マルチメディア表現Ⅱ実践報告
― 伝えるデザインへの応用 ―
大 谷 安 宏
• はじめに マルチメディア表現の授業はⅠからⅡへの継続的な学びの機会として位置付けられてお り、「伝えるデザイン」を一貫したテーマとして、具体的に実習形式で学ぶ授業である。マ ルチメディア表現Ⅰでは、基礎学力として既存のデザイン表現について実習をとおして学 修し、マルチメディア表現Ⅱでは、具体的なテーマを用いた実践的な制作をとおして、伝 えるデザインへの応用力を身につける力を向上させることを目的とした。本実践報告では、 授業全体をとおしておこなった主体的な学びの姿勢を引き出すための実践方法について、 具体的な事例をもとに考察する。 この実習では、成果物が完成すれば終了ではなく、また、成果物のクオリティの高低を 評価の目的としない。実習の進め方として重要なポイントは、制作上のプロセスを重視し、 発見や問題に対してどのような対処方法や解決方法を模索したのか、さらに結果からどの ような感触が得られたのか、改善点や反省点を具体的に導き出すことにある。制作プロセ スの共有化のために、自主的な対話を前提とした相互コミュニケーションを形成する必要 があり、そのためのアイデアとして、アクティブ・ラーニングの手法を参考に自発的で参 加型のワークショップ形式を取り入れた。実習の成果は、制作物として提出され、それに コメントを含めたフィードバックをおこなう。フィードバックは個別に実施するのではな く、全員に公開した形で実施する。具体的な作品解析と制作プロセスについて、フィード バックすることで、学生に他の作品への興味と違いを実感させ、次の課題への取り組み意 欲と興味へ繋ぐための試みである。このような知識の伝達は、学生の興味や気付きを導き 出し、限られた時間のなかで自発的に取り組む姿勢を生むための基礎体力の一部となれば と考えた。さらに、自発的な学びの姿勢は、社会に出たあとも役に立つということを伝え ることも大切である。お互いに「個人の興味、考え方」の違いを具体的に実感することで、 自分とは異質なものへの抵抗感を減少させ、他を認知することで、学修能力が活性化し、 気付きの幅を広げることにつながると考える。制作実習をとおしたコミュニケーションの 持続は、「興味と気付き」を持たせ活動させる動機付けに結びつき、能動的な学修姿勢を身 につける1つの手法と言えるのではないだろうか。• 授業のアイデア 2018年度のマルチメディア表現Ⅱでは、具体的な表現形態として「音楽」をデザインに 結びつけ、「伝えるデザイン」を実践する。ここで定義した「音楽」とは、一般的な意味での ミュージックだけでなく、音に関連した言葉、物語、アートワーク、ゲーム、映像を関連付 けて扱う範疇とした。実習への取り組み姿勢として、主体的な活動を促進し、興味や気付 きを持たせるために、アクティブ・ラーニングの手法を一部取り入れ、授業の構成を下記 のように実施した。 ①講義と実例の紹介 ②制作手法説明 ③リサーチ実習:普段から利用しているメディアを調査、作品リサーチ ④読み取り実習:社会文化的背景を鑑みてデザイン要素を読み取る ⑤ 自ら体験実習:アイデアを形にする、自らのデザインへの引用 実習のテーマについては、過去の音楽メディアのデザイン変遷から選定し、実習に関連 付けが可能なものを選定した。また、テーマごとに1回2コマの授業時間の中で実習を完結 できるように、手順、ゴールを示した。 実習にはコンピュータおよびインターネット環境、adobe Illustrator、Photoshop、Webベー スのプログラミングツールScratch、ノート、ハサミ、接着剤、色鉛筆を利用する。 • 評価について 本授業の到達目標は、「表現する」「伝える」デザインの構造について、指定された表現手 法をとおして読み取り、さらに表現手法や効果について客観的かつ具体的な方法により、 自らが制作に取り組み、成果を得る」こととした。なお、制作物を評価するにあたり、実習 における事例を紹介し、評価ポイントについて提示をおこなった。 • 許諾について 本稿に掲載した作品画像については、本実践報告への掲載利用のみを前提として、制作 者本人より使用許諾を得たものである。許諾については、本実践報告について説明を実施 し、書面にて許諾合意を交わした。制作者氏名の表記は、本人が希望した形式で表記する ものであり、氏名の表記を希望しない場合は無記名とした。なお、図案、画像、氏名の他へ の引用、転用は無断使用は厳禁である。制作画像に関するすべての権利は制作者が所有す るものである。
