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和歌山県在来の薬用紫蘇系統の特徴および単色光補光による生育調節

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緒  言

 シソは,香味野菜や民間薬として古くから用いられてき た植物である.このシソには,葉の色や形態(縮れ)によっ て区別される複数の品種群があり,それぞれ用途が異なっ ている.例えば,刺身のつまなどの香味野菜として用いら れるのは主としてアオジソまたはアオチリメンジソであ り,梅干しなどの着色や「ふりかけ」として用いられるの はアカチリメンジソまたはカタメンジソである.生薬には, アカジソまたはアカチリメンジソのみが用いられる.第 十六改正日本薬局方では,「シソ Perilla frutescens Britton var. acuta Kudo またはチリメンジソ Perilla frutescens Britton var. crispa Decaisneの葉および枝先」が生薬「ソヨウ」の 原料として定義されている(この P. frutescens var. acuta は P.

frutescens var. crispa f. purpureaと同義であり,葉に縮れの ないアカジソを指す).ソヨウの効能には鎮咳,健胃,発汗, 解熱,解毒,鎮静,鎮痛,利尿などがあり,漢方では,香 蘇散(感冒,頭痛,蕁麻疹,更年期神経症,食欲不振など に適用する),参蘇飲(健胃,発熱,鎮咳,嘔吐などに適 用する),半夏厚朴湯(鎮静,不安神経症,神経衰弱,不 眠症などに適用する)などの処方に加えられてきた.近年 では,シソに含まれる個々の成分の生理的効果が明らかに されつつある.例えば,シソ特有の香気性成分であるペリ ルアルデヒドには,中枢神経抑制作用(菅谷ら 1981),抗 鬱作用(Takagi et al. 2005)および血管拡張作用(Ito et al. 2008)が,また,シソ科植物に含まれる水溶性ポリフェノー ルのロスマリン酸には,血糖値上昇抑制作用(東野ら 2011),抗鬱作用(Takeda et al. 2002)およびアトピー性皮 膚炎の軽減作用(三木本ら 2002)が報告されている.以 上のようにシソは,現代病とも言える不眠症,高血圧症, 糖尿病,抑鬱症などの改善に寄与すると期待される一方で, 古くからの食用作物でもあるため重篤な副作用は想定され ない.したがって,シソの持つ機能性は通常の生活の中で 安全に利用することができ,その利用法の拡大はひとびと の健康増進に貢献すると考えられる.  和歌山県北部の紀の川流域では古くから薬用植物として のシソが栽培されてきたが,安価なソヨウが輸入されるよ うになるにつれて生産量が減少し,遺伝資源も散逸してし まった.しかし,紀の川の支流のひとつ貴志川流域で種苗 業を営む矢田農園では,失われた薬用紫蘇を地域の特産品 に育てようと考え,その遺伝資源を探索した.その結果, 紀の川流域で栽培されていた薬用紫蘇と同一と推定される 1系統を見出した.ここで先ず,この 1 系統が薬用紫蘇と 認めるのに十分な機能性成分を含有するか否かを明らかに する必要がある.一方で,このシソ系統が薬用紫蘇に相当 するものであったとしても,従前の生薬としての利用のみ に頼っていては生産の拡大を望めない.このため,生薬と は異なる利用法の開発も必要と考えた.具体的には,高い 機能性を活かした食品,化粧品,香料などを想定している. さらに,シソの工業利用を考える際には,原料の安定供給 と品質保証,特に機能性成分含有量の保証が重要となる. そのための一案として,栽培時の光環境を制御することに よって,周年生産体制を確立すると同時に機能性成分含有 量を向上させることを考えた.  以上の観点から本研究では,まず,この系統の機能性香 気成分の含有量を対照品種と比較することによって,この 系統が薬用紫蘇に相当するかを検証した.次いで,自然光 下で栽培されているシソへの単色光補光がその生育と機能

和歌山県在来の薬用紫蘇系統の特徴および

単色光補光による生育調節

堀端 章

1)

・矢田 清

2)

