マイクロ波無線装置の故障と信頼性維持について
― 補修用ユニットの保有に関する検討 ―1. 概 説
通信回線は設備が直列に接続されるため、一箇所でも切断すると系統全体が機能しなく なるという、信頼度上特異な構成となっている。このため、冗長構成、ダイバシティー化、 2 ルート化などの対策を施して所要の信頼度を確保しているが、設備の構成要素(ユニット) が故障すると回線信頼度は直接又は間接的に脅かされることになる。特にマイクロ波無線 装置のような多重通信機器が故障するとその影響は大きい。このため送受信装置は冗長構 成となっているが、その片系が故障すると迅速に補修をしない限り所定の信頼度を確保で きないことは当然である。 最近の送受信装置は回路が複雑で現場での修理はほとんど不可能であり、故障ユニット をメーカに送って修理を依頼するが、近年この修理期間が問題となっている。中通におけ る調査結果では、短いもので56 日、長いものでは 130 日余りもの修理期間を要している。 この間、片系故障のまま放置することはできないので、メーカから代替ユニットを借用し て対策しているのが現状である。 このような折、近年における無線施設数の増大と機種の多様化により、メーカ側も代替 品の確保と供給に責任を持つことが困難になってきたとして、あるメーカから代替ユニッ ト供給に関する保守契約を結ぶよう申し入れがあった。 この問題に対処するためには、冗長系に故障が生じたとき、何時間以内に修理又は代替 品を供給しなければならないかを技術的に検討する必要がある。回線切断に至る故障とし ては、共通部故障と冗長系二重故障があるが、これらの故障に対する修理時間(MTTR) についての検討を行った。いくつかの条件を設定した上で信頼性理論に基づく計算を行っ たが、結論的として、共通部故障のときは、直ちに修理を行う必要があり、また冗長部故 障の場合でも、速やかなる代替品の供給が不可欠であることを明らかにした。 該当文書は「予備品等管理検討作業会」の資料として作成したものであるが、これを技 術研修資料として使用するために、次のような変更を加えた。 ① 文書のタイトルを「マイクロ波無線装置の補修用シート保有に関する信頼性の検討」 から本タイトルに変更した。 ② 「概説」「結論」及び「参考文献」を追加した。 ③ 「補修用シート」を一般的な信頼性用語として「補修用ユニット」に変更した。 ④ 計算結果を若干修正したが、結論に影響するような修正ではない。 ⑤ 本文にあった「MTBF の区間推定」は付録とした。また付録に「信頼性に関する基礎 理論」を追加した。 ⑥ その他、研修資料として必要と思われる注書き等を追加した。2. 適用理論
2.1 信頼度関数と MTBF(Mean Time Between Failure)
(1) 信頼度関数
R
( )
t
と不信頼度関数F
( )
t
時間0
~t
の間に故障する確率R
( )
t
と故障しない確率F
( )
t
の間に次の関係が成立する。R
( )
t
+
F
( )
t
=
1
(1) (2) 故障密度関数f
( )
t
時間t
における故障確率密度をf
( )
t
で表わす。( )
( )
( )
dt
t
R
d
dt
t
F
d
t
f
=
=
−
(2) (注1) 確率密度関数と累積分布関数 一般に確率密度関数f
( )
x
の累積分布関数は、次式で与えられる。F
( )
x
∫
xf
( )
x
dx
∞ −=
確率密度関数(Probability Density Function)は P.D.F とも呼ばれ、関数記号は小文 字で表わされる。累積分布関数(Cumulative Distribution Function)は C.D.F とも 呼ばれ、関数記号は大文字で表わされる。 (3) 平均故障間隔
MTBF
f
( )
t
の期待値E
( )
t
がMTBF となる。E
( )
t
=
MTBF
=
∫
∞t
f
( )
t
d
t
0 (3) (注2) 期待値の定義 変数x
の確率密度関数がf
( )
x
の場合、その期待値 (Expectation) は次式で与えられる。( )
∫
+∞( )
∞ −=
x
f
x
dx
x
E
式(3) に次の部分積分公式を適用する。∫
u
( ) ( )
x
v
′
x
dx
=
v
( ) ( )
x
u
x
−
∫
u
′
( ) ( )
x
v
x
dx
(4)u
( )
x
=
t
,
v
′
( )
x
=
f
( )
t
,
u
′
( )
x
=
1
,
v
( )
x
=
F
( )
t
∫
t
f
( )
t
dt
=
t
F
( )
t
−
∫
1
⋅
F
( )
t
d
t
F
( )
t
= 1
−
R
( )
t
であるから、∫
t
f
( )
t
d
t
=
tF
( )
t
−
∫
{
1
−
R
( )
t
}
d
t
=
t
F
( )
t
−
t
+
∫
R
( )
t
d
t
E
( )
t
=
∫
∞t
f
( )
t
d
t
=
[
t
F
( )
t
−
t
]
∞+
∫
∞R
( )
t
d
t
0 0 0( )
1
lim
=
∞ →F
t
t であるから、[
t
F
( )
t
−
t
]
0∞=
t
[
F
( )
t
−
1
]
∞0=
0
となる。
∴
E
( )
t
=
MTBF
=
∫
∞R
( )
t
d
t
0 (5) 2.2 故障数の分布 (1) ポアソン分布 ある時間内に平均µ
台故障する系において、その時間内にx
台が故障する確率は一般に次 のポアソン分布に従うとされている。( )
!
