなく、バリアフリー対応ができていないことについては、階段での移 動が大変で仕方がないというように疲れた表情をしたり、その事実に驚く学生も多くみら れるが、「ケガをしている方や体に障がいを持っている方には不便をかけてしまって申し 訳ないですが、若くて元気な皆さんは、健康のためにも歩いてくださいね」と案内してい る。 •「文章表現法」の授業 「文章表現法Ⅰ」では、書くための題材として図書館ツアーをやってほしい、という教 員からの要望に応じて実施している。私たち図書館職員が説明した図書館の利用方法など についての説明と、自分で見て感じたこと等を、桜美林大学の図書館のことをまったく知 らない人たちにもわかるように説明できるよう文章化する、ということが、教員が学生た ちに与える課題である。ここでは、約 1 時間かけて図書館内の特徴的なコーナーを説明し ながらまわり、そのほかに、基本的な利用方法も案内している。1 年生の基礎ゼミのガイ ダンスでは割愛している辞書・事典などの参考図書コーナー、大型本コーナー、新聞バッ クナンバーコーナーなども案内して、図書館には様々なタイプの資料があって、用途や目 的別などに各コーナーにまとめられていることを説明している。様々な資料があるという ことについては、それを新たな発見ととらえている学生も多いようで、このあたりからも 図書館に親しんでくれれば、という思いで実施している。 「文章表現法Ⅱ」では、「文章表現法Ⅰ」よりは一歩進んで、あるテーマについて新聞 に掲載されているニュースなどを題材に書く、ということで、パソコンでの新聞記事 DB

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の検索方法と、新聞縮刷版などの新聞バックナンバーの場所の案内などを行なっている。 あるテーマや題材について、それに関連する資料を図書館で探して入手し、各自が検証を 加えて文章化する、というものである。こちらでは、新聞記事 DB の検索実習に 30 ~ 40 分、 新聞のバックナンバーコーナーの案内に 20 分程度、残りの時間は、学生たちが各自資料 を探したり、検索をやってみる時間として使ってもらうような流れにしている。これは、 課題が出ていることもあり、それなりに関心を持って聞いているように思われる。また、 新聞の縮刷版などの存在に驚きを感じている学生も多く見られる。 • 基盤教育院のアカデミックガイダンス科目「大学での学びと経験」との連携授業 これは 2009 年度から開始されたもので、授業の中で扱うテーマに関して先生から課題 が出されて、「図書館で資料を集める」→「レポートを書く」という流れのところの授業で、 資料や情報の探し方などを案内しているものである。「LA セミナー」や「ビジネスの基礎」 と比べると、具体的なテーマや課題について資料を探したり収集するにはどんな検索方法 があるか、というところに重点を置いた説明ができることから、一定の効果はあるように 感じている。リアクションペーパーからは、『「LA セミナー」や「ビジネスの基礎」の時 は何となく聞いていただけだったけど、具体的に資料を探すということになって、前回の ものと話が結びついた』といったような感想が多く見られた(この取り組みについては、 『OBIRINTODAY』第 10 号(2010)においても特集の中で簡単に報告を行なっているの で、そちらも参照していただきたい)。自分が聞く側の立場になったことを考えると 、1 回 説明されただけでその説明内容のすべてを理解できる、ということは少なく、繰り返しで 何回か説明されたり、別の場所で同じ話を聞いたりしているうちに、話が見えてくる、理 解できる、ということは多いように思う。そのような意味では、「LA セミナー」や「ビ ジネスの基礎」での内容と、多少の繰り返しや重複する部分が出てしまっても、しっかり 覚えてもらって活用してもらうためには、2 ~ 3 回くらい同じことをやってもちょうど良 いくらいなのではないか、とも感じている。 2010 年度の春学期の授業では、新聞 DB、雑誌記事検索 DB などの基本的な検索をやっ た後に、Google などの一般的な検索エンジンで検索する場合でも、検索語の掛け合わせ のやり方次第で検索結果から役に立たないノイズを排除できる、ということを少々紹介し た。例えば、あるキーワードについて何となく検索する場合でも、ブログのページは検索 結果に出てこないようにする、官公庁のオフィシャルページのみが出てくるようにする、 といったことが、ちょっとした工夫でできること、それによって役に立ちそうな有益な情 報が出てきやすくなることを説明した。Google での検索から図書館の DB 検索につなが っていってくれれば、との思いからであったが、この試みについては、リアクションペー パーを読んだ限りでは、学生たちの興味・関心をひいたように感じている。

