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産業医科大学医学部不整脈先端治療学河野律子安部治彦 Ⅰ. はじめに本邦では,2009 年 10 月より原因不明の再発性失神患者に植込み型ループ式心電計 (implantable loop recorder : ILR) が保険償還され, 短期間に失神発作を繰り返し, その原因として不整脈が強く疑われ

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Academic year: 2021

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Ⅰ.はじめに  本邦では,2009年 10月より原因不明の再発性失神患者に植込み型ループ式心電計(implantable loop recorder : ILR)が保険償還され,「短期間に失神発作を繰り返し,その原因として不整脈が強く疑われ る患者で,心臓超音波検査及び心臓電気生理学的検査(心電図及びホルター心電図を含む)などにより, その原因が特定出来ない患者に対する原因究明の目的」となっている1).2016年 9月 1日にはさらに小 型化され,皮下挿入型となり,体形や年齢を問わず使用しやすくなった.また,新たに潜因性脳梗塞患 者に対する心房細動検出の臨床使用も保険適応となった2).今後,失神や不整脈の診断において,植込

み型心臓モニター(implantable cardiac monitor : ICM)の利用がさらに拡大していくものと予測され る.本稿では,ICMについての遠隔モニタリングの利用状況や有用性について述べる. Ⅱ.ICMの検出機能と経過観察  ICMでは,あらかじめ設定された条件による自動検出記録と,患者によって記録される手動記録が 可能である.デバイスの種類にもよるが,自動記録では設定された不整脈の検出から前後 30秒間の約 1分間の心電図記録が取得される.自動検出の設定は,心停止時間や下限レート設定による徐脈の検出, 上限レート設定による頻脈の検出,心拍数のばらつきによる心房細動の検出が可能である.患者による 手動記録では,リモコン操作を行いデバイスへ信号を送った後の約 1分間と,遡って 4~ 6分間の記録 がなされる.機器によって記録可能なイベント数は異なるが,各製品とも容量を上回った記録は随時上 書き保存されていくことになる.デバイスの電池寿命は,約 2 ~ 3年程度であり,確定診断がなされた 場合や治療の効果判定がなされた場合,電池寿命の段階で ICMを取り出すこととなる.ICM挿入後は, 3ヵ月毎に外来で記録の確認を行う.また,失神症状を認めた場合や手動記録を利用した場合には速や かに病院へ連絡し,指示に従って来院するように指導している. Ⅲ.遠隔モニタリングの使用状況

 日本国内で最も使用が多い Medtronic 社の Reveal DX/XT では,遠隔モニタリングは Wireless transmissionに対応していなかったため,患者が手動でトランスミッタを ICM植込み部分に近づけて データ送信する必要があり,あらかじめ設定されたイベントが生じた際にサーバーから医師に Alert

mail を送信するような機能はなかった.しかし,2016 年 9 月に使用開始となった Reveal LINQTM

産業医科大学医学部 不整脈先端治療学

河野律子 安部治彦

植込み型心電計を用いた遠隔モニタリングシステム

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(図 1A)は,ペースメーカや ICD/CRT(D)で使用されている CareLinkネットワークTMを利用したデー タ送信が行われる(図 1).通常は,自宅のベットサイドへのトランスミッタ設置(図 1A~ C)を促し, 患者にイベントが生じた場合,予定された時間にサーバーにイベント情報が送信される.しかし,本シ ステムの最大の欠点は,自宅に設置したトランスミッタ(図 1C)を用いて植込まれた ICMにデータを取 り込む作業を行わないと保存された心電図データは担当医師が直接確認できないこと,イベント発生時 の症状についてはまったく不明であること,患者はアクチベータを常に携帯しておく必要があったこと (図 1B),などの種々の問題点があった.  近々国内でも保険償還予定であるが,すでに欧米で使用されている St. Jude Medical社(Abbott社)

の Confirm RxTMICM(図 2A)は,ベットサイドに設置するトランスミッタや患者が携帯するアクチベー

タがまったく不要となり,患者個人のスマートフォンにアプリをダウンロードすることで,トランス ミッタとアクチベータとして機能する.その際,患者に生じた症状はアプリ上からより詳細に選択でき ることが大きな特徴である(図2B).ICM情報は,Bluetooth® wireless technologyを介して,直接スマー

トフォンアプリに接続され,その情報(心電図)はすべて担当医師へ直ちに送信される.BIOTRONIC社 の ICMである BioMonitor 2においても,データ伝送の中継機器である携帯電話型のモバイルタイプの カーディオメッセンジャー CM Smart 3Gによって携帯電話の 3G回線を使用して,ワイヤレスで 1日 1 回自動的にデータがサービスセンターに送信され,その後医療機関への送信が行われる(図 3).