・松川哲也

1) 1)近畿大学生物理工学部(〒 649-6493 和歌山県紀の川市西三谷 930) 2)矢田農園(〒 640-0451 和歌山県海南市高津 4) 要旨:紀の川流域で古くから栽培されてきた地域遺伝資源としてシソの 1 系統を見出した.本研究では,まず, 本系統の葉の形態および機能性香気成分の組成比における特徴を 4 種のシソ品種と比較した.その結果,本 系統は,葉の両面が赤紫色で縮緬状の起伏がなく,ペリルアルデヒドとリモネンを多量に含むことから,薬 用のアカジソ(P. frutescens var. crispa f. purpurea)の 1 種と推察された.一方で,本系統の特産品化を目指 して,新規用途の開拓と周年生産に向けた栽培技術の検討を進めた.自然光下で栽培されているシソに青色 光補光を行うと,花成が抑制されて若い葉が分化し続けた.この結果として,ペリルアルデヒド含有量を高 く維持することができた.この方法は,短日期のシソの花芽形成を抑制し,機能性成分含有量を向上させる 上で有用である. キーワード:シソ,地域遺伝資源,ペリルアルデヒド,単色光補光,花成 2013年 2 月 22 日受理 連絡責任者:堀端 章([email protected]

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性成分の含有量に及ぼす効果を調査した.

材料および方法

供試品種・系統の栽培および葉の形態の比較  紀の川流域における薬用紫蘇の生産では,薬種問屋が遺 伝資源を管理し,薬種問屋から種子の提供を受けた農家は 生産物の全量を問屋に納めていた.このような管理体制が 確立されていたため,薬用紫蘇の種子が一般の農家に渡る ことはなかった.同じ理由から,薬種問屋の廃業と同時に 貴重な遺伝資源が失われる結果となった.本研究に用いた シソ系統(以下,本系統)は,矢田農園が廃業した薬種問 屋の伝手をたどって分譲を受けたものであり,紀の川流域 で栽培されていた薬用紫蘇の 1 系統と推察されている.  一方,本研究では,本系統と葉の形態的特徴や機能性香 気成分組成を比較するための対照品種として市販の 4 種の シソを用いた.この 4 種のうち,‘かおりうらしそ’(株式 会社アサヒ農園)は登録品種であるが,他の 3 種について は,それぞれに名称が付されているものの正式な品種名で はない.シソには,多様な地域変 異が存在する(伊東 1970)一方,他殖性が強く純系維持に多大なコストがかか るうえ,主要作物でもないため,ほとんどの種苗会社では, 在来系統の外観特性に応じた名称をつけて販売している. このため,同じ‘赤ちりめんしそ’であっても,生産して いる種苗会社が異なる場合には異なる系統と考える必要が ある.‘かおりうらしそ’のような育成品種も存在するが, 三島食品株式会社の‘豊香’のように,育成者が種子を専 有していて入手できない場合が多く,特に,薬用紫蘇とし て用いられてきたアカジソの種子は全く流通していない.  本研究における対照品種の選定にあたっては,研究の目 的から薬用のアカジソ品種を加えるべきであるが,上述の 理由から入手できなかった.そこで,本系統と同じ赤紫色 の葉をもつアカチリメンジソの 2 品種,‘赤ちりめんしそ’ (クラギ株式会社)および‘ちりめん赤しそ’(株式会社トー ホク),赤紫色の葉をもたないアオチリメンジソの 1 品種, ‘青ちりめんしそ’(クラギ株式会社),ならびに,上述の カタメンジソの 1 品種,‘かおりうらしそ’を対照品種と して用いた.  2012 年 4 月 20 日,本系統および対照品種の 4 品種を苗 箱に播種した.6 月 13 日,80cm 幅の畝を立ててビニール マルチで被覆した後,株間を約 50cm として圃場に移植し た.前作の肥料が残っている場所であったため施肥は行わ ず,適宜畝間灌漑を行った.葉の形態的特徴に関して本系 統と他の品種を比較した. 機能性香気成分の組成  本系統の機能性香気成分に関する特徴を評価するため, 8月 24 日,圃場に栽植されている本系統および対照品種 の各 3 個体から,茎の先端部 2 節の展開葉とその先の新芽 を採取し,3 個体分を合わせて液体窒素下で粉砕した.そ の粉末およそ 2g をガラス製遠心管に分取し,5ml のジエ チルエーテルを加えて 1 晩冷所に置き,ジエチルエーテル 可溶性成分を抽出した.抽出液を孔径 0.2μm のシリンジ フィルターで濾過した後,2μl をキャピラリーガス液体ク ロマトグラフ(GC−14B,島津製作所)に導入して葉に含 まれる香気成分の量および組成を分析した.分析では,ヘ リウムをキャリアガスとして用い,Quadrex 23 カラム(50% cyanopropyl 50% methyl polysiloxane,内径 0.25mm,膜厚 0.25μm,長さ 50m)と水素炎イオン検出器を用いた.カラ ム温度については,開始時温度 120℃を 1 分間保持し, 20℃/分の比率で昇温させたあと,終止時温度 180℃を 10 分間保持する昇温プログラムを採用した. 青色光補光による生育調節  この実験には,本系統および‘赤ちりめんしそ’(株式 会社サカタのタネ)を供試した.この‘赤ちりめんしそ’ は前項の実験に用いたクラギ株式会社製のものとは異なる ため,同一の呼称であるが遺伝的には異なると考える必要 がある.混同を避けるため以降 AC−S と称する.2010 年 6月 18 日,育苗ポットに両系統を播種した.ガラスハウ ス 内 に 2 つ の 木 製 の フ レ ー ム( 高 さ 1500mm, 幅 1300 mm,奥行き 1300mm)を作製して防虫ネットで覆い,一 方を補光区,他方を対照区とした.補光区には,高輝度青 色 LED(460nm,CH−HB3B,株式会社ピースコーポレーショ ン)を 460 個配置した透光性の LED パネルを 140cm の高 さに設置し,7 月 5 日から 24 時間の連続照射を開始した. この補光装置による栽培面における青色光の光量子束密度 は 10−15μmol/m2/s であった.7 月 15 日,試験区・系統 ごとに生育量の平均的な個体を 16 個体ずつ選び,12cm プ ラスチックポットに鉢上げした.さらに,8 月 31 日に 24 cmプラスチックポットに植え替えた.培土には,市販の 育苗培土を混合したものを用いた(与作(ジェイカムアグ リ株式会社,15kg)2 袋,システムソイル(イワタニアグ リグリーン株式会社,50l)1 袋,バークミン(田辺港輸入 木材協同組合,20kg)1 袋を混合した).肥料は育苗培土 に含まれるもののみとし,追肥は行わなかった.灌水は毎 日行った.なお,ガラスハウス内において実験を行ったの は,補光装置に雨水がかからないようにするためであり, 栽培期間中はガラスハウスの側窓を常時開放して,温度が 露地と大きく変わらないようにした.  7 月 25 日から 10 月 10 日まで 5 日おきに全個体の草丈 および主茎節数を調査した.対照区の全個体と補光区の 6 個体について,10 月 12 日から数日かけて主茎の葉を個体 別に採取し,冷暗所で風乾した後,個体ごとにミキサーミ ルを用いて粉砕した.乾燥した葉の粉末 0.2g に 1ml のメ タノールを加えて 24 時間抽出した.抽出液を孔径 0.2μm のシリンジフィルターで濾過した後,2μl をキャピラリー ガス液体クロマトグラフに導入して分析した.この試験で は,カラム温度を 100℃から 10℃/分の比率で 250℃まで 昇温させた.補光区の残りの個体については,花成を調査