x
e
x
p
xµ
µ −=
(6) 単一装置の故障率をλ
とすると、t
時間内の平均故障数はµ =
λ
t
(台)となる。更に同一機種 がn
台ある場合の全体の故障数は、µ
=
n
λ
t
となり、ポアソン分布は次式となる。( )
( )( )
!
x
t
n
e
x
p
x t nλλ
−=
(7) 時間t
の間に故障しない確率は、式(7) において、x
=
0
とすれば得られ、指数分布となる。 (ここで、x
!
=
0
!
=
1
である)( )
n te
p
0
=
− λ (8) (2) 指数型信頼度関数 式(8)において、時間t
を変数にとると、 n te
− λ は0
~
t
時間に故障しない確率、すなわち指数 分布に従う信頼度関数を与える。指数型故障モデルは故障率が一定(対象期間内に装置が 劣化傾向を持たない)モデルであり、本検討ではこのモデルを使用する。信頼度関数は次 式となる。( )
n te
t
R
=
− λ (9) 故障密度関数f
( )
t
は式(2)より、( )
( )
n te
n
dt
t
dR
t
f
=
−
=
λ
−λ (10) この分布の期待値E
( )
t
がMTBF となる。( )
∫
∞( )
∫
∞ −=
⋅
=
=
=
0 01
λ
λ
λn
t
d
e
n
t
t
d
t
f
t
MTBF
t
E
n t (11)2.3 不通率(
≅
保全度係数)
平均修復時間をMTTR (Mean Time to Repair)とし、
t
時間内にm
台の装置が故障したと仮 定すると、その間の不通時間は次式で与えられる。
( )
( )
!
m
t
n
e
MTTR
m
m
p
MTTR
m
Uhm
m t mλλ
−×
×
=
×
×
=
(12)Uhm
の期待値は、その系の平均不通時間Uhn
となる。( )
MTTR
p
( )
n
MTTR
p
( )
m
n
MTTR
p
( )
n
p
MTTR
Uhn
=
1
×
×
1
+
2
×
×
2
+
⋅
⋅⋅
+
×
×
+
⋅
⋅⋅
+
×
×
=
MTTR
{
1
p
( )
1
+
2
p
( )
2
+
⋅
⋅⋅
+
np
( )
n
}
(13) 式(13)の{ }
内はポアソン分布の期待値n
λ
t
となるので、MTTR
t
n
Uhn
=
λ
×
(14) となる。 指数型故障モデルでは、MTBF
1
=
λ
であるから、t
時間内における不通時間は次式となる。t
n
MTBF
MTTR
MTTR
t
n
Uhn
=
λ
×
=
×
(15)1
=
t
とおくと、単位時間当たりの不通時間となり、保全度係数と呼ばれる。n
MTBF
MTTR
n=
ρ
(16) 不通率(不稼働率)U
は次式で与えられるが、一般にMTTR
≪MTBF
であるから実際上ρ
n が不通率となる。 nn
MTBF
MTTR
MTTR
n
MTBF
MTTR
U
≅
=
ρ
+
=
(17) 2.4 システムの故障率 (1) 直列システム 複数のブロックからなるシステムにおいて、いずれかのブロックが故障すると全体の系が システムダウンとなる系は信頼度的に直列なシステムと呼ばれる。 図1 直列システム 直列システムにおいては、各部分の信頼度関数の積が全体の信頼度関数となる。 ( )tR
1 1λ
λ
R
22( )t ( )tR
3 3λ
λ
R
nn( )t
R
( )
t
=
R
1( ) ( ) ( )
t
⋅
R
2t
⋅
R
3t
⋅
⋅⋅
⋅⋅
R
n( )
t
(18) 指数型故障モデルでは次に示すように、各部分の故障率の和が全体の故障率となる。( )
t t t nt ( n) te
e
e
e
e
e
t
R
=
−λ1⋅
−λ2⋅
−λ3⋅
⋅⋅
⋅⋅
−λ=
−λ1+λ2+λ3+⋅⋅⋅+λ=
−λ (19)λ
=
λ
1
+
λ
2
+
λ
3
+
⋅
⋅
⋅
+
λ
n
(20) 総合のMTBF は次式となる。λ
1
=
MTBF
(21) (2) 並列システム 並列システムにおいては、各部分の不信頼度の積が全体の不信頼度関数となる。 図2に示すような二つのブロックからなる並列システムの総合MTBF を求める。F
( )
t
=
F
1( ) ( )
t
⋅
F
2t
=
{
1
−
R
1( )
t
}
{
1
−
R
