どの伸長を促進。 5 プロジェクト は イ ン ク ル ー シ ブ な 教 育 を 可能とする 子どもの能力や発達状況に 左右されず,みな能動的に参 加可。個性が考慮され,除外 されない。みなを高く評価。 6 プロジェクト は「ソフトスキ ル」の練習を促 す 葛藤解決-,諸文化間-,コミュ ニケーション-,自我-,事象コ ンピテンシー等の獲得を促 進。 (Stamer-Brandt, 2010: 8 を参考にして筆者作成) (4) イニシアチブ(Initiative)には,主導権,率先, 発意,創意,自発性といった様々な意味がある。 このように本単語は多義的であり,文脈によっ て意味合いが変わるため,本稿ではイニシアチ ブと表記することとする。 (5) ペトラによると,ドイツの幼稚園においてプ ロジェクト活動の種類はさまざまある。例えば, 1週間でプロジェクト活動を完了させるよう な「プロジェクト週間(Projektwoche)」,さらに 短い時間でプロジェクト活動を行うような「ミ ニプロジェクト(Miniprojekt)」である。その他 に も ,「 プ ロ ジ ェ ク ト 指 向 の 活 動 (Projektorientiertes Arbeiten)」や「Kita プロジェ クト(Kita-Projekt)」等の種類がある。詳しくは, ペトラの主著S.65 を参照されたい。なお,本研 究で取り上げるミニプロジェクトも,ペトラが 述べるミニプロジェクトと同じ意味のものと する。 (6)「Erzieher/innen」は,「Lehrer/innen」と区別され, 教育者,保育者などの訳語があてられることが ある。本稿では教育者と訳すこととする。 (7) 範例学習について,ペトラとテクストールは 次のように述べている。プロジェクト活動にお いて,「小麦からパンへ,ブタからソーセージへ, ニワトリから卵へといったように,同じ道を歩 むこと,同じ方法を採ること,ただテーマを変 える」(Stamer-Brandt, 2010: 53)というのは重要 ではない。むしろ,できる限り多くの子どもた ちや様々な状況に繰り返し関連し,そして類似 する状況に転用されうるような事例を取り上 げることが重要となる(Stamer-Brandt, 2010: 53)。 また,プロジェクト活動は非常に時間がかかる ため,テーマが広範に及んで扱われることはな い。したがって,「一つが全体の鏡」(Textor, 2013: 21)となるようなテーマ,活動を展開していく ことが求められる。 引用および参考文献 深澤広明・渡邉眞依子:学習論としてのプロジェ クト・アプローチ ―ドイツにおける教授学的 位置づけと幼児教育での展開―,幼年教育研究 年報,第28 巻,25-35 頁,2006 年.
Klaus, Hübner: Die Welt achten und pflegen: Projekt und Aktionsideen mit Kindern zur Nachhaltigkeit, Kindergarten heute, Bd. 1, S.16-20, 2012.
小玉亮子:PISA ショックによる保育の学校化―
「境界線」を越える試み―, 泉千勢・一見真理
子・汐見稔幸「世界の幼児教育・保育改革と学 力」,75 頁,明石書店,2008 年.
Martin, Textor: Projektarbeit im Kindergatern, Books on Demand, 2013.
Monika, Klages: "Käfer laufen lieber, weil fliegen anstrengender ist.": Projektarbeit in der Praxis, Kindergarten heute, Bd. 9, S. 14-16, 2010.
Monika, Klages: Materialien und Phänomene der Natur, Kindergarten heute praxis kompakt: Themenheft für den pädagogischen Alltag. Projektarbeit mit Kleinstkindern. Beispile aus der Praxis, S.39-46, 2013.
Petra, Stamer-Brandt: Projektarbeit in Kita und Kindergarten: planen, durchführen, dokumentieren, Herder, 2010.
Simone, Winkelmann: Wasser ist mehr: Erkennen Sie die Vielfältigkeit von Wasserprojekten, Kindergarten heute, Bd. 9, S. 26-27, 2010.
季節による太陽の日周運動の変化の認識に関する研究
Questionnaire about student’s recognition of solar diurnal motion changings by the
seasons.
