深 見 友 紀 子
(児童 学科 教 授)赤 羽 美 希
(東京藝術大学大学院修了)中 平 勝 子
(長岡技術科学大学eラ ーニ ング研 究実践 セ ンター助教)稗 方 撮 子
(児童学 科非 常勤 講師) 児 童 学科 学 生 にeラ ー ニ ン グ ピ ア ノ弾 き歌 い 教 材(「 教 員 ・保 育 者 養 成 の た め の ピ ア ノ実 技eラ ー ニ ング コー ス」(http://Oberon .nagaokaut.ac.jp/kwu/piano/)を 視 聴 させ,視 聴 前 後 の 演 奏 を比 較 分 析 した と こ ろ,歌 唱 面 を 中心 に概 ね 改 善 が み られ,eラ ー ニ ン グ ピ ア ノ弾 き歌 い教 材 は,履 修 者 の 実 技 力 向 上 に 有 効 で あ る こ とが わ か っ た。 一 方,長 時 間 視 聴 した 履 修 者 の 感 想 や,顕 著 に上 達 した 者 の演 奏 な ど を分 析 した 結 果,eラ ー ニ ング 教 材 の 限 界 や 対 面 指 導 に よ る補 完 の 必 要 性 な ど も明 ら か に な っ た。 キ ー ワ ー ド ピア ノ レ ッス ン 弾 き歌 い ブ レ ンデ ィ ッ ド ・ラ ー ニ ン グ eラ ー ニ ング 非 対 面 指 導 質 保 証 1.は じ め に 本 学児 童 学 科 にお け る ピ アノ弾 き歌 い実 技 レッ ス ンは,2年 次 の 前 期 の み 開講 され て お り,1 人 あ た りの レ ッス ン時 間 も一 週 間 に5分,多 く て10分 ほ ど しか な い と い う状 況 に あ る。 そ の た め,入 学 前 に ピ ア ノ学 習 経 験 の 乏 しい 学 生 が保 育 者 と し て必 要 な実 技 能 力 を授 業 内 で 習 得 す る の は非 常 に 困 難 と な っ て い る。 こ う し た状 況 に鑑 み,我 々 は,不 足 す る レ ッ ス ン時 間 をeラ ー ニ ン グ の 活 用 に よ っ て補 完 で きな い か と考 え た 。 そ して,リ ア ル タ イ ム(同 期)の 教 室 で の 授 業 とeラ ー ニ ン グ を組 み 合 わ せ て 教 育 の"質 保 証"を 目指 す ブ レ ン デ ィ ッ ド ・ラー ニ ング(Blended Leaming)に 着 目 し, 2006年 度 よ り児 童 学 科 を フ ィ ー ル ドと して研 究 に取 り組 ん で きた 。 こ れ まで に 蓄積 し て きた 研 究 を振 り返 る と, まず,2006∼2008年 の3ヵ 年 に わ た っ て,「 児 童 音 楽1」(2年 次 前 期 開 講)に お い て,教 室 で の 対 面 指 導 と並 行 して,延 べ300人 の 学 生 に 自 身 の ピ ア ノ弾 き歌 い 映 像 を録 画,提 出 させ る とい う実 践 を行 っ た。 そ して,演 奏 映 像 の提 出 回数 や提 出前 後 に行 わ れ た 実 技 試 験 の 点 数 な ど を 分 析 し た 結 果,演 奏 映 像 を 提 出 す る と い う 行 為 は ピ ア ノ 実 技 能 力 の 向 上 に 一 定 の 効 果 が あ り, 自 己 研 鐙 へ の モ チ ベ ー シ ョ ン を 持 た せ る こ と に も有 効 で あ る と い う結 論 に達 し た(深 見 他,2007, 2008,中 平 他,2007,K. T. Nakahira etc,2007)。 ま た,遠 隔 に い る 指 導 者 が 学 生 の 演 奏 映 像 に 対 し て 動 画 に よ る 助 言 を 与 え,助 言 前 後 の 学 生 の 演 奏 を 比 較 す る こ と な ど に よ っ て,非 対 面 指 導 の 効 果 や 限 界 を 示 唆 し た(深 見 他,2009)。 さ ら に こ れ ら の 実 践 と 並 行 し て,ピ ア ノ 弾 き 歌 い 模 範 演 奏,声 楽 模 範 演 奏 と ワ ン ポ イ ン ト ・ ア ドバ イ ス,注 釈 付 き 楽 譜,よ り良 い 歌 唱 の た め のFAQな ど か ら構 成 さ れ るeラ ー ニ ン グ 教 材 を企 画 ・制 作 し(中 平 他,K. T. Nakahira etc, X11:, 2008年4月 よ り 「教 員 ・保 育 者 の た め の ピ ア ノ 実 技eラ ー ニ ン グ コ ー ス 」 と し て イ ン タ ー ネ ッ ト配 信 を 開 始 し た(http://oberon。nagaokaut. ac.jp/kwu/piano/)o 上 記 の サ イ トは 次 第 に 音 楽 教 育 関 係 者 に 認 知 さ れ つ つ あ る が,こ の 教 材 の 効 果 に つ い て 我 々 は ま だ 十 分 に は 言 及 で き て い な い 。 同 時 に こ の 教 材 と対 面 式 レ ッ ス ン と を 組 み 合 わ せ た ブ レ ン デ ィ ッ ド ・ラ ー ニ ン グ の 有 効 性 の 検 証 も課 題 と 一35一ピア ノ弾 き歌 い 学 習 に お け るeラ ーニ ン グ教 材 の 効 果 して残 され て い る。 そ こ で,2009年 度 の 「児 童 音 楽1」 の 授 業 に お い て は,履 修 者 に 自 身 の ピ ア ノ弾 き歌 い演 奏 映 像 を 録 画,提 出 させ た後eラ ー ニ ン グ教 材 を 反 復 して 観 る よ う に促 した 。 そ して 一 定 期 間 の 自習 後 に 演 奏 映像 を再 提 出 させ,あ わ せ て視 聴 に対 す る感 想 を提 出 させ る こ とに よ っ て,eラ ー ニ ング 教 材 の 効 果 を調 べ る こ と に した 。 ピ ア ノ演 奏 の 分析 に 関 して は,打 鍵 ミス の 数 を算 出 し,リ ア ル タ イ ム で 演 奏 者 に フ ィー ド バ ッ クす る手 法(北 村,2003),打 鍵 時 の タ イ ミ ング を評 価 す る手 法(北 村 他,2007)な ど, コ ン ピュ ー タ を使 っ て 楽 譜 と打 鍵 の 差 異 を 明 示 す る分 析 手 法 が な され て い る 。 