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するために栽培を続けた. 遠赤色光補光による生育調節  シソの周年生産法を確立するためには花成を促進する手 段も必要である.シソと同じ短日植物であるキクやポイン セチアでは,遠赤色光照射による開花促進が報告されてい る(日機装株式会社 2007).そこで,本系統についても遠 赤色光補光が花成に及ぼす効果を調査した.露地に 2 つの スチール製フレーム(高さ 2000mm,幅 2000mm,奥行き 2500mm)を作製して,上部にポリカーボネート製の屋根 を取り付けるとともに,側面を防虫ネットで覆った.一方 のフレームの屋根の下に遠赤色 LED(735nm,L735 03 AU,EPITEX INC.)を用いた光源を設置した.設置する LEDの個数を変えて,遠赤色光の光量子束密度が異なる 4 区を設けた.各区における遠赤色光の光量子束密度は、補 光区 1 では 7.1μmol/m2/s、補光区 2 では 5.9μmol/m2/s、 補光区 3 では 2.3μmol/m2/s、補光区 4 では 0.6μmol/m2 /s である.他方のフレームを対照区とした.2011 年 6 月 1日,本系統の種子をペーパーポットに播種し,ガラスハ ウス内で育苗した.6 月 29 日,生育の良い個体を選んで 24cmプラスチックポットに鉢上げした.8 月 7 日,生育 量の平均的な個体を 64 個体選んで,各補光区に 8 個体, 対照区に 32 個体を移動させた.同日,補光区では,暗期 開始直後の 19:30 から 21:30 まで 2 時間の補光を開始し た.8 月 15 日から 8 日おきに,草丈,主茎節数および花 芽形成を調査した.用いた培土ならびに栽培管理条件は前 項の実験と同様とした.

