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JAIST Repository: 企業の研究開発環境としての試験研究税制の計量経済学的分析

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Academic year: 2021

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JAIST Repository

https://dspace.jaist.ac.jp/ Title 企業の研究開発環境としての試験研究税制の計量経済 学的分析 Author(s) 玉田, 俊平太 Citation 年次学術大会講演要旨集, 13: 156-161 Issue Date 1998-10-24

Type Conference Paper Text version publisher

URL http://hdl.handle.net/10119/5668

Rights

本著作物は研究・技術計画学会の許可のもとに掲載す るものです。This material is posted here with permission of the Japan Society for Science Policy and Research Management.

(2)

8 C ⅠⅠ 1

分析

音字

計三百里

克彦

と田

研究開発

はじめに ( ェ グゼクティ プ ・サマリ一 ) 企業における 研究開発は、 科学技術創造立国を 標 接 する我が国の 新規事業・ 雇用創出の源泉であ る。 研究開発によって 生み出される 技術には正の 外部経済 性があ るため、 国による税制等を 通じた民間研究開発の 促進は 、 国として国民 全体の厚生 (Welfare) を極大化する 観点からすれ ば 、 経済学的にも 適切な措置 と

え二 二口 また、 企業にとってみると、 税制は資金を 投資する行動を 決定する際の コス ト 及びリターンに 影響を与える 外部環境条件として、 企業行動を決定する 上で の外部環境要因として 作用する。 「試験研究費が 増加した場合の 税額控除制度 ( 以下本論では 「増加試験研究 税制」 という ) を中心とする 我が国の試験研究促進税制は、 昭和 4 2 年度創設 以来、 多少の縮減・ 拡充を経ながらもほとんど 大きな変更なく 継続されてきた。 しかし、 現行の 「増加試験研究税制」 は、 フルセット型の 企業構造と右肩上 がりの経済成長を 暗黙の前提としており、 近年その試験研究に 対するインセン

ティブが低下してきているのではないかとの

懸念があ る。

本論では試験研究促進税制の

効果にっき文献調査及び 企業調査を行い、 その 結果の分析を 試み、 改善策を提示する。 なお、 本論における 意見にわたる 部分 は 私見であ る をお断りしておきたい。 2 . 本研究の背景 Ⅰ ) 民間研究開発の 動向 我が国の民間研究開発費は、 1 9 7 0 年代に年平均 1 4 . 6 % 増、 1 9 8 0 年代にも平均 9 . 8 % の伸びを示したにもかかわらず、 1 9 9 0 年代に入って 極めて低迷しており、 年平均にするとわずか 1 . 1 % の神 び であ る。 特に 、 1 9 9 3 年度からは研究開発費が 2 年連続で減少するという 我が国が近年経験し たことがない 厳しい状況を 経験した。 業種別に見ても、 1 9 9 0 年度まではほぼ 全業種において 研究開発費は 単調 に 増加してきたが、 1 9 9 1 年以降、 相当数の業種で 研究開発費の 低下が見ら れる。 (2) 拭験 研究税制の現状 研究開発の成果であ る新技術は、 研究開発を行った 企業のみならず、 社会全 体 にその利益が 波及する公共財的性質があ る。 したがって、 企業の個別投資判

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開発活動が不足してしまう。 これを補うため、 日本をはじめとする 0 E C D 諸 国の大半において、 民間が行 う 研究開発に対して

