文
論
顧客サービスの外部委託問題をめぐって
∼テレマーケティングの一機能として∼
はじめに この論文は1993年10月3日(日)午前9時∼午後1時から米国テネシー州ナッシュビル のオプリランドホテルで行われたSociety of Consumer A伽rs Profbssionals in Business (S O C AP)第20回年次大会に先立って行われた『Outsourci血gFon】m』の論議を中心に してまとめたものである。 「サービス労働者の生産性向上のための必要条件ととして、多くの場合サ ービス労働そのものが「外部委託」されるようになる。」とピーター・ドラ ッカーは「ポスト資本主義社会」のなかで指摘している。(同書169頁一172 頁)つまり、サービス労働が独立した専門会社に「外部委託」され、委託さ れた専門会社は競争の原理によりサービス労働の生産性の向上によって利益 を上げていく。したがって企業はその本業に焦点を合わせた成果に直接結び つく仕事のみに集中し、収入を得ていく姿になり、その他の業務はすべて 「外部委託」するようになっていくというのである。 我が国でも警備業務、受付業務、さらにはデータ処理などの分野でアウト ソーシングが採用され始めている。さらに、顧客サービスの分野にも電話対 応業務をテレマーケティング・エージェンシーに委託して、成果を上げてい る例も見られるようになった。 アウトソーシングが注目されたのはバブル崩壊後の企業のリストラの一環 としてこれまで企業の本体でやっていた業務を子会社を作って下請けに出す という考え方、また関係の無い企業に仕事を出す、とくに人件費を中心とし た経費削減が目的であった。 アウトソーシングとはその企業本来の業務以外を社外の専門集団に委託す る関係で、その立場は受託企業とはパートナーとしての対等な関係である。 我が国の企業に見られる自動車メーカーと下請企業、さらに孫請け企業とい うように縦の系列化、しかも排他的な主従関係といった考え方ではアウトソ ーシングは成立しない。
Outsourcingの定義 まずOutsourcingという概念は伝統的にすべて業務は自社の内部で処理し、 外部の組織やコンサルタントなどを活用することになれていないわが国の企 業風土ではこれまで余り馴染みのない考え方であり一般化されていない。ア メリカにおいてもかなり限定された範囲での使用がされていたようである。 まずそのコトバの意味から考えてみよう。このコトバは通常の英和辞典には 載っていないまだ日本語にはまだなっていない言葉である。これは文字通り outという言葉とsourceという言葉の組み合わせから成り立っている。すな わち組織の外側と供給源という言葉の組み合わせなのである。 Websterの12000words辞典の1986年版によると: The proc皿ement by a co叩oration f士om outside especially fbreign or non− mionsuppliersofpartitfbrmaUymanu魚ctured.(会社が外部、特に外国あ るいは非組合員の供給業者から以前に製造されていた部品を調達すること) と説明されている。また:LongmanのDictionaly ofthe English Language辞 典は次のように説明している。 Toobtaincomponentsffomoutsideespeciallyfbreignsuppliers(部品を外部、 特に外国の供給業者から手に入れること)とされている。 アウトソーシングに関しての学問的な定義はあまり見あたらないが「ある まとまりを持つ主要な契約の遂行に部分的に貢献する契約」1(西口、1996) と定義されている。 現在広くビジネスの世界で使われているアウトソーシングの意味はドラッ カーの論文のように「企業本来の業務以外の業務を外部の専門集団(企業)
に委託していくこと」なのである。SOCAPのOutsourc血gFo㎜の場で
