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(1)

我が国はバブル経済の破綻により,目下,政治も経済も自信を失い,それに引

きづられるように教育のあり方にも目が向けられ,特に近年高等教育についても

かなり抜本的な改革の必要性が論じられています。

20年前,1980年頃には米国においては「Japan as number one」ともてはやされ,

日本経済は製造業の躍進により,自信に満ちて海外に進出し活躍してきました。

しかし,21世紀を目前にして,今や「American as number one」といわれるように

なり,我が国の現状とは逆に米国は空前の好景気を享受しています。20年前日本

が絶頂期にあった頃,米国では日本の成功の一因を教育制度面から分析し,日本

における初等・中等教育のレベルが高く,特に製造業等の現場で製造に直接携わ

る技術者の質が優秀であることを取りあげています。しかし,このように教育面

を分析したなかで,高等教育のレベルいわば大学教育のレベルについてはあまり

評価されておらず,企業のトップグループとして働く指導者の質は米国に比較し

て高くないものと評価しています。この米国における日本の教育についての分析

結果は1980年頃から現在までの約20年間を振り返って見ると,その指摘は当を得

たものであったように思われます。

1970年代から1980年代にかけては高度な品質管理の下に良質な自動車,家電製

品や鉄工産品等のような工業的生産品を製造していましたが,この段階では日本

の初等・中等教育のレベルの高さで十分世界の産業に伍していけました。しかし,

1980年代後半から脱工業化,情報化,グローバル化や先端科学技術競争の激化が

おこり,これまで我が国が得意としてきた安くて良質の工業製品を大量生産する

ことによって,発展してきた日本経済には大きな転機がもたらされることになり

ました。これまでのように「つくれば売れる」時代は過去のことで,いかに,消

費者のニーズにあった,多品種なものを必要なだけどうやって生産するかが産業

界のテーマとなり,各種業界では生き残りをかけて,少品種多量生産から,多品

種適量生産に向かわざるを得なくなりました。

1990年代になってからは,経済界からは日経連をはじめ,経団連,同友会や商

大学改革で思うこと

城西大学 学長

なか あきら

随 想

(2)

工会議所等から大学教育のあり方について議論されるようになり,高等教育への

提言がされるようになりました。ここで云われたことは,これまでのように企業

の集団の中に順応できるだけの人間ではなく,色々な競争に堪え抜くことのでき

る自立的で,主体的な判断能力をもち,独創性,創造性を発揮できる人材を育て

なければならないと云うことでした。それまで日本の企業が望んでいた人材はど

ちらかというと,個性派ではなく,集団の規律にしたがって順調な協調性に富ん

だ人材を求める傾向が強かったが,先にも述べたように,脱工業化,情報化,グ

ローバル化や先端科学技術競争の激化した時代には集団順応型人間では立ち行か

なくなってきました。

このような状況を克服するには,日本の高等教育をグローバルスタンダードに

合致した制度に改革することが急務となり,1990年代になってからは,我が国の

高等教育のあり方に本格的に目が向けられるようになり,文部大臣から「大学に

おける教育研究の高度化,個性化及び活性化等の具体的方策について」の諮問が

され,以来,多岐にわたる高等教育改革のための課題について審議され,

「大学設

置基準に関する省令が公布され,文部省の試料によると「今回の改正の趣旨は,

個々の大学が,その教育理念・目的に基づき,学術の進展や社会の要請に対応し

つつ特色ある教育研究を展開し得るよう,大学設置基準の大綱化により制度の弾

力化を図るとともに,生涯学習の観点から大学における学習機会の多様化を図り,

併せて,大学の水準の維持向上のため,自己点検・評価の実施を期待するもので

あります。

」とその改革の趣旨が示されています。

また,昨年10月には過去10年間の大学改革を総括し,高等教育全体の改革につ

いて,大学審議会は「21世紀の大学像と今後の改革方策について」―競争的環境

の中で個性輝く大学―という答申を提出しました。その中で述べられている基本

理念は四つあり,(1)課題探究能力の育成を目指した教育研究の質の向上。(2)教育

研究システムの柔構造化による大学の自律性の確保。(3)それを支える責任ある意

志決定と実行を目指した組織運営体整の整備,(4)さらにそうした取り組について

の多元的な評価システムの確立による大学の個性化と教育研究の不断の改善」と

云うことであります。

このような大学改革の理念を念頭におきながら,各大学ではその知的資源をも

って積極的に社会の発展に寄与できる学生を育てなければなりません。そのため

には大学自体が多様化,個性化を目指すなかで,個々の学生の特性に応じて,個

性を延ばし,大学で得た知識・技術を実社会の中で自由闊達に駆使して,個性あ

る成果を挙げられる人材を育てるための方策を練り上げなければなりません。

(3)

はじめに

1999年の1∼2月,大人を中心にインフルエン ザが流行し,集団生活の高齢者に肺炎による死亡 が多発しました。なぜ高齢者が死亡するのか,対 策はどうするのか,治療と予防をどうするのか, また,ワクチンは本当に有効なのでしょうか。

ヒトはなぜ,かぜをひくのか?

1)カゼの原因は? カゼの9割前後はウイルスで起こり,代表的な ものは図1の10種類前後1)です。冬はインフルエ ンザウイルスとRSウイルス,夏はエコー/エン テロ/コクサッキーの各ウイルスが流行します。 アデノウイルスとパラインフルエンザウイルスは その間を埋めていますが,季節と関係がない鼻カ ゼのライノウイルスやコロナウイルスも大事で す。 2)感染と発病は異なる! カゼの人の咳やクシャミはウイルスを含む飛沫 を空気中に飛散させ,これを吸い込むとのどや気 管支の粘膜に付着して細胞に侵入します。手指に 付いたウイルスを飲み込んで下痢や腹痛などが出 るカゼもあります。しかし,感染=発病ではあり ません。ウイルスが増殖しなければカゼの症状は 出ないのです。インフルエンザウイルスが感染し ても3割位の人は発病しません。ウイルスの量が 多かったり,体の抵抗力が弱かったり,気管支の 粘膜を痛めていたりすると発病しやすいのです。

インフルエンザやカゼ,肺炎に

どのように対処するか?

東北大学加齢医学研究所 胸部腫瘍内科助教授

わた

なべ あきら

12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 1985 西暦 1986 1987 年 インフルエンザA B コクサッキー1 2 3 エコーウイルス3 6 パラインフルエンザ2 3 アデノウイルス1 2 3 エンテロウイルス RSウイルス 冬のかぜ 夏のかぜ 通年のかぜ [文献1)より著者の許可を得て引用・模式化] 図1 季節とかぜの流行(小児急性気道感染症の咽頭拭い液からのウイルス分離状況)

SSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSS

(4)

高齢者はなぜ,肺炎で亡くなるのか?

インフルエンザ死亡率は乳児期と特に高齢者で 高く(図22)),その原因は全身・局所の免疫能 や感染防御能の未熟∼低下であり,多くが二次感 染の肺炎による死亡です。肺炎の原因菌として多 い肺炎球菌やインフルエンザ菌,モラクセラは口 腔・咽頭粘膜の常在菌であり,健康人からも分離 されますが,これらが直接,気道粘膜に感染(付 着,侵入)することは少なく,多くはインフルエ ンザなどのウイルスの感染により気道粘膜が荒れ た状態になって初めて感染が成立する3)のです。 上記の細菌は,口腔・咽頭粘膜に常在菌叢を形成 して外界からの病原体の侵入を防いでいますが, 誤嚥・落下・吸引によって無菌の下部気道(声帯 より下方の気管・気管支,肺)に時々落ち込みま す。通常,気道の線毛運動などの感染防御能によ り排除されて,感染の成立は滅多にありませんが, 嚥下反射の低下した高齢者が飲食物などを誤って 気管内に吸い込んで(=誤嚥)むせるのをよく見 ます。飲食物に付着した口腔・咽頭の細菌が下部 気道に侵入して感染が成立し易くなりますが,高 齢者ほどその機会が多く,ウイルス感染があれば さらに容易に感染が成立して肺炎にまで進みま す。

肺炎やカゼとインフルエンザの違いは?

