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英国診断・管理ガイドライン2005

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(1)

BJH ガイドライン

多発性骨髄腫の診断と治療に関するガイドライン

2005 年)

Guidelines on the diagnosis and management of multiple myeloma 2005

Alastair Smith,

1

Finn Wisloff

2

and Diana Samson

3

on behalf of the UK Myeloma Forum, Nordic Myeloma Study

Group and British Committee for Standards in Haematology

1

Department of Haematology, Southampton University Hospital NHS Trust, Southampton General Hospital,

Tremona Road, Southampton, UK,

2

Department of Haematology, Ulleval University Hospital, University of

Oslo, Norway, and

3

Department of Haematology, Imperial College School of Medicine, Hammersmith Hospital,

London, UK

Keywords: myeloma, myeloma therapy, imaging, stem cell transplantation, chemotherapy.

英国骨髄腫フォーラム(UKMF)・北欧骨髄腫研究会(NMSG)・英国血液学標準化委員会(BCSH)

原典:http://www.bcshguidelines.com/pdf/UKNordic_070705.pdf

2001 年に「英国血液学標準化委員会(BCSH)から委託を

受けた英国骨髄腫フォーラム

(UKMF)のガイドライン作

業部会により骨髄腫の診断と治療に関するガイドライン」

が発行されました(

UK Myeloma Forum; British Committee

for Standards in Haematology, 2001

)。その同じ年に、北欧

骨髄腫研究会((NMSG)により、1995 年に初版が発行され

たガイドライン(スカンジナビア語)の第2版が発行され

ています。これらのガイドラインは共にエビデンスに基づ

いたものを目指しており、その推奨が類似していたことが

明らかになりました。その後、両グループのメンバー間で

非公式な情報交換が行われて、この共通した最新のガイド

ラインを発行するという決定がなされました。

この改定された最新のガイドラインには、画像検査と骨

病変の管理に関する新しいセクションが含まれています。

更に、疾病分類と病期分類における新しい進展や、サリド

マイドとボルテゾミブ、及び強度縮小同種移植法などの新

しい治療アプローチの適用についても記載されています。

1. ガイドライン作成手順と骨髄腫の特徴

2. 診断・検査・治療適用

3. 骨髄腫における画像診断技術の適用

4. 疼痛管理(ペイン・コントロール)

5. 高カルシウム血症と骨病変

6. 腎機能障害

7. 貧血の管理

8. 骨髄腫の感染症

9. その他の合併症

10. 骨髄腫専門治療の概要

11. 初期化学療法

11.1. 大量化学療法前の初期化学療法

11.2. 大量化学療法の予定がない場合の初期化

学療法(従来型治療法)

11.3. 腎不全患者における化学療法

11.4. 初期治療で難治性の患者

12. 大量化学療法と移植療法

13. 同種幹細胞移植

14. 維持療法

15. 再発/進行性病変の管理

16. 病後期の管理

17. 患者への情報提供と支援

1. ガイドライン作成手順と骨髄腫の特徴

1.1 ガイドライン作成手順

このガイドラインの作成は次のステップで行われまし

た。

多くの議題に関して、両組織の代表者による作業部会

の設置。

発行済みの英国と北欧の

2001 年版ガイドラインの再

調査。

コーコランス・データベースや

Medline、及びインタ

ーネット検索など、2004 年 11 月 30 日までの主要な

医学文献の調査。この日以降に発表された主な論文も

関連する最終起草に加えられました。

主要な会議報告書の調査。

文献調査と専門家の意見一致に基づいた推奨案作成。

他の専門分野の代表者との協議会開催。

英国国際骨髄腫財団(IMF)を通じた患者擁護団体の参

(2)