取り上げられたOutsourcingの意味はこの辞書的説明をもっと拡大して「企 業の顧客相談センター活動の外部委託」の問題であり、その導入の是非を中 1「共生進化の組織間マネジメント」西口敏宏、『アウトソーシングの実践と組織進化』 ダイヤモンド・ハーバードビジネス編集部編・ダイヤモンド社p.157心に広く委託側と受託側のそれぞれの側から問題点を話し合うという内容で あった。 顧客サービス業務の外部委託の始まり 企業の受付業務を始め、また家電各社の修理サービス、さらには配送業務 などすでに広く外部委託が行われている顧客サービス関連業務が存在する。 しかしこの論文で取り上げる問題は主としてテレマーケティングの分野の課 題に限定して行われる顧客サービス業務の外部委託問題に焦点を絞って論じ ていきたい。 テレマーケティングの分野において企業の顧客サービス活動を外部の業者 に委託するアウトソーシングは日本でも今日大手テレマーケティング会社に なった㈱ベルシステム24が1980年代半ばから外部委託を受け入れ難いわが国 の市場でテレマーケティングの分野で先駆者的な役割を果たしながらその導 入・拡大の努力をしてきた。 コンビニエンスストアの24時間営業に伴って業務用冷蔵庫を入れているメ ーカーのサービスマンは当初毎晩二人宿直していた。一人が修理に出ている 間、もう一人は電話番をしていた。電話番なら専門技術者でなくとも勤まる。 その電話の受けの業務を24時間業務をするところから社名に24を付けた同社 が手がけたのだ。メーカーは限られた数のサービスマンを有効に使えた上に かなりの経費を節約できた。さらに同社は損害保険各社を一括して時間外・ 深夜の事故受付を業務とした。 いま顧客サービスのかなり広い分野で多くの企業がテレマーケティング・ エージェンシーに業務を委託しているケースが増えている。白鶴大学消費者 対応論ゼミナールの企業の消費者窓口の対応に関する調査でも17.1%の企業 が代行業者と何らかの関係を持っている。 もし顧客との接触という意味で受注業務まで入れると企業の営業時間外の 業務のほとんどがテレマーケティング・エージェンシーの手に委ねられてい るといってもいいだろう。またこれらのエージェンシーから人材派遣という
形でそれぞれの企業のコールセンターに出している例がかなりある。したが って、テレマーケティング・エージェンーの中には人材派遣業の認可をとっ ている会社も多く、エージェンシーにとってはかなりの収入源になってい る。 顧客サービス分野でのテレマーケティング・エージェンシーへの外部委託 は今後ますます増えていくことが予想される。 外部委託問題がクローズアップされてきた背景 まず、米国においてこの問題が注目され始めた背景についてどのように考 えられてきたのだろうか。このフォーラムでは次のような見解が示された。 ここ数年問の世界中の大企業において劇的な変動は少なからず起こってい る。吸収合併、整理統合、株式取得、完全な解体が多く行われている。ある いはこれまで規制が厳しかった業界(トラック業界、航空業界、ガス・電 力・水道業界など)が規制緩和に伴って競争が激しくなりその結果としてか つて消費者主導企業として突然現れた多くの企業が消滅したというケース (ピープル・エキスプレス社やレーカー航空などの例)が見られる。 70年代あるいは80年代は機会と度を超した消費の時代であった。しかし90 年代になると切り詰め(節減〉の時代となった。つまりこれらの変化への適 合の時なのである。今や騒ぎは収まり、企業の経営者はこの変化の影響の深 刻さをようやく身に沁みて感じ始めた。 これらの企業の新しい実体をより生産的にかつ利益向上にいかに結び付け るか関心が集中している。規模の経済は例えばすべての給与計算や会計業務 を一本化するといったように類似の機能を統合することによって達成するこ とができる。しかしこれらの段階では不十分であり更に統合が起こることが 予想される。あるケースではこれはより劇的段階の前兆 ダウンサイジ ング(90年代の言葉で言えば『ライトサイジング(適正化〉』)になるだろう。 (今どの講師も口を開けば『ライトサイジング』、この言葉が流行語になって いた。)
何がアメリカの企業に起ってきたかを容認するとか大目に見るとか批評す るとかという論議の対象ではないがおそらくこれから先もこの問題で多くの 論争が起こることは疑いの余地はない。そしてこの問題の焦点はこの変革が どのように消費者問題の専門家に影響を与えるかの問題である。 『ライトサイジング』が消費者部門に及ぼす影響 企業の消費者関連の担当者として業務の中でこれらの転換から無関係であ りたいと願っているが現実はこれらによって多大の影響を受けざるを得ない のが実情である。会社はいかにしてコストをコントロールし一般経費を圧縮 する方法を血眼になって探しているのである。言い換えれば会社の関心はい かに減らした費用でサービス(たとえば消費者への対応業務)提供すること ができるかということなのである。 もし消費者応対業務を管理しているとしたら、人件費、設備、スペースな どのコストの引き下げが大きく関連してくれるだろう。