Title
[総説]糞線虫症の免疫診断法 : その試みと意義
Author(s)
佐藤, 良也; 城間, 祥行; 大鶴, 正満
Citation
琉球医学会誌 = Ryukyu Medical Journal, 12(3): 191-205
Issue Date
1992
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/3156
Ry止yu Med. J.,12(3),191-205, 1992
糞線虫症の免疫診断法-その試みと意義-*.***佐藤 良也
城間 祥行 大鶴 正満** 琉球大学医学部寄生虫学講座 泉 崎 病 院 琉球大学医学部付属地域医療研究セソタ-(1991年4月1日 受付、 I.緒 言 沖縄を含む南西諸島は、古くから知られた糞 線虫症の高浸淫地域である。沖組では、今日な お多数の住民が本線虫の感染を受けており、ま た、本症は時として致命的な重症化を来たすと いう点で臨床的にも看過できない重要な疾患の ひとつである。著者らは、これまでの調査、研 究を通して、沖縄の糞線虫症に関していくつか の重要な問題点を明らかにしてきた。そのひと つに、糞便検査による本症の診断が従来言われ てきたよりもかなり困難であることがあげられ 1,2) る 。また、沖組では本線虫保有者の多くが 3 ATL病原ウイルスのキャリアーであること A) や、完全駆虫が困難であること など、その対 策にあたってかかえる問題点は多い。とり分け 本症の重症化対策は、日常の臨床に携わる者に とって大きな関心事であると思われる。本症が 宿主の免疫低下状態のもとで重症化することは 既に良く知られた事実であるが、種々の消耗性 疾患の増加傾向、免疫学の発展にともなう免疫 抑制療法の普及、さらに腎移植など、臓器移植 に向けた気運の高まり、感染者の高齢化にとも なう抵抗力の低下など、本症重症化の危険国子 は、今後、益々増加するものと考えられる。こ のため、本線虫感染の有無を的確に検査する方 法を確立することは、かかる重症化予防対策に とって基本的に重要な問題である。 本稿では、糞便を用いた糞線虫症検査の現状 と問題点、および著者らがこれまでに行なって きた免疫診断の試みと意義について紹介する。 1991年7月16日 受理) II.糞便検査の現状と問題点 寄生虫症の検査は、一般に糞便や他の生体材 料から虫卵や虫体を検出することによる。糞線 虫症の場合にも、糞便中に幼虫を検出すること によって診断し、このため各種の糞便検査法が 実施されてきた(表1) 0 表1 糞線虫症の糞便検査法1 .直接塗抹法 Direct wet aounts 2.ホルマリン・エーテル沈殿法
Foraalin-ether sediesntation(HGl aethod)
3.ロ紙培養法 Filter paper strip culture
(Harada-IKori uethod)
4.ウオッチグラス培養法 Watch {lass culture 5.寒天板培養法 Agar plate culture
直接塗抹法は、糞便量約3m骨をスライドグラ ス上で1滴の生理食塩水と混和し、カバーグラ スをかけて直接鏡検する簡単な方法である。手 軽な方法として一般の検査室で良く利用される が、後述するごとく、この方法で検出される例 は少ない。 ホルマリソ・エーテル沈殿法は、約19の糞 便材料を用い、これを10%ホルマリソに溶かし た後、エーテル粒子の浮力を利用して糞便内の 未消化物を虫卵や幼虫から分離して取り除く方 法であり、一般の虫卵検査では最もよく使われ ている。糞線虫症の検査でも比較的検出率は良 く、たとえ幼虫が糞便材料内で死滅した場合で も検査可能であること、ホルマリソで固定して あるため検査の際に感染する危険がないことな
192 糞線虫症の免疫診断法 どの利点もある。 試験管内口紙培養法は、約20×150mmに裁断 した短冊状のロ紙に糞便を薄く塗布し、これを 少量の水を入れた試験管内に立てて培養する方 法である。この方法で使用する糞便量は0.59 程度であり、決して多くない。数日で幼虫が試 験管内の清浄な水の中に泳ぎ出してくるので、 これを顕微鏡下で観察する。本法は、糞線虫症 の最も合理的な検査法として従来から推奨され てきた。しかし、本法は糞便内で幼虫が生存し ていることが絶対条件であり、低温もしくは高 温状態に長時間放置された検体では極端に検出 率が低下する。また、我々は検査依頼された糞 便材料の中に活発に運動する幼虫を顕微鏡下で 確認しながら、これを直ちに培養検査にまわし ても結果が陽性にならない例をしばしば経験す ることから、本法では幼虫の生死以外に何らか のデリケートな要因も介在すると考えている。 ウォッチグラス培養法は、数9の糞塊をウォッ チグラスに取り、これに少量の水を加えた後、 高さ2-3mmに水を張ったペトリ皿内に入れて 蓋をし、培養する方法である。数日後、糞塊の 周関やぺトリ皿内の水を注意深く検査すると、 糞塊の周囲には発育中の自由生活世代の虫体を、 ペトリ皿の水中には主にフィラリア型の幼虫を 兄い出すことができる。この他に大量の糞便を 炭末と混合し培養する方法もあるが、操作が繁 雑でルーチソの検査には向かない。 最近、沖縄では普通寒天平板を用いた培養法 が本症の有効な検査法として用いられている。 これは、細菌培養のための普通寒天培地上に数 9の糞塊を乗せ、培養する方法である。糞塊か ら這い出した幼虫が寒天坂上に残す旬旬痕跡を 検出する。本法では、幼虫の旬旬痕跡に沿って 独得な細菌コロニーが発育することが診断に有 力な手掛かりを与える。このような細菌コロニー の発育は、糞便や啄痕の培養検査に際し七しば しば認められること、これが糞線虫幼虫によるもの 5,6) であることは既に知られていたが 、 Arakakiら (1988)は、これを本線虫症の検査法として応用し、 7) 良好な検査結果が得られると報告した。他方、 本法は非常に敏感な方法であることを反映して、 わずか教条の葡旬痕を認めるのみで、幼虫の存 在を確認することが困難な場合もある。同様な 旬旬痕は、鈎虫や一過性のラブジチス感染の際 にも認められるので、旬旬痕のみから、これを 本線虫感染者と判断することのないよう注意も 必要であろう。たとえそれがわずかな可能性で あっても、治療を必要としないラブジチス感染 者を本症患者として治療することのないように しなければならない。 以上に述べたごとく、本症の診断のために様々 な糞便検査法が実施されてきた。