画。

UKMF 実行委員、BCSH 委員会、及び NMSG 地域

コーディネータによる審査。

英国血液学会

(BSH)メンバー100 名による公聴会審議。

このガイドラインは、骨髄腫の有効な臨床管理戦略にキ

ーとなる領域を定めています。証拠レベルと推奨グレード

は、

表1と表2にまとめてあります。化学療法のプロトコ

ルや投与量の詳細は含んでいません。それは本稿の範疇を

越えています。安全機関に必要な一部のプロトコルと詳細

情報の提供、化学療法薬剤の投与と管理、及び関連する医

療介護については、個々の癌センター/ネットワークの責

任です(或いは、他の国々と同じ)。本文内で、薬剤用量

について記載されている箇所は、主に特殊な臨床試験か、

腎臓障害に対する用量調節の局面で使用される投与量に

関するものです。本ガイドラインの著者らは、治療法、薬

剤、及び投与レジメンが正確であることを保証するために

大変な努力を行いました。しかし、現在進行中の研究や臨

床経験からもたらされる情報の変化や、著者間に存在する

許容範囲内の意見の相違、及び製本段階における人為的ミ

スの可能性があるため、医師が臨床上の決定を下す際には、

個々の患者毎に判断することが必要です。医師は薬剤の処

方や投与を行う前に、製品情報や投与量をチェックしなけ

ればなりません。

共同執筆者は、

補足資料

1

に記載しています。このガイ

ドラインの最新版は、BSH, BCSH, UKMF、及び NMSG

のウェブサイトで入手可能です。2008 年 9 月には全面改

訂を予定しています。

1. 証拠(エビデンス)レベル

a

無作為化対照比較試験のメタ解析により得られたエビデンス

b

少なくとも

1 件以上の無作為化対照比較試験により得られたエビデンス

Ⅱa

第Ⅱ相臨床試験や対照症例比較試験を含んだ、少なくとも

1 件以上の十分計画された非無作

為化試験により得られたエビデンス

Ⅱb

少なくとも

1 件以上の他の種類の十分計画された準実験研究(即ち観察研究などの計画的な

医療介入を行わない研究)により得られたエビデンス

十分計画された非実験記述的研究により得られたエビデンス。抄録の形でのみ発表されてい

る、メタ解析、無作為化対照比較試験、又は第Ⅱ相試験により得られたエビデンス

専門医委員会の報告書、又は一流の研究者の意見や臨床経験により得られたエビデンス

2. 推奨グレード

グレード

A

証拠レベルⅠ

a、Ⅰb

少なくとも1件以上の、一貫して特定の推奨課題に取り組んだ品質の良い無作為化対照比較

試験に基づく推奨

グレード

B

証拠レベルⅡ

a、Ⅱb、Ⅲ

無作為化対照比較試験では無いが、推奨課題について十分検討された研究に基づく推奨

グレード

C

証拠レベルⅣ

専門医委員会の報告書や一流の研究者の臨床経験により得られたエビデンス

1.2 骨髄腫の特徴

1.2.1. 疫学と発生率

骨髄腫は形質細胞の腫瘍であり、英国とスカンディナビ

ア諸国における年間発症数は、100 万人当たり約 50 人で

あり、診断時の年齢中央値は約

70 歳です(Turesson et al,

1984, Hjorth et al, 1992, Office of National Statistics,

2001 年, Phekoo et al, 2004)。骨髄腫はコーカサス地方に

比べ、アフリカ・カリブ民族群の発症率が高く、特にその

疫学については、殆ど分かっていません。ほとんどが新規

(デノボ; de novo)の症例であり、意義不明の単クロー

ン性ガンマグロブリン血症(MGUS)からの進行例は少数

です。

60 歳未満の患者の割合は約 15%であり、更に 60 歳から

65 歳の患者が 15%となっています。診断時に 40 歳以下の

患者は

2%未満です。この年齢分布は、大量化学療法(HDT)

と幹細胞移植などの特定の治療法に適応できる患者群に

関係しています。強い治療法に対する年齢制限は引き上げ

られてはいますが、まだ、ほとんどの骨髄腫患者が経口化

学療法薬剤による治療を受けています。

1.2.2. 臨床症状

臨床症状には様々なものがあり、特徴的な症状には次の

ものがあります。

骨病変症状(典型的には、持続性がある原因不明の背

中の痛み)

腎機能障害

貧血(典型的には、正色素性や正球性であり、白血球

減少や血小板減少の頻度は稀)

高カルシウム血症

再発性又は継続性の細菌感染

過粘稠度症候群

脊髄/神経根圧迫が疑われる症状

ネフローゼ症候群や心不全などのアミロイドーシス

(3)

が疑われる症状

持続性の高赤血球沈降速度

(ESR)、又は偶然発見され

る血漿粘性

骨髄腫が疑われる症状がある患者は、直ちに専門医へ受

診することが求められます。脊髄圧迫、高カルシウム血症、

及び腎不全は内科的救急疾患であり、直ちに入院が必要で

す。通常の検査で異常タンパクが認められても、臨床的な

症状が無く、貧血や高カルシウム血症、あるいは腎臓障害

が無い患者は、すぐに受診する必要はありませんが、専門

医に助言を求めることを検討すべきです。

1.2.3. 骨髄腫患者の管理に必要な施設と専門分野

骨髄腫患者に対する医療行為は、血液専門医あるいは腫

瘍専門医が主導すべきですが、直面するであろう広範囲の

問題に詳しい、他の専門医の参加も必要となります。英国

では、承認を受けた癌ネットワーク内の集学的チームの一

部としてこれが提供されます(補足資料

1

を参照)

。デン

マーク、ノルウエー、スエーデンでは、しかるべき国内の

血液学会が関係して同様の推奨が行われるでしょう。

骨髄腫に効果があり質の高い医療行為には、他の専門医

の専門知識とサービスが利用できることが必要です(表

3

参照)。地方又は近隣の病院でもそれは利用可能かもしれ

ません。これらのサービスを受けるには、明確なポリシー

とプロトコルが必要となります。

治療内容に自家又は同種の幹細胞移植が含まれる場合、

血液悪性疾患に対してレベル

3の医療行為が提供可能な設

備を擁する

EBMT(ヨーロッパ血液骨髄移植グループ)の

認可施設で実施しなければなりません(British

Committee for Standards in Haematology Clinical

Haematology Task Force, 1995)。

適切な支持療法は、病気の全過程を通じて、治療全般の

基本的な部分です。支持療法の重要性について、患者に適

切に情報を与えて教育を行うべきです。その重要性が高い

にも拘わらず、公表されている研究は殆どありません。従

って、このガイドラインの支持療法に関する推奨の大半は、

証拠レベルⅣに基づいた推奨グレードCになっています。

患者が病気を患っている全過程を通じて、血液専門医チ

ーム、医療にかかわる他の医療チーム、及び患者を診療す

る一般開業医の間で、良好なコミュニケーションを維持す

る事が不可欠となります。

3. 骨髄腫患者の治療に必要な専門分野とサービス

診断サービス

診断用の血液学検査と血液病理学検査

臨床の生化学検査と免疫学検査

診断用の放射線学的検査

専門医療サービス

腎臓医療サービス(血液透析が迅速に受けられることを含む)

