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繊維製品のデメリット表示に関する一考察-香川大学学術情報リポジトリ

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繊維製品のデメリット表示に関する一考察

川本 利明・馬淵キノエ

開 義雄・竹下 健二

Ⅰ.ほじめに ⅠⅠ.消費者苦情の現状 ⅠⅠⅠ.消費者の緻椎葉材に関する知識 ⅠⅤ.消費生活と表示 Ⅴ.繊維製晶の表示に関する消費者意識 ⅤⅠ.デメリγト表示 ⅥⅠ.繊維製晶に関するデメリット表示の現状 Ⅴ札 織維製品のデメリット表示に関する消費者意識と購買行動 ⅠⅩ.ニット商品のどリングに関する消費着意識 Ⅹ.考察 Ⅰ 近年,消費者保護の観点から品質表示が整備されてきたにもかかわらず,消 費老苦情は−・向に減る傾向がみられない。この原因の一つほ消費老ニーズに あった表示,すなわち消費者が最も知りたい情報であるデメリット表示が適切 に行われていないためであると考えられる。そのような表示を行うためにほ消 費者と事業者の表示に対する意識を詳細に検討することが必要である。そこで, 著者らは,先に,「繊維製品のデメリッt・表示に関する消費者意識と購買行動」1) および「ニット商品のビリングに関する消費者意識」2)について報告した。その 後,「アパレルメ・−カーにおけるデメリット表示の実施状況」について調査を 1)烏淵ほか「消費者苦情を基張とする新しい品質表示の体系的研究(第1報)一級維製品 のデメリット表示に関する消費者意識と購買行動一」『商品研究』34,3・4,21−29ペ・− ジ,1983 2)馬淵はか「消費者苦情を基礎とする新しい品質表示の体系的研究(第2報)−ニット商 品のどリングに関する消費者意識−」『商品研究』36,3・4,21−31ページ,1984

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香川大学経済学部 研究年報 25 J郷 −2− 行った。 以上の結果をふまえ,本論文ではデメリット表示を実施するための基本的条 件を明らかにするとともに,そ・の有効性,実施上の問題点を指摘したい。 ⅠⅠ 総理府が1983年に実施した消費者間題に関する世論調査3)によると,この1 −2年間に購入した商品について「不満をもった」人の割合は32%であり,商 品別では食料品による不満が最も多く,次いで衣料品が多い。不満の内容とし ては,「品質,性能,効能などが思いどおりでなかった」が最も多く,次いで「安 全,衛生上問題があった」,「破損,欠陥があった・耐久性に問題があった」 の順となっている。また,不満を持った人のうち,その対応行動として,販売 店やメーカーなどへ苦情を申し出た人は32%であり,消費生活センタ・−などの 行政窓口へ申し出た人は僅かに1%に過ぎず,どこにも申し出なかった人が 67%いる。このことほ,一・般に消費者の商品に関する不満は相当あるにもかか わらず,苦情行動として顕在化せず潜在的苦情に終わ恵ものが多いことを示し ている。 また,国民生活センターの消費生活相談年報4)から,過去10年間の相談件数 の推移をみると,食料品の全体に占める比率は次第に減少しているが,被服品 の比率は増加している。 日本百貨店協会の苦情受付実態調査5)の結果でも,被服晶に関する苦情率は 他の商品にくらべてかなり高い。被服品に関する苦情内容の特徴は,他の商品 とくらべ品質・機能に関するものが多い。品質・機能に関する苦情内容として は染色堅牢度に関するものが最も多く,次いで強度,縫製,外観保持(ピリン 3)総理府『月刊世論調査』大蔵省印刷局,1983,9,29−78べ−・ジ 4)国民生活センター『全国消費生活相談統計年報(昭和58年度)』1984 5)日本百貨店協会『第5回百貨店における苦情受付実態調査』19朗

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織維製品のデメリγト表示に関する−・考察 −3一

グ紬,毛羽だちなど),形態安定,サイズの順となっている。また,最近の苦情

の傾向としてほ,染色堅牢度に関するものが減少し,代わってビリングなどの

外観保持に関するものが増加している。

三菱レ・−ヨソが1981年に実施した消費者調査6〉でほ,セ一夕、−などのニット

商品の不満の第1位にビリングがあがっている。また,メーか−や流通業界7)で

もビリングを問題にしており,ビリングに関する苦情の実態調査や評価方法に

ついて調査・研究が進められている。

このように繊維製晶の消費者苦情が減少せず,しかも品質・傲能に関する苦

情が多いということは現状の繊維製品の品質表示が消費者の品質・機能を判断 するための情報としてなお不十分であることを示している。 ⅠⅠⅠ 〉 繊維製品の消費者苦情が減少しない原因の一つに消費者の繊維素材に関する

知識が曖昧であることが考えられる。

たとえば,H..G.Schurtzら8)がカリフォルニアの女性を対象に実施した織維

素材に対する消費者知覚に関する調査によると,消費者は繊維素材に対してか

なり混乱した知識を抱いている。全ての織椎を合成繊維,網,羊毛,綿の4つ

に分類しており,各種の合成繊維の区別および綿と麻の区別をしていないと報

6)三菱レイヨソ『現代女性のライフスタイルとファッションーニットが主役であるために は』1982,28−29ページ 7)繊維製品技術研究会「ピリ:/グ・スナッギソグ・毛羽立ちの苦情とその問題点」『ATTS レポート』1983,9,2−4ページ

8)Howard G.Schutzand Beth Ann Phillips,“Consumer Perceptions of Textiles”, HomeEconomicsResearchJSeptember,1976,Vo15,No1,pp2−14 注1) どリング 主として紡績糸から出来た級維製品が着用や洗濯などにより摩擦,変形などの作用を 受けると級維が変形または移動し毛羽を生じ互いに絡み合ってピル(毛玉)となる。こ の現象をビリソグという。糸の撚りが甘い,糸の密度が小さいなど布の構造が粗で級維 が移動し易い場合や織維が細くしなやかで絡みやすいほどピルが発生しやすい。発生し たビルは布が更に摩擦,変形されると次第に表面から脱落する。(日本級維製品消費科学 会編『織維製品消費科学ハンドブック』101−102ペ、→ジ ,光生館(1975))

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香川大学経済学部 研究年報 25 J.≦え95 −4− 告している。−L方,旭化成が1981年に女性を対象に.実施した衣服の消費行動と 意識に関する調査9)によると,天然繊維については「知っている」と答えた人が 49‖0%,合成繊維では36.4%であり,再生織経では僅かに7.3%に過ぎない。 また,織維のイメージについてほ再生繊維に対するイメージがかなり曖昧で, 消費者の繊維素材に関する知識が不十分であることを示している。 そこで,著者ら2)は最近,消費老苦情の増加が問題になっているビリングに関 する消費者の知識について調査を行った。その結果,図1に示すように,“セ1一 夕1−などはどんな場合にビリングができやすいか’’については,「摩擦されると そう母わない ・摩擦されるところに できやすい (N=298) ・洗い方が憩いと できやすい (N=296) ・牙i用をくりかえすと できやすい (N=297) ・ニ/トはてきやすい (N=297) ・合成繊維はできやす い (Nニ297) ・毛足の長いむのは できやすい (N=296) ・風合いの柔ゎいもの はできやすい (N=296) ・同じ朱材であれは安 い物ほとできやすい rN=298) 図l ビリングに関する知識 9)坂本『被服心理学研究の応用のための夏期集中研修会要旨集』日本繊維機械学会,1982, 27−44ページ

