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第 19 章 労働事情 図表 19-2 就業者 失業者数 失業率の推移 百万人 % 失業者数 左軸 就業者数 左軸 % 失業率 右軸 % 107.4

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(1)

インドネシアの投資環境

労働事情

第19章

労働法の体系

1.

インドネシアの主な労働法制として、雇用関係については 2003 年制定の労働に関する法律およ び 2000 年制定の労働組合に関する法律があり、社会保険関係については 2011 年制定の社会保障 団体に関する法律および 1992 年制定の年金基金に関する法律、労働紛争関係については 2004 年 制定の労使紛争解決法がある。

労働市場と雇用情勢

2.

インドネシアの労働市場 (1) インドネシアの総人口 2 億 5,518 万人(2015 年の国家統計局推計)のうち、15 歳以上の人口は 1 億 8,610 万人(総人口の 72.9%)である。また、15 歳以上人口のうち、労働力人口は 1 億 2,238 万人(同 65.8%)で、さらに労働力人口のうち、就業者は 1 億 1,482 万人(労働力人口の 93.8%) である(図表 19-1)。2010 年頃より日系企業の進出は大幅に増加傾向にあるものの、労働力は依 然として豊富である。2015 年の失業率は 6.18%で、11%超を記録した 2005 年以降中期的に低下 傾向にある(図表 19-2)。 図表 19-1 インドネシアの労働力構成(2015 年時点) (注) 総人口は 2015 年の暫定数字。それ以外は、2015 年 8 月時点。末尾の桁四捨五入。 (出所)国家統計局「National Labour Force Survey」より作成

総人口:2億5,518万人

15歳以上人口:1億8,610万人(約72.9%) 15歳未満人口:

6,908万人(約27.1%)

労働力人口:1億2,238万人(約65.8%) 6,372万人(約34.2%)非労働力人口:

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第 19 章 労働事情

図表 19-2 就業者・失業者数、失業率の推移

(出所)国家統計局「National Labour Force Survey」より作成

インドネシアの就業構造 (2) 就業者の産業別構成比(2015 年)をみると、農林水産業従事者(3,775 万人)が全就業者の 32.9% を占め、構成比では最大となっている。以下、構成比が大きい順に、卸・小売、レストラン、ホ テル業(2,569 万人、22.4%)、公共・個人サービス業(1,794 万人、15.6%)、製造業(1,526 万人、 13.3%)が続く(図表 19-3)。また、時系列でみると、農林水産業業従事者の構成比が低下し、各 種サービス業の割合が緩やかながら増加傾向にあることが分かる(図表 19-4)。 図表 19-3 就業者の産業別構成(2015 年 8 月)

(出所)国家統計局「National Labour Force Survey」より作成 104.9 108.2 107.4 112.5 112.8 114.6 114.8 9.0 8.3 8.7 7.3 7.4 7.2 7.6 7.87% 7.14% 7.48% 6.13% 6.17% 5.94% 6.18% 0% 2% 4% 6% 8% 10% 12% 14% 16% 18% 0 20 40 60 80 100 120 140 09 10 11 12 13 14 15 (暦年) 失業者数(左軸) 就業者数(左軸) 失業率(右軸) (百万人) 農林水産業 32.9% 卸・小売、レス トラン、ホテル 業 22.4% 公共・個人 サービス業 15.6% 製造業 13.3% 建設業 7.1% 運輸・倉庫・通 信業 4.4% 金融・不動産・ ビジネスサー ビス業 2.8% 鉱業・採掘業 1.2% 電力・ガス・水 0.3%