臨床腫瘍科/放射線療法科

整形外科

神経外科

認可された骨髄/幹細胞移植センター

介護サービス

血液学/腫瘍学の専門看護師

緩和医療の医師/看護師

細胞毒性薬を調合できる専門知識と施設がある薬局

理学療法/リハビリテーション

症例登録、監査、臨床試験に対する管理サポート

利用可能な社会福祉や資金援助に関する情報を含む、患者への情報提供

患者支援グループ

2.診断・検査・治療適用

2.1. 検査と診断

2.1.1. 検査

骨髄腫が疑われる患者には、最初の検査で、

表4に示す

鑑別検査を含めて実施すべきです。その後で、診断を確定

するために追加の検査を行います。まず、血清及び濃縮尿

の電気泳動検査を実施し、その後、単クローン性タンパク

(Mタンパク、又はパラプロテイン)の存在の確証と型分

類を行うために、免疫固定法検査を行うべきです。骨髄腫

が強く疑われるが、通常の電気泳動法検査では陰性となる

患者にも、免疫固定法検査が適用されます。

血清Mタンパクの定量は、電気泳動軌跡に見られる単ク

ローン性ピークの密度計測で行うべきです。全ての免疫グ

ロブリン(Ig)アイソタイプ量の免疫化学定量検査も使用可

能です。これは、

IgA 型と IgD 型のMタンパクには特に有

用です。尿中軽鎖排泄量の定量は、24 時間蓄尿で直接実

施できます。また、無作為に採取した尿サンプルにより、

尿クレアチニンとの相関性をもとに計算することもでき

ます。血清の遊離型免疫グロブリン軽鎖の定量(FLC 分

析)とκ/λ比率は、尿中軽鎖量定量の代替法として使用

することができます。この血清フリーライトチェーン検査

は、遊離軽鎖型骨髄腫(Bradwell et al, 2003)や、血清や尿

の免疫固定法検査でも陰性(非分泌型骨髄腫) (Drayson

et al, 2001) の患者の診断やモニターに特に有用です。

(4)

診断を確定するには、骨髄穿刺だけでも十分ですが(形

質細胞が

10%以上を示す)、トレフィン生検、つまり凝血

塊標本によって、形質細胞の浸潤度について、より信頼性

の高い評価が可能です

(Rajkumar et al, 2001)。治療後の

骨髄穿刺で十分なサンプルが得られない場合や、治療効果

を判定するためにトレフィン生検を使用しなければなら

ない場合の基準値とするため、診断時の検査で一見して十

分な骨髄穿刺液が得られた場合でも、可能な採取箇所があ

ればトレフィン生検を実施すべきです。

従来の細胞遺伝学的検査法と

FISH 分析法を研究して

いる現在進行中の臨床試験のデータから、重要な予後につ

いての情報が得られており、これらの検査技術が通常の臨

床現場へ適用可能かどうか明らかになるかもしれません。

骨髄穿刺液のフローサイトメトリー法検査によって、形質

細胞の表現型の判定が可能になり、クローン性かどうかが

確定できます。また、形質細胞ラベリングインデックス検

査で、細胞分裂中の細胞の割合を判定することが可能にな

ります。特に骨髄形質細胞が

10%未満の場合は、異常な表

現型とクローン性を判定することが重要です。異常で特殊

な形質細胞表現型の特定は、後の治療効果判定で有益かも

しれません。クローン性については、トレフィン生検標本

の免疫組織化学検査でも判定可能です。

標準的な全身骨レントゲン検査は、全ての患者で実施す

べきです。

CT(コンピュータ断層撮影)検査と MRI(磁気共

鳴映像法)検査は、特定の症状がある場合は有用かもしれ

ません(第3節参照)

表4

骨髄腫患者の最初の検査

鑑別検査

診 断確定のため の検

腫 瘍量測 定及び 予後

予知のための検査

骨 髄腫関 連器官 障害

(ROTI)の評価検査

一 部の患 者に 適用さ

れる特殊な検査

FBC,ESR,又 は 血漿

粘度測定

骨 髄穿刺±トレ フィ

ン生検

骨 髄の細 胞遺伝 学的

検査又は

FISH 検査

FBC (貧血)

骨 髄の 免疫組 織学検

査 又は フロー サイト

メトリー法

ビタミン

B12 と葉酸

測定

*

血 清 又 は 血 漿 電 解

質、尿素、クレアチ

ニン、カルシウム、

アルブミン、尿酸

血清及び濃縮尿の電

気泳動検査

非イソタイプ免疫グ

ロブリン定量

血 清及び尿の免 疫固

定法検査

血 清及び 尿中の 単ク

ロ ーン性 タンパ ク定

カルシウム、アルブミ

ン、β

2 ミクログロブ

リン

血 清又は血漿 の 尿素

とクレアチニン

クレアチニン・クリア

ランス(測定と計算)

カルシウム、アルブミ

ン 、乳酸 脱水素 酵素

(LDH),C 反応性タン

パ ク

(CRP), 非イ ソ タ

イ プ免疫 グロブ リン

定量

症候部位のレントゲ

ン検査

骨格検査

**

骨格検査

骨格検査

MRI 検査,CT 検査

(注) FBC(Full blood count);全血球数測定、ESR(Erythrocyte sedimentation rate);赤血球沈降速度、FISH(Fluorescent in situ hybridization);蛍光インシトゥハイブリデーション法 *マクロ細胞増多症のある箇所(骨髄腫では稀ではない) **骨格検査の推奨は第 3.1 節で行います。

2.1.2. 診断基準と鑑別診断

一般的に骨髄腫の診断は、血清又は尿中に単クローン性

タンパク(M タンパク又はパラプロテイン)が認められる

こと、及び

/又は、骨髄中の形質細胞数が増加しており、

レントゲン画像で溶骨性病変が認められることによって

確定されます

(Greipp, 1992)。他にMタンパクが認められ

る可能性がある疾患には、次のものがあります。

MGUS(意義不明の単クローン性免疫グロブリン血

症)