しか し,我 々 は ピ ア ノ 演 奏,歌 唱 が 混 合 した 演 奏 行 為 で あ る ピ ア ノ弾 き歌 い を取 り扱 っ て お り,デ ィ ナ ー ミ ク, ア ー テ ィキ ュ レー シ ョ ンを は じめ,演 奏 の姿 勢, 顔 の 表 情 に至 る,"表 現 全 体"の 技 能 向 上 の 度 合 い を 総 合 的 に捉 え る こ と を 目的 と し て い る と い う理 由 か ら,こ の よ う な 量 的 研 究 を行 わ ず, あ くま で も質 的 な 分 析 に終 始 し よ う と考 え た 。 本 稿 で は,視 聴 前 後 の演 奏 の 変 化 や 学 生 の 気 づ き な ど を考 察 し,上 記eラ0ニ ン グ教 材 の 効 果 を 概 観 す る と と も に,(対 面 式 レ ッス ン を 行 わ ず に)こ のeラ ー ニ ング 教 材 の 自習 の み で 際 立 っ て ピア ノ弾 き歌 い 実 技 能 力 が 向 上 した ピァ ノ初 心 者,ピ ア ノ上 級 者 の 学 生 の 演 奏 を例 に 挙 げ なが ら,eラ ー ニ ン グ教 材 の 効 果 や 対 面 指 導 と組 み合 わ せ る,ブ レ ンデ ィ ッ ド ・ラ0ニ ン グ の 必 要 性 な どに つ い て示 唆 した い 。 2.実 践 環 境 2.1 演 奏 映 像 の 録 画 方 法 お よびeラ ー ニ ン グ教 材 に つ い て q)演 奏 映 像 の 録 画 方 法 履 修 者 の 演 奏 映像 の 録 画 は 練 習 室 に設 置 した 録 画 装 置 「KS20」(「研 修 君 」)を 用 い て 実 施 さ れ た。 こ の装 置 は,富 士 フ イ ル ム(株)の 子 会 社, フ ジ ノ ン(株)が 開 発 した 動 画 コ ン テ ンツ作 成 シ ス テ ム で あ り,撮 影 用CCDカ メ ラ と8.4イ ン チ の タ ッチ パ ネ ル 液 晶 モ ニ タ,画 像 処 理 用CPU な どで 構 成 さ れ て い る。 本 実 践 で は,「 研 修 君 」 本 体 に プ リ ン タ を接 続 して バ0コ ー ド印 刷 を行 え る よ う に し,録 画 した 後 に書 き出 され るバ ー コー ドシ ー ル を指 導 者 に提 出す る こ とで"映 像 提 出"と み な し た。 履 修 者 は 自 身 の 演 奏 を撮 影 し,複 数 回 撮 影 し た 場 合 はそ の場 で 再 生 して 内 容 確 認 を行 い,最 も 出 来 栄 えが 良 い と判 断 した 演 奏 映 像 の バ ー コー ドシー ル を提 出 した 。 (2)eラ ー ニ ン グ 教 材 に つ い て 本 実 践 で 使 用 したeラ ー ニ ン グ教 材 「教 員 ・ 保 育 者 の ため の ピ ア ノ実 技eラ ー ニ ン グ コ0ス 」 は,〔 ピア ノ弾 き歌 い模 範 演 奏 〕 〔歌 唱 の 模 範 演 奏 〕 〔注 解 付 き楽 譜 〕 〔よ り良 い 歌 唱 へ のFAQ〕 か ら構 成 さ れ て い る。 図1に 〔ピ ア ノ弾 き歌 い 模 範 演 奏 〕 の トッ プ 画 面 を示 す 。 こ こで は,「 とん ぼ の め が ね」 「い ぬ の お ま わ り さん 」 「あ め ふ り く まの こ」 「思 い 出 の ア ルバ ム」 「ぞ う さん 」 「しゃぼ ん だ ま」 「森 の く ま さ ん」 の7曲 につ い て,「 指 の 動 き」 「顔 の 表 情 」 「全 体 の 雰 囲 気 」 の3ア ン グ ル の ピ ァ ノ 弾 き歌 い 模 範 演 奏 映 像 を掲 載 して い る。 図2は 〔歌 唱 の 模 範 演 奏 〕 で あ る 。 模 範 と な る歌 唱 映 像 と と も に各 楽 曲 を歌 う際 の ワ ン ポ イ ン ト ・ア ドバ イ ス が 動 画 お よ び文 章,楽 譜 で 示 され て い る。 図3の 〔注 解 付 き楽 譜 〕 は,豊 富 な 注 釈 が 書 き込 まれ た楽 譜(PDF形 式)で あ る。 図4に 〔よ り良 い 歌 唱へ のFAQ〕 の トップ画 面 を示 す 。 よ り良 い 声 を 出 す た め の ア ドバ イ ス が 文 章 や 写 真 に よ る解 説,動 画 に よ る 実 演 で 示 おもいでのアルバ ム 指の動き 顔の表情 全体の雰囲気 △ 各画像をタリックすると再生が 始まります △
「、た・r:・ 一「8LDア1しIlム 」の,王糧村 き 県c§ 〔FpFY多 式 ,4於KBi
図1 ピア ノ弾 き歌 い の模 範 演奏
教 員 ・保 育 者 養 成 の ため の ピア ノ実 技e一ラー ニン グコー ス ー歌唱の模範演奏 一 図2 歌唱の模範演奏 棚1臨 荊 薦◎圏脚%一 一一幽 加・'一ノ媚 駅 ・●oF砺 「・ ⑪ 翻 嚇 ・ノ 縮 ・d自1田 「r・ r Lt1ん だ玄 図3 注釈付 き楽譜 次に、自分でビアノを弾ぎながら、表芦で下のソ(中央ドの4度下のソ)のあたりから だんだん高い音に上がっていくと、途中で衰声では出なくなって、声がピックリ返って しまうところがあることに気づくでしょう。これより上は表声で出すには薫理があります から、裏声を便う必要があります。このように、0に 変えてあげることで、高い音域 を歌うことができるようになります。lVideol我戸と景戸をつTdけて0 女性ではレ∼ラあたりで裏声に変 わる人が多いようです。 曇寳(重 い寅} ブレイク 裏声(軽 い勘 図4 よ り良 い歌 唱 の た めのFAQ され て い る 。 2.2 実 践 内 容 の 概 要 q)対 象 「児 童 音 楽1」(2年 次 前 期 開 講)履 修 者105名 (2)実 施 期 間 と実 践 の流 れ ① 授 業 の 初 日(2009年4月7日),指 導 者 は履 修 者 に対 して,中 間実 技 試験(6月2 日)ま で の 期 間 に 前 述 の 「教 員 ・保 育 者 の た め の ピ ア ノ実 技eラ ー ニ ン グ コー ス」 に 掲 載 した 曲 の 中 か ら任 意 の 曲 を練 習 す る よ うに 指 示 した。 ②4月28日,指 導 者 は練 習 室 に設 置 して い る録 画 装 置 に つ い て 説 明 した 。 ③ 履 修 者 は② の録 画 装 置 を使 って 自 身 の 演 奏 を1曲(2曲 以 上 も可)録 画 し,提 出 し た(5月7∼13日)。 ④ 中 間実 技 試 験 後 の 最 初 の授 業(6月9日) に お い て,指 導 者 は 「教 員 ・保 育 者 の た め の ピ ア ノ実 技eラ ー ニ ン グ コ ー ス」 のURL を 履 修 者 に伝 えた 。 何 度 も繰 り返 して 閲 覧 す る こ と,視 聴 し た後 に 再 度 録 画 す る こ と, この 教 材 に 関 す る レポ ー トを提 出す る こ と を指 示 した 。 ⑤ 履 修 者 は練 習 室 に設 置 して い る録 画 装 置 を使 っ て,② で 録 画 した の と 同一 曲 を録 画 し,再 提 出 した(6月29日 ∼7月13日)。 ⑥ ⑤ の録 画 後,履 修 者 は このeラ ー ニ ン グ 教 材 や 自身 の 練 習 に対 す る レポ ー トを提 出 した(7月28日 締 切)。 (3)分 析 対 象 者 の 選 出 履 修 者105名 の う ち,1回 目の"映 像 提 出" を 行 っ た者((2)の ②)は97名,2回 目の"映 像 提 出"を 行 っ た者((2)の ⑤)は104名,レ ポ ー トを提 出 した 者((2)の ⑥)は103名 だ っ た 。1 回 目の 未 提 出 者 の 中 に は 録 画 装 置 の操 作 に不 慣 れ で あ っ た た め,未 提 出 者 と な っ た者 が 若 干 含 まれ て い る と推 測 さ れ る 。 「教 員 ・保 育 者 の た め の ピ ア ノ実 技eラ ー ニ ン グ コ ー ス 」 は イ ン ター ネ ッ ト上 に 公 開 さ れ て い るが,本 実 践 で は 別 に サ イ トの 入 り口 を設 け, 履 修 者 の サ イ トへ の ア クセ ス 状 況 を解析 し,閲 覧 時 間 な ど を記 録 した 。 一37一
ピア ノ弾 き歌 い学 習 にお け るeラ ー ニ ング教 材 の 効果 本 稿 で は,閲 覧 時 間 が 長 か っ た(30分 以 上) 者15名 を抽 出 し,視 聴 前 後 の演 奏 映 像 と レポ ー トを分 析 した 。 3.結 果1(全 体) 3.1 eラ ー ニ ン グ 教 材 視 聴 に お い て 参 考 に な っ た 点 2008年 度 の ア ン ケ ー トで は,ピ ア ノ 弾 き 歌 い 模 範 演 奏 の3ア ン グ ル(図1)の う ち 参 考 に な っ た と思 わ れ る ア ン グ ル(手 元53.8%,正 面 22.5%,全 体65.0% 複 数 回 答可),注 釈付 き楽 譜 を ダ ウ ン ロ ー ドした か/印 刷 し たか(67.5%/ 50.0%)な どに つ い て 質 問 し た。 今 年 度 は,ど の模 範 演 奏 や助 言 が ど うい った 観 点 か ら有 益 で あ った か,ま た,そ の模 範 演 奏 や 助 言 を ど の よ う に 自 身 の演 奏 に生 か そ う と し た か な ど につ い て 詳 細 に記 述 させ た 。 表1は,15名 の 履 修 者 が 参 考 に な っ た と評 価 した 項 目 とコ ンテ ン ッ との 対 応 表 で あ る 。 評 価 項 目 コ ン テ ン ッ テ ン ポ*1 ア ー テ ィ シ ュ レー シ ョン*2 曲 の イ メ ー ジ*3 顔 の表 情*4 演奏の姿勢 デ ィ ナ ー ミ ク 指 の動 き*7 歌 とピア ノの音 量 バ ラ ンス 音 符 ・休符 の長 さ 右 手 と左手 の音 量 バ ラ ンス 発音 発声 歌詞 の意 味 ブ レ ス の タ イ ミン グ 間違 いや すい 箇所 へ の気 づ き 呼 吸へ の意 識 自分 の声 を知 る ピア ノ弾き 歌い模 範 演奏 0 0 0 0 O*5 0 0 O O 歌唱模範演奏 0 O*6 0 ・ O *10 O 0 注釈付 き楽譜 0 0 0 0 O よ り良い 歌唱 のFAQ 0 O *9 ○ *11 0 0 表1 履修者が参考 になった と評価 した項目と教材 *1最 適なテンポの把 握,テ ンポを一定に保 つ ことな ど *2ス タッカー トとレガー トの区別,ア クセ ン トな ど *3 「しゃぼんだま」が悲 しい曲であ ることな ど *4 目を見開いてい ることな ど *5椅 子 の座 り方,顎 の角度 脱 力の状態,肩 の ようす,手 首の ようす,目 線 な ど *6顎 の角度,目 線な ど *7指 つかい,指 の動か し方,指 の形,タ ッチのやわ らか さな ど *8母 音の発音の仕 方,発 音 の明晰 さな ど *9鼻 濁音,母 音,促 音 の発音 の仕方な ど *10口 角を上げて大き く口を開ける,口 腔の状態,お 腹 か ら声 を出すな ど *11響 きのある高い声の出 し方,裏 声の 出し方,表 声 と裏声 との違いな ど 一38一
