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Academic year: 2021

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全文

(1)

猫白血病ウイルス感染症

Feline leukemia virus infection

・猫白血病ウイルスを原因とする。 ・リンパ腫と白血病に加えて,多様な疾患に関与 ・持続感染状態になった猫が発症。多くは予後不良

宿主:

病原:

猫白血病ウイルス

(Retroviridae, Gammaretrovirus)

疫学

分布:全世界。日本でも発生

感染様式:主に水平感染,垂直感染も起こる。

(2)

臨床 潜伏期:潜伏期は不定。 感染後,免疫系により排除される場合,ウイルス 血症が続く場合(持続感染),および潜伏感染する 場合がある。 症状:主に持続感染猫に腫瘍性疾患(リンパ腫, 急性白血病など)、リンパ造血系の退行性疾患 (再生不良性貧血など)免疫介在性疾患(糸球体 腎炎,免疫介在性溶血性貧血など)が発症する。 予後:発症した疾患により異なる。一般に予後不良。 予防:室内飼育,抗原陽性猫の隔離。 不活化ワクチンおよびリコンビナントサブユニッ トワクチンの接種(完全に防御できるものではない)。 治療:各疾患に応じた対症療法

(3)

病理診断 リンパ腫:発生部位にリンパ系腫瘍細胞からなる 腫瘤形成。腫瘍細胞の全身臓器への浸潤。 急性白血病:骨髄でのリンパ造血系腫瘍細胞の増生, 正常な造血細胞の減少。脾腫,肝腫。 病原診断: 血漿,血球,リンパ造血系組織からのウイルス分離。 PCR。 血清診断: 持続感染を証明するための血中ウイルス抗原検出 (免疫クロマトグラフィー法,ELISA,蛍光抗体法) 抗体検出の臨床的意義は低い。

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猫免疫不全ウイルス感染症

Feline immunodeficiency virus infection

・長い無症状期を経て発症 ・発症した場合は予後不良 宿主: 病原:猫免疫不全ウイルス(Retroviridae,Lentivirus) 疫学 分布:世界中。日本での感染猫の比率は比較的高い。 感染様式:血液,唾液,精液中のウイルスが交尾や けんかの際の咬傷により伝播

(7)

臨床

急性期の後,数年から10年以上の無症状期を

経て発症する。

急性期:

発熱,リンパ節腫大

無症状期

:無症状(ウイルスは持続感染)

PGL期

:一部の猫では持続性全身性リンパ節症

ARC期

:歯肉炎,口内炎,上部気道炎などの

慢性疾患

AIDS期

:免疫不全に起因する各種日和見感染

または腫瘍,著しい体重減少

予後:

免疫不全を発症した猫は数カ月以内に死亡

(8)

病理診断:

リンパ節の濾胞過形成

→萎縮,

リンパ球の減少

病原診断:

PCRによるプロウイルスDNAの検出

血清診断:

ELISA,蛍光抗体法

ウエスタンブロットによる特異抗体の検出

(=ウイルス陽性)

予防:

感染猫の隔離と未感染猫の室内飼育。

米国で不活化ワクチンが開発され、国内

では2008年から販売されているが、感染

防御効果は約70%程度。

治療:

対症療法

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(11)

猫汎白血球減少症 feline panleukopenia

・急性経過の発熱,嘔吐,下痢, ・総白血球数の減少を主徴とする疾病 宿主:ほぼすべての猫科動物。一部のジャコウネコ科、 イタチ科、アライグマ科の動物 病原:猫汎白血球減少症ウイルス (Parvoviridae, Parvovirus) 疫学:世界に広く分布。日本でも発生 感染様式:糞便中ウイルスの直接感染ないしは汚染器 物を介した感染 予防:不活化または弱毒生ワクチンの接種。 治療:対症療法(輸液と抗生物質投与), G-CSFの投与,発生場所の消毒

(12)

臨床 潜伏期:4~6日 症状:白血球減少と下痢,発熱,嘔吐,脱水など。 妊娠猫の場合は死流産。 生後2週齢くらいまでの場合は小脳形成不全。 予後:対症療法なしでは予後不良 病理診断:小腸漿膜下や粘膜面の充・出血,腸間膜リ ンパ節の腫大と出血,胸腺萎縮。小腸粘膜,リン パ系組織,骨髄の変性壊死と核内封入体形成。 病原診断:ウイルス分離(猫由来培養細胞), ELISAによるウイルス抗原検出,PCR。 血清診断:ペア血清によるHI反応や中和テスト 回復期血清中のIgM抗体の証明