損益勘定を改善する にあたって、もしこれらのコストをなくすことができたら、大変刺激的なこ とであろう。そこで費用削減の方法を展開する新しいアプローチとして消費 者対応努力の全部あるいは一部を「外部に仕事を下請けに出す」とか「外部 委託」が注目されている。それは「サービス労働者の生産性向上のための必 要条件ととして、多くの場合サービス労働そのものが「外部委託」されるよ うになる。」とピーター・ドラッカーは「ポスト資本主義社会」のなかで指 摘されている必然なのかもしれない。 確かに外部委託の方法は会社のコスト削減に容易で相対的に痛みの少ない やり方ではあるが、消費者問題専門家としての責任として、サービスの高い レベルと顧客満足を保証するためのあらゆる選択肢を分析しなければならな い。 『外部依託』に関する基本的認識 この問題を考えるに当たってひとつの点を明確にしておかなければならな
い。それは『外部依託』が消費者部門のライトサイジング(適正化)に貢献 するための万能薬でないということである。事実もし外部依託によるサービ スが適切に開発されなかったり管理されなかったら、サービスのレベルの低 下を招く大変なリスクをもたらすことになる。時には消費者の企業に対する ロイヤリティをぶち壊してしまうことになる。 優先順位を単に外部依託サービスに与えるばかりでなく、どの種類のサー ビスで可能なのか、扱わせるべきかを次の項目を考慮に入れて考えるべきで ある。 前向きにものを考える消費者部門責任者ならば徹底的に『外部依託』につ いてのメリットとディメリットを調べ分析しなければならない。そしてこれ に対する疑問が社内などで生じたら回答できるように準備しておかなければ ならない。 『外部依託』のメリット 1.消費者からの電話を部分的あるいは全部取り扱わせるのは効果的なやり 方である。 2.外部依託することによって社員の数の削減とそれに関連する費用(社会 保険などの費用や設備などのコスト)を減らすことができる。 3.消費者部門担当者がコンピューターのソフトの変更についての知識を持 つことはもはや必要としなくなる。さらにC I S(コーポレート・インフ ォーメーション・システム)担当者が消費者関連業務への支援活動を行う ことがいらなくなる。 4.消費者部門担当者が料金受信人払いのテクノロジーやA C D、あるいは てれコミュニケーション事情の変化を追いかける必要がなくなる。 5.消費者問題責任者はサービスレベルと回答時聞の基準を設定することが できる。そして、このレベルに沿って信頼性を維持することによって外部 依託サービスの質を保持することができる。 6.消費者問題責任者は通話量の変動がある場合や、プロモーション活動、
特定のフィルフルメント・プロジェクトを取り扱う時に外部依託業務提供 業者の能力をうまく利用することができる。 『外部依託』のディメリット 1.外部依託サービスはすべてのタイプの通話に対応することができない恐 れがある。したがって、複雑なあるいは深刻な消費者問題に対応するため に会社においてバックアップする必要がある。 2.最初のうちは、コストの節約は魅力的であるに違いないが、コストはや がて本社の消費者部門の予算の限度をあっという間に上回る可能性があ る。(すべてのオプションを考慮に入れる必要がある。例えば、社内の要 員をすべてパートタイマーに変えることによって社会保険などの間接人件 費を減らすことができることなどを考慮に入れる。) 会社と委託業者との契約はすべてのコストが含まれていることを確認して 十分な注意を払って検討審査しなければならない。管理費用、それにくわ えて料金受信人払いのコストは慎重に審査し分析し監視しなければならな い。 3.研修問題 ①消費者への対応の正確性を確保するために誰が(多分企業の人問)外 部依託サービス訓練を実行し研修を行うのか明確になっていない。(こ のことは付随する社内コストは外部依託業者にかかるコストと同様に全 体の費用の一部として考慮に入れる必要がある。)外部依託サービス企 業での人事移動は業務実行のレベルの変動と同様に研修の過程およびス ケジュールに大きな影響を及ぼす。 ②外部依託業者の担当者にいかにして会社の文化(社風)を滲み込ませ るかという問題である。これは外部依託業者が専属で一社に限られてい る場合には適用できることであるが、もしその外部委託業者が複数の企 業の業務を取り扱っているとするならばそれは不可能に近い。実際の担 当者の企業に対するロイヤリティは所属するエージェントに対するもの
