第7巻第1・琴(1955)
夜温処理に対する蚕草の開花結実反応の品種間差異
Ⅰ夜温の差に.対する二三の早晩生品種の感応度の差異檻つい七
植 木 邦 和
The varietaldifferenceof theresponse of f10Weringandfruitingin thebroad beanby
Changingthenight temperature.1∴Difference of the sensibility tothe night temperature in some early andlate varieties
Kunikazu、、UEK】(ReceivedMay28,.1955小 AcceptedasreceiYed”)
t 緒
豆類の生育並びに結実に対する夜塩の影響に.関してほ,大豆について盛永(】$ノ,古谷(5),河風聞㌧反田(21),竹 島(22)氏等の,菜豆粧ついて位・田(8〉,中山(15),疲辺(24)虎等の,叉,豆厳に関する生態的分贋:並びに分イヒに.らいて は,松本用),有賀√1),永糾4),笹村(18),岩見(p),福井(2)(4),押田(−6),篠原(20),痙々木(17ノ氏等の業績がある 装着ほ,栽培学並びに育檻学的見地から1952年以降,峯豆の種生態学的研究に従事し,蚕豆の夜濫処理に対する 感応度が,生育時期により異ることを,予報(2S)で指摘しておいた..本実験ほ,蚕豆の開花前後の夜湿の差が,早 晩生品種の開花,結実に及ぼす感応度について究明したものである..茨に.,実験結果の大要を,簡単に報告する次 第である. 東報を草するに当り,御教示を賜った恩師香川冬犬侍士,京大赤藤克己博士並びに実験遂行上終館野侃宜を与え られた本学々長黒上泰満博士,農場長野田愛三教授及び育畦学研死去桑田罪教授に対し,深甚の謝意を表する..叉 供試材料の入手に閲し,稜々配慮賜った香川鮮安部秀雄氏に厚く御礼申し上げると共に,調査に協力された簡略 富巣,佐々木隆士,伊藤芳一の三氏の労を多とする.正 実験材料及び方法
実験匿は,香川県農業試験場において採種した,静岡早生(早生槙),長英(ヰ生唾)及び肇戯長爽(晩生槌) を用いたい これらの品種ほ,開花期を具にするが,結実目数ほ,略同様である. 同年12月15日,生育均斉な個体を厳選し,各訊鹸区共,径].尺の磁製棒大鉢3偶に,ユ鉢2株宛定植した..餌,各 鉢には,璧素,燐酸及び加重各ユg宛を施用した廿 各試験区は,第ユ表に点せる如ぐである 弟].表 各試験区別夜温処理時期及び期間 而して,開花前夜混処理区(B)は,各品種の花芽発育期より,開花後夜温処理区(C)は,院花始期より,夜 間のみ電熱絨ミにて加温した温室の中に入れたものであり,標準区(A)とは,昼夜共自然状態に放置しておいたも のである. 夜溜処理期間中の温室内の最低気滞ほ,室外のそれに比し,開花前放び開花後共5′∼60C高い香川県立顔料大学学術報告
以上に.よる形態的渚特性の外,人工発芽床上に.おける■花粉の発芽並びに夜間の呼吸作用等を予備的に調査したu
而して,花粉の発芽試験は,笹岡rl上野脚−)両氏の結果に基き,寒天ユ・%,庶糖30%の人工発芽床を用い,罰OC
300c及び40。cに畳床8時間後に調査したものであり,又,夜間の呼吸盈は,H伽Ⅰrl氏等(7)の対応菓珠により・
十方の薬ほ,20。,300及び40。Cの暗室の中にユ5時間放置して後,各々の乾燥富及び糖分盈(BERでRAyD洪による)
を求め,前者と後者との乾物霊及び糖分盈の整を,乾物1g当の僻少盈に換算して示した・Ⅱ 実験結果及び考蕪
ar)開花に及ぼす夜温処理の影啓開花前即ち花芽発育期以後に夜温を高くした場合(B■)には,三晶唾共,開花始が標準区(A)より早くなり,
開花期間も長く,且1個体当の開花数も多い・しかし,堵加の割創よ,晶毯の早晩生により必ずしも同じではなく,
品種間に感応魔の差異が認められる・而してナ′感応度は,早,中生毯より晩生毯に向って順次に・より大きい・叉,
開花後即ら開花始期以後に夜温を高くした場合(C)には,三晶種私闘花期間が,標準区(A)より短くなり,