AL アミロイドーシス

孤立性形質細胞腫(骨又は髄外性)

B 細胞非ホジキンリンパ腫(ワルデンストローム・マ

クログロブリン血症を含む)

慢性リンパ性白血病

MGUS の発生率が高いこと(50 歳を超えると 2%以下、

70歳を超えると

3%以下)や、血清タンパク質電気泳動検

査が頻繁に使用されることを考えると、血清にMタンパク

が認められるほとんどの患者は、骨髄腫より、むしろ

MGUS だと思われます。従って、これらの病態を鑑別す

る基準が重要となります。

最近、国際骨髄腫ワーキンググループは、血清Mタンパ

ク量/濃度、骨髄形質細胞比率、及び骨髄腫関連臓器障害

(ROTI)の有無に基づいて、MGUS と骨髄腫の新しい分類

法 を 推 奨 し ま し た

(International Myeloma Working

(5)

Group, 2003)。この分類法では、MGUS、無症候性骨髄腫、

及び症候性骨髄腫についての基準が定められています(表

5参照)。無症候性と症候性の骨髄腫の鑑別は、骨髄腫関

連臓器障害(

ROTI)の有無によって行われます(

表6参照

)。

この分類法における無症候性骨髄腫は、意義不明型や不

活型、あるいはくすぶり型の骨髄腫などと過去に呼ばれて

いた分類と大体同じです。しかし、臨床的な症状が見られ

ない患者でも、臓器障害のために“症候性”のグループに

分類される場合があり、すぐに治療が必要になるかもしれ

ません。無症候性骨髄腫の患者は、すぐには治療を必要と

はしませんが、注意深い経過観察が必要です。

Mタンパクが少ししか認められない健康な患者では過

剰な検査は避けるべきです。形質細胞増加が

10%以下で、

レントゲン検査で骨が正常なことが、MGUS の診断基準

に採用されていますが、Mタンパクの量が少なく、ROTI

の臨床的証拠がない高齢の無症候性患者に、骨髄検査や過

剰なレントゲン検査を行うことは合理的ではありません

し現実的でもありません。追加の検査結果によって、治療

法を変えることは殆どありません。無症候性の患者の診断

手続きをどこまでやるかについては、患者の年齢、他の疾

患の有無、及びMタンパクの量を考慮すべきです。

さらに、軽度のベンスジョーンズ型タンパク血症や多ク

ローン性免疫グロブリン量の低下が、MGUS 患者の一部

で認められる場合があることや、それ自体が悪性を示すも

のではないということにも、注意を払うべきです(Kyle et

al,2002)。

AL アミロイドーシスと孤立性形質細胞腫の検査と診断

については、最近公表された

UKMF/BCSH ガイドライン

に総括されています

(Soutar et al, 2004; UK Myeloma

Forum; British Commitee for Standards in

Haematology, British Society for Haematology, 2004)

表5

MGUS,無症候性骨髄腫、症候性骨髄腫の診断基準(

国際骨髄腫ワーキンググループ, 2003 年

)

MGUS

無症候性骨髄腫

症候性骨髄腫

***

・ 血清中のMタンパクが

30g/L 未満で

あること

・ 骨 髄 中 の ク ロ ー ン 性 形 質 細 胞 が

10%未満で、トレフィン生検による

形質細胞浸潤度が小さいこと(実施

した場合のみ)

・ 骨髄腫関連臓器障害(骨病変を含む)

がないか、無症状であること

他の

B 細胞増殖疾患、軽鎖関連アミ

ロイドーシス、あるいは他の軽鎖、

重鎖、又は免疫グロブリンが関与す

る組織障害の証拠がないこと

*

・ 血清中のMタンパクが

30g/L を

超えていること、

かつ

/又は

・ 骨髄クローン性形質細胞が

10%

を超えていること

・ 骨髄腫関連臓器障害(骨病変を含

む)がないか、無症状であること

・ 血清及び/又は尿中にMタンパク

があり

**

・ 骨髄に(クローン性)形質細胞が

認められるか、形質細胞腫が生検

で証明されること

・ 骨髄腫関連臓器障害(骨病変を含

む)があること

* AL アミロイドーシスと IgM 型パラプロテイン関連神経障害症候群は、特定の症候群に関係した単クローン性ガンマグロブリン血症の 例です。 ** 診断に際しては、量を特定する必要ありません。割合は少ないですが、患者の中には、血清あるいは尿中にMタンパクが検出されな いが、骨髄腫関連臓器障害(ROTI)と骨髄形質細胞の増加が認められる例があります(非分泌型)。 *** 症状はないが骨髄腫関連臓器障害が認められる患者は、治療が必要なことから、症候性骨髄腫のグループに分類されます。

2.1.3. 推奨

以下の推奨は、証拠レベルⅢに基づく推奨グレード

C で

す。

国際骨髄腫ワーキンググループが認定している診断

基準を使用する。

検査には、表

4

に示す検査を含める。治療が必要な

無症候性患者を識別するために、骨髄腫関連臓器障

害について精密な検査を実施する。

細胞遺伝学的異常は、予後に関して重要であるが、

治療法選択の重要性を明らかにするために計画され

た臨床試験の枠内で、最初に検査する。

Mタンパクが認められる無症候性患者の診断手順を

どこまでやるかについては、患者の年齢、併発疾患

の有無、及びMタンパク量を考慮に入れる。

骨画像検査と骨髄検査は、関連する臨床症状、貧血、

高カルシウム血症、あるいは腎臓障害がない

MGUS

の診断を下すためには強制しないが、若い患者に対

しては推奨される。Mタンパク量が

20g/L 以上の高

齢患者にも考慮しても良い。

MGUS の確定診断を下すためには、臨床評価とパラ

プロテイン定量を

3 ヶ月目と 6 ヶ月目に実施するこ

とを推奨する。

(6)