かそれとも委託する企業に対するものかその点が不明確である。 ③社内的には、多くの企業においては消費者対応を経営研修カリキュラ ムのプログラムの一環として位置付けている。この消費者対応業務を外 部依託にすることによってこの研修が自由選択なものになってしまう。 つまり『キャリヤー・パス(昇進をする為に通らなけならない過程)』 でなくなれば企業内の消費者関連問題担当者のやる気や動機に大きな影 響が出てくる。 ④多くの場合、社内の消費者問題担当者は電話を受けてた時に『行問を 読む』ことができる。そして、切迫した危機に関する問題や市場調査情 報として役に立つ付随的な情報を聞き出す術を知っている。外部依託業 者の従業員がしっかり書かれたスクリトをはずした研修を受けさせるこ とができるだろうか。行間を読む訓練を行うことができるだろうか。そ れを行なううな気配りができるだろうか。 ⑤政策の突然の変更や緊急な状況が発生した場合外部依託業者の担当者 にどのようにしたらコミュニケーションを図ることができるだろうか。 その他の考慮点 1.企業秘密や知的所有権などに関する情報の問題:委託していた外部依託 業者が競争相手に同じような顧客対応サービスを行っている時はどうなる のだろうか。 2.もし会社に直接アクセスできないなら企業が標榜している『顧客に接近 している』ことをどのように裏付けするのか。 3.社内の消費者担当者の場合「市場調査」情報の検索に関する費用は特に かからないで組み込まれるが外部依託の場合「市場調査」情報の検索に関 する付加的コストはどうなるのか。 4.顧客が会社の代表(担当者〉と話しているのではないことを知った時あ なたの会社に対してどのようなタイプの印象を持つだろうか。 5.外部依託業者に対してどのように基準を設定し、効果的なクオリティ・
コントロールを維持することができるだろうか。 6 もし外部依託を遂行するように決めたならば、外部依託を全面的に行う のかそれとも部分的に行うのか。もし部分的ならばどのような機能を任せ たら、成功するだろうか。 7 これが唯一の選択肢だろうか。消費者問題のアントレプレナーになるこ とを考えたことはないだろうか。企業はダウンサイジングを図っているが 多くのサービスや活動はビジネスを支援する為に続けなければならない。 誰があなたより消費者問題をうまく扱うことができるだろうか。 外部委託に当たっての重要な視点 もっと重要な点をあげれば、外部依託の決断を下すに当たって外部依託業 者が果たす消費者問題専門家としての役割は何かを考慮する必要があるとい う問題である。企業のマネージャーとしてあらゆる選択肢のなかから選ぶこ とが大切である。 現実は企業の消費者関連部門の管理職は企業を運営していて、オペレーシ ョンを効果的に扱う専門家として、自社の顧客に対して高いクオリティのサ ポートと援助を提供し、消費者の商品およびサービスに関する傾向、認識、 関心についての情報を会社に提供する責任をもっている。 消費者関連部門の管理職としての役割は消費者の声を企業に反映させ、引 き続きこの努力を支援することにある。ひとたび報酬を払ってこれらのサー ビスの提供を外部依託業者に任せれば専門的な消費者対応の責任の重荷を会 社から取り去ってしまうことになる。 そうなると、会社はいまや消費者情報とフィードバックをあたかもほかの ビルの清掃やメインテナンスのような通常の契約サービスと同じように認識 するようになるだろう。つまり会社が顧客の問題に真剣にコミットメントを しなくなるだろう。顧客主導企業で欠くことの出来ない顧客との接触を失う ことにもなり兼ねない。その点を十分考えるべきである。
フォードモーター社のケース ノース・アメリカ・オートモビルオペレーション マーケティング&セールスオペレーション フオード 部 門 リンカン/マーキュリ 部 門 フオード顧客 サービス部門 カナダ フオード オーナー・リレーションズ部 C A C 特連 定絡渉外 分析& アミド(管理〉 オーナーとの対話部門 フォード社の国内販売での場合顧客サービス部門の位置付けは次のとおり である。 オーナー・リレーションズ・オペレーション部門のなかで外部依託の対象 になり得る部門は次のとおりである。 CustomerAssist㎜ceCen㊥r Owner Dialogue Center Consumer Af晦rs Mediatio煎Litigation ReacquiredVehicles AdministratiorゾAnalysis…systems supPort!programming
