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2016 年度 上智大学 経済学部経営学科

網倉ゼミナール 卒業論文

東京マラソンはなぜ人気が増え続けている

のか

A1342764 安藤旭日

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目次

1.はじめに

2.基本情報

~東京マラソンとは~

3-1.仮説:ランニングブームとの関連性

3-2.検証①

3-3.仮説:開催エリア

3-4.検証②

3-5.仮説:開催時期

3-6.検証③

4−1.新たな仮説

4−2.仮説:東京マラソンの特色

5−1.検証①

5−2.検証②

5−3.検証③

5−4.検証④

5−5.検証⑤

5−6.検証⑥

6.結論

おわりに

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1. はじめに

近年、スポーツ界の動向として専門的にスポーツをするアスリートよりも生活の中で大きな割 合を占めない程度に趣味レベルでスポーツをする人口が増えている傾向がある。いわゆるライフ スタイルスポーツのニーズが高まってきている。そんな中でもランニングをする人口が増えてき ており、現在では日本で多くのマラソン大会が開催されている。ランニング人口が増えているこ とに伴い、各地方でマラソン大会が開かれるようになってきているのである。 「なぜわざわざきつい思いをしてまでマラソンを走りたがるのか。」私はこう思っていた。と いうのも私は今までの野球部生活できつい練習をしてきており、長距離のマラソンは好きではな かった。決して遅い方ではなく、むしろ速い方であったが、それでも自分から好んで走ろうとは ならなかった。このような背景があるからこそ自分からマラソンに挑戦しようとするのはどうし てなのかという疑問があった。 最近、身のまわりで「東京マラソンに応募した!」という声をちらほら耳にする。マラソン大 会といえば東京マラソンというイメージも自分の中にあり、東京マラソンについてネットで調べ てみると倍率が10倍以上になっていることに驚いた。さらに、倍率は東京マラソンが開催され て以来上がり続けているのである。この人気の理由は果たして何なのか。非常に興味が湧いた。 ただ単純にマラソンブームが起きているだけなのか。それともなにか他の要因があるのか。その 答えを知るべくして、この卒業論文のテーマを取り上げた訳である。

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⒉基本情報

今ではスポーツにおける国の一大イベントとして有名な東京マラソンであるが、名前だけでし か聞いたことがない人も多いだろう。改めて東京マラソンとはどのような大会なのか詳しく知っ ておく必要がある。 東京マラソンの開催時期はランニングの旬の時期である冬で、2月末に開催されるのが通例で ある。参加者は合計約35000人と日本国内のマラソン大会で最多のものであり、かなり大規 模なマラソン大会であることが分かる。コースにはフルマラソン(42.195km)部門と 10km 部 門がある。10km 部門は定員が約500人と少ない。(なお今回はフルマラソン部門にのみ焦点 を合わせて論じていく)抽選申し込み期間も開催の半年前と早い段階で締め切られる。そのこと からもどれだけ応募数が多いか、開催に向けての準備にどれだけ時間をかけているかが伺える。 大会の規模としてはワールドマラソンメジャーズのうちの一つで、ボストン、ロンドン、ベルリ ン、シカゴ、ニューヨークと並んで世界6大大会の一つとして数えられている。協賛企業には、 プレミアムパートナーとして東京メトロ、メジャーパートナーにはスターツ、山崎製パン株式会 社、アシックスジャパン株式会社、大塚製薬株式会社、その他20社ほどの企業が関わっている。 まぎれもなく日本の中で最も大規模なマラソン大会である。しかし日本で一番大きいマラソン大 会だからという理由で、人気が増え続けていることを説明するには不十分である。次の章から、 東京マラソンの人気が増え続けている理由として考えられる事実を推測し、仮説と検証を繰り返 してその理由を探っていきたいと思う。

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3−1 仮説:ランニングブームとの関連性

ここから本題に入る。東京マラソンはなぜ人気が増え続けているのか。その答えを模索していく ために一つの仮説を立てた。“東京マラソンはランニングブームに乗じて倍率が上がっている” という仮説である。

