はじめに
東日本大震災の発生からまもなく 5 年。政府は、震災直後の 2011 年度からの 5 年間を「集中復 興期間」として、約 26 兆円の予算を計上した。この間、企業に対しては被災した社屋や施設の復 旧・整備や二重ローン対策、資金繰り支援などのほか、官民連携による販路開拓や商品開発支援 など、復興に向けた取り組みが進められた。 しかし一方で、未曾有の災害が企業にもたらした影響は、物流の混乱や取引先の被災による販 路の喪失、原発事故による風評被害など全国各地に及び、今なお東日本大震災の影響を受けた倒 産が散発している。 こうしたなか、帝国データバンクでは東日本大震災により被害を受けたことが倒産要因である と判明した企業(負債 1000 万円以上、個人事業主含む)を「東日本大震災関連倒産」と定義し、 震災発生直後の 2011 年 3 月から 2016 年 2 月末まで、5 年間の倒産を集計・分析した。調査結果(要旨)
1. 東日本大震災発生から 5 年間で、「東日本大震災関連倒産」は累計 1898 件。「5 年目」となる 2015 年 3 月から 2016 年 2 月までの倒産は 167 件判明し、「1 年目」(650 件)の約 4 分の 1 ま で減少した 2. 「東日本大震災関連倒産」のうち、福島第一原 発事故関連の影響による倒産は、5 年間の累計で 210 件判明した。その割合は 5 年目において 18.0%まで高まり、事故後の影響が長期化して いる状況がうかがえる 3. 業種別件数を見ると、5 年間累計のトップは「サ ービス業」の 417 件。うち、「ホテル・旅館」(116 件)が約 4 分の 1 を占める 4. 社屋の倒壊や津波による浸水被害などの「直接 的被害」を受けた倒産は 5 年間累計で 180 件と、 全体の 1 割未満にとどまった一方、「間接的被 害」を受けた倒産は 1718 件にのぼった特別企画:「東日本大震災関連倒産」(発生後 5 年間累計)の動向調査
震災関連倒産は、5 年間で 1898 件判明
~ うち原発関連倒産は 210 件、原発事故の影響長期化 ~
※阪神大震災関連倒産は発生後3年間で集計終了 震災発生後の倒産件数推移 354 238 167 650 489 58 142 194 11.7 7.2 11.3 15.1 18.0 0 100 200 300 400 500 600 700 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 (件) 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20(%) 東日本大震災関連 阪神大震災関連 原発関連の構成比1.件数・負債総額推移
2011 年 3 月から 2016 年 2 月までの 5 年間で、「東日本大震災関連倒産」は 1898 件判明し、負債 総額は 1 兆 6366 億 4900 万円となった。 震災発生からの経過年数別に見ると、2011 年 3 月から 2012 年 2 月までの「1 年目」に 650 件、 「2 年目」に 489 件、「3 年目」に 354 件、「4 年目」に 238 件と、震災の影響が徐々に薄れるなか、 「5 年目」は 167 件と、「1 年目」の約 4 分の 1 にまで減少した。 また、「東日本大震災関連倒産」のうち、福島第一原発事故の影響による倒産は、5 年間の累計 で 210 件判明した。「東日本大震災関連倒産」に占める割合を見ると、1 年目の 7.2%から、5 年 目には 18.0%にまで高まっており、事故後の風評被害や原発稼働停止などの影響が根深く残って いる状況がうかがえる。 1995 年の阪神・淡路大震災の影響を受けて倒産した「阪神大震災関連倒産」と比べると、比較 可能な発生後 3 年間で見ても、「東日本大震災関連倒産」は「阪神大震災関連倒産」の約 3.8 倍判 明。また、「東日本大震災関連倒産」の 5 年目の件数(167 件)が、「阪神大震災関連倒産」の 2 年目の件数(142 件)を上回っていることなどからも、東日本大震災の影響の大きさがわかる。 