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管理職におけるストレスコーピングと組織風土がワーク・エンゲイジメントと抑うつに及ぼす影響

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-81 280

-管理職におけるストレスコーピングと組織風土が

ワーク・エンゲイジメントと抑うつに及ぼす影響

○若杉 美樹1)、佐藤 秀樹1)、小澤 優璃1)、中村 美咲子1)、鈴木 伸一2) 1 )早稲田大学大学院人間科学研究科、 2 )早稲田大学人間科学学術院 【目的】 本邦における労働者のメンタルヘルスは悪化傾向に あり,うつ病や気分障害患者数の増加(厚生労働省, 2015),被雇用者の自殺割合の増加に如実に反映され ている(警察庁,2018)。職場のメンタルヘルスは, ストレス研究を機に複数の職業性ストレスモデルを ベースとして研究が行われてきた。その中でも,仕事 の 要 求 度-資 源 モ デ ル(JD- R モ デ ル )(Bakker& Demerouti,2014)は,仕事の環境を「仕事の要求度」 と「仕事の資源」に分類し,多くの業種や職場に適応 する代表的モデルと言われている(金井,2016)。一 方,職場のメンタルヘルス研究は,そのほとんどが若 年労働者を対象として行われており,管理監督者自身 のメンタルヘルス対策の研究はほとんど見当たらな い。しかし,並木ら(2015)が管理者のストレスとし て10項目を挙げているように,管理監督者のストレス 対策の検討が重要であり,その際ストレスに対する対 処行動と定義されるコーピングと,成員の認知に基づ く主観的な環境と定義される組織風土が重要となって くる(矢島ら,2015)。コーピングは,その対処法に よってストレスが減少することが示されており,一 方,組織風土は伝統性が低く,組織環境性が高い組織 風土ほど,勤労意欲や職場満足度が高く,従業員のス トレスが低くなることが示されている(外島・時田, 2015)。しかしながら,コーピングと組織風土が管理 監督者のストレスとどのように関連するのかという研 究は少ない。以上のことから,本研究ではコーピング および組織風土と,ワーク・エンゲイジメントと抑う つの関連を検討することを目的とした。本研究の仮説 は,「ポジティブなコーピングを用い,組織風土の環 境性が低く伝統性が高い群は,ネガティブなコーピン グを用い,組織風土の環境性が低く伝統性が高い群よ り,ワーク・エンゲイジメントが高く,抑うつが低い」 こととした。 【方法】 参加者 某県庁職員の正規職員,および週29時間以 上就業している非正規職員2,782名のうち,職位が課 長補佐級以上の管理監督者420名(男性366名,女性54 名,平均年齢54.04歳±4.79歳) 。コーピング Tri-axial Coping Scale(TAC-24:神村ら,1995)を用いた。 TAC-24は「問題解決サポート探し」「問題回避」「ポジ ティブな解釈と気そらし」という下位因子に分類され

る。 組 織 風 土 12-item Organizational Climate Scale(OCS:福井ら,2004)を用いた。OCSは「組織環 境性」と「伝統性」という下位因子に分類される。 ワ ー ク・ エ ン ゲ イ ジ メ ン ト U t r e c h t W o r k Engagement Scale 日 本 語 版(UWES:Shimazu et a l . , 2 0 0 8) を 用 い た。 抑 う つ  日 本 語 版 B e c k Depression Inventory-II(BDI-II: 小 嶋・ 古 川, 2003)を用いた。分析方法 第一に,コーピングの下 位因子・組織風土の下位因子と,抑うつ,ワーク・エ ンゲイジメントの関連を見るために相関分析を行っ た。第二に,コーピングの下位因子でクラスタ分析を 行った。第三に,組織風土の下位因子でクラスタ分析 を行った。第四に,コーピングのクラスタと組織風土 のクラスタを独立変数,ワーク・エンゲイジメントと 抑うつを従属変数とした 2 要因分散分析を行った。倫 理的配慮 早稲田大学「人を対象とする研究に関する 倫理委員会」の承認を得て実施された(承認番号: 2017-228)。 【結果】 各変数の関係について検討するため,Pearsonの積 率相関係数を算出した。その結果,問題解決サポート は,ポジティブな解釈と気そらしと中程度の正の相関 (r = .46, p < .01)が認められた。また,抑うつは ワーク・エンゲイジメントと中程度の負の相関(r = -.40, p < .01)が認められた。抑うつは組織伝統性 と,ワーク・エンゲイジメントは問題解決サポート と,それぞれ弱い正の相関(順にr = .32, p < .01. r = .34, p < .01)が認められた。コーピング (問題解決サポート探し・問題回避・ポジティブな解 釈と気そらし)の各尺度の標準化得点を用いてクラス タ分析を行なった。その結果,( 1 )積極型コーピン グ(問題解決サポート探し・ポジティブな解釈と気そ らしがともに高い;n =104),( 2 )受け身型コーピン グ(問題回避・ポジティブな解釈と気そらしがともに 低い;n =199),( 3 )回避型コーピング(問題解決サ ポート探しが低い,問題回避が高い;n =117)の 3 タ イプに分類された。同様に,組織風土(組織環境性・ 伝統性)の標準化得点を用いてクラスタ分析を行なっ た。その結果,( 1 )放置型組織(環境性・伝統性と も低い群;n =168),( 2 )封建型組織(環境性が低く 伝統性が高い群;n =135),( 3 )参加型組織(環境性 は高く伝統性が低い群;n =117)の 3 タイプに分類さ

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-81 281 -れた。コーピングと組織風土が,ワーク・エンゲイジ メントと抑うつに与える影響を検討するために,コー ピングのクラスタと組織風土のクラスタを独立変数, ワーク・エンゲイジメントと抑うつを従属変数とする 2 要因分散分析を行った。その結果,コーピングにお いて群の主効果が有意であった(ワーク・エンゲイジ メント:F(2,417) = 5.25, p < .01;抑うつ: F (2,417)= 14.55, p < .001)。また,組織風土におい ても群の主効果が有意であった(ワーク・エンゲイジ メント:F (2,417) = 16.64, p < .001;抑うつ: F (2,417) = 7.60, p < .01)。コーピングと組織風土 の交互作用は有意でなかった(ワーク・エンゲイジメ ント:F(2,417) = .299,p = .879;抑うつ:F(2,417) = .518,p =.723;Figure1,2)。 【考察】 本研究の結果から,管理監督署においてコーピング と組織風土はお互いに影響せず,それぞれが単独で ワーク・エンゲイジメントと抑うつに影響を与えるこ とが示されたため,仮説は支持されなかった。Lee et al.(2016)は,ワーク・エンゲイジメントに影響を 与えるのは,序列的組織風土よりリーダーシップスタ イルや上司のフィードバックであることを示唆してい る。また,福井ら(2004)は,仕事上の技術活用や自 由裁量度が高い組織の場合,職員一人一人が自身の長 所を自覚し仕事に活かすようになることを指摘してい る。すなわち,このような自由裁量度が高い組織風土 においては,頻繁に対人コミュニケーションを取る過 程で自然とコーピングが向上することを意味してい る。よって,本研究においても,組織風土とコーピン グの相乗効果は,ワーク・エンゲイジメントと抑うつ に影響を及ぼさなかったものと考えられる。

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