2( )
t
}
R
1( )
t
=
R
2( )
t
=
R
′
( )
t
、λ
1=
λ
2=
λ
の場合、F
( )
t
=
{
1
−
R
′
( )
t
}
2=
1
−
2
R
′
( )
t
+
R
′
( )
t
2 総合信頼度関数R
( )
t
は次式となる。R
( )
t
=
1
−
F
( )
t
=
2
R
′
( )
t
−
R
′
( )
t
2 (22)( )
te
t
R
′
=
−λ となるから、( )
t te
e
t
R
=
2
−λ−
−2λ 総合MTBF は、( )
λ
λ
λ
λ
λ
λ λ2
3
2
1
2
2
1
2
0 2 2 0
=
−
=
−
+
=
=
∞ − − ∞∫
t te
e
dt
t
R
MTBF
(23) 図2 並列システム 式(23)は修理を伴わない並列システムの MTBF であり、片系が故障しても修理をしない で放置しておくと、並列システムの MTBF は片系のみの場合の MTBF(=
1
/
λ
)の 1.5( )
2 2t
,
λ
R
( )
1 1t
,
λ
R
倍にしかならないことになる。 (3) 修理を伴う並列システム 単位時間内に修復できる確率を保全度(M)という。信頼度関数、保全度関数とも指数分布 に従うものとし、それぞれ
( )
te
t
R
= 1
−
−λ 、M
( )
τ
= 1
−
e
µτとすると、状態推移確率行列を 解くことにより、結論として次式を得る。[文献[2]、p134] 22
3
λ
µ
λ +
=
MTBF
(24) ここで、µ
は単位時間内に修復される確率であり、修復率と呼ばれる。 式(24)において、µ
=
0
とおくと、MTBF
=
32λとなり、式(23)に示す修理をしない並列シ ステムのMTBF と等しくなる。 一般にλ
≪µ
であり、式(24)の分子を3
λ
+
µ
≅
µ
とすると、 22
λ
µ
≅
MTBF
となる。この 式は、比較的短期間に修理される並列システムの信頼度に関しては、故障率の乗法則が成 立することを示唆している。 片系故障時の保全度をµ
1、両系故障時の保全度をµ
2とし、両系故障による回線停止に対す る平均修復時間は 1 2 2=
µMTTR
となるので、不通率は次式となる。(
1)
2 2 2 1 2 1 23
2
2
3
µ
λ
µ
λ
λ
µ
λ
+
µ=
+
=
=
eMTBF
MTTR
u
(25) 式(25)のMTBF
eは両系故障に対する等価平均故障間隔である。 以上は完全並列システムの場合であり、実際のシステムには共通部があるので、これを考 慮する必要がある。(第4章参照) 3. 検討モデル 3.1 回線系統モデル 北向マイクロが20 区間 21 局、西向マイクロが 22 区間 23 局であるが、モデル回線として 次の20 区間 21 局の系統を想定する。 1 2 3 21 20 区間 21 局 図3 回線系統モデル3.2 計算モデル (1)単純故障 MTBF(MTBFs) 回線停止に至るかどうかに関係なく、修理を要する故障が発生した場合の平均故障間隔を 単純MTBF と呼ぶことにし、これを MTBFsとする。この故障は発生頻度が高く、データ の取得が容易である。 (2) 等価 MTBF(MTBFe) 回線停止に直接結びつく故障、すなわち共通部故障、冗長系の同時故障などを対象とする 平均呼称間隔を等価MTBF をと呼ぶことにし、これを MTBFe とする。 これは発生頻度 が少なく、有意なデータの取得が事実上不可能である。 (3) 換算係数(
k
) 単純MTBF と等価 MTBF の比を換算係数k
とする。MTBFs
MTBFe
k
=
(26) マイクロ波無線装置の場合、k
の値は約50 とされているので本検討ではこの値を使用する。 3.3 装置モデル (1) 検討条件 (a) 直列システム:故障率の和とする。〔式(20)参照〕 (b) 並列システム: 等価MTBF は式 (24)より次式となる。 22
3
λ
µ
λ
+
=
MTBFe
(27) 送受信部の両系同時故障(注3)による等価故障率λ
TRは次式となる。µ
λ
λ
λ
+
=
=
3
2
1
2MTBFe