金井 司*,久保田善彦* KANAI,Tsukasa*,KUBOTA,Yoshihiko* 宇都宮大学* Utsunomiya University* [要約]中学校の天文学習のうち,季節による太陽の日周運動の変化について,該当する単 元の授業を終えたばかりの生徒に,季節による太陽の動きの変化を天球モデル上に描画さ せたところ正答率は 3 割に満たなかった。解答を「南中の位置」と「日の出,日の入りの方 位」の 2 つの要素について分析したところ「南中位置」に比べて「日の出,日の入りの方位」 の理解が有意に低いことがわかった。さらに,誤答を分析すると「南中の位置」については, 南中が天頂にまで達してしまう誤答が多く,「日の出,日の入りの方位」では,季節が変化 しても日の出,日の入りが常に真東から真西であるという誤答が多いことがわかった。また, 天球モデル上に正しく太陽の動きの変化を表すためには,宇宙視点から見た地球と太陽の 位置関係を理解することも重要であるという知見を得た。 [キーワード]中学校理科,天文学習,太陽の年周運動,生徒の認識 1.はじめに 中学校の天文学習は難しく生徒は学びづらさ を感じている(懸 2004)。特に,太陽や星座の日 周運動や年周運動,月や金星の満ち欠けは,複数 の視点から観察される現象を統合して理解する 必要があるため,その困難性が指摘されている (たとえば 松森 1983,土田 1986,間處・林 2013, 荒井 2000)。本論では,天文学習の困難の解決に せまるために,「季節による太陽の日周運動の変 化」についての生徒の認識に着目する。 山崎ら(2001)の調査結果によると,太陽の軌 道の図を何種類か示して,その中から夏至の太陽 の日周運動の軌道を選択する問題の正答率は約 6 割となっている。一方,柳本(2015)は,季節に よる太陽高度の変化に比べて,日の出,日の入り の位置が変化する認識が非常に低いといわれて きたとしている。 現在の学校教育の一般的な学習によって,南中 高度の変化と日の出,日の入りの方位の変化の生 徒の認識について調査している先行研究は見当 たらない。そこで,本研究では生徒の該当単元学 習後の,季節による太陽の日周運動の変化につい て,南中高度と日の出,日の入りの方位の変化の それぞれの認識について調べることにした。 2.研究の方法 (1)対象 栃木県公立 M 中学校 3 学年生徒 70 名,栃木県 公立 N 中学校 3 学年生徒 228 名,計 298 名を対象 とした。なお,指導に関わった教員は両校合わせ て 3 名である。 (2)時期 2016 年 12 月,天文学習での季節による太陽の 動きの変化に該当する単元終了直後に質問紙調 査を実施した。(3)授業の展開 両校ともに A 社の教科書に準じて,該当単元 の授業を行った。季節による太陽の動きの変化 を理解するためには,「南中高度の変化」,「南中 高度と地軸の傾き」,「日の出,日の入りの方 位」の 3 点の理解が重要である。そこで,A 社お よび他社の教科書(A~E 社とする)を 3 点から 整理する。「南中高度の変化」及び,「南中高度 と地軸の傾き」は,調査した教科書会社のすべ てが,教科書内に解説をしている。「日の出,日 の入りの方位」は,A 社は季節による太陽の動き の変化を示した図の注釈に解説が書かれている のみである。「日の出,日の入りの方位」には各 社で差が見られる(表 1)。 表 1 教科書での解説項目 教科書での解説項目 A B C D E 南中高度の変化 ○ ○ ○ ○ ○ 南中高度と地軸の傾き ○ ○ ○ ○ ○ 日の出,日の入りの方位の変化 △ ○ △ ✕ ✕ ○:教科書本文中に解説あり,△:図の注釈で解説あり,✕:解説なし A 社の教科書を利用した授業展開は,以下の通 りである。はじめに,天体は天球上に表すことを 天球モデルである透明半球に太陽の日周運動を 記録することを通して理解させる。このとき,南 中や南中高度についても理解させる。次に,星の 1 日の動きを,天球モデルを使って表して,天体 は天球上を 1 日に 1 周する(日周運動)ことを理 解させる。また,地球上の観測地の緯度によって 同じ天体でも高度が変化することについても学 習させる。そして,季節によって観察できる天体 が変化することから,天体は日周運動だけでなく 地球の公転によって年周運動をしていることも 理解させる。最後に,季節による太陽の南中高度 の変化と気温の変化について理解させる。