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• 3・4 年生のゼミ(「専攻演習」)での情報検索ガイダンス それぞれの教員の要望に応じて、雑誌論文や雑誌記事の検索、ゼミ論や卒論を書くため の資料の集め方等についての情報検索のガイダンスを行なっている。時間も 60 分程度か ら 90 分程度まで、教員の要望にあわせるかたちにしている。パソコンで雑誌論文 DB の 検索等をやった上で、実際に雑誌コーナーに行ってみて、学術雑誌を手にとってみる、雑 誌論文がどのようなものなのか見てみる、といったことも、健康福祉学群や健康心理学科 の専攻演習のガイダンスでは行なってきた。3・4 年生のゼミでのこの情報検索ガイダン スでは、目的意識も違うためか、学生たちの関心は高いように感じている。そうは言って も、学生たちにも遠慮しているところがあるようで、あまり積極的な質問は出てこないが、 せっかくの機会なので、基本的なことでも素朴な疑問でも何かあればたずねてくれるよう にと、時間中に何回か問いかけるようにしている。 これらの情報検索ガイダンスに関係してくることで、資料そのものについての説明とい う点で、学生たちが事前にどの程度の基礎知識を持っているのか・理解できているのか、 図書館としてはどの程度の説明をしたら良いのか、と悩むところが、学術雑誌と雑誌論文 のことについてである。先生方が授業やゼミなどで、「ゼミ論や卒論を書く際には、雑誌 論文を探して利用するように」と言われる機会は多いと考えられるが、学生たちがそれを すぐにイメージできているのか・理解できているのか、というところが疑問である。落ち こぼれだった学生時代に筆者も感じたことであるが、「ゼミ論や卒論の題材を探すために、 なぜ雑誌を調べるの?」という素朴な疑問を持っている学生が多いのではないか。「雑誌」 というと、書店の店頭に並んでいる一般雑誌(商業誌)をまず最初にイメージする学生の 方が多いのではないだろうか、ということである。教員や研究者にとっては当たり前の存 在である学術雑誌や雑誌論文というものが、学部レベルの学生にとっては、すぐにはイメ ージ・理解できないのではないかと感じている。「一般雑誌(商業誌)ではない学術雑誌 というものがある」ということと、「学術雑誌も広い意味では雑誌の中に含まれる」とい うことを、すぐにイメージできる学生は少ないのではないかと感じている。そこで、3・4 年生のゼミなどで行なう情報検索ガイダンスでは、雑誌論文・雑誌記事検索の DB などの 説明・実習を行なう際に、必要に応じて、「そもそも雑誌とは?」ということと、雑誌に は一般雑誌(商業誌)と学術雑誌があるということを、実物を用いて(あるいは、雑誌の 写真を使って)説明するようにしている。こういった、学生の目線にあわせるような、す きまを埋めるようなフォローの説明もするように心がけている。 2−3 図書館でのレファレンスサービスと ILL(Inter•Library•Loan)について 桜美林大学の図書館では、2005 年度の途中から、貸出・返却カウンターとレファレン スカウンターを分けて設置している。当初は、レファレンスカウンターでの質問件数は少