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繊維製品のデメリット表示に関する−・考察 −5− き」,「着用を繰り返すとき」,「洗い方が悪いと.き」などにできやすいと考えて おり,ビリングに関してある程度の基本的な知識ほ持っている。しかし,「価格」, 「ニットと織り物」,「合成織経と天然織維」,「風合いの柔らかさ」などとビリ ングのできやすさとの関係については約半数の人が曖昧である。 また,繊維の種類とビリングとの関係についても図2に示すように実際はビ リングが発生しやすいポリエステルや毛に対して約1/3の人が「はとんどでき ない」と考えている。 一・方,セーターを購入する時にどの程度,消費性能の予測が可能かについて は,図3に示すように.,ビリングは他の消費性能に比べ最も予測が困難である としている。このように,消費者の織維素材に関する知識が不十分であること と,商品を購入する時にビリングの予測が困難であることとがあい、まって相乗 的に.ビリングに関する消費老不満や苦情をもたらしていると考える。 全くでき乙い ・毛 (N=299) ・アクリル (N=296) ・ポリエステル (N=293) ・ナイロン (N=295) ・純 (N==297) ほと人とでき ちい 20 非附こでき やすい 25 できやすい 35 図2 ビリングに関する知識

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香川大学経済学部 研究年報 25 −6− J郷 (N=298) ほとんとわカらない 39 ◆ ピリ ンク ・ナモ■j〈ずれ ・伸縮性 (%) 図3 セーター購入時の消費性能予測 ⅠⅤ 総理府が1985年に実施した国民生活に関する世論調査10)によると,帰属階 級意識については国民の89%が「上」あるいは「中」のいわゆる中流以上の意 識を持ち,生活の満足度についても70.6%の人が「満足」と答えている。

JNNデータノミンク11)によると,最近の消費者の衣生活における消費態度は,

品質・枚能が良く永く着られるものや人と一・味違うものなどを消費する傾向が 強まっている。自分の価値観に合ったものなら価格にこだわらず購入すると いった選択的購買態度が定着しつつある。 −・方,織維メーカーは,このような多様化した消費者ニ・−ズに応えるべく, 新素材や新しい加工技術を駆使した高付加価値商品を開発し,ファッション性 が高く政能性に富んだ商品の差別化戦略を因っている。 このように,商品が多様化・複雑化した消費社会では事業者と消費者との間 10)総理府『月刊世論調査』大蔵省印刷局,1985,10,60−61ページ 11).TNNデータバンク編『選択の時代のマーケテイング』誠文堂新光社1982,19−31ページ, 55−62ページ

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織維製品のデメリット表示に関する一考察 ーー7− の情報格差がますます拡大している。したがって,安全で合理的な消費者行動 を行うためにほ事業者の提供する適正な表示が不可欠となる。 しかし,事業者と消費老との間の情報格差ほ不適正な表示を生む土壌でもあ る。そのため,−・般に表示の実施主体である事業者は販売政策上有利な内容に ついてのみ表示する傾向がある。 鈴木12)ほ適正な表示とは,商品の長所だけでなく短所を含めたありのままを 伝えるものであり,消費者の基本的権利の一つである。また,不適正な表示と は商品の内容や取り引き条件などについて事実を誤認するおそれのある表示で あり,一L般に消費者が知り待ないような商品の欠点や短所を表示しないこと, すなわち不表示もまた不適正表示であると述べている。 表示の適正化に関する法規制は古くから行われているが,とくに1960年に発 生した鯨肉缶詰の「にせ牛かん事件」が契機となって,高まり始めた消費者運 動を背景に消費者保護基本法が1968年に制定され,各種の法令,条例および自 主的な規約などが整備されて現在に至っている。しかし,国民生活審議会消費 者政策部会報告1き)でほ,現行法ほ「食品衛生法」「薬事法」などのように安全の 確保を主たる目的とするものと「家庭用晶品質表示法」のように品質表示の適 正化を図ることを目的とするものなど目的の異なる各種の法律条例に基づいて 商品別,サービス別にそれぞれの規制が行われている。そのため,消費者サイ ドからみると整合性と補完性が不十分であると指摘している。 繊維製品の表示については,1951年に初めて規制立法が検討された。当時, 織維製品の統制撤廃や朝鮮動乱の中で粗悪品が生産され消費者の不満が強まっ たことから,法律による表示の規制化が始めて検討された。しかし,事業者間 との調整が難行し実現には至らず,1955年になってようやく繊維の名称および その表示の統一・など最も基本的な表示事項をもり込んだ法案が国会に提案され 織維製品品質表示法が制定された。その後,1962年には,他の主要な家庭用品 にも適正な表示が必要だとして,繊維製品品質表示法は発展的に解消され,対 12)国民生活センター編『表示規制法概説』日本評論社,1979,1−54ページ 13)経済企画庁国民生活局編『消費者政策の新しい課題一国民生酒審議会消費者政策部会報 告一』1979,175−202ページ

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香川大学経済学部 研究年報 25 一夕一 Jガ5 象品目に合成樹脂加工品,電気機械器具および雑貨工業品を加えた家庭用品品 質表示法が制定された。 繊維製晶の表示事項は永い間,組成表示のみであったが,1972年にカーテン などに収縮性,難燃性が追加された。さらに1976年にほ取り扱い絵表示が,1979 年には毛布,敷布などに寸法が,レインコートやオーバ1一・コートなどに撥水性 が追加されるなど,徐々に消費者ニー・ズに応えた品質表示へと形を整えてきた。 他方,東京都や神戸市などでは条例によりさらに.品目を追加している。しかし, 現状の家庭用晶品質表示法による織維製品の表示ほ,他の商品にくらべ性能表 示が一部の品目に限られており,消費老サイドに立った表示としてはなお不十 分である。 V l.織維製品の表示に対する消費者の関心度 総理府が1983年に実施した消費巷間題に関する世論調査3)によると,商品を 購入する際に商品の品質や取り扱い方法などの表示について「注意して買う」 人は72%である。性別でほ,女性は「注意して買う」が81%であるのに対し男 性は59%と少ない。 そこで,著者ら14)ほ女性を対象に繊維製品の表示に対する関心度を調査し た。その結果,内容別では図4に示すように,サイズ,価格はほとんどの人が 参考にしており,取り扱い絵表示,組成表示,デメリット表示,収縮率表示で も約70%の人が参考にしている。 さらに表示に対する関心度を商品の種類別にみると,図5に示すように「タ オル」のように素材が限定された品質で比較的わかりやすい必需品的商品の表 示に対しては関心度ほ低い。しかし,「セ・一夕ー」のように素材の種類が多く, 加工が複雑で品質がわかりにくく,しかもファッショこ/性が要求される商品に ついてほ表示に対する関心度は高い。 14)馬淵ほか「消費者ニーズを基礎とする品質表示に関する研究一級維製品のデメリット表 示に関する一考察」日本商品学会第33回全国大会研究発表要旨

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繊維製品のデメリット表示に関する−・考察 ー9− 年齢別では図6に示すように,生活体験の豊富で活動的な世代である40代が 最も表示に対する関心度が高く,次いで30代,50代,20代となっている。ま た,消費者意識が高い層ほど,あるいほ品質性向が強い層ほど表示に対する関 心度は高い。 100(%) 50 0 50 サ イ ズ 取り扱い 原産国 組 成 価 格 デメリ ′ト メーカー 収縮率 乍 体(N=647) 知人/l:(N=441) 】三 相(N=≡2()6)