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猫伝染性腹膜炎および猫腸コロナウイルス

感染症(Feline infectious peritonitis virus

and feline enteric coronavirus infection

・免疫複合体介在性血管炎を特徴とする ・予後不良の慢性・進行性疾患 ・病原性の弱い猫腸コロナウイルスも存在し,猫伝染 性腹膜炎ウイルスとの鑑別が困難 宿主:猫とその他の猫科動物 病原:猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)および猫腸コロ ナウイルス(FECV)。それぞれ生物学的性状に より I 型と II 型に分けられる。 FIPVとFECVを血清学的に識別するのは困難。

(15)

疫学 分布:世界各地。日本でも発生。 感染様式:FIPVは糞尿,口腔および鼻腔分泌物に排泄, FECVは主に糞便中に排泄。経口および経鼻で感染 臨床 潜伏期:自然感染では不明 症状 FIPV:発熱,食欲不振,嘔吐,下痢などの初期症状 ・滲出型では腹・胸水の貯留, ・非滲出型では各種臓器に多発性化膿性肉芽腫形成 に伴う発熱,体重減少など FECV:軽微な腸炎もしくは無症状 予後:腹膜炎発症猫の予後は不良

(16)

病理診断 滲出型:線維素性腹膜炎 非滲出型:諸臓器と中枢神経系に灰白色結節 病原診断 Ⅱ 型のFIPVとFECVは培養細胞での分離が可能だ が,I 型ウイルスは非常に困難。 RT-PCRによる遺伝子検出。 血清診断 抗体検査ではFIPVとFECVの区別はできない。 陰性ならFIPが発症する可能性がの否定される。 予防:生ワクチンが米国で開発されている。 日本では使用されていない。 治療:FIP発症猫に有効な治療法はなし。

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猫の伝染性呼吸器疾患群

Feline infectious respiratory disease complex

・最も頻発する猫の伝染性疾病

・集団飼育・繁殖の場合に重要

・軽微な症状から肺炎まで多様な症状

宿主:猫および猫科の動物

病原:猫ヘルペスウイルス1 猫カリシウイルス

Bordetella bronchiseptica Chlamidophila felis

下記の2疾病に分けられている。

・猫カリシウイルス病 (Feline calicivirus infection)

(20)

猫カリシウイルス病

Feline calicivirus infection

・最も一般的に見られる猫のウイルス性呼吸器病。 ・発熱、鼻漏、くしゃみなどのカゼ症状を起こす。

宿主:猫および猫科の動物 病原:猫カリシウイルス

(Feline calicivirus: Vesivirus属, Caliciviridae)

疫学:

分布:日本を含む世界各国に分布。

感染様式:罹患猫の分泌物を介する経口経鼻感染。 キャリアー猫からのウイルス排泄。

(21)

臨床 潜伏期:数日 症状:発熱、元気消失、食欲減退、くしゃみ、 鼻汁漏出、流涙など。重症の場合は肺炎となる。 舌や口蓋に水疱や潰瘍が認められる。 病理診断:口腔内の潰瘍が本疾病の特徴。 上部気道の炎症、気管炎、肺炎。初期は肺胞上皮 細胞の壊死や滲出性肺炎で、再生期は間質性肺炎 となる。 病原診断:培養細胞を用いた病原体の分離。 血清診断:中和試験、蛍光抗体法。 予防・治療: ワクチン投与(3種混合ワクチンが市販されている)。 二次感染の防御などの対症療法。

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(25)

猫ウイルス性鼻気管炎

Feline viral rhinotracheitis

・猫ヘルペスウイルス1の感染による上部気道炎、結膜炎。 ・最も一般的に見られる猫の伝染性疾患。 宿主:猫および猫科の動物 病原:猫ヘルペスウイルス1 (Feline herpesvirus 1:

Varicellovirus属、Alphaherpesvirinae, Herpesviridae) 疫学: 分布:日本をはじめ世界各国に分布。 感染様式: ・発症猫またはキャリア-となった回復猫の分泌物 によるの経口・経鼻感染。 ・病原体は回復猫の三叉神経節に潜伏感染し、ストレ ス等により間欠的に排出される。

(26)

臨床症状:感染初期は元気消失、くしゃみ、目やにを伴う 結膜炎。その後、発咳、鼻汁漏出、発熱。流産、膣炎、 多発性皮膚炎、中枢神経症、歯肉口内炎などを起こ すこともある。 病理所見:上部気道と眼部に病理学的変化。 炎症部の粘膜上皮に壊死や核内封入体が認められる。 病原診断:口腔や結膜のぬぐい液からウイルス分離。 結膜塗抹標本中の特異抗原を蛍光抗体法で検出。 血清診断:中和試験、HI反応。 予防・治療: ワクチン投与(3種混合ワクチンが市販されている)。 抗生物質の投与による二次感染の防御。

(27)
(28)
(29)
(30)

猫フォ-ミ-ウイルス感染症

Feline foamy virus infection

宿主:

病原:猫フォ-ミ-ウイルス (Feline foamy virus,

Spumavirus属, Supumaretrovirinae, Retroviridae)

