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「陸と海,干潟と干潟,人と生物のネットワークで環境生

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2015 年 10 月 26 日 第 125 回海洋フォーラム要旨

「大型化が進むコンテナ船 ~現状と今後~」

川崎汽船株式会社執行役員 木戸 貴文

【講演要旨】

1.海上貨物輸送コンテナ化の歴史 コンテナ船の発明・登場 15 世紀末に海上貨物輸送が開始され、産業革命を経た 19 世紀に大きく発展することとなっ た。このころから、定期船と不定期船という分類が登場してきた。当時は、定期船と言っても荷 物をバラ積みしており、もちろん、雨が降れば荷役ができないということで、不安定なものだっ た。世界で初めてのコンテナ船は、1956 年にアメリカのマルコム・マクリーン(Malcom P. McLean)が買収した会社が、タンカーを改装してコンテナを輸送したのが始まりである。彼は 有数の陸運業者であり、陸でも海上でも同じコンテナを利用して荷物を運ぶほうが便利である と考えた。現在では、2 万本ものコンテナを載せられる船が出てきたのでマルコム氏も驚くだろ うが、彼の働きによって、海上貨物輸送には大きな革命が生じたことになる。日本では、1964 年 の海運集約を契機として海運業の規模拡大が図られた。1967 年にアメリカのマトソン社が、定 期コンテナ船の荷物を日本に持ってきた。当時、これは大騒ぎになったが、邦船もこれに対抗し なければならないということになり、日本郵船が初のコンテナ船となる「箱根丸」を就航させ、 これ以降、日本もコンテナ船の時代を迎えることになる。 コンテナ船の登場により、多くの変化が生じた。コンテナは国際規格であり、基本的には 20 フィート、40 フィート、45 フィートが長さの基準となり、幅は 8 フィートで統一されている。 これが、コンテナ船や陸上輸送のトレーラーの基準となっている。また、荷役効率も飛躍的に向 上した。クレーンが大型化したこともあり、一度に非常に多くの荷物を積み降ろしできる。従来 船では、荷物を陸上に下ろした時点で船会社の責任は終わったが、現在は陸海一貫複合輸送化で あり、輸送契約があれば内陸まで輸送することが船会社の責任となった。コンテナ船の登場は、 船会社の経営にとっても大きな変化をもたらした。その一つが、事業参入障壁が下がったという ことである。在来船では、荷役のノウハウなどや利益効率など専門性が高かったが、現在では、 船やコンテナをリースし、ターミナルと契約を結べば、理論的には比較的たやすく海運業を営め るような状況へとハードルが下がった。これによって、海運業は競争激化の時代に入くことにな る。 コンテナ貨物専用船の登場 コンテナ貨物専用船が一般化した 1960 年代半ばでは 700 本程度のコンテナしか積めなかっ たが、1990 年代後半にパナマ運河の通過を前提としないオーバーパナマックスの 6,000TEU の