図4 表示の参考度 2..繊維製品の表示に対する消費者の不満度 現状の表示に対する消費者の評価についてほ,国民生活センターが1980年に主 婦を対象に実施した第11回国民生活動向調査15〉によると,25%の主婦が織維製 品の表示に対して不満をもち,その不満内容は主として成分表示(素材表示) や取り扱い表示に対する不満である。また,中川ら16)が女性を対象とした調査 15)国民生活センター『主婦の生活意識一生活の満足・不満感および商品等の苦情実態』1982 16)中川,高山「現代女性の被服製作に関する意識と実態」『織維製品消費科学』23,1,1982, 30−38ページ

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香川大学経済学部 研究年報 25 −J()− ●年齢別 20∼29歳 (N=122) 30∼39 (N=183) 40−49 (N=98) 50−69 (N=84) タオル (N=341) 准 衣 (N芝501) セーター (N=502) 949 4.1 図5 商品購入時の表示の確野康一商品別 によると,織維製品の「ラベル表示 に問題がある」とする人は35.2%い る。 Cr=0138 ●消費者意識別 ある (N=306) いえない (N=148) ない

そこで,著名ら1)は表示に対する不(N=29)

Cr==0.144 満度を調査した結果,年令別,職業別,●品質性向 消費巷間題への関心の有無による差は(濃莞18)

あまりみられず,商品の種類によりか き濃鷲去;

なり差が認められた。図7に示すよう ない (N=12)

に,「タオル」,「寝衣」,「セ一夕、−」で

Cr=O100 は不満度が最も高いのは「セ一夕・−」 図6 セーター購入時の表示の確認度 で,不満度が最も低いのは「タオル」 となっている。このような商品による不満度の差はその商品の表示に対するニ ーズの差に起因していると考えられる。 3.織稚製品の表示に対する消費者 の理解度 品質表示は,消費者が正しく理解し て始めてその効果を上げることが出来 る。しかし,山口県が1978年に主婦を 対象に実施した取り扱い絵表示につい ての調査17)では,取り扱い絵表示の平 タオル (Nニ465) 撞 衣 tN=こ500) セーダー (N=503) 図7 表示に対する満足・不満足 17)山口県消費生活センタ1−『衣料品に関する意識と行凱1979

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織維製品のデメリット表示に関する一・考察 −Jノー 均理解率は64.7%であり,全て正しく理解していた人はわずかに4%に過ぎな かった。また,西友ストアが1978年に実施した調査18)でも取り扱い絵表示を全 て正しく理解していた人はわずかに11%しかいなかった。林ら19)ほ1980年に 取り扱い絵表示に関する調査を行った結果,取り扱い絵表示が正しく理解され ていないのは,文字の簡略化が消費者に正しい取り扱いを十分に伝えていない ためであるとして,取り扱い絵表示の改善試案を提案している。 このように繊維製晶の表示に対する消費者の関心度は高いが理解度は不十分 であり,消費者ほ現状の品質表示に対して不満をもっている。さらに,前述し たように織維素材に関する知識はかなり曖昧である。したがって,今後,さら に消費者ニーズに合った表示の整備を図るとともに,表示がその機能を十分に 発揮するためにほ,事業者の適切な商品情報の提供および学校,行政がそれぞ れの立場で総合的な教育を推進していくことが必要であると考える。 ⅤⅠ 近年,消費老保護の観点から,デメリット表示が注目されている。1979年の 国民生活審議会消費者政策部会13)においても,消費者保護政策を推進するため の表示・広告の適正化に関する審議が行われ,商品の性能に関する表示はメリッ トとしての性能のみでなくデメリットについても,商品の安全及び商品の選択 に影響を与える場合についてほ表示することが必要だとしている。また,現行法 でも商品の短所についての表示(デメリット表示)が不十分であるとして,そ の検討・改善を要請している。 1.デメリット表示の定義 デメリット表示という言葉は,現行法では規定されておらず,その定義につ いては明確ではないが,デメリット表示の定義について,鈴木20)は,デメリッ 18)ゼネラル企画『月刊キャパシティ』1978,9 19)林ほか「繊維製晶の苦情と消費老教育」『放維製品消費科学』24,6,1983,22−31ペー ジ 20)鈴木深雪「これからの表示」『月刊消費者』1977,3,30−37ページ

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香川大学経済学部 研究年報 25 −J2− J謝 ト表示は「商品が消費者からマイナス評価をうけることの表示という意味で, 商品の持つ本来的な欠点とか性能の限界を示す表示」だとしている。また,注 意表示は「その事実を知らなければ,使用方法や保存方法を誤るなどして被害 を受けるような事実を消費者に伝える表示」だとしている。・−・般的にほ,デメ リット表示ほ商品の実態を表す表示の一つとして認識されており,注意表示を 含む場合もある。また,愛知県の消費者保護審議会21)が1980年に答申した意見 書では,デメリット表示の定義として,「現時点でほまだ問題はあるものの商品 の構成上や生活の必需上,やむを得ず技術限界を承知して販売する場合であり, 早急に改善すべきものであるが,現状ではまだ,その商品の弱点だと考える消 費者に理解してもらうために付するもの」だとしている。そこで,著者らは, デメリット表示を一・般論からでほなく,具体的レベルで考察するため,次のよ うにデメリット表示を定義し,その類型化を行った。 商品の品質構造ほ,たとえば,織維製品では素材,伸縮性などの自然的属性

である−・次品質と,色,デザイン,流行などの市場的属性である二次

品質から 成る。一・方,商品の品質を使用価値(有用性)という側面からみると,たとえ ば医薬品には主作用(薬効)とともに副作用があるように,商品の品質にはメ リット(プラスの要因)とともにデメリット(マイナスの要因)がある。また 商品の性能,機能にほ限界がある。 −・般に,消費者は繊維製晶のようなファッション商品を購入する時は,二次 品質を重視した商品選択をする。しかし,実際に使用する過程でほ視点が一・次 品質にシフトする。また,消費者の満足は主として二次品質に起因し,消費者 不満は一・次品質に起因する。したがって,消費者不満や苦情に直結するデメリッ トは一・次品質の中に存在する。 商品のメリットやデメリットは,消費という過程の中で消費者というフィル ターを通して評価されるものである。したがって,商品のメリットやデメリッ トは客観的なものではなく,主観的なものである。この主観的なデメリットを 客観性をもった表示として具現化することは困難であるが,消費者ニーズに 21)愛知県消費者保護審議会『デメリット表示及び個別商品の表示等の適正化に関する意見 書』1980

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繊維製品のデメリット表示に関する一考察 ーム㌻− あったデメリット表示を考えるためにほ,表示の基準としてデメリットが消費 者苦情となるか否かという観点から捉えるのが最も適切であると考える。すな わち,消費者苦情をデメリット表示の指標として考えることである。したがっ て,著者らが考えるデメリット表示とは,「使用時に.トラブルが発生し,消費者 苦情となる事象についての表示」であり,デメリット表示はその発生要因から 次の3つに類型化して考えることができる。 ① 使用上注意をしても,トラブルの発生が避けられないもの ② 使用上注意をすれば,トラブルの発生が軽減できるもの ③ 使用上注意をすれば,トラブルの発生が避けられるもの ①のような商品ほ本来,市場適性のない商品であり,技術開発により品質改 良すべきものであるが,現時点では必需性があり,やむをえず商品化するもの である。②および③のような商品についてほ,デメリット表示と併せて使用上 の注意表示が必要である。 2,.デメリット表示の歴史 デメリット表示は1972年に日本専売公社が「たばこ」の包装紙に「健康のた め吸いすぎに.注意しましょう」と表示したのが最初だと言われている21)。 このような表示が実現した背景には,高度大衆消費時代に豊かな社会とひき かえに公害を経験し,国民の健康や生活環境に対する関心が高まったことがあ る。そのため,1969年に日本専売公社は「たばこ」のニコチン・タールの含有 量を公表し,さらに1971年にほ第4回消費者保護会議で「たばこ」の有害表示 の具体策が検討され ついに実施に移されたものである。 繊維製晶のデメリット表示は,1973年に当時急速な勢いで流行したブルー ジ1−ンズが洗濯により色落ちし,他の衣料に移染するという苦情が続出した。 そこでジーンズ業界がこれに対処するためジーンズ商品に「色落ちしますから 他のものとの洗濯はお避け下さい」という縫いつけラベル表示を行ったことに 始まる。22) 一・方,流通業界においても,1976年にある百貨店が繊維製品の−眉附こ「デメ 22)水野良象「デメリッ寸表示のありかた」『級維製品消費科学』20,1,1979,14−16ぺ・− ジ

