昭 和36年7月(1961)
一27一味 噌 熟 成 中 の 成 分 変 化
高
橋
沢
山
名
信
子
馨 界 1. 緒言
味 噌 は 調 味,栄
養,貯
蔵,経 済,あ
らゆ る点 よ り見
て,我
々 日本 人 の 食生 活 に 欠 く事 の で きな い 調 味 食 品
であ る。
醤 油 は 大 豆 の 蛋 白 質 を 分 解 して,ペ
プ トン,ア
ミノ
酸 の 状 態 に ま で 進 め た もの であ るが,味1曾 は,蛋
白質
の 大 部 分 を 前 者 の よ うに 十 分 分解 せ しめ ず,そ
の 分 解
の 多 くは ア ル ブ モ ー ズ の 程 度 に と どめ て,も つ ば ら蛋
白 質 と食 塩,そ
の 他 の 成 分 との調 和 を 目的 と した もの
で あ る。 普 通 味 噌 は,10%内
外 の 粗 蛋 白 質 を 含 み,八
丁 味II曾
は20%内
外 含 む 。 そ して 味 噌 原 料 中 の 蛋 山 質 の
一 部 は 麹 菌,酵
母,細
菌類 の 酵 素 に よつ て ア ミノ酸 と
な り,更 に 進 ん で,塩 基 類,ア
ン モ ニ ア,有 機 酸,フ
1)
エ ノー ル 等 に 変 化 し,味 噌 の 美 味 を形 成 す る。 味 噌 の
窒 素 化 合 物 に は,ト
リプ トフ アン態,リ
ジ ン態 等 重 要
な ア ミノ酸 は 少 な くない が,Cysitneに
は 甚 だ 乏 し
2)い 。 原 氏 等 は 白 ネ ズ ミ飼 育 試 験 に よ り味 噌 蛋 白 質 の 栄
養 価 の低 い 事 を 知 り,こ れ にCystineを
添 加 す れ ば
有 効 な事 を 認 め た 。 即 ちIr
原 料 中 の 粗 蛋 白 質 中 の
Cystineは,熟
成 中 に 損 失 す る もの で,蛋
白 質 が 分 解
して,Cystine
とな つ た 後,細 菌 の た め に 変 化 す る
もの で あ ろ う とい わ れ,従 つ て味 噌 は 若 い も の を利 用
す る のが 良 い と され て い る。 即 ち醸 造 味 噌 は 長 く置 く
程 熟 して 蛋 白 質 が ア ミノ酸 に 変化 して美 味 し く な る
が,そ
れ と 同時 に 栄 養 価 値 は 段 々 と低 下 す るわ け で あ
る。 従 来味 噌 の 製 造 法 の研 究 報告 は 数 多 く発 表 さ れ て
い るが 我 々は 米 味 噌 を仕 込 み,熟 成 中 の 成 分 変 化 に つ
い て 実 験 した 結 果 を 報 告 す る。
皿.
実
験
1)試 料 の 調 製
白 米750gを 水 洗 し,一 晩 浸 漬 した 後,コ
ヅホ 釜 に て
約 一 時 間 蒸 し,蒸
し米 を 麹 蓋 に移 し麹 菌 を うえ32QC
の恒 温 器 中 に 二 昼 夜 放 置 後, 米 麹 を 作 つ た。 次 に
ユ.4kgの 大 豆 を 一 晩 水 に漬 け コッホ 釜 に し一 時 間 蒸 し
た 後,す
り鉢 に て す りつ ぶ し,米 麹,食
塩800g,水
500ccを
加 え,よ
く混 合 し仕 込 ん だ 。 そ の 中 の 一 定 量
を 秤 り,仕 込 日 のSampieと
し て共 栓 ビ ンに貯 え,
熟 成 を阻 止 す るた め に 冷 蔵 庫 中 に 保 存 し,残
りは 恒 温
器 中 で熟 成 させ た 。 仕 込 口か ら… 力 刀毎 に 熟 成 が 終 る
ま で の 成 分 変 化 を 分 析 した 結 果,第1表,第1,2,
3図 の 通 りで あ つ た 。
2)実 験 結 果(一
般 分 析)
第1表
}仕込 日
水 分1)1
固 形
粗蛋 白質
純蛋 白質
粗 脂肪
還 元糖
殿 粉
粗 繊 維
灰 分
食 塩
揮 発 酸
アンモ ニ
ア
食 味
色
00
50.00
50.00
11.04
7.26
3.83
17.40
15.66
1.03