フォード社は米国の企業では極めて早い時期、つまり1960年代末に電話を 活用した消費者対応システムを家電メーカーのワールプール社に次いで採用 しクライスラーの対応と対照的なアプローチをした。すなわちクライスラー 社は広報担当副社長クラス(ByronNicholas)を『デトロイトの人』と名付 けて、消費者からの苦情を手紙で寄せるようなキャンペーンを60年代後半に 展開したが対応がうまく行かずかえって不評を買った。2(佐藤、1995)そ れに対してフォード社は『Welistenbetter』という電話によるキャンペーン を行った。フォード社はこれらの部門においてすべて外部依託を行っている ものでなく部分的に行っている。 まずCustomerAssistanceCenterでは外部依託を行っていない。このセン ターは全国一か所に集中して処理されている。ここのオペレーションは1990 年3月から始められたが、マネージメントはすべてフォード社の責任で運営 されている。ここには250人の社員が働いている。社員の中から雇用された り、リクルート活動が行われていて、外部依託は行われていない。 こうしたセンターでの処理を社内で行っているメリットについてOwner RelationsManagerのJeryM.F五ckは次のように説明している。 まず自社の従業員が直接体験によって、『顧客の声』の経験をさせること ができるメリットを挙げている。とくにマーケティングやセールス担当者、 さらにエンジニアや製品開発の担当者にメリットが生まれる。第二に人材開 発の利点が挙げられる。つまり直接お客と対応する顧客サービス担当者、さ らにこれを管理するスーパーバイザー、また顧客の声のフィードバックを受 ける人達の資質の向上に役立つ。三番目に社内顧客に対するサービスを助長 する点が考えられる。。直接お客に接することのないエンジニアリングや生 産、製品開発、設計、また現場の組織や販売店にも影響が出て来る。四番目 に雇用やリクルート活動の面でのメリットが考えられる。 一方、オーナー・ダイヤローグ・オペレーションでは外部依託が進んでい 2佐藤知恭『「顧客満足」を超えるマーケティング』日本経済新聞,1995.p.146
る。というのはこの組織はすでに自動車を購入した顧客を対象にアウトバウ ンドで電話をかける作業だからである。電話をかけることによって顧客のロ イヤリティを高める業務である。ここではマネージメントはフォード社で行 っているがスタッフはエージェントに依存しており、ここには180人が派遣 されている。ここの業務は臨時の業務と継続的な業務が混在している。 その他の消費者関連部門、例えば全国に22か所に存在する紛争仲裁組織で はこの性格が第三者調停機関であるので外部依託になっており、また法務関 係の組織も同様である。事業団体や企業の紛争仲裁組織は通常コンシューマ ーアクション・パネル(Consumer Action Pane1)と呼ばれているがフォー ド社では「フォード・コンシューマー・アピール・ボード(Ford Consumer Appeal Board)」と呼んで各地に存在している。これははどのような仕組み になっているのであろうか。ワシントンD.C.地区の例で説明してみよう。 このボードの構成メンバーは消費者行政担当者、2名(カウンティ[郡]の 消費者問題局〔OfEce ofConsumer A伽irs〕の責任者〉、フォード社のディ ラーの社長、2名、アメリカ自動車協会(AAA〉 日本のJ A Fに相当 する一から1名、合計5名で構成で問題を審議する。もしサービス関係の 問題でユーザーがクルマのディラーと話し合って解決しない場合には、その 顧客は料金受信人払い電話で「フォード・コンシューマー・アピール・ボー ド(Ford ConsumerAppeal Board)」へ電話することが出来る。するとフォ ード社の担当者が解決に努力してくれる。しかしそれでも解決しなかった場 合には、この「5人委員会」によって、個々のケースについて、公正、かつ 公平な判断が示されるのである。この決定はフォード社ならびにディラーを 拘束するものではあるが、アピールした顧客を拘束するものではない。3 (佐藤、1986) 再取得車両の取扱部門でも現場のフィールドワークなどは外部依託を取っ ている。さらにアドミニステレーション(管理部門)/分析部門でも社内/ 3佐藤知恭『体系:消費者対応企業戦略』八千代出版社,1986.p.142∼143