しかしながら、 これらの方法をもってしても、糞線虫の検査に とって満足する検出効果が得られないことが多 い。直接塗抹法やロ紙培養法は、本来、使用す る糞便量が少ないことから、検出率は決して高 くないことが知られている。例えば、直接塗抹 法の場合、慢性感染者の約半数は5枚以上の標 本を作成して、くり返し検査しなければ実際に 感染を確認することはできないと言われ、約15 %の例では20回以上の検査を重ねる必要があっ 8) たと報告されている 。また、別な調査によれ は、この方法で感染者の9割を検出するために は、検体ごとに10時間以上に及ぶ観察が必要で 9) あると報告されている 。ロ紙培養法でも、同 様の結果が得られている。図1には口紙培養法 地 域 SfSfStt 粟 国 村 両US3村 仲 里 村 具志川村 図一 口紙培養法における幼虫検出回数(陽性 糞便検体毎に3本の培養試験管を用意し、幼虫が陽性で あった試験管数別の検体数を示した. 3本中1本しか陽性 とならない検体が半分以上を占めることから、本法でもく り返し検査することが基本的に重要であることが分かる。 ■喜:1本のみ陽性. Eコ:2本陽性, cコ:3本全て陽性
佐藤 良也 ほか で陽性となった糞便検体数を陽性となった培養 試験管数別に示した。糞便検体ごとに3本づつ の試験管培養を行なった場合、 3本全てが陽性 となる例は少なく(全体の1/4以下) 、半数 以上の検体で3本中1本の培養試験管しか陽性 とならないことが分かる。また、検査を3日間 続けた場合でも、そのうちの1回しか陽性とな らなかった例が陽性者全体の半数以上を占める 1) ことが確認されている 。表2には、著者らが 沖縄の住民を対象に、異なる方法を併用して3 日間検査をくり返した結果をまとめて示した。 表2 各種糞便検査法の検出率の比較1) 検 出 率 換査回教 塗抹法 沈殿法 培養法 1 回 26. 54.9 43.91 213 回 57.3 79.3 75.6 直接塗抹法、ホルマリン・工-テル沈澱法、口紙培 養法で3日間(3回)検査を行ない、 1回でも陽性と なった人合計82名を100とした割合で示した。ホルマ リン・エーテル沈澱法の検出率が一番良いが、この場 合でも1回だけの検査で検出されるのは約半数である。 合計82名の本線虫保有者を兄い出すことができ たが、このうち1回目の検査で陽性となったの は、直接塗抹法でわずか26.8%、ロ紙培養法と ホルマリソ・エテール沈殿法で各々43.9、 54.9% であった。検査を3日間くり返すことによって 検出率が各々57.3、75.6、79.3%にまで増加した が、いずれの方法でもそれ単独では100%の検 出率を得るに至らないことが分かる。 沖縄では、最近まで住民の感染率は1 -2% 程度と見積もられていた。しかし、過去におけ るこれらの陽性率はロ紙培養法による1回のみ の検査で、しかも検体ごとに1本の培養試験管 で検査された場合の成績である。上記の事実に 照らしてみると、その値は実際の感染率をかな り下回るものであることが容易に予想できる。 これを確認するために、我々がいくつかの地域で詳 細な調査を実施したところ、得られた陽性率は過去 193 に同じ地域で実施された調査での陽性率に較べて著 1 0) しく高いものとなった(図2) 。 陽性率(V! 地 域 5 10 同心ESsi SAilaS 粟国村 南大東村 *仲里村 *具志川村 *佐敷町 図2 沖縄県住民の糞綿虫陽性率の比較'0・") 県下8地域において、最近、我々が実施した調査で の陽性率を、同じ地域で過去に実施された調査の結果 と比較したもの。過去の成績(I I)は、ロ紙培 養法による1回のみの検査で得られたものであるが、 我々の調査(I I)では、ホルマリン・エーテル 沈澱法など、いくつかの方法を組み合わせ、 3日間検 査をくり返した。種々の方法でくり返し検査すること により、過去の陽性率を大幅に上回る陽性率が得られ る。なお、 *の地域は、糞便検査に先立ち血清学的検 査をスクリーニング法として導入Lた地域である。こ の場合、抗体陽性であって、その後の糞便検査を受け ない者が少数あることから、計算によって推定感染率 を求めると、仲里村で9.1%、具志川村で5.8%、佐敷 町で14.( となり、図に示Lた陽性率を若干上回るこ とになる。また、血清学的検査を導入することにより、 糞便検査のみで実施した過去の調査に上ヒベて受検巻数 が大幅に増加することにも注目したい。 以上に述べたごとく、糞便検査による本線虫 症の検査は、比較的困難な面をまだ多く含んで おり、現在の段階で満足すべき検出効果をあげ るためには、かなりの回数くり返し検査するこ とが基本的に重要であると思われる。その原因 は、本症の場合、糞便中に含まれる幼虫の数が 極端に少ないことにある。体長わずか2-3mm のこの徴′」、寄生虫は、 1隻の雌成虫が1日に産 出する虫卵の数が多くても50個程度と見積もら
194 糞線虫症の免疫診断法 れており、例えば姻虫の雌が1隻で1日あたり 百万個近くもの産卵をするのに比べると極めて 少数である。大まかな計算では、仮に数十隻の 本線虫が感染しているとして、この患者の糞便 中に含まれる幼虫の数は19当たりゼロないし 数隻にしかならない。加えて、本線虫の感染様 態は宿主の免疫応答によって大きな影響を受け ていることは明らかであり、強い免疫応答のも とでは成虫の排虫促進、自家感染防御のほか、 産卵抑制、卯字化幼虫が粘膜内での組織反応に捕 捉されるなどの免疫効果が発揮されていると考 えられる。このため、糞便内-の幼虫の排出は しばしば不規則で間欠的であると言われる。 図3には、本症における感染動態と免疫応答の 関係について我々の考えを示した。体内では、 免疫応答の強弱と感染虫体数の増減が裏腹な関 係で周期的にくり返されると考えられる。重症 化はかかる免疫統御のバラソスが崩れることに よって引き起こされる。このような観点から、 軽感染者にあっては検査に供した糞便材料中に 幼虫が含まれていないケースがしばしばあると 考えなければならない。かってJones (1954) は、胆汁の検査で本線虫の感染が確認された患 者100名について糞便検査を実施したところ、 5回以上の検査を実施したにも拘らず、糞便中 に幼虫が確認できたのは、このうちのわずか20 1 2 ) 名であったと報告している 。