TR (28) (注 3)両系同時故障率 装置の片系が故障し、その修理が終わらないうちに他の片系が故障する確率を指す。 (c) 2重故障までを対象とする。 (2)送受信装置故障モデル 装置の信頼度的構成を図4のように設定する。電源部は便宜上共通部に含める。
λ
tr 図4 送受信装置の故障モデル4. 信頼度の計算
4.1 冗長系を含む等価故障率 計算の単純化のために、1 号、2 号の送信部、1 号、2 号の受信部の全ての故障率を等しい ものとし、これをλ
s'とする。 (1) 単純故障MTBFs
tr c1
=
+
λ
λ
(29) ' 2 1 2 1 t r r4
s t trλ
λ
λ
λ
λ
λ
=
+
+
+
=
(30) (2) 回線停止故障 冗長系送受信部の両系同時故障率をλ
TRとすると、回線停止故障率λ
0は次式となる。MTBFe
TR c1
0=
λ
+
λ
=
λ
(31) 送受信部の故障率を等しいとして、λ
t1=
λ
t2=
λ
r1=
λ
r2=
λ
s' とすると、送受信各ユニッ トの両系同時故障率は、式(24)より次式となる。 1 ' 2 ' '3
2
µ
λ
λ
λ
+
=
s s TR (32) ここで、µ
1 は片系故障時の保全度である。 cλ
t1λ
2 tλ
1 rλ
2 rλ
信頼度的に直列 共通部 送信部 受信部 信頼度 的に 並列(3) 計算上の故障率 マイクロ波送受信装置の単純MTBF は文献[5]により約 10 万時間とされている。回線停止 を対象とする等価MTBF は単純 MTBF の約 1/50 とされているのでこの値を使用する。 送受信装置1 台当りの故障率は次のように表される。 5 5 '
10
1
10
1
1
1
4
=
×
−×
=
=
+
MTBFs
s cλ
λ
(33) 回線停止対象故障率は次式となる。 7 52
10
10
50
1
50
1
=
×
−×
=
×
=
+
MTBFs
TR cλ
λ
(34) 一般にλ
c≪λ
TR であるから、 710
2
×
−≅
cλ
(35) 送受信各ユニット単体当りの故障率は、λ
c≪λ
s であるから、 ' 5 610
5
.
2
10
1
4
1
4
− −=
×
×
×
=
=
s sλ
λ
(36) 送受各ユニットの冗長部同時故障率は式(31) より、 1 5 2 5 1 ' 2 ' '10
5
.
2
3
)
10
5
.
2
(
2
3
2
µ
µ
λ
λ
λ
+
×
×
×
×
=
+
=
− − s s TR (37) 4.2 電源開発㈱無線装置の MTBF 及び MTTR 実績 (1) 運用実績と故障数 電源開発㈱にて昭和63 年度から平成 3 年度までの 4 年間について、稼動中のマイクロ波無 線装置のコンポーネントアワーと故障数について調べた結果は表1の通りであった。 表1 無線装置の故障実績 年 度 コンポーネントアワー(注4) 故 障 数 昭和63 年度 274 台×8760 時間=2,400,240 時間 12 平成1 年度 271 台×8760 時間=2,373,960 時間 12 平成2 年度 275 台×8760 時間=2,409,000 時間 7 平成3 年度 291 台×8760 時間=2,549,160 時間 18 合 計 9,732,360 時間 49 (注4)コンポーネントアワーの算出に当たっては、年度途中で運用開始した 装置についても年度初めから運用しているものとして計算した。(2) MTBF 点推定値 コンポーネントアワーが
T
=
9732360
時間で、その間の故障数の合計が49 件であったので、 MTBF の点推定値は以下の通りとなる。198620
49
9732360 =
=
MTBF
(時間) (38) (3) MTBF 区間推定値 2χ
分布による90%両側信頼区間を求める。MTBF 区間推定表(注5)にて、r
=
50
の欄 から求めると次のようになる。 上限値 198,620×1.325=263,000 (時間) 下限値 198,620×0.768=153,000 (時間) (注5)MTBF 区間推定表 式(3.9)の係数 1.325 及び 0.768 は MTBF 区間推定表から求めた値である。 この表は例えば文 献[4]、p90 に与えられている。(付録Ⅱ「MTBF 区間推定」参照) 下限値と比較しても、モデル計算におけるMTBFs
=
100
.