社外のシステムサポートにはプログラマーを外部依託している。 すべてあるいは部分的に外部依託している部門でのメリットでは固定費の 管理の面から『適正化』を評価することができる。また状況に応じてスタッ フの数の調整ができるし、とくに特別なプロジェクトやプログラムを実施す る場合には外部依託がフレキシブルに運営できるメリットがあり、さらにコ ストの面でのメリットが生まれる。 クラフト・ゼネラル・フーズ社(K G F) K G Fは大手テレマーケティング会社のアメリカン・トランステック (ATI=American Transtech)社に外部依託をしている。KGFは購入者の データベースの管理や消費者対応の基準の開発とモニターを受け持ってい る。A T Iは料金受信人払い電話と郵便による消費者対応を担当している。 また対応システムや対応データベースあるいは消費者のデータベースをAT Iが取り扱っている。 つまり、K G Fでは日常的なルーティンなものはA T Iに委託している。 例えばAT Iの役割として、特別なコール、郵便での対応、フィルフルメン ト、顧客サービスの研修、人事採用、システム開発、日常的な週間あるいは 月問の報告といった業務を担当する。一方、K G Fのビジネス・ユニットは 複雑な電話の処理、製品情報の提供、AT Iおよびビジネス・ユニットのス タッフに対する製品についての研修、その場に応じた分析の設計、消費者デ ータの使用、特別な状況の支援などが挙げられている。この責任の分担分野 ははっきりしており両者の関係はパートナーシップに支えられていることが 強調されている。 ナショナル・カー・レンタル社 1992年は今迄にないほど消費者問題専門家にチャレンジと異なった機会を 与えた年であった。運輸業界は、過激な航空運賃戦争の成り行きとして登録 された顧客のボリュームと連動しだ’ライトサイジングー適切なサイズ”測
定の成果に直面した。 ナショナル・カー・レンタル社の消費者問題部門も例外ではなかった。同 部門はお客様からの如何なる問題や質問に24時間緊急ロードサービスを含め た”ワン・ストッフ。”サービスの態度で接している。1992年春には今迄にな かった位の顧客ボリュームになった。業務の一番のプライオリティは、故障 車のお客に対して迅速で信頼性のあるサービスを提供することである。これ をよりうまく稼働させるために、ナショナル・カー・レンタル社は米国とカ ナダにおいてロードサイドに詳しい外部業者にエマジェンシー・ロード・サ ービス(E R S)一緊急ロードサービスーをアウトソーシングすることにし た。この迅速な判断を実行するのには最小限度の努力しか要せず、即座に結 果が出た。ロードサービス機能をアウトソーシングすることにより下記のよ うな利点があった。 ・ 車に問題があるお客に迅速で頼れるサービスを確実に提供できる。 ・ 効率が高まる。緊急ロードサービス(E R S)業務に関しては他の如何 なるお客からの問い合わせよりも、』平均的に長く対応する。 これらの電話を新ルートで権限を与えた外部業者から本社のスタッフに対 応させると、1社員1人あたりの処理件数が上がる。つまりそのほとんどの 問合わせの処理を外部委託業者に任せることによってナショナル・カー・レ ンタル社のE R S業務担当の社員の生産性が向上するのだ。 これらの利点は依頼主の顧客満足のレベルを保つキーとなるものである。 外部委託した場合、測定方法において電話の話の内容のタイプとその理由 は自社でやっていた時に比べて詳細ではない。プログラムを導入して2∼3 ケ月経過しないとこの問題が証明されない。車両及び修理部門においてはこ れらのレポートを来年以降のそれぞれの車両サービスヘの要求や車両収容設 備計画立案に役立てている。 このプログラムにかかる実際のコストは高くついた。これらの高いコスト は不都合を迅速に解消する意味でアゥトソーシングであり、問題を無期限で 解決するという性質のものではない。アゥトソーシングをすることによって