分布・疫学:日本をはじめ世界各地に広く分布。 血液中のウイルスが交尾や咬傷により伝播 臨床症状:悪性リンパ腫の猫から分離されているが 病原性は不明。進行性多発性関節炎との関連が 疑われているが、因果関係は不明。 病理所見:一般に病理学的変化は認められない。 診断:病原診断;多核巨細胞を形成する。 血清診断;間接蛍光抗体による診断が行われている。 予防・治療:行われてない。

(31)

レトロウイルス科 (Retroviridae)

・オルトレトロウイルス亜科(Orthoretrovirinae)

・アルファレトリウイルス属 鶏白血病ウイルス

・ベ-タレトロウイルス属 マウス乳癌ウイルス

・ガンマレトロウイルス属 猫白血病ウイルス

・デルタレトロウイルス属 牛白血病ウイルス

・イプシロンレトロウイルス属 魚に肉腫形成

・レンチウイルス属 馬伝染性貧血ウイルス

・スプ-マレトロウイルス亜科(Spumaretrovirinae)

・スプ-マウイルス属 (猫、牛で分離されている)

(注)この分類法は最近変わる可能性が高い

(32)
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猫のポックスウイルス病

Poxvirus infection in cat

・牛痘ウイルスと同一。 ・自然宿主は野生げっ歯類。 宿主:げっ歯類、猫および猫科動物、牛、人 病原:牛痘ウイルス (Cowpoxvirus, Orthopoxvirus属, Chordopoxvirinae, Poxviridae) 疫学: 分布:主にヨ-ロッパとアジアに見られる。 日本国内での発生例はない。 感染様式:野生げっ歯類との接触が第一の感染経路。 罹患猫との直接接触による経皮感染。経気道 または経口的にも感染が成立。猫から人に感 染する。更に牛に感染することもある。

(34)

臨床症状:頭部、頚部、前肢などに皮膚病変(結節、 丘疹)を形成する。 病理診断:病変組織の細胞質内に好酸性封入体が観察 される。 病原診断:電子顕微鏡により病変部に特徴のあるビリ オンを検出する。 予防・治療:ワクチンはない。細菌の二次感染を防げ れば自然治癒する。

(35)
(36)
(37)
(38)

2011年に発表されたダニ媒介性感染症。

重症熱性血小板減少症候群

Severe fever with thrombocytopenia syndrome: SFTS

病原:重症熱性血小板減少症候群ウイルス

Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome

(SFTS)virus: Phlebovirus属、Bunyaviridae) 宿主:犬、猫、人。中国では羊、山羊、牛での抗 体保有率が高いと報告されている。 野性動物の抗体調査では、アライグマ、タ ヌキ、シカ、アナグマ、ハクビシン、サル、 イノシシから抗体が検出されている。

(39)

分布・疫学 分布:中国、韓国、日本。 ・国内では、2013年1月に山口県でヒトのSFTS罹患が初めて 報告された。これまでに391人の患者が和歌山県以西のほと んどの県から報告されている(2018 年度も23府県から届出 がある)。 ・米国ではSFTSウイルスと近縁なHeatlandウイルスが、高熱、 血小板減少、肝障害を起こした患者から分離されている。 ・インドではSFTSウイルスに近縁なウイルス(Moloorウイル ス)がコウモリから分離されている。 ・日本で分離されるウイルス株の大部分は中国株と遺伝子の 塩基配列が大きく異なるが、類似した株も分離されている (渡り鳥により感染ダニが運ばれることが疑われている。) ・マダニの刺咬により伝播。SFTSウイルス保有動物の血液や 体液との接触でも感染する。 ・4月~8月に発生が多い。

(40)

臨床症状: ・猫は白血球や血小板の減少を伴う発熱、食欲消失、 黄疸、嘔吐、下痢を発症し、致死率が高いと思わ れる。(致死率57.7%という報告がある) ・犬は一般的に無症状(不顕性感染)。 ・ヒトの場合、ダニに咬まれてから発症まで5-14日。 発熱(38-41℃)、消化器症状(嘔気、嘔吐、腹 痛、下痢、下血)を主張とし、ときに、腹痛、筋 肉痛、神経症状、リンパ節腫脹、出血症状などを 伴う。致死率は10~30%程度。高齢になるほど死 亡率が高い傾向がある。

(41)

病理所見:血小板減少(10万/㎣未満)、白血球減少 (4000/㎣未満)、血清酵素(AST、ALT、LDH)の上昇 が認められる。リンパ節の腫大。 病原診断:血液、血清、咽頭拭い液、尿から病原体や 病原体遺伝子の検出。 血清診断: 血清から抗体の検出 予防・治療: マダニに咬まれない予防措置を講じる。 発症した患者には対症療法を行う。 有効な薬剤やワクチンはない。

参照

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