履 修 者 の 多 くは,〔 ピア ノ弾 き歌 い模 範 演 奏 〕 と 〔歌 唱 の 模 範 演 奏 〕 に 関 して,ほ ぼ 同程 度 参 考 に な っ た と して お り,〔 注 釈 付 き楽 譜 〕 に 関 して は,そ れ ぞ れ の ペ ー ス で 閲 覧 し,検 討 す る こ とが で き る とい う点 で,そ の 有 益 性 を認 め て い る。 また,〔 よ り良 い歌 唱 のFAQ〕 につ い て は, 参 考 に は な っ た もの の,充 実 した裏 声 の 出 し方, 表 声 か ら裏 声 へ(あ る い は そ の 逆)ど の よ うに 移 動 させ る か な ど,よ り具 体 的 な助 言 を求 め て い る こ とが わ か っ た 。 3.2 eラ ー ニ ン グ教 材 視 聴 前 後 の 変 化 表2は,15名 のeラ ー ニ ン グ教 材 視 聴 前 後 の 変 化 につ い て ま とめ た もの で あ る 。 通 常 の 試 験 時 の 採 点 と 同 等 の 基 準 で 評 価 を 行 っ た とこ ろ,15名 の う ち,上 達 が 顕 著 だ っ た 者 が2名,上 達 した 者 が9名,あ ま り変 化 の な か っ た 者 が4名 で あ っ た 。 ま た,ピ ア ノ演 奏 よ り も歌 唱 に お け る伸 び が 目立 っ た 。 学 習 歴 は 大 学 入 学 前 の ピ ア ノ学 習 年 数 を 表 し,※ は大 学 入 学 後,一 年 次 開 設 科 目 「ピ ア ノ入 門 」 お よ び プ ラ イベ ー トで レ ッス ン を受 け て い る者 で あ る 。 上 達 度 に 関 し て は,"非 常 に 向 上 し た"を ◎, "向 上 した"を ○ ,"あ ま り変 化 な し"を 一 で 表 記 し た。 履修者 A B c D E F G H 工 J K L M 0 演奏 曲 Zb/Zo Omo Omo 馳 Omo Ame Omo Sha/ Zb S捷 ・ . Ame/ エnu/ Mo Sha S1知 Mo ・ . 学習歴 15 10 1 9 7 i6X ユ0 o※ 7 4X 13 X 7 13 3 上達度 O 0 0 0 0 0 0 0 0 0 O 録 画(1回 目)→ eラ ー ニ ン グ視 聴 → 録 画(2回 目)にお け る変 化 適 正 な テ ン ポ に な っ た 。 口 も 大 き く開 け,大 き な 声 で 歌 お う と して い る。/ゆ っ た り と した感 じが 出 て い る。 ピア ノ 面 の進 歩 く歌 唱 面 の 進 歩 適 正 なテ ン ポ に な っ た 。 全 体 的 に 丁寧 に 歌 お う と い う意 欲 が み られ る 。 口 を 大 き く開 い て 歌 お う とい う意 欲 が 若 干 み られ る が,全 体 的 に 大 き な 進 歩 は な い 。 歌詞 の問違 いや うろ覚えは解消 され たが,全 体的 にはあま り進 歩はみ られない。 まだ 表 情 は乏 しい が,声 が よ く 出 る よ うに な っ て い る。 声 が よ く伸 び,言 葉 もは っ き り した が,幼 稚 な 歌 い 方 に な っ た。 寧 に な っ た。 ピア ノ演奏は丁 「っ」 の表 現 ,全 体 的 な 強 弱,「 あ ん な こ と, した 。 こ ん な こ と」 な どの 表 情 づ けが 向 上 歌唱 が非 常に向上 してい る。全体 的に際立 った進歩がみ られ る。/確 実に向上 し てい るが,テ ンポのゆれは直 って いない。 2回 目,フ レー ズ の 終 わ りを丁 寧 に 弾 こ う と して 逆 効 果 に な り, あ ま り向 上 が み られ な い 。 もた つ い て い る。 声量 は相 変わ らず小 さいが,全 体 的には向上がみ られ る。 eラ ー ニング教材か ら多 くを学 び,目 立った進歩 がみ られ る。ただ し,表情 の付 け す ぎ,テ ンポの揺れ が生 じて しまってい る。/ピ アノ弾き歌 い模範 演奏を真似 よ うとい う意欲 がみ られ る。た だ し,少 々焦 り気味 で,体 が前後 に動 いてい る。/ 歌詞 の意 味を よく理解 した歌 い方 にな っていて,ピ アノ と歌唱 とのバ ランス も向 上 してい る。 歌 唱 を 中 心 に 向 上 して い る。 ピ ア ノ の 左 手 が 重 い の が直 っ て い な い 。 2回 目,大 き く歌 お う と し,強 弱 を つ け よ う と い う努 力 が み られ る。 歌 が 大 き くな り,表 情 が 出 て い る。 テ ン ポ も上 が っ て い る。 歌 の ブ レス に 改 善 が み られ る が,別 の 箇 所 で ブ レ ス の 問題 が 生 じて い る。
To・ ・「と ん ぼ の め が ねj Zo・ ・ 「ぞ う さ ん 」 Omo・ ・「思 い 出 の ア ル バ ム 」 Ame・ ・ 「あ め ふ り く ま の こ 」
Sha・ ・ 「し ゃ ぼ ん だ ま 」 エnu・ ・ 「い ぬ の お ま わ り さ んJ Mo・ ・「森 の く ま さ ん 」
表2 eラ ーニ ン グ教 材 視 聴 前後 の変 化(閲 覧 時 間 の 長 か っ た者15名)
ピア ノ弾 き歌 い学 習 にお け るeラ ー ニ ング教 材 の効 果 4.結 果 ∬(顕 著 な 上 達 を した2名 につ い て) 4.1 eラ ー ニ ン グ 教 材 か ら学 ん だ事 柄 15名 の うち 最 も上 達 が 顕 著 だ っ た2名,Hと K(表2 グ レ ー 部 分)を 取 り上 げ,eラ ー ニ ン グ教 材 に 対 す る 感 想,自 身 の演 奏 へ の 評 価, 練 習 意 欲 な ど を 詳述 す る。Hは 大 学 入学 前 に ピ ア ノ学 習 経 験 が まっ た くな い 初 心 者,Kは 入 学 前 にす で に13年 間 の ピ ア ノ学 習 歴 を もつ 者 で あ る。 表3は,Hお よびKがeラ ー ニ ング 教 材 か ら学 ん だ事 柄 を そ れ ぞ れ の レポ ー トよ り抽 出 し, 整 理 した もの で あ る 。Hに つ い て は 「とん ぼ の め が ね」 を,Kに つ い て は 「い ぬ の お まわ り さ ん 」 を例 に した 。 4.2 視 聴 前 後 の 演 奏 の 詳 細 eラ ー ニ ング 教 材 視 聴 前 後 の 演 奏 映 像 を比 較 して,Hお よ びKがeラ ー ニ ン グ教 材 か ら学 ん だ 事 柄 に関 して 向 上 した か,変 わ らな か っ た か を調 べ,そ の結 果 を上 達 度 と し て表3に 示 した 。 "非 常 に 向上 した"を ◎ ,"向 上 した"を ○,"あ ま り変 化 な し"を 一,"ま っ た く変 化 な し"を × で 表 記 した 。 