依頼主に他の選択肢を調査する時間や、最良の長期的な決定を下すように訓 練を施す時間を生み出すことが可能になった。それにともない、可能な限り のクォリティの高いサービスをお客に提供する機会を増やすことになったの である。 外部委託業者からのレポートは、依頼主(本社)にいろいろなアドバイス を含んだ価格設定分析に関する必要な情報を与えてくれる。これはナショナ ル・カー・レンタル社の経営陣が需要に見合うスタッフの増員と共に緊急ロ ードサービス業務を仮に社内で行った場合のメリット・ディメリットを明確 に把握することが出来るのである。 レンタルの需要の高い期問において全体的な満足度レベルの維持を保証す るためにナショナル・カー・レンタル社は、アウトソーシングをいち早く導 入し活用することに成功した。これに加え、長期的な解決方法の開発時のす べてのオプション利用が可能になるように、このプロセスを注意深く検討す ることができた。短期的には、アウトソーシングは顧客満足を保持するのに 有益な道具として証明され、長期的には、価格の面で効果的で顧客主導型体 制においての分析と思考ができることが明らかになった。 ナショナル・カー・レンタル社の緊急ロードサービス及びエメラルドクラ ブ(愛用者)メンバーサービスの消費者問題マネージャーであるメリー・マ ックエロイ・マルヴァインによると彼女が統括する部署はクォリティの高い サービス、24時間ロードサイドサービス、頻度の高い利用者プログラムのメ ンバーのためのフリーダイヤルを行っている。 クエーカー・オーツ社 アウトソーシング・サービス・代行業者からの実用的なサービスサポート は、企業の顧客機能に新しい方向性を与えるものである。大半の部署では、 通常の業務内容から予め計画された電話本数の入呼量が管理されている。し かし再コールやその他の色々な公表された製品等の危機は入電ピークには大 変高い入呼量になり社内で管理をするのが難しくなる。アウトソーシングサ
一ビスの利用は、現在進行中のビジネスのサービスのレベルを高く保つこと や危機を効果的に管理するクエーカ・オーツ・カンパニーの顧客対応グルー プに付加価値の材料を提供するものだ。 クライアントの二一ズに一番見合う代行業者の選択が必須である。そこで クライアントの責任は業者の選択から始まる。下記のコメントは、クエー カ・オーツ・カンパニーの経験から得たもので、特定な危機に直面した状況 においてサービス代行業者から責任あるサポートを保持するための鍵となる 企業クライアントの役割について検討する際に役に立つものである。 ・ 必要になる前に代行業者を査定し選択する。選択は要求されるサービ スのタイプ、代行業者の経験の豊富さ、サポートの可能さで実施し、参 考資料を請求し、サービスクォリティーに関し他のクライアントに照合 してみる。 危機に陥る前にアクションプランを作り、サポートサービスが使用で きるようにシナリオを作成する(即ち、生身のオペレーターのための受 動的又は非受動的な選択、献身的または非献身的のオペレーター) 危機の本質、予測するタイミング、特別なサポートの必要の有無、入 電量の見込み等の詳細を展開する。 ・ 受動的にならざる得ない時のQ&Aや代行業者のオペレーターのスク リプトに手を入れ、プレスリリースの情報と合わせて直接関係のある事 実をも取り入れる。簡潔でお客様が使っている言葉を使い鍵となる事実 を強調する。 直面している問題で電話を取るオペレーターが利用するプログラムス クリプトをサービスビューローと一緒に作成する。 ・ 代行業者のトレーナー/スーパーバイザーが準備のために利用した り、電話を取り扱うオペレータースタッフを管理したりモニターするた めに役立つ簡潔で的を射たバックグランド情報を作成する。 ・ オフィスにフィードバックしなければいけない入電の性質の詳細や、 取り扱い時間中あるいはその後にどこでいかに企業のレップが捕まえら
れるかといった内容の情報を代行業者のスーパーバイザーのために用意 しておく。 入電数の予測と一時間当り一番入電数が多く期待できる鍵となる時間 帯を代行業者と一緒に検討してみる。 ・ 提供されるオペレーターのレベル、進行上の手順、入呼電量から警戒 態勢/是認に必要な時問のレベルの増減の調整といったものも検討され る。企業クライアントと代行業者が一緒にこのことを実施するのが必須 である。 ・ 立ち上げ時のプログラミングより以前にサービスビューローが必要と する特定なレポートを確認する。(時間毎のデイリー、特定のカテゴリ ー毎の数、レポートの提出頻度、誰が受け取るか) ・ サービスクォリティがどのように提供されているかを査定するために サポート中に代行業者はテストコールを実施する。フィードバックはサ ポート期間中や査定後に代行業者の顧客窓口担当者(レップ)と一緒に しなければならない。 顧客サービス業務の外部委託は成功するか 顧客サービスの外部委託は物流から修理サービスなどまできわめて広い範 囲で可能であるし、現実にすでに子会社という形態を取りながら行われてい る。ここで問題に取り上げたのは子会社とか系列会社という形態でなく、一 個の独立し、しかもいろいろな複数の業種を取り扱っている代行業者、それ も電話などの通信手段を使っているケース、言うなればテレマーケティング 業者によるアウトソーシングの問題に限定して考えてきた。 顧客サービスとテレマーケティング業者によるアウトソーシングの問題点 とアメリカでの実際例はすでに述べたとおりだが、我が国の場合、果たして これがうまく機能するだろうか。いろいろな角度から検証を試みたいと思 う。 最大の問題点は我が国の企業にはパートナーシップという概念が希薄なこ