結  果

供試品種・系統間の葉の形態的特徴に関する比較  第 1 図は,供試した品種・系統の葉の形態的特徴を示し ている.本系統の葉は,表裏とも赤紫色で,卵形で,縮緬 状の凹凸のない平葉であって,アカジソ(P. frutescens var. crispa f. purpurea)の特徴を備えていた.‘ちりめん赤しそ’ も葉の形態に関しては本系統と同様であり,「ちりめん」 第 1 図 供試したシソ品種・系統の葉の形態的特徴.

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と称しているものの葉の形態的特徴からはアカジソに分類 されるべき系統であると考えられた.一方,‘赤ちりめん しそ’の葉は,表裏とも赤紫色ではあるが,ほぼ等幅の円 形であって,顕著な縮緬状の起伏を示し,アカチリメンジ ソ(P. frutescens var. crispa f. crispa)の特徴を備えていた.‘か おりうらしそ’は,葉の表面が緑色で裏面が赤紫色であっ て,縮緬状の起伏を示さず,カタメンジソに分類された. また,‘青ちりめんしそ’は,葉の表裏とも緑色で顕著な 縮緬状の起伏を示したため,アオチリメンジソに分類され た. 機能性香気成分の組成  本系統の香気成分に関するクロマトグラムの一例を第 2 図に示す.主要なピークは,約 2.8 分と約 6.0 分に現れ, これらは標品との比較からそれぞれリモネンおよびペリル アルデヒドであると考えられた.また,約 3.8 分,約 4.2 分, 約 4.4 分に検出されたマイナーピークについては,供試・ 品種系統に共通して現れたため,それぞれ P3.8,P4.1, P4.4としてペリルアルデヒド当量を算出した.第 3 図は, これら 5 種のピークについて含有量と組成比を品種・系統 間で比較したものである.本系統は,ほかの赤紫色系シソ 2品種(‘赤ちりめんしそ’および‘ちりめん赤しそ’)に 比べて顕著に高いペリルアルデヒド含有量を示した.その 含有量は,‘青ちりめんしそ’を超え,強い芳香を特徴と する‘かおりうらしそ’に匹敵するものであった.また本 系統は,‘かおりうらしそ’や‘青ちりめんしそ’と同様 にリモネンを多量に含んでおり,この点でもほかの赤紫色 系シソ 2 品種と異なっていた.なお,本実験で検出された マイナーピーク P3.8,P4.1 および P4.4 について,シソに 含まれることが報告されているリナロール,カリオフィレ ン,メントールおよびファルネセン(伊東 1970,森中ら 2002,大友ら 2004)の標品と比較した結果,カリオフィ レンが P4.4 と同じ保持時間を示したほかは,いずれの標 品とも異なっていた. 青色光補光による生育調節  第 4 図は,青色光補光の有無が,本系統および AC-S の 草丈および主茎節数の推移に及ぼす作用を示している.ま ず草丈は,本系統,AC−S ともに 8 月下旬までは補光区の 草丈が対照区よりも高く推移し,本系統では 9 月 5 日を境 に,AC−S でも 9 月 15 日を境に逆転して対照区の草丈が 補光区よりも高くなった.このように,生育相の前期では 青色光補光による草丈の増加傾向が示されたが,生育相の 後期では青色光補光は草丈の増加を抑制した.一方,主茎 節数では,対照区の AC−S でやや低く推移したが,これは 初期生育の遅れが原因と考えられた.9 月 15 日頃までの 増加速度は,系統または青色光補光の有無による差は見ら れなかった.ところが,本系統では 9 月 25 日以降,AC−S 第 2 図 本系統の香気成分のクロマトグラム. 第 3 図 供試したシソ品種・系統の生葉から抽出した香気 成分の組成および含有量. ペリルアルデヒド リモネン P3.8 P4.1 P4.4