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香川大学経済学部 研究年報 25 J一玖9タ ー」4− リット表示および注意表示」という名称で商品の欠点や取り扱い注意表示を実 施したところ大きな反響を呼び,その後,他の百貨店やス、−/く−,アパレル業 界へ次第に普及していった。 百貨店がデメリット表示を実施するようになった主な理由は,デメリット表 示が消費者の合理的な購買行動の指針となること,およびそれによって消費者 苦情を防止できるということである。 百貨店に寄せられた消費者苦情を分析した結果,苦情の発生する原因として, (Dライフスタイルの変化に伴い消費者意識や商品の取り扱い方法が変化したこ と②核家族化などにより伝統的商品についての性能や取り扱い方法に関する商 品知識が伝承されていないこと③商品が多様化・複雑化し消費者の商品知識が 不十分であるにもかかわらずメーカーからの適正な商品情報が欠如しているこ と④メ1一カーの商品規格基準が消費者の期待する規格基準とかけ離れているこ となどがあげられる。そのため法律による一・般的な取り扱い表示だけではその 商品の欠点を十分カバ、−できず,これが消費者苦情の原因となっている。そこ で,デメリット表示や取り扱い注意表示をすることにより消費老が適切な取り 扱いの指針とすることができ,消費者苦情を防止できるということで表示にふ みきった。2き)なお,百貨店ではデメリット表示及び取り扱い注意表示の実施基 準を次のように設定している。24) (∋ 社内規格では合格であるが,判定基準値が低いため苦情になる可能性 があるもの ② 特に必要と認めたもの ③ 消費者を啓発するとともに苦情を未然に防ぐためのもの 3‖ デメリット表示の現状 取り救いや保存方法いかんによって重大な危害を生じるようなデメリットの 場合は,危害防止のため商品別に法律で規制され注意表示が義務づけられてい る。たとえば,医薬品や化粧品ほ薬事法により安全基準が設定され製造,販売 23)大丸消費科学研究所『テストとリサーチ』1978,13,1−2ページ 24)下村寿「デメリットおよび取扱い注意表示について」『繊維科学』1977,12,22−25ペー ジ

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緻維製品のデメリット表示に関する一、考察 −J5− などの規制および取り扱いや保存の注意などの表示義務がある。食品でほ食品 衛生法により,たと.えば,乳および乳製品は保存方法,放射線照射食品ほ放射 線を照射した旨,即席めんほ油脂で処理した旨などの表示義務がある。さらに, 食品ほ農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律でも賞味期間や保 存上の注意などの表示義務がある。家庭用品では,家庭用品品質表示法により 合成樹脂加工品,雑貨工業品,電気機械器具などの多くに使用上の注意などの 表示義務がある。 しかし,商品のデメリットに.よる被害が比較的軽度の経済的損失をもたらす 場合は法律で規制されているものは少なく,事業者に.よる任意なものが多い。 法律に基づくものとしてほ,家庭用品品質表示法による接着剤の毒性,掃除機, エアーコソディショナ・−の騒音,カーテンや敷布の収縮性の表示など極く−L部 に過ぎない。それに対し,事業者による任意なものは極めて広範囲に行われ 最近これが次第に増加している。このような例としては,カラ・−フイルムの写 真の変色・退色や食品でははちみつの厳冬期における再結晶やチョコレートの ブルーム現象などがある。繊維製品では,色落ち,ちぢみ,変色など極めて種 類が多い。25) ⅤI lい 市販衣料品からみたデメリット表示の実施状況 市販衣料品のデメリット表示の実施状況についてほ,調査が困難なことも あってデータは少ないが,佐藤ら26)は1982,1983年の2回,ある百貨店で市販 されている衣料のうち家庭洗濯の可能な衣料について表示の実態調査を行っ た。その結果,16,145点の衣料のうちスポー・ツ衣料を中心に464%に注意表示 があり,注意表示は1983年でほ前年に比べ大幅に増加していた。またその内容 は染色堅牢度に関するものが全体の約70%と圧倒的に多く,次いで収縮に関す るもの13.6%であった。また,注意表示の内容をみると表示内容が適切でない 25)鈴木深雪「注意表示(ニ)問題点と今後の課題」『月刊消費者』1982,3,50−53ページ 26)佐藤孝逸「市販衣料品の実態調査結果について」『ATTSレポー・ト』1983,6,8T15ペー ジ

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J与びこ了 香川大学経済学部 研究年報 25 一J6− ものがあると報告している。 2流通業界におけるデメリット表示の実施状況

愛知県が1979年に百貨店およびチェーソストアー220社を対象に実施した

デメリット表示の実施状況についての調査27)によると,回答のあった96社の うちデメリット表示を実施中が40%,検討中が28%で実施予定のないところほ 29%であった。 デメリット表示の対象商品は繊維製晶が多いが,その他にほ日用雑貨品,電 気製品,食料品などがある。 その名称ほ,デメリット表示の他,親切表示,ケア・ポイント,暮らしのカ ルテなど様々である。 表示内容ほ狭義のデメリット表示および取り扱い注意表示だけでなく商品情 報など幅広い生活情報を併せて表示しているところが多い。 デメリット表示を実施することによる事業者の利益ほ「消費者に喜んでもら える」が最も多く70%,「苦情防止になる」が18%,「店の信用が生じる」が44% となっている。 一男,デメリット表示をすることによる不利益な点としてほっ「表示に伴う経 費と時間がかかる」が最も多く47%である。「売り上げが減少する」は僅かに 2、2%であった。 3。.アパレル業界におけるデメリット表示の実施状況 アパレル業界におけるデメリット表示の実施状況を把握し,実施上の問題点 などを明らかにするため,著者らは婦人服を扱うアパレルメ、−カー724社を対 象に繊維製品の取り扱い注意表示などに関するアンケ1−ト調査を行った。 1)回答があったメーか−の概要 回答があったメーか−の資本金および年商額は表1のとおりである。資本金 ほ多くが5,000万円未満と小規模である。資本金と年商額は関連性が極めて高 く,資本金規模が大きいぼど年商額は多い。 27)愛知県生活課『昭和54年慶事業者向けアンケー・ト調査結果−デメリット表示について』 1979

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鉄雄製品のデメリット表示に関する−・考察 表1 アパレルメ・−か−の概要 −J7− 資 本 金 年 商 額 5,000万円未満 146 749% 5億円未満 43 221% 5,000万円一−1億円 26 133 5、・10 44 226 1億円−5億円 13 67 10∼ 50 63 322 5 億円−10億円 3 15 50∼100 17 87 10 億円以上 4 21 100∼500 21 10 8 無回答 3 15 500億円以上 無回答 210 1951000 1951000 2)デメリット表示あるいほ取り扱い注意表示などの実施状況