表6

骨髄腫関連臓器障害(ROTI)

*

(

国際骨髄腫ワーキンググループ, 2003 年

)

骨髄腫による臨床症状

高カルシウム

修正血清カルシウム値が

2.75mmol/l を超えるか、正常値上限を 0.25mmol/l 上回る場

合。

腎機能障害

骨髄腫が原因のもの(第

6.2 章参照)

貧血

ヘモグロビンが

10g/dl 未満になるか、正常値下限を2g/dl 下回る場合。

骨病変

溶骨性病変、あるいは圧迫骨折を伴う骨粗そう症(

MRI 検査あるいは CT 検査で明ら

かになる場合がある)

その他

症候性過粘凋度症候群、アミロイドーシス、再発性細菌感染

(12 ヶ月以内に2回以上)

*器官や組織の障害が骨髄腫によるものか、はっきりしない場合は、骨髄形質細胞の比率を30%超過とすべきです。

2.2. 経過観察と治療開始の適用

化学療法は、症候性骨髄腫及び骨髄腫関連臓器障害があ

る無症候性骨髄腫の治療に適用されます。

2 件の無作為化

対照比較試験によると(

Hjorth et al, 1993, Riccardi et al,

2000

)、他の無症候性骨髄腫に対する早期の医療介入の有

益性は認められてません。

MGUS から活動性病態(骨髄腫あるいは他の B 細胞悪

性疾患)へ進行する危険性は、平均すると年当たり約

1%

で、唯一証明されている骨髄腫進行の予測因子は、血清M

タンパク量です(

Kyle et al, 2002, Kyle & Rajkumar,

2003

)。10 年後の進行する危険性の割合は、g/L 単位の M

タンパク量にほぼ相当しています(例えば、

20g/L は 20%

の進行リスクに相当します)。正常な対照患者に比べて、

MGUS の患者は、関連する多クローン性免疫グロブリン

の量が少ないにもかかわらず、菌血症の危険性は、僅か

2

倍の増加しかありません(

Gregerson et al, 1998

)。

無症候性骨髄腫から症候性骨髄腫になるまでの無増悪

期間(TTP)の中央値は、12 ヶ月~32 ヶ月です(

Wilsloff et

al, 1991, Hjorth et al, 1993, Dimopoulos et al, 1993,

Weber et al, 1997

)。無症候性骨髄腫患者 71 名のうち、9

名が病気の進行が無いまま、感染症で亡くなっています

(

Wilsloff et al, 1991

)。臨床的には無症状でも、レントゲ

ン検査で骨病変 (最低 1 ヶ所の溶解性病変) が認められた

患者についての無増悪期間(TTP)の中央値は 8 ヶ月となっ

ており、進行の危険性が高くなっています(

Wisloff et al,

1991, Dimopoulos et al, 1993

)。新しい国際診断基準(

The

International Myeloma Working Group, 2003

)では、骨病

変がある患者は“症候性”として分類されており、臨床的

な症状が無くても治療が必要であるという事に注意しな

ければなりません。

更に、骨病変は確認されなくても、MRI 検査で骨髄状

態が異常と認められた患者も、病気が進行する危険性が高

いことが

2 件の研究で報告されています(

Weber et al,

1997, Mariette et al, 1999

)。MRI 検査での異常が予後に

与える影響については、レントゲン写真で検出される溶解

性骨病変ほどには重要視されていません。しかし、マリエ

ット(

Mariette et al, 1999)

らは、MRI 検査で異常があ

る患者も、無増悪期間(TTP)の中央値が 25 ヶ月まで達し

ないと報告しています。また、

ウェーバー

(

Weber et al,

1997)

らは、

MRI 検査だけで、他の予後不良因子(パラ

プロテイン高値、又は尿ベンスジョーンズタンパク高値、

あるいは

IgA 型イソタイプ)がある患者を識別できること

を報告しています。

2.2.1. 推奨

MGUS や無症候性骨髄腫の患者の経過観察は、無期

限に行うべきです。その頻度は、進行する危険性によ

って変えても良いでしょう。Mタンパクの量が多い

MGUS や無症候性骨髄腫は、最も危険性が高いと考

えられます((推奨グレード B;証拠レベルⅢ)。

無症候性骨髄腫の経過観察では、定期的

(通常 3

ヶ月ごと

) に臨床検査を行うことや、血清と尿の

両方でMタンパク量を測定することを含めるべ

きです。骨髄検査と全身骨検査は、それほど頻繁

に繰り返し検査する必要はありませんが、新しい

症状や兆候が出てきた時に必要となるでしょう

(推奨グレード C;証拠レベルⅣ)。

同様に

MGUS の経過観察でも、定期的な臨床検

査と血清Mタンパク測定のフォローを行うべき

です。進行する危険性が低い患者では、通常、半

年毎、あるいは年

1 回の検査で十分でしょう(推奨

グレード

C;証拠レベルⅣ)。

患者と主治医は、病気進行の危険性や臨床的特徴、特

6

に記載されているものについて、情報を共有す

べきです(推奨グレード

C;証拠レベルⅣ)。

病気の進行、あるいは臓器障害の証明がなされるま

で、治療は見合わせるべきです(推奨グレード

A:証

拠レベルⅠb)。

臨床的な症状が無くても、レントゲン検査で骨病変が

認められた患者は、治療を直ちに始めるべきです

(推

奨グレード

B;証拠レベルⅡb)。現在では、このよう

な患者は、症候性骨髄腫に分類されています。

(7)