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コンテナ船が就航した。それが次第に大型化していき、現在では20,000TEU 型という巨大なコ ンテナ船が登場している。 2.コンテナ船のサイズと大型船化 大型コンテナ船のサイズ コンテナ船の大型化の状況を視覚化して比較してみると、9,000TEU クラスのコンテナ船で東 京タワーの高さである333 メートルを越え、20,000TEU 型となると全長は 400 メートルにもな る。単純に比較すると、(甲板の広さは)テニスコート90 面分もの広さがある。当社でも、2000 年代なかばに9,000TEU のコンテナ船を発注したが、「東京タワーよりも大きくて、鉄腕アトム の10 万馬力のエンジンという大きな船を作って大丈夫なのか」が役員に答申した際の反応であ った。それくらい、コンテナ船の大型化は急速に進んでいった。 新造船の大型船化 リーマン・ショック以降は、それ以前の燃料油の高騰などもあって新造船の省エネ化が進んで おり、低速運行する前提で作られている為、最新の14,000TEU サイズの船のエンジンは、2000 年代の 9,000TEU の船よりも小さい。足許の燃料油価格は、原油価格の下落もあって下がって きているが、最新鋭大型船の投入による燃料コストの低減は大きなものがある。世界的なコンテ ナ貨物量の増加に伴って、船社も輸送能力を増やしているが、変動が激しい燃料油コストを低減 するために本船の大型化が進むのは自然の流れと言える。 フルコンテナ船就航隻数と平均船型の変化 全体の平均船型と新造船の平均船型を見てみると、1990 年代初頭には、全体の平均が 1 千数 百TEU であり、新造船の平均も同じくらいの大きさだった。それが新造船のサイズが次第に大 型化していき、現在では、新造船の平均は9,000TEU に迫る勢いである。船隊規模で言えば、当 時から比べると8 倍程度にまで大型化しているのが現状である。 特に、2000 年代に入って急激に大型化が進んでいる。これは、欧州の需要が活発化した時期 に合致しており、パナマ運河を通過しないことを前提とした航路の大型化が一気に進んだ。その 後、デンマーク船社であるマースクが、16,000TEU という大型コンテナ船を発注し、以後、超 大型コンテナ船の造船技術や運行技術が発展した。 サイズ別コンテナ船隻数 現在、10,000TEU を超える大型コンテナ船の発注が 200 隻近くある一方で、現在パナマ運河 を通航できる5,000TEU のサイズのコンテナ船はあまり発注されていない。2016 年半ばにパナ マ運河が、13,000TEU のサイズが通航できるまでに拡張されるが、それによって新たに通行可 能となる 7,000~13,000TEU サイズのコンテナ船の発注が増えている。アジア海域などで需要 のある、1,500~3,000TEU のサイズのコンテナ船の発注も 164 隻ほどあるが、このサイズ全体 における割合としては約1 割程度であり、老朽船の代替などが中心だと思われる。 3.コンテナ船大型化の歴史と背景 コンテナ貨物量の急激な増大

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コンテナ船の大型化を進めた要因とは何であったかについて触れたい。一つ目は、コンテナ貨 物輸送需要の急激な増大である。 コンテナ貨物は2000 年代の初頭から急速に輸送量が伸びている。中国の WTO 加盟によって 中国発のコンテナ貨物の量が急増した。これ以降、年率 10%以上の割合でコンテナ貨物輸送量 は成長していき、その需要に対応するためにそれまで主流であった4,000~5,000TEU サイズと 入れ替える形で、5,000~8,000TEU サイズへの大型化が進んだ。一方で世界各地の港湾ターミ ナルが急速な貨物量の増大に対応が出来ず、混雑が恒常化し、コンテナ船も滞船するようになっ て行った。船社はスケジュール維持に苦慮し、運航速度を上げるなどで対応したが、同時期に燃 料油価格が記録的に高騰し始めたこともあり、追加本船を投入することで増速によるコスト増 加を回避すべく、追加の新造船発注を進めることになる。ところが2008 年のリーマン・ショッ クを機に荷動きが急落、一転して船余りの状況となった船社は、サービスへの投入船数を更に増 やして低速運航に向かった。リーマン・ショック後にコンテナ貨物輸送量の伸びが一段落し、更 に2011 年半ばころから原油価格が再び高騰し始めた為、コストを削減の観点からより大型のコ ンテナ船を建造しようという流れにつながった。 燃料油の高騰 コンテナ船はC 重油を利用するが、2005 年には 1 トン当たり 150 ドル程度であったのが、リ ーマン・ショック直前にはこれが 700 ドルにも急騰した。これによって、コンテナ船の減速運 行が進むことになったが、減速運行によって定期航路では船数が増加することになった。その後、 リーマン・ショックを経て原油価格は一時暴落するが、その後は投機的な動きが出てきて C 重 油価格は1 トン当たり 750 ドルにまで上昇した。これにより、船会社はさらに大きなコンテナ 船を作ろうと言う意思が働き、新造船の大型化に結びついた。現在は、2005 年ころの状況に戻 ってきたが、原油価格の変動に翻弄されてきた船会社が、コンテナ船の大型化と減速運行という スタイルを変更するとは当面は考えにくい。 船社アライアンスの深化 原油価格の高騰を含めた複数の理由があって、コンテナ船の大型化を進めたという事情は既 に説明したとおりだが、コンテナ船を大型化するとコスト競争力は高まるが、そのぶん便数が減 る。荷主さんとしては毎日でも荷物を出したいので、船社もそれに対応するために競合他社との 提携により複数のサービス提供を目指した。これが船社アライアンスの原点であり、サービスの 他頻度化、寄港地の拡大、本船の大型化が可能となった。 1990 年 代 に ア ラ イ ア ン ス が 登 場 し た が 、 現 在 で は 、 ① Maersk+MSC 、 ② CMA-CGM+CSCL+UASC 、 ③ K-Line+COSCON+Yang Ming+Hanjin+Evergreen 、 ④ NYK+MOL+HPG+OOCL+APL+Hyundai、へと集約され、この 4 つのアライアンスで東西航路 の約9 割を超えるシェアを持っている。アライアンス同士の競合も激化しており、コスト競争力 の強化の観点から大型船化が更に進むこととなる。 パナマ運河の拡張が来年の夏に完成する。パナマ運河の拡張は輸送ルートの変化をもたらす ことになる。これまでパナマ運河は、5,000TEU サイズのコンテナ船、所謂 PANAMAX 型が通 過可能な最大船型であるが、今度の拡張によって13,000TEU サイズのコンテナ船(これを