これはごく初 期の報告であり、当時の糞便検査の精度が現在 よりも大分低いことを考慮しても、糞便検査で はかなりの検出不能な例が存在することを示し ている。現在では、通常の糞便検査で検出され るのは良くても実際の感染者の約6割程度と言 われており、事実、我々が血清学的方法で調査 した場合でも、本線虫に対する高いレベルの抗 体が検出され、感染が強く疑われる者のなかで、 幼虫を糞便内に確認できるのは約50%程度であ る.今後、本症の糞便検査法がいかに鋭敏なも のに改良されようとも、本来、糞便による検査 には常に一定の検出限界が存在することを認識 しておく必要がある。通常、糞便検査の検出限 界を越えるような軽感染者は臨床的に問題にな るものではないが、本症の場合、かかる軽感染 者であっても、ひとたび免疫抑制状態を来たせ ば、突如として重症化するリスクを負っている ことを忘れる訳にはいかない。以上のような糞 便検査の問題点をふまえ、次に本線虫症の血清 学的診断法の現状と意義について紹介する。 図3 宿主免疫応答と感染動態、糞便内幼虫数 との関連 感染成立後、虫体数の増加とともに強い免疫応答が 発現する。この免疫応答は消化管内からの成虫の排虫 促進、自家感染防御、成虫の産卵抑制などのかたちで 強い防御効果を発揮し、その結果、次第に虫体数は減 少する。時にこのまま自然治癒することもあるが、多 くの場合、軽微な不顕性感染として長期間持続する。 軽感染状態が長く続くと、宿主の免疫応答も次第に減 窮する。これにともなって自家感染が増強L、再び多 数感染の状態へ移行する。体内では、このような多数 感染と少数感染の状態が防御免疫と密接に関連したか たちで長期間にわたりくり返される。また、糞便内の 幼虫数も感染状態に応じた増減をくり返すと考えられ る。 in.糞線虫症の免疫診断法 糞線虫症の血清診断の試みは、これまで内外 を問わずあまり実施されていない。その理由と
佐藤 良也 ほか して、本症は宿主の正常な免疫機能のもとでは 一般に非病原性であると考えられていたことや、 充分な量の抗原を確保することが当初から難か しいと考えられたことなどがあげられる。これ までに、表3に示したようないくつかの方法が 本症の血清診断法として試みられている。 表3 糞線虫症の免疫診断法 検 査 法 抗 原 文 献 皮内反応 Skin test 間接蛍光抗体法 Indirect fluoresceint antibody test 酵素抗体法 Enzyme-linked immunosorbent assay S. stercoralis l3, 14, 15 S. ratti 16) S. fuellebomi 17) S. stercoralis 18, 19, 20) S. stercoralis 21 ) i S. ratti 5. stercoralis 22 5. stercoralis 23) i S. ratti S. ratti 24, 25) 間接穎集反応 S. stercoralis 26) Indirect agglutination test 一般に寄生虫病の血清診断を試みるにあたり、 次の2つの条件が不可欠である。そのひとつは、 感染者の大多数において検出可能なレベルの血 清抗体が産生されていること、第2に、検査に 使用し得る特異抗原が充分な量確保出来ること である。本線虫は消化管内寄生のかたちをとっ てはいるが、成虫は粘膜内に深く入りこんで寄 生しており、また、しばしば自家感染を起こし、 幼虫が血行性に体内移行していると考えられる ことから、他の組織、血液寄生性の寄生虫と同 様、宿主に残い免疫応答が惹起されているもの と予想される。他方、寄生虫は、一般に細菌や ウイルスのように試験管やシャーレ内で串養、 維持することができず、多くの場合、実験的に 感染させた動物から虫体を採取する方法 によらなければならない。本線虫はと卜以外にイヌ やネコに感染することが知られているが、イヌやネ コでは本線虫に対する感受性が著しく低く、高いレ 195 27) ベルの感染を維持するのが困難である 。従っ て、いかにして抗原としての虫体を安定的に確 保するかは、本症の血清診断にあたって最初に 解決しておかなければならない深刻な問題であ る。 A)抗原の調製 前述したごとく、本線虫は動物を用いた実験 感染で虫体を集めることが困難であること、た とえある程度の虫体が得られたとして、虫体が 極めて微細であり、これから充分な量の診断抗 原を調製することは困難と考えられる。国外で は、ヒトから得た虫体をステロイド投与で免疫 力を弱めたイヌに感染させ、そこから多数の虫 28 ) 体を集める努力がなされている 。また、糞 線虫には多くの近縁な種頬があり、ヒトの糞線 虫を用いる代りに動物由来の糞線虫種を用いる ことも行なわれている。表3には、ヒト糞線虫 (S. steγcoralis)以外で抗原として使用された 動物由来の糞線虫種を示した。この場合、実験 室内での継代、維持が容易なネズミの糞線虫 (S. ratti)が用いられることが多い.写真1 は、ネズミの糞線虫抗原に対する患者血清の反 応性を免疫プロット法で検討したものである。 患者血清は、ネズミの糞線虫抗原に対していず れも良好な反応性を示すことが分かる。寄生虫 病の血清反応では、このような種問を越えた交 差反応を利用して検査する場合も多い。また、 最近ではごく微量の抗原で実施できる鋭敏な血 清検査法も種々開発されており、これらが本症 の血清診断を現実的なものとした。 一方、沖縄では、比較的重症の本症患者が今で も散見されることから、我々の場合、患者糞便 から直接フィラリア型幼虫を集め、抗原として 29 ) 用いている 。幼虫の大量採取を目的として、 我々は通常のロ紙培養法に準じ、横長の大型の 口紙に型通り糞便を塗布し、これを何枚も重ね て円筒状に巻き上げたものを、水を張った適当 な容器内に立て、 28℃で培養する方法を行なっ ている。同じものを数個分用意することによっ て、患者のほぼ全便を培養することが可能であ る(写真2) 。数日すると、容器内の水中に無