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7 上の図は、ここ20年ほどの「全国の週一回以上ランニング以上行う人口」の推移を表すグラフ である。年齢別でみると一律ではないが、全体的に見ると、ここ最近増加傾向にある。特に20 06年あたりから20代、30代、40代といった今までと比べて比較的若い層のランニング人 口が増えている。次に性別で見てみよう。 性別で見てみると、男性の方では 20 代から 40 代の年齢層にかけて上昇している。その中でも 40 代の上昇が著しい。女性は 20 代の増加が著しい。逆に 50 代は激しく減少している。今回は 東京マラソンとランニングブームの関連性を見ているので、年齢、性別ごとになぜランニング人 口の割合が変化しているのかという点については詳しく検証しないが、推測するに、男性の 40 代の割合が増えているのは社会人の健康志向の上昇が原因だと思われる。現在は会社自体も社員 に対して何かスポーツを積極的に行うように促している風潮がある。そこにランニングのとっつ きやすさ、ストレス解消への最適さがマッチし、主にサラリーマンの間で流行となっているので はないかと考える。女性に関しては、20 代の女性のスタイル維持、ダイエット志向が強くなっ ているのではないかと推測できる。以前に比べて、女性がフィットネスクラブなどに来てトレー ニングをするという光景は多く見られるようになった。メディアなどでも様々なダイエット方法 が取り上げられるようになった。そういった社会の情勢でダイエットが推奨されるようになって きたのも一つの理由だと考える。言うまでもないが、男性よりも女性の方がダイエットに関して 敏感に反応する。それゆえ女性の伸び幅の方が大きいと推測できる。 0   2   4   6   8   10   12   1998   2000   2002   2004   2006   2008   2010   2012   2014  

週に一回以上ランニングをする人口

 

20歳代 30歳代 40歳代 50歳代 60歳代 70歳以上

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8 上記で述べた推測が正しいか正しくないかは別として、いずれにしても全体的にランニング の人口は伸びていることに変わりはない。そして年別で見てみると、男性の20代から40代、 女性の20代を中心に全体的に2006年から上昇傾向にある。このランニングブームが200 7年から開催され始めた東京マラソンの人気の上昇と重なる。よってこのランニングブームに乗 じて東京マラソンの人気が上がっていったことが予想される。それ故に仮説として取り上げるこ とができる。

3-2 検証①

上の図は東京マラソンの倍率の推移を表したものである。先ほども説明した通り、ランニング の人口は特に2006年以降の20代を中心に若年層のランニング人口の増加が顕著に表れて いる。東京マラソンが開催され始めたのは2007年であり、2006年以降の若年層のランニ ング人口増加と重なる。開催されて以来、東京マラソンの倍率は現在に至るまで増加し続けてい る。ランニング人口の増加グラフと東京マラソンの倍率のグラフを照らし合わせると、増加の時 期、右上がりの増え方が一致していると言える。ゆえにランニングブームと東京マラソンの関連 性は高いと推測できる。 しかし、ランニングブームが東京マラソンの倍率を押し上げていると考えるならば、他のマラ ソン大会の倍率も増えていなければ辻褄が合わない。その点を解明しなければならない。よって、 他のマラソン大会と比較して検証を試みることが必要である。 その比較対象として、東京マラソンの次に規模の大きい、地域的に異なる場所で行われてい 0   2   4   6   8   10   12   2007   2008   2009   2010   2011   2012   2013   2014   2015   2016  

東京マラソン倍率推移

系列1  

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9 る大阪マラソンと比較検証を行ってみる。 上の図は東京マラソンと大阪マラソンの応募人数と倍率を比較したグラフである。これを見る と、東京マラソンは2012年の応募人数を除き、右肩上がりなのに対して、大阪マラソンは応 募人数、倍率ともに右肩下がりなのが分かる。ランニングブームが全国的に起こっているのであ れば、東京マラソンの次に規模の大きい大阪マラソンも右肩上がりになるはずである。しかし、 東京マラソンと大阪マラソンの人気は逆の様相を呈している。このデータからランニングブーム が全国的に起こり、各地方のマラソン大会の人気を押し進めているとは考えづらくなった。よっ て、東京マラソンはランニングブームのみの理由で人気が上がっているのではないことが分かっ た。 そしてもう一つ着目したいのが2012年の応募数者の低下である。2011年は過去最多の 34万人の応募者数を記録している。今年2017年に開催される東京マラソンの応募者数をも 上回っている。ここだけ見ると人気が上がってきていると言えるのか定かではなくなってくる。 それでも人気が増え続けていると言えるのか。そしてなぜ2011年から2012年に応募者数 は減っているのに、倍率は上がっているのか。様々な疑問点が浮かび上がってくるので、それら 点について説明しておきたいと思う。 まず、2012年の応募者数の低下についてであるが、これは明確な理由としてはっきりとは 言えないが、間違いなく2011年に起きた東日本大震災の影響である。東日本大震災が起きた のは、2011年の3月なので、2011年の2月に開催された東京マラソンに影響はなかった。 その次の年の2012年の応募者数の低下に顕著にその影響が出ていると思われる。事実、東京 マラソンは東北地方からの応募者、参加者も多数いた。東日本大震災により例年東京マラソンに 応募していた東北地方の人々が参加できなくなったということは容易に考えられる。応募人数の 減少はそれが原因だと推測できる。東日本大震災の影響を考えると、決して人気が2011年か ら落ちたのではなく、むしろその後もまた応募人数が増えている点から人気は上がっていると言 えるのではないか。 次に、なぜ2011年から2012年にかけて応募者数は下がっているのに倍率は上がってい