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インドネシアの投資環境

図表 19-4 産業別構成比の推移

(出所)国家統計局「National Labour Force Survey」より作成

インドネシアの雇用情勢 (3) インドネシアでは、労働人口は潤沢であり、一般ワーカーの採用は企業の「買い手市場」であ り、一般ワーカーの採用にあたり問題は生じにくい。一方、優秀なエンジニアやスタッフの採用 はそれほど容易ではない。同国では、就業人口に占める大学卒業者の比率が 8%と低く、就業人 口の 5 割弱は小学校で教育を終了している(中退を含む)。このため専門的な基礎知識・技術を有 する人材が少ないことに加え、企業間での引き抜きやより良い条件を求めての転職も多く、優秀 なエンジニアやスタッフの確保は容易とは言えない。インドネシアでは新卒のスタッフ採用は一 般的ではないと言われるが、日系企業へのヒアリングでは「大学の新卒をスタッフとして採用し ている」との声も聞かれた。また、将来的な現地スタッフへの事務移管を目的に、日本語のでき る優秀なインドネシア人材の採用を積極的に行う企業も見られた。 図表 19-5 就業者の学歴別構成(2015 年時点)

(出所)国家統計局資料「National Labour Force Survey」より作成

0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40% 45% 08 09 10 11 12 13 14 15 (暦年) 農林水産業 卸・小売、外食、ホテル業 公共・個人サービス業 製造業 建設業 運輸・倉庫・通信業 小学校未卒業 17% 小学校 27% 中学校 18% 高等学校 17% 職業専門高等 学校 10% 短期専門課程 3% 大学8%

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第 19 章 労働事情

賃金

3.

賃金に関する法制度 (1) 賃金に関する法令には、労働法(2003 年第 13 号)のほか、時間外労働と時間外労働手当に関 する労働移住大臣令 2004 年 102 号、最低賃金の決定方法を定めた同大臣令 2013 年 7 号、最低賃 金設定の根拠となる最低生活費について定めた労働大臣令 2016 年 21 号、最低賃金の上昇率に関 して定めた「賃金に関する政令 2015 年第 78 号」等がある。 労働法は、同一労働に対する同一賃金の適用を定めており、性別や人種、宗教等での賃金差別 を禁止している。賃金は解雇時の解雇手当および退職金の算出の基準となり、基本給のほか家族 手当、交通費、食事手当、残業代等を含む。また、賃金のうち 75%以上が基本給でなくてはなら ないことが労働法で定められている。 この他、アジア通貨危機後の民主化と地方分権の流れを反映して、最低賃金は地方別に決定さ れることが法令で規定されており、更にこの地方別最低賃金を基にして地方毎に産業分野別の最 低賃金が決定される。 また、「賃金に関する政令 2015 年 78 号」では、最低賃金の上昇率がインフレ率と経済成長率を 足し合わせた水準と定められた点、留意を要する。尚、当該算定式に基づく最低賃金の上昇率の 基準値は 2016 年が 11.5%、2017 年が 8.25%となっている。 平均的な賃金水準 (2) インドネシアの 2016 年における全産業平均の賃金水準は月額 218 万ルピアであり、全産業セク ターにおいて近年上昇傾向にある。主要産業について見ると、金融(305 万ルピア)や電気・ガ ス・水道(276 万ルピア)の賃金水準が平均を大きく上回る一方、製造業(203 万ルピア)の賃金 水準は平均を若干下回る水準であり、農林水産業(143 万ルピア)の賃金水準は全産業平均の 3 分の 2 程度の水準となっているなど、産業間で大きな格差が生じている(図表 19-6)。 図表 19-6 主要産業における平均賃金(2016 年、月額)

(出所)国家統計局資料「National Labour Force Survey」より作成

0 1 2 3 4 農林水産業 卸・小売、外食、ホテル業 製造業 建設業 全業種平均 公共・個人サービス業 運輸・倉庫・通信業 電力・ガス・水道 金融・不動産・ビジネスサービス業 鉱業・採掘業 (100万ルピア)