196 糞線虫症の免疫診断法 数の幼虫が泳ぎ出してくるので、これを毎日集 める。この方法によって写真3に示したような 大量の、しかも抗原抽出に適した清浄な幼虫浮 遊液を得ることができる。これをよく洗浄後、 ホモジナイザ-で磨砕し、高速遠心した上清を 抗原とする。必要に応じ、沈査を更に界面活性 剤を加えたPBSで抽出し、その上清を予備の抗 原として保存する。 Case 1 Case 2 * ・ 蝣 ・ノ鱒鴨ト. 琳 ・1-1 2 3 1 2 3 写真1 免疫プロット法による患者抗体の反応性 2名の患者血清のと卜糞線虫 rS.stercoralis; lane 1)およびネズミの糞線虫2種rS.venezuelensis', lane 2, S.ratti: lane3)抗原に対する反応性を比較したも の。患者血清はと卜糞線虫と同様、ネズミの糞線虫抗 原に対しても強い交差反応性を示す。この交差反応を 利用して、ヒトの糞線虫の代わりにネズミの糞線虫を 診断用抗原として用いることができる。 得られた抗原液と患者血清の問で寒天ゲル内 沈降反応を実施すると、写真4に示したごとく、 患者血清との間で明らかな沈降線の形成を認め、 患者血清での特異抗体の存在と抽出抗原での抗 原活性の存在を確認することができる。しかし、 ゲル内沈降反応は比較的多量の抗原を必要とし、 鋭敏性にも欠けることから、本症のルーチソな 血清検査法としては適当な方法でない。このた め、微量の抗原で実施し得る方法を以下に試み た。 B)酵素抗体法(ELISA) 本法は、マイクロプレートのウエル内壁に抗 原を吸着させ、これに患者血清を反応させた後、 反応した抗体を酵素標識二次抗体によって検出 するものである。抗体価を血清の希釈倍数とし て示すのではなく、決められた血清濃度での反 応の強さを酵素反応(発色反応)の強さとして 比較できる(写真5) 。このため、マイクロプ レートを用いる本法では、使用する患者血清、 抗原はごくわずかで済む。 我々の方法では、 1検体当りの抗原量は約3A# である。図4には、この方法で測定した患者の 血清抗体レベルを対照者のそれと比較して示し た。患者群は寒天板培養法のくり返し検査で感 染が確認された住民計107名である。患者群で 明らかに高い抗体レベルが検出される。このよ うな検討では、通常、対照群の平均値+3SDを もって陽性基準とするが、この結果から得られ る陽性基準値はOD値で約0.5であった。これを 基準値とした場合、患者で血清抗体陰性と判定 される著(false-negative)はずかに4.7% (5, 107)である。図5は、沖縄の2地域で1,757名 の住民を対象に実施した血清検査の結果を示し た。上記の陽性基準値でみると、住民の大多数 は基準値以下の陰性と判定され、陽性反応と判 断される者は全体の約20%であった。これらの 陽性反応を呈した者が本線虫の感染を受けてい る可能性が強いと判断されるが、実際どの程度 に本線虫の感染が確認されるかについては後述 する。酵素抗体法は、反応の鋭敏性、特異性に おいて優れた方法であり、本症の血清診断法と して最もよく利用されている。本法は、あらか じめ決めておいた血清濃度で検査を実施するた め、検体ごとに血清希釈系列を準備する必要が ない。従って、一度に多数の検体を検査するよ うな集団検査におけるスクリ一二ソグ法として 非常に便利であると考えられる。他方、本法は
佐藤 良也 はか (EuOOの dO)埋vsn山 A B C 図4 酵素抗体法による糞線虫感染者および対 照者の抗体レベル1り 感染者で明らかに高いレベルの血清抗体が検出される。 破線は沖縄県の非感染者の平均+ 3 SDで求めた陽性 基準値を示す。 A :感染者血清(大里村住民) B :陰性者血清(汁 縄県住民) C :陰性者血清(新潟県住民) 1)抗原のマイクロウエルへの感作、 2)患者 血清の反応、 3)酵素標識抗体の反応、 4)基 質反応といったいくつかの繁雑な実験手順を含 んでおり、検査には最低でも半日を必要とする。 このため、一般の検査室において随時持ち込ま れる個々の患者血清を検査する方法としては、 検査手順の繁雑さの面で問題が残る。我々は、 血清学的診断を一般の検査室でのルーチソな検 査として実施できるよう、さらに簡便な間接凝 集反応による検査法を検討した。 C)間接凝集反応 本法は、ヒツジ赤血球など、適当な担体に抗 ( w u Q O n Q O ) 坦 V S n 山 197 仲里村 具志川村 図5 久米島住民のELISA抗体値の分析10) 合計1,757名の住民血清についてELISA抗体値を測 定し、プロットしたもの。破線は沖縄における陽性反 応基準値を示す。およそ20%が基準値を越える抗体値 を示した。その後の糞便検査はこれら抗体陽性者につ いて実施すればよい。 原を吸着させ、これを患者抗体と反応させて凝 集の有無を見るものである。担体粒子に抗原を 感作するのに多大の時間を要するが、あらかじ め抗原感作粒子を作成しておけば、患者血清と 抗原感作粒子を混ぜるだけの簡単な操作で検査 が実施できる。これに要する時間はわずか数分 で済み、 2-3時間後には結果の判定もできる。 また、本法では、酵素抗体法で使用するような マイクロl)-ダーやプレ-トウォッシャーなど の特別な機材も必要としないなど、通常の病院 検査室で実施するうえで多くの利点を備えてい 30 る。本法は、もともとBoyden(1951) によっ てヒツジ赤血球を担体とした間接赤血球凝集反
198 応として開発されたものであるが、赤血球は長 期間の保存に耐えないことから、様々な人工粒 子を担体粒子として使用することが試みられて いる。我々は、最近、富士レビオ杜が開発した ゼラチソ粒子を担体とした本症の間接凝集反応 26.31) を試みた 。写真6には、ヒツジ赤血球と ゼラチソ粒子を用いた間接凝集反応を比較して 示した。抗原は、前記の酵素抗体法に用いたと 同じものを用い、抗原濃度100f〃/mlとしたも のを等量の3%濃度の担体に感作し、使用した。 ゼラチソ粒子を用いた間接凝集反応は、従来の ヒツジ赤血球間接凝集反応とほぼ同等、もしく はそれ以上の鋭敏性を示す結果が得られた。ま た、得られた凝集抗体価は、前述の酵素抗体法 による抗体レベルとも密接な相関を示した。 (図6) 0 ( z u o 1 ) 皐 堆 媒 琳 将 0.5 1.0 1.5 ELISA値(OD 500nm 図6 ゼラチン粒子凝集反応と酵素抗体法によ る抗体値の関係26) 糞線虫感染者25名について測定した凝集抗体価とE LISA値の間には有意(p<0.0日 の相関が認められる。 図7には、 92名の患者血清と60名の対照老血 清について、本法で測定した凝集抗体価を示し た。血清希釈倍数で64倍を越える抗体価を示す のは患者血清のみであり、対照者ではその82% が8倍以下の凝集抗体価であった。