18.58
17.78
f
a
塩 か ら
く味 が
な い
象 牙色
5月 ・6日16月16日i7月 ・6・8月]6日 一% 50.00 50.00 10,15 5,42 1.63 14.25 12.78 1.02 ・ ・: ユ6.23 0.08 0油 臭 く塩
か らい
淡茶色
jo
55,ao
4s. oa
10.15
5.25
1.67
11.70
10,53
2.61
16.18
16.84
0.03
O.OQ425 1や や 味ll曾oo
51.0
50,ao
10,15
5.25
1.76
11.97
10.77
2.54
16.72
16.96
0.04
0.03195難 劉 味がある
飴 色
味ll曾の 風茶 色
00 JO, JJ 50.00 … 1: 1.92 10.38 9.31 3.12 17.32 17.43 0.06 0,0552熟 成 した
味 三
i 茶 、色菅本 学 副 手
._.._Zg
第
第
2 3図
図
3)実 験 方 法 (1)加 福 式 水 分 定 量 法 ② ケ ー ル ダ ー ル 氏 法 (3) Stutzer氏 法 (5)ベ ル ト ラ ン 氏 法 (6)AOAC法 (7)灰 化 法 ニつ 4)ア ミ ノ酸 及 び 糖 Paper Chromatography 器 具 お よ び 試 薬 ① ク ロ マ ト用 ガ ラ ス 管(内 径3cm,長 さ40Cm) ② イ オ ン 交 換 樹 脂(IR-50) ③0.8NHCI 55%ア ル コ ー ル 溶 液 ④ N-HC1 ⑤ 6NHCI ・試 料 調 整味 噌 を5倍
に 稀 釈 した 抽 出 液 を予 備 処 理 した 強 酸 性
樹 脂 に 試 料 を0.5ml/minの
流 速 で通 し,樹 脂 には ア
ミノ酸,Na+お
よび そ の他 の 陽 イ オ ンが 吸 着 され,
食 物 学 会 誌 ・第10号
こ れ を さ ら に 蒸 溜 水 を2回 に 分 け て 洗 溝 し,こ の 洗 瀞 液 を 前 の 通 過 液 と合 す る 。 こ れ を 糖 区 分 と し た 。 次 に 0.8N-HC155,,°oア ル コ ー一ル 溶 液 を カ ラ ム に 通 し,酸 性 ア ミ ノ 酸 区 分 を と り,次 にN-HCIに て 試 料 中 のNaCI を と り,さ ら に6N-HC1で 塩 某 性 ア ミ ノ酸 を 分 離 し, 各 々 を 中 和 後,少 量 に 濃 縮 し 試 料 と した 。 方 法 一・次 元 及 び 二 次 元Paper Chromatography 上 昇 法 ア ミ ノ酸 展 開 溶 液 n一ブ タ ノ ー ル,酢 酸,水(4:1:5)発 色 剤
{J-'紙
展 開
第2表
0.2%Ninhydrin Butanorl容 液 東 洋1戸 紙No.50 32。C恒 温 器 中 に て 一一・昼 夜仕
込 日
2カ 月 Cystine Lysine Histidine Aspartic acid Glutamic acid Proline Tyrosine Valine Phenyl alanine iso Leucine Leucine Metianine 1+ 十 十 一{一 十 十 十 十 一f-十 十 十 3ヵ 月 十 十 十 十 一F- -f-十 一f-十 十 十 4ヵ 月15捌
十 i 十 十 i 十 十 i 十 十 i 十 十 十 十 十 十 i十 一{一 ! 一}一 十 i 十 十 十+i+
糖 展 開 溶 液n一 ブ タ ノ ー ル,酢 酸,水(4:1:5) 発 色 剤 0.5,°oSenzidin Trichlor acetic acid 証i紙 東 洋 沢 紙No.50 展 開 32QC恒 温 器 中 … 昼 夜 第3表仕 込 日
Maltose12力
酬3胡14胡15ヵ
月
Maltose Glucose Galactose 十 十 十 十 十 一4一 一一1-一 十 十5)
有 機 酸 のPaper
Chromatography