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インドネシアの投資環境 日本企業の進出が多い主要州・県・市の最低賃金 (3) 「賃金に関する政令 2015 年 78 号」では、「各州知事は算定式を基に州別の最低賃金を設定し、 更に各市・県が個別に賃金を設定することも可能」としている。また、「経営者団体と労働組合の 協議結果に基づき、知事は業種毎の最低賃金を設定することも可能」とも定めている。このため、 実際の最低賃金は進出する地域や業種によって異なる。日本企業の進出が多い主要州・県・市の 最低賃金をみると、2014 年以降、工業団地の多い西ジャワ州のブカシ県やカラワン県の最低賃金 が首都のジャカルタ特別州の最低賃金を上回っていることが分かる(図表 19-7)。 図表 19-7 日本企業の進出が多い主要州・県・市の最低賃金推移(再掲) (注) 左列が月額最低賃金(単位:1,000 ルピア)、右列が前年比 (出所)JETRO 資料を基に作成 周辺諸国との賃金比較 (4) ジャカルタの日系企業の従業員賃金を周辺諸国の主要都市のそれと比較すると、ジャカルタは ホーチミンやプノンペンより高くバンコクやクアラルンプールより安い水準であることが分かる (図表 19-8)。しかし、名目ベースの賃金上昇率は 10%前後の高水準で推移していることに留意す る必要がある。更に、ジャワ島外で最大の日系企業集積地であるバタム島においては、ワーカー、 エンジニア、中間管理職のどの賃金もジャカルタよりやや低い水準となっている。 図表 19-8 周辺諸国との日系企業平均賃金比較(米ドル) (出所)JETRO 投資関連コスト比較(~2016 年 1 月実施)より作成 (単位:1,000ルピア) ジャカルタ特別州 1,529 18.5% 2,200 43.9% 2,441 11.0% 2,700 10.6% 3,100 14.81% 3,356 8.25% ブカシ県 西ジャワ州 1,491 15.9% 2,002 34.3% 2,447 22.3% 2,925 19.5% 3,261 11.50% 3,530 8.25% カラワン県 西ジャワ州 1,269 9.5% 2,000 57.6% 2,447 22.4% 2,987 22.0% 3,331 11.50% 3,605 8.25% バンドン県 西ジャワ州 1,224 8.9% 1,388 13.4% 1,735 25.0% 2,041 17.6% 2,276 11.50% 2,463 8.25% スマラン県 中ジャワ州 942 7.0% 1,051 11.6% 1,208 15.0% 1,419 17.4% 1,610 13.46% 1,745 8.39% タンゲラン県 バンテン州 1,527 33.6% 2,200 44.1% 2,442 11.0% 2,710 11.0% 3,022 11.50% 3,271 8.25% スラバヤ市 東ジャワ州 1,257 12.7% 1,740 38.4% 2,200 26.4% 2,710 23.2% 3,045 12.36% 3,296 8.25% 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2013->2014 2014->2015 香港 1,889 3,045 3,878 4.4 4.8 シンガポール 1,580 2,596 5,246 5.3 4.9 上海 465 843 1,514 8.2 NA バンコク 344 651 1,384 10.2 NA マニラ 312 477 1,007 0.0 3.4 クアラルンプール 311 724 1,417 5.5 5.7 ムンバイ 306 524 1,429 10.8 NA ジャカルタ 255 413 903 11.0 10.6 バタム島 230 400 718 18.7 10.9 ホーチミン 193 348 736 NA NA ビエンチャン 179 423 1003 NA NA プノンペン 162 323 664 NA NA ヤンゴン 127 388 951 NA NA ダッカ 99 285 652 9.1 NA 日系企業 名目賃金上昇率(%) 都市 (一般工職)ワーカー (中堅技術者)エンジニア (課長クラス)中間管理職

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第 19 章 労働事情 なお、インドネシアの中間管理職の賃金はベトナムやミャンマーと大差ない水準であるが、イ ンドネシアのワーカーの賃金は継続的な最低賃金引き上げによりこれらの国と比べると相対的に 差が大きく、現在、インドネシアのワーカー賃金はヤンゴンの 2 倍程度の水準となっている。し かし、賃金高騰が課題となっている上海と比較すると、インドネシアのワーカー及びエンジニア の賃金水準はともに 2 分の 1 程度に留まる。

雇用関係

4.