間接凝集反 応は、通常、 8倍以下の血清希釈度では非特異 反応が強くあらわれることから、 16倍以上の抗 体価をもって陽性と判定される場合が多い。仮 にこれを陽性判定基準とすると、患者群におい て抗体陰性(false-negative)と判定されるの はわずか2.2% (2/92)、逆に抗体陽性(false-positive)と判定される対照者は1 /60(1.7%) であった。本法の最大の利点は、前述したごと く、特別な実験機材を必要としない簡便性にあ る。本法で使用するゼラチソ粒子はゼラチソと アラビアゴムで作成した均一な微細粒子であり、 抗原吸着後、適当な安定剤を加えて凍結乾燥し、 長期間保存できること、粒子自体が抗原性に乏 しく、従ってヒツジ赤血球を用いる場合のよう にあらかじめ血清を担体で吸収したり、非働化 するなどの面倒な前処理が必要ないなどの利点 を有している。また、従来の人工粒子は無色で あるが、本粒子は鮮やかな紫色に着色してあり、 凝集パターソの判定が非常に容易である。我々 は、本法のために写真7に示すような検査キッ トを作成し、いくつかの病院検査室で糞線虫症 の血清診断法として試用しつつある。 凝集抗体価(Log2) 図7 糞線虫感染者および対照者におけるゼラ チン粒子凝集抗体価の比較25) 抗体価は2峰性をもって分布し、ピークのひとつは 陰性反応域に、もうひとつは陽性反応域に認められる。 そして、感染者のほとんどが陽性ピークに、対照者は 陰性ピークに含まれるのが分かる。
佐藤 艮也 ほか Ⅳ.血清診断法の応用と意義 本症の血清診断を実施することの最大の目的 は、初めに述べたように、糞便検査による診断 の限界を補うことにある。言うまでもなく、血 清診断は間接診断であり、抗体陽性者がすなわ ち感染者を意味しない。表4には、沖縄の3地 表4 酵素抗体法を応用した糞線虫症集団検査 の結果(1989-1990) lり qltかHI油 nォm丈 FB経た/秩また(X) BttR/捜査K<%) Nl定ran書 仲Inl 191/858 (ll.8) /7] (49.3) 只患JlH寸 14</649 (19.9) 59/93 (53.8) 佐h町 132/1,199(27.7) /268(59.7) lt 577/2.916(19.9) 2121川(51.8) 血清学的スクリーニングの結果、糞便検査が必要と 認められる者は1 13割程度である。これら抗体陽性 者の約8割は糞便検査を受検Lており、そのうち的半 数に実際に本線虫の感染が確認できた。抗体陽性者全 員が糞便検査を受けたと仮定して、計算によって求め られる推定陽性率もかなり高いものである。 なお、この調査では任意に選び出した抗体陰性者41 名中感染が確認された者はなかった。 域で酵素抗体法を実際の集団検診の場にスクリ-ニソグ法として応用した際の結果をまとめて示 した。これらの方法で抗体陽性と判断された者 で、その後の糞便検査で実際に幼虫が確認され たのは51%であった。残りの抗体陽性者は恐ら く糞便検査での検出限界を越えるような軽感染 者、および感染既往者と思われる。ごく少数の 非特異的陽性老(false-positive)も含まれるか も知れない。いずれにしても、血清検査法を本 症の診断に応用することは、感染の疑いのある 老だけを選びだすという点にその目的がある。 このことは、とり分け多数の検体を一度に検査 する必要のある集団検査で有効である。なぜな らば、集団検査における検出率の低さは、往々 にして多数の糞便検体を一度に検査することに 199 由来する検査精度の低下が原因となる。従って、 血清学的スクーニソグで検査対象者を少数に絞 りこむことができれば、その後の糞便検査を精 度の高い徹底したものにすることができる。ま た、近年、わが国では各種寄生虫病の著しい減 少傾向を反映して、かかる集団検診において糞 便検査を受診する対象者は著しく少なくなって きている。この傾向は、今後、益々顕著になる ものと予想される。この点、血清検査であれば、 成人病検診などの目的で集められた多数の住民 血清を用いて検査することができ、続いて抗体 陽性者に対して感染の疑いがある旨連絡するこ とによって高い受検率をあげることもできる (図2) 。これまでに我々が実施してきた調査 では、抗体陽性であることを連絡した住民の8 割以上が実際に糞便検査を受けており、この中 にはかって一度も糞便検査を受けたことがない 者も多数含まれている。集団検診の目的は、こ れによって多数の住民の感染状況を調べ、その 治療等をもって本症の対策に当てるというので あれば、検査対象者のわずか数割程度しか糞便 検査を受検しないという現在の集団検診のシス テムそのものを見直す必要があると考えている。 また、本症の血清学的検査を実施することは、 個々の症例の検査にあっても、次のような効果 が期待できる。沖縄では、これまでに多くの本 症重症化症例の発生をみているが、その中には 不用意な免疫抑制療法を受けたり、悪性疾患の 経過中、本症に対する充分な注意が払われなかっ たために重症化した例も多い。そして、その背 景には多くの場合、糞便検査によって本線虫の 感染が確認できなかったことがある。我々は、 沖縄で本症が重症化するような何らかのリスク を負っている患者では、本症の血清学的な検査 を行なっておくことが基本的に重要であると考 えている。たとえ糞便検査で感染が確認されな い場合であっても、ステロイド療法など、何ら かの免疫低下を来たす恐れのあるケースでは血 清抗体を調べ、もし陽性であれば、本症に対す る注意深い経過観察が必要となってくる。 寄生虫病の血清学的検査は、糞便検査と比べ てどちらが効果的かという観点から評価されが