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では 9 月 15 日以降,対照区における主茎節数の増加が顕 著に鈍化した.この時,対照区の茎頂では花芽が認められ たが,補光区では花芽が認められずに新たな節の形成が続 いていた.第 5 図は,葉の採取をはじめた 10 月 12 日にお ける本系統の写真である.青色光補光区では茎頂にまだ小 さな葉が分化し続けていたが,対照区では大きな穂ができ て結実していた.補光区の一部の個体については,11 月末 まで青色光補光下で栽培を続けたが花成には至らず,12 月に補光を中止したところ花芽が形成された.このように 青色光補光はシソの花芽形成を著しく阻害した.ここで, 青色光補光による花芽形成阻害を考慮して,前述の草丈な たびに主茎節数の推移を見ると,補光区と対照区の草丈の 逆転は,主茎節数の増加が鈍化した時期,すなわち,栄養 生長期から生殖生長期への転換期に起こったことがわか る.対照区における急激な草丈の増加は,花芽形成にとも なう上位節における節間伸長が主因であると考えられた.  第 6 図は,各試験区の植物から得られた乾燥葉における ペリルアルデヒド含有量を示している.青色光補光区の一 部の個体では花成を確認するために葉の採取を行わなかっ たため,ペリルアルデヒド含有量の調査に供試した個体の 数は,本系統,AC−S ともに,補光区 6 個体,対照区 15 個体であった.両系統ともに,青色光補光によってペリル アルデヒド含有量は 5%水準で有意に増加した.AC−S で は,補光によってペリルアルデヒド含有量は 84%増加し た(0.70μl/ g)が,もともとが低濃度(0.38μl / g)であ るため,第十六改正日本薬局方におけるソヨウの規定値 第 4 図 本系統および AC-S への青色光補光が草丈および主茎節数に及ぼす作用. 第 5 図 本系統への青色光補光による花芽形成の抑制.

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0.84μl / g に届かなかった.本系統における増加率は 61% であったが,もともとの含有量が高い(2.19μl/ g)ため, 最終的には 3.52 μl/ g の高濃度に達した.このように,シ ソへの青色光補光は,その系統のポテンシャルに応じてペ リルアルデヒド含有量を増加させることが示された. 遠赤色光補光による生育調節  青色光補光による顕著な花成抑制が明らかとなったの で,今度は,本系統のみを供試して,暗期開始直後の遠赤 色光補光による花成促進を試みた.第 7 図は,強度の異な る遠赤色光補光が本系統の草丈および主茎節数に及ぼす効 果を示している.まず草丈については,補光区 1,補光区 2および補光 3 では,対照区に比べて顕著に減少していた が,補光区 4 ではこれらの 3 区と対照区の中間程度で推移 した.このことから,暗期開始直後の遠赤色光補光は,そ の光量子束密度に応じて草丈の伸長を抑制する効果をもつ が,2.3μmol/m2/s 以上の強度になるとその効果が飽和す ると考えられた.主茎節数については,遠赤色光補光の有 無および強度に関する顕著な差は認められなかった.一方, 花芽形成については,補光区 3,補光区 4 および対照区では, 9月 8 日に初めて花芽を認めたのに対して,補光区 2 では 9月 16 日または 24 日に,補光区 4 では 9 月 24 日に初め て花芽を認めた.このように,遠赤色光補光は,強度依存 第 6 図 本系統および AC − S への青色光補光が乾燥葉の ペリルアルデヒド含有量に及ぼす効果. 第 7 図 本系統への遠赤色光補光が草丈および主茎節数に及ぼす作用.

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的にシソの花芽形成を遅延させた.ただし,遅延の程度は 最大でも 16 日であり,青色光による完全な抑制に比べる とその効果は小さかった.

