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ネットワークエンジニアが世界を変える 12 企業の競争力を高める IT 投資って どういうこと? SECI モデルの各段階をどこで実践するか 前回 SECI モデルの 共同化 表出化 連結化 内面化 について説明しましたが

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Academic year: 2021

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ネットワークエンジニアが世界を変える⑫

企業の競争力を高める

IT 投資って、どういうこと?-2

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SECI モデルの各段階をどこで実践するか

前回、SECI モデルの「共同化」「表出化」「連結化」「内面化」について説明しましたが、実際の企業にお いて各段階はどのように実行できるのか、架空の企業を想定して考えてみます。 A さんは従業員3000人の建設会社に勤務しています。この会社の社長は企業競争力を高めるため にナレッジ・マネージメントが重要であるとの信念をもっており、事あるごとに従業員へ積極的な情 報共有を呼びかけるとともに、社内の活性化のためにクロス・ファンクション・チームを作って販売 戦略を検討させたり、グループウェアも導入しています。A さんもプレハブ商品の売り上げ向上を目 指すクロス・ファンクション・チームの一員です。 A さんは、以前担当していた顧客からプレハブ商品の問い合わせを受けたのですが、設置寸法が顧客 の要求を満たさなかったため導入に至らなかった経験があり、プレハブ商品でも柔軟に設置寸法を変 えられるような工法が開発できれば、売上を大幅に拡大できるのではないかとの提案をしました。 しかし、「それはクロス・ファンクション・チームのミッションを超えている。新たな工法の開発ま ではできない。」というチームリーダーの判断で、実現性を検討されることもなく却下されました。 実はA さんがこの提案をしたのには理由があり、同期入社で建材開発部門にいる友人との喫煙ルーム での会話の中で、技術的には実現可能であるとの感触を持っていました。しかし、非公式な会話の中 での情報なので、友人に迷惑をかけてはいけないと思い、このことをリーダーへは話しませんでした。 また、クロス・ファンクション・チームのメンバーとは2週間に一度の定例ミーティングで顔を合わ せるだけで、それ以外はメールとグループウェアを用いた情報共有のみの関係であり、お互いに忙し いこともあって、この件をこれ以上話題にすることはありませんでした。 ちょうどそのころ人員の増加に伴うオフィス配置の変更があり、建材部門が別のフロアへ移動してし まったので、友人と喫煙ルームで会うこともなくなりました。 かくして、A さんの忙しくて退屈な毎日は続いていきました。。。 この例では「共同化」「表出化」の段階が発生せず、何も創造的な活動が行われていません。 A さんに強烈な熱意と行動力があれば、困難に打ち勝って画期的なプレハブ商品を開発できたかもしれま せんが、裏を返せば、新たな創造の段階に対する組織的なサポートは全くありませんでした。

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現在、多くの企業において同じような実態があると考えられます。

創造を支援する組織

組織とは、「人」と「人を取り巻く環境」に他なりません。つまり、企業においては以下の全ての要素が組 織に含まれます。  人 (経営層、中間管理職、一般社員)  環境 (物理的なオフィス、IT システム、人事規定、経営者のビジョン) 企業活動は、これら全てが相互に干渉しながら進められるものであり、「ERP を導入すれば利益が向上す る」といった言い方は、本来できないはずです。 以降で、創造の段階(すなわちSECI モデルの「共同化」「表出化」)を組織的に支援するために必要な要 素について検討します。

オフィス環境

新たな知識を創造する過程において暗黙知を共有するステップが重要であり、そのためには対面でのコミ ュニケーションが不可欠です。一方で電話、メールやグループウェアなどIT を使ったコミュニケーション は、場所や時間にとらわれずに連絡を取り合ったりデータの受け渡しをするメリットを享受しましたが、 形式知である目に見える情報のみしか伝達できないため、創造の源泉となる暗黙知を共有する場を提供す ることはできません。 SECI モデルの各段階と実際にそれが実行される「場」の関係は、概ね以下のようになると考えられます。 「共同化」