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なかったが、近年では、質問に来る学生の数も増えている。その質問の内容は、本の探し 方や図書館内の色々なコーナーの場所といった基本的なことから、学内の施設に関するこ と、パソコンの操作に関することなどまで、多岐にわたっている。幸か不幸か、私たち図 書館の職員が答えられなくて困ってしまうような難解な質問は、今までのところではごく わずかである。学生サービス・利用者サービスという点からは、純粋なレファレンス質問 のみに対応するということではなく、インフォメーションカウンター的な役割も担うべき であろうという認識のもと、質問に来た学生の話をまずよく聞いて、求めていることは何 なのか把握し、それに対して適切な答えや方法を示せるように心がけている。また、スタ ッフ・ディベロップメント(SD)と言えるほどにはなっていないかもしれないが、図書 館職員間での勉強会を通じて、よくある質問やそれに対する適切な対処方法などを、レフ ァレンスカウンターで対応する職員の間で共有できるように心がけている。ただし、DB の使い方や検索技術などに関しては、DB の普及・発展に対して、私たちが追いつけてい ないところもあるのではないかと感じており、これは、今後、研鑽を積んでいくべき課題 である。利用頻度の高い DB に関しては、基本的なことはもちろん把握しているが、DB の導入数が増えてきているため、なかなか試してみる機会がない DB も出てきてしまって いる。また、DB の検索技術に関しても、キーワードや検索語の選び方などのちょっとし た違いで、検索結果としてヒットする件数が少なかったり多すぎたり、ということに直面 するケースは多い。DB ごとに、検索語のあいまい検索ができるか否かといった検索条件 や絞込検索の手順等に、色々と特徴や癖があるので、あれこれと試してみて慣れておくこ とも必要なことである。また、何としてもこの資料や情報にたどりつきたいという気持ち で、あきらめずに貪欲に探す、といったことも大切ではないかと感じている。実際にあっ た事例として、学生から文献複写として申し込まれた学術論文について、その論文を掲載 している雑誌が日本国内の大学図書館にはどこにもない、というケースで、Google で無 理矢理検索してみたら、その著者が自分で論文を公開している Web ページにたどりつい た、というケースや、著者の所属大学の HP にたどりついて、そこで論文のフルテキスト が入手(ダウンロード)できた、といったようなこともあった。 レファレンスとも関係が深く、一方で一般にはあまり知られていない、本学にはない資 料をその資料を所蔵している他大学の図書館などから取り寄せる ILL(InterLibrary Loan)についても、少しふれておきたい。学術雑誌の論文などのコピーを取り寄せる文 献複写であるが、大学院に心理学や老年学の専攻が開設されてから、その申込件数が急増 している。大学院の各専攻の開設当初、図書館では、それぞれの専攻に関係する学術雑誌 のコアジャーナルの購読を開始したが、バックナンバーは揃っていなかった。したがって、 少し前の研究成果についての論文などを読みたいとなると、その論文が掲載されている号 が図書館にはないため、文献複写で取り寄せるというケースが多くなった。2003 年頃から、

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文献複写の申込件数が急増したため、申込件数の多い雑誌を調べて、重要と思われるコア ジャーナルなどについては、可能な限りバックナンバーを購入した。これは、その後も何 回かにわたって行なっている。また、その周辺領域の雑誌を新規に購読することも行なっ てきた。このように少しずつコアジャーナルを補強してきたことで、現在では、心理学関 係の研究者の間では、「桜美林大学は心理学系のコアジャーナルがそれなりに充実してい る大学」という評価をされるまでに至っているようであり、本学の図書館で所蔵している 雑誌に対して、逆に他大学の研究者から所属大学の図書館を通じての文献複写の申込が増 えてきている。このように、ガイダンスなどの直接的な学習支援ということだけでなく、 利用希望の多い資料を充実させて学習・研究に便利な環境を整えていく、という点での取 り組みも行なっている。

3.•おわりに

以上のように、図書館での学生の学習支援の取り組みを述べてきたが、今後の課題、も っと力を入れていかなければならないと感じているところもある。オリエンテーションや ガイダンスなどでの問題点や課題は先にも挙げているが、それ以外では、HP などの Web 上で学生たちが得られる情報の充実と情報の整理、といったことが挙げられる。他大学の 図書館の HP 等と比較すると、本学の図書館 HP 上の案内はやや弱く、インパクトにも欠 けているのではないか、と感じている。DB の入口がわかりにくいために、せっかく 30 種類以上も導入している新聞検索や論文検索等の DB が使いこなされていないのではない か、ひょっとしたら、入口がわかりにくいために、その存在に気づいていない学生やほと んど利用したことのない学生もいるのではないか、といったことである。また、ガイダン スで説明しているような基本的な事項などを、(あまり長くなり過ぎない範囲で)手際よ くまとめて PDF 形式などで HP 上にアップする、あるいは、動画コンテンツのようなか たちにして、興味を持った学生が必要なときに各自で見て理解できる、というようなかた ちにもっていければ、とも考えている。Web から得られる情報の充実、Web ページの改 善は、別の点からの学習・研究支援という点で、取り組まなければならない事項であろう と認識している。 近年、他大学で設置するところが増えてきているラーニング・コモンズは、本学図書館 の現状では、施設面の制約からすぐに設置することは難しいと考えられる。そうなると、 HP などの Web で提供できるコンテンツを充実させていくか、人の手によるサービスを 充実させていく方向で力を注いでいくしかないと考えられる。学生たちにとって実のある 効果的なガイダンス内容の検討や、レファレンス能力の向上は引き続きすすめていきたい

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と考えている。

拙稿を読まれた方の中で、「図書館は学生の学習支援のためにもっとこんなことをやる べきではないか」といったご意見・ご提案等があれば、今後のガイダンスやレファレンス において活かしていくためにも、ぜひとも図書館までお寄せいただきたい。

参照

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