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10 るのかについて説明したい。まず理解しておいて欲しいこととして、この倍率はあくまで抽選で 選ばれる一般参加者の定員に対しての抽選の対象となる応募者数で割り出されている倍率であ ることを理解しておいて欲しい。つまり、約3万5000人の参加者がいるわけであるが、その 中には抽選ではなく特別枠で参加するランナーもいるということである。その特別枠というもの を2012年から増やした影響で、応募者数が減少しているのに倍率が上がっているという現象 が起きている。具体的に説明すると、2011年は一般参加枠が約3万2000人、その年新た に導入されたチャリティ枠など含め、総勢3万6000人だったのに対し、2012年は、その 年に開催されたロンドンオリンピック出場権を争うエリート枠などをはじめ、様々な特別参加枠 が追加され、参加者は2011年と同様の総勢3万6000人だったのに対し、一般参加枠は2 万9000人に抑えられた。そのため応募者は減っていても、倍率が上がっているのである。 少し横道に逸れてしまったが、話を戻して東京マラソンの人気が増え続けている理由をランニ ングブーム以外の観点から仮説を立てて検証していきたい。

3-3:仮説 開催エリア

前章で大阪マラソンとの比較検証を行ったが、それだけの比較検証では不十分である。仮にラ ンニングブームの度合が、地域的に差がある場合、またはマラソン大会自体に参加しやすい開催 エリアの傾向があるのであれば、例えば関東と関西でマラソン大会における人気の度合いが違う 可能性がある。よって、ここからは開催エリアの差異による各地方のマラソン大会の倍率を比較 検証していく。

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11

3-4 検証②

上の図は関西の主要なマラソン大会の倍率の推移を表したものである。なお、これらのマラソ ン大会の定員に関して大きな変動はない。京都マラソンは 2016 年まで上昇傾向にあったが、来 年2017年は今年の倍率を下回っている結果になっている。北九州マラソン、愛媛マラソンは、 年々倍率は上がってきているが、1 年ごとの伸び幅は東京マラソンよりも大きく劣っている。姫 路城マラソンは年々倍率が減少傾向にある。ここに先ほど取り上げた大阪マラソンを加えて検討 してみると、関西エリアにおけるマラソン大会の倍率は増加しているものもあれば、減少してい るものもあるので共通の変化は見られなかった。関西で開催されているという地理的な要因は、 関西のマラソン大会の倍率の変化に対して有意な影響を与えていないことが分かった。 上の図は東京マラソン以外の関東の主要なマラソン大会の倍率の推移を表したものである。 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5 2012 2013 2014 2015 2016 2017

関西で開催されるマラソン

大会

京都マラソン 北九州マラソン 姫路城マラソン 愛媛マラソン 0   0.5   1   1.5   2   2.5   3   3.5   4   2012   2013   2014   2015   2016  

関東で開催されるマラソン大会

横浜マラソン ちばアクアラインマラ ソン

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12 なお、各マラソン大会の募集人数は横浜マラソンが2015年から2016年に3000人募集 人数を増やしている。ちばアクアラインマラソンは2014年から2016年にかけて1000 人減らしている。 横浜マラソンは去年から開催されており、倍率こそ下がっているが応募人数に換算してみると、 わずかに人気が増えている。ちばアクアラインマラソンは二年ごとに開催されており、倍率は上 がったり、下がったりと安定していない。横浜マラソンが新たに開催されるようになったことも ちばアクアラインマラソンの倍率低下に影響しているかもしれない。しかし横浜マラソンの応募 人数もほぼ横ばいなので、万単位で増え続けている東京マラソンと比較すると共通に増え方をし ているとは言えない。よって、東京マラソンは関東エリアで行われているマラソンという理由で 人気が増え続けているではないことがわかる。結論として、関東という開催エリアによる地理的 な要因は東京マラソンの人気に対して影響がないことが分かった。