労働規制の概要 (1) インドネシアでは、1990 年代後半から労働関連法の整備が進められている。1997 年 10 月に制 定された改正労働法は、労使双方からの反対により施行が凍結され、2002 年 9 月に廃止された。 それに代わる法律として 2003 年 3 月に労働に関する法律が公布された。さらに、2004 年には労 使紛争解決法も制定された。 新労働法は労働民主化と評され、雇用、賃金、ストライキ、解雇、退職金などを規定し、労働 関連各法規の基本法と位置付けられている。労働者保護に重点を置いた内容となったことから、 企業にとって労務管理が大きな課題となっている。特に、経営側による一方的な労使関係の終了 (解雇)は原則として産業関係紛争解決機関による決定が必要とされることが特徴である。 従業員の採用 (2) 一般ワーカーの採用は、新聞広告・自社ホームページ・工場門扉での求人掲載や、人材会社の 利用、学校での求人などさまざまな方法で募集が行われている。採用形態では、当初は期間の定 めのある契約社員として採用した後、優秀な人材を社員として採用するケースが多い。尚、契約 社員としての契約期間は最長 2 年間である。更新は 1 回に限り認められており、さらに継続して 雇用する場合には、正社員として採用しなければならない。 一方、スタッフやエンジニアについては、当初から期間の定めのない正社員として採用する企 業が多い。採用にあたっては、人材会社や自社ホームページ等での募集に加え、既存スタッフ社 員からの紹介や、閉鎖・撤退した企業のスタッフ経験者の採用などで補充される。 外資企業には原則としてインドネシア人従業員の雇用が義務付けられており、外国人の採用に は制限がある(詳しくは「9.外国人就労規制と労働許可の取得」参照)。さらに、一定以上の従 業員を域内居住者から採用することを求める通達を出す地域もあるとのことで、留意を要する。 従業員の解雇 (3) 通常、雇用期間の定めのない被雇用者(いわゆる正社員)には 3 ヵ月間の試用期間が与えられ、 その期間内に不十分な点が見つかった場合は、解雇することができる。試用期間経過後の正社員 の解雇の前には、原則として労働裁判所の許可を得る必要がある。労働裁判所の許可を得るため には、書面による警告を 3 回実施することや窃盗やその他の犯罪のような深刻な違反があること が必要である。警告は、6 ヵ月間が経過すると無効になり、その後同一被雇用者による違反行為 があったとしても、1 回目の警告からやり直すことになる。

(7)