000
時間よりは若干良い値となっ ている。 4.3 片系故障時の信頼度低下特性 (1) モデルケースの場合 510
45
.
2
×
−=
sλ
、 710
2
×
−=
cλ
、 01
λ
=
MTBFe
、片系故障時の保全度をµ
1、両系故障時 の保全度をµ
2とすると、式 (31) より、無線装置 1 台当りの不通率は次式で求められる。(
1)
2 2 2 2 03
4
µ
λ
µ
λ
µ
λ
µ
λ
+
+
=
=
=
s s cMTBFe
MTTR
u
(40) 前述の「4.1 (3) 計算上の故障率」において、無線装置 1 台を送受、現用予備の 4 台に分解 したので、20 区間(40 装置)合計台数は 160 台となる。なお、共通部故障率は無線装置 1 台当りの数値として扱う。従って合計不通率は次式となる。u
20=
u
c20+
u
r20(合計故障率) 2 2040
µ
λ
c cu
=
×
(共通部不通率) (39) (41)
(
1)
' 2 2 ' 203
2
160
µ
λ
µ
λ
+
×
=
s s ru
(冗長部不通率) モデルケースの不通率について計算した結果を表2に示す。 保全度については、µ
1=
µ
2=
µ
として計算した。片系故障時と両系故障時では緊急度の相 違から修理時間に差があると考えられるが、そのようなデータは得られていないので、 同じとして計算した。 表2 モデルケースの不通率µ
1=
µ
2=
µ
保全度µ
MTTR〔時間〕 共通部不通率 冗長部不通率 1.0 1 8×10-6 2.0×10-9 0.5 2 1.6×10-5 8.0×10-9 0.2 5 4×10-5 5.0×10-8 0.1 10 8×10-5 2.0×10-7 0.05 20 1.6×10-4 8.0×10-7 0.02 50 4×10-4 5.0×10-6 0.01 100 8×10-4 2.0×10-5 0.005 200 0.0016 7.99×10-5 0.002 500 0.004 4.98×10-4 0.001 1000 0.008 1.99×10-3 0.0005 2000 0.016 7.88×10-3 0.0002 5000 0.04 4.82×10-2 0.0001 10000 0.08 0.186 (2) 実測 MTBF の場合 電源開発㈱におけるMTBF 実績値の区間推定を求める。式(39)に MTBFs の区間推定値 が与えられているので、MTBFe=MTBFs×50、MTBFs
s1
=
λ
、MTBFe
c1
=
λ
、4
'
s sλ
λ
=
と して故障率を求めると表3のようになる。 表3 実測 MTBF による故障率推定値 MTBFs (時間) MTBFe (時間) 単純故障率λ
s 共通部故障 率λ
c ユニット単純故 障率λ
s'
上限値 263,000 1.35×107 3.80×10-6 7.60×10-8 9.5×10-7 下限値 153,000 7.65×106 6.54×10-6 1.31×10-7 1.64×10-6共通部不通率 2
40
µ
λ
c×
=
、冗長部不通率(
1)
2 2 ''
3
2
160
µ
λ
µ
λ
+
×
=
s s として上限及び下限の不通率 を求めると表4のようになる。 表4 実測MTBF による不通率 u20 MTTR(時間) 上限共通部 上限冗長部 下限共通部 下限冗長部 1 1 3.04E-06 2.888E-10 5.24E-06 8.6067E-10 0.5 2 6.08E-06 1.155E-09 1.05E-05 3.4427E-09 0.2 5 0.0000152 7.22E-09 2.62E-05 2.1516E-08 0.1 10 0.0000304 2.888E-08 5.24E-05 8.6063E-08 0.05 20 0.0000608 1.155E-07 1.05E-04 3.4423E-07 0.02 50 0.000152 7.219E-07 2.62E-04 2.1512E-06 0.01 100 0.000304 2.887E-06 5.24E-04 8.6025E-06 0.005 200 0.000608 1.155E-05 1.05E-03 