3-5 仮説:開催時期

前章では、東京マラソンと開催エリアの関連性を検証した。次の章では、開催時期が東京マラ ソンの倍率に有意な影響を与えていると仮定して検証していきたい。東京マラソンは 2 月の後 半に開催されるので、その周辺の時期に開催されるその他のマラソン大会の倍率について調べて みる。

3-6 検証③

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5 2012 2013 2014 2015 2016 2017

2月に行われるマラソン大会倍率

京都マラソン 北九州マラソン 姫路城マラソン 横浜マラソン

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13 先ほども取り上げたマラソン大会の中から東京マラソンと同じ 2 月に行われるマラソン大会 の例を取り上げて検証を行う。見てわかる通り、これらのマラソン大会の中に一様な変化は見ら れない。マラソンは基本的に冬がシーズンであり、それゆえ冬に行われるマラソン大会が多い。 しかしこのデータを見る限り、2 月というマラソンに適している時期だからという理由で各地の マラソン大会の倍率が上がるというわけではなさそうである。よって、開催時期が東京マラソン の人気の増加に有意な影響を与えているわけではないという結論に至った。

4-1 新たな仮説

ここまで検証を繰り返した結果、東京マラソンの倍率はランニングブームの影響を受けて増加 していると思われたが、他のマラソン大会の倍率に東京マラソンと同様の変化があまり見られな いことが分かった。そして東京マラソンは関東でかつ、2 月に行われるという開催エリア、開催 時期の要因で倍率が増加し続けているわけではないということが分かった。故に、東京マラソン に応募する人々は「他のマラソン大会ではなく、東京マラソンを走りたい」と思って応募してい ることになる。そしてその原因は、他のマラソン大会にはない、何らかの東京マラソンにしかな い特色によるものではないかと考えられる。

4−2 仮説:東京マラソンの特色

先の章でも述べた通り、東京マラソンの人気が増え続けている要因として、他のマラソン大会 にはない東京マラソンにしかない特色があると考えられる。その特色とは果たして何なのか。探 るべくして、私は実際にマラソン大会を走った経験のある人に直接インタビューをするという方 法をとった。協力していただいたのは私のアルバイト先の社員M さん。M さんはマラソン歴5 年で、東京マラソンに加えて大阪マラソンと神戸マラソンを完走した経験がある。関西から東京 に移住してきて二回目の東京マラソン応募で当選し、2016年2月に東京マラソンを実際に走 られた方である。そのため、大阪マラソンや神戸マラソンと比較して東京マラソンの優れている 部分はどこなのかを具体的に聞くことができた。そのインタビューの中で、東京マラソンの特色 として考えられる候補がいくつか挙がった。以下がその候補である。 1. 沿道の観客の数が多い 2. EXPO の出展ブースの数が多い 3. 完走率が高い・コースが比較的楽で、記録が出やすい 4. ボランティアの数が多く・手厚い 5. メディアへの露出度が高い 6. 外国人も比較的多く参加している M さんにインタビューをした結果、これらの候補が挙がってきた。ただし、一個人にインタビ

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14 ューしただけで、これらの要因が東京マラソンの人気が増え続けている理由として正しいと言い 切ることはできない。よってここからは東京マラソンの特色と推測されるこれらの候補を仮説と して取り上げ、それを裏付ける根拠を模索して検証していきたいと思う。

5−1 検証①

先ほど挙げた仮説の一つ目の沿道の観客の数について検証していく。観客の数が多いというこ とは、それだけ注目度が高いということを示す。そして観客の数が多いということはそれだけ沿 道から聞こえる声援の大きさも大きいということである。マラソン選手にとって沿道からの声援 というものは必要不可欠であり、その声援は大きな力になるという。観客が多く、それだけの声 援があるマラソン大会に出たいと思うのは当然のことであり、人気が増えていくことにつながる。 それでは、東京マラソンの観客の数について見てみよう。 ※観衆人数は各大会により算出方法が違うため、参考データである。 ※東京マラソンのみ2016年、その他は2015年のデータのもの このデータを見ると東京マラソンの観衆の人数の多さは一目瞭然である。国内では神戸マラソン と比較して見ても圧倒的に多い。他のワールドマラソンメジャーズ大会と比較してみてもシカゴ マラソンにこそ劣るが、世界規模でみても多い観衆人数である。よって、東京マラソンの観衆人 数が多いという仮説は実証された。 0 500,000 1,000,000 1,500,000 2,000,000 東京マラソン 神戸マラソン ボストンマラソン ロンドンマラソン シカゴマラソン