1)いろいろなカゼ症候群の症状・所見 カゼは多くのウイルスで起こって,鼻閉,鼻汁, 咽頭発赤,発熱が共通します。ライノウイルスや コロナウイルスの鼻カゼは不快感や乾燥感,クシ ャミ,鼻閉,鼻汁,微熱が数日で軽快・消失しま す。アデノウイルスは主に咽頭痛や嚥下痛,咽頭 粘膜の発赤・腫脹,発熱があり,二次感染例は連 鎖球菌が多く関与します。夏カゼのエンテロウイ ルスはヘルパンギーナや手足口病,無菌性髄膜炎, 発疹,眼感染,下痢を起こします。パラインフル エンザウイルスは喉頭と下気道を侵し,乳幼児で は嗄声や犬吠様咳のクループとなりますが,いず れも加齢と感染の度に症状が軽度となっていきま す。 2)インフルエンザの症状・所見 インフルエンザの症状は特有です。1∼2日の 0 ∼ 4 5 ∼ 9 10 ∼ 14 15 ∼ 19 20 ∼ 24 25 ∼ 29 30 ∼ 34 35 ∼ 39 40 ∼ 44 45 ∼ 49 50 ∼ 54 55 ∼ 59 60 ∼ 64 65 ∼ 69 70 ∼ 74 75 ∼ 79 80 ∼ 84 85 ∼ 89 70 60 50 40 30 20 10 0 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 罹患率 死亡数 90 (歳) 罹 患 率 ︵ 人 口 10 万 人 対 ︶ 死 亡 数 ︵ 人 ︶ 図2 インフルエンザの年齢別罹患率および死亡率2) 1890 ウイルス亜型 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 1890 西暦 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 年 西暦 HSWN1 スペインかぜ プエルトリコかぜ イタリアかぜ 旧アジアかぜ 旧香港かぜ フォートディクスの小流行 H0N1 H1N1 H2N2 香 港 か ぜ H3N2 H5N1 ソ 連 か ぜ H1N1 アジアかぜ 香港の小流行 ★インフルエンザAウイルス発見 ※Harperの実験 図3 インフルエンザウイルスA型流行史/抗原循環説[渡辺 彰,新臨床内科学(第7版):137-141,1997より引用・追加]

(5)

潜伏期の後に,急に悪寒,発熱,頭痛,腰痛,倦 怠感などの全身症状と,鼻汁や咽頭痛,咳などの 呼吸器症状が出現し,40℃に及ぶ発熱が3∼5日 続いた後,頓挫的に解熱します。筋肉痛や関節痛, 嘔気・嘔吐,下痢・腹痛などを合併して重病感が 強く,伝播力も強いため大流行しますが,患者の 周囲の流行状況の確認などにより診断は容易で す。 3)肺炎の症状・所見 肺炎では,黄色膿性痰の出現が特徴的です。単 なるカゼやインフルエンザと思っていても,膿性 痰があれば細菌性気管支炎の存在がまず考えら れ,高熱,多量の喀痰,胸痛,息切れ・呼吸困難 などは肺炎への進展が濃厚です。慢性の呼吸器疾 患(肺気腫,気管支喘息,慢性気管支炎,肺線維 症,気管支拡張症,肺結核後遺症,塵肺など)を 持つ人は普段から咳,痰,息切れなどがあるので, 普段と現在の症状の違いを把握することが重要で す。いつもと同じ症状だと思っても油断は出来ま せん。

インフルエンザの流行は予測できるか?

1)A型インフルエンザの流行は繰り返す(図3) インフルエンザウイルスにはA,B,Cの3型 があり,最も大事なのはA型です。ウイルス粒子 の表面にはヘムアグルチニンとノイラミニダーゼ の2種のスパイクがあり,付着・侵入する感染の 過程と,細胞内でのウイルス増殖後の遊出過程で 働きます。A型は,スパイクの構造が変化し易い ため新型(=亜型)が出現し易く,日本では現在, A香港とAソ連の2亜型およびB型が流行を反復 しています。A香港型とAソ連型はすでに30年近 く流行しており,新型の出現が危惧されています。 全くの新型には,今あるワクチンが効かないから です。70年前のスペインかぜでは世界で数千万人, 日本でも30∼40万人が主に肺炎で死亡しました。 1997年の香港での新型インフルエンザが大騒ぎに なったのもそのためですが,大人と子供が半数ず つの発病者が計18名で,死亡は大人5名,子供1 名でした4)。全くの新型には大人も子供も共に免 疫がなく,むしろ大人の方が重症になるという歴 史的事実があります。新型に対するワクチンの開 発・製造・供給体制を構築することが急務です。 2)気象とインフルエンザ流行の相関 インフルエンザウイルスの生存率は気温と湿度 に よ っ て ほ ぼ 決 ま り ま す 。 表 1 は 1 9 6 1 年 に Harperが報告したマウス感染実験成績5)ですが, 気温と湿度の双方が低いほどインフルエンザの生 存率が上昇します。増殖や流行の条件も同様です。 なお,相対湿度(%)よりも絶対湿度(g/m3 大気1m3中の絶対水分量,ミリバールやヘクト パスカルがほぼ同じ単位)の方がよく相関しま す。 宮城県小児科医会は23年前から日本初の感染症 サーベイランスを,仙台市内科医会も17年前にウ イルス感染症と気象との相関解析を始めました が,成績を図4にまとめます。晩秋の仙台市で気 温と湿度が各々10℃,8g/m3を割るとRSウイ ルスやロタウイルスの流行が始まり,5℃,5 g/m3以下になるとインフルエンザが流行します。 32 24 20 ・ ・ ・ ・ ・ 8 7 23.78 14.95 12.05 ・ ・ ・ ・ ・ 5.36 5.01 16.9 10.9 8.9 ・ ・ ・ ・ ・ 4.1 3.8 ほぼ0% 3∼5% 3∼5% ・ ・ ・ ・ ・ 35∼40% 40%程度 気温 ℃ 湿度(相対湿度)=50% 水蒸気圧 mb(hp) 絶対湿度 g/m3 6時間後 生 存 率 9.51 5.97 4.82 ・ ・ ・ ・ ・ 2.47 2.30 6.8 4.4 3.6 ・ ・ ・ ・ ・ 1.9 1.8 17% 36% ― ・ ・ ・ ・ ・ 63% 66% 湿度(相対湿度)=20% 水蒸気圧 mb(hp) 絶対湿度g/m3 6時間後生 存 率 表1 気温・湿度とインフルエンザウイルスの生存率(Harper,1961)

(6)

この条件がこれらのウイルスの生存に好都合だか らです。春先に暖かくなってこれらの気象条件を 越えると流行はなくなりますが,15℃,10g/m3 を越えるとエコー/エンテロ/コクサッキー各ウ イルスの流行が始まります。これらのウイルスに 好都合の条件だからです。流行予測が可能のよう ですが,条件は地域によって違います。東京では 15℃,10g/m3,鹿児島市は10℃,7g/mがイン フルエンザ流行の分岐点のようです(表2)。気 象条件以外にも人口密度や免疫抗体保有の状況が 関わるからです6) 3)インフルエンザの流行予測 気象条件だけではウイルス流行の型は予測出来 ませんが,サーベイランスの成績から分かります。 春∼秋にもインフルエンザが少数ずつ発生してい ますが,その時期に多く分離されたウイルスの型 がその直後の冬に流行するのです。また,この型 は,前の冬の流行が終息する2月∼4月にかけて 新しい型として出現しているのです。これが分か るようになって,次の年の型を正確に予測してワ クチンを製造出来るようになりました。また,2 ∼4月に新しい型が分離されなければ,次の冬に は前の冬と同じ型が流行することも知られまし 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 月 30℃ 25℃ 20℃ 15℃ 10℃ 5℃ 0℃ -5℃ 30 25 20 15 10 5 0 8 g/m3 気温 絶対湿度 仙台市 宮城県 RS ロタ コクサッキー エンテロ エコー 絶 対 湿 度 患 者 発 生 数 イ ン フ ル エ ン ザ 気 温 図4 カゼの流行と気温,絶対湿度の相関6) 2.温度の低下 3.非流行期(春∼秋)の検出ウイルス 4.流行の継続期間は7∼10週間(型の異なるウイルスが出現すると延長する) *ハーパーの実験による6時間後の生存率 札幌,仙台 <      5g/m3         5℃          40∼60% 東京,関東 <      10g/m3         15℃             5% 鹿児島  <      7g/m3         10℃        20%   優位に検出されたウイルスが流行→流行はすぐ始まる ウイルス検出(−)→流行開始は遅れる(最初の検出の数週後に始まる) 絶対湿度 気温 ウイルス生存率* 1.湿度の低下(絶対湿度が重要) 表2 インフルエンザの流行を規定する4要素

