Japanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service Japanese Sooiety for the Soienoe of Design
医
療 事 故 ゼ
ロ
を
め
ざ
し
た
医療 器
デ
ザ
イ
ン
の
事例
Case
with medicaldevice
design
which aims at medical malpracticeO
木田健
一
kennichi
kida
テ ル モ株 式 会 社 terumo corporation1 .
は じ めに 昨 今、
警 視 庁 発 表による 「医 療 事 故・
事 件の届 け 出件数
は増加の一
途であ る。
これ は情報
開 示 が進ん で き た こ と で あ り、
そ の こ と は喜
ばしいこ と で あ る が、
基 本 的に医 療 事 故と は あっ て は な ら ない事 象で ある。 医療の一
端を担う当社と して も、
こ の社 会 的 課題に対 し、
製 品・
サー
ビ ス等を通 じて事 故 ゼロを めざし、
近 年 全 力で取り組んでき た。
し か し まだ、
その取り組み は、著
に付いたばか り で あ り、解
決に は程 遠い次 元で は あるが、
今 回はユ ニバー
サルデザ
イン (以下UD
)の視 点か ら、
医療 機 器の安 全 性に 焦 点を当て て、
当社 デ ザイ ナー
たちが その課題に取 り組み、
多 少な り と も医 療 事 故軽
減に貢献
で き た製
品を紹介
さ せ て い ただく。本
報 告はUD
全般に活 用 できる内容で も ある。 300 250 200 150 doo 50 01997 年 1998 年 1999 年 2000 年 2001 年 2002 年 2003 年 2004 年 図1
医療事故 ・事件
の届 出警
視庁資
料2 .
点 滴 に お け る 医 療 事 故 対 策 製 品 につ いて 警 察へ の届 出 件 数 は上記の数であるが、
厚 生 労 働 省におい て も、
「医療 事 故の実 数」 は 正確に掴め て いない。
その た め、
事 故 内 容、
原 因につ いて も、
把 握が で き て い ない のが実 態で あ る が、
杏 林 大 学 川 村 教 授によるイン シデントレポー
ト等か ら推 測 し、
現 場で検 証しな が ら、
医 療 事 故 防 止のための製 品 作 り に 取 り 組 ん でいる。
こ のイ ン シデ
ン ト レポー
トは、
全 国300
床 以上の約220
病 院の看
護 職 員 約ILOOO
人 か ら集 まっ た 事 故にな りそ う な 「ヒヤ リと した り、
ハ ッ と した りした事 象」約11
,150
件の報 告を分
析 し報
告書
に ま と め た もので あ る。 匚
1]
誤 飲 32x チユ
ー
プ類 の1よず れ な ど 63鮎 飲 み 薬 の 投 12.
9%瓣
慮 者の転 倒・
転 落 15、1瓢 注 射・
点 滴 等 31.
4% 図2
イ ン シ
デ
ン ト報告
の分 類 (N
=11
,
150
件)
(全 国300
床 以上の220
病 院の看 護 師11,
000
人) 上 図のよ う に、
イ ン シデン ト事 例の第1
位は 「注 射 や 点 滴」 に よ る もの で あ る。
点 滴 関連 商 品に おいて は、
輸 液 剤か ら投 与 器 具、
機 械 等シ ステ ム全 体を ラ イ ン アッ プして いるの は国 内では当社のみで ある こ と か ら、
いち早くこ の 問題を取 り上げ、
対策改
善 品 に着
手し た。
川村教
授レポー
トが 公表
さ れ る と同 時 に、
当 社 独 自で全 国 約1200
病 院に聞き取り調査 (看 護 師が 主)お よ び現 場 踏査 を行い、
点 滴の 医療 事 故はいつ、
何が主 要因で起こるのか を 調査 し た。 と りわ け、
患者
へ の薬剤
の取 り違
えでは、
下 記の点
が 主 で あ ること が明らか に なった。
1
) 発 生 主 業 務 「輸 液バ ッ グ入り製剤」 に 「混 注 薬」 の混 注 時、
混 注 後の病 棟へ の ピッキング時が2
大 発 生 時。
2
)主 な要 因「輸 液バ ッ グ入 り
製
剤」 の形 状、色、
表 示の類 似 性、
輸 液 薬 剤 名の読み にくさ。 混 注 作 業の複 雑さ、
アンプル・
バイエ ル瓶の表示
類似
性、読
み に く さ。
56SPECIAL ISSUE OF JSSD Vol
,
13 Nc)、
4 2006 デ ザイ ン学研.