観衆人数

系列1

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15

5−2 検証②

二つ目の仮説、EXPO の出展ブースの数が多いかどうかついて検証していきたい。まず EXPO とは辞書で開くと博覧会のことで、東京マラソンや大阪マラソンなどの大きいマラソン大会では ゴールの近くの大きな施設(東京マラソンの場合:東京ビッグサイト 大阪マラソンの場合:イ ンテックス大阪)を使い、そのマラソンに協賛している企業や地域団体などがセールやイベント を開催することである。そのEXPO もマラソン大会の一つの醍醐味になっており、多くのマラ ソンランナー、観客が訪れる。東京マラソンと大阪マラソンともに大会当日の三日前から大会当 日の前日にかけて開催される。大会当日だけでなく、その前から様々なイベントを行うことによ ってマラソン大会の注目度を高めようとしていることが伺える。よって、EXPO のクオリティ や規模というものも東京マラソンが人気になっている要因の一つになっているのではないかと いう仮説が生まれた。実際に東京マラソンのEXPO がどの程度のクオリティ、規模があるのか 大阪マラソンとの比較で検証してみたいと思う。(この章の検証以降、比較対象としては大阪マ ラソンを用いることにする) まず協賛している企業の数と出展ブースの数について東京マラソンと大阪マラソンで比較し てみよう。

東京マラソン協賛企業

プレミアパートナー:東京メトロ メジャーパートナー:スターツ、山崎製パン株式会社、アシックスジャパン株式会社、大塚製薬 株式会社 その他23社 計28社

大阪マラソン協賛企業

ミズノ株式会社、ダスキン株式会社、大和ハウス工業株式会社、久光製薬株式会社、コカ・コー ラ、SEIKO ホールディングス株式会社 他13社 計19社 0 10 20 30 東京マラソン協 賛企業 大阪マラソン協 賛企業 系列1

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16 以上のようになっている。東京マラソンと大阪マラソンで約10社の差がある。 それでは、EXPO の出展ブースの数はどうか。 出展ブースの数の差は20とさほど差はない。東京マラソンも大阪マラソンも数多くのブースを 出展しているようだ。 出展ブースの数出展ブースのクオリティやバラエティに目を向けてみると、東京マラソン EXPO ではパートナー企業や一般企業はもちろんのこと、23区の中から何区かが地域団体と して参加しており、日本のみならず海外の地域団体も複数出展している。その他国内の観光協会、 海外の政府観光庁、一般財団法人など企業以外にも多彩なバラエティに富んでおり、様々なユニ ークな体験ができるようになっている。一方大阪マラソンEXPO の方を見てみると、東京マラ ソンと同じく、一般企業以外にも様々な種類のブースがある。大阪ならではの食べ物の屋台や地 域団体の出展も複数ある。東京マラソンと大阪マラソンに関して、出展ブースのクオリティと規 模に差異はあまり見られないようだ。つまり、東京マラソンの人気が増え続けることを説明する 理由には不十分ということである。 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 130 140 東京マラソン EXPO 大阪マラソン EXPO 系列1

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5−3 検証③

三つ目の検証に入っていく。東京マラソンは完走率が高く、比較的走りやすいコースとなって いるかどうかについての検証である。ランニングブームが起きているここ最近では、初心者のラ ンナーが増えていることが考えられる。そんな初心者はまずマラソンを完走しきることを目標に 頑張るのではなかろうか。そう考えると走りやすいコースをまずは走ろうとすることが推測でき る。東京マラソンが走りやすいコースなのであれば、その要因も倍率が増えている一つの原因に なり得る。完走率が高いと数値的なデータが出ているのであればなおさら初心者は参加したがる と予測できる。 まず東京マラソンのコースの高低を見てみる。 最初の都庁を出発してから長い下り坂があるが、それ以降は平坦な道が続く。最後に若干の登 り坂があるが、比較的楽なコースと言える。 大阪マラソンのコースは最初に2回の大きなアップダウンがあり、その後平坦な道のりが続くが、