3.4393E-05 0.002 500 0.00152 7.21E-05 2.62E-03 0.00021464 0.001 1000 0.00304 0.000288 5.24E-03 0.00085646 0.0005 2000 0.00608 0.0011487 1.05E-02 0.00340914 0.0002 5000 0.0152 0.0071186 2.62E-02 0.0210002 0.0001 10000 0.0304 0.0280797 5.24E-02 0.08203126 (3) MTTR の実績 故障した送受信ユニットをメーカに修理に出して返ってくるまでの日数を、平成2 年 4 月 から平成4 年 12 月までの 14 件について調べた結果によると、最短日数が 17 日、最長日数 が131 日、平均は 56 日であった。別紙の「装置故障に伴う不通率推定曲線」にはこのデー タを記入している。 (4) 目標信頼度 モデル回線に対する目標信頼度としては、文献[5]で示されている無線装置 1 台当りの信頼 度2×10-6 を採用した。回線系統の目標信頼度は40 台×2×10-6 = 8×10-5 となる。 別紙の目標信頼度にはこの値を与えている。 4.4 片系故障時の伝搬路信頼度低下特性 16QAM 方式の無線装置は 1 号、2 号受信機ともダイバシティー用受信機を備えているが、 4PSK 方式の無線装置は 2 号受信機を SD 用受信機として使用しているため、1、2 号の いずれかが故障して片肺運用になるとダイバシティー効果がなくなる。この影響による信 頼度の低下はさほど大きいとは考えられないが、その概要を把握するために以下の検討を行う。 ここでは計算方法のみを示し、具体的計算は行っていない。 (1) 検討モデル ・ 中継区関数 : 20 区間 ・ 受信装置の単純故障率 : 1台当り 2.5×10-6 〔式(3.7)より〕 ・ 回線系統の伝搬路信頼度基準値 : 5×10-5 (電協研600kmモデルより) ・ 故障した区間には改善度
A
(倍)のダイバシティーが採用されているものとする。 (2) 計算方法 次の二つの計算方法を示す。 ① 1 年間にある1区間が故障した場合の条件付確率で瞬断率を求める。 ② 全受信装置n
台のうち、r
台が故障し、その故障区間でレーレーフェージングが発生し たとして、瞬断率を求める。 (3) 条件付確率による瞬断率の求め方 ・ダイバシティーのある1区間の信頼度 = 5×10-5 /20=2.5×10-6 ・片系が故障した1 区間の信頼度 =2.5×10-6 ×A
A
はダイバシティー改善度(倍)である。 (注)ダイバシティー効果が無くなった1 区間の伝搬路信頼度 ダイバシティー区間は、所要伝搬路信頼度2.5×10-6 をダイバシティーにより満 足させているはずである。従って、その 1 区間の伝搬路信頼度に関して次の関係 が成立する。[ ]
=
2
.
5
×
10
−6M
A
P
R ここで、P
R:レーレーフェージング発生確率A
:ダイバシテイ改善度(倍)[ ]
M
:フェージングマージン(真値) ダイバシティー効果がなくなると、その区間の伝搬路信頼度は次式となる。[ ]
A
M
P
R×
×
=
−610
5
.
2
年間瞬断時間Dy
は以下のとおりになる。(
8760
)
2
.
5
10
19
8760
10
5
.
2
10
5
.
2
×
6×
×
+
×
6−
+
×
6×
×
=
− − −MTTR
MTTR
A
Dy
(時間) 故障した1 区間の修 故障した 1 区間のその 故障していない 19 区間 理中の断時間 他の断時間 の瞬断時間瞬断率
=
Dy
/
8760
(42) 上の式にダイバシティー改善度A
(例えば20 倍)及び MTTR の値を入れれば瞬断率を計 算することができる。 (4) 故障したr
台の受信区間でフェージングが発生した場合の瞬断率 ・ 受信装置台数:n
=
20
区間
×
4
台
=
80
台
・ 1 台の故障率が 610
5
.
2
×
−=
p
の場合にk
台が同時に故障する確率p
k は次の二項 分布で与えれる。(
)
k(
)
n k kp
p
k
n
k
n
p
−
−−
=
1
!
!
!