参考:阪神大震災関連倒産 (上段:件数/下段:負債総額[百万円]) 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 計 0 22 29 32 19 21 10 17 15 9 10 10 194 0 13,083 6,560 8,437 3,673 9,753 3,688 2,264 4,318 4,620 1,865 1,813 60,074 10 7 9 16 17 9 11 18 13 6 11 15 142 1,491 2,788 3,225 2,360 5,934 4,170 3,113 3,396 3,162 780 1,098 2,430 33,947 6 10 7 3 4 8 4 5 8 1 0 2 58 2,680 5,975 3,940 265 848 1,157 430 1,094 2,020 70 0 130 18,609 394 112,630 3年間 累計 2年目 3年目 1年目 ※阪神大震災関連倒産は発生後3年間で集計終了 震災発生から5年間の倒産件数推移 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 当月 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 42 44 46 48 50 52 54 56 58 60 (カ月目) (件) 東日本大震災関連 阪神大震災関連 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 東日本大震災関連倒産 (上段:件数/下段:負債総額[百万円]) 原発関連 構成比(%) 14 57 80 61 50 72 41 48 55 46 65 61 650 47 7.2 17,951 22,015 34,665 24,596 31,957 480,051 14,779 16,191 42,158 46,549 147,365 18,834 897,111 489,191 54.5 63 51 57 39 38 36 44 51 34 17 29 30 489 57 11.7 172,915 16,811 27,429 22,271 30,977 18,190 35,290 24,763 34,012 3,710 9,064 22,899 418,331 63,077 15.1 35 33 41 31 30 26 36 28 24 21 24 25 354 40 11.3 9,432 25,124 11,625 8,705 5,001 12,098 25,434 7,914 19,074 5,367 12,263 5,652 147,689 9,768 6.6 24 19 20 21 22 16 23 16 26 15 14 22 238 36 15.1 5,614 7,734 3,994 15,031 3,643 15,927 5,556 11,515 10,981 7,026 7,620 6,426 101,067 11,519 11.4 23 14 16 12 17 12 22 15 12 9 7 8 167 30 18.0 17,692 8,289 10,342 5,449 8,343 3,660 3,474 4,137 1,612 4,342 654 4,457 72,451 16,223 22.4 1,898 210 11.1 1,636,649 589,778 36.0 2年目 1年目 4年目 3年目 5年間 累計 5年目 2月 1月 12月 11月 10月 9月 8月 7月 6月 5月 4月 3月 計2.業種別
業種別件数を見ると、5 年間累計のトップは「サービス業」(417 件)となった。以下、「卸売業」 の 384 件、「製造業」の 369 件と続く。 経過年数ごとの推移を見ると、「建設業」は 1 年目に 120 件を数えたが、震災復興需要などから、 5 年目には 22 件と約 6 分の 1 にまで縮小。一方、震災後の消費自粛ムードや風評被害が長期化し、 落ち込んだ業績が戻らないなどの理由から、「小売業」では減少幅が他業種よりも小さい。 5 年間累計の業種細分類別のトップは 「ホテル・旅館」(116 件)となった。