(7)

た。流行の規模ですが,前年の流行が大規模なら ば免疫抗体を持つ人が多いので,次の年の流行は 小規模となり,前年の流行が小規模ならば免疫抗 体保有率が低いので,流行は大規模となります。 ただし,流行の型が異なればこれは通用しません。 型毎の免疫保有率調査が必要です。 仙台市内科医会では17年前からインフルエンザ 流行予測情報を会員に流しています。表3はその 要点です。平成7−8年の仙台ではAソ連型が流 行しましたが,8年の春から秋にかけて多く分離 され始めたA香港型が8−9年の冬になって流行 しました。流行は,絶対湿度が5g/m3を切った 12月初めから始まりましたが,8年9月に調査し た成人数百名の免疫抗体保有率が30%台後半と中 規模であったため,中規模の流行を予測したとこ ろ,そのとおりでした。仙台では,サーベイラン スと気象情報,抗体保有調査の成績が有機的に組 み合わされて正確な流行予測が可能となったので す7)

薬局店頭で注意すべき患者さんの症状は?

1)専門的治療の要否 カゼ症状の患者さんの中から,病院や診療所で の専門的治療の必要な人を見分けることが重要で す。肺炎はもちろんですが,通常のカゼやインフ ルエンザでも専門的治療の必要な例があります。 2)肺炎を疑う症状・所見 肺炎を疑うのはまず膿性痰ですが,高熱,胸痛, 息切れ・呼吸困難,頻回の呼吸があれば疑いは濃 厚なので,医療機関受診を勧めて下さい。血中の 酸素が少ないと唇や手の爪が紫色になります(= チアノーゼ)が,慢性呼吸器疾患のある人に出易 いので要注意です。気管支喘息の方は,喘鳴発作 (息を吐くのが困難でヒューヒューという呼吸音 を聞く)を伴うことも多く,やはり要注意です。 3)肺炎以外の重要な症状・所見 食欲不振や体力を消耗して水分補給がうまく行 かないと,高齢者ほど簡単に脱水となります。体 内の電解質バランスも崩れることが多く,重症に なると,一見肺炎とは思えないような意識低下や ボケ症状が急に出たりします。医療機関ではまず 補液(点滴)を行って脱水と電解質の是正を図り ます。また,乳幼児で警戒すべきものに,脱水症 状と共に脳炎・脳症の合併があり,神経症状,精 神症状を伴います。他にも筋炎,横紋筋融解症, 心筋・心膜炎の合併が見られることがあります4) ので,いずれもすぐ医療機関へ受診させて下さ い。 4)カゼは万病のもと 「カゼは万病のもと」とは,カゼと似た他の病 気であったり,慢性病がカゼによってこじれるこ とを言うのです。中でも,肺癌と肺結核が重要で す。咳や痰,発熱が2週間以上長引く例はこれら が隠れていることがあるので,注意を要します。

インフルエンザの診断は?(表4)

インフルエンザ・ウイルスの検出は難しく,従 来は,発病前後での4倍以上の抗体価上昇をもっ て確定診断としましたが,病状が改善した2∼4 週間後に初めて分かるのでは役に立ちません。結 局,インフルエンザに特徴的な症状と所見や患者 周囲の流行を確認する臨床診断に頼っていまし た。しかし,新しい迅速診断法が導入され始めま 第45週(11月02∼09日)  7.3 g/m3 第46週(  10∼16日)   5.7 第47週(  17∼23日)   5.2 第48週(  24∼30日)   5.0 第49週(12月01∼07日)   4.4 ウイルスの検出 11月19日 45歳 男      27日  1歳 女       29日 11歳 男        19歳 女       30日 65歳 男        14歳 女         12月 2 日  3 歳 女        1 歳 男 からA香港型(H3N2)が検出されました。 11月第48週から,インフルエンザが流行して よい5.0 g/m3を切り始めました。 小学校や中学校の生徒を含む広い年齢層で検 出が認められており,流行は既に始まってい ます。成人の抗体保有率が30%台なので,中 等度の流行が予測されますが,この流行は7 週から10週継続して終わると思われます。 暦週 絶対湿度 表3 インフルエンザ流行予測(第3報)[平成8年12月9日]

(8)

した。平成11年1月から酵素免疫法によるA型イ ンフルエンザ迅速診断キットが使えるようになり ました。外来や病棟で15分程でA型の確定診断が つけられます。このように簡便で迅速な検査法が もっと廉価になって普及して欲しいものです。

インフルエンザの予防と治療は?

1)一般的な予防策と治療法は? 予防では外出後の手洗いやうがい,規則正しい 生活,バランスのよい適量の食事,十分な睡眠, 酒と煙草の注意などが重要です。発病したら,安 静と保温,保湿,栄養・水分の補給に努めますが, 乳幼児や高齢者が特に重要です。入浴は原則とし て禁止し,食事は食欲に従いますが,強い食思不 振に注意します。対症療法は解熱・鎮痛薬,非ス テロイド性消炎薬を基本とし,症状に応じ蛋白分 解酵素薬,鎮咳去痰薬,含嗽薬,抗ヒスタミン薬 を処方します。細菌二次感染例は広域ペニシリン 薬や第2,第3世代セフェム薬,マクロライド薬 を投与し,慢性呼吸器疾患保有例にはニューキノ ロン薬を投与します。抗ウイルス作用を持つ抗菌 薬はないものの,マクロライド薬は,私や他の施 設の少量長期内服例でカゼの罹患回数が有意に減 少したり,試験管内実験で呼吸器ウイルスの感染 抑制作用が確認される7)など,再検討が必要で す。 2)インフルエンザ・ワクチンのありかた インフルエンザ予防の基本はワクチンですが, 日本では,1980年代にワクチンの副作用禍がマス コミによって必要以上に喧伝されたり,ワクチン の有効性そのものに疑問が投げかけられたりし て,1994年に予防接種法が“改正”されました。 接種率が急激に低下しましたが,直後からの乳幼 児のインフルエンザ脳炎・脳症の増加や,1998− 99年に見られた高齢者死亡の増加を招いた,とも 考えられます。ワクチン接種希望者は,香港の新 型ウイルス騒ぎもあって急増しましたが,1997− 98年のシーズンは75万人分,98−99年は150万人 分の供給があっても全く足りない状態となりまし た。いったん廃止した製造ラインの再開はメーカ ーにとっても困難であり,供給はゆっくりとしか 戻りません。誤った判断のツケではないでしょう か。 この間,諸外国ではワクチン接種率が順調に上 昇しています。どこが違うのでしょうか。諸外国 の接種対象は主に集団生活の高齢者であり,接種 は1回のみです。一方,日本の接種対象は従来, 殆どが学童で2回接種でした。全く異なりますが, 死亡例の多くは高齢者と乳児です。ワクチン接種 の対象はまず高齢者と乳児とすべきです。高齢者 は,過去に何回もインフルエンザに罹患して免疫 に記憶があるので,1回の接種で免疫抗体は十分 に回復しますが,2歳以下の乳幼児の殆どはイン フルエンザの洗礼を受けていませんから,1回で は免疫が十分にはつきません。2回接種の対象で す。それ以上の年齢ならば1回で十分です。そう すれば150万人分を300万人分として使えます。 3)インフルエンザ・ワクチンの有効性 ワクチンの有効性は既に実証されています。表 5の成績は私が調べた範囲内だけですが,諸外国 1. ウイルス分離,抗原証明(発病3日以内の咽頭拭い液やうがい液)  1)孵化鶏卵培養10日卵の羊膜腔内接種  2)MDCK細胞を用いる組織培養(マイクロプレー法など)  3)シェル・バイアル法(培養細胞でのCPE出現前にモノクローナル抗体を用いて検出)  4)RT-PCR法によるインフルエンザ特異RNAの検出  5)EIA法によるA型インフルエンザ迅速診断キット