(43)k
台の受信装置が故障し、その修理期間中にフェージングが発生して瞬断が生じる確率 は次式で求められる。 瞬断率 6 020
2
.
5
10
−×
×
×
= p
+
p
1{
(
2
.
5
×
10
6×
A
×
MTTR
)
/
8760
+
2
.
5
×
10
6(
8760
−
MTTR
)
/
8760
}
− − 610
5
.
2
19
×
×
−+
(
)
(
)
{
2
2
.
5
10
68760
2
2
.
5
10
68760
8760
}
2A
MTTR
/
MTTR
/
p
×
×
×
×
+
×
×
−
+
− − 610
5
.
2
18
×
×
−+
+
・・・・・・・・・(
)
(
)
{
2
2
.
5
10
6A
MTTR
/
8760
n
2
.
5
10
68760
MTTR
/
8760
}
p
n×
×
×
×
+
×
×
−
+
− − (44) 上の式にダイバシティー改善度A
(例えば20 倍)及び MTTR の値を入れれば瞬断率を計 算することができる。 以上は計算方法を示しただけで、具体的には算出していないが、片系の受信装置が故障し、 その区間のダイバシティーが不能となっても系全体に与える影響は少ない。この問題は、 海上区間など、ダイバシティー機能が不可欠な区間について個別に検討すべきであると考 える。5.結
論
無線装置の代替ユニットに関する保守契約検討時の資料を基に研修用資料を作成し た。研修目的であるから全面的に作り変えることも可能であったが、通信設備保全に 関する工学的アプローチの具体例として、なるべく元の文書の内容を残すよう考慮し た。本検討による計算結果は別紙のグラフに示してある。モデル回線の共通部不通率カ ーブによると、信頼度目標を満たすためにはMTTR=10、すなわち 10 時間以内に修理 を完了しなければならない事を示している。これは年間の許容不通時間を示している のではなく、共通部故障率に基づく故障が発生した場合にこの時間内に修理を施す必 要があることを示している。共通部故障率2×10-7×40 台は、モデル回線において 14 年に1 回の割合で発生する確率である。 モデル回線の冗長部不通率では、目標信頼度を満たすMTTR は 100 時間ほどになっ ている。中通の予備ユニットに対する MTTR 実績はこの期間を大きく超過しており、 代替ユニットの供給が不可欠であることを示している。グラフには実測MTBF に基づ く不通率の上下限カーブも点線で示した。 実測 MTBF は文献[5]の調査結果よりは 少し向上しているが、昭和52 年頃のアナログ無線装置に比べて大きく改善されたとは 言いがたい。 元の文書は、代替ユニットの必要性を概略的に示すのが目的であり、条件設定等は あまり厳密ではない。従ってこの検討結果を他の目的に利用する場合は注意を要する。 例えば、故障が発生した場合の駆けつけ時間に関する検討が目的であれば、それに合 わせたモデルと条件設定を行う必要があり、当然別の方法論を考える必要がある。 このような理由から、この資料は研修目的のみに使用することを希望する。
参考文献
[1] 佐藤喜代蔵、”信頼性工学”、オーム社 [2]塩見 弘、”信頼性の基礎” 電気・電子工学体系2、コロナ社 [3]塩見弘著、高木昇監修、”信頼性概論”、信頼性工学体系1、東京電機大学 [4]塩見弘著、高木昇監修、”信頼性の基礎数学”、信頼性工学体系2、東京電機大学 [5]電気協同研究第 33 巻第 1 号、”電力用マイクロ波無線装置信頼度向上対策”、 電力用マイクロ波無線装置信頼度向上専門委員会付録Ⅰ
MTBF の信頼区間
1.少数サンプルの
MTBF
少ない故障数から求めた実測MTBF を母集団の MTBF の推定値と考えるとき、その推定 誤差が問題となる。以下にはχ
2 (カイ二乗)分布を使用する MTBF の信頼区間の求め方 を述べる。(付録Ⅱ「MTBF の区間推定」参照) (注1)参考文献 文献[3]p32、p89 (MTBF の区間推定) 文献[2]p45(ポアソン分布の部分和とχ
2分布の関係) (注2)信頼区間 統計標本から母数を推定するとき(例えば、標本平均から母平均を推定するとき)、 母数が例えば90%の確率である区間内に存在すると推定されたとき、これを母数 の90%信頼区間という。2.ポアソン分布による信頼区間
指数型故障モデルにおいて、一定時間における平均故障数をm
とすると、故障数r
の分布 は次のポアソン分布となる。( )
!