• 制作テーマと実習考察 1.「ミニマルデザイン」1 家具、グラフィック、文字、音楽、ゲーム、Web、写真、絵画など幅広く用いられるミニ マル、Minimalism、ミニマルデザインなどと総称される表現手法により、既存のデザイン をリ・デザインする。ミニマルとは「最小限の情報で最大の効果を得る」デザインの手法と した。 既存の映画ポスター、CM、ゲーム、音楽のパッケージを読み取り、ミニマルなデザイン への落とし込みをすることで、リ・デザインを実践する。「既存のパッケージから必要な情 報のみを残す」ためには、1次情報、2次情報、3次情報・・と情報のレイヤーを選択し、必 要な部分以外はすべてそぎ落とす必要がある。 実習をとおして、伝える要素を1つに絞り込むための読み取り、情報の選択、そしてデザ インをおこなう。制作には、Adobe Photoshop、Illustrator、または画像デザイン制作アプリ を用いる。 実習考察 意図的にデザインされた商用デザインパッケージを新たな着眼点で見直す必要があり、 デザインの読み取りかた、相手が伝えようとしていることはなにか、を読み取る作業が必 要になる。映画のポスターを例に、必要な部分を1つだけ残すという例を参考として提示 した。映画を知らない、知っていても見ていない、なんとなく思い込みや漠然としたイメー ジはあるという場合に、読み取る方法により既存のデザインから得られるイメージとは異 なった解釈が生まれることへの驚きや発見が見られた。さらに、自らのデザインを考察し、 読み取りを重ねていくと、デザインにバリエーションが生まれている様子も見られた。自 主的な取り組みとして、発展的に進行する好例である。 2.「気になるあの人の気になる・・・」2 持っているもの、普段愛用しているものを紹介し、その人がどんな人なのか想像できる ようにデザインする。ここで云う「あの人」とは自分、もしくは架空の自分である。原案は、 雑誌の音楽アーティスト紹介記事の制作記事として発表したもの。 制作手法として、ミニマルデザインの表現手法から「整列」の概念を用いる。ミニマルと は「最小限の情報で最大の効果を得る」デザインを指し、「整列」には、1ページの平面に どのようにデザインするのか、その位置、適切な大きさ、配置の順番、目線の動きを考慮す る必要がある。以下の点に沿って考えること。 ①1つのものにフォーカスする ②複数のオブジェクトを描くため、メリハリをつける
③空白/スペースを十分にとりオブジェクトをバランスよく並べる ④色の効果を考える 制作手順:身の回りに所持しているものをA4サイズ用紙に手書きする。このときA4サ イズ内に整列させること。手書きデータは、デジタル画像として撮影をおこなう。デジタ ル画像は、Adobe Illustratorを利用してトレースして手書きの線を読み取り、自由に塗りを 実施する。ミニマルデザイン「整列」のポイントは、①手書き要素の平面配置、②奥行きの ある背景、③文字データの配置、④それぞれの位置関係、バランスにある。 実習考察 手書きデータの段階で、ミニマルという定義を見失うケースが多々みられた。制作を 実施しながらアイデアが湧いてくることがあればそれも正当な「気付き」であると考え、 補正せずに進めたため、全体的にはバリエーションが豊富なアイデアが完成した。ミニマ ルデザインとしては、1次情報である手書きデザイン部分と、2次情報である背景、3次情 報である文字、これらのバランスに試行錯誤が見られ、奥行きのあるデザインに仕上がっ た。架空の人物というアイデアを駆使して、物の質感、色味、言語のデザインをオリジナル に制作する意欲が見られた。このように、アイデアを形にしたいという前向きな姿勢が意 欲ある取り組み姿勢が見られたため、テーマに自分のアイデアをプラスし新たな展開を促 すようガイドを実施した。そのため、随所にこだわりが見られ、手書きデータの作成、トレー ス、色付け、デザインの完成まで2回の授業時間を使った。 3.「フェイスポートレート」3 アーティスト側から発せられる印象を自分というフィルターをとおして変換し、ポート レートとして描く。制作には、人物画像とその印象を操作するキーワードを合成する。ネッ トワークサービスにあるワードクラウドを利用し、複数の言葉をクラウドとして散りばめ た画像をオンラインで制作し、人物画像と合成する。