200 糞線虫症の免疫診断法 ちであるが、これらは並列的に比較されるべき 性格のものでなく、糞便検査の検出限界を補い、 これを効率化するための手段として使われてこ そ有効である。このような立場から、今後沖縄 において実施すべき糞線虫症の集団検査、およ び個々の症例の検査システムについて、我々の 考えを図8にまとめて示した。 以上に述べた検査、診断上の効果に加え、血 清学的検査は本症の病態や治療効果の検討にも 応用される。前にも述べたが、本症は宿主の著 明な免疫低下状態のもとで重症化する。今日ま だ、その免疫学的背景は不明であるが、宿主の 血清抗体を測定することによって、その患者の 重症化のリスクを推測できるかどうか興味ある 問題である。糞便内に多数の幼虫を排出しなが ら、血清中に高レベルの抗体を検出し得ないよ うな患者は、現に重症化しつつあるか、あるい は将来重症化する危険性の大きい患者と考える ことができるか否か、我々はまだ適当な判断材 料を得ていない。これまでのところ、血清抗体 レベルと糞便内幼虫数でみた感染の度合いとの BBM 間には何ら相関が見られないこと 、過剰感 染を来たした症例のなかで血清抗体が検出でき なかった例や逆に高い抗体レベルが維持されて 3 2 -3 4 ) いた例など 、患者の抗体レベルと病態 に関する報告はまちまちである。サルを用いた 感染実験でも血清抗体レベルと重症化の間には 必ずしも関連がみられないことが報告されてい 35) る 。この点について、我々もマウスを用い た実験モデルで研究を進めているが、免疫欠損 マウス(ヌードマウス)に大量の血清抗体を移 入しても、このマウスに何ら有効な防御免疫を 35 賦与できないことを確認している 。 このような高いレベルの血清抗体のもとでも 図8 糞線虫症の診断および集団検査のためのフローチャート 本症が疑われるケースや本症の検査が必要とされる個々のケースは、まず糞便検査を行ない、陰性者にはさら に血清学的検査を実施する。一方、集団検診では、糞便検査に先がけて血清検査を行ない、抗体陽性者にはさら に糞便検査をくり返して実施し、感染の有無を確認する。個々の症例の場合、簡単に実施できる間接凝集反応が、 集団検査では一度に多数の検体を検査できる酵素抗体法が便利である。血清学的検査を実施することによって、 集E]]検査では糞便検査の対象者を感染の恐れのある者だけに絞ることができる。また、個々の症例の検査では、 糞便検査の結果いかんに拘らず、抗体陽性であれば注意深い経過観察の必要性が示唆される。このことは、特に 免疫抑制療法を受けるなど、重症化のリスクを負っている者では、是非ともチェックすべき検査事項である。 (ELISA :酵素抗体法、 GPAT :間接強集反応)
佐藤 良也 ほか 重症化する症例が存在することから、我々は、 本症の重症化にとって宿主の免疫応答が誘起さ れるか否かが直接的な問題でなく、その免疫応 答のもとで虫体に対していかに有効なエフェク ター機構が発動されているかが重要であると考 えている。このことは、同じ免疫不全症のなか でも、沖組のATL患者の間で重症化した本症々 例がしばしば報告されるのに対し、国外ではA IDS患者の間で重症化する例が少ないという指 摘との関連で、今後明らかにすべき興味ある問 題を含んでいる。 最後に、本症は比較的治療が難しく、これま でに種々の治療薬による駆虫が試みられてきた。 沖縄では、より安全で治療効果の高い薬剤の適 用、および駆虫方法の検討が活発に進められて おり、その成果が期待されている。他方、これ までの様々な治療成績をみる限り、ある駆虫薬 剤に対する評価は必ずしも一定していないこと が目につく。一般に治療から後検査までの期間 が短い場合、治療効果は高く、効果判定が後に なるにつれて治癒率は低下する。これは本症に おいてしばしばみられる再発のためである。か かる治療後の効果判定に血清学的検査を応用す ることも試みられている Grove(1982)は、サ イアペソダゾ-ルで治療後6カ月目の血清検査 を行ない、その多くで著明な血清抗体価の低下 37) を報告している 。しかし、その中の約20% に相当する例で、 6カ月後の抗体価が約1/2 に低下するのみであり、これらの例では完全に 治癒したのか、あるいは治療により虫体数が激 減したために生じた一時的な抗体価の下降であっ たのかはまだ明らかではない。我々は現在、治 療1年後の抗体価の比較を行なっており、血清 抗体価の変動をもって駆虫効果の判定に応用し 得るか否かさらに検討を進めている。 Ⅴ.緒 言 沖縄の糞線虫症対策を考えるにあたり、その 基本となる検査法上の問題点について述べた。 糞便検査では、種々の検査法を組み合わせたく り返しの検査を実施することが、目下のところ 201 最良の方法である。しかも、本症の場合、その 結果が陰性であっても、感染の可能性を否定し 得ないと考えることが最も重要である。 かかる問題を解決する手段として、我々は2 つの血清学的検査法を確立した。これらの方法 は、各々の検査特性に応じて、集団検査におけ るスクリ-ニソグ法としてまた、個々の症例の 重症化対策を図る手段として有効であると考え られる。血清学的検査法が、今後、集団検査の スクリーニング法として実際の糞線虫症対策に 応用されるか否かは、これに関わる行政、もし くはその関係者のポリシーに委ねられるとして、 日常の臨床に携わる者にとっても、本線虫に対 する血清抗体を検査することは本症の重症化予 防という立場から、糞便検査以上に大切なこと と思われる。今後、かかる血清学検査法が広く 応用され、本症の効果的な予防対策が図られる ことが期待される。 沖組では今日、汚染された土壌からの本線虫 の新しい感染は殆んどないと考えられ、従って 本症の流行は、あまり時を待たずして次第に終 息するものと考えられる。しかしながら、沖縄 において臨床に携わる者にとって、本症は今し ばらくはup-to-dateな対応が必要な寄生虫病で ある。 本編で紹介した研究は、以下の研究助成を受 けて実施された。 文部省科学研究費:特定研究1 (昭和57-59年 皮) 、一般研究C (昭和59-60、61-62年度、平成 1-2年度) 、総合研究A (昭和61-63年度) ; 厚生科学研究費:医療研究事業(昭和59-61年 皮) ;沖縄県疾病研究財団研究助成(昭和63年 磨) ;大山健康財団研究助成(平成1年度) Ⅵ.参考文献 1)佐藤艮也、真栄城純子、川平稔、鈴木信、 高井昭彦、長谷川英男、安里龍二、池城毅: Micro-ELISAによる糞線虫症集団検診の試 み、寄生虫誌 33 (6) :501-508,1984. 2)佐藤艮也:沖縄における糞線虫症浸淫の実
202 糞線虫症の免疫診断法
態、医学のあゆみ147 (7) :603,1988
3) Sato, Y. and Shiroma, Y.: Concurrent ir止ections with Strongyloides and T℃ell leukemia virus and their possible effect on immune responses of host. Clin. Immunol. Immunopathol. 52: 214-224, 1989.