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NEO-PANAMAX と呼ぶ)が通過可能となる。現在、中国・アジアから北米東岸へは、パナマ運河を 通過するかどうかで2 つのルートが有る。パナマ運河を通過するルートでは PANAMAX しか通 航できないが、通過しなければNEO-PANAMAX サイズのコンテナ船を使うことが出来る為、 大型船化が進む。これら大型船は14,000TEU や 20,000TEU などの超大型船の欧州航路への就 航により押し出されてくる8,000TEU~13,000TEU 型で、これによって余剰となる PANAMAX 型は欧州域内航路やアジア海域に回り、これによってアジア近海航路などでもコンテナ船の大 型化が進むことになる。 4.考察 では、コンテナ船はどれだけ巨大化が進むのだろうか。これまで説明したように、コンテナ貨 物需要の伸びや燃料費の変動、アライアンスの深化によるコスト削減、港湾施設の整備、などと いった様々な要因によって、コンテナ船は大型化してきた。これについては、様々な場面で質問 を受けるが、理論的にはコンテナ船の大型化は輸送コストの低下に繋がることから、この流れは 止まらないのではないか。仮に、技術的に25,000TEU とか 30,000TEU といった超超大型船が 導入されたとしたら、現在の20,000TEU という超大型船はどこかの航路に押し出されることに なる。それに続いて、15,000TEU といったコンテナ船も別の航路に押し出されていく。これら の大型化には現時点では制限も多く、技術面の進歩やインフラ面での更なる整備が前提となる が、大型化が船会社と顧客の両方にメリットを生むということであれば大型化が更に進む可能 性は高いと考える。いずれにせよ、同我々は、コンテナ貨物をいかにスムーズに運んでいくかを 追求し、顧客の利便性の改善を念頭に置いて、事業を進める立場であることに変わりない。 航空業界でもエアバスA380 型機という超大型機が登場したが、それによって空港でも新たな インフラ面での負担が生じ、利便性を考慮した中型機による省エネ開発に重点が移って来てい ると聞く。巨艦主義の様相を呈している現在のコンテナ船大型化競争についても、どれだけ意味 があるか見極める時期が来ているのではないかという思いがある。

【質疑応答】

Q:一点目は、コンテナ船のオーバーサプライの問題に関する認識は如何か?発注残などが存 在している状態の中で、なぜ、大型化を進めていくのかという問題をお聞きしたい。二点目は、 コンテナ船の大型化に伴って、それまで主力だったサイズのコンテナ船が別航路へと置き換 わっていっているが、このまま大型化の流れが進 むとなると、現在主力である 8,000~ 9,000TEU クラスのコンテナ船はどうなってしまうのかという問題について意見をお聞かせ 願いたい。 A:確かに、ご指摘頂いたとおり、世界の荷物量は成長しているものの、伸びは鈍化してきて いる。そしてその一方で、我々船会社が従来通りにコンテナ船を発注していることもご指摘の とおり。世界経済は一時的な停滞状態であるが、その一方で、順調に世界の人口は増えている。 コンテナ船が運ぶ貨物の大半は一般消費財であり、その意味では徐々にオーバーサプライの 問題というものは、収まっていくと考えている。船会社が大型化に向かう背景にはプレゼンで ご説明した通り色々な要素があるが、コスト競争力がある大型船を運航できる船社でなけれ ば生き残れないという危機感が大型船による自社の船体整備を行なう心理的な要因になって