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18 最後にもう一度大きなアップダウンがある。初めてマラソンを走る初心者にとっては厳しいコー スになっている。 それでは完走率はどうなっているのか。2016年のデータで大阪マラソンと比較してみた。 東京マラソンは3万6172人のランナーが参加し、3万5165人が完走を果たし、完走率は 95.9%、大阪マラソンは3万298人が参加し、完走を果たしたのは2万9431人で、完走 率は97.1%であった。数値だけ見ると、両方にそれほど差異はない。むしろ完走率は大阪マ ラソンの方が高い。よって検証の結果、一概に東京マラソンの方が走りやすいとは言えない結果 となった。しかし、参加定員に対しての応募人数は圧倒的に東京マラソンの方が多いので、長年 マラソン大会に出続けているベテランが抽選で落ちてしまうことがある。故に初めてフルマラソ ン大会に参加するというランナーが東京マラソンには多いのではないかという推測ができる。残 念ながら、それぞれの大会の初参加者率までを調べることはできなかったため、それについての 検証はできていない。

5−4 検証④

次の検証は、ボランティアの数と待遇の良さについてである。マラソン大会にはそのランナー をサポートするボランティアの人々がいる。そのボランティアの数や質というのもマラソン大会 に好印象を持たせる一つの要素である。ボランティア待遇の良いマラソン大会は人気を集めるは ずである。東京マラソンはボランティアの数や待遇は大阪マラソンと比較して高いのか、その点 を検証していきたい。 まずボランティアの人数はどの程度なのか。 東京マラソンのボランティアの人数は約11000人、大阪マラソンのボランティアの人数は約 10000人でその差は1000人であり、さほど人数に大きな差があるわけではない。ボラン ティアの中でも様々な種類のボランティアがあるが、これはすべてのボランティアの人数の合計 で比較している。 0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 東京マラソン 大阪マラソン

ボランティアの人数

系列1

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19 では、それぞれのボランティアに関しての質に優劣はあるのか。その点について探っていきた い。 まず東京マラソンのボランティア体制についてみていく。ボランティアの構成は「リーダー」 「リーダーサポート」「メンバー」の3つから成り立っており、リーダーには大会開催の半年前 頃から研修が行われている。一般のボランティアは約3ヶ月前から募集され、大会の前に開かれ るボランティア活動説明会への参加が義務づけられる。そのような準備を前段階として行ってい る。そして大会当日には、15〜20人が一つのグループとなり、リーダーがそのグループの指 揮をとり、リーダーサポートがその補佐をするという組織構造がしっかりなされている。また、 ボランティアの種類には「給水・給食」「給水・給食以外」「多言語対応」の大きく分けて三つあ る。「給水・給食以外」のメンバーにはそれぞれ「会場誘導」「コース整理」「フィニッシャータ オル配布」「完走メダル配布」などといった、複雑多岐にわたる役割が与えられている。「多言語 対応」のボランティアメンバーはおよそ1000人である。それらのボランティアをグループご とにスタート地点、フィニッシュ地点、コース途中9箇所に細かく配置して効率よく対応してい る。東京マラソンのボランティアは準備段階から、役割分担までしっかりしているという点でク オリティに関して非の打ち所がない。 大阪マラソンのボランティアについて見てみよう。ボランティアの募集は団体ボランティアと 個人ボランティアの二つに分かれており、それぞれ5月、6月に募集が始まる。大体東京マラソ ンの募集と同じくらいのタイミングである。東京マラソンはどの役割にもグループごとに活動し ていたが、大阪マラソンでは団体と個人で分けているところが異なる部分である。どちらがいい という優劣はつけ難いが、強いて言うのであればグループごとに活動したほうが、情報の伝達は しやすく、指示が隅々まで行きわたりやすいので機能しやすいのではないかと思う。大阪マラソ ンのボランティアの種類については東京マラソンほど細かく分類されているわけではなく、各エ リアに配属されたボランティアメンバーでそのエリアの役割をすべてこなすという方法でやっ ている。 このように比較してみると、ボランティアの活動内容自体に大きな差があるわけではなさそう だが、組織体制の敷き方に若干の差があるように思う。東京マラソンの方が、準備から組織体制 において優れていると言えないことはない。しかし、それが東京マラソンの人気に関係している のかというと疑問である。大阪マラソンと比較して、圧倒的にボランティアの質が高く、それが 理由で東京マラソンを選ぶ、とまでの選択行動を応募者がとっているとは考えづらい。故に、ボ ランティアの数と質が東京マラソンの人気に有意な影響をもたらしているとは言い難い。

5−5 検証⑤

5つ目の検証として、東京マラソンのメディアへの露出度の高さについて調べていきたい。人気 になってきているということは知名度が高くなってきているということを意味している。その知 名度を高めるためにメディアを通した宣伝広告に力を入れている可能性は高い。東京マラソンの