         (Directigen Flu AR, Becton Dickinson,USA) 2. 血清学的診断(ペア血清が望ましい)

 1) 赤血球凝集抑制試験(HI test)  2) 補体結合反応(CF test)

(9)

は1回接種の成績です。ワクチンの有効性に関し て「流行の型が本当に合うのか?」という疑問も ありますが,サーベイランスによって次のシーズ ンの流行の型がほぼ予測可能となりました。春先 の小流行の型や免疫抗体保有状況など種々の情報 を総合して細かな型を決めており,A香港型とA ソ連型,B型の3種が混合されています。副作用 の確率は極めて小さくなり,重症は数百万人に一 人です。しかも,1994年の予防接種法改正では高 く評価してよい健康被害に対する厚い保障が,こ の場合にも受けられるようになっています。 4)抗インフルエンザ・ウイルス薬 ワクチンの効果は接種後1∼2週間後から出て きます。効果が出る前に感染・発症したり,種々 の理由でワクチンを接種しなかったような例で抗 インフルエンザ・ウイルス薬が適応となります。 表6は抗インフルエンザ・ウイルス薬の作用機序 別分類です。アマンタジン(シンメトレルR)が わが国でも使えます。欧米より20年以上遅れて昨 年11月からA型インフルエンザ・ウイルスの適応 が認められました。急な認可の背景にはワクチン の増産が困難だったこともありますが,有効な抗 インフルエンザ薬を正々堂々と使えるようになっ たのは喜ばしいことです。副作用や耐性化の問題 があるので,集団生活の高齢者が主な適応と考え ますが,感染と発病の防止効果が70∼90%,治療 効果はやや低いものの,発病後48時間以内なら軽 症化の効果があります。成人には100∼200mg/日, 治療は3∼5日間,予防はインフルエンザ流行中 の5∼7週間とします。しかし,この長い予防投 与期間を考えると,インフルエンザ対策の基本は やはりワクチンであり,抗インフルエンザ・ウイ ルス薬はワクチンを補完する存在と考えられま す。 GG-167とRo64-0796が日本で治験中です。い ずれも臨床効果が高く,B型にも効きますが,実 用化まであと数年かかります。アマンタジンより 有用性が高いと言われており,期待が持てます。

薬剤師としてここを注意してほしい

種々の薬効の感冒薬(OTC薬)があるので患 者さんの症状に合わせると共に,『薬局店頭で注 意すべき患者さんの症状』で述べたように,医療 機関を受診すべき状態かどうかの観察をお願いし ます。また,医師が処方した複数の薬剤の相互作 1.吸着,侵入,脱殻のインヒビター   1)アマンタジン/リマンタジン   2)BMY-27709   3)PM-523 2.RNA複製のインヒビター   1)リバビリン   2)RNAエンドヌクレアーゼ(PB2)インヒビター 3.細胞からの遊出のインヒビター   1)GG-167   2) Ro64-0796(GS4104) 表6 作用機序別に見た抗インフルエンザウイルス薬 1.ワクチン接種で入院の必要は約70%減少,死亡率は約80%減少する1,2,3)   1)Howells CH, et al,Lancet i:381-383,1975

  2)Patriaca PA, et al,JAMA 253:1136-1139,1985   3)Gross PA, et al,Arch Intern Med 148:562-565,1988

2.高齢者対象の二重盲検試験(Govaert ME,et al,JAMA 272:1661-1665,1994)    ワクチン接種者927例中37例(4%)がインフルエンザ感染      〃   未接種者911例中82例(9%)が 〃    〃 p<0.001 3.本邦の60歳以上の入院患者での比較(発症例/調査例)   1)柏木(日本臨床 55:2751,'97) 接種群 5 /92,非接種群23/213(p<0.1)   2)池松(感染症誌 72:60,'98)   〃 4 /86, 〃 12/123(p<0.1)   3)稲松(日医会誌 120:1009,'98) 〃 4 /16, 〃 49/84(p<0.05) 表5 インフルエンザワクチンの有効性は実証されている

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用のチェックをお願いします。医師はこの方面に は意外と暗いものです。また,薬剤,特に抗菌薬 については,患者さんへの適正使用の指導をお願 いします。カゼに限らず感染症の殆どは急性症で す。適正使用によって治療効果が上がります。

おわりに

インフルエンザ流行年には日本の平均寿命が低 下します。西欧では『インフルエンザは老人の最 後のともしびを吹き消す』とも言われます。それ ぞれの立場で正しく対処することを願うもので す。 文 献 1)沼崎義夫,ほか:わが国における小児急性気道 感染症,第一報,新たに開発されたマイクロプ レート法によるウイルスの分離.感染症学雑誌 60:840−848,1986 2)加地正郎,ほか:新型インフルエンザパンデミ ック.南山堂,1998年発行 3)横山 武:かぜに代表される軽症肺感染症の病 理.綜合臨牀 30:2844−2849,1981 4)渡辺 彰:警戒すべきかぜ症候群罹患後の合併 症.かぜ症候群−今冬の傾向と対策−.インタ ーサイエンス社,1999年発行 5)Harper,G.J.:Airborne micro-organisms; survival tests with four viruses. J.Hyg. Camb. 59:479−486,1961 6)庄司 眞:かぜの流行と季節.日本薬剤師会雑 誌 47:1797−1805,1995 7)渡辺 彰:かぜ症候群とインフルエンザの流行 予測.Therapeutic Research 19:1213−1217, 1998

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1.高脂血症とはどういう病気か

高脂血症というのは,血液中の脂質が異常に増 加した状態です。血液の中には,コレステロール, リン脂質,トリグリセライド(中性脂肪ともいい ます),遊離脂肪酸という4種類の脂質がありま すので,これらのいずれかが増えた状態が高脂血 症ということになりますが,一般には動脈硬化と の関係で問題となるコレステロールあるいはトリ グリセライド(TGと略します)が増えた状態を 高脂血症と呼んでおります。 脂質は水に不溶のため,そのままの形では血液 中に存在できません。そこで,蛋白質と結合して 複合体を形成することにより血液中に溶けた形で 存在しています。これをリポ蛋白といいます。リ ポ蛋白は球状の微粒子で,比重によって4つに分 けられています。一番大きくて比重が軽いのがカ イロミクロン,次いで超低比重リポ蛋白(VLDL), 低比重リポ蛋白(LDL),高比重リポ蛋白(HDL) の順となり,次第に小さくなっていくとともに, 比重は重くなります。