津 波による宿泊施設の倒壊のほか、観光客 の減少にともなう客室稼働率の低下な どを受け、借入金の返済猶予など資金繰 り支援を受けつつも、抜本的な収益環境 の改善には至らず倒産に陥るケースが 多い。 以下、荷動きや取引先の減少などに見 舞われた「貨物自動車運送」(49 件)、 資材調達難や住宅建築需要の減退など の影響を受けた「木造建築工事」(48 件) が続いた。 業種細分類別上位には、食品や衣料品、 レジャー関連など、業績が個人消費の動 向に大きく左右される業種が目立った。 業種細分類別上位 116 49 48 35 31 28 27 27 26 23 22 19 18 17 17 16 16 16 15 15 15 0 20 40 60 80 100 120 ホテル・旅館 貨物自動車運送 木造建築工事 土木工事 内装工事 印刷業 生鮮魚介卸 受託開発ソフト 建築工事 水産食料品製造 広告制作 婦人・子供服卸 広告代理 管工事 労働者派遣 婦人・子供服販売 中古自動車販売 ゴルフ場経営 食料・飲料卸 電気機械卸 旅行業 (件) 業種別件数 (件) 1年目比 (%) 建設業 120 69 40 30 22 ▲ 81.7 281 14.8 製造業 125 119 57 36 32 ▲ 74.4 369 19.4 卸売業 135 94 73 50 32 ▲ 76.3 384 20.2 小売業 89 64 53 40 27 ▲ 69.7 273 14.4 運輸・通信業 28 25 35 18 11 ▲ 60.7 117 6.2 サービス業 137 106 83 55 36 ▲ 73.7 417 22.0 不動産業 7 6 8 5 3 ▲ 57.1 29 1.5 その他 9 6 5 4 4 ▲ 55.6 28 1.5 計 650 489 354 238 167 ▲ 74.3 1,898 100.0 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 5年間累計 構成比(%)3.都道府県別
都道府県別件数を見ると、5 年間累計で「東京都」が 446 件と最も多かった。以下、「宮城県」 の 170 件、「茨城県」の 108 件と続き、島根県を除く 46 都道府県で「東日本大震災関連倒産」が 判明した。経過年数ごとの推移を見ると、4 年目以降は西日本を中心に 1 件も判明しなかった県が 散見されるなど、年数の経過とともに震災の影響は薄まってきている。4.被害分類別
被害分類別件数を見ると、社屋の倒壊や津波による浸水被害などの「直接的被害」を受けた倒 産は 180 件と、全体の 1 割未満にとどまった。一方、「間接的被害」を受けた倒産は 1718 件判明 した。「間接的被害」の内訳を見ると、「消費マインドの低下」が 1080 件と過半数を占め、次いで、 物流網の混乱による調達難などの「流通の混乱」が 123 件、工期や納期の延期などによる「生産 計画の変更・頓挫」が 115 件となった。 経過年数ごとの推移を見ると、「直接的被害」による倒産は 5 年目でも 25 件判明し、4 年目の件 数(20 件)を上回った。直接的被害を受けた企業に対する爪あとが大きいことがうかがえる。 都道府県別件数 (件) (件) 1年目比 (%) 1年目比 (%) 44 28 14 6 3 ▲ 93.2 95 5.0 滋賀県 1 3 0 0 0 - 4 0.2 青森県 10 6 4 4 1 ▲ 90.0 25 1.3 京都府 2 2 2 2 1 ▲ 50.0 9 0.5 岩手県 16 6 4 8 3 ▲ 81.3 37 1.9 大阪府 26 7 3 2 1 ▲ 96.2 39 2.1 宮城県 28 47 46 25 24 ▲ 14.3 170 9.0 兵庫県 13 4 4 0 1 ▲ 92.3 22 1.2 秋田県 6 9 10 5 1 ▲ 83.3 31 1.6 奈良県 7 1 2 3 1 ▲ 85.7 14 0.7 山形県 11 4 16 7 3 ▲ 72.7 41 2.2 和歌山県 2 0 2 0 0 - 4 0.2 福島県 30 15 4 6 5 ▲ 83.3 60 3.2 計 51 17 13 7 4 ▲ 92.2 92 4.8 計 101 87 84 55 37 ▲ 63.4 364 19.2 鳥取県 