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20 人気の高さの原因をメディアへの露出度を調べることによって検証していきたいと思う。 メディアの中でもテレビとラジオで考えていきたい。まずは CM の有無である。東京マラソ ンはテレビ CM を大会の事前に放映している。前回の2016年大会では女優の堀北真希を主 人公として抜擢し、大々的に放映していた。その上放送範囲は全国に及んでいる。 一方大阪マラソンは、テレビ CM は放映していない。地下鉄の駅のホームでのアナウンス告 知する程度である。極めてローカルな範囲でしか宣伝を行っていない。 次に大会当日のテレビ放送、ラジオ中継についてであるが、東京マラソンは放映権を隔年でフ ジテレビと日本テレビで担当しており、ラジオ中継についてもニッポン放送とアール・エフ・ラ ジオ日本が隔年で担当している。名だたるテレビ局、ラジオ局が担当し、全国規模で放送される。 (全国放送されるのは選考会の部である第一部のみ) 大阪マラソン大会当日の放送は MBS テレビと読売テレビが午前の部と午後の部に分けて放 送するという手段をとっている。放送範囲は関西ローカルの範囲に留まっている。ラジオ放送は なく、インターネットチャンネルでの生放送が行われているようだ。東京マラソンに比べて放映 圏は大きく劣っている。 これだけ放映圏の範囲が違うことは、つまりそれぞれの大会の注目度の違いを表している。そ の注目度の一つの指標として招待選手、エリート選手の数や質の違いが挙げられる。招待選手と は抽選の対象にならない、大会側が推薦する選手たちのことである。エリート選手とは、一般の 枠とは別のエリート枠で参加できる一定の基準の記録を保持している選手たちのことである。そ の招待選手、エリート選手に東京マラソンと大阪マラソンでは大きな違いがある。東京マラソン の招待選手、エリート選手の数は国内、国外合わせて約1200人いる。(2016年)大阪マ ラソンは招待選手が約20人に加えて、エリート枠ではなく、市民アスリート枠で約1000人 の定員が設けられている。(2016年)選手の質でみると東京マラソンのほうが圧倒的に有名 な選手が多く参加している。また、東京マラソンはオリンピックや世界選手権の選考会として開 催されていることもあり、注目度は高い。総じて考えると東京マラソンの方が注目度が高い分、 メディアでも大きく取り上げられるため、人気につながりやすいと言えるのではないか。

5−6 検証⑥

次に外国人のランナーが多いかどうかの検証をしていきたい。ここ最近日本はインバウンドと 騒がれており、外国籍の人口の割合が増えつつある。ますます増えていく外国人の中にはマラソ ンを趣味としている人々も多くいるであろう。東京マラソンが人気になってきている一つの要因 として、そういった外国人からの参加が多くなってきているのではないかという仮説を立てた。 その検証を大阪マラソンとの比較で検証していきたいと思う。

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21 上の図はそれぞれ東京マラソンと大阪マラソンの外国人参加者数を出身国別にまとめたもの である。(2016年データより)東京マラソンの外国人参加者の人数は約5000人いる。一 方、大阪マラソンは外国人参加者の人数は約3000人である。やはり東京マラソンの方が外国 人の枠が多いようである。外国人参加者の出身国を見てみると、東京マラソンと大阪マラソンの 両方で台湾が一番多い結果になっている。2位、3位においても中国、香港が両方を占めている。 日本に中国系の移民が増えてきている影響から考えれば、妥当な結果である。注目したいのは4 位以下である。東京マラソンでは、4位がアメリカ、5位がイギリスとなっており欧米の外国人 の参加者も多く参加している。大阪マラソンでは4位、5位がシンガポールとタイになっている。 東京マラソンに比べて大阪マラソンはアジア、東南アジアの方に地域が集中している。冒頭にも 述べたが、東京マラソンはワールドマラソンメジャーズのうちの一つで世界的に有名なマラソン 大会であり、広く知られている。その結果として世界の様々な国の外国人が参加してくる。そう 考えると、人数的にも規模的な点においても東京マラソンは外国人からも人気を集めている。 1730 898 682 596 247 190 169 152 125 台湾 中国 香港 アメリカ イギリス オーストラリア 韓国 イタリア ドイツ