4) SI心roma, Y., Kiyuna, S. and Sato, Y.: Clinical studies on human strongyloidiasis in Okinawa, Japan. Jpn. J. Parasitol. 39(3): 277-283, 1990.
5) Harris, R.A., Musher, D.M., Fainstein, V., Young, E.J. and Clarridge, J.: Disseminated strongyloidiasis. Diagnosis made by sputum examination. J. Am. Assoc. 244: 65-66, 1980.
6) Panosian, K.J., Marone, P. and Edberg, S.C. : Ek血dation of Strongyloi,滋s stercoralis
by bacterial-colony displacement. J. Clin. Microbiol. 24: 86-88, 1986.
7) Arakaki, T., 1血segawa, H., Asato, R., Ikeshiro T., Kinjo, F., Saito, A. and Iwanaga, M. : A new method to detect Strongylmdes stercoralis from human stool. J. Trop. Med. 16: ll-17, 1988.
8) Grove, D.I. : Strongyloidiasis in Allied exprisoners of war in south-east Asia. Brit. Med. J. 280: 598-601, 1980. 9) Pellelier, L.L. : Chronic strongyloidiasis
in World War II Far East ex-prisoners of war. Am. J. Trop. Med. Hyg. 33:
55-61, 1984.
10) Sato, Y. : Epidemiology of strongyloidiasis in Okinawa, in: Collected Papers on the
Control of Soil-trar迅mitted Helminthiasis.
Vol. m,(Yokogawa. M., Hayashi, S.,
Kobayasr心, N., Kojima, S., Suzuki, N.
& Kunii, C. ed), pp 20-31, The Asian Parasite Control Organization, Tokyo, 1986.
ll) Sato, ,Y., Toma, H., Takara, M. and
Sluroma , Y. : Application of enzyme-linked
immunosort治nt assay for mass
examina-tion of strongyloidiasis in Okinawa, Japan. Int. J. Parasitol. 20(8):
1025-1029, 1991.
12) Jones, C.A. and Abadie, S.H.: Studies in human strongyloidiasis. H. A cDmpans on of the efficiency of diagnosis by examination of feces and duodenal fluid. Am. J. Clin. Pathol. 24: 1154-1158, 1954.
13) DafalLa, A.A., Satti, M.H. and Nur, A.O.: Cutaneous larva migrans in Northern Kordofan, Sudan! a preliminary report. J. Trop. Med. Hyg. 80: 63-67, 1977.
14) Rifaat, M.A. , Salem, S.A. , Abdel-Aar, T.M.and Attia, M.M.: Effect on
temperature on the serological activity of the antigen of Strmgylmdes stercoralis. J. Egyptian Soc. Parasitol. 9: 81-87, 1979.
15) Sato. Y., Otsuru, M., Takara, M. and Shiroma. Y. : Intradermal reactions in strongyloidiasis. Int. J. Parasitol. 16: 87-91, 1988.
16) Tribouley-Duret, J. , Tribouley, J. and Pautrizel, R. ' Interet des tests d allergic cutanee pour le diagnostic de la strongy-loidose. Bull. Soc. Pathol. Exo. 69:360-367, 1976.
17) Brannon, M.J.C. and Faust, E.C.:
Preparation and testing of a specific antigen for diagnosis of human
strongy-loidiasis. Am. J. Trop. Med. 29:
229-239, 1949.
18) Coudert, J. , Ambroise-Thomas, P. , Kien,
T.T. and Pathier, M.A.: Diagnostic
serologique de 1 anguillulose humaine par immunofluorescenoe (resultats preliminair-es). Bull. Soc. Pathol. Exo. 61: 74-80,
1969.
19) Dafalla, A.A. : The indirect fluorescent antibody test for the serodiagnosis of
strongyloidiasis. J.取op. Med. Hyg. 75:
109-111, 1972.
20) Genta, R.M. and Weil, G.J.: Antibodies
to Stれ刑gylotdes stercoralis larval surface antigens in chror止c strorlgyloidiasis. Lab. Invest. 47: 87-90, 1983.
21) Grove, D.I. and Blair, A.J.: Diagnosis of human strongyloidiasis by immunofluo-rescence using Strongyloides ratti and S.
stercorahs larvae. Am. J. Trop. Med. Hyg. 30: 344-349, 1981.
22) Sato, Y.. Takara, M. and Otsuru, M.:
Detection of antibodiCbs in strongyloidiasis by enzyme-linked immunosorbent assay (ELISA). Trar鵜. Roy. Soc. Trop. Med. Hyg. 79: 51-55, 1985.
23) Neva, F.A., Gam, A.A. and Burke, J.'・
Comparison of larval antigens in an enzyme-linked immunosorbent assay for strongyloidiasis in humans. J. Inf. Dis.
144: 427-432, 1981.
24) Tribouley-Duret, J. , Tribouley, J.( Appriou, M. and Megraud, R.N.: Application de test E. L.I.S. A. au diagnostic de la strongyloidose. Ann. Parasitol. Hum. Comp. 53: 641-648, 1978. 25) Carroll, S.M., Karthigasu, K.T. and
Grove, D.I.: Serodiagnosis of human strongyloidiasis by an enzyme-linked immunosorbent assay. Trar鳩. Roy. Soc.