考  察

 本系統の葉は,両面が赤紫色でやや長く,縮緬状の起伏 をもたない.このような葉の形態的特徴から,本系統はア カジソ(P. frutescens var. crispa f. purpurea)に分類される ものと考えられた.一方,葉に含まれる香気成分に関して は,本系統は,ペリルアルデヒドの含有量が極めて高い点 でほかの赤紫色系の葉をもつ 2 品種と異なっていた.第 十六改正日本薬局方には,「乾燥物に対して,ペリルアル デヒド 0.08%以上を含む」ことがソヨウの要件として記載 されている.重量比で 0.08%のペリルアルデヒドは,本研 究に用いた単位に換算すると 0.84μl/ g に相当する.本系 統の乾燥葉におけるペリルアルデヒド含有量(第 6 図)は, この要件を十分に満たすため,本系統を薬用のアカジソと 見なすことができる.この結果は,本系統が紀の川流域で 栽培されてきた薬用紫蘇であるという伝承と矛盾しなかっ た.  伊東(1970)は,110 系統の Perilla 属植物について香気 成分の組成比を調査して 4 つのケモタイプに分類し,また 肥塚ら(1984)は,215 系統のシソを調査して 5 つのケモ タイプに分類している.彼らの報告によれば,アカジソお よびアカチリメンジソのほとんどがペリルアルデヒドを主 成分とするタイプ(PA 型)に属し,一部がペリラケトン を主成分とするタイプ(PK 型)やフェニルプロパノイド を主成分とするタイプ(PP 型)に属するとされている. このように,葉の形態的特徴で分類される品種群とケモタ イプは必ずしも関連しない.クロマトグラムから本系統は PA型に属すると考えられたが,その典型「ペリルアルデ ヒドを主成分とし,リモネンを約 10%含有する」(肥塚 1984)に比べて,リモネンの含有量が高かった.伊東(1970) には,PA 型のアカジソについて 4 例の報告があるが,本 系統のようにリモネンを多く含む系統では,ペリルアルデ ヒドの含有量が低く,また,10%程度のメントールまたは リナロールを含んでいた.本系統は,ペリルアルデヒドと リモネンを多量に含み,メントールやリナロールを含まな いので,少なくともこれら既報の系統と同一ではないと考 えられた.このように,本系統は薬用紫蘇としての機能性 に加えて,特異な香気成分組成をもつことによっても他の シソ系統と差別化できると考えられた.  一方,単色光補光による生育調節に関しては,青色光補 光による顕著な花成抑制とペリルアルデヒド含有量の増加 が観察された.本系統の周年生産体制の確立には,短日期 における花成抑制が不可欠であるが,本研究の成果は,こ の課題を解決すると同時に機能性の向上をも達成するた め,実用可能な技術として評価できる.ただし,青色光補 光によるペリルアルデヒド含有量の増加は,花成抑制に付 随する部分が大きいと思われる.すなわち,花成抑制の結 果として,ペリルアルデヒドを多量に含む若い葉の構成比 率が増加し,このことが全体としてのペリルアルデヒド含 有量を増加させた可能性がある.他方,長日期の遠赤色光 補光による花成促進を検討したが,想定に反して,その効 果は認められなかった.一部のキク科植物では暗期開始直 後ではなく明期終了直前の遠赤色光補光が花成を促進する ことが報告されている(住友ら 2009)ので,遠赤色光補 光の処理時期を変えることでこの課題を解決することがで きる可能性がある.

謝  辞

 本研究は,JSPS 科研費 22658077 の助成を受けたもので ある.ここに感謝の意を表する.

引用文献

東野英明・木下孝昭・栗田 隆・濱田 寛・江藤浩市・福永 裕三(2011)ロスマリン酸を多く含むシソ抽出物のラッ トでの血糖値上昇抑制作用.日本食品化学工学会誌 58: 164− 169. 伊東 宏(1970)蘇葉の研究(第 6 報)Perilla 属植物の精 油成分と品質について.薬学雜誌 90:883 − 892.

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究報告 9:1 − 11.

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Characterization of a Medicinal Perilla Native to Wakayama Prefecture, and Growth

Regulation by Using Monochromatic Lighting

Akira Horibata1), Kiyoshi Yata2) and Tetsuya Matsukawa1)

1)Faculty of Biology-Oriented Science and Technology, Kinki University

 (930, Nishi-mitani, Kinokawa, Wakayama 649 − 6493, Japan)

2)Yata Nursery(4, Takazu, Kainan, Wakayama 640 − 0451, Japan)

Summary: We found one line of Perilla herb with good smell, as a local genetic resource that may have been cultivated in the Kinokawa plain since ancient times. In this study, firstly, we revealed the morphological and aromatic characteristic of this line by comparison with that of four varieties of Perilla frutescens. Since the leaves of this plant were dark purplish-red color on both surfaces without crepe-like undulations, and this plant contained a notable amount of perillaldehyde and limonene, it was suggested that this line of perilla was one of the varieties belonging to the medicinal red perilla, P. frutescens var. crispa f. purpurea. Secondly, to grow up this resource as a local special product, we have begun to develop the cultivation method for year round production and open up new uses. Supplemental lighting by blue LEDs to the perilla plants which were grown under the natural daylight dreadfully inhibited the flower formation, and allowed the continuous  differentiation of young leaves wealthy in perillaldehyde. This cultivation method is useful to inhibit flower formation during short-day period and to improve the functional component content in this perilla herb.

Key words: perilla herb, local genetic resources, perillaldehyde, monochromatic supplemental lighting, flower formation

Journal of Crop Research 58 : 43− 50(2013) Correspondence : Akira Horibata([email protected]

参照

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