デザインのポイントは、①人物のイ メージ ②選択した言葉(ワード)、これらの要素をあわせてその人物の印象を伝えること である。具体的には、音楽家、演奏家、作曲家、作詞家など肖像と作品やその人物と結びつ いたキーワードを組み合わせて完成させる。制作にはAdobe Photoshopを利用した。 実習考察 対象となる人物(有名人、タレント、音楽家など)に関する明確なイメージを打ち出せる のか、という点が制作のポイントである。残念なのは、人物画像を編集せず、ネットから得 た情報をそのまま利用するケースが見られた点である。ネットから得た画像からは商業的 で意図的なイメージ戦略が読み取れるはずであり、それをさらに自分の解釈で編集するこ
とで、イメージの作られ方を考察の土台にして欲しかった。あらかじめ出来上がったイメー ジを崩し、自分が持っているイメージへの変換を図るというのが制作の裏テーマであった のだが、そこまでの到達には至らなかった。ワードクラウドについては、フォントの種類 を変える、複数組み合わせる、ト音記号などの特定の形や図形で言葉を切り抜くといった 工夫が見られ、言葉を組み合わせただけのカオスにはならず、印象を図形化した言葉で示 した手法や、特定の言葉だけを浮き上がらせる手法により伝えたい印象を操作できている。 4.「楽譜デザイン」 ミニマル的な記号として、演奏情報や発想記号で無機質に表現される楽譜をリ・デザイ ンして記号的な解釈から脱却させる。楽譜、譜面には、同一性確保するという目的があり、 それぞれの楽譜は異なる曲を表現しているが、実際の楽譜機能として差異はない。5線は 音符や休符などの線上の点と点を結ぶ線でしかない。このように、楽譜の定義は再生産の 過程+技術的な過程の表現である。「楽譜デザイン」では、そのような記号としての機能か ら脱却し、具体的な音としての印象をデザインとして盛込むことが目的である。音が持つ 質感を、楽譜をデザインして具体化する試みである。 実習考察 アンケートでは、「むずかしかった」という意見が多く見られた制作である。実際の楽譜 の定義に執着してしまうと、自由に発想ができなくなるためである。そこを切り崩す展開 を探すのが課題の意図なのであるが、楽譜を前にしてしまうと固定概念が働いてしまう傾 向もあるようだ。 楽譜には、あらかじめ用意した「beautiful love」を用いた。曲名からの印象とネット動画 での参照をとおして曲の全貌をつかみ、作曲家の意図や、曲が使用された映画からも、デ ザインにつながる要素を見つけ出し、デザイン上のアイコンとして利用する展開がみられ た。こういったテーマでは、結果が見えにくいこともあり、実際にやってみないとアイデ アと結果が結びつかない。思い切って5線の並びや形状を変える、パーツをばらばらにす るという発想に至った場合は、自在なデザインに結びついた。 5.「驚き盤・平面」と「驚き盤・立体」 動く絵のおもちゃ「驚き盤(フェナキスティ・スコープ)」を参考に、GIFアニメーショ ンを制作する。驚き盤とは、円盤に描かれた絵を鏡に向けて回転させ、細いすき間(スリッ ト)を通して鏡に映った絵をのぞき、動いているように見えるというもの。その原理は、複 数の静止画を1コマ1コマ動かしてアニメーションするものである。回転する平面は、一目 で平面円形全体が見渡せるため、1つの空間として捉えることが必要となる。それにより、
雑誌やWebページのレイアウトのように、限られた空間の中に、統一感のある世界を表現 することが可能となる。デジタル化にともない動きに、スピード、長さによる強弱、色の変 化をつけた表現も可能である。制作では、驚き盤のテンプレートを利用してデジタル驚き 盤を制作する。Adobe Photoshopを利用し、GIF形式でアニメーションを再生する。GIF形 式は、インターネットでバナー広告などにも利用され、一般的な表現手法である。コマ撮 り動画の動作原理を理解し、1コマ1コマ動かして作成すること。一般的に動画は1秒に 約29コマあり、コマ数が少なければ、動きがカクカクし、コマ数が多いと動きがスムー スに表現される。 「立体驚き盤」では、手書きのキャラクターを、円形の土台を横に回転しながらアニメー ション化する。平面と異なる連続性には、物語性が必要となるため、ストーリ、キャラクタ の性格、世界観を統合的に捉え、デザインに取り組む。撮影は、スマートフォンを利用して 1コマ1コマ撮影し、撮影した画像データはGIFアニメ制作用無料アプリを利用して動画化 する。 