2.3. 予後因子と症候性骨髄腫の病期分類

通常、骨髄腫の経過は様々で、生存期間は2~3週間の

短い例から、20 年を超える例もあります。臨床試験の中

で、また、臨床試験の間で、試験結果を比較するためには、

予後因子の分析が欠かせません。最適な病期分類システム

によって、個々の患者についての生存の見通しが約

70%

の検査感度と特異度で予測できます。病期分類システムが

治療法の選択に良い影響を与えるかどうかは、証明されて

いません。

β

2 ミクログロブリンや C 反応性タンパク(CRP)の血

清レベルが高値で、アルブミンの血清レベルが低値の患者

は 、生 存期 間が 良くあ りませ ん

(

Bataille et al, 1992,

Jacobson et al, 2003

)。また、形質細胞が異型のものや増

殖活性が高いものも、予後不良を示唆しています

(

Greipp

et al, 1993

)。細胞遺伝学的異常は、強い予後不良因子です。

13 番染色体の欠失/モノソミー、非高二倍体、及び一

部の平衡転座

t(4;14),t(14;16)は、予後に強い悪影響を与え

ます

(

Fonseca et al, 2004

)。マイクロアレイ技術による遺

伝子プロファイリングによって、この分野に関する私たち

の知識が広がることが期待できます。

デューリー・サーモン病期分類システム

(Durie and

Salmon, 1975)が開発されて以来、予後モデルを構築しよ

うという多くの試みが行われてきました。特に、デューリ

ー・サーモン病期分類システムにはアルブミンと血清β2

ミクログロブリンのいずれも含まれていないため、このシ

ステムを改善する試みが行われてきました。最近、国際骨

髄腫ワーキンググループから国際予後指標が提案されま

した

(

Greipp et al 2003

)。これは、β2 ミクログロブリン

とアルブミンの血清レベルに基づくもので、治療法の種類

と無関係に、患者を3つの予後グループに分類しています

7

参照)

。このモデルに細胞遺伝学的検査のデータが

組み込めれば、病期分類は更に改善されるかもしれません。

2.3.1. 推奨

以下の推奨は、証拠レベルⅣに基づくグレード

C です。

血清アルブミンとβ2 ミクログロブリンに基づく国際

予後指標を、デューリー・サーモン病期分類システム

に代えて推奨する。

治療を始める前に、予後判定を行うべきであり、最低

限、β

2 ミクログロブリンとアルブミンの血清レベル

が必要です。もし利用可能であれば、細胞遺伝学的検

査、及び/又は FISH 検査が有用でしょう。しかし、

これらは個々の患者について注意して解釈すべきで

す。

現時点では、個々の患者の治療法選択に、予後因子を

適用することを支持している証拠はありません。

表7

新しい国際病期分類システム[ISS] (

Greipp et al, 2003

)

ステージ

定 義

生存期間の中央値

血清β2 ミクログロブリンが 3.5mg/L 未満、かつ

血清アルブミンが 3.5g/dl 超過

62 ヶ月

ⅠやⅢに該当しない

*

45 ヶ月

血清β

2 ミクログロブリンが 5.5mg/L 超過

29 ヶ月

* 次の 2 つの下位分類があります。 血清β2 ミクログロブリンは 3.5mg/L 未満だが、血清アルブミンが 3.5g/dl 未満、あるいは、 血清アルブミンの量は問わないが、血清β2 ミクログロブリンが 3.5~5.5mg/l。

2.4. 治療効果の判定

腫瘍に対する治療効果の判定は、血清Mタンパク量、及

び/又は尿中軽鎖排泄量の変化に基づいて行われます。更

に、臨床的な治療効果には、新しい骨髄腫関連臓器障害が

発生していないことも必要です。

8

の基準は、国際骨

髄腫ワーキンググループの基準から要約したものです(詳

細ついては、(

Blade et al, 1998

)参照)。完全寛解の確証に

は、免疫固定法(IF)検査によってMタンパクが検出されな

いことが必要です。通常の電気泳動法検査ではMタンパク

が検出されなくても、免疫固定法検査ではまだMタンパク

が検出される患者の予後は、部分寛解(PR)の患者と同等で

あること、また一方で、免疫固定法検査で陰性であれば、

有意に予後良好であること報告されています

(

Lahuerta

et al, 2000, Davies et al, 2001

)。従って、電気泳動法検査

でMタンパクが検出されない場合は、免疫固定法検査を実

施すべきです。

骨髄検査は、完全寛解(CR)の確証と非分泌型骨髄腫の治

療効果判定には絶対欠かせません。更に、この効果判定基

準には、再発と進行の定義も含まれています。再発とは、

以前に完全寛解

(CR)になった患者に病変が再び現れるこ

とと定義されており、また、進行は、以前に完全寛解(CR)

に至らなかった患者に対して適用されます。

大量化学療法(HDT)の後の完全寛解(CR)達成は、寛解持

続期間と全生存期間(OS)に関しては良い予後因子のよう

です (

Lahuerta et al, 2000; Davies et al, 2001

)。しかし、

治療目標を完全寛解

(CR)の達成におくべきだとは、まだ明

(8)