デメリット表示あるいほ取り扱い注意表示などの実施状況ほ,現在実施中が

72・8%,実施予定が5・6%であり,当面実施する予定はないが19‖0%であった。

実施中またほ実施予定のところは資本金,年商額が大きく消費老窓口や商品試

験室を設置しているところが多い。実施開始の時期については表示が単一・では

なく,同一・メ・−

カー内でも様々であるが,1971年以前にすでに実施していると

ころが2社あり,1977年から毎年増加している。(図8)

表示の名称は「注意表示(取り扱い注意表示,洗濯上の注意表示,保存上の

注意表示など)」と称しているところが48放と最も多く,「デメ

リット表示」と

称しているところほ12社,「デメリット表示および取り扱い注意表示」と称し

ているところが6社である。

「デメリット表示」という名称が少ないのは,デメリット表示という言葉が一・

般消費者にとってまだ馴染みがないことや言葉がマイナスイメ1−ジを持ってい ることなどによると思われる。

その他の名称としては,「ATTENTION」,「アドバイス表示」,「お願い」,「お

客様に永く愛用してもらうために」など様々である。

一・方,デメリット表示あるいは取り扱い注意表示を実施しないメ1−カーの理

由としては,「デメリット表示を必要とする商品は基本的に販売しないから不必

要」が37.8%と圧倒的に多い。その他の理由としてほ「多品種少量生産のファッ

(18)

−Jβ− 香川大学経済学部 研究年報 25 エ形5 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 以 年 図8 デメリット表示の実施時期

ショこ/商品なので困難」,「人件費および設備の経費がかかる」,「判定基準が曖

昧である」などである。 3)デメリット表示あるいは取り扱い注意表示の実施率 全商品アイテムに占めるデメリット表示あるいは取り扱い注意表示の実施率

は1割未満が38・0%と最も多く,1割−2割が19パ0%である。

4)デメリット表示あるいは取り扱い注意表示を実施する基準 デメリット表示あるいは取り扱い注意表示を実施するかどうかの基準につい てほ,メーか一により種々様々であるが,総合的にみると次の3つの要因から

成る。

① 素材メーカーからの品質データ叫が基準以下である場合 ② 消費者に対する情報が不足している場合 ③ 特殊な取り扱いや保管が必要な瘍合

(19)

繊維製晶のデメリγト表示に関する一考察 ーエ9− ②の場合は新製品であるとか消費者のライフスタイルの変化による消費老の 知識の変化などがあり③の場合ほ通常の取り扱いなどでは消費者苦情が多い, あるいは消費者苦情の発生が予測されるなどがある。 5)デメリット表示あるいは取り扱い注意表示の内容 デメリット表示あるいほ取り扱い注意表示の内容はきわめて広範囲にわたっ ており,多いところでは数10種に及ぶところがある。類型化すると次の3つに 分類できる。 (む 使用上注意をしても,トラブルの発生が避けられないもの (例)光による変退色,摩擦による移染,洗濯に.よる色泣き,洗 濯によるちぢみ,パイルの保持性,水じみ,ビリング, シワ など ② 使用上注意をすれば,トラブルの発生が軽減できるもの (例)スリット糸の変色,糸のひっかけなど (卦 使用上注意をすれば,トラブルの発生が避けられるもの (例)洗濯による移染,コーティング加工のはく離など 具体的な消費性能の変化として最も多いのほ.,染色堅牢度に関するもの(変 色,退色,移染,色泣き)で,次いでちぢみ,プリーツ加工の保持性,ラメの

変色,変形である。

6)デメリット表示の方法 デメリット表示あるいは取り扱い注意表示の表示の方法は,下げ札と縫い付 けラベルを併用しているところが最も多く,45小9%,次いで下げ札のみが 32‖9%,縫い付けラベルのみが13.0%である。 7)デメリット表示あるいは取り扱い注意表示をすることによる企業側の 利益と不利益 デメリット表示あるいは取り扱い注意表示をすることによる企業側の利益と しては,「消費者苦情が防げる」が圧倒的に多く902%,次いで「消費者に喜ん でもらえる」52.9%,「企業イメ、−ジがよくなる」37.9%である。 その他の意見としては,「適正な取り扱いをしてもらえることにより永く愛用 してもらえる」,「クリーニソグ・トラブルの減少」,「社員の意識の高揚喚起」

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香川大学経済学部 研究年報 25 J鎚75 一20− などがあげられている。一・方,不利益としてほ,「経費がかかる」が34.6%,「売 り上げが減少する」が9.2%である。また,「別にマイナスとほならない」が 64.1%である。(複数回答) 8)消費者苦情への影響 デメリット表示あるいほ取り扱い注意表示を実施したことにより,実施以前 にくらべ消費者苦情ほ,「とくに変わらない」が53。.2%,「減少した」が35.3% である。 減少した苦情の内容のうち最も多いのは色落ちであり,次いで形態変化(ち ぢみ,型くずれ)である。 アパレル業界においてデメリット表示を実施するメーか−は毎年確実に増加 しており,デメリット表示が次第に普及していることを示している。規模の大 きいメ・−カーほど消費者窓口や商品試験室を設置しておりデメリット表示を実 施している。デメリット表示を実施している理由ほ,消費老若情を防止し企業 のイメ・−ジ・アップを期待できるというプラスの面が大きいとみており,実施 に伴うマイナスの面である経済的な負担や売り上げへの影響は少ないとみてい る。 実施予定のない企業の理由として,最も多いのは「デメリット表示を必要と する商品ほ基本的に販売しないから不必要」であるとしている。デメリット表 示の内容は極めて種類が多く,広範囲なものとなっている。 4い 商品テストからみたデメリット表示 以上のようにデメリット表示は増加傾向にある。そのうち最も多い「色落ち」 表示について,各地の消費生活センター28)・29)が商品テストを行った結果,次の ような不適正なものがあると指摘している。 1)消費老が知っているようなありきたりの表示が多く,事業者にとって 不利になるような肝心のデメリットの表示がなされていない。 2)「……サることもある」のように曖昧なものがある。 3)淡色のものにまで「濃色のものは洗濯により色落ちします」のように 28)東京都消費者センター『夏もの衣料などの注意表示』1977 29)愛知県『デメリット表示付き子供服の試買テスト結果について』1980

(21)

繊維製晶のデメリット表示に関する一考察 −2J− 同種のものの全てに総括的にデメリット表示をしているものがある。 4二)短所をイメ・−ジアップのために利用していると思われるものがある。 以上のようにすでに実施されているデメリット表示の中に不適正なものがある ということ.は,デメリット表示が商品の実態を表す表示という本来の枚能から 逸脱して,消費者苦情防止対策として安易に利用されていることを示している。 ⅤⅠⅠ 消費老はデメリット表示をどのように認識し,デメリット表示が消費者行動 にどのように関与しているかを明らかにするため,著者ら1)は高松市に居住す る20∼69歳の女性1,000名を対象に繊維製品のデメリット表示に関する意識 と購買行動に関するアンケート調査を行った。 なお,アンケートでは,消費者はデメリット表示という言葉の認知が不十分 であると考え,「デメリット表示」という言葉にかえて,「商品の欠点や短所に ついての表示」という言葉を用いた。 また,具体的な商品として「タオ・ル」,「寝衣」,「ジーンズ」,「ブラウス」,「セー ター」をとりあげ,具体的なデメリット表示としては,現在最も多く表示され ている「色落ち表示」をとりあげた。 1.デメリット表示の認知度 デメリット表示を見たことのある人の割合ほ「色落ち表示」注2)が最も多く,次 いで「ちぢみ表示」注3),「毛玉表示」削),「変色表示」注5),「熱溶融表示」注6)となって 注2)色落ち表示の例 「洗濯により色落ちすることがあります。白い物とは一緒に洗わないでください」 注3)ち■ぢみ表示の例 「洗濯により多少ちぢむことがあります」 注4)毛玉表示の例 「毛玉ができることがあります」 注5)変色表示の例 「ラメはゴム製品などと一・緒に保管すると変色することがあります」 注6)熟溶融表示の例 「体育館などで急激な摩擦を行うと摩擦熱で溶けることがあります」