ピ ア ノ初 心 者Hは,テ ンポ が 軽 快 に な る な ど, eラ ー ニ ング教 材 を閲 覧 し,学 ん だ(と レポ ー トで 自己 申告 して い る)事 柄 の ほ と ん ど を実 現 さ せ て い る 。 一 方,閲 覧 時 に 気 づ か な か っ た (レ ポ ー トで は 書 い て い な い)事 柄 に つ い て は, 改 善 され た こ と,さ れ な か っ た こ とが あ る(楽 譜1) ピア ノ上 級 者Kの 場 合 は,模 範 演 奏 が 契 機 と な っ て 自身 の演 奏 に気 づ きが 生 じ,演 奏 イ メ ー ジ が 形 成 さ れ た事 柄 につ い て 大 き な進 歩 が み ら れ る が,気 づ い て い るが 表 現 で き て い な い 箇 所 もあ る。eラ ー ニ ン グ教 材 視 聴 後 のKの 演 奏 を 楽 譜2に 表 す 。 3・2(1)に お い て 最 も向 上 し た と判 定 さ れ た Hお よ びKで あ るが,そ の 演 奏 を詳 細 に 分 析 し て い く と,演 奏 中 の テ ンポ の 揺 れ(速 くな る こ と)に 気 づ きに くい な ど,両 者 と も改 善 して い な い 点 が 若 干 あ る こ とが わ か る。 ピア ノ初 心渚H(「 とん ぼの めがね 」) 上 達度 ピア ノ上級 者K(「 いぬ のお まわ りさん」)
磁
感 じた こ と ・わ かっ た こと 指 の 動 きが非 常 に滑 らか であ る。 適 切 な 指 つか い に よっ て音 が 途切 れ 途切 れ に な る こ とを防 ぐ ことが で きる。 (Hの 場 合)左 手に気 を とられ が ちで右 手 と左 手 の音 量バ ラ ンス も悪 いが,模 範演 奏では`左 手 に よ る伴 奏 の音 量 く右 手に よ るメ ロデ ィの音 量"と な ってい る。 手首 や腕 を しなや か に動 か してい るた め,ふ わ っ と軽 や か に演 奏 で きてい る よ うに感 じ られ る。 指が 丸 く,「 卵型 」 にな って い る。 表情 を 明 る くす る と声が よ く通 る。 目を見 開い て,頬 全 体 を上げ る よ うに歌 って い る。 0 0 0 0 0 0 模 範演 奏 ではペ ダル を使 用 して いた。 指 つか い がわ か った。 表 情豊 か に明 る く歌 う大切 さ を知っ た。 い ぬ とね こに な りきっ て歌 う。 「ま い この まい ご ・ ・」 の部分,ス ラー で弾 いて い る こ とがわ か った。 ス タ ッカ ー トは,通 常の スタ ッカー トで は な く, "丸 い感 じの"ス タ ッカー トで あ る。 「な いて ば か りい る」 の前 で 大 き くブ レス し,少 し間 をあ け て もよい。 呼吸 に関 す る動画 とテ キス トは有益 だ った。 母 音 が続 く時 は少 し言 い換 え る よい。 「ん 」 の発 音 には 口を閉 じるも の と閉 じな い もの が ある。 0 O O 0 0 0 自身の演奏に反映させたいこと(練習への期待) ・シ ド・(縫)は 一 と可愛 く聞こえて・・ た ので 真似 た い。 あ ま り椅子 に深 く座 らない。 鍵盤 にか じ りつ くよ うな格好(前 便姿 勢)で 弾か ない。 0 0 0 "い ぬ のお まわ りさん"や"迷 子 の子ね こちゃ ん" にな りきっ て歌 い,「 わん,わ ん,わ んわ 一ん」 で は困 っ てい る よ うす を表 そ う と思 った。 も う少 しゆ った りと した テ ンポで 弾 こ うと思 う。 0 1'笑 顔 で気 持 ち を込 め て歌 うよ うにす る と練 習 も楽 し くな りそ うで ある。 顎 が上 が らな い よ うに した い。 喉 で声 を 出 さず に腹 式 呼吸 を しよ う と気 をっ けた い。 0 0 0 表 声 と裏 声 を な め らか につ なげ る とよ うに訓 練 し よ うと思 う。 リラ ックス して 歌 うこ とを心 がけ よ う と思 う。 0 自己分析 ・今後の課題 喉 がつ ま った よ うな感 覚は減 った と思 う。 高 い声 を 出す には ど うした らよいか。 0 ペ ダル を踏 む とよ りレガ0ト で演 奏 で き るよ うに な った。 0 表3 eラ ーニ ン グ教 材 視 聴 に よ って 学 ん だ事 柄(H,K) テンポが 軽快 になるな ど, 和音 の長 さが短 く,軽快 になった クレッシェンドがよく表 現 されるよ うになった と ・ん ・ぼ ・の …と1音 つつ切 って 歌 ってい たの が レガー トに改善 した 鼻濁音 の 発音,改 善 されず このように演奏 して いた が や や均等 になった ここで フレーズが 切れ るの は改善 せず テ ンポが著 しく速くなって いた が,少 し改善 した 楽譜1 eラ ー ニ ン グ教材 視 聴 後 の変 化(H 「とん ぼ の め が ね」) 41
ピア ノ弾 き歌 い学 習 にお け るeラ ー ニ ング教 材 の効 果 テンポが定 まった 」-104 これらが雑 で大 きかったが,や や軽 く小 さくな った 佐 藤 義 美 作詩 大 中 恩 作 曲 伊 東 慶 樹 編曲 r.1 ⑧=視 賄 ⑭=視 聴後 このように歌 うの は改善 せず ㊧ 長く重い ⑧ 軽く短い 後奏 で はリタルダ ンドし0 終止 感 が出る レガ トで歌 えるよう1一なる スタ ッ力 トにな って しまう 改 差せ ず 誉葉 が はっキ りする 強 弱 の変化 が つ く 翻. 翻, 翻. o o . ペ ダル を踏 み,な め らかにな る ㊧ ラ @プ アM M, 改 善 した 一42一