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いる可能性がある。邦船3社とは異なり、世界の主要船社におけるコンテナ船の事業費率が極 めて高いこともある。現在主力の8,000~9,000TEU クラスがどうなるかだが、欧米、アジア のみならず南米やアフリカ、中東などでも港湾インフラの整備が進んでいることもあって、従 来、8,000TEU を活用できなかった航路にも投入ができる様になってきているので、今後は、 8,000TEU サイズのコンテナ船が、パナマックス・サイズ(5,000TEU)に代わる主力船にな るだろう。 Q:パナマ運河の価値は、拡張によってどうなっていくのであろうか? A:パナマ運河の拡張によって、通航できるコンテナ船が大型化するのみならず、新たにバル ク船や北米シェールガスを輸送するタンカーやLNG 船などにも利用が広まるだろう。一方で 混雑などが起きないかという危惧もある。コンテナ船に関しては、例えば中国から北米東岸の 輸送では航海距離やコストの面でスエズ経由とパナマ経由で大きな差は無いので、船会社とし てはトータルコストの差を見ながら、スエズ運河回りかパナマ運河回りかを選択できるように なる。 Q:最近話題になってきている北極海航路とコンテナ船の大型化の関係についてお聞かせ願い たい。また、今後は「地産地消」が進むことで、コンテナ貨物の量自体が減少していくのでは ないだろうか? A:コンテナ船は定期航路が主体であり、予め寄港地が決まっていて、そこでコンテナの積み 下ろしをしながら移動していく。したがって、北極海の氷の状態を見ながら航路を変えなけれ ばならない北極海航路が、今後、コンテナ船輸送のメインになる可能性は低いと思う。氷の問 題だけでなく、北極海航路では積み下ろしの出来る寄港地がロシアなど限られた場所になるが、 北極海沿岸にどれだけコンテナ貨物のマーケットが存在しているか疑問であり、コンテナ船事 業の特性を考えると、北アジア~東南アジア~地中海~欧州というルートの有利性は変わらな いと考える。北海油田関連貨物を輸送するタンカーやLNG 船などには需要があるであろうが。 二点目の「地産地消」が進んでいくという問題であるが、確かに、中国での生産コストの上昇 などの影響が出てくるだろう。中国に代わって東欧やメキシコ、中南米などへ生産拠点が一部 移管されるという可能性はあると思う。しかし、結論から言えば、まだアジア地域が生産の中 心であり、また圧倒的な人口を持つ巨大な輸入市場であるのも事実であり、アジアとそれ以外 の地域を結ぶコンテナ船の価値は低下しないと考えている。 Q:外航船の大型化が進んでいくということは理解できたが、内航船や陸運への影響はどうな るのであろうか? A:外航船の大型化が進んでいくであろうことはご説明させて頂いたとおりであるが、日本の 内航船や陸運に与える影響が大きくないと考える。日本の国内港湾では主要港であっても 8,000TEU 型や 10,000TEU 型ですら寄港できないターミナルも多いという現実がある。日本 の輸出貨物は円安状況においても伸びが無いが、一方アジアで第二位の輸入大国である。冷凍・ 冷蔵貨物も含めて輸入先は世界各地に広がっており、市場としての日本の価値は高いが、必ず しも大型コンテナ船の母船が直接寄航する必要は無い。航空業界と同様に、海運業界でも「ハ

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ブ&スポーク」型が進んできており、例えば、瀬戸内海を小型のコンテナ船が回って荷物を集 め、それを韓国や台湾で大型コンテナ母船に積み替えるなど、中型外航コンテナ船での日本直 航サービスなどは邦船として維持していくので、国内のハブ港と国内地方港の間の内航や陸運 を使った輸送には大きな影響は出ないであろう。

参照

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