クの減少が

50%未満だった患者の1/4がプラトー状態

に達しており、Mタンパク減少が

25%未満だった患者では

1/10となっています。これらの患者の予後は、Mタン

パクの点ではより良い効果があった患者と同じくらいに

良好なものでした(

Olojohungbe et al, 1996, Durie et al,

2004a

)。

血清

FLC(フリーライトチェーン)検査は、遊離軽鎖

型 骨 髄 腫 と 非 分 泌 型 骨 髄 腫 の 経 過 観 察 に 有 用 で す

(

Drayson et al, 2001, Bradwell et al, 2003

)。更に、完全

な形の免疫グロブリンであるMタンパク型のほとんど患

者で、

FLC 検査が治療効果判定の経過観察に有用である

ことが最近報告されています

(

Mead et al, 2004

)。その理

由は、遊離軽鎖(FLC)の半減期が短いので、完全な形のM

タンパク濃度の変化よりも、遊離軽鎖

(FLC)の変化の方が、

もっとも早く治療効果の兆候を示す可能性があるためで

す。

表8

EBMT/IBMTR/ABMTR

A)

の治療効果判定基準

完全寛解(CR)

免疫固定法検査によって、血清又は尿中にMタンパクが最低

6 週間検出されず、かつ、骨

髄内の形質細胞比率が

5%以下であること。

部分寛解(PR)

血清Mタンパクの減少が

50%を超えること、かつ/又は、尿中の遊離軽鎖排泄量の減少が

90%を超えるか、6 週間にわたって 200mg/24H 未満に減少すること

B)

微少効果(MR)

Mタンパクの減少が

25~45%であり、かつ/又は、尿中の遊離軽鎖排泄量の減少が 50~89%

あるか、6 週間にわたって 200mg/24H 未満に減少すること

C)

不変

(NC)

微少効果

(MR)や病態進行(PD)の基準に合致しない。

プラトー

骨髄腫関連臓器障害が残っておらず、Mタンパクと軽鎖排泄量の変化が

3 ヶ月間で 25%未

満しかないこと。

病態進行(PD)

治療にも拘わらず骨髄腫関連臓器障害が残ること、あるいはプラトーフェーズから骨髄腫

関連臓器障害が再発する。血清Mタンパクが

25% 超過(5g/L 超過)、かつ/又は、尿Mタン

パクが

25% 超過(200mg/24H 超過)、かつ/又は、骨髄形質細胞が 25% 超過(絶対値で 10%

以上)

B)

再発

以前に完全寛解(CR)になった患者に病変が再びあらわれることで、免疫固定法検査によっ

てMタンパクが検出されることも含む。

A) EBMT(European Group for Blood and Marrow Transplantation) : ヨ ー ロ ッ パ 血 液 骨 髄 移 植 グ ル ー プ ; IBMTR(International Bone Marrow Transplant Registry):国際骨髄移植登録機構; ABMTR( Autologous Blood and Marrow Transplant Registry):自家血液骨髄移植登録機構

B) 非分泌型骨髄腫患者に限っては、骨髄中の形質細胞が初期基準値の 50%を超える減少(部分寛解)、あるいは初期基準値の 25-49%の減少(微少効果)が必要です。 C) 非分泌型骨髄腫では、骨髄形質細胞の増加が 25%を超えることと、絶対値で最低 10%の増加があることが必要です。MRI 検査は、一部の患者では有用かもしれません。

3.骨髄腫における画像診断技術の適用

骨髄腫の管理において、画像診断の役割には、診断時の

病変の進行度や悪性度の判定、合併症の識別と病態判定、

及びその後の病状の判定があります。骨髄腫において、通

常のレントゲン検査、

CT 検査、及び MRI 検査は、確立さ

れた検査技術です。FDG(フッ素 18-フルオロ・デオキ

シ・グルコース)を使った PET(陽電子放出断層撮影)検査、

及び

MIBI(テクネチウム 99-セスタミビ)検査は、現在評

価が続けられている期待の高い新しい画像診断技術です。

DEXA(

重エネルギーX 線吸収測定法)検査の適用は、骨

髄腫では十分に評価されていません。

より精巧になった画像診断技術が次第に利用可能にな

るにつれて、どの検査法が最も適しているか、詳細に検討

する事が大切です。患者の検査と経過観察の全期間を通じ

て、開発された画像診断検査法が有効となる可能性(即ち、

それによって検査が変わる可能性)について評価すべきで

す。画像診断が必要な場合、正確な臨床情報を放射線科へ

伝えることで、適切な時点で正しい画像診断技術が使用さ

れる事が確実になるでしょう。

3.1. 診断

3.1.1. 単純レントゲン検査

依然として、全骨検査が診断時の放射線による鑑別の標

準的検査法であり、診断時の病気の進み具合と腫瘍量の間

に明確な関連性が認められています(Durie & Salmon

1975)。単純レントゲン検査は、どこの施設でも利用可能

であり、広範囲の骨格状態を視覚化し、骨折の危険性が切

迫している長骨が識別できる場合があります。臨床検査と

放射線検査の結果に基づいた採点システムが、長骨におけ

る骨折の可能性予測に使用されており、骨折内固定法が有

益かもしれない患者を識別できる場合があります(Mirels

1989)。しかし、単純レントゲン検査は検知感度が良くな

く、骨梁質の少なくとも

30%以上が失われた時にやっと溶

骨性病変が確認できた例(Snapper & Khan 1971)など、一

般的な骨減少症の判定には不十分で(Scane et al 1994)、特

異度も低いものです。

3.1.2. CT 検査

CT 検査は、小さな溶骨性病変の検知の点では単純レン

トゲン検査よりも高感度であり、関連する軟組織病変の存

在と広がりを正確に描写することができます。また、組織

(9)