1 0 0 0 0 - 1 0.1 茨城県 11 25 33 25 14 27.3 108 5.7 島根県 0 0 0 0 0 - 0 0.0 栃木県 21 17 9 15 19 ▲ 9.5 81 4.3 岡山県 2 3 1 0 1 ▲ 50.0 7 0.4 群馬県 14 6 5 3 3 ▲ 78.6 31 1.6 広島県 6 1 3 1 0 - 11 0.6 埼玉県 37 21 10 11 6 ▲ 83.8 85 4.5 山口県 0 0 1 0 1 - 2 0.1 千葉県 14 19 19 4 7 ▲ 50.0 63 3.3 計 9 4 5 1 2 ▲ 77.8 21 1.1 東京都 157 139 69 45 36 ▲ 77.1 446 23.5 徳島県 3 2 1 1 1 ▲ 66.7 8 0.4 神奈川県 25 35 12 9 6 ▲ 76.0 87 4.6 香川県 1 1 0 1 0 - 3 0.2 計 279 262 157 112 91 ▲ 67.4 901 47.5 愛媛県 6 1 1 1 1 ▲ 83.3 10 0.5 新潟県 20 5 8 2 2 ▲ 90.0 37 1.9 高知県 1 0 0 0 1 0.0 2 0.1 富山県 2 2 3 2 2 0.0 11 0.6 計 11 4 2 3 3 ▲ 72.7 23 1.2 石川県 11 4 1 0 1 ▲ 90.9 17 0.9 福岡県 31 13 10 8 5 ▲ 83.9 67 3.5 福井県 0 7 1 1 0 - 9 0.5 佐賀県 4 2 4 0 1 ▲ 75.0 11 0.6 計 33 18 13 5 5 ▲ 84.8 74 3.9 長崎県 1 2 3 2 0 - 8 0.4 山梨県 6 7 1 1 2 ▲ 66.7 17 0.9 熊本県 5 5 2 0 1 ▲ 80.0 13 0.7 長野県 12 4 2 0 0 - 18 0.9 大分県 8 3 1 0 0 - 12 0.6 岐阜県 2 1 1 0 0 - 4 0.2 宮崎県 1 1 0 1 1 0.0 4 0.2 静岡県 19 21 26 26 9 ▲ 52.6 101 5.3 鹿児島県 1 0 0 0 0 - 1 0.1 愛知県 29 7 14 9 3 ▲ 89.7 62 3.3 沖縄県 2 1 1 0 0 - 4 0.2 三重県 1 2 1 2 0 - 6 0.3 計 53 27 21 11 8 ▲ 84.9 120 6.3 計 69 42 45 38 14 ▲ 79.7 208 11.0 650 489 354 238 167 ▲ 74.3 1,898 100.0 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 5年間累計 構成比(%) 1年目 2年目 5年目 近畿 構成比 (%) 5年間 累計 4年目 3年目 北海道 全国 中部 北陸 関東 東北 九州 四国 中国 被害分類別件数 (件) 1年目比 (%) 直接的被害 55 45 35 20 25 ▲ 54.5 180 9.5 間接的被害 595 444 319 218 142 ▲ 76.1 1,718 90.5 消費マインドの低下 304 273 238 157 108 ▲ 64.5 1,080 56.9 流通の混乱 68 35 10 4 6 ▲ 91.2 123 6.5 生産計画の変更・頓挫 44 37 14 11 9 ▲ 79.5 115 6.1 得意先被災 44 16 12 17 7 ▲ 84.1 96 5.1 連鎖倒産 51 28 3 2 1 ▲ 98.0 85 4.5 市場価格の混乱 12 7 13 4 6 ▲ 50.0 42 2.2 仕入先被災 10 9 6 5 0 - 30 1.6 公共工事の減少 12 9 2 0 0 - 23 1.2 その他 50 30 21 18 5 ▲ 90.0 124 6.5 650 489 354 238 167 ▲ 74.3 1,898 100.0 構成比 (%) 5年間 累計 計 5年目 4年目 3年目 2年目 1年目【 内容に関する問い合わせ先 】 (株)帝国データバンク 顧客サービス統括部 情報企画課 加藤 TEL 03-5775-3073 FAX 03-5775-3169