(表 2) 表2 該当単元の授業展開 時 学習活動 1 天体の位置と天球について理解する。 2 太陽の1 日の動きを透明半球に記録して調べる。 3 星の1 日の動きについて理解する。 4 観測地による太陽や星の動きの違いについて理解する。 5 太陽や星座の季節による移り変わりについて理解する。 6 季節による太陽の高度変化と昼夜の長さの変化を知る。 7 季節による気温の変化について理解する。 (4)質問紙調査の内容 設問1では,天球に見立てた透明半球(天球モ デル)上に,冬至・春分・夏至の太陽の軌道をそ れぞれ書き込ませた。設問2では,宇宙視点から 見た冬至と夏至のときの太陽に対する地軸の傾 きや天体の位置関係の様子について,図の中から 正しいものを選択させた。(資料1) (5)分析の方法 ①対象校の比較 各校の設問ごとの正解者数と不正解者数を χ2 検定したところ,設問 1(χ2(1)=0.017),設問 2 (χ2(1)=0.034)ともに人数の偏りに差が見られな かったため,両校の正答者数を合計して分析する こととした(表 3)。 表3 調査実施校の正解者数,不正解者数の比較 正解 不正解 設問1 M 中 19 51 N 中 58 170 設問2 M 中 44 26 N 中 154 74 ②設問 1 と設問 2 の正解者数の比較 設問1(天球モデルへの書き込み)では,南中 の位置が正しく,さらに日の出,日の入りの方位 も正しい解答を「完全正答」とし,その割合を調 べる。また,設問1と設問2(太陽に対する地軸 の傾き)の正答数をクロス集計し,χ2検定を使っ てこれらの理解の関連を調べる。 ③南中の位置の認識 設問1については,生徒の解答を,「南中の位置」 と「日の出,日の入りの方位」の2 つの要素につ いて以下の通り正答率を調べ,誤答を含めて解答 の特徴を分析する。
(3)授業の展開 両校ともに A 社の教科書に準じて,該当単元 の授業を行った。季節による太陽の動きの変化 を理解するためには,「南中高度の変化」,「南中 高度と地軸の傾き」,「日の出,日の入りの方 位」の 3 点の理解が重要である。そこで,A 社お よび他社の教科書(A~E 社とする)を 3 点から 整理する。「南中高度の変化」及び,「南中高度 と地軸の傾き」は,調査した教科書会社のすべ てが,教科書内に解説をしている。「日の出,日 の入りの方位」は,A 社は季節による太陽の動き の変化を示した図の注釈に解説が書かれている のみである。「日の出,日の入りの方位」には各 社で差が見られる(表 1)。 表 1 教科書での解説項目 教科書での解説項目 A B C D E 南中高度の変化 ○ ○ ○ ○ ○ 南中高度と地軸の傾き ○ ○ ○ ○ ○ 日の出,日の入りの方位の変化 △ ○ △ ✕ ✕ ○:教科書本文中に解説あり,△:図の注釈で解説あり,✕:解説なし A 社の教科書を利用した授業展開は,以下の通 りである。はじめに,天体は天球上に表すことを 天球モデルである透明半球に太陽の日周運動を 記録することを通して理解させる。このとき,南 中や南中高度についても理解させる。次に,星の 1 日の動きを,天球モデルを使って表して,天体 は天球上を 1 日に 1 周する(日周運動)ことを理 解させる。また,地球上の観測地の緯度によって 同じ天体でも高度が変化することについても学 習させる。そして,季節によって観察できる天体 が変化することから,天体は日周運動だけでなく 地球の公転によって年周運動をしていることも 理解させる。最後に,季節による太陽の南中高度 の変化と気温の変化について理解させる。(表 2) 表2 該当単元の授業展開 時 学習活動 1 天体の位置と天球について理解する。 2 太陽の1 日の動きを透明半球に記録して調べる。 3 星の1 日の動きについて理解する。 4 観測地による太陽や星の動きの違いについて理解する。 5 太陽や星座の季節による移り変わりについて理解する。 6 季節による太陽の高度変化と昼夜の長さの変化を知る。 7 季節による気温の変化について理解する。 (4)質問紙調査の内容 設問1では,天球に見立てた透明半球(天球モ デル)上に,冬至・春分・夏至の太陽の軌道をそ れぞれ書き込ませた。設問2では,宇宙視点から 見た冬至と夏至のときの太陽に対する地軸の傾 きや天体の位置関係の様子について,図の中から 正しいものを選択させた。