税制によるインセンティブが

設けられている。 我が国においては、 「試験研究費の 額が増加した 場合等の税 額の特別控除」 が租税特別措置法第 1 0 条及び第 4 2 条の 4 に基づき認められ ている。 我が国の制度の 中心であ り 当該税額控除の 大部分を占めるのは 以下の 「 増 加 試験研究税制」 であ る。 増加試験研究税制は、 企業における 研究開発活動を 促進するため、 企業が、 「税制によるインセンティブがない 場合にも行 う 試験研究費の 額」 を越えて 研 究 開発活動を行 う 場合に、 その越えた分の 一定割合を 、 企業がねうべき 法人税 額から控除する 制度であ る。 具体的には、 当期の試験研究費の 額が「比較試験研究費」の 額を超えた場合、 超えた額の 2 0 % 相当額が法人税額から 控除される。 企業側からすれ ば 、 比較 試験研究費を 超えて研究開発を 行えば、 その 2 割が補助金として 交付されるの と 同様な効果があ ると言える。 この制度自体は、 市場メカニズムによって 企業が自発的に 行 う 研究開発部分 ほ ではなく、 企業がそれを 超えて研究開発を 伸ばそうとするマージナル な 増加 分に対してのみインセンティブを 与える cost-effect.ive な 制度と言えよう。 (3) 我が国の増加試験研究税制の 問題点 問題となるのは、 「比較試験研究費」 の算定方法及びそれを 超えた額に対す る控除率が経済学的に 見て適切であ るかどうかであ る。 現行制度における 「比較試験研究費」 は、 「昭和 4 0 年度から当期の 直前年 度 までの試験研究費の 額のうち最も 多い年度の試験研究費」 であ り、 試験研究 費 が過去最高額を 更新すれば、 比較試験研究費も 更新され、 常に過去最高額と なる制度となっている。 下表のように、 類似の税額控除制度を 持つ諸国と比較しても、 我が国のみが 他国と異なり 利用するごとに 比較基準がその 分上昇してしまう ( ラチェット 効果の強い ) インセンティブの 低い制度となっている。 国名 米国 フランス スペイン 韓国 日本 増加 額の 増加 額の 増加 頼め 増加 額の 2@ 0@ % 5@ 0@ % 4@ 0@ % 2@ 5@ % 増加 額 0 2 0 % 控除率 研究開発費 研究開発費 の 2 0 % 0 5 %

前 2 年の 前 2 年の 過去最高額 基準

売上高試験平均額

平均額 平均額

研究費比率

X 直近 4 年 の売

上高の

平均

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我が国の方式では、 企業が全ての 研究開発を自社で 行い、 企業規模や研究開 発費が単調に 増加した時代には 制度の問題点が 顕在化して来なかった。 しかし 近年、 企業がリストラや 分社化によって 企業組織を柔軟に 変更する時代に 入る と 、

過去最高の試験研究費の

額を基準とする 木 制度は、 試験研究に対するイン センティブとして 有効に機能しなくなってきている 懸念があ る。 事実、

最近の増加試験研究費税額控除制度等の

減税額は、 以下のとおりであ り、

我が国の増加試験研究税制等における

減税額は、 1 9 9 2 年度には 1 1 4 0 億円であ ったが、 1 9 9 7 年度には 5 3 0 億円まで減少しており、 1 9 9 3 年度からは一貫して 伸び率がマイナスとなっている。 年 度 減 税 領 対前年度比 率 年 度 減 税 領 対前年度比 率 ( 億円 ) ( % ) ( 億円 ) ( % ) 1988 930 3.3 1993 1,050 -7.9 1989 950 2.2 1994 890 -15.2 1990 980 3.2 1995 700 -21.3 1991 1,100 12.2 1996 570 -18.6 1 の 2 1,140 3.6 1997 530 -7.0 出典 : 大蔵 省主税局調べ そこで、 企業に対して 増加試験研究税制の 利用状況、 税制による効果、 制度 改善の効果等について 郵送による調査を 行い、 改善策について 検討を行った。 3 . 調査方法 調査は企業に 対するアンケート 調査によって 行った。 資本金 1 億円以上の企 業から 約 1 7 0 0 社 ( 正確には 1 7 5 3 社 ) をサンプル抽出し、 1 9 9 8 年 5 肩 に調査表を送付した。 調査表の内容については 調査結果と併せて 後述する。 サンプリンバを 資本金 1 億円以上の主として 大企業から行った 理由は以下の 2 点、 であ る。 第一に、 本調査は 「増加試験研究税制」 の利用状況を 調査し、 その効果及び