2.リポ蛋白はどのようにはたらいている

のか

食物として摂られた脂肪は小腸で吸収され,カ イロミクロンとなって血液中に現われます。カイ ロミクロンはTGを大量に含んでおりますが,こ の中の一部は毛細血管を通過する際にリポ蛋白リ パーゼ(LPL)という酵素によって分解・除去さ れ,エネルギー源として脂肪組織に貯えられます。 TGの一部を失ったカイロミクロンは,やや小型 となり組成も変りますので,レムナントと呼んで 区別しております。カイロミクロンレムナントは 肝臓に取り込まれ,代謝されます。 肝臓は脂質の合成が盛んな臓器でありますが, 作った脂質をVLDLとして血液中に送り出しま す。VLDLもTGを多く含んでおりますので,カイ ロミクロンと同様の代謝を受けまして,やや小型 の中間比重リポ蛋白(IDL)となります。IDLは コレステロールとTGに富んだリポ蛋白ですが, 肝臓にある肝性TGリパーゼ(HTGL)という酵 素の作用を受けてTGの大部分を失い,コレステ ロールを多く含むLDLとなります。そして,LDL は身体中の細胞に必要とするコレステロールを供 給することになりますが,細胞がLDLを取り込む 際に重要な役割を果しているのがLDL受容体で す。 身体中の各細胞で不要となったコレステロール はHDLが回収して肝臓へ運んでいきます。HDL は主として肝臓と小腸で産生されますが,カイロ ミクロンやVLDLが代謝される際に表層の脂質お よびアポ蛋白からも作られることがわかっていま す。できたばかりのHDLは円盤状をしています が,コレステロールの含有量が増えるとともに球 形となり,次第に大きさを増して,肝臓に取り込 まれるわけです。

3.高脂血症はなぜおこるのか

高脂血症には原発性(一次性)と続発性(二次 性)があります。 原発性高脂血症は遺伝子の異常が原因でおこる ものであり,表1のように分類されています。こ の中で重要なものは,家族性高コレステロール血 症,家族性複合型高脂血症,特発性高コレステロ ール血症です。 家族性高コレステロール血症というのは,LDL 受容体の遺伝子の異常によってもたらされ,ヘテ

シリーズ 生活習慣病③

高脂血症とつきあう

――生活習慣病としての高脂血症――

東京都国民健康保険団体連合会 福生病院 院長       

中谷

な か や

矩章

のりあき

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ロ接合体とホモ接合体があります。ヘテロ接合体 は500人に1人の頻度で出現し,LDL受容体が正 常の半分しかないために,血液中のLDL-コレス テロール(LDL-Cおよび総コレステロール値が正 常の約2倍となります。ホモ接合体は100万人に 1人の頻度ですが,LDL受容体が欠損しているた めに,血液中のLDL-Cおよび総コレステロール値 が正常の約4倍となります。いずれも早期に動脈 硬化をおこし,ホモ接合体では10歳代で,ヘテロ 接合体では40歳代で心筋梗塞をおこします。 家族性複合型高脂血症では遺伝子はまだ解明さ れていませんが,一般に血液中のコレステロール とTGが増加するとともに,家系内に種々の型の 高脂血症が高頻度に認められるのが特徴です。血 清コレステロールの上昇は,家族性高コレステロ ール血症ほどではなく,多くは300mg/dl以下で あります。頻度は100人に1人といわれており, やはり動脈硬化をおこしやすいことが知られてい ます。 特発性高コレステロール血症においても家系内 にコレステロール値の高い人が多く認められるの ですが,遺伝子はまだ同定されていません。恐ら く弱い遺伝子がいくつか重なって高コレステロー ル血症をもたらしているものと考えられます。頻 度としては,これが最も多いといえます。この場 合も家族性高コレステロール血症ほどコレステロ ール値は高くなりません。 二次性高脂血症というのは,他に脂質代謝異常 をきたす疾患や原因があって,それによって高脂 血症が引き起こされるものです。代表的なものと して,表2に示すような疾患や原因があげられま す。食事に由来するものは,一般には二次性高脂 血症には含めません。 甲状腺機能低下症ではコレステロールの増加が 特徴的であります。高コレステロール血症は比較 的早い時期から出現しますので,原病の早期発見 に役立つこともあります。LDL受容体の活性低下 が主な原因と考えられます。 糖尿病では高脂血症がよく認められ,TGの増 加が特徴的であります。しかし,HDL-コレステ ロール(HDL-C)の低下も高頻度に認められます し,総コレステロール,LDL-Cの増加を伴うこと も多いといえます。VLDLの合成亢進と異化障害 の両方が関係しますが,どちらが主体となってい るかは糖尿病の状態によって異なります。 表1 原発性高脂血症の分類 1)原発性高カイロミクロン血症 家族性リポ蛋白リパーゼ欠損症 アポC-Ⅱ欠損症 原発性Ⅴ型高脂血症 特発性高カイロミクロン血症 2)原発性高コレステロール血症 家族性高コレステロール血症 家族性複合型高脂血症 特発性高コレステロール血症 3)内因性高トリグリセライド血症 家族性Ⅳ型高脂血症 特発性高トリグリセライド血症 4)家族性Ⅲ型高脂血症 5)原発性高HDL-コレステロール血症 1)内分泌代謝疾患 甲状腺機能低下症 クッシング症候群 先端肥大症 糖尿病 肥満 痛風 神経性食思不振症 糖尿病(Ⅰ型) ウエルナー症候群 妊娠 2)肝疾患 閉塞性肝・胆道疾患 肝癌 3)腎疾患 ネフローゼ症候群 慢性腎不全 4)免疫異常 全身性エリテマトーデス(SLE) 骨髄腫 5)薬剤など ステロイドホルモン サイアザイド β遮断薬 シクロスポリン 経口避妊薬 アルコール 表2 二次性高脂血症をきたす疾患 トリグリセラ イドの増加 コレステロ ールの増加

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肥満においては,TG,コレステロールの増加, HDL-Cの低下が認められますが,特徴的なのは TGの増加です。肥満の中では内臓脂肪蓄積型の 肥満で著しいといえます。肥満者では肝臓におけ るTGの合成が亢進しており,それにつれてコレ ス テ ロ ー ル も 上 昇 す る も の と 考 え ら れ ま す 。 HDL-Cの低下は,肥満に伴うインスリン抵抗性の た め に L P L 活 性 が 低 下 し , カ イ ロ ミ ク ロ ン や VLDLの異化が障害されるためと考えられます。 ネフローゼ症候群においては,軽症の場合コレ ステロールのみの増加のことが多いといえます が,中等症から重症になるとTGの増加も認めら れるようになります。HDL-Cは一般に低下しま す。 薬剤によるものとしては,副腎皮質ホルモン, 降圧薬のサイアザイド,β遮断薬,免疫抑制薬と して用いられるシクロスポリン,経口避妊薬など があげられます。

4.なぜ高脂血症は生活習慣病なのか

高脂血症は不適切な食事や運動不足が原因とな っておこっている場合が多いからです。 エネルギーの過剰摂取は,肥満の原因となるだ けでなく,TGの増加,コレステロールの上昇を もたらします。特にエネルギーの過剰が脂肪に由 来する場合にはコレステロールの上昇が大きく, 炭水化物に由来する場合はTGの上昇が大きいと いえます。 食事中のコレステロール量が多い場合も血清コ レステロールの上昇をもたらしますが,この反応 には個人差があり,上昇するレスポンダーと上昇 しないノンレスポンダーがあることが知られてい ます。 食事中の脂肪に含まれている脂肪酸は,大きく 分けて,飽和脂肪酸,一価不飽和脂肪酸,多価不 飽和脂肪酸に分けられますが,飽和脂肪酸は血清 コレステロール値を上昇させ,多価不飽和脂肪酸 は血清コレステロール値を低下させることが知ら れています。そして,飽和脂肪酸のコレステロー ルを上昇させる力は,多価不飽和脂肪酸がコレス テロールを下げる力の倍あることも知られており ます。 炭水化物や砂糖を多く摂ると,血清TGが増加 し,HDL-Cが低下します。 アルコールは,一般にTGの増加をもたらし, HDL-Cも増加させますが,TGに対する影響は個 人差が大きく,LPL活性が低下している者で上昇 が 著 し い と い え ま す 。 そ し て , こ の 場 合 に は HDL-Cの増加も認められません。 食物繊維には,ペクチン,マンナン,グアガム などの水溶性のものと,セルロース,ヘミセルロ ース,リグニンなどの水に難溶性のものがあり, 水溶性のものは腸管で胆汁酸やコレステロールの 吸収を阻害して血清コレステロールを低下させる ようにはたらきます。また,難溶性繊維は糖質の 吸収を抑制して肥満を予防するようにはたらきま すので,TGの低下をもたらします。したがって, 食物繊維の摂取不足は高脂血症の原因となりま す。 運動不足は,VLDLの代謝を遅延させ,TGの増 加とHDL-Cの低下をもたらします。総コレステロ ール,LDL-Cについては,一致した成績となって おりません。