(資料1) (5)分析の方法 ①対象校の比較 各校の設問ごとの正解者数と不正解者数を χ2 検定したところ,設問 1(χ2(1)=0.017),設問 2 (χ2(1)=0.034)ともに人数の偏りに差が見られな かったため,両校の正答者数を合計して分析する こととした(表 3)。 表3 調査実施校の正解者数,不正解者数の比較 正解 不正解 設問1 M 中 19 51 N 中 58 170 設問2 M 中 44 26 N 中 154 74 ②設問 1 と設問 2 の正解者数の比較 設問1(天球モデルへの書き込み)では,南中 の位置が正しく,さらに日の出,日の入りの方位 も正しい解答を「完全正答」とし,その割合を調 べる。また,設問1と設問2(太陽に対する地軸 の傾き)の正答数をクロス集計し,χ2検定を使っ てこれらの理解の関連を調べる。 ③南中の位置の認識 設問1については,生徒の解答を,「南中の位置」 と「日の出,日の入りの方位」の2 つの要素につ いて以下の通り正答率を調べ,誤答を含めて解答 の特徴を分析する。 南中の位置については,南中高度が,冬至・春 分・夏至となるに連れて高くなっていき,最も高 い南中の位置が天頂に達しないものを正答とす る。誤答については,特徴によって分類し,それ ぞれの誤答がどの程度の割合で出現しているか を調べる。 ④日の出,日の入りの方位の認識 日の出,日の入りの方位については,季節によ り,日の出,日の入りの方位が「北東~北西」,「東 ~西」,「南東~南西」と 3 つに変化し,別れてい るものを正答とする。南中のときと同じように, 日の出,日の入りの変化についても誤答を分類し, 検討する。 「南中の位置」の正解者数と「日の出,日の入 りの方位」の正解者数を直接確率計算によって比 較し,理解の差についても調べる。 3.結果 (1)設問 1 と設問 2 の正解者数の比較 設問 1 の正解者数は 298 名中 77 名で,正答率 は 25.8%であった。設問 2 の正答者数は 298 名中 198 名で,正答率は 66.4%であった。 χ2検定の結果,人数の偏りが有意であった (χ2(1)=18.480,p<.01)。残差分析の結果,設問 2 に正解した群では設問 1 に正解する人数が多く なり,設問 2 に不正解だった群では設問 1 に正解 する人数が少なくなる(表 4)。 表4 設問 1 と設問 2 の正解者数,不正解者数 設問1 計 ○ ✕ 設問2 ○ 67 (22.5) 131 (44.0) 198 (66.4) 4.439 -4.439 ✕ 10 (3.4) 90 (30.2) 100 (33.6) -4.439 4.439 計 77 (25.8) 221 (74.2) 298 (100.0) ( )内は全解答中の割合(%)下段は調整された残差 (2)南中の位置の認識 南中の位置について正答した生徒は 298 名中 141 名で正答率は 47.3%である。日の出,日の入り の方位について正答した生徒は 298 名中 97 名で 正答率は 32.6%である(表 5)。 直接確率計算の結果,「南中の位置」と「日の出, 日の入りの方位」の正解者数の人数を比べると有 意に「南中の位置」の正解者が多いという差がみ られた(両側検定:p=0.003,p<.01)。 表 5 南中の位置と日の出,日の入りの方位の正解者数 正解 不正解 計 南中の位置 141 (47.3) 157 (52.7) 298 (100.0) 日の出,日の入りの方位 97 (32.6) 201 (67.4) 298 (100.0) ( )内は全解答者中の割合(%) 南中の位置について,最も多い誤答は,南中の 位置が天頂に達する「天頂通過型」で,全解答の うち 15.1%である。次に多い誤答は,正答と位置 は同じだが,季節の指定が間違っていたり,指定 が抜けていたりするなど,季節を間違えているも ので,14.4%である。 また,南中の位置が一つでも天頂を越えて,北 側半球に達している「北中型」などの誤答もみら れた。天球モデルを三次元にとらえられていない など,そもそも天球モデルの意味を理解できてい ない様子が見られる解答や,問題文の意味が理解 できていないと思われる誤答は「その他」とした。 無解答のものは「無解答」として分類した(図 2 および表 6 参照)。 (3)日の出,日の入りの方位の認識 日の出,日の入りの方位において最も多かった 誤答は,季節が変化しても日の出,日の入りが常 に真東から真西になる「真東・真西型」で全解答 中 26.5%である。次に多いのは,日の出,日の入 りの方位が季節によって変化しているが,本来の 方位と明らかに異なっている解答(春分のときの 日の出の方位が南東など)である。これを「方位 ズレ型」とした。この解答は 17.4%である。また, 南中同様に「その他」と「無解答」を分類した(図 2 および表 7 参照)。