診断のために針生検の方向を定めるのにも有用です

(Kyle

et al 1985)。多くの場合、単純撮影画像上の疑わしい箇所、

単純撮影画像上には異常が認められない有症候箇所、ある

いは単純レントゲン撮影では正確に視覚化できない骨格

部分(即ち、肩甲骨、肋骨、及び胸骨)の特徴が明確にな

ります。

CT 検査は、放射線療法や外科手術の計画作成に

も役立ちます(Walker et al 2003)。

3.1.3 MRI 検査

MRI 検査は、軟組織病変の進み具合と特徴の判定に役

立ちます。脊髄圧迫が疑われる神経症状が認められる患者

の検査に選択対象となる画像技術であり

(Joffe et al 1988)、

脊髄又は神経根圧迫の程度と進み具合、腫瘍瑠の大きさ、

及び硬膜上腔への広がり具合について、正確な評価が行え

ます(第

9 節参照)。

さらに、

MRI 検査によって骨髄病変パターンについて

の情報が得られます。

MRI 検査で異常な一部のパターン

は、予後的に重要であり、局限性とびまん性の病変、及び

腫瘍量の大きさとの間に関連性があります

(Moulopoulos

et al 1992, Carson et al 1995, Stabler et al 1996,

Lecouvet et al 1998a)。骨髄腫が進行した段階の患者で、

MRI 画像に脊髄の異常がある場合は、正常な患者よりも、

骨折のリスクが高いことが予測されます(

Lecouvet et al

1997

)。しかし、骨折が起こる場所までは予測出来ません

(Lecouvet et al 1998b)。

MRI 検査は、孤立性形質細胞腫と骨髄腫の鑑別診断検

査には欠かせません。孤立性骨形質細胞腫の病期判定にお

ける椎骨と骨盤の

MRI 鑑別検査によって、明らかにレン

トゲン画像では不鮮明な病変が、

80%以下の患者で明白に

なります

(Moulopulos et al 1993)。孤立性形質細胞腫の診

断と治療については、最近発行された

BCSH ガイドライ

ンに総括されています(Soutar et al 2004)。

3.1.4. 骨シンチ検査

骨髄腫における標準的な骨シンチ検査は、骨髄腫の骨溶

解性病変の特徴である骨芽細胞の活動が不十分なため、検

知感度が低い検査法です

(Bataille et al 1982, Ludwig et

al 1982)。稀に、レントゲン写真では確認できない(即ち

肩甲骨あるいは胸骨の)病巣が明らかになることがありま

すが、CT 検査の方が高感度です。

3.1.5. PET 検査

数件の予備試験の報告では、

PET 検査が骨髄腫と形質

細胞腫における不明瞭な病変箇所の検知に役立つ可能性

があることが報告されています

(Kato et al 2000, Orchard

et al 2002, Schirmeister et al 2003)。

3.1.6. DEXA 検査

この検査は、骨粗しょう症の診断で標準的な検査法です

(Kanis & Gluer 2000)。骨髄腫患者の場合、診断時点で腰

椎骨のミネラル密度が低いことが、早い時期に椎骨が崩壊

す る 危 険 性 が 高 い と い う こ と に 関 係 し て い ま す

(Abildgaard et al 2004)。しかし、骨髄腫患者に対して

DEXA 検査を適用する際に、方法論的困難性が高まること

を考えると、脊椎症や脊椎骨増殖症

(Masud et al 1993)、

及び椎骨崩壊の存在によって、骨ミネラル密度の推定値が

影響を受ける可能性があります。

3.1.7. 推奨

全骨検査は、新たに骨髄腫の診断を受けた患者の病期

判定の一部とするべきであり、胸の背面から正面(PA)

画像、頚部椎(開口写真も含む)、胸郭椎、腰椎、上

腕骨と大腿骨の正面から背面

(AP)画像と側面画像、頭

蓋骨の正面から背面(AP)画像と側面画像、及び骨盤の

正面から背面(AP)画像を含めるべきです。更に、症状

の出ていない部位でも、適切な方向より画像化すべき

です

(推奨グレード C; 証拠レベルⅣ)。

CT 検査は、単純レントゲン画像で不明瞭な部分、例

えば、不明確な骨溶解性病変、特に単純レントゲンで

は視覚化しにくい肋骨、胸郭、及び肩甲骨などの骨の

部分について、特徴を明確にするために使用すべきで

す(推奨グレード

B;証拠レベルⅢ)。

CT 検査は、全骨検査で病的損傷が確認されないのに、

症状がある部分の骨の検査にも使用すべきです(推奨

グレード

B;証拠レベルⅢ)。

CT 検査又は MRI 検査は、軟組織の病変のおおまかな

特徴と進行度を掴むために適用され、これらの

2 つの

画像診断技術は、補足的な情報を提供することができ

ます(推奨グレード G;証拠レベルⅢ)。

CT 検査によって組織生検の適切な場所をガイドして

も良いでしょう(推奨グレード B;証拠レベルⅢ)。

MRI 検査は、脊髄圧迫の疑いがあり、神経症状があ

る患者の検査に選択される検査技術です(推奨グレー

B;証拠レベルⅡB)。

脊柱全体の

MRI 検査は、孤立性形質細胞腫が明らか

な患者に対しては、指標となる病変箇所にかかわらず

行うべきです(推奨グレード C;証拠レベルⅣ)。

骨シンチ検査は、骨髄腫の通常検査では必要ではあり

ません(推奨グレード

C;証拠レベルⅣ