感応度は,早生種の静岡早生が最も大きく,次いで,中生程の長英,晩年唖の讃妓長爽の順になっているい又/開
花数に?いては,標準区匿比し,静岡早生は稗少く,長英ほ殆んど変りなく,讃岐長英ほ増加しており,品種間差
異が認められる.第2表は,それらの実験結果を示したものである 第2表 開花に対する夜混の影響の品種間差異 讃 肢 長爽 長 英 静 岡 早 生 A I B I C A I B I C A I B I C 4.1 ユフ 124.0 (120) 註)各試験区共6株平均 A:標準区,B:開花前処理区,C:開花後処理区 以上と同様な結果は,古谷(5),河原く1q),竹島(望2)氏等が大更に・おいて,叉,渡辺氏(2i)が菜豆において得ている が,いずれも品種間差異に関してほ,明確でない‖森実験の場合,夜間高温に遭遇すると,花芽の分化並びに花部 諸器官に影響を及ぼし,その結果,開花始の促進,群花那覇の延長,短縮並びに隊花数の増淑をまねくが,その影 響の樫姥は,品棍に.よって異るようである. b)結実に及ぼす夜偲処理の影響 開花前及び開花彼の夜間高湿が,各品種の萱熟,結非並びに子英霊に及ぼす影響を調査した結果ほ,第3表及び 第1図の如ぐである. 筑3表 結実に対する夜温の影響の品顧問差異\ヾ、、\握攣竺、 ■\\
静 岡 早 生 長 英 讃 肢 長 A I B I C A I B A I B56
C元那慧盃 ′‘\ 成 熟 期(月.日) 成熟促進日数(日) 結 実 日 数(H) 結実日数短縮率(%) 結 爽 数(ケ) (同 上 比 数) 結 宍 率(%) (同 上 比 数) 爽 節 位て節) 同 上 比 数)第7巻第ユ・号(エ955) 即ち,成熟期については,夜温処理区(B,C)は,三品種典,標準区よサ早く,叉,結実日数については,開 花前処理(B)の場合は延長され,開花後処理(C)の場合は,短縮されている.而して,その変化の割合は, 早,中生種より晩生種笹向って順次により大きく,開花に関する場合と同傾向の品種間差異が認められる一.経穴数 並びに総菜率に対する影響鑑ついてほ,開花並びに澄熱に関する場合と.多少趣を異に.している.即ち,開花前処理 (B)の場合ほ,標準区に此し,静岡早生は結爽数及び結爽率が共に高く,長爽ほ結英数は高いが,結爽率は殆ん ど変りなく,讃肢長和ま結爽数には変りないが,結爽率が著しく劣っている.十方,開花後処理(C)の場合は, 三晶毯≠も標準区に此し,結爽数,結英率共劣っているが,洪少の程度ほ,晩生砥棒大きい・着発節位について は,B区の静岡早生が,標準区陀比し,棺低い以外,いずれの晶畦も,開花前処理(B)並びに.開花後処理(C) 共,標準区より高く,その儀向は,晩生踵の讃妓長準及び中学碇の長苑 が大きい.粒富については,第ユ図にみるように・,開花前処理(B)の 場合ほ,標準区に此し,讃肢長爽が棺劣る場外,いずれも増加し,特に 静岡早生の感応度が大である.叉,開花後処理(C)の場合は,三晶瞳 共仁標準区より劣つている.しかし,淑少の割合は,晶槙の早晩生に・革 り必ずLも同じでなく,その感応度は,早,中生種より晩生種笹滴って 順次により大である. 玖上は,大豆及び菜豆における古谷(5),反田(紺,竹島√22),位田筍) ,渡辺(朗)氏等の結果と同様な傾向を示しているが,本実験の場合,夜 温処理により成熟期が促進され,その横断こ品種間差異が認められたこ とは,夜湿の差が,花部諸器官,爽及び手実の発育を助長し,その発育 の程度が品種に.より異るためと考えられる.叉,結実日数は,開花始期 の翌日より成熟期迄の日数で表したため,開花前処理に・よる延長ほ,開 花期間の延長の結果に,:文,開花後処理に.よる短縮は,開花期間の短縮 並びに宍及び子実の発育を助長させた結果に基くものであり,開花前及 び開花後共,その程齢よ,.晶槙に.より異るように.思われる.