(22)

香川大学経済学部 研究年報 25 −22− いる。(図9)これほ,前述の市販衣料 の実態調査などの結果および百貨店に おける繊維製品に関する消費者苦情の 内容と対応しており,現状のデメリッ ト表示が消費者苦情の防止策と.して実 効をあげていることがうかがえる。 2小 デメリット表示に対する意識 メ1一カーなどが自主的にデメリット 表示をすることについては,ほとんど 色おち表示 (N=504) ちぢみ表示 (N亡502) 毛玉表示 (N貫502) 2.8 図9デメリット表示の認知度

の人が賛成している。また,自主的に

デメリット表示をするメ・−か一に対しては,「表示することにより責任を逃れよ うとする信検出釆ないメ・−か−だと思う」と批判的な人は0‖8%と僅かであり, 残りの人は「メーカーによっで良心的で信頼できる場合とそうでない場合があ る」が,「メーカー・にとって不利になると思われる欠点や短所を自発的に表示す るのだから良心的で信頼できると思う」をやや上まっているものの,消費老は デメリット表示をするメ、−・カーを一応好意申に受け止めている。(園10) 織維製品を購入する時にどの程度デメリット表示を参考にするかについて は,はとんどの人が「参考にする」と答えており,デメリット表示に対する消 費者の期待度ほかなり大きいことを示している。デメリット表示の参考度は消 費者問題への関心度や品質性向との間に高い関連があり,消費者意識が高いほ ど品質性向が強く,デメリット表示を参考にしたいと答えている。また,デメ リット表示の参考度は表示に対する満足度との間に高い関連があり,表示に対 する満足度が高い人およびやや不満の人は「どちらともいえない」と答えた人 に比べ「デメ リット表示を参考にしたい」と答えた人が多い。これは,表示に 対する関心度の差に起因していると考えられる。(図11) 3.色落ち経験とデメリット表示の必要性の認識 過去1年間に,色落ちで困ったことのある人は57い7%おり,そのうちはとん どの人が「デメリット表示があればトラブルを防げた」とデメリット表示の必 要性を感じている。(図12)

(23)

級維製品のデメリット表示に関する一・考察 ●メーカーなどか自主的‘こ, どちらとも デメリ ソト表示をすることについて いえない50 ●全体 (N=506) やや 反対10 賛成 79.9 (N亡503) ●自主的にヂメリソト表示をする 14・1 ′−・カーlこ対して 借噸できない0。8 ●消費者意謂別 ある (N=309) いえない (N=149) ない (N=29) ●品質性向 ある (N=421) いえない (N=57) ない (N=12)

その他 2.4

(NE499) いろいろ 5611 40.7 % 図10 デメリット表示に対する意識 Cr=0.176 、、、、 4.希望するデメリット表示の内容 消費者が希望するデメリット表示の 内容は色落ち,ちぢみ,毛玉など過去 にトラブル経験の多い項目である。 短大生と主婦では短大生は色落ち, 型くずれ,毛玉などの外観上の審美性 に関する項目が多く,主婦ほ吸水性, 燃えやすさなどの機能性に関する項目 が多い。(図13) 5.色落ち表示商品の購入経験と購 入理由 色落ちについて表示した商品を買っ たり,あるいは人からもらったことの ある人は「タオル」,「ジーンズ」,「ブ ラウス」では,「ジ・−ソズ」が最も多い。 (図14) 色落ち表示商品の購入理由は「タオ ル」では「色落ちは気になるが使うと きに注意すればよいから」が最も多い。 満足 (N=63) まあ満足 (N=248) いえない (N=111) やや不満 (N=74) 不満 (N=7) Cr=0.104 図Il デメリット表示に対する意識 よくある 色おち経験 (N=≡503) を 性か 要と 必こ のた 示じ 表感 (N=289) 図12色おち経験と表示の必要性の認識 それに対し,「ジーンズ」では ,「色落 ちほ止むをえないと思うから」が最も多く,次いで「色落ちは気になるが使う

(24)

香川大学経済学部 研究年報 25 J9β5 ー24− その他 やすさ 燃え 風合い 毛抜け 弱 さ 吸水性 毛 玉 型くずれ 伸 び ちぢみ 変 名J 色おち 図13 希望するデメリット表示の内容 ときに注意すればよいから」,「色落ちした方がよいと思うから」となってい る。(図15) これは消費者のほとんどが「ジーンズ」の色落ちを経験し,「ジーンズ」の色 落ちが消費者の知識としてすでに定着していることを示している。また,色落 ちがファッショこ/の1つとして捉えられ,デメリットが逆にメリットとなって いることを示している。 「ブラウス」では,「買う時に色落ち表示に気づかなかった」が最も多く,次 いで,「色落ちは気になるが使う時に注意すればよいから」となっている。「ブ ラウス」の場合は購買時に色落ちを意識していない人が多いことを示している。 したがって,色落ちが消費者の商品知識としてまだ定着していない商品や,色 落ちの予測が困難な商品では,色落ち表示の存在が商品の購買や使用に少なか らず影響を及ばすものと考えられる。したがって,このような商品については とくにデメリット表示が必要であると考えられる。 6..色落ち表示に対する消費者の評価 デメリット表示された商品の着用や洗濯などについては,特別に注意する人

(25)

繊維製晶のデメリット表示に関する−・考察 % −ガ一 気にならない タオル (N蚊155) ジーンズ■ 66(N{228) ■ブラウス (N・象84) タオル (N=469) /−ンズ、 (N亡468) ブラウス (N=468) 17.914.3% 図15色おち表示商品の購入理由 図14 色おち表示商品の購入経験

が多い。また,色落ち表示が着用

や洗濯時にどの程度参考になった かについてほ,882%が「参考に なった」と答えている。 色落ち表示は,どの程度信頼で きるかについては,81.8%が「信 ●色おち表示は あまり2.6 参考になったか とちらともいえなし (N・≡340) ●色おち表示は 信糟できるか (N=352) どちらともいえない あまり 図16 色おち表示に対する評価

頼できる」と答えており,現状の

色落ち表示に対して消費者は一応評価していると考えられる。(図16)

7い 色落ち表示の有無と購買行動

織維製品を購入する時,色・柄・デザインや価格が同一で,一・方には色落ち

表示があり,他方には色落ち表示がない場合の商品選択については,「色落ち表

示があるほうを買う」と答えた人が34い6%である。それに対し,「色落ち表示が

ないはうを買う」と答えた人は46,.7%であり不表示商品の選択度が高い。

この購買態度は年齢別,消費者間題への関心度との間に高い関連があり,た

とえば,消費者問題への関心がある人についてみると,20代では色落ち表示商

品の選択度が低いが,30代では増加し,40代では色落ち表示商品の選択度が高

い。(図17)