ブレスが改善 強弱の変化がつく 表 現で きてい る 言葉 がは っきりしない 表 現 できて いる 遅 くなって しまった お ま わ り さん こ まっ て し まっ て ワン7ン ウン ワ_ン ワン の ワン ワ_ン 〔 ここが#ま っていたのが 蓬 ? , 楽譜2 eラ ーニ ング教 材 視 聴 後 の 変化(K 「い ぬの お ま わ り さん」) 5.考 察 5.1 eラ ー ニ ン グ教 材 視 聴 の 効 果 eラ ー ニ ン グ教 材 を長 時 間視 聴 し た履 修 者 は, 多 くの 点 に気 づ き,学 ぼ う と して い る こ とが レ ポ ー トか ら伺 え る 。 当 然 なが ら ピ ア ノ や 歌 唱 の 練 習 は 閲 覧 時 間 以 外 で も行 わ れ て お り,〔 注 釈 付 き楽 譜 〕 は ダ ウ ン ロー ドし印刷 す れ ば,い つ で も どこ で も閲 覧 す る こ とが で き る た め,実 際 の 自習 時 間 は か な り増 え て い る はず で あ る。 2回 の録 画 の 間 に 当 該 楽 曲 に 関 して は 一 度 も 対 面 式 の レ ッ ス ン を して い な い に も か か わ らず, 視 聴 前 後 の 演 奏 映像 を比 較 す る と,15名 中11名 に 実 技 力 の 向 上 が み られ る。 な か で も ピ ア ノ初 心 者Hと ピ ア ノ上 級 者Kの 上 達 は 目覚 し く,e ラー ニ ン グ教 材 を視 聴 して気 づ い た こ との 多 く が 実 現 され て い る 。 ま っ た くの 初 心 者 だ っ たHは,ピ ア ノ弾 き歌 い にお け る 基 礎 技 能 の ほ とん ど を習 得 した 。 具 体 的 に は,指 の動 きが 流 暢 に な り,口 の 開 き方 が 大 き くな っ た結 果,視 聴 前 に は喉 周 辺 部 で 停 滞 しが ち で あ っ た 声 の ポ ジ シ ョンが 上 が っ て よ く響 く声 に な っ て い る。 また,2回 目の 録 画 で は 感 情 表 現 面 で 向 上 し,語 りか け る よ う に 歌 う こ とが で き る よ う に な っ て い る 。 一 方,ピ ア ノ学 習 歴 の 長 いKは,歌 唱 に 重 点 を置 い て 視 聴 を した の だ ろ う。 声 の 響 きの 量 が 増 幅 し,声 質 に飛 躍 的 な 向上 が み られ,日 本 語 の 処 理 の 仕 方 が 非 常 に よ くな り,丁 寧 に お 話 を 聞 か せ る よ う な伸 び や か な歌 唱 へ と変 化 を遂 げ て い る。 次 に,ピ ア ノ演 奏 と歌 唱 と に分 け て 考 察 す る。 履 修 者 は,〔 ピ ア ノ弾 き歌 い 模 範 演 奏 〕 と 〔歌 唱 の模 範 演 奏 〕 に つ い て ほ ぼ 同 程 度 参 考 に な っ た と して い るが,実 際 の 履 修 者 の 演 奏 映 像 をみ る と,ピ ア ノ よ りも歌 唱 に お け る伸 び が 目立 つ 。 ピ ア ノ弾 き歌 い を 評 価 す る 際,ピ ア ノ よ りも歌 唱 が 与 え る 印象 が 強 い の は よ くあ る こ とだ が, ピ ア ノ演 奏 と歌 唱 をそ れ ぞ れ取 り出 して チ ェ ッ ク して も,歌 唱 面 で の 進 歩 が 著 しい の が 特 徴 で あ る 。 以 上 を ま とめ る と,eラ0ニ ン グ教 材 の 視 聴 は,初 心 者 に は 基 礎 技 能 の獲 得 の た め に,上 級 者 に は よ り一 層 高 次 の レベ ル の 表 現 技 能 獲 得 の た め に役 立 っ て お り,一 般 的 に は,歌 唱 面 で の 進 歩 を もた らす 傾 向 に あ る とい え る。 著 作 権 料 の 負 担 や サ0バ の 維 持 ・管 理 と い う 一43
ピア ノ 弾 き歌 い 学 習 に お け るeラ ー ニ ング教 材 の 効 果 問 題 は あ る も の の,一 度 制 作 す れ ば 授 業 時 間外 に 使 用 で き るeラ ー ニ ン グ教 材 は,い ず れ に せ よ教 材 と して 有 効 性 が 高 く,演 奏 映 像 の 提 出 と レ ポ ー トを課 す こ とで,履 修 者 の 自 己 トレー ニ ン グ を 十 分 に実 現 す る もの で あ る と結 論 づ け て よい だ ろ う。 特 に 大 学 入 学 前 に レ ッス ン経 験 が ない 者 が ピ ア ノ 弾 き歌 い に お け る基 礎 技 能 の ほ と ん ど を習 得 で きた こ とは,eラ ー ニ ング 教 材 の 活 用 が,不 足 す る レ ッス ン時 間 を補 完 で き る こ とを 実 証 した と考 え られ る。 5.2 対 面 指 導 と の ブ レ ン ドの必 要 性 一 方,飛 躍 的 に上 達 した2名 に 関 して も,e ラ ー ニ ン グ視 聴 だ け で は 改 善 しな か っ た 点 が あ る。 た と え ば,Hの 演 奏 に 関 して,テ ンポ の 揺 れ, 鼻 濁 音 の 発 音 の 仕 方,ブ レス の位 置 な どは 改 善 して い な い。Kに 関 して は,速 す ぎ る テ ン ポ に 伴 う少 々気 ぜ わ しい 雰 囲 気 や 過 剰 な(ピ ア ノ演 奏 の)ス タ ッ カ ー トは 直 っ て い な い 。 「気 づ い て い て も表 現 で き な い 」 「わ か っ て い る が 直 ら な い 」 と い う こ と は あ り得 る し,「 意 識 しす ぎ て オ ー バ ー な 表 現 に な って い る」 とい う こ と も あ る だ ろ う。 特 に,テ ン ポ の不 安 定 さは,提 出 時 に 演 奏 映像 を再 生 し,確 認 させ て い る に もか か わ らず,こ の2名 ば か りで は な く,他 の 履 修 者 に つ い て も矯 正 し に くい。 これ らの 未 改 善 点 に対 す る 助 言 は,い ず れ も 対 面 の ほ うが 効 率 的 に伝 わ る と思 わ れ,こ こ に 技 能 教 育 にお け るeラ ー ニ ン グ指 導 の 限 界 が あ る と い え る。 