Trop. Med. Hyg. 75: 706-709, 1981. 26) Sato, Y. and Ryumon, I.: Gelatin
particle indirect agglutination test for serodiagnosis of human strongyloidiasis. Jpn. J. Parasitol. 39: 213-219, 1990. 27) Sandground, J.H.: Some studies on
susceptibility, resistance, and acquired immunity to infection with Strongyloides stercoralis (Nematoda) in dogs and cats. Am. J. Epidemiol. 8: 507-538, 1928. 28) Grove, D.I., H既nan, P.J. and Northern,
C. : Persistent and disseminated ir止ections
203
with Strongyloi(おs stercoralis in immunosup-pressed dogs. Int. J. Parasitol. 13:483-490, 1983.
29)佐藤良也、高井昭彦、真栄城純子、大鶴正 満、城間祥行:糞線虫症診断用抗原の調製 と酵素抗体法による免疫診断の試み、琉大 医学会誌 6 : 35-49, 1983.
30) Boyden, S.V. : ′The adsorption of proteins on eryttTocytes treated with tannic acid and subsequent hemagglutination by antiprotein sera. J. Exp. Med. 93:
107-120, 1951.
31) Sato, Y., Toma, H., Kiyuna, S. and Shiroma, Y.: Application of gelatin
particle indirect agglutination test for mass examination of strongyloidiasis.
Trans. Roy. Soc. Trop. Med. Hyg.
85(4): 515-518, 1991.
32) Genta, R.M., Douce, R.W. and Walzer, P.D. : Diagnostic implications of parasite-specific immune responses in immunocomp-romised patients with strongyloidiasis. J. Clin. Microbiol. 23: 1099-1103, 1986. 33) Badaro, F., Carvalho, E.M., Santos,
R.B., Gam, A.A. and Genta, R.M.: Parasite-sp∝止ic humoral immune rCspor退eS in different clinical forms of
strongyloidi-asis. Ttans. Roy. Soc. Top. Med. Hyg.
81: 149-150, 1987.
34) Sato, Y., Inoue, F., Matsuyama, R.
and Shiroma, Y. : Immunoblot analysis of antibodies in human strongyloidiasis. Trans. Roy. Soc. Trop. Med. Hyg. 84: 403-406, 1990.
35) Genta, R.M., Schad, G.A. and Hellman,
M.E. : Strm鑑γ/oides stercorahs- parasitologi-cal, immunological and pathological observations in immunosuppressed dogs. Trar旭. Roy. Soc. ′什op. Med. Hyg. 80: 34-41, 1986.
36) Sato, Y. and Toma, H.: Effects of spleen cells and serum on transfer of
204 糞線虫症の免疫診断法
immunity to Strongyloides venezuelensis inf∝tion in hypothymic (nude) mice. Int.
J. Parasitol. 20: 63-67, 1990.
37) Grove, D.I. : Treatment of strongyloidiasis with thiabendazole: an analysis of toxicity and effectiveness. Trans. Roy. Soc. Trop. Med. Hyg. 76: 114-118, 1982.
写真2 糞便の大量培養法 写真3 糞線虫幼虫浮遊液 大量培養された糞便から集めた7イラリ7型幼虫。こ の幼虫を磨砕して抗原抽出を行う。 写真4 患者血清と抽出抗原を用いたゲル内沈 降反応 周囲のウエルには3倍に濃縮した患者血清(Nq1 -4) と対照血清(C)を、また、中央のウエルには抽出抗 原を入れてある。患者血清との間でのみ沈降緑(抗原 抗体複合体)の形成が認められる。本法は抗原抗体反 応の存在を直接確かめられる簡便な方法であるが、使 用する抗原量がかなり多く、また、被検血清を濃縮す る必要があるなど、鋭敏性に欠ける面があり、本症の 診断法には向かない。 写真5 酵素抗体法(ELISA) マイクロプレートを用いたmicro-ELISA法。それぞれ のり工ルには50倍に希釈した血清検体を入れ、反応さ せる。抗原抗体反応量に応じて桂色の発色反応を呈す るので、その発色の程度を吸光度(OD)として測定 し、その値から陽性判定を行なう。沖縄県住民血清の 間で多数の陽性反応を認めるが、本症の非流行地であ る新潟県住民血清では陽性反応を呈するものはない。 写真6 間接凝集反応 ゼラチン粒子(GP)とヒツジ赤血球(SRBC)を姐体 とした凝集反応パターンを比較して示した。担体がり 工ルの底に点状に沈澱するのは凝集陰性パターン、底 面全体に膜状に沈澱するのが陽性パターンである.血 清の希釈倍数が上がるにつれて陽性パターンから陰性 パターンに転L:るのが分かる。陽性反応を示す最大希 釈倍数をもって凝集抗体価とする。患者血清(Na1 -9)はl例を除いていずれも憩い陽性反応を示すが、 対照血清(Ifal0-12)では陽性パターンを認めない。 血清の希釈系列の1列目(1 : 8)には抗原を感作し ていない担体粒子(Tc)のみを入れ、コントロール としてある. 写真7 ゼラチン粒子凝集反応検査キt・/ト キ・./ト内容として、凍結竜醸した抗原感作粒子①、未 感作コントロール粒子②、粒子溶解液@、血清希釈液 ④をセットとしてあり、これにリジ・ソトタイプのマイ クロプレート(9 (これは小数の検体を検査するのに都 合が良いように2列分離型のモジュールタイプを使用 する) 、ドロッパー⑥を添えてある。他に、血清希釈 用ループ⑦が必要であるがこれは通常の検査室であれ ば常備されているものである.本法は、最低限これだ けのものがあれば実施できる。
佐藤 艮也 ほか ` ∴ 上空:,:・, e I, ,′.き '蝣サ,争 -*7.cli ヽ t L が I ♂ L ・蝣*蝣 蝣 r : : ・ - ・-*・ こ蝣-'"-l 蝣-<:サ' 将cp、`け'夢 ・・ ・r ;一 ㌦LA を甘さ(耳・''-rI-_ 、 ∴ _ . トT 205