試 料 調 整
味 噌 を5倍
の 蒸 溜 水 に 浸 出 した が 液 に 塩 基 性 酢 酸 鉛
の飽 和 溶 液 を沈 殿 が 出 な くな る ま で 加 え,沈 殿 をが 別
し,水 で 良 く洗1條 した 後,そ
の 沈 殿
t'rf-tの
水 中 に分
布 し,H2Sを
通 じて 硫 化 鉛 を 除 き,低
温 低 圧 に おい て
濃 縮 した もの を 試料 と した。
昭 和36年7月(1961)
展 開 溶 液n一 ブ タ ノ ー ル,蟻 酸,水(4:1:5)
発 色 剤 Bromphenol blue O.1%n-Butano1溶 液 炉 紙 東 洋 汐可紙NO.50(2×40) 展 開 320C恒 温 器 中 一一昼 夜 第4表 仕 込 日 Oxalic acid Tartaric acid Citric acid 2カ 月 十
3力
刷4ヵ
月
一f一 十 5ヵ 月 一{一 一29一 十 一}-M,alic acid 十 十 一F一 Lactic amid } 一f一 一f-十 一 一f-Succinic acid 十 一1-一 十 十 '十 ID. 結 論 お よ び 考 察 1)味 噌 は 熟 成 中2,3ヵ 月 目 よ り蛋 白 質 が 減 少 し た7そ れ は,麹 菌,細 菌 類 の 酵 素 に よ つ て ア ミ ノ 酸 に 変 化 し,更 に 進 ん で 塩 基 類,ア ン モ ニ ア,有 機 酸,フ ェ ノ ー ル 等 に 変 化 し て 味 噌 特 有 の う ま 味 を 呈 した 。 2)糖 ば2ヵ 月 目 よ りMaltose, Glucose, Galacto seを 検 出 し た 。3)ア ミ ノ 酸 は 熟 成 さ れ る に 従 つ て'増加 し,Cystine lysine, histidine, valine, aspartic acid, glutamic
acid, proline, tyrosine, phenyl alanine, isoleusine,
1eusine・metliionine以 _L12種 を 認 め,3カ 月 目 よ り Cystineの ス ポ ッ トは 認 め ら れ な か つ た 。
4) イ了1幾酸 は, oxalic acid, tartaric acid, citric acid・malic acid・lactic acid・succinic acidを 検 出
し た 。2,3力 刀 頃 か らIactic acid・succinic acid を 検 出 し た 。 5) ア ン モ ニ ア は3ヵ 月 よ り微 昼 で は あ る が 検 出 さ れ た 。 こ れ(一 ア ミ ノ 酸 が 進 ん で 麹 菌 等 の 酵 素 に よ つ て 変 化 し,形 成 さ れ た も の と 考 え ら れ る。 6)味 噌 の 脂 肪 は 食 味 上1,2ヵ 月1よ油 臭 く,不 快 で あ つ た が 熟 成 す る に 従 い 消 失 し,遊 離 脂 肪 酸 に 変 化 した も の と 考 え ら れ る。 7)以L一 の 結 果 か ら,味11曾 は 熟 成 の 進 む に 従 つ て ア ミ ノ酸,糖,有 機 酸 も増 し,酸 度 が 増 加 し て 味 噌 と し て の 外 観,色 沢,風 味 等 も よ く な り約5ヵ 月 日 に は 熟 成 が 終 り 調 味 料 と な る わ け で あ る 。 終 り に 本 研 究 に 終 始 御 懇 切 な る 御 指 導 を い た だ き ま した 平 教 授 に 深 く 感 謝 中 上 げ ま す 。 参 考 文 献 1)田 村 等:農 芸 化 学26(1952)。 2)原 春 樹:国 立 栄 養 研 究 所 報 告2(1928). 3)東 京 農 工 大 学 食 糧 化 学 教 室 食 品 学 実 験 法125P 岩 田 久 敬:食 品 化 学 佐 竹 一 夫:ク ロ マ トグ ラ フ ィ ー.