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 2~3人での対面による共同作業やコミュニケーション  喫煙ルームでの他部門との会話や、OJT での先輩から後輩への技能伝承、アフターファイブの 「飲みニュケーション」なども含まれる 「表出化」  少人数での対面コミュニケーションを中心とした議論やドキュメント・仕様などの作成作業  クロス・ファンクション・チームによる改善プランの作成作業など  今後はテレプレゼンスによって遠隔でも可能となる 「連結化」  多数での情報共有、データ分析  ERP による各種財務情報の統合・分析、要求仕様書と設計ガイドラインに基づいて設計図を作 成する作業など  IT による時間や場所にとらわれない効率的な場の提供が可能 「内面化」  実務・作業そのもの  行動を通じた深い洞察と理解によって、情報を個人の知識へと落とし込む これはあくまでも一例であり会社によって事情が異なると思いますが、このようにSECI の各段階が会社 の中の「どこで」「どのように」提供できるのかを、具体的に意識しながらオフィス設計を行うべきです。 【オフィス例】 シスコシステムズ合同会社の本社(東京ミッドタウン)オフィスはSECI モデルと共通するコンセプトで 「場」の提供を行っています。 まず前提として、シスコシステムズでは「ユニファイド・コミュニケーション」と呼ばれる仕組みを導入 しており、いわゆる「どこでもオフィス」が可能なIT インフラを持っています。 その上で、オフィス内に異なる役割を持つ幾つかのエリアを設け、その時々の状況にあわせて最も適切な 場所を選んで使うというワーキングスタイルを実践しています。 オフィスには以下の7つのエリアがあり、フロア空間はフラットで仕切りがなく、社員はどこに座っても 構わないことになっています。

 オフィス・エリア

通常のデスクワークを行うための汎用的な空間です。

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従来の外資系企業によくあったようなパーティションで仕切られた個室の空間ではなく、昔ながらの日本 企業を彷彿とさせるフラットな長机に10人程の社員が座ります。ただし、上司と部下が必ず同じ机に座 るのではなく、状況に応じてクロス・ファンクションのプロジェクトメンバーが近い席に座るなど、柔軟 に席を変えることができます。 席にはIP 電話が予め設置されており、電話機にログインすることによって自分用の電話番号で利用するこ とができます。また無線LAN が整備されているので、社員はノート PC を持って自由に移動し、どこから でも社内のIT 資産へアクセスすることができます。

 コラボレーション・エリア

3~6人程度で簡単なミーティングができる机とイスが、オフィス内のあちこちに置かれています。 ミーティングルームとは異なり予約は不要で、思いついたときにいつでも利用できます。 幾つかの場所には大画面の液晶ディスプレイが設置されており、パソコンの画面を見せながら議論するこ とができます。

 e カフェ

用途はコラボレーション・エリアとほぼ同じですが、ドリンク・コーナーが設置されており、コーヒーな どを飲みながら一息つくことができます。オフィスで最も景色のよい窓際にあり、仕事の手を休めて雑談 したり屈伸運動をしたりと、自由に使えるスペースです。

 タッチダウン・エリア

出張者が訪れた際にe メールを読んだり、短い時間だけ席を利用したい場合のための補助的な席です。 席のすぐ後ろに荷物を置くためのスペースが確保されています。

 ミーティング・エリア

ミーティングルームが集中的に配置されたエリアです。大人数でのディスカッションや、プロジェクター を使用するプレゼンテーションで利用します。 ただし、壁はガラス張りになっており、無駄にダラダラとしたミーティングがしにくい雰囲気を作ってい ます。

 クワイエット・エリア

ユニファイド・コミュニケーションによって「どこでもオフィス」が可能ですので、一人で集中して資料 作成などを行いたい場合は、オフィスへ出社せず自宅で作業することも許されています。 あわせて、オフィス内にも集中して作業できるエリアを設けています。 このエリアでは、座席がパーティションで区切られ、電話の利用が禁止されています。

 テレプレゼンス・ルーム

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地方拠点など遠隔地との密なコミュニケーションを行うためのオンライン会議専用ルームです。