表6 南中の位置についての解答パターン 南中位置正解 天頂通過型 北中型 その他 無解答 季節正解 141 (47.3) 30 (10.1) 6 (2.0) 26 (8.7) 21 (7.0) 季節不正解 43 (14.4) 15 (5.0) 16 (5.4) 計 184 (61.7) 45 (15.1) 22 (7.4) 26 (8.7) 21 (7.0) 表7 日の出,日の入りの方位についての解答パターン 方位正解 真東・真西型 方位ズレ型 その他 無解答 季節正解 97 (32.6) 48 (16.1) 32 (10.7) 26 (8.7) 21 (7.0) 季節不正解 23 (7.7) 31 (10.4) 20 (6.7) 計 120 (40.3) 79 (26.5) 52 (17.4) 26 (8.7) 21 (7.0) 表5・6 ともに( )内は全解答中の割合(%) 「完全正答」の例 「天頂通過型」の誤答例 「北中型」の誤答例 「その他」の誤答例 「真東・真西型」の誤答例 「方位ズレ型」の誤答例 図2 設問 1「天球モデルへの書き込み」解答例 4.考察 (1)設問 1 と設問 2 での正解者数の比較 設問 1 の正答率は,25.8%と該当単元の学習直 後の結果としては低い。太陽の軌道を選択肢から 選択した山崎らの調査結果の正答率の半分以下 となり,理解が不十分であることがわかる。 設問 2 を正しく認識しているほど,設問 1 の正 答数が多くなる。このことから,季節による太陽 の動きの変化を正しく理解し表現するためには, 宇宙視点から地球と太陽の位置関係を捉えるこ とも必要だといえる。 (2)南中の位置の認識 太陽の「南中の位置」の認識と「日の出,日の 入りの方位」の認識では,「日の出,日の入りの方 位」の認識が有意に低い。南中は生活時間帯に観 察ができるため,生活経験として季節によって南 中高度が変化することを経験している。一方で, 日の出,日の入りを見ることなどの生活経験は南 中の位置を体感することに比べて少ない。このこ とが関係していると考えられる。また,教科書の 記載は,南中は地上視点と宇宙視点から丁寧に解 説されているが,日の出,日の入りの方位の変化 の解説は十分でないことも要因と考えられる。 南中の位置における誤答については,南中が天 頂を通過してしまう誤答が多い。夏至の南中高度 は約 78.4°に達する。約 78.4°を見上げた観察 は,実際よりも真上に近いと感じる。そのような 生活経験から,夏には天頂に達していると感じて
表6 南中の位置についての解答パターン 南中位置正解 天頂通過型 北中型 その他 無解答 季節正解 141 (47.3) 30 (10.1) 6 (2.0) 26 (8.7) 21 (7.0) 季節不正解 43 (14.4) 15 (5.0) 16 (5.4) 計 184 (61.7) 45 (15.1) 22 (7.4) 26 (8.7) 21 (7.0) 表7 日の出,日の入りの方位についての解答パターン 方位正解 真東・真西型 方位ズレ型 その他 無解答 季節正解 97 (32.6) 48 (16.1) 32 (10.7) 26 (8.7) 21 (7.0) 季節不正解 23 (7.7) 31 (10.4) 20 (6.7) 計 120 (40.3) 79 (26.5) 52 (17.4) 26 (8.7) 21 (7.0) 表5・6 ともに( )内は全解答中の割合(%) 「完全正答」の例 「天頂通過型」の誤答例 「北中型」の誤答例 「その他」の誤答例 「真東・真西型」の誤答例 「方位ズレ型」の誤答例 図2 設問 1「天球モデルへの書き込み」解答例 4.考察 (1)設問 1 と設問 2 での正解者数の比較 設問 1 の正答率は,25.8%と該当単元の学習直 後の結果としては低い。太陽の軌道を選択肢から 選択した山崎らの調査結果の正答率の半分以下 となり,理解が不十分であることがわかる。 設問 2 を正しく認識しているほど,設問 1 の正 答数が多くなる。