5.放置しておくとどうなるか

高コレステロール血症が動脈硬化の原因となる ことは,いろいろな成績から,すでに間違いのな い事実となっております。コレステロールの中で は,LDL-Cが動脈硬化を推し進め,HDL-Cは動脈 硬化を防いでいることもわかっています。このた めLDL-Cを悪玉コレステロールと呼び,HDL-Cを 善玉コレステロールと呼んでいるのです。 一方,TGに関しては,カイロミクロンの増加 に伴う著しい高値の場合に,急性膵臓炎を引き起 こすことはわかっていましたが,動脈硬化の原因 となるかどうかについては意見が分かれていまし た。しかし,最近になってTGが動脈硬化を引き 起こすメカニズムが次第に解明されてきたため, 高TG血症を動脈硬化の危険因子と考える人が多 くなってきています。 血液中のLDLが増加したり,血管壁の一番内側 にある内皮細胞が傷ついたりしますと,血液の中 にあるLDLが血管壁の中へたくさん侵入するよう になります。そして,血管内膜にLDLが沈着する ことになります。血管壁に溜ったLDLは活性酸素 によって酸化され,変性LDLとなります。変性

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LDLはマクロファージという貧食細胞によって食 べられ,マクロファージの中にコレステロールの 塊として貯えられます。これが泡沫細胞でありま して,動脈硬化は泡沫細胞が多数出現することに よ り 発 生 す る と 考 え ら れ て お り ま す 。 一 方 , HDLはマクロファージからコレステロールを取 り去り,これを肝臓へ運んで処理するようにはた らきますので,動脈硬化を防ぐことになります。 TGは,動脈硬化をおこしている場所には見当 たりませんので,陰で悪さをしているものと考え られます。その第1は,TGが増加するとHDLが 減ってしまうことです。前に述べましたように, カイロミクロンやVLDLなどTGを多く含むリポ蛋 白が代謝される際に表層の脂質および蛋白から HDLが作られますので,TGリッチリポ蛋白の代 謝が悪くなるとHDLの生成が低下してしまうわ けです。第2は,小型で比重の重いLDLが作られ ることです。小型で比重の重いLDLは動脈壁の中 へ入りやすく,また酸化を受けやすいことがわか っていますので,動脈硬化がおこりやすくなるわ けです。第3はレムナントの増加です。カイロミ クロンやVLDLが代謝され,TGが減ってコレステ ロールが増加したレムナントやIDLは動脈壁に入 り込んでマクロファージのよい餌となりますの で,動脈硬化をおこすことになります。第4は, TGが増加すると,血液を固まらせる凝固因子が 増加して血栓ができやすくなるとともに,できた 血栓を溶かす線溶システムのはたらきを抑えてし まうので,この面から動脈硬化および動脈の閉塞 をもたらすことになります。

6.どんな症状を出すのか

高脂血症は,silent diseaseといわれているよう に,ふつう症状を出しません。たとえ動脈硬化が おこっていても症状はなく,いきなり心筋梗塞, 脳卒中という形で現われるのです。比較的早期に 症状が出る狭心症でさえ,血管の75%が狭窄して はじめて痛みがおこるのです。 しかし,ときに黄色腫や腹痛発作が認められる ことがあります。黄色腫には眼瞼黄色腫,腱黄色 腫,発疹性黄色腫などがあります。眼瞼黄色腫は, 瞼の鼻に近い部分に黄色いコレステロールの塊が 出現するもので,血清コレステロール値が正常の 人にも認められることがありますが,多くは高コ レステロール血症が続いた場合に出現します。ア キレス腱を主体とした腱黄色腫は家族性高コレス テロール血症で認められますので,アキレス腱を つまんで硬く厚く感じられるときはX線撮影を行 う必要があります。発疹性黄色腫は,カイロミク ロンが増加して血清TG値が1,000mg/dlを超える 状態で出現するもので,直径1∼5mmの黄色い イボのような形の発疹が,臀部や大腿を中心に, 身体のあちこちに出現します。このほかカイロミ クロンが増加した場合,腹痛発作や急性膵炎をお こすこともあります。 高脂血症の診断は血清中の脂質を測定して行い ます。総コレステロール値が200mg/dl以上,あ るいはLDL-C値が140mg/dl以上のときに高コレ ステロール血症と診断し,血清TG値が150mg/dl 以上のときに高TG血症,HDL-C値が40mg/dl未 満の場合に低HDL-C血症と診断します。 そして,血清総コレステロール,LDL-Cに関し ては,それぞれ200mg/dl未満,120mg/dl未満を 適正域,200∼219mg/dl,120∼139mg/dlを境界 域としていますが,TGとHDL-Cに関しては境界 域を設けておりません。 また,採血は12時間以上の絶食後に行わなけれ ばなりませんので,検査の時は前日の夕食を早目 に済ませて,それ以後は何も食べないようにし, 朝食抜きで受診するよう指導します。しかし,水 やお茶など糖分,カロリーを含まないものは飲ん でもかまいません。

8.食事でよくするにはどうすればよいか

高脂血症の治療は,高脂血症をWHOの表現型 分類にしたがって6つのタイプに分け(表3), タイプ別に行うようにします。本稿では,この中 で頻度の高いⅡa型,Ⅱb型,Ⅳ型について述べる ことにします。 1)Ⅱa 型高脂血症 日本動脈硬化学会のガイドラインでは,食事療 法は3段階に分けて行うようになっています。 第1段階の食事:肥満を認めることは少ないと

7.診断はどのようにするのか

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思いますが,カロリーを摂りすぎないように注意 し,栄養素の組成としては,糖質60%,蛋白質15 ∼20%,脂肪20∼25%とします。そして,食物繊 維を1日25g以上摂るようにします。食物繊維の うち,水溶性のペクチン,グルコマンナン,グア ガムなどは胆汁酸と結合して排泄を促進し,再吸 収を阻害しますので,コレステロールから胆汁酸 への異化が促進され,血中コレステロールを低下 させます。そこで,果物,豆類,きのこ類,海藻 類を多く摂るようにします。さらに,脂質低下作 用のある大豆蛋白,魚類蛋白の摂取,抗酸化を目 的としてビタミンEを多く含む植物油,ビタミン Cを多く含む果物,生野菜,β-カロチンを多く含 む緑黄色野菜,フラボノイドを多く含む紅茶,緑 茶の摂取を心がけます。 第2段階の食事:第1段階の食事療法を行って もなお血清コレステロールが高い場合には,脂肪 の摂取を総カロリーの20%以下とし,コレステロ ールの摂取を1日300mg以下とします。そして, 飽和脂肪酸(S):一価不飽和脂肪酸(M):多価不 飽和脂肪酸(P)の比を1:1.5:1とします。 第3段階の食事:第2段階の食事療法を行って もまだ目標とするレベルに達しない場合には,コ レステロールの摂取を1日200mg以下に制限し, S:M:Pの比を0.7:1.5:1とします。 2)Ⅱb型脂血症 第1段階の食事:患者は肥満していることが多 いので,エネルギー制限を行って標準体重まで減 量させ,それを維持させることが最も重要であり ます。栄養素の配分は,脂肪25∼30%,糖質50∼ 60%,蛋白質15∼20%となるようにします。食物 繊維は水溶性のものを主体として1日25g以上摂 るようにしますが,難溶性繊維も便の排泄を速め, 糖質の吸収を抑制し,体重減少を助けますので, このタイプには有効です。 第2段階の食事:コレステロールを1日300mg 以下,アルコールを1日25g(ビール大瓶1本, 日本酒ならば1合,ウイスキーではダブル1杯の 量)以下,砂糖を1日40g以下とします。そして, P/S比を1.0∼2.0としたうえで,W-3系多価不飽和 脂肪酸を積極的に摂るようにします。エイコサペ ンタエン酸,ドコサヘキサエン酸などのW-3系多 価不飽和脂肪酸は,肝臓におけるTG,VLDLの合 成を減らして,これらの血中濃度を低下させます ので,魚(とくに青身の魚)を多く摂るようにし ます。 第3段階の食事:コレステロールを1日200mg 以下とし,禁酒にします。 3)Ⅳ型高脂血症 第1段階の食事:やはり肥満を伴っていること が多いので,エネルギー制限が最も重要です。水 溶性,難溶性を問わず,食物繊維はできるだけ多 く摂るようにし,青身の魚も多く摂るようにしま す。 第2段階の食事:糖質の摂取を総カロリーの 50%までとし,アルコールを1日25g以下,砂糖 を1日40g以下とします。果物も摂りすぎないよ うに注意しなければなりません。 第3段階の食事:糖質を総カロリーの40%と し,アルコールは禁止します。 食事から摂取する脂肪,コレステロールを減ら し,P/S比を高めて血清コレステロールを低下さ せ,これを長期にわたって続けることにより,動 脈硬化性疾患の発症を予防できることが,New York Anticoronary Club Study, Finnish Mental Hospital Study, Los Angeles Veterans Administra-tion Studyにおいて証明されています。