図 1 Medtronic社の Reveal LINQTMと CareLinkTM

A:Reveal XTTMと Reveal LINQTM

B:Reveal LINQTMに使用される患者アシスタント Model 96000 C:遠隔モニタリングのための CareLinkTM

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図 2 St. Jude Medical社のConfirm RxTM ICMとスマートフォンアプリ A:Confirm Rxの概要 B:スマートフォンアプリの表示内容 SPECIFICA TION VALUE Volume 1.4 cc Mass 3.0 g Length 49 mm Width 9.4 mm Thickness 3.1 mm Longevity 2 years 3.1 mm 49 mm ELECTRODE HEADER 9.4 mm TIP ELECTRODE Confirm RxTM ICM A B 図 3 BIOTRONIC 社の BioMonitor 2TMとカーディオメッセン ジャー CM Smart 3GTM

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Ⅳ.遠隔モニタリングで得られる情報

 遠隔モニタリングによって得られる情報は,通常の ICMからマニュアルで得る場合と同じ内容の情

報が取得可能である.Medtronicの Reveal LINQTMでは,① ICMの検出設定,②エピソード(自動記録・

マニュアル記録)の有無,③エピソードとして記録されたすべての心電図(図 4)が確認される.しかし ながら,患者にイベントが生じ自動記録されたデータが自動送信された場合には,イベント発生の前後 30秒の記録のみしか送信されない(図 5).そのため,その 30秒間の記録のみでは詳細が確認できない 場合には,必要に応じて患者に連絡し,来院を促すか,もしくは患者によるイベント時の数分間に及ぶ 記録データを CareLinkTMネットワークを使用して手動でデータ送信してもらう必要がある.その後, 医療従事者はCareLinkTMのWebサイトにアクセスし,イベント時の心電図情報を確認することになる.

 St. Jude Medical社の Confirm RxTMでは,前述の如くスマートフォンですべての情報伝達が可能と

なるため,患者および担当医師にそのような手間は一切不要である.Confirm RxTMは,すべての情報

がスマートフォンを用いた遠隔モニタリング機能(MERLIN. NET)を通じて得られる点で,Medtronic 社の Reveal LINQTMの CareLinkTMより利便性が高い.

図 4

CareLinkTMでの送信一覧画面と心電 図記録

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Ⅴ.ICM患者における遠隔モニタリングの有用性  Furukawaらは,遠隔モニタリングを行った Reveal DX/XT患者 47人を平均 20± 13週にわたりフォ ローアップした成績を報告している3).本研究では,CareLinkTMネットワークを用いて毎週データ送 信を行うことを義務付けており,47人の患者のうち 32人(68%)に少なくとも 1回以上の true event(ア ンダーセンシングやオーバーセンシングを除く)が ICMによる心電図で確認されている.また,植込み 後から最初のtrue eventが得られるまでの期間は平均28±49日で,従来の3ヵ月毎の外来フォローアッ プに比較して,診断までの期間が平均 71± 17日間短縮していたことを明らかにし,その有用性を報告 している.しかしその一方で,47人中 38人(81%)の患者では,1回以上の false event(アンダーセンシ ングやオーバーセンシング)が生じていたことも明らかにした.すなわち,これらの患者がもし 図 5 CareLinkTMでの送信一覧画面と心電 図記録

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CareLinkTMを利用していなかったと仮定すれば,47人中 21人(45%)の患者ではメモリー飽和が起きた 可能性があったことも報告している.また,33人を対象に行われた CareLinkTMの使用に関する患者質 問調査では,対象患者全員が CareLinkTM操作は比較的簡単であると感じており,25人(76%)の患者で は遠隔モニタリングの使用によって安心感を得ることができたと回答していた(表).Drak-Hernández Y.らは,ICMが植込まれた 109人の患者を 3ヵ月毎の外来受診群と遠隔モニタリング使用群の 2群に分 け比較した後ろ向き観察研究を行い,82.6%の患者で診断が得られたと報告した4).遠隔モニタリング 患者群では平均診断期間は 56日(0~ 650日)であったのに対し,従来のフォローアップ群では平均 260 日(5~ 947日)と有意に短かった(p< 0.01).遠隔モニタリングにより平均 187日はやく,二次的な合併 症を伴わずに治療に結びつく診断結果が得られていることから,遠隔モニタリングは,患者の安全性に 悪影響を及ぼすことなく,診断および治療開始までの時間を大幅に短縮することができると結論づけて いる.  2014年に報告された CRYSTAL AF試験は,原因不明の虚血性脳卒中もしくは一過性脳虚血発作 (TIA)患者において,ICM と標準的な ECG モニタリングによる AF 検出率を比較検討したものであ る5).40歳以上の原因不明の虚血性脳卒中または TIAと診断されてから 90日以内の 441人の患者を対 象として無作為割付けが行われた.エンドポイントは 30秒以上持続する AFの初回検出であり,6ヵ月 以内の初回 AF検出率は ICM群で有意に高く(ICM群 8.9% vs.対照群 1.4%;HR 6.4;95% CI 1.9~ 21.7,p< 0.001),12ヵ月以内でも ICM群が有意に高いという結果であった(ICM群 12.4% vs.対照群 表 CareLinkTMを使用したデータ送信における33人の患者の評価 〔文献 3)より改変して転載〕