このことから,季節による太陽 の動きの変化を正しく理解し表現するためには, 宇宙視点から地球と太陽の位置関係を捉えるこ とも必要だといえる。 (2)南中の位置の認識 太陽の「南中の位置」の認識と「日の出,日の 入りの方位」の認識では,「日の出,日の入りの方 位」の認識が有意に低い。南中は生活時間帯に観 察ができるため,生活経験として季節によって南 中高度が変化することを経験している。一方で, 日の出,日の入りを見ることなどの生活経験は南 中の位置を体感することに比べて少ない。このこ とが関係していると考えられる。また,教科書の 記載は,南中は地上視点と宇宙視点から丁寧に解 説されているが,日の出,日の入りの方位の変化 の解説は十分でないことも要因と考えられる。 南中の位置における誤答については,南中が天 頂を通過してしまう誤答が多い。夏至の南中高度 は約 78.4°に達する。約 78.4°を見上げた観察 は,実際よりも真上に近いと感じる。そのような 生活経験から,夏には天頂に達していると感じて いる生徒がいると推測する。また,季節の選択が 間違っている生徒は,太陽の軌道の図が季節と対 応していない。教科書の図を単純に図形として暗 記している可能性がある。 (3)日の出,日の入りの方位の認識 季節に関わらず日の出,日の入りが真東から真 西になる生徒は,「太陽は東から昇り,西に沈む」 という小学校の学習の,「東と西」を「真西と真東」 と捉えている可能性が高い。教科書での日の出, 日の入りの方位の扱いは,「南中の位置」と比較し て限定的であることも原因だと考える。 5.おわりに 季節による太陽の動きの変化についての生徒 の認識は低い。 季節による太陽の動きの変化の正しい理解の ためには,生徒の生活時間帯にない日の出から南 中,日の出までを定期的に,かつ定点から観察す る必要がある。そのためには,学校教育での時間 的,空間的な制限を越えた活動が求められる。さ らに,宇宙からの視点と,地上からの視点(天球 モデル)を統合して考えるような,視点移動を伴 った思考も求められる。このような条件を解決す る教材,教具の工夫が求められる。 また,天球モデルを三次元に捉えられていなか ったり,意味を理解できていなかったりする生徒 も全体の 8.7%いる。この質問紙では理解を測定す ることは難しい生徒である。新たな調査方法の開 発と共に,これらの生徒がワークシート上の天球 モデルをどのように認識しているのかを調査す る必要がある。 引用・参考文献 懸秀彦:理科崩壊―小学校における天文教育の 現状と課題―,天文月報,12 月号,pp.726-736,2004 荒井豊:理科における視点移動能力の習得に関 する一考察―「地球の自転」の指導におい て―,理科教育学研究,41(1),pp.25-35, 2000 有馬朗人ほか 62 名:「新版 理科の世界3」,大 日本図書,pp.197-254,2016 細矢治夫,養老孟司,丸山茂徳ほか 27 名:「自 然の探究 中学校理科3」,教育出版, pp.154-205,2016 間處耕吉,林武広:視点移動能力の習得を重視し た金星の見え方の新指導,地学教育,66(2), pp.31-41,2013 松森靖夫:児童生徒の空間認識に関する考察(Ⅲ) ―視点移動の類型化について―,日本理科教 育学会研究紀要,24(2),pp.27-34,1983 岡村定矩,藤島昭ほか 49 名:「新編 新しい科 学3」,東京書籍,pp.178-229,2016 霜田光一,森本信也ほか 29 名:「中学校 科学 3」,学校図書,pp.181-238,2015 土田理,小林学:児童・生徒の天文分野における 視点移動能力の発達過程と関係する基礎的 研究,地学教育,39(5),pp.167-176,1986 塚田捷,大矢禎一,江口太郎,鈴木盛久ほか 58 名: 「未来へひろがるサイエンス3」,啓林館, pp.34-80,2016 柳本高秀:天文分野における日周運動と年周運 動に関する一考察”,北海道立教育研究所附 属理科教育センター研究紀要 (27),pp.50-53,2015 山崎良雄,高橋典嗣,宮脇陽:中学校理科にお ける天文分野に関する基礎研究(III : 自然 科学編)”,千葉大学教育学部研究紀要. III, 自然科学編 49, pp.43-57,2001 付記 本研究は,JSPS 科研費 26282030,26590228 の助成 を受けたものである。