高速液体クロマトグラフィー(HPLC)
の基礎と操作法
分子機能解析化学研究室
M2 池田
豊
互いに混じり合わない二つの相、
固定相
とそれと接し
ながら流動する
移動相
とで構成された系の中で、物質
を分離する方法のこと。
移動相
に液体を用いた方法が
液体クロマトグラフィー
(liquid chromatography LC)である。
クロマトグラフィーとは?
HPLCで測定できること
UV-Visスペクトル図 数種類の物質 λmaxが近接 波長 (nm) 吸光度 UV-Vis スペクトルから 物質の濃度を定量 各物質のピークが重なり、 定量できない。分離が必要!相互作用 小 中 大
高速液体クロマトグラフィー (HPLC) クロマトグラフィーでは、各物質の 固定相や移動相への親和性の違い
装置の構成
溶離液槽 溶媒フィルター ポンプ 圧力計 マニュアル インジェクタ UV検出器 廃液槽 クロマトグラフ 固定相 カラムHPLCによる分離は
固定相-試料成分
の吸着だけでなく、
固定相-移動相溶媒
の吸着も競合する
固定相-移動相溶媒の
極性
に大きな差が生じないと試料
成分の分離が不完全になる
固定相の極性>移動相の極性
固定相の極性<移動相の極性
移動相と固定相の選択
順相クロマトグラフィー 逆相クロマトグラフィー疎水性相互作用について
O H H O H H O H H O H H O H H O H H O H H 油 油 O H H O H H O H H O H H O H H O H H O H H 親水系での疎水性物質同士の集合効果 =疎水性相互作用 親水性溶媒の組成が下がると、疎水性相互作用はおこりづらい 親水性溶媒の組成が下がると、疎水性相互作用はおこりづらい 油 油分離の原理
親水性溶媒+有機溶媒 固定相-試料の相互作用の程度を調整 親水性溶媒+有機溶媒 固定相-試料の相互作用の程度を調整 油:固定相、分離したい試料A、BODS
固定相 移動相:水+アルコール A B カラム内の図 固定相と試料との相互作用が弱 いものから溶出する B B B A A A A BHPLC操作手順
溶媒選択、脱気 カラム平衡化 試料inject 分析 カラム洗浄、保存溶媒選択
移動相
:
水と有機溶媒を混合させて用いる メタノール アセトニトリル PRTR指定特性
・試料を適度に溶解させ、化学変化させないこと ・カラムに負担をかけないこと ・試料の吸収帯において、溶媒自身の吸収が見られないこと メタノール、アセトニトリルの吸収特性脱気操作
・移動相の流量が変動による 保持時間の変化 ・気泡の光吸収によるクロマト グラ ム上のノイズ脱気・・・気泡の除去
異なる溶媒を混合することで、気泡が発生!! 水、メタノール混合液発熱
溶存空気が気泡として発生 水、アセトニトリル混合液吸熱
室温で暖められて気泡が発生カラムの平衡化
ODS ODS ODS ODS 溶媒の比率やカラムの長さによって 平衡化に要する時間は異なる 水分子 固定相と親水性溶媒はなじみずらい 試料の分離能が良くない 数十分間、移動相を流すことで馴染ませるカラムの平衡化
クロマトグラム
1~7の成分は同じ濃度 同じ濃度でも試料によって ピーク面積が異なる クロマトグラムの例:カテキン類 1.EGC 2.C 3.Caffeine 4.EGCg 5.EC 6.ECg 7.Cgカラム 移動相 流速 カラム温度 検出設定 CAPCELL PAK C18 CH3 OH / 0.5vol% H3 PO4 ,H2 O / =1/4 0.8mL/min 40℃ UV 280nm HPLC Condition
濃度(mM) 0.04 0.08 8.0 6.0 4.0 2.0 Cg ECg GCg EGCg (+)C EC 0 HPLC ピーク面積 (× 10 5 )
検量線の作成
算出式:[ピーク面積]=傾き×[試料の濃度]ODSカラムの洗浄
そのままにしておくと、次回の分析時に影響(保持 時間のずれ、安定化に長時間かかる)がでる。 ODS充填剤表面の物質を洗い流す、洗浄という作 業が重要 HPLC分析を行った後のODS充填剤表面には、 分析に用いた物質が吸着しているODSカラム洗浄