r
m
e
r
f
r m −=
(a1) 累積分布は次式となる。( )
∑
( )
==
c rr
f
r
F
0 (a2) 故障数の実測値がr
であった場合、母平均m
の推定モデルは付録図1のようになる。 2 p 2 p 付録図1 故障数の区間推定図 (注 5) ポアソン分布は離散型分布であるが、付録図1では便宜上連続型分布で図示している。 Lm
r
m
U Lm
:母平均下限推定値 Um
:母平均上限推定値p
:危険率付録図1から
m ,
Lm
U を求めることは、付録図2に示すように、平均r
のポアソン分布の2
p
及び
−
2
1
p
の値を求めることと同じである。 2 pm
Lr
m
U 付録図2 平均r
の分布からの推定 MTBFの推定値は次式から求めることができる。MTBF
(上限値) Lm
T
=
MTBF
(下限値) Um
T
=
T
:コンポーネントアワー (注)コンポーネントアワー (Component hour) 系、機器、部品などについて、測定された個々の動作時間のまたは試験時間の総計値を いう。 (JIS Z 8115 「信頼性用語」より) ただし、ポアソン分布は離散型分布であるため、故障数は整数であり、丁度 2 p に相当する 位置に整数値がくるとは限らない。故障数r
が大きい場合(
r
>
20
)
は、正規近似によって求 めることができるが、少ない場合は誤差が大きくなる。少数故障を含むMTBF の区間推定 法としては次のχ
2 (カイ二乗)分布による推定法が適用される。3.
χ 分布による MTBF の区間推定
2 (1) ポアソン分布の部分和とχ
2 分布の関係 不定積分の漸化式∫
e
−xx
cdx
=
−
e
−x(
x
c+
cx
c−1+
⋅
⋅⋅
+
c
!
)
を使うと、ポアソン分布の部分和 は次式で表される。 ( )(
)
( )∑
∫
= ∞ − + − − −Γ
=
+
⋅⋅
+
+
=
=
c r c x c c c m r m cm
cm
c
e
x
dx
c
c
r
m
e
F
0 1 11
!
!
!
m (a4) 2 p (a3)ただし、
Γ
( )c+1=
c
!
一方、自由度φ
のχ
2 分布は次式で与えられる。 密度関数( )
( )
1 2 2 2 2 22
2
1
− 2 −
Γ
=
φ χ φχ
χ
e
f
(a5) 分布関数( )
( )
e
x
dx
F
/2 x /2 1 0 2 2 22
1
− −∫
Γ
=
χ φ φχ
(a6) 次に、( )
χ
2F
の補数( )
21
−
F
χ
を確率p
に等しくするようなχ
2 の値を考える。( )
( )
e x dx p F x = Γ = −∫
− − 2 1 2 2 2 2 1 1 χ φ φ χ (a8) 上式と式(a4)を比較すると、χ
2=
2
m
、φ
= c
2
(
+
1
)
とすると両式が一致することがわか る。すなわち、χ
2 分布の100 p
( )
%
値をχ
2φ,p とすると2
m
=
χ
2φ,p、m
2 ,p2
1
φχ
=
となる。 (2) MTBF の区間推定(定時打切方式) 前述のように観測値がr
の場合の故障数の上、下限値は、r
を平均値とするポアソン分布の( )
%
100 p
及び100
(
1
−
p
) ( )
%
に等しい。従って、平均m
のポアソン分布の100 p
( )
%
をm
p とすると、m
p p{
2
(
r
1
)
,
p
}
2
1
2
1
2 , 2=
+
=
χ
φχ
となる。p
2
1
の値をMTBF の下限に、2
1
−
p
の値を上限対応させると、定時打切方式の場合のMTBF の区間推定値は次式となる。MTBF
(下限)(
)
(
)
+
=
+
=
2
,
1
2
2
2
,
1
2
2
1
2 2p
r
T
p
r
T
χ
χ
MTBF
(上限)
−
=
−
=
2
1
,
2
2
2
1
,
2
2
1
2 2p
r
T
p
r
T
χ
χ
上限と下限で自由度(注)が異なるのは、定時打切方式の場合における打切り時点の想定 の相違によるもので、打切られた時点が次の故障の直前であったとすると自由度は2
(
r
+
1
)
、 故障の直後であったとすると、2
r
となる。 定数打切方式の場合は、故障直後に打切るので、上下限とも自由度は2
r
となる。 (a9)(注)