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糖尿病によって生じる運動ニューロン障害の予防や改善に運動療法は有効であるか?

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Academic year: 2021

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(1)理学療法学 第 150 43 巻第 2 号 150 ∼ 151 頁(2016 年) 理学療法学 第 43 巻第 2 号. 平成 25 年度研究助成報告書. まで通常飼育のみを実施した。 2.IPGTT. 糖尿病によって生じる運動ニューロン障害 の予防や改善に運動療法は有効であるか? ─糖尿病理学療法の新規分野開拓をめざして─.  IPGTT は 12 時間の絶食後,1 g/kg のブドウ糖溶液を腹腔 内に投与し,投与前,投与後 15 分,30 分,60 分,120 分の血 糖値を自己検査用グルコール測定器(ロシュ・ダイアグノス ティック株式会社,アキュチェックアビバ)を用いて測定する ことで行った。また,IPGTT はラットが 25 週齢時と 45 週齢. 村松 憲 1). 時に行った。 3.運動ニューロンの逆行性標識と解析. 1). 健康科学大学健康科学部理学療法学科.  実験は 45 週齢に達したラットを対象に行った。2%ハロセン 吸入麻酔下にあるラットの右膝窩部の皮膚を切開し,脛骨神経. 要旨:最近,我々は 1 型・2 型糖尿病モデルラットの内側腓腹. を剖出,内側腓腹筋を支配する筋枝を切断し,その中枢端を. 筋を支配する運動ニューロンが減少することを発見したが,そ. 10% Dextran, Texas Red 溶液(Molecular probes, D3329)に. の予防法については不明である。そこで,2 型糖尿病モデル. 2 時間浸した。次にペニシリンを溶解させた生理食塩水で術創. ラ ッ ト で あ る Otsuka Long-Evans Tokushima Fatty Rat( 以. をデブリードメントし,神経枝の断端をスポンゼルにて保護し. 下,OLETF ラット)と,その健常対照群である Long-Evans. たうえで術創を縫合した。15 日間の生存期間を与えた後,ペ. Tokushima Otsuka Rat(以下,LETO ラット)を対象にトレッ. ントバルビタールの腹腔内投与による深麻酔下にて左心室より. ドミルを用いた 20 週間の運動療法が運動ニューロンの減少を. ヘパリンナトリウムを含んだ生理食塩を灌流して脱血した後. 予防可能であるか調査した。その結果,通常飼育のみを行っ. に 4%パラフォルムアルデヒド溶液(4℃)を用いて灌流固定. た OLETF ラットの内側腓腹筋を支配する運動ニューロンの. を行った。灌流固定後,第 2 腰髄以下の脊髄を摘出し,ビブラ. 数は LETO ラットに比べて減少する一方,運動療法を行った. トーム(Vibratome, 1000)を用いて厚さ 80 µ m の脊髄の長軸. OLETF ラットは LETO ラットと差がなかった。以上の結果か. に沿う水平断切片を作成した。切片は蛍光顕微鏡(OLYMPUS,. ら運動療法には糖尿病性ニューロパチー(以下,DN)に関連. BX51)で逆行性に標識された運動ニューロンを同定し,デジ. する運動ニューロン数の減少を予防する効果がある可能性が示. タルカメラ(Jenoptik,ProGres C3)で撮影後,画像解析ソフ. された。. ト(Image J)を用いて,運動ニューロンの総数と細胞体の断. キーワード:糖尿病性ニューロパチー,運動療法,運動ニュー. 面積を計測した。数値は平均値± SEM で表した。群間の値の. ロン. 比較は Bonferroni 検定を用い,有意水準は 5%とした。本研究 は健康科学大学動物実験倫理委員会の承認を経て行った。. はじめに. 結  果.  近年,我々は 1 型・2 型糖尿病モデル動物の内側腓腹筋を支. 1.運動療法による耐糖能の変化. 配する運動ニューロンが減少することを発見し,運動ニューロ.  IPGTT の結果,糖負荷後 15 ∼ 30 分において血糖値の上昇. ンが DN の標的となることを明らかにした 1)2)。糖尿病患者で. が観察されたが,投与後 30 分以降は LETO-SED 群と OLETF-. は下肢の筋力低下や転倒リスクの増加などが知られていたが,. EX 群の血糖値が下降に転じる一方,OLETF-SED の血糖値. 運動ニューロン障害はこれらの運動障害の一部を説明し得るも. は上昇を続け,120 分後の血糖値は LETO-SED 群の 100.2 ±. のであり,運動ニューロン障害の予防は理学療法士にとっても. 3.7 mg/dl や OLETF EX 群の 162.5 ± 23.7 mg/dl に比較して. 重要な課題といえる 3)4)。しかし,長年にわたって運動ニュー. OLETF-SED 群は 362.7 ± 45.5 mg/dl と有意に高かった(P <. ロンは DN に対して耐性を有するという学説が広く受け入れら. 0.01)。. れてきたため,運動ニューロン障害の予防に関する研究は現在. 2.運動ニューロン. まで行われてこなかった. 5)6). 。そこで,生後 25 週齢頃から 2.  逆行性標識された運動ニューロン群は細い細胞柱を形成し,. 型糖尿病を自然発症する OLETF ラットとその対照動物である. 第 4 腰髄から第 5 腰髄に分布していた。両群とも細胞体とそこ. LETO ラットを対象に運動療法が運動ニューロン障害を予防す. から伸びる樹状突起や軸索が明瞭に観察可能であった(図 1) 。. る効果をもつか明らかにすることを目的に本研究を行った。. 一方,図 2 に示すように運動ニューロンの平均数は LETO-. 対象および方法. SED 群の 160.5 ± 6.1 個に比べて OLETF-SED 群では 102.7 ±. 1.モデル動物と運動療法. 10.6 個と,その数が減少していたが,OLETF-EX 群ではその.  実験には LETO ラットのオス 5 頭(対照群)と OLETF ラッ. 数が維持されていた(161.5 ± 8.8 個) 。. トのオス 10 頭(2 型糖尿病群)を用いた。OLETF ラットは. 考  察. 25 週齢にて腹腔内ブドウ糖負荷試験(以下,IPGTT)を実施し,.  本研究結果は 2 型糖尿病モデル動物の運動ニューロン障害が. 糖尿病発症を確認した後に,運動療法を行う OLETF-EX 群(n. 運動療法によって予防可能であることを初めて報告するもので. = 5)と通常飼育を継続する OLETF-SED 群(n = 5)に分類. ある。現在,糖尿病患者の運動療法は主に血糖コントロールを. した。OLETF-EX 群は 15 ∼ 20 m/ 分の速さで 60 分間のトレッ. 目的に行われているが,今回,我々が明らかにした糖尿病によ. ドミル強制歩行を週 5 回,20 週間実施した。他の群は 45 週齢. る運動ニューロン障害とその予防に関連する一連の新知見は運.