究 特 集号Japanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service Japanese Soolety for the Solenoe of Deslgn
(
1
)「輸液
バ ッグ入 り製剤
」で の対策
品事
例 く 輸 液バ ッ グ の表 示デ
ザ イン の改 善 >1
) 製 品コ ンセプ
ト 薬 剤を、
瞬 時に明 確に識別てき ること。 慣 れが生 した時でも、
瞬 時に識 別て き ること。
2
)デ
ザ イ ン設 計 輸 液ハ ソグの表 示 か 主 要 因と捉え、
多 数の案 を考 案 した。
初 期 段 階ては、
その多 数の案 を 「視 覚 探 索 法」 て評 価、
の識別度をピソ キング 時 間て評 価。
「視覚
探 索 法」間 違え を 「選 択の 時 間」 と 「記 憶 残 像」 に置き換え て
、
評 価。
「選 択の時 間」 が早 け れ は、 選 択 認 識しや すい、 「記 憶に残 り」や す け れ ば、
個 別 認 識しやすい、
との仮 説に基つ き、
よ り優 位 性の あ る デ ザ イ ン を選 定。
(千葉 大学
日 比 野教 授 と開 発 ) 写真 1パ ソ コ ン を使 用して の
視
覚 探索
法3
)輸
液バ ッ グの識 別デ
ザ イン 今 まて の画一
的 な 輸 液ハ ソ グの表示デ ザイ ン を、 識 別 点を強 調マー
ク化した、
テザ イン に決 定。
奐“
⇒
響
Y
⇒
響
囃
鞠賦
・
、
韆嚢
崛}
嚇 灘 灘幡
髦
ー
薯 ー ーー
ー 護 淫 護 野躑
ー1
、
鱸
1
麟
饗
麟
鰍
彎
鰻
瀦
写真
2 輸
液バ ッ グの識
別 デサ イ ン4
) 導 入 後 評 価 写 真3
業 ) 改 善 後 製 品を使 っての医 療 現 場 (混注作 商 品化後、
現 場で は 間違え か低 減し た が、
混 注 作 業 の複
雑さ、
アンプル・
バイエ ル瓶の表示類 似 性ての 対 策 改 善か さ ら に必 要と さ れ、
下 記 製 品を商 品化 し た。
SPECIAL ISSUE OF JSSD Vol 13 No 4 2006 デザ イ ン 学 研 究 特 集 号 57
Japanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service Japanese Sooiety for the Soienoe of Design
(
2
) 混 注 薬の取 り違 え 対 策 製 品 事 例 くテ ル モプレフ ィル ドシリンジ >1
)製
品コン セ プト 「輸
液バ ッ グ 入り製剤
へ の薬剤混
注」 業務
は、病院
に よ り異な り、
薬 剤 師も し く は看 護 師が担 当し てい る。 そこ で、
両 者のその業 務を観 察 調 査 し、
ア ンプ ル 容 器 やバイア ル容 器か ら薬 液を取 り出 し注 射 筒 注 射 針を使用 し た複雑
な作業
工程
(時に は粉末溶解
な ど )に最
も問 題が あ る と推
測し た。
そ の こ と か ら 「あ らかじめ 注 射 筒に薬 液 を 入 れ、
薬 剤 名 を 明 記」 したプレ フィル ドシ リ ン ジ が有 効ではないか との仮 説を持っ た。
も と も とこ の よ うなコ ン セプ トは、
当社
は数年前
か ら研究
し て お り、
こ れ を機
に一
気
に商
品化に結
びつ け た。
し か し、
現 場と し て は、
取り違え以 外に破 損し に く いプラ ス チ ック製のものが強い要 望としてあがって おり、
とりわ け、
淡 路 阪 神 大 震 災で被 災 さ れた病 院 か ら は このよ う な要 望が多く聞か れ た。
そのた め 当社
と し て は、既存
するガラ ス製
でな く、
プラスチッ ク製に取り組んだ。 プラスチック 製の注 射 筒と して ス ムー
スな 動き と種々 の薬 剤に適し た容 器と し ての 密 閉 性は、
相反する事 象で、
開発は 予定よ り長 期に 渡っ た。
表 記デ
ザ インも、
い か に識
別 性を 上げ
る か 現 場 踏 査差
の中で完
成 度を 上げ
て いっ た。
2
) 第1
ステッ プの製 品群 くメディジェ ク ト、
ビタジェ ク ト〉 ビタ ミ ン剤、
電 解 質 剤、
救 急製
剤 な どが主。
写真 4
テ ル モプレフ ィル ドシ リ ン ジ こ の製
品を市
場導
入後、
金 沢工業
大学
小松 原教
授、
金沢大学
医学部宮本
謙一
薬 剤 部長、
古川裕之副
薬 剤 部 長に依 頼 し、
医 療 事 故 リス ク 軽 減の評 価 を実 施。 …
[2
] ○ 評価 方 法 ;ア ンプル法 とプレ フィル ド (PFS
) 法 で の混注
をビデオ撮 影し、作
業 時 間・
行為
の評価
(被験者
は ア ンプル、
PFS
で の混 注経験者
各5
人 の 計10
人 ) 薬 剤 師 ア ン プル PFS 0 100 200 300 400 作 業 時 間 (s) 図3
薬
剤師
の作業
時 間 結 果 看 護 婦 ア ンプル PFS 旨 1…
國 確 認 ■ 開 封 ロ実作業 ロ廃 棄 團 消 毒 圏 その他 0 100 200 300 400 作 業 時 間 (s) 図4
看
護師
の作業
時 間結 果58 SPECIAL ISSUE OF JSSD Vo1
.