今 回 の 実 践 はeラ ー ニ ン グ教 材 視 聴 の 効 果 を分 析 す るた め の もの で あ り,2回 目 の 録 画 の 後 に対 面 式 レ ッス ン を実 施 して い ない が,対 面 指 導 とブ レ ン ドし なが ら,総 合 的 に き め 細 か な フ ィ ー ドバ ック を継 続 的 に 行 わ な けれ ば な らな い とい う こ とが よ り鮮 明 に な っ た と感 じる。 Hの 場 合 は,よ り良 い 息 の 支 え(身 体 の 使 い 方)を 意 識 す る こ とが さ ら な る 飛 躍 につ なが り, Kの 場 合 は,テ ン ポ を少 し遅 くす る だ け で 顔 の 表 情 に 注 意 を 払 う余 裕 が で きる は ず で あ る。 ま た,同 じ教 材 を 同 時 間視 聴 して も上 達 す る 者 と し な い者 が存 在 す る 。視 聴 後 の練 習 時 間 の 多 寡 も影 響 す る だ ろ うが,学 習 者 自身 が模 範 演 奏 と 自分 の演 奏 との 差 異 を 把 握 し,模 範 演 奏 な どか ら会 得 した こ と を 自分 の 演 奏 に 応 用 で きる よ う に な る こ とが 実 技 能 力 の 向 上 に は不 可 欠 で あ り,対 面 式 レ ッス ンに お い て,eラ ー ニ ング 教 材 の 観 方 の ポ イ ン トな ど も指 導 して い く必 要 が あ る だ ろ う。 6.お わ りに ∼ 今 後 の方 向 性 q)質 的 研 究 の 重 要 性 ピ ア ノ弾 き歌 い は,ピ ア ノ演 奏,歌 唱 を混 合 した 演 奏 行 為 で あ り,顔 の 表 情 や 姿 勢 とい っ た 視 覚 的要 素 な ど も含 む た め,ピ ア ノ演 奏 よ り も さ ら に コ ン ピ ュ ー タを使 用 した 定 量 的 な分 析 が 難 しい。 そ の た め,我 々 は,こ れ ま で履 修 者 の 演 奏 映 像 提 出 回数 や,中 間実 技 試 験 か ら期 末 実 技 試 験 へ の 点 数 の 上 昇 を計 測 す る な ど,履 修 者 の努 力 や 上 達 度 に 関 連 が あ り,か つ 数 値 で捉 え る こ とが で き る もの に つ い て分 析 を試 み て きた が,こ の 手 法 で は,eラ ー ニ ン グ を活 用 して 履 修 者 の ピ ア ノ弾 き歌 い 実 技 能力 を 向上 させ る と い う本 質 的 な 課 題 の 解 決 に は 迫 れ て い な い と 常 々 思 っ て き た。 そ こで 本 実 践 で は,履 修 者 に 「教 員 ・保 育 者 養 成 の た め の ピ ア ノ 実 技eラ ー ニ ング コー ス 」 を副 教 材 と して提 示 し,実 技 能 力 の 向 上 を図 る と と も に,eラ ー ニ ン グ教 材 視 聴 前 後 の 履 修 者 の演 奏 映 像 に対 す る質 的 な 分析 に こだ わ る こ と に した の だが,約100名 分,つ ま り約200ケ の 映 像 を"手 動 分 析"す るの は 困 難 で あ り,閲 覧 時 間 の 上 位15名 を抽 出 せ ざ る を得 な か っ た 。 1回 目 の録 画 の 後,録 音 曲 に 関 して 一 度 も対 面 式 レ ッ ス ン を実 施 して い な い の で,2回 目の 演 奏 映 像 に み られ る"伸 び しろ"は,eラ ー ニ ン グ教 材 視 聴 の 効 果 で あ る と判 断 で きよ う。 だ が,厳 密 に い う な らば,長 時 間視 聴 して実 際 の 練 習 は短 か っ た 者,閲 覧 時 間 は 短 か っ た もの の, 長 く練 習 した 者 が 混 在 す る だ ろ うか ら,閲 覧 時 間 二努 力 とは 必 ず し もい え な い 。 ま た,別 の 曲 に 関 す る レ ッス ン や 練 習 を積 み 重 ね た こ と に よ っ て生 じた 総 体 的 な 実 技 能 力 の 向上 も考 慮 し 一44一
な け れ ば な ら な い だ ろ う。 この よ うに,数 々 の 曖 昧 な 点 が 内 在 し,ま た 分 析 者 の 主 観 も入 りや す い の で 客 観 性 を維 持 す る こ と も困 難 で は あ るが,そ れ で も なお,履 修 者 に寄 り添 い,そ の 学 習 状 況 を レポ ー トな どで 把 握 しな が ら,個 々 人 の 実 技 能 力 が 向 上 して い くプ ロ セ ス を多 くの客 観 的情 報 か ら追 跡 す る こ との 意 義 を 我 々 は 強 く感 じて い る。 特 に ピア ノ 弾 き歌 い の 場 合 は さ ま ざ ま な 要 素 が 複 合 して い る こ と か ら,学 習 者 が 習 得 した技 能 を確 認 す る 方 法 と して,地 道 な 演 奏 映 像 の 分 析 お よ び 比 較 分析 が 有 効 で あ る こ と は い う まで も な い だ ろ う。 ② 量 的 な研 究 との 両 立 に 向 け て ∼ 「評 価 項 目 指 標 の作 成 」 本 稿 で は 模 範 的 な 成 長 を示 した 履 修 者 の 能 力 向 上 の有 り様 を詳 細 に分 析 す るな ど,一 貫 して 質 的 な分 析 を実 施 した の だ が,思 い が け ず 新 た な研 究 の 方 向 性 が 浮 か び上 が った 。 そ れ は,履 修 者 の 感 想 を カ テ ゴ ラ イ ズ す る た め に便 宜 上 設 定 した 評 価 項 目(表1)や,視 聴 前 後 の演 奏 を比 較 す る際 に 意 識 化 さ れ た 評 価 基 準 を使 用 す れ ば,質 的 な分 析 と 同時 に あ る程 度 の 定 量 評価 が で き るの で は な い か と い う こ とで あ っ た 。 