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2.0%;HR 7.3;95% CI 2.6~ 20.8,p< 0.001).さらに,対象患者における経口抗凝固薬の使用は,6ヵ 月後に ICM群 10.1% vs.対照群 4.6%(p= 0.04),12ヵ月後には ICM群 14.7% vs.対照群 6.0%(p= 0.007) と明らかに ICM群で高くなっており,12ヵ月までに心房細動が検出された患者の 97%で抗凝固薬の内 服加療が行われたことが報告されている5).心房細動のイベントと脳梗塞発症の時間的な関係は明らか ではないが6),心房細動に対して除細動を行う場合には,早期の発見であれば対応が容易であり,また 二次予防目的の抗凝固療法の早期開始につながることから,失神患者のみならず潜因性脳梗塞患者に対 する心房細動検出目的での ICM使用患者においても,遠隔モニタリング導入による早期診断の有用性 は高いと考えられる. Ⅵ.おわりに  発作時の心電図をとらえることが可能な ICMは,効率的に原因不明の意識消失発作を確定診断へ導 くことができる重要な診断ツールである.潜因性脳梗塞患者での心房細動検出を目的とした使用によ り,予防的側面からの使用もなされることになった.さらに,ICMが小型化されたことで,患者側の ICM植込みに対する抵抗感も減少し,遠隔モニタリングにより医療従事者側もフォローアップも容易 になってきている.今後,ICMの利用範囲が拡大し,国内での使用は増加していくことが予想される. 遠隔モニタリングによって,ICM植込み後から診断までの期間のさらなる短縮のみならず,原因不明 の失神患者への不安感の軽減による QOLの向上につながることから,日常診療に上手く導入していく ことが望ましい. 〔文   献〕 1 ) 日本循環器学会:循環器病の診断と治療に関するガイドライン:失神の診断・治療ガイドライン(2012年改訂版).http : // www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2012_inoue_h.pdf(2018年 3月閲覧) 2 ) 日本脳卒中学会 脳卒中医療向上・社会保険委員会 潜因性脳梗塞患者診断手引き作成会:植込み型心電図記録計の適応とな り得る潜因性脳梗塞患者の診断の手引き.2016

3 ) Furukawa T, Maggi R, Bertolone C, Ammirati F, Santini M, Ricci R, Giada F, Brignole M : Effectiveness of remote monitoring in the management of syncope and palpitations. Europace, 2011 : 13 ; 431~ 437

4 ) Drak-Hernández Y, Toquero-Ramos J, Fernández JM, Pérez-Pereira E, Castro-Urda V, Fernández-Lozano I : Effectiveness and safety of remote monitoring of patients with an implantable loop recorder. Rev Esp Cardiol(Engl Ed), 2013 ; 66 : 943~ 948

5 ) Sanna T, Diener HC, Passman RS, Di Lazzaro V, Bernstein RA, Morillo CA, Rymer MM, Thijs V, Rogers T, Beckers F, Lindborg K, Brachmann J ; CRYSTAL AF Investigators : Cryptogenic stroke and underlying atrial fibrillation. N Engl J Med, 2014 ; 370 : 2478~ 2486

6 ) Brambatti M, Connolly SJ, Gold MR, Morillo CA, Capucci A, Muto C, Lau CP, Van Gelder IC, Hohnloser SH, Carlson M, Fain E, Nakamya J, Mairesse GH, Halytska M, Deng WQ, Israel CW, Healey JS ; ASSERT Investigators : Temporal relationship between subclinical atrial fibrillation and embolic events. Circulation, 2014 ; 129 : 2094~ 2099

参照

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