改善策を検討することにあ

るが、 その利用者は 大半が資本金 1 億円以上の大介 業 であ ると見込まれるためであ る。 なぜなら、 中小企業 ( 資本金の額が 1 億円 未満又は従業員数が 製造業では 3 0 0 人以下 ) に対しては、 より有利な 「中小 企業技術基盤強化税制」 という、 試験研究を行った 場合にその試験研究費の 1 0 % まるごとが払 う べき法人税額から 控除される制度があ り、 「増加試験研究 税制」 とはいずれかを 選択できるようになっているが、 大半の中小企業は 「 中 小企業技術基盤強化税制」 を選択すると 考えられるためであ る。 第二に 、 我が国の試験研究費の 9 5 . 4 % ( 平成 8 年度 ) は資本金 1 億円以 上の企業によって 支出されており、 これら大企業の 動向を調査することによっ て、 我が国の民間における 試験研究費の 支出状況の傾向の 大宗を理解すること が 可能であ ると考えられるためであ る。

(5)

4 . 結果と考察 1) 解答数及びその 信頼性に関する 考察 9 5 2 社から有効解答を 得た。 有効解答率は 約 5 4 % であ る。 ちなみに信頼計数 9 5 % 、 許容誤差 5 % を得るために 必要な標本数は 3 8 4 、 信頼計数 9 9 % 、 許容誤差 5 % を得るために 必要な標本数は 6 6 6 であ るから、 本調査の有効解答数 9 5 2 はこれらをいずれも 上回っており、 サンプリンバに 偏りがないと 仮定すれば、 本調査結果は 信頼計数 9 9 % で許容誤差 5 % 未満で あ ると言えよう。 また、 解答企業の試験研究費合計は 6 兆 1 5 3 9 億円で、 これは、 平成 8 年 度の民間社内使用研究費 ( 費用 額 ) 9 兆 8 7 億円の 6 2 . 3 % に相当する。 (2) 調査結果及び 考察 ①増加試験研究税制の 利用状況 下表の通り、 「現在利用している」 と解答した企業は 1 8 6 社、

1 % であ り、 現在約 2 割の企業しか 増加試験研究税制を 利用できていない。 一方、 「過去に利用したことがあ るが現在は試験研究費が 過去最高を超えな いため利用できない」 と解答した企業は 4 0 0 社、 2 % 、 「利用したこ とがない」 と答えた企業は 3 4 0 社、 3 6 . 7 % であ った。 (n@ =926) 千 lJf 肘け己 回答社数 構成比 A. 現在利用している 186 20. Ⅰ % B. 過去に利用 400 43. 2% C. 利用したことがなれ 340@ 36. 7% 空欄 26 ム Ⅱ コ % Ⅰ Ⅰ ト 952 100 . 0% このうち、 「過去に利用したことがあ るが現在は試験研究費が 過去最高を超 えないため利用できない」 と解答した企業に 対し、 最後に本制度を 利用した 年 ( 二 試験研究費が 過去最高額となった 年 ) を聞いたところ、 以下の通り、 3 8 4 社中、 1 9 9 1 年度の 6 1 社、 1 9 9 2 年の 5 1 社をはじめ、 8 1 % に相当 する 3 1 社が 1 9 9 0

年代に過去最高額となっていることが

明らかとなっ た

(6)

最後に本制度を 利用した年度 ( n 二 384) Ⅰ 984 1997 1985 ( ロ占木口 ) 1986 八ミ に コ Ⅰ 十 384 これは、 増加試験研究税制を 利用できない 企業の大半が 1 9 9 0 年代に入っ てから過去最高を 超えることができなくなったことを 示しており、 1 9 9 0 年 代 に入り、 企業の試験研究費が 停滞しはじめていることを 示している。 これは、 先に述べた、 我が国の増加試験研究税制等における 減税額が 1 9 9 3 年度から は 一貫して減少していることとも 符合する。 ②増加試験研究税制の 効果 増加試験研究税制の 利用状況別に、 企業が試験研究費を 増加させる意志決定 に対する本税制の 関与度合いを 聞いた結果を 以下に示す。 現在本税制を 利用し ている企業の 1 . 1 % が本税制が試験研究費を 増加させる 「主たる動機」、 2 6 . 8 % が 「動機の一つ」 としている。 残りの約 7 割の企業は、 本税制を明示 的には試験研究費の 意志決定に際して 明示的な考慮はしていない。 これは、 前述のラチェット 効果によって、 試験研究費の 増加に対する 税制の インセンティブが 弱いためと考えられる。 試験研究費の 額を増加させる 意志決定への 税制の関与度合 利用状況 主たる動機 2. 動機の一つ 明示的な考慮なし A 現在利用 1% 49@ 26.8% 132@ 72. 1% B 過去利用 4@ 12. 096 346@ 88. 0% C 利用なし 2. 9% 301@ 97. 1% 空欄 ノム 、 毒 十 0 . 2% Ⅰ 0@ 11. 8% 786@ 88. 0% 次に、 税額控除制度が 試験研究費を 増加させる動機となっていると 回答した 企業に対し、 その理由について 質問した。 約 2 割 ( 1 7 . 6 % ) の企業が控除された 税額以上に試験研究費を 増加させ ると回答しており、 税額控除により 発生した資金を 試験研究費に 回すと答えた