インドネシアの投資環境 業務の効率化のために正社員を解雇する場合、従業員は図表 19-9 に基づき退職金を受ける権利 が与えられる。原則的に、退職金は勤務年数に応じて増額される仕組みとなっている。但し、自 発的に退職した正社員には、雇用契約などで別途定めていない限り、図表 19-9 記載の費用以外の 金額を受ける権利がない。以下の退職金を受ける権利は、労働法に基づくものである。 図表 19-9 退職金表 退職金 = A × 2 + B + 費用 上記費用は、以下の金額の合計となる。 ① 未消化の有給休暇分の給料 ② 従業員およびその家族が当初の勤務地に帰宅するための旅費 ③ 住宅費および医療費として解雇手当(上記 A)および長期勤務手当(上記 B)の 15%に相 当する金額 ④ その他雇用契約、就業規則または労働協約により定められた金額 図表 19-9 記載の給料は、原則として過去 3 ヵ月の平均金額であるが、ボーナス等により変動す る場合には過去 12 ヵ月の平均金額となる。 インドネシアは労働法が厳しく、一旦正社員として採用すると解雇することが容易でなく、ゆ えに解雇コストもかなり大きい。そのために、従業員の半分程度を契約社員(コントラクトワー カー)として採用し、景気変動による影響を調整している企業もある。 インドネシアでは、契約社員の定義(雇用期間に限定がある社員)、就業可能業務、就業時間、 賃金などは、労働法(2003 年法律第 13 号)に基づき決定されている。2 年以内の期間で契約を結 び、最長 1 年の契約期間の変更(契約期間の変更は 1 回のみ可能である。)および最長 2 年の更新 勤務期間 A B 1年未満 給料1ヵ月分 なし 1年以上2年未満 給料2ヵ月分 なし 2年以上3年未満 給料3ヵ月分 なし 3年以上4年未満 給料4ヵ月分 給料2ヵ月分 4年以上5年未満 給料5ヵ月分 給料2ヵ月分 5年以上6年未満 給料6ヵ月分 給料2ヵ月分 6年以上7年未満 給料7ヵ月分 給料3ヵ月分 7年以上8年未満 給料8ヵ月分 給料3ヵ月分 8年以上9年未満 給料9ヵ月分 給料3ヵ月分 9年以上12年未満 給料9ヵ月分 給料4ヵ月分 12年以上15年未満 給料9ヵ月分 給料5ヵ月分 15年以上18年未満 給料9ヵ月分 給料6ヵ月分 18年以上21年未満 給料9ヵ月分 給料7ヵ月分 21年以上24年未満 給料9ヵ月分 給料8ヵ月分 24年以上 給料9ヵ月分 給料10ヵ月分

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第 19 章 労働事情 が認められているため、合計で最長 5 年間まで契約社員として就業することが可能である。尚、 就業可能業務や契約期間に関する規制に企業側が違反した場合、契約社員は、期間の定めがない 正社員扱いとなる。

労働条件

5.

雇用契約 (1) 主要な労働条件は、雇用契約で規定する必要がある。10 人以上の従業員を雇用する雇用者は、 就業規則を制定しなければならない。また、インドネシアでは、労働組合と雇用者が自主的かつ 自由に交渉を行い、賃金や雇用条件に関して団体協約を結ぶことができる。このような協約は政 府の認可を受けなければならず、最長 2 年まで有効であり、1 年間の延長も可能である。 【主要就労規制】 ①賃金: ・固定手当を含む基本給は、その地域の最低賃金を下回ってはならない。 ②就業時間: ・週 5 日の場合、1 日 8 時間以内、週 40 時間以下。 ・週 6 日の場合、1 日 7 時間以内、週 40 時間以下。 ・超過勤務は、労働者の同意を得て、1 日 3 時間以内、週 14 時間以下。 ③休日: ・法律で定める有給休暇のほか、忌引、結婚休暇、病休、出産休暇、国民の義務や宗教 的な義務を果たすための休暇。 ④休憩: ・4 時間以上連続で勤務した場合、雇用者は、30 分以上の休憩を与える。 ⑤退職金・慰労金等: ・勤続年数に応じた退職金、慰労金などの支払い。 賃金表の作成と全従業員への通知義務 (2) インドネシアでは、2017 年 3 月 21 日に「インドネシア労働大臣令 2017 年第 1 号」が発令され た。これは「賃金に関する政令 2015 年第 78 号」で定められていた、賃金の構成表の作成と全従 業員への通知の詳細を記したものである。賃金表に記載すべき情報は、それぞれの役職(または 等級)の賃金の最低額と最高額である。

(9)

インドネシアの投資環境 また、労働大臣令 2017 年第 1 号では、賃金の構成表を策定していない企業は、2017 年 10 月 23 日までには①賃金表の作成、②作成したことを全従業員に通知することの 2 点が義務付けられて いる。尚、労働局から求められた場合の「提示」や有効期限が 2 年である就業規則や労働協約の 登録・更新の申請時での「提示」は必要だが、労働局への「提出」自体は必要ない。本規制の対 象は、就業規則の提出義務の対象(社員が 10 人以上の企業)と異なり、現地社員を 1 人でも雇っ ている企業が対象となる。 宗教大祭手当(レバラン手当) (3)