色落ち表示商品を選択する理由については,「色落ちすることがわかれば注意

して扱うので安心だから」が97.7%と,ほとんどである。それに対し,色落ち

不表示商品の選択理由は「色落ちしないと思う」が631%,「色落ちするかどう

かわからないが,多分しないだろうと思う」が35.6%と,ほとんどの人が不表

(26)

J9βタ 香川大学経済学部 研究年報 25 −26− 示商品は色落ちしないだろうと思 って購入している。したがって, このように色落ちしないと思って 購入した商品が色落ちした場合は 消費者不満や苦情となることが予 想される。 色おち不設示 商品を男う 色おち牒示 商品そ下う e全体 (NE497) ●消費者間唱への る人(N‡305) 20−29才 (N=55) 30・−39 (N=I19) 40・−49 (NE73) 50・−69 (N上・58) CrlO150 図17 色おち表示の有無と購買行動

Vlll

商品の品質にはメリットとともに何等かのデメリットが存在する。そこで, 著者ら14)は消費老がこのことをどの程度認識しているかについて調査した結果, 繊維製品を購入する時,その商品の持つどうしても避けられない短所・欠点を 考える人は89.3%(いつも27.0%,ときどき62.3%)と多いが,一・方,考えな い人も10‖5%あり,主婦と短大生では短大生に考えない人が多い。(図18) 100(%) 50 0 25 図18 購入時に商品のデメリットを考えるか

(27)

緻維製品のデメリヅト表示に関する−・考察 ー27− 繊維製品のデメリットにほ濃色タオ・ルの洗濯による色落ちのように過去の経 験から比較的予測しやすいものと前述のビリングのように予測が困難なものが ある。現在実施されているデメリット表示は色落ちに関するものが圧倒的に多 く,ビリングに関するものは少ない。しかし表示が真に消費者のための表示で あるために.ほビリングのような予測が困難な品質こそデメリット表示をする必 要がある。 −・般に,消費者の苦情や不満はその商品の品質に対する期待水準と知覚水準 とのギャップに起因している。消費者のビリングに対する期待水準は商品の特 性により異なるだけでなく消費者の心理的特性や社会的要因などにより大きく 影響される。 ビリングに関する研究報告ほ,これまでそのメカニズム,試験方法,防止法 などに関するものがはとんどであり,ビリングを消費者の心理的特性から言及 した報告ほ少ない。 1971年の鈴木ら30)の報告では,消費者ほビリングを品質保証特性として要求 しているが,品質特性中でのビリングはそれはどいやがられている特性でなく 問題意識は低い,としている。 しかし,1973年のオイルショック以降,消費者の意識は畳から質へと大きく 変化し,高級化志向,品質志向など品質への期待水準が高まっていると.ともに, ファッション性重視,感覚重視の傾向も強まっている。 したがって,ビリングに関する消費者意識はかなり変化していることが予想 される。 そこで,著者ら2)はビリングに関するデメリット表示を実施するための基礎 的資料とするために,高松市に居住する20∼69歳の女性504名を対象に消費者 不満の多いセータ1−のどリングに関する消費者調査を行った。 回答者の特性は,表2および囲19,図20の通りである。 調査の結果,次のことが明らかになった。 30)鈴木,近藤「スパンニットのビリングとその評価方法」『日本緻維製品消費科学会昭和46 年度年次大会要旨集』1971

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香川大学経済学部 研究年報 25 表2 回答者の特性 エ9β5 −2β− N=302 年 齢 職 業 年 間 衣 料 費 20∼25歳 82% 農林漁業 53% ∼20,000円 156% 26∼30 31∼35 商工業

89 20,000−30,000

36−40 186 専業主婦 487 41∼45 30,000∼・50,000 46∼50 126 おつとめ;ニ美イト含 311 51∼55 50,000■∼ 367 56以上 86 NA 03 50 NA 計 1000 計 1000 計 1000 あまりそう思わない そう思わない ・セーターをよく着る (N=296) ・表示をよくみて選ぷ (Nご=298) ・多少高くても品質のよいもの を貰う (N=297) ・有名なメーカー・プラントの ものを買うことが多い (Nニ297) ・気にいれば素材や取り扱い 表示などはあまり気にしなし で買う (Nニ298) ・おしゃれである (N;=2g7) ・新しいフγソションはいち 早くとりいれる (N=297) J く%) 図柑消葉音意識(とちらかといえば…う

(29)

織維製品のデメリット表示に関する鵬・考察 ー29− ・衣料に関する苦情行動 (N==293) ㊥消費者講座の参加 (N=293) r%) 図20 消費者意識 1・どリングに対する関心度は商品によってかなり差がある。ビリングの不 満経験では「くつした」が最も多いが,気になる商品ほアウトウェアであ る「セ、一夕、一・カーディガン」が最も高い。(図21,図22) ・ビリングに関する不満 (1年間) ・セーターカーディガン (N=302) ・スカー†スラ ノクス (N=301) ・くつした (N=301) 1−2覇 63 −−−一一一一 一一−一一−一一一− ̄ ■−−−− −−−−−−−− ●セーターのどリング許 容レベル (N三293) ● ヒリンクの発生したセ ーターの着用回数 (N=296) り ビリングセーターの処 瑠 (N=297) タンスの中 街弟カら普段弟に 54 つみ取る 30 図21ビリングに関する不満

(30)

香川大学経済学部 研究年報 25 −3()− J!娼5 ・セーター・カーティガン (N=302〉 ・スカート いスラ ノクス (N=301) ハ くつした (N=301) 図22 ビリングの気になる程度 2セ一夕・一のビリングに関する不満ほ短期間の着用で起こっている。また, ビリングは客観的評価が難しいため調査結果から明確に指摘することは出 来ないが,ビリングに関する消費者の期待レベルと業界の品質レベル注7)と の間にかなりギャップがあることが推察される。しかし,不満に思ったセー クーを販売店やメーカ1−などに苦情を申し出る人は極めて少ない。この原 因ほ,ビリングが外観の変化という感覚的なものであり客観的な評価が難 しいこと,またセ・一夕ーは日常着的要素が強いため最初は外出着であって もビリングが気になれば普段着に転用されやすいことなどから,消費者の 不満ほ苦情行動に至らず潜在化しているものと考えられる。 3.セーター・を購入する時,ビリングを選択基準とする人は他の消費性能に 比べ最も少ない。(図23) 4ビリングに関する消費者の知識ほ不十分であり,個人差が大きい。 5.購入時にどリングの起こり易さを予測することは他の消費性能に比べ最 注7) ビリングの基準 丁ISでほ試験方法および評価方法は規定されているが基準は設定されていない。評価 方法は判定用標準写真と比較して1扱から5級までの5段階評価(5扱が最もすぐれて いる)を行う。現在,試験方法の改正が検討されている。 業界でのビリングの基準については評価方法などに問題があるとして正式な基準を定 めていないところが多い。−・部の百貨店では基準あるいは参考基準として,3級以上(ICI 法)と設定しているところがある。(級維製品技術研究会『ATTSレポート』No13 (1984))

(31)

緻維製品のデメリット表示に関する血考察 時々考える ・色・柄・デザイン (N=298) ・価 格 (N=297) ・素 材 (N三≡298) ・風合い (N=297) ・暖かさ (N=298) u伸縮性 (N=298) ・型くすれ (N=298) ・ヒリング (N=298) (%) 図23セーター購入時の選択基準 も困難である。 6.ビリングに関する消費者の意識構造 ビリングに関する消費者の意識構造を明らかにするため,数量化理論ⅠⅠⅠ額31) により分析した。 表3は固有値が高く解釈可能な2本の軸についてカテゴリーウエイトのプラ ス・マイナスに強く反応した特徴的なアイテム・カテゴリーをそれぞれ10選び 出し並びかえたものである。 カテゴリーウェイトの相対的な大きさおよびその順序などを総合して軸の意 味を解釈すると,Ⅰ軸は品質にこだわるかどうかを表しており(固有値0い150, 31)駒沢勉『数畳化理論とデー・タ処理』朝倉書店,1982