実習考察 「驚き盤」のアイデアに、平面と立体という2つのバリエーションを取り入れた。その効 果としては「表現や伝える世界観を変化させることができる」ことを実感することにある。 「驚き盤・平面」では、平面の捉え方が画一的になる傾向がみられた。そのため、円形の制 限のなかに、さまざまな世界観を盛込むというテーマには追いつかなかった。個人的な世 界観やひらめきから得られた制作アイデアを持つ学生には、テーマを踏襲することよりも、 アイデアを完結させることを優先させ、完成に至るようにガイドをおこなった。ひらめき を形にする難しさ、問題解決能力が問われるが、結果的には制作を進めながら工夫をする ことで問題を解決し、仕上げることにつながった。 「驚き盤・立体」の成果として、教室内で撮影することで、「身近な環境の中に、異世界の 動くものが突然現れる」という、現在の潮流であるAR(拡張現実)を想像させるような感 覚を得る制作アイデアも見られ、予定していなかったうれしい成果であり、驚きを得られ た。 6.「SCRATCHでゲーム脳」4 MIT開発のWebベースのビジュアルプログラミング環境「SCRATCH」を利用し、イベン ト駆動型のプログラミングをとおして、ゲーム、インタラクティブアート、ロボットブロ グラミングを体験する。SCRATCHは、子供から大人まで年齢を問わずに体験できるチュー トリアルが用意されており、導入は容易である。また、作成したプログラムを共有化する 仕組みが用意されているため、他人の作った物を改変することや、引用することも容易で
あり、アイデアのプロトタイプを作るためには最適なプログラミング環境である。制作へ の取り組みとしては①無料のアカウントを作成 ②操作の基本を理解 ③実際のサンプル を見て・触ってみる ④共有化されているプログラムを触り、プログラミングの実装方法 を学ぶ ⑤動きと音を伴うプログラミングを作成するという流れとなる。
SCRATCH制作:AI鍵盤をつくる
鍵盤のGUI(Graphical User Interface)を利用し、下記の動作を実装する。動作の基準は、 鍵盤を押すと、こちらに話しかける、こちらが話しかけた言葉を録音し繰り返すとして、 動作を実装する。 ドを押すと:こんにちは レを押すと:ごようはなんでしょう? ミを押すと:録音:話す内容を録音 ファを押すと:録音した内容を繰り返す SCRATCH制作:キャラクター・デザイン デザイン作成したオリジナルキャラクターを動かす。スーパーマリオを参考に、ジャン プ、左右移動の機能を実装する。矢印キー、左右で左右移動、上キーでジャンプというよう にコンピュータキーボードの特定のキーに機能を設定する。 実習考察 1回の実習で完結する予定であったが、プログラミング=作り込みという側面があり、 最終系にたどり着くには時間が足りないという結果となった。 具体的には、論理的な思考、ロジカルシンキングの導入としてSCRATCHを利用して、い ままで経験してきたゲームの構造をSCRATCHに置き換えて考える。プログラミングには、 イベント駆動型の手法を用い、ストーリーに沿って動きやイベントを発生させる基本プロ グラミングを体験した。また、作成したゲームを共有することで、1つのプログラムを不 特定多数で共有化し、ブラッシュアップ可能な環境についても実感することとなった。 7.「日本語デザイン」 日本語を使った和のイメージデザインを考える。日本語を用いたデザインは、言葉の形 状から伝わるイメージ、言葉の印象からくるイメージ、言葉が持つリズムや世界感、言葉 の裏から読み取れるものなど、表現の深さ考慮して全体をデザインする必要がある。 この制作では、自由律俳句の持つイメージ、文字を見て伝わる感覚をデザインし、背景と 言葉のバランスを考える点がポイントとなる。 背景の作成はPhotoshopのパターンテクスチャ素材を利用する。パターンを利用して図