東京マラソン外国人参加者出身

系列1 1164 1076 222 159 149 台湾 香港 中国 シンガポール タイ

大阪マラソン外国人参加者出身

系列1

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. 結論

ここまで数多くの仮説をたて、検証を行ってきた。その総括とともに結論を述べていきたい。 東京マラソンには、ただマラソンを走りたいと思うだけでなく、東京マラソンを走りたいと思わ せる特色があると論じてきた。その特色こそが他のマラソン大会よりも圧倒的な人気を誇る理由 である。そして人気の理由となり得る東京マラソンならではの特色の候補をいくつか挙げ、それ が正しいのかどうかを検証してきた。そして、正しいと実証されたのは次の三つの特色である。 1. 沿道の観客数が多い 2. メディアへの露出度が高い 3. 世界各国から外国人が多く参加している これら3つの特色が東京マラソンの人気が増え続けている理由として適当であると結論付けた。 総じて言えることは、日本の中で圧倒的に注目度が高いマラソン大会であることである。そんな 注目度の高いマラソン大会に出て、たくさんの観客からの声援を受け、完走を目標に頑張ること はとても気持ちいいだろう。特にマラソンはスポーツ経験者でなくてもチャレンジできるもので あり、今まで運動面において注目されることがなかった人々にとってみれば、新鮮な気持ちにな れるだろう。また、過去にスポーツをやっていた人でも再び若い頃の自分に戻れる、そんな実感 を得ることができるのではないだろうか。そんな様子をテレビやラジオで全国的に放映すれば、 それに刺激され東京マラソンに出たいと思う人々もたくさんいるはずである。その循環が生まれ ると、年々応募人数は上昇していき、人気が上がっていくのではないか。また、エリート選手た ちの選考会を行うことでマラソン大会レースとしての緊張感を持たせている。そういった点にお いても注目度を高め、人気を獲得しようとしている。ニューイヤー駅伝で活躍した実業団の選手 も数多く出場することが期待され、マラソン一ファンとしても見たくなるような大会でもある。 そのようにして知名度を高めることが応募数の増加にもつながってくるのではないか。 そしてそこに追い風をかけるかのように、社会現象としてインバウンドが騒がれている。都心 は外国人移住者がどんどん増えている。先ほどデータで見たとおり、外国人でも多くの人々が東 京マラソンに参加しており、特にアジアや欧米出身の外国人が多く参加している。そんな様子を 知ったその国々の人々もまた、東京マラソンを走る自国の人々を見て感化され、マラソンを走り たくなる人々は多かれ少なかれいるのではないだろうか。いずれにしてもこれからさらに海外か らの移住者が増えることを考えれば、東京マラソンでの外国人に対する人気もどんどん上がって いくことが予想される。 この結論で述べたことが正しければ、東京マラソンはこれからさらに人気が上がっていくので はないかと思う。しかし、この論文で述べたことが東京マラソンの人気に影響を及ぼす要因をす べて網羅しているわけではないと私自身思っている。他のマラソン大会との比較も不十分な点は あり、もっと比較検証をしなければ断言できない部分もあるかもしれない。この論文を書いたこ とをきっかけにこれ以降東京マラソンにはもちろん、様々なマラソン大会に参加し、客観的意見 を述べるのではなく、主観的に自分の目で見てさらに理解を深められていけたら幸いである。

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おわりに

この卒業論文を書くとともに、2年間ご指導していただいた網倉教授に感謝の気持ちを 述べさせていただきたい。何かの答えを知りたい時、既存の答えを鵜呑みにするのではな く、まず疑うことから始める。そして自分なりに仮説を立てて、その仮説を実証し得る事 実を選択し、検証をしていく。そうして初めて自分の中で正しいと判断できる。そんな思 考の方法が身についたと思う。おかげでこの2年間で、ゼミで思考し、自ら発言していく 機会が多くなった気がしている。それも網倉教授のご親切なアドバイスがあったからだと 思っている。改めて感謝したい。社会人でも、既存の事実を鵜呑みにせず、自分で考え、 真否を問える人間でありたい。

参考文献

・東京マラソンと大阪マラソン 申込人数や倍率推移、コース比較

http://iroiro-kininaru.com/archives/3676.html

・東京マラソン

Wikipedia

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/東京マラソン 2012

・東京マラソン2017

http://www.marathon.tokyo

・フルマラソン2017年の人気・オススメ大会まとめ!

http://outinlook.com/2016/05/18/post-4690/

・大阪マラソン2016

http://www.osaka-marathon.com/sp/

TOKYO MARATHON 2016 OFFICIAL PROGRAM 東京マラソン2016公式

パンフレット

参照

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