又,結天数 及び結爽率に関してほ,夜間高僧の影響が,品種笹より異り,開花前処 理をうけた静岡早生においては,花部各器官の発育並びに結界が助長さ 叢 喋 虔 爽 鮭)問昭 準 区 【===コ ・‥....: 幽 閉花彼処毯Ⅸ 鶉1・図 野鼠に対する夜温の影響の品 種間差異 れ,長爽に.おいてほ,彫響はあまりなく,誤肢長爽に.おいては,外部形態的に障害を蒙り,開花数の増加に拘ら ず,結英数が少く1従ってニ,結爽率も低下したのであろう.又,開花後処理をうけた晩生毯程,その影響の程度が 大なるように考えられる.暫宍節位に関しても,開花前処理の静岡早生を除き責各品種共,夜間の高温により,下 段節位の花器が発育障害をうけ,結実に到らず,落花するため,各処理区共,標準区に.比し,蕾爽節位が高くなつ てをり,その影響ほ,早晩生品穣に.より具るものと考えられる.侍,温度に対する蚕豆花粉の発芽発育状況は,第 4表に示す如く,:≡品種共,温度の上昇に伴い,花粉の発芽率は劣り,叉,花粉管長も短くなっている.即ち,夜 混処理の場合は,蚕豆花粉の発芽及び発育の通夜泥より高温であるため,花粉に不良の影沓を及ぼし,従って,結 爽率も低下するようである.粒重に関して−は,開花前処理の場合,讃肢長爽を除いて粒重の増加しているのは,太 第4表 温度に対する蚕豆花粉の発芽発育状況 註)花粉の温度処理終了と同時にCottonblueにて固定染色して換鏡,名辞鹸区共発芽検定 には約3CO粒,花粉管長測定には5C粗使用,()内の数字は比数.
香川県立選科大学学術報告 実験の程度の夜間高掛ま.,‘爽及び子実の発育に対し,良好・な影響庖もたらす結果と考えられ,これと周様な結果 を,予報(23)においても得ている‖叉,開花後処理の場合,いずれの品積も粒塞が減少するのは,夜混が結実の適
偲よわ高く,同化養分の等敵将費等と関係があるように思われる・・登熱期における夜湿の上昇に伴う,呼吸畳
を,菓の乾物重及び髄分の減少盈で示した結果は1 第2図の如くである 郎ち;いずれの品麺も・,恥wIlrr氏等(7)の結果と同 感1夜湿の上昇に伴い,呼吸に.よづて失われる菓の 乾物歪及び糖分畠ほ,増加してをり,夜間の嵩混 は,呼吸に.よる養分の消耗と,極めて密疲な関係が あるようである. C.)、爽の発育に及ぼす夜捏処理の影響 各晶穂の爽の発育状況は,第3区【に:示せる如く,品 種に.より∴処理区と標準区とに.おいてほ,著しい差 異が認められる. 即ち,夜湿処理した静岡卑生は,爽の発育初斯こ ほ,爽の長さ,幅及び厚さ共に,標準区に比し大で r.t−.L!手r..−.⋮﹂ 朗 50 40 30 20 10 乾物芸当潰少い山椚/滋〆
陀物〓凡当減少日頃冊 iO 40 ミ0 40 t品 岐(二亡) 20 一風 噂l() 噴 分 絃 物 慮 (昔)○−⊃静岡卑生 ローコ 彪 ̄箕 仝仝讃岐長爽 鴇2図 夜温と乾物蛋及び糖分の消長 あったが,中期に到ると爽の発育が劣 り,兜ず,爽の長さが標準区より煩く なり,次いで,莱の瞞及び厚さも,標 準区との差が短縮せれる..長爽は,爽 の長さ,瞞及び厚さ共,初期に.は標準 区と等しいが,爽の発育に伴い,標準 区との差がひらき,誤肢長爽ほ,初期 及び中期には,爽の長さ,幅及び厚さ いずれも標準区㌢こ比し大であったが, 後期に到り,標準区より発育が劣って いる.以上の如く,夜湿処理に対する 爽の発育反応の時期及び程度が,各品 種笹より異つでをり,これと相似た結 果を,福井氏(3)も,大豆の萱熱に対 する炉訂処理においてみとめているこ←一十ニモ‥−‥
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長 (%1 予ヾ 社))O」−−」¢ 標草笛 ◎− ̄噌1飢㍊㍑県 第3図∴爽の発育に対する夜湿の影響の品種間差異乱夜温の差が,花芽の分化,花粉の発芽並びに呼吸及び転流作脚こ対する影響の品種間き異については,今後
更に検討を要する Ⅲ 摘 要1い蚕豆の穐生態的研究の]周として,結那数略等しく,開花期を異にする晶隠,静岡早生(早生種),長爽(
中亜種)及び誤肢長英(晩生積)を剛、,夜瀾の差に対する開花結実反応の品種間差異紺餃換討した