(32)

香川大学経済学部 研究年報 25 J.!夷95 −32− 相関係数0.387),ⅠⅠ軸ほ流行やおしゃれに敏感であるかどうかを表している (固有値0.086,相関係数0.294)。 したがって,ビリングに関する消費者意識は先ず第1に品質志向であるかど うか,そしてファッション志向注8)であるかどうかという2つの要因により規定 されていると考えられる。 表3 数量化理論ⅠⅠⅠ類によるアイテム・カテゴリーのウェイト Ⅰ軸 ⅠⅠ軸 アイテム・カテゴリー ウエイト 軸の意味 アイテム・カテゴリー ウェイト 軸の悪味 56 伸縮性の予測ほとんとわからない 6155 84 おしゃれだと思わない 10979 鋸 色・柄・デザイソを時々考える 5574 34 色・柄・デザインを時々考える 9718 84 おしゃれだと思わない 5512 06 スカートのどリングやや気になる 8428 OG スカートのどリソグやや気になる 5405 73 年間衣料費2万円未満 7373 46 伸縮性ほとんど考えない 5226 87 新しいファッションはとりいれない 6922 41ビリングほとんど考え.ない ロ ロロ フ 53 暖かさの予測多少わかる 5083 11くつしたのビリングあまり先にならない 6227 ア 97 あまり品質志向でない 48罪 27 ビリングセー・クーの価格5000円未満 6121 A4セーターあまり着ない 貿 ヅ 朗 26∼30歳 4523 03 セーターのどリングやや気になる シ′ 08 くつしたのどリング非常に気になる −3792 91衝動買いをする ヨ 志 79 洞野老講座の参加時々あり −4042 90 表示あまり見ない −7162 95 品質のよいものを買う −4081 43 暖かさ時々考える 志 54 伸縮性の予測大体わかる 向 −7915 向 85 新しいファタンヨソとりいれる −4563 46 伸縮性ほとんと考えない −7948 98 プラントものをよく買う −5057 81おしゃれだと思う −9577 飢 おしゃれだと思う −5835 31ビリングセーターはタンスの中 −10464 60 型くずれの予測大体わかる −7046 85 新しいフアγ:ンヨソとりいれる −10991 57 ビリングの予漁灯大体わかる −7490 63 25歳以下 }17015 固有値 0150 固毛値 0鴨6 相関係数 0387 相関係数 0294 注8) ファッション 今日よく用いられるファッションとは,第一・義的な「流行」としてではなく現代人の 個性的な美意識・し好・遊び心・行動そのものという広い意味でとらえられている。(小 山田道弥「日本のファッシ/ヨ■ン産業」5−7ページ,ダイヤモンド社(1984))

(33)

繊維製晶のデメリット表示に関する−・考察 一息ヲー 図24は,この2つの軸による各アイテム・カテゴリ・−の位置を表したもので ある。原点近くに位置するものは消費者の多くが反応したもので,消費者の− 般的な特性を表している。−・方原点からの距離が遠いものはど特殊な特性を表 している。またそれぞれの周辺に位置するものは共通した特性でありこれらを 似たものとしてグル1−プ化すると6つのタイプに分類することが出来る。 Aグループの特性は次のとおりである。 品質のよいものを買う まあおしゃれである 年間衣料費5万円以上 苦情行動時々あり 表示をよく見て選ぶ ビリングが非常に気になる 有名ブランド・メーか−のものを買う 衝動買いしない 36←45歳 消費者講座参加時々あり 購入時にビリングをよく考える ビリング許容レベル4級程度 すなわち,Aグループはビリングに対する関心度が高いグル・−プである。彼 女たちほ成熟した生活体験をもち消費内容における被服費も高く,消費態度は 品質志向,ブランド志向が強く,あまり衝動買いをしないで堅実であり,おしゃ れにも気を使い消費者意識がやや高く積極的行動型の女性消費者である。 7.ビリングを選択基準とするか否かを判別する要因分析 セ・一夕ーを購入する時にビリングを選択基準とするか否かを判別する要田は 何かを明らかにするため数量化理論ⅠⅠ類31)に.より分析した。 外的基準はつぎに示す3分類である。 外 的 基 準 名 % 1.購入時に.ビリングをよく考える 124 41.6 2.購入時にビリングを時々考える 119 39‖9 3購入時にビリングをはとんど考えない 55 18.5 説明変数としてどのアイテムを用いるかを決めるため全アイテムの総クロス 分析を行い,ズ2検定,関連係数を求め全アイテム間の関連性の有無をみた。そ の結果,外的基準と関連が強く,かつ説明変数間には相互の関連性の低いもの

(34)

香川大学経済学部 研究年報 25 1軸卜l J.鎚ざ5 −JJ− く品質こだわり型> おしゃれだと思う Aグループ プラント物をよく 誌幸采ユ/ こ・lT\ミ℃ 消せ老鶏 座時々参加 新しいフアンンロンとりしれる 大トートのビル 39■ビルよく考える 図24ビリングに関する消費者意識の構造(数1化理論Ⅲ類)

(35)

織維製品のデメリット表示に関する一考察 一念㌻−

を15アイテム選んだ。総カテゴリ・−ほ64である。計算結果は表4のとおりで

ある。

相関比(符2)はビリングをよく考えるか否かの判別をどれだけの精度で説明

できるかという分析の精度を表す指標であり,通常0い3以上ほ欲しいといわれ

ている32)が,Ⅰ根,ⅠⅠ根合わせて符2は0..458である。第1板のウエイト,レン

ジ,偏相関係数は「よく考える」と「ほとんど考えない」を,第2板は「とき

どき考える」と「ほとんど考えない」を判別するための数字である。

第Ⅰ板について,外的基準の説明要因となる各アイテム・カテゴリ、−のスコ アーを対象個人ごとに合計したサンプル・スコアーを外的基準の3分類ごとに

整理したサンプル・スコア、一階層別の度数分布をみると図25のようになる。個

人得点が低くなる程「よく考える」層に,高くなるほど「ほとんど考えない」

層に判別されている。 また「よく考える」層および「ほとんど考えない」層のそれぞれの累積分布

を図示すると図26のようになる。各曲線グラフの交点(判別点)による判別的

中率は84%である。スコア・−0.20以上のサンプルは「はとんど考えない」層で

あり,スコアー0.20未満のサツブルは「よく考える」層に属すると予測できる。

また,アイテム・カテゴリーのスコアーが(−)のものは「よく考える」に(+)

のものは「ほとんど考えない」に効いている。

また,どのアイテムが各グループの判別に効いているかほ2つの指標によっ

て見ることができる。1つはレンジでありもう1つは偏相関係数である。レン

ジおよび偏相関係数は値が大きいぼどそのアイテムのグル・−・プ分研こ果たす影

響が大きいことを示している。表4の欄中のレンジおよび偏相関係数の①②の

数字は各アイテムが3グルハープの判別に寄与している度合いの大きい順に順位 をつけたものである。 第Ⅰ根の偏相関係数から判別に寄与している度合いの大きいアイテムを順に

あげるとつぎのようになる。(図27)

① セーターのビリングの気になる程度 32)飽戸ほか『経済心理学』朝倉書店,1982,47ページ

参照

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