人事規定

従来の社会の常識としては、上司から指示された仕事が義務であり、自発的な創出活動は空いた時間やア フター5で行うものとされてきました。しかし最近では、従業員の主体性を高めるため、人事評価の方法 に工夫をする企業が現れています。 例えば、革新的なサービスとビジネスモデルの実現で注目されているグーグル社には、20%ルールと呼 ばれるガイドラインがあると言われています。これは、「仕事の時間の20%は上司から言われた仕事以外 のことをしなければいけない」というものです。たとえば月曜から木曜まで通常の仕事をした場合、金曜 日は何か違うことをしなければいけい、ということになります。「してもよい」ではなく「しなければいけ ない」のです。(この「上司から言われた仕事以外の仕事」を支援する“Director of Other”と呼ばれる役 職もあるそうです) グーグル社は特例であり、「工場の生産ラインで働いている場合などは、上司から指示された仕事以外をす る必要はないし、したくても出来ない」と思われるかもしれません。しかし、次のトヨタ自動車の事例を ご覧ください。 ”日本でトヨタ自動車の工場見学をしていた時のことであった。あるマネージャーが得意そうに、私 にこういった。「あなたの国のデトロイトの自動車工場には無い道具が、この工場にはあるのですよ」... 「うちの社員はみな、何かアイデアが浮かんだ時に、書き留めて提出できるように、鉛筆を持ち歩い ているのです」”(民主主義時代の知識革命、アラン・M・ウェバー) また、リナックスの開発者であるリーナス・トーバルスは「多少なりとも生存が保障された社会では、お 金は最大の原動力にはならない。人は情熱に駆りたてられたとき、最高の仕事をするものだ。(中略)オー プンソースの開発者たちは、仲間からいい評価を得ようと懸命に努力する。こうしたことは大きな原動力 になるに違いない。」と述べています。 つまり、目標管理制度などであらゆる成果を無理に数値化するのではなく、創造的な働きに対する主観的 な評価が出来るような人事評価制度の見直しが求められています。 なお、働く場所がオフィスに固定されなくなることで柔軟な時間管理の仕組みも必要となりますが、2004 年3 月に厚生労働省から発表された「情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実施のためのガ イドライン」 では、管理者が在宅勤務実施者の労働時間を管理できない場合であっても、「事業場外みな し労働時間制」を適用して運用可能であることが明記されました。

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経営ビジョン

昭和33年に建てられた東京タワーは、エッフェル塔を抜いて世界一高い鉄塔になりました。 このような大規模な建設工事においては、その過程において様々なトラブルが発生し工期が遅延するのが 常ですが、東京タワーはわずか1年半という短い工期で、竣工予定日から一日も遅延することなく完成し ました。ちなみに、エッフェル塔の建設には約3年かかっています。 この成功の要因の一つとして「ビジョンの共有」があったと言われています。工事に関係した職人のひと りひとりが「世界一高い鉄塔を作る」という明確な目標に向かって、猛烈な熱意とプライドを持って仕事 に取り組んだため、途中で生じた種々の問題にも現場の創意工夫で乗り越えることが出来ました。 つまり、企業の競争力を高めるためには、単なる目標や方向ではなく企業の存在意義を明確に示すビジョ ンが必要です。 また、主体性を発揮しながらも会社の全体方針に沿った行動を行うためには、その人の判断基準である「価 値観」が会社の「価値観」と一致していなければいけません。したがって、企業ビジョンには会社の価値 観、すなわち日々の作業における様々な判断の基準や優先順位を示すようなメッセージが込められていな ければなりません。 このような観点により、従来の「社訓」のようなものを見直し、企業ビジョンの作成が求められています。

社員教育

ここで述べてきたような取り組みを行う際に、初期の段階で役員や中間管理職に対する、きちんとした教 育が必要です 創造を支援することに対しては、社員がある程度自由に行動できる「良い意味でのルーズさ」が必要であ り、管理職はこのようなことを理解したうえで、「邪魔しない」ことが重要です。この意味で、オフィス環 境や人事規定の見直しと合わせて、役員や中間管理職に対するトレーニングも重要です。 例えばモトローラのCTO トビー・レッドショー氏 は、WEB2.0 を活用した新しいコミュニケーションツ ールを社内導入するにあたって、「コラボレーションを促進させることについては、年齢による偏見よりも、 役員クラスの偏見の方が大きかった。つまり、肩書きが上の方になればなるほど、ソーシャル・ネットワ ーキングに関する技術を使う傾向が低くなった」と語っています。 働き方やコミュニケーションのルールを見直す場合、過去に沢山の成功体験を持っている役員クラスや中 間管理職が改革の妨げとなって失敗したという事例は、枚挙にいとまがありません。

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* * * 今回は創造的な活動を行いやすい環境を作るために必要な要素のうち、あえて「IT 以外」のことに触れて みました。 なぜかと言うと、IT は「道具」であり、使いこなすための環境が整って初めて本来の能力を発揮すること ができると思うからです。 次回は、いよいよ知識創造に役立ちそうなIT について考えてみたいと思います。

Written by Keiichi Takagi.

as of July 14,2010

参照

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