9.運動でよくすることができるか

運動が血清LDL-C値を低下させるという確かな 成績はありませんが,血清TGを低下させ,HDL-Cを上昇させるという点では一致した成績となっ 表3 高脂血症の分類(WHO) 型 Ⅰ Ⅱa Ⅱb Ⅲ Ⅳ Ⅴ 増加するリポ蛋白 カイロミクロン LDL VLDL β-VLDL or VLDL カイロミクロン LDL IDL VLDL 血清脂質 TG↑↑↑TC− TC↑∼↑↑↑TG− TC↑∼↑↑TG↑∼↑↑ TC↑↑TG↑↑ TC−or↑TG↑↑ TG↑↑↑TC↑

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ており,虚血性心疾患を予防することもわかって おりますので,積極的に行うべきであります。 運動には,強度,量,種類の3つの要素があり ます。強度としては最大酸素摂取量の50%程度の ものがよいといわれております。判定の簡易法と して,心拍数で判定することが勧められており, 138−年齢/2を目安とします。実際には,運動 を中断して脈拍数を15秒間測定し,これを4倍し て10を加えた値が138−年齢/2となるような運 動ということになります。量としては,1回30分 以上を毎日が望ましいのですが,1週間に3∼6 日として合計で180分以上となるようにしてもよ いと思います。種類としては,速足歩行,ジョギ ング,水泳,サンクリングといった全身を使う有 酸素運動が勧められております。

10.薬で治す場合はどのようにするか

原則として,食事療法,運動療法を3カ月間行 っても目標とするレベルに達しない場合に,薬物 投与を行うようにします。 現在わが国で使用されている抗高脂血症薬を, 一部未発売のものまで含めて,表4に示しました。 表4 抗高脂血症薬の種類と用量 一般名 主な商品名 用量(1日) ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ―― ソイステロール モリステロール 1,200mg メリナミド アルテス 1,500∼2,250mg γ-オリザノール ハイゼット 300mg A群 パンテチン パントシン 600mg ポリエンホスファチジルコリン EPL 1,500mg 酢酸リポフラビン ハイボン 120∼180mg デキストラン硫酸ナトリウム MDS 1,800mg 蛋白同化ホルモン アルトロン 0.75∼1.5mg ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ニコチン酸製剤 ナイアシン(ニコチン酸) − 2∼3g ニコモール コレキサミン 600∼1,200mg ニセリトロール ペリシット 750∼1,500mg フィブラート系薬剤 B群 クロフィブラート アモトリール 750∼1,500mg シンフィブラート コレソルビン 750∼1,500mg クロフィブラートアルミニウム アルフィブレート 1,500mg クリノフィブラート リポクリン 600mg ベザフィブラート ベザトール,ベザリップ 400mg フェノフィブラート リバンチル 300mg ゲムフィブロジル* CI-719(ロービッド) 900mg EPA製剤 イコサベント酸エチル エパデール 1,800∼2,700mg ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 陰イオン交換樹脂 コレスチラミン クエストラン 8∼12g(18∼27g) コレスチミド コレパイン 3g プロブコール ロレルコ,シンレスタール 500∼1,000mg HMG-CoA還元酵素阻害薬 C群 プラバスタチン メバロチン 10∼20mg シンバスタチン ロポバス 5∼10mg フルバスタチン ローコール 20∼60mg セリバスタチン バイコール,セルタ 150∼300mg アトルバスタチン* CI-981(リピトール) − (*本邦未発売)

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A群は比較的作用の弱いもので,近年使用価値が 失われてきています。B群はTGに対する作用は 強いが,コレステロールに対する作用は中等度の もので,高TG血症に対して使用する薬剤であり ます。C群はコレステロールに対する作用が強力 なもので,高コレステロール血症に対して用いる 薬剤であります。主なものについて,作用機序を 図1に示しました。 1)Ⅱa型高脂血症

Evidence based medicineの観点から,第1選択 薬として,HMG-CoA還元酵素阻害薬,陰イオン 交換樹脂,ニコチン酸製剤,第2選択薬としてプ ロブコール,閉経後の女性に対するホルモン補充 療法があげられています。 したがって,軽症例にはプラバスタチン5mg の1日1回投与を行い,中等症にはHMG-CoA還 元酵素阻害薬(スタチン)の常用量,重症例には スタチンの高用量投与を行います。そして,スタ チンの高用量を投与しても目標値への低下が得ら れない場合には,胆汁酸排泄促進剤(陰イオン交 換樹脂あるいはレジン)のコレスチミド,ニコチ ン酸製剤,あるいはプロブコールを加えるように します。 2)Ⅱb型高脂血症 軽症例にはクリノフィブラート,ニコチン酸製 剤,EPA製剤の投与を行いますが,TGの増加に 比べてコレステロールの増加が優位な場合にはス タチンを用いるようにします。中等症にはフェノ + + + + フィブラート + + + − − − − 末梢組織 脂肪組織 FFA フィブラート ニコチン酸 デキストラン硫酸 パンテチン フィブラート ニコチン酸 LDL VLDL レジン スタチン レジン スタチン プロブコール フィブラート ニコチン酸 プロブコール LDL レセプター VLDL 合成 酢酸 酸化 FA TG コレステロール 肝 フィブラート 胆汁 フィブラート ニコチン酸 ソイステロール メリナミド γ-オリザノール レジン プロブコール 胆汁酸 コレステロール レジン 糞便 糞便 小腸 食物中の コレステロール 図1 抗高脂血症薬の作用機序 ○+促進  ○−抑制

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フィブラートが第1選択となりますが,コレステ ロールの増加が優位な場合にはスタチンの高用量 を用いるようにします。重症例では併用療法が必 要となりますが、フィブラートとスタチンの併用 は横紋筋融解症をおこす危険がありますので,で きるだけ避けた方がよいと思います。腎機能障害 がある場合は禁忌となります。そこで,組み合わ せとしては,スタチンとEPA製剤,フィブラート とニコチン酸製剤の併用ということになります が,コレスチミドとフィブラートの併用もよいと 思います。 3)Ⅳ型高脂血症 軽症例に対してはデキストラン硫酸ナトリウム の投与でよいと思いますが,1日1,800mgの使用 が必要です。中等症にはフィブラート,ニコチン 酸製剤,EPA製剤が適応となりますが,フェノフ ィブラート1日100mgあるいはヘザフィブラート 1日200mgの夕食後投与が最も勧められます。重 症例にはフェノフィブラートあるいはベザフィブ ラートの常用量の投与を行い,効果が不十分な場 合にはEPA製剤あるいはニコチン酸製剤を併用し ます。 薬剤投与を行って一次予防を証明した大規模臨 床試験として,コレスチラミンを用いたLipid Research Clinics Coronary Primary Prevention Trial(LRC-CPPT),ゲムフィブロジルを用いた Helsinki Heart Study(HHS),プラバスタチンを 用いたWest of Scotland Coronary Prevention Study(WOSCOPS),ロバスタチンを用いたAir Force/Texas Coronary Atherosclerosis Prevention Study(AFCAPS/Tex CAPS)があり,二次予防 を証明した大規模臨床試験として,プラバスタチ ン を 用 い た Pravastatin Multinational Study (PMNS),Cholesterol and Recurrent Events (CARE),Long-Term Intervention with Pravas-tatin in Ischaemic Disease(LIPID),シンバスタ チンを用いたScandinavian Simvastatin Survival Study(4S)があります。