宗教大祭手当(レバラン手当)とは Tunjangan Hari Raya(略称:THR)のことで、各宗教(イ スラム、カトリック、プロテスタント、ヒンズー、仏教、儒教)の大祭日に合わせ、基本給と固 定手当から成る固定給 1 ヵ月分の支給が義務付けられた手当を意味している。 2016 年 3 月 8 日、インドネシア政府は会社の労働者の宗教大祭手当に関する労働大臣規程 1994 年第 4 号の規程を取り消しした上で、新たに同内容に係る 2016 年第 6 号を発令した。勤続期間が 1 年未満の従業員(正社員・契約社員)に関し、従来は、勤続期間 3 ヵ月以上の従業員が月割計 算での THR の支給義務対象者であったが、当該大臣令の規定により「1 ヵ月以上」の勤続期間に 改正された。 その他 (4) インドネシア国民の約 90%がイスラム教徒であり、1 日 5 回のお祈りが義務付けられている。 そのため、就業時間内に少なくとも 2 度のお祈りの時間を考慮に入れる必要がある。1 回あたり のお祈りの時間は約 10~15 分である。また、金曜日にはモスクに訪れて礼拝する「金曜礼拝」の 習慣があり、金曜日の午後からは社員が退社するケースが多い。

社会保険

6.

インドネシアの社会保険には、以下①~⑥がある。 ① 労働者災害保険 ② 死亡保険 ③ 退職保険 ④ 年金保険 ⑤ 健康保険 退職保険は、本人の自己負担分(給与の 2%)と雇主負担分(給与の 3.7%)から構成されるが、 労働者災害保険、死亡保険、健康保険については、自己負担はなく、すべて雇主が負担する仕組 みとなっている。また、年金保険は退職保険と同様に、本人の自己負担分(給与の1%)と雇主 負担分(給与の 2%)から構成される。

(10)

第 19 章 労働事情 労働者災害保険の負担率は月給の 0.24~1.74%(業種により負担率が異なる、全額雇用主負担) であり、死亡保険の負担率は月給の 0.3%(全額雇用主負担)であり、健康保険は本人の自己負担 分(給与の 1%)と雇主負担分(給与の 4%)から成る。

労働組合・労使紛争

7.

インドネシアでは、長い間、労働組合の設立が規制されていたが、1998 年 6 月、政府が ILO 第 87 号条約(結社の自由および団結権の保護条約)を批准し、労働組合の設立を自由化した。すべ ての従業員は、労働組合を結成し、労働組合の組合委員となる権利を有する。労働組合は、10 名 以上の労働者が加入することにより、結成することができる。その結果、インドネシアでは SPSI (全インドネシア労働組合総連合)をはじめ、多数の労組が設立・登録されている。 ストライキ発生件数は、最低賃金の大幅な引き上げ実施により労働者の生活環境が改善された ことから、経済安定化に伴って減少傾向にあった。特に、2005 年には、発生件数は 96 件となり、 100 件を下回る水準まで低下した。しかし、年により大きく変動するものの、ストライキの発生 件数は、最低賃金や賃上げなどの賃金に関する事項および労働者社会保障などの福利厚生に関す る事項を原因として再び増加傾向にあり、2013 年には 239 件となっている(図表 19-10)。 図表 19-10 ストライキの発生件数と参加人数 1990 1995 2000 2005 2009 2010 2011 2012 2013 ストライキ数(件) 61 276 273 96 149 192 127 51 239 参加人数(1,000 人) 31 127 126 56 94 126 47 14 32 (出所)労働省、ILO 資料より作成

労使紛争の種類

8.