形を塗り、背景に木目や模様、色合い、かすれ、壊れた感じなど、独特なテクスチャーを持 つ背景が作成できる。 実習考察 日本語文字の持つ象形的なイメージと含有された意味、そして背景デザインとのバラン スを考える。自由律俳句は言葉自体、文字列自体から得る深み、意味、印象、が個々に異な る世界であり、そこから得られる印象と、背景のデザインをどのように適応させるのか、 もしくは、反適用するのかがデザインの課題である。文字は言葉にして音になる前提であ り、音読したときのサウンド感も表現に含みたいと考える。 それでは、新田真奈美の作品「後悔」を見てみよう。後悔という文字列から得られる印象 を、臙脂色とクリーム色で、濃淡を表現している。さらに、背景に曲線を用いた表現からも 後悔という言葉から得られるリニアに直線ではない印象を的確に表現している。また、曲 線は円形でもあり、2つの円が交わらない距離感に配置され、その間をモヤモヤした有機 的な形状をもつ物体で埋め尽くす。この物体は繰り返し表現され、伝統的な「和」の表現が 用いられている。連続的なさらに、「和」的な藍色を用いることで「和」的な印象を与える ことに成功している。書籍の装丁から本文が読み取れるかのような、全体の印象から、「後 悔」というタイトルの背後にある物語性が読み取れる。 8.「チョーク・ボード」 チョークボードといえば、黒板だが、近年は商用看板に利用されることも多く、手書き の質感で商品の印象をコントロールするメディアである。ノスタルジックな印象、世代を 超えた共有できる感覚がある独特なメディアと捉え、ボーダレスなデザイン制作に取り組 む。 チョークの質感を得るには、Adobe Photoshopのブラシ機能を利用する。Photoshopのブ ラシは、さまざまな質感を描くためのブラシ先端の形状をデザインし、登録して利用可能 である。チョークで描く質感をテクスチャーとしてデザインし、ブラシとして登録する。 登録したブラシを使って、チョーク・ボードを描く。 制作するテーマは「音楽」とし、「楽器」「歌詞」「音楽」「音」「アーティスト」「音楽記号」 を連想させることをチョークでデザインする。ガイドとなる下絵の作成、または、既存の 画像を下絵として、トレースする。 実習考察 さまざまなテクスチャーをブラシの先端に適応することにより、独特な質感を持った線 を描くことが可能になる。チョークで描く基本動作は、線を引く、塗る、重ね塗りがあり、 アナログのテクスチャーと線の質感を維持した表現の考察がポイントとなる。本課題では、
チョーク線から得られるイメージは限られているため、伝える印象をどのようにコント ロールするのか考える必要がある。 チョークの質感、色味で表現のバリエーションを作り、さらには、黒板の汚れを背景の 質感で表現する繊細な表現への取り組みがみられた。実写のトレース、質感を活かした印 象派的な描写、内面描写、擦れを多用した明暗など自分の興味や感覚に素直に率直に取り 組む姿勢が見られた。 • まとめ この授業では、学生は主体的になにかを伝えようとするために、いろんな表現手法を使っ て思考を巡らし、そのプロセスを体感する性質のものである。指示されたとおりにやろう としてもできないという、受身からくる「壁」に、履修生が嫌になったり諦めたりせず、能 動的に取り組む姿勢へと変換されるよう促したいと考え、アクティブラーニングの手法の 一部をもちいた。これにより、評価のガイドラインにある「オリジナリティ」「独自性」「個性」 について、制作者自身がどのように向き合うのか考察することにつなげたいと考えた。制 作物のフィードバックをとおして、他の作品と向き合うことで、自分が個性と感じていた ことが一般化された認識に基づいたものであることに気づく。さらにそれが、経験則や歴 史的背景に基づく共有化された認識への気付きを得たことで、あえて異なる視野でアイデ アを考える場面が見られた。他と同じ、他と異なるという実感は、共感の有無を導き出す 根底に必要なものであり、少しでも気付きに繋がったことで実習の効果を感じることがで きた。与えられた課題だけに取り組む姿勢では不明瞭に感じてしまう「個性」や「オリジナ ル」という点が、少なからず明瞭になる方向性を示せたと感じる。今後もさらにブラッシュ アップし、能動的に表現行為に取り組む姿勢を導き出すことにつながるよう実践したいと 考える。 制作ごとにテーマが存在するが、テーマの解釈は個別に異なることが多く、成果物とし ての作品も多岐にわたっている。解釈を勝手に与えることはできないが、作品には、なに か伝えようとしていることが読み取れると感じるものばかりである。ひとりひとりが持つ 感覚的として、美しい・醜い、バランスの良・悪が、デザインという形になって現れてきた 予兆のように感じた。この授業をとおして「表現」するということは、他人と違っているこ とについて、恐れることなく、自分の感性と向き合うことであると実感してもらえたらと 希望する。