13 No.
4 2006 デ ザイ ン学研究 特 集 号Japanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service Japanese Sooiety for the Soienoe of Design
薬 剤
師
は大き な優位
性が明ら か に なっ た。
し か し、
看 護師
は、薬剤師
ほどでは な かった。
薬 剤 師は座 位 で滅 菌 作 業 を丁 寧に行い、 看 護 師 は 立 位で手 際 よ く 作 業を進め る こ と を旨と した職 能のため、
こ の よ う な 差になっ たと観 察よ り推 定 された。
ま た、
慣れの た めPFS
の包装
開封
に手 間 取っ た た め と、
見 受 けら れ た。
また、
小 松 原 教 授 は、
混 注 時の医 療 リスクには、 下 記のものが推 定されるがPFS
法は作 業手 順 が短い こと か ら、
リ ス ク発 生機 会数
が少な く な り、
リスク低
減の効 果が あ る と指 摘している。
患
者
へ の リス ク・
取り違い・
治 療 薬 剤 名の記 名ミ ス・
異 物 混入・
細 菌 混入・
薬 液 残 留・
内容 物 流出 作 業 者 (看 護 師、
薬 剤 師 )へ の リス ク・
け が (ア ンプルのガラス の怪 我。
針 刺し事 故 )環 境へ の リス ク
・
医 療 廃 棄 物と一
般 廃 棄 物 (包 装 体 ) 分 別 ミ スリス ク発 生 機 会 数の比
較
今 後は、
プレフィル ドシ リ ン ジの品 種数
を 増 やすこ と で医 療 事 故 防止 に寄 与す る と と も に、
継 続した イ ン シデ
ン ト調査 な どでその エ ビデ
ン ス を実 証して い きたい。 大 変 複 雑な手 技で高 度 専 門 知 識・
技 術 が 必 要と さ れ る。
ま た、
大 変 多 岐にわ たるタス ク、多
数の医薬品、
医 療 機 器、
医療 材 料が使 わ れる。
そ こに は、多
くの 医療 事 故 等の 危険性
が あ り、
その 煩 雑 性を軽 減す る こと で、
医 療リスクの発生機会
を低
減す る と と も に、
医 療 従 事 者の意 識 を患 者の ケア に向 けるため、 キッ ト化、
シ ス テム化し たも の で ある。病
院で異なる業 務工程、
手 術 手 技 等を踏 査、
標 準化
提 案を行
い、
準備
作業
の簡素
化、
手 術 手 順に あ わ せ た物 品配 置、
IT
に よ る手術
記 録、
保 健 請 求な どの事 務 処 理の簡 素 化、
安 全な廃 棄 処 理、 そ してそれ らが総 合 的 に も た らす医療 経 済 性が メ リッ ト とし て あげら れ る。 準 備 時 間で従 来品の約1
/10 、諸作業
等も大変
楽
になっ た との評 価を得てい る が市 場に導 入した ば か りの商
品で あ る た め今
後さ ら に評 価を 重 ね改 善し て いき たい。 〈血管 造 影 カテー
テ ル :ソ リュー
シ ョ ン パ ッ ク 〉 写真5
血管造影用カテー
テルキット・
ソ リュー
ションパック 紹介
し た3
製
品は、
新 技 術を駆 使し た先 端 医 療と は 異なるが、 医 療 現 場で の課 題 発 掘 力 と知 恵のデザ イ ン の結 晶として、
医療に大い に貢 献し て い る製
品で ある。3 .
カテー
テ ル手 術用 シ ス テ ム製品 につ い て次に
紹介
する製
品は、
医 療 事 故 低 減に加え、
医 療 の 質向
上の貢献
をコ ンセ プトに商 品 化さ れ た 「血管 造 影 用 カテー
テル 手 術のた めのキッ ト製 品」で ある。 今まで になか っ た手 術のキッ ト化と い う新 概 念の製
品である。
カテー
テ ル手 術 だけ でなく、
医療手術は、
【参 考 文 献 】 [1]川村治子 :平成11年厚生科学研 究 所 「医療の リスクマネジ メン トシ ス テ ム構築に関 する研 究 」よ り [2] 小 川 充、
小 松 原 明 哲、
古 川裕之、
宮本 謙一、
坂 尾雅子、和出田 静子 ;医療 用機器のリスク低減のた めの評 価方法につ い て一
薬 剤混 注作業に お け る ル プ ル法と プ レフィ1レド洲 ンジ法と の比 較 検 討を 事 例 と し て一、
2003.
1、
人 間 生 活 工 学4(1)、
34−
40SPECIAL ISSUE OF JSSD VoLl3 No