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★★特集・温泉★★ 日本人のお風呂好きは世界的にも有名。一日の 仕事を終えてお風呂に入ると,疲れは汗とともに 流れ去り,心身ともにリフレッシュされた気分に なるものです。それが温泉となれば効果は格別。 入浴剤を入れて,今日は草津の湯,明日は指宿の 湯と温泉気分を味わっている人も多いのではない のでしょうか。 最近では,温泉スタンド(コインを入れると決 まった量の温泉が出るようになっている)や温泉 の宅配などもあり,手軽に温泉を購入することが できるようになりました。そのため,以前は温泉 地に行かなければ楽しむことができなかった温泉 も,今では自宅のお風呂で天然温泉を楽しんでい る人もいるようです。 しかし,こんなに身近な存在となってきた温泉 にも「?」と思うことが結構多いのではないので しょうか。 もっと知りましょう!温泉を。 1)温泉ってなあに? 温泉は温かいものと思われがちですが,温泉法 では,『地中からゆう出する温水,鉱水及び水蒸 気その他のガスであって,「採取されたときの温 度が25℃以上」または「表1の物質のうち,1つ 以上を一定量以上有するもの」』を温泉としてい ます。 つまり,地中から湧き出た時の温度が25℃以上 であれば無条件で温泉となり,温度が25℃未満で あっても,一定の成分が含まれていれば温泉とし て認められるのです。冷たい湯を「鉱泉」と呼ん

1.温泉をもっと知ろう

AはじめにA

だりして,温泉と区別されることもありますが, 一定の成分が含まれていれば,冷たくても,りっ ぱな温泉となるのです。 2)温泉には名前があるの? 温泉は,草津の湯,箱根の湯など地名で呼ぶこ とが多いと思いますが,温泉にはもう一つの名前 があります。 温泉には,いろいろな物質が含まれており,そ の成分,濃度,温度等から様々な種類に分類され ます。その中でも特に,25℃以上もしくは法で定 められた成分のうち特定の成分(鉄,二酸化炭素 等)を一定以上含むものを『療養泉』と呼び,泉 質による名前がついています。 東京都衛生局生活環境部 環境指導課

木村

き む ら

ひで

表1 物質名と含有量 物質名 1kg中の含有量 溶存物質(ガス性のものを除く) 1000mg以上 遊離二酸化炭素 250mg以上 リチウムイオン 1mg以上 ストロンチウムイオン 10mg以上 バリウムイオン 5mg以上 フェロ又はフェリイオン 10mg以上 第一マンガンイオン 10mg以上 水素イオン 1mg以上 臭素イオン 5mg以上 ヨウ素イオン 1mg以上 フッ素イオン 2mg以上 ヒドロひ酸イオン 1.3mg以上 メタ亜ひ酸 1mg以上 総硫黄 1mg以上 メタほう酸 5mg以上 メタけい酸 50mg以上 重炭酸そうだ 340mg以上 ラドン 20(100億分の1キュリー単位)以上 ラジウム塩 1億分の1mg以上

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①塩類泉 温泉1kg中に溶存物質(塩類)を1000mg以上 含むものをいいます。主な成分により「塩化物泉」 「炭酸水素塩泉」「硫酸塩泉」に分類され,陽イオ ンの主成分により「ナトリウム−塩化物泉」「マ グネシウム−硫酸塩泉」などに細別されます。 ②単純温泉 溶存物質(塩類)が1000mg未満で,温度が25℃ 以上の温泉をいいます。なお,pH8.5以上の場合 は,アルカリ性単純温泉といいます。 ③特殊成分を含む療養泉 特定の物質を基準以上含む温泉をいいます。 「硫黄泉」「二酸化炭素泉」「放射能泉」などがあ り,その他の成分によって,「単純硫黄泉」「含硫 黄−ナトリウム−塩化物泉」などの泉質がありま す。 3)昔の名前で出ています 温泉のガイドブックや旅館のパンフレットを見 ると「重曹泉」「食塩泉」など漢字だけで表現さ れた泉質を見かけることがあります。これらは, 泉質の古い呼び名で,現在では,「ナトリウム− 炭酸水素塩泉」「ナトリウム−塩化物泉」と呼ば れています。古い呼び名も,まだまだ使われてい ます。東京の温泉の旧泉質名と新泉質名を比較し てみましょう。(表2) 4)温泉は何に効くの? 『ここの湯は神経痛に効くらしい。』『あそこの 温泉は胃腸病に効果があるそうだ。』 温泉の話になると必ずといっていいほど話題に なるのが効能でしょう。 Uお医者さまでも 草津の湯でも, 惚れた病は 治りゃせぬ これは,草津節の一節で,温泉の効能をみごと に表現しています。 温泉は,病気を癒し,元気を回復する場として, 長い歴史を持っています。温泉は,人だけではな く,動物にも効果があり,福島県には,日本中央 競馬会の馬の温泉療養施設があるくらいです。 もともと,温泉は,サルやクマ,ツルなどの動 物が傷や病気を癒すために浸かっていたところを 人が偶然見つけ,発見されたという説が有力とさ れています。 温泉の中でも効果があるのは,療養泉と呼ばれ るもので,入浴すると効果のある疾患が定められ ており,これを「適応症」といいます。 適応症には,療養泉に共通なもの(一般的適応 症)と,泉質別のものとがあります。 【療養泉に共通な主な適応症】 神経痛,筋肉痛,関節痛,五十肩,うちみ,慢 性消化器病,痔疾,冷え性,疲労回復,健康増進 【療養泉の主な泉質別適応症】 ①塩化物泉 きりきず,やけど,慢性皮膚病,虚弱児童,慢 性婦人病 ②炭酸水素塩泉 きりきず,やけど,慢性皮膚病 ③硫酸塩泉 きりきず,やけど,慢性皮膚病,動脈硬化症 ④二酸化炭素泉 きりきず,やけど,動脈硬化症,高血圧症 ⑤硫黄泉(硫化水素型) きりきず,慢性皮膚病,慢性婦人病,動脈硬化 症,高血圧症,糖尿病 ⑥放射能泉 慢性皮膚病,慢性婦人病,動脈硬化症,高血圧 症,痛風,慢性胆のう炎,胆石症 なお,病気の治療に温泉を利用する場合は,温 泉療法を専門とする「温泉療法医」の指導を受け るようにしましょう。 5)温泉は本当に効果があるの? 自宅のお風呂と比べて,温泉に入ると,心身と もにリラックスした気分になるものです。 温泉による療養効果は,十分に解明されていま せんが,一般的に温泉の成分や温度のほかに,入 浴方法や自然環境などの要因が複雑に関係し作用 表2 新旧泉質名対照表 旧泉質名 新泉質名 重曹泉 ナトリウム−炭酸水素塩泉 強食塩泉 ナトリウム−塩化物強塩泉 弱食塩泉 ナトリウム−塩化物泉 含食塩重曹泉 ナトリウム−炭酸水素塩・塩化物泉 含土類弱食塩泉 ナトリウム・カルシウム(・マグネシ ウム)−塩化物・炭酸水素塩泉 単純硫化水素泉 単純硫黄泉(硫化水素型) 単純炭酸鉄泉 単純鉄(Ⅱ)泉(炭酸水素塩型) 重炭酸土類泉 カルシウム(・マグネシウム) −炭酸水素塩泉

参照

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