インドネシアにおいては、2004 年に制定された労働裁判所および労働事件訴訟法に基づき、労 働関係に関する紛争は以下の 4 種類に分類される。 ① 権利に関する紛争:法規、雇用契約、就業規則または労働協約の解釈および適用に関 する相違の結果として生じる、権利が認められていないことを主張する紛争 ② 利害に関する紛争:雇用契約、就業規則または労働協約において定められた雇用条件 に関する理解の不一致の結果として雇用関係において生じる紛争 ③ 雇用契約終了に関する紛争:雇用契約の当事者の一方による雇用契約の終了に関する 理解の不一致から生じる紛争 ④ 労働組合間の紛争:労働組合の加入者、権利および義務に関する、労働組合間の紛争

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インドネシアの投資環境

外国人就労規制と労働許可の取得

9.

労働法(2003 年法律第 13 号)による規制 (1) 労働法は、第 VIII 章第 42 条から第 49 条において、インドネシアでの外国人労働者の就労につ いて規定している。 ・ インドネシアにおける外国人の就労には労働大臣等の許可が必要である。 ・ 外国人の就労は特定の役職および期間(注 1)に限られること、当該の外国人には役職 規定や能力基準(注 2)を遵守することが求められる。 (注 1)外国人の就労を制限する「特定の役職および期間」、外国人労働者が守るべき「役職規定や能力基準」 については、いずれも労働大臣決定で詳細を規定。 (注 2)能力基準とは専門の知識や技術のほか、インドネシア文化に対する理解も指す。 外国人労働者雇用許可および暫定居住許可の取得 (2) 外資系企業は、原則としてインドネシア人労働者を雇用する義務があり、インドネシア人では 遂行できない管理職や専門職に限り、外国人の雇用が認められている。 インドネシアに外国人社員を派遣し就労させるためには、一時滞在ビザ(ビザ区分 312) (VITAS=Visa Tinggal Terbatas)の取得が必要である。一時滞在ビザの取得には、投資調整庁(BKPM) から外資進出の認可を取得し、現地子会社の法人設立手続きを完了することが必要とされる。尚、 ビザ発給の手続きの詳細は以下①~④の通りである。 ① 外国人雇用計画書(RPTKA)の提出と許可取得 ② 外国人労働者利用補償基金(DKPTKA)の支払い ③ 外国人雇用許可(IMTA)の取得 ④ ビザ発給 外国人労働者雇用計画書は、使用者がどのような外国人をどのような理由で雇用するかを定め る計画書であり、使用者による外国人雇用のための枠取りとして機能するものである。外国人労 働者雇用計画書には、通常フォームの他に、一時的業務のための外国人雇用計画書(RPTKA)と 緊急性を有する業務のための RPTKA がある。緊急性を有する業務のための RPTKA の対象となる 業務には、機械または生産設備の故障に対する対応業務も含まれる。 外国人労働者利用補償基金(DKPTKA)は、外国人を雇用することの対価として使用者が支払 うべき金銭であり、外国人一人の雇用につき月額 100 米ドルが課される。 外国人雇用許可(IMTA)の申請に際しては、雇用する外国人が役職に応じた学歴を有している ことや役職に応じた職務経験を有していることを示す書類の提出も求められる。

居住許可に関しては、一時居住ビザ(Visa Tinggal Terbatas)を取得して入国した外国人は、入国 後速やかに居住する地域を管轄する入国管理局事務所にて外国人登録(POA)を行い、暫定居住

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第 19 章 労働事情

許可(ITAS)を取得する必要がある。従来は暫定居住許可証(KITAS)が発行されてきたが、段 階的に廃止される計画であり、首都など一部地域ではすでに KITAS の発行が行われていない地 域もあるので、留意を要する。

図表  19-2    就業者・失業者数、失業率の推移
図表  19-4    産業別構成比の推移

参照

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