(2) 糖尿病による運動ニューロン障害に運動療法は有効であるか?. 151. 図 1 逆行性標識された運動ニューロンの組織像(文献 7 より転載) a)逆行性に標識された LETO-SED 群の運動ニューロンの組織像. b)逆行性に標識された OLETF-SED 群の運動ニューロンの組織像. c)逆行性に標識された OLETF-EX 群の運動ニューロンの組織像. 運動ニューロンの減少は小型の運動ニューロンに目立ち,OLETF-SED 群では小型の神 経細胞が減少している.スケールバーは 100 µ m を示す.. 減少は運動療法によって予防できる可能性が高い。 謝辞:本報告書の作成にあたり,図の転載を快諾してください ました運動障害研究会に感謝申し上げます。 文  献. 図 2 運動ニューロンの総数(文献 7 より転載) LETO-SED 群と OELTF-EX 群の細胞数に差はなかっ たが,OLETF-SED 群の細胞数は優位に減少していた (**:P < 0.01) .. 動療法の効果が糖尿病患者の血糖コントロールの改善にとどま らない可能性を示している。運動療法がどのような機序で運動 ニューロン障害を予防するのかは不明であるが,血糖コントロー ルの改善は DN の症状を軽減することや高齢ラットで観察され る運動ニューロンの減少は継続的な有酸素運動によって予防可 能であるという事実から,耐糖能の改善や運動療法そのものが 運動ニューロンの生存に寄与した可能性がある. 8)9). 。今後は運動. 療法の種類を増やして,最も効果的な運動療法を調べるととも に,その作用機序に関する詳細な研究が必要である。 結  論  2 型糖尿病モデル動物において観察される運動ニューロンの. 1)Muramatsu K, Niwa M, et al.: The size of motoneurons of the gastrocnemius muscle in rats with diabetes. Neurosci Lett. 2012; 531: 109‒113. 2)村松 憲,玉木 徹,他:2 型糖尿病ラットの運動ニュー ロンが減少する.運動障害研究会誌.2014; 24(1): 25‒28. 3)Cavanagh PR, Derr JA, et al.: Problems with gait and posture in neuropathic patients with insulin-dependent diabetes mellitus. Diabet Med. 1992; 9: 469‒474. 4)Andreassen CS, Jakobsen J, et al.: Muscle weakness: a progressive late complication in diabetic distal symmetric polyneuropathy. Diabetes. 2006; 55: 806‒812. 5)Ramji N, Toth C, et al.: Does diabetes mellitus target motor neurons. Neurobiol Dis. 2007; 26: 301‒311. 6)Mizisin AP, Jolivant CG, et al.: Spinal cord: Structure and Function in Diabetes. IN: Diabetic Neuropathy Clinical nd Management 2 ed. Aristidis V and Rayaz AM (eds), Humana Press, New Jersey, 2007, pp. 165‒186. 7)村松 憲,玉木 徹,他:運動療法は OLETF ラットの運 動ニューロン障害を予防する.運動障害研究会誌.2015; 25: 39‒42. 8)Boulton AJM, Vinik AI, et al.: Diabetic neuropathies: a statement by the American Diabetes Association. Diabetes Care. 2005; 28: 956‒962. 9)Kanda K, Hashizume K: Effects of long-term physical exercise on age-related changes of spinal motoneurons and peripheral nerves in rats. Neurosci Res. 1998; 31: 69‒75..

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