移動相に緩衝液を含む場合 移動相に緩衝液を含まない場合 同じ混合比率の有機溶媒と 酸性水で置換 有機溶媒比率を高めた酸性 洗浄液で洗浄する 分析で用いた移動相よりも極性の低く、 やや酸性にした洗浄液で洗う 洗浄液に過塩素酸ナトリウムを加え洗浄カラムの保存
• 充填剤やカラムに負担のない溶媒で置換する • 中の溶媒が揮発しないように密栓し、一定温度で保存 カラム固定相の劣化の原因 ①結合相の脱離(とくに酸性条件) ②シリカの溶解(中性、アルカリ性条件) ③移動相および試料中の成分の吸着電気陰性度: 原子が結合電子対を引き寄せる力 電気陰性度の差 小→電荷の偏りがほとんど見られない(無極性) 電気陰性度の差 大→電荷の偏りが生じる (極性) アルキル基 (炭素差が長いほど疎水性大)、ベンゼン環 ヒドロキシル基(-OH)、カルボキシル基(-COOH)など C-C、C-H結合を有する分子 H O δ- δ+ 3.5 2.1 OH結合 逆相系HPLCでは疎水性が分離の駆動力 固定相は無極性分子は保持されやすく、 極性分子は保持されにくい
分子構造と保持力の関係
シリカゲル表面 シラノール基 にODS化剤 を結合する O-Si O-Si CH3 CH3 CH3 CH3 極性が低く表面積が大きい
逆相クロマトグラフィーで用いられる固定相の状態
Si C18H37 CH3 O CH3 Clカラム圧力の違い
水:メタノール=1:1の時 水素結合がもっとも密になる
クロマトグラム模式図
保持時間 (retention time, tR) ピーク幅 (W) 半値幅 (W1/2) ピークの高さ (h ) 物質が注入されてから溶出されるまでに要し た時間 ピークの両側の変曲点に接線を引き、それ らがベースラインと交わった2点間の距離 ピーク頂点からクロマトグラムのベースライ ンまでの距離 hの1/2の位置(h/2)のピーク幅 保持比(capacity factor, k’) : カラムへの保持の度合い 分離係数(α) : 分離の程度を表す尺度 0 0 1 1' t t t k = − 0 0 2 2' t t t k = − ’ ’ = α 1 2 k k1)理論段数(number of theoretical plate, N) 2 16 ⎟ ⎠ ⎞ ⎜ ⎝ ⎛ = W t N R 2 2 / 1 545 . 5 ⎟⎟ ⎠ ⎞ ⎜⎜ ⎝ ⎛ = W t N R a)高理論段数 b)低理論段数
HPLCの評価
2)理論段相当高さ(height equivalent to a theoretical plate, HETP,
H) 1理論段数あたりのカラム長さ H = L/N カラムの分離効率を表すパラメー ター (カラム長さ:L) 保持時間 :tR ピーク幅 :W 半値幅 :W1/2
⎜ ⎜ ⎝ ⎛ ⎟⎟ ⎠ ⎞ + ⎟ ⎠ ⎞ ⎜ ⎝ ⎛ ' 1 ' 1 -4 Rs 2 2 k k N α α = 3)分離度(Rs) 2成分のピークがどの程度分離しているかを示すパラメーター a)分離良 b)分離やや不良 c)分離不良 ( 完全分離 : Rs > 1.5 ) 保持比(capacity factor, k’) : カラムへの保持の度合い 0 0 1 1' t t t k = − 0 0 2 2' t t t k = − 分離係数(α) : 分離の程度を表す尺度 ’ ’ = α 1 2 k k
a)正常ピーク b)フロンティング c)テーリング ・インジェクション容量が多すぎる/サンプル濃度が高すぎる (サンプルのオーバーロード)、平衡化が不十分 ・移動相に対して、サンプルを溶解している溶媒が強すぎる フロンティング テーリング ・インジェクターの問題 (バルブが動かない、バルブの液漏 れ、ニードルのつまり、ニードルの破損、インジェクションポー トのつまり) ・カラムまたはガードカラムの汚れ ・カラムまたはガードカラムの汚れ
ピーク形状とその理由
疎水性相互作用で保持されている成分の洗浄
• 極性の低い溶媒を使う
• 移動相に緩衝液を用いていた場合、塩の析出に
注意
緩衝液/有機溶媒の分析移動相を用いている場合 ①同比率の水/有機溶媒でカラムや流路を置換 ②有機溶媒の比率を上げる 疎水性相互作用酸性の洗浄液を用いて、孤立電子対に水素を 配位させ水素結合を抑制