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研究に再投資すると 答えている。 つまり、 本税制には試験研究の 拡大再生産 効 果があ ることがわかる。 ③比較試験研究費の 算定方法の変更による 効果 現在増加試験研究税制の 利用ができないでいる 企業に対し、 比較試験研究費 の 算定方法を以下のように 変更した場合に、 それぞれ本税制が 利用できるよう になるかどうかについて 質問した。

千で

け㌣ 構 成 化 で 利き な 構 成 比 国 各 数 -

平成 6 年度以降の最高額を 基準とする Ⅰ 25 33. Ⅰ % 253@ 66.9% 378 前年度と双々年度の 平均額を基準とす 229@ 60.7% Ⅰ 48 39. 3% 377 前年度の額を 準とする 260@ 67.5% 125 32. 5% 385 より近い年の 試験研究費を 比較対象とすれ ば

するほど利用できる

企業が増 え 、 より多くの企業に 試験研究増加のインセンティブを 与えることが 可能とな ることがわかる。 ただし、 留意すべきは、 前年度の額を 基準としてしまうと、 本年度の試験研 究費の一部を 次年度に回す 等の窓 意

的に試験研究費を 増減させる操作によっ

て 、 試験研究費の 総額を変えずに 税額控除を受けることが 可能となる恐れがあ るため、 それを排除する 何らかの制度が 必要となると 考えられることであ る。 また、 比較試験研究費を 過去 2 年間の平均とすると、 過去最高額よりはラチ ェット効果は 2 分の 1 になるが、 引き続きラチェット 効果は残るという 問題が あ る。 5 . 政策提言

科学技術創造立国たる

我が国の新規事業と 雇用の創出を

活発化するために

は、 リストラや分社化等によって 企業規模を縮小させている 既存企業を含む 幅 広い企業の技術力の 向上の促進を 通じた生産性向上が 必要不可欠であ り、 企業 の試験研究費の 「増加」 に着目するという 試験研究努力のマージナル な 部分に 対してインセンティブを 与える制度の 基本的枠組みは 継続しつつ、 研究開発費 を増やす企業を 広く対象とするような 制度へと拡充を 図る時期に来ていると 考 えられる。 具体的方策としては、 のとヒ 較 試験研究費を 超えた額に対する 控除率を現行の 2 割から引き上げる。 ②比較試験研究費の 算定方法を現行の 過去最高額から 改 め、 より経済合理的な 算定方法とする。 の 2 通りの方法が 考えられる。 ① ほ ついては、 企業の 2 割しか税額控除の 対象とならない 現状では、 控除率 を 引き上げたとしてもその 効果は限定的なものとなってしまうと 思われる。 したがって 、 ②の比較試験研究費の 算定法法の改定が 望ましい。 さらに具体 的には、 増加試験研究税制の 適用毎に比較試験研究費がその 分増加してしまう ラチェット効果を 緩和するとともに、 米国のように 比較する期間を 固定してし まぅ ことによる企業実態との 乖離を防ぐため、 比較試験研究費として 企業の過 去数年間の試験研究費の 平均とずべきではないかと 考えられる。

参照

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