• 授業内アンケートから抜粋(原文のまま) 以下は、全授業を終えて履修生に依頼したアンケートからの引用である。 この授業に期待すること • 様々な情報媒体の情報を手に入れて活用できるようになることです。 • マルチメディア表現Ⅰをさらに発展させ活かしつつあらたな知識つけ楽しむことです。 • PCの画像処理のスキルの獲得です。 • フォトショやイラレでマルチメディア表現Ⅰよりも凝ったものをつくることです。 • PCソフトやアプリを操作方法を学び自分で考えて表現し力を身につけることです。 • マルチメディア表現Ⅰの時と同じ受講して良かったです。しいて言うならもう少し Photoshopの詳しいことをやりたかったってのがあります。 • なにもわからずに受講したので期待していないですが、とってもおもしろく授業以外の 事も話してくれてそういう先生はいないのでよかったです。 • やりやすい環境でしっかりと学習できました。 • やりたいことをじっくりできたのでとてもよかったです。 この授業を受講した感想は • 自分の知らない情報媒体について詳しく知ることができ、毎回楽しみでした。 • 楽しく表現方法は1つではないことを知り充実した授業でした。 • 完璧でした。 • 説明がわかりやすく集中しやすい環境でとてもやりやすかったです。 • イラレやフォトショをうまくつかえず難しかったし苦労した。 • 創造ツールをもっと使えるようになることです。 • 画像処理の技術か背景技術について学ぶこと。 授業内容・進め方について • フォトショ、イラレが出来て当然の授業で少し苦戦しました。 • ゆるく勝手に作らせてもらえる環境でのびのびできた テーマを無視した作品を作って いても否定せずアイデアを尊重してもらえてとても良かったです。 • 個人個人にアドバイスをいただけてとてもよかったです。 • テーマは毎回楽しみでした。授業をまたぐものより一回で完結するもののほうが個人的 にはやる気が出ました。 • フォトショップなどの操作方法をもう少し詳しく説明してほしかった。 • もっと細かい手順などを教えてほしかった。 • 落ち着いた空気で制作に取り組めてよかった。 • やり方自体はよかったが、先生が見て回っているときに「見られてる」と緊張してしまい、
手が動かなくなるときがあった。 • 自由に制作ができるので自分の力になったと感じた。 扱うテーマについて • わかりやすかったです。 • 音楽制作系のソフトには触れてみたかったなと思います。 • 自分でも思いもよらないテーマで製作できるのでとても面白かったです。 • 毎回テーマがあるから作品を作りやすい。 • 自分の好みに合ったテーマばかりでやってて楽しかった。 制作環境・使用するソフトウェアについて • イラレが難しかったので、参考画面のスクショなどフォルダにもっと入れてくれてたら 助かりました。 • 学校のPCのせいでやりにくい部分はあるが動かないわけではないのでフォトショップ・ イラストレーターで問題ないと思います。 • 普段はあまり使わないものだったが、この授業を機会に積極的に使っていきたいと思っ ている。 • イラストレータ・フォトショップの操作に慣れることができたからとても楽しく授業に とりくむことができた。 • アドビは有料ソフトのため大学以外では使用できないことだけが不便に感じた。でも特 に不便に感じることはなかった。
注
1 映画のポスターをリデザイン Pete Majarich http://amovieposteraday.tumblr.com 2 ミニマルミュージック ミニマルミュージックにおける楽譜の意味、読み取り方 (ア)スティーブライヒ minimal music より Clapping Music for two performers(1972) (イ)スティーブライヒ Nagoya marimba ミニマルデザインのススメ https://blog.btrax.com/jp/minimal-design/ 2018/4/30参照 効果的なミニマルデザインと退屈なデザイン https://www.webcreatorbox.com/tech/minimal-design-tips 2018/4/30参照 3 ワードクラウド http://lab.fanbright.jp/lod/web ワードクラウドで見た人の記憶に残りやすいコンテンツ作りをしようhttps://ferret-plus.com/9526 The Word Cloud Generator https://www.jasondavies.com/wordcloud/ 2018/5/07参照