つ ま り,教 員 ・保 育 者 養 成 にお け る初 歩 的 な ピ ア ノ弾 き歌 い に 限定 す る な らば,「 評 価 項 目指 標 」 を作 成 し,演 奏 映 像 に対 して 段 階 的 な 評 価 を行 え ば,そ の 評価 に客 観 性 を も たせ る こ とが で き る の で は な い か い う こ と,ま た,こ の よ う な 「評 価 項 目指 標 」 は,学 習 者 に はeラ ー ニ ン グ教 材 を視 聴 す る際 の指 標 や,自 身 の 演 奏 を 自 己 分 析 す る際 の 指 標 とな り,日 常 の 自己 ト レー ニ ング に 役 立 つ の で は な い か と い うこ とで あ る 。 「評 価 項 目指標 」 を使用 す る場合,コ ンピ ュー タ に よ る"自 動 分 析"と,人 間が 行 う"手 動 分 析"の2つ が あ る だ ろ う。 さ らに,ど う して も 対 面 で な け れ ば 分 析 で きな い 事 柄 もあ る に違 い な い 。 この あ た り を精 査 しな が ら,100余 名 の 学 生 の ピ ア ノ弾 き歌 い 能 力 を総 体 的 に 向 上 させ て い く こ とが 我 々 の今 後 の 課 題 で あ る 。 謝 辞 本 研 究 は,平 成21∼23年 度 科 学 研 究 費 補 助 金 基 盤(C)研 究 課 題(課 題 番 号21500964) 「ICTを活 用 した 教 員 ・保 育 者 養 成 機 関 に お け る ピ ア ノ 実 技 教 育 の 質 保 証 」(研 究 代 表 者,深 見 友 紀 子)お よ び平 成21年 度 京 都 女 子 大 学 研 究 経 費 助 成 の 補 助 を受 け て 行 わ れ た もの で あ る 。 注)JASRAC出1000198-001 参 考 文 献 中平勝 子,深 見 友紀 子,赤 羽 美希 「保 育系教 育 機 関 にお ける模範 映像提 示 ・練 習 映像 提 出 を併 用 した 実技 指導 の実 践」 『第23回 日本教 育 工 学 会全 国大会講演論 文集』pp.273-274(2007) 深 見友 紀子 「保 育者 養成 に おけ る ピアノeラ ーニ ングに向 けて一 学生 が演 奏録 画 を 自主 的 に提 出す る試 み一 」 『京都 女 子 大 学発 達教 育 学 部 紀 要 』voL 3 pp,31-40(2007) 深 見友 紀子,中 平勝 子,赤 羽 美希 「ピア ノ弾 き歌 い実技指 導 にお ける練習 映像提 出併 用 の効 果」 『京都 女子 大学 発達教 育 学部 紀要 』voL 4 pp. 19-27 (2008)
K T. Nakahira, Y. Fukami, M. Akahane, "Combining
Music Practicing with the Submission of made Videos for Pre-School Teacher Education"
the 15th International conference on Computers in Education pp. 573 — 576 (2007) 深 見 友 紀 子,中 平 勝 子,赤 羽 美 希 「ピア ノ 弾 き歌 い に お け る 遠 隔 ・非 対 面 指 導 の 効 果 と課 題 」 『京 都 女 子 大 学 発 達 教 育 学 部 紀 要 』vol.5pp. 31-40 (2009) 中 平 勝 子,深 見 友 紀 子,赤 羽 美 希 「ブ レ ンデ ィ ッ ドラ ー ニ ン グ に よ る ピ ア ノ弾 き歌 い 指 導 の た め のeラ ー ニ ング コ ンテ ン ツ の 設 計 」 『教 育 シ ス テ ム 情 報 学 会ReserchReport』vol.23 No. 1 pp.85-92 (2008)
K. T. Nakahira, Y. Fukami, M. Akahane, "Use of electronic media for teaching singing with
simultaneous piano self-accompaniment"
Proceedings of the Second International
Conference on Kansei Engineering and Affective Systems pp. 145 —150 (2008) 北 村 勝 朗,「 ス ポ ー ツ ・音 楽 ・芸 術 領 域 に お け る 「わ ざ 」 習 得 過 程 の 定 性 的 分 析 に よ る 「教 育 情 報 」 の解 釈 」 『教 育 情 報 学 研 究 』No.1pp. 77-86 (2003) 北 村 勝 朗,永 山貴 浩,斉 藤 茂 「優 れ た 指 導 者 の も つ メ ン タル モ デ ル 質 的 分 析 一 音 楽 指 導 場 面 に お け る教 育 情 報 の作 用 力 に 焦 点 を あ て て一 」 『教 育 情 報 学 研 究 』No.6pp.7-16(2007) 一45一
ピァ ノ弾 き歌 い 学 習 にお け るeラ ー ニ ング教 材 の効 果
Abstracts
We analysed piano playing and singing of students comparing the situations before and after their self-learning using e-Learning contents whose title is piano playing and singing for e-Learning made by ourselve (the URL is http://oberon.nagaokaut.ac.jp/kwu/piana) .
The analysis shows that learning itself can improve their singing. It means that applying self-learning with e-Learning contents has potential to increase the ability of students significantly. However, the analysis also shows that the method has limitation and that it need to be reinforced by view-to-view training.