とである。これは業務を外部に委託しようという企業はもちろんそれを受託 する側の企業にもある。 委託しようとする企業はあくまで業務を委託する企業を自分の配下におい て支配しようとする風土、つまり縦割りの系列意識から脱却できない。自動 車産業、建設・土木業界などに顕著に見られる例である。つまり大企業を頂 点にして下請け企業、さらに孫請け企業といった構造ががっちり出来上がっ ている。 バブルの崩壊後、リストラに走った大企業はアメリカの企業と違ってレイ オフという形を取れなく、子会社を設立してその会社にこれまで社内でやっ ていた業務、あるいは系列に関係に無い専門会社に委託していた業務を委託 することがしきりと行われた。ポストのなくなった中間管理職をそれらの会 社の経営者あるいは管理職として出向あるいは転籍させることで実質的な首 切りを避けることが可能だったからだ。 たとえばかつては大手損保各社は一括して時間外の事故処理業務を大手テ レマーケティング会社である㈱ベルシステム24に外部委託していたのだが、 東京海上火災㈱が自社の子会社を作ってその業務を移したことがきっかけ になりこれに参加していたほかの損保各社もそれぞれ子会社を設立して独 立、これまで委託を受けていた㈱ベルシステム24はそれぞれの会社に要員 を派遣する形を取ったというケースがある。 一方、委託を受けたテレマーケティング会社側にも問題がある。もっとも 重要なことは実際に電話を使って顧客と接するレプレプレゼンタティブ(窓 口担当者)の専門性の問題である。 通常テレマーケティング会社では営業がクライアントのところに行って契 約を取ってくると、その委託される内容に応じてアルバイト情報誌、新聞広 告やロコミを通じて要員を募集する。その応募者の中から必要な人数をアル バイトあるいはパートとして採用して業務に当たらせる訳である。とにかく 要員の数の確保が先決だからその質まで厳密に問うことはほとんどできな い。この問題については拙著『電話で顧客満足ってどうやるの』第16章でさ
らに掘り下げて考察しているので、参考にしていただきたい。 先日ある通信販売の健康治療機器に興味を感じて、日曜日だからやってい ない思ったが一応広告に記載されていたフリーダイヤルに電話した。すると 相手が出た。そこでかなりの価格のものだったから、その仕様や使い方など について聞いた。ところが相手は「注文だけならお受けしますが、商品の内 容についてのお問合わせでしたら月曜日から金曜日の午前9時から午後5時 まで次の電話番号に電話をかけてください」という答えだった。いろいろ確 かめて納得した上で注文したいというと「私はアルバイトで電話の注文を取 ることだけしか頼まれいないのでどうすることもできない」との返事だった。 みすみすその企業はビジネスの機会を失ったわけだ。 現状では専門集団のテレマーケティング業者に委託してもこれ以上は望め ないのが実情であろう。
参 考
『OutsourcingFo㎜』の発言者
パネルは企業側からの以下のパネリストの順で発言が続いた。 Ford Motor CompanyGeneralFoodsUSA
National CarRentaTheKe皿oggCompany
Polaroi(1Co㎎}orationJenyF血ck
DonMayer
MaryMcElroyMulvain
L血da Pell BobGi皿 ここまでのプレゼンテーションが午前9時からコーヒーブレークを20分は さんで午前11時半まで続けられた。 その後いわゆる委託を受けているエージェント側から AmehcanTranstech NancyDreicer EDS Lisa Leofbrd.JCPemyTelem曲eting WalterNencka
RuppmanMarketing CherieThies−Pateそれぞれ外部委託業務のメリット、更にいろいろな疑問点について説明を した。 この論文は拙著『電話で顧客満足ってどうやるの?』(日本経済新聞社、 1997)の第16章の下敷きになっている。そのため一部の記述に同書と重複す る点があることをお断りしておく。 (本学経営学部教授)