2,開花に対する夜温の影熟も開花始の時瓢開花期間日数放び綿花数等に・あらわれ,その程度は,品柿間に差
異がみとめられる3り 結卿こ対する夜蘭の影響ほ,成熟期,結実日数経穴数,結爽率,煎爽節位,粒露及び爽の発育等忙あらわ
れ,開花前処理(花芽発育期以後)の切創も早生種カミ,院花後処理傭花麒似後)の場合は,晩生種が,感
応皮がより大である (本報告の要管は1954年1コ一月1日九州大学農学部における日本育柾学会鞄7匝瀦償金に於いて発衆した0)鵠7巻第ユ尊てユ955) Ⅴ 引 用 文 献 (1)有賀政典:農業及園芸,23,6ユ.フ−620・、(1948) (2ノ 福井重郎,荒井正雄:育種学雑誌,1,2フ・−39 (195.1) も3)∴,給水 寿:育種学雑誌,1,86・−90 (1951) (4)−−+,大野 元:関粛東山農試研究報告,(3), 49−フ3(土952) (5)古谷義人:農業及園芸,鬼2弘一252′(ユ950) (6)林 庶:農業及園芸,25,畠89−・991(ユ950) (7)HEW】rr,SP,,CuR王1S,OJF”:Aめ3Y。J βd..,35,746−フ55(ユ948) (8)位田藤久太郎:青砥と農芸,3,102・−103(エ950) (9)岩見債明:園芸学会雑誌,柑,68・−75(195C) ㈹ 河県東治:日本作物学会記事,れ31ト318 (コ.952■) ㈹ 正林和英:園芸学会雑誌,れ37・⊥40(ユ952) 8勿 絵素友記:育種研究,T,ユ44−ユ49(ユ942) 吻∵盛永顔太郎,永松土巳=麒業及園芸,由,173− 1フ5(.1948) (粗 永田忠男:日永作物学会紀事,18,131−134 (1芦)49) 胸 中山治彦:日東作物学会亀司も 20,59−62 (1S52) 個 押田幹太:昭和26年庶文部省科学研究費による各 個研究報告集録,4一−6(].952) ∽ 佐々木正三郎,浜田奥拾,渡辺轡:文部省科学試 験融究報告,吼39・−43(エ954二) 個 笹村静夫‥農業及園芸,由,595・−596(1950一) 臓㌧笹岡痕太郎:園芸之研兜,33(193フ) ¢功 篠原拾富他:日本育種学会第2回講演会講演要旨 (1952) ¢カ 反田某障:日本作物学会紀審,20,32エ−322 (1952) 鋤 竹島瀾ニ:白水作物学会記事,21,1ユ.9−ユ20 (ユ952) ¢笥 植木邦和:香川最大学術報告,5,243−246 (1954) 細 波辺 奔:園芸学会雑誌,22,1do−106(ユ953) RるS u mる
l.,Asapartofthe ecologic左isthdiesb血b土Oadbean,aStudy、WaSmadeonthe varietaldifference
of the response of
2.Materials were七he varieties of different flowering per−iods,eaCh having about the same length of fruiting period:namely Sizuokawase(early variety),Nagasaya(hiddle variety)and Sanukinagasaya(late variety)
3..The beginning date of flowering,periods and the numbers of flower$ bloomed were changed due to the night temperature,and the modes of the changes wer・e different according to the
va工ieties
4”The rna七uring period,the duratibn of fruitingperiod,the number$Of pod$,the percentage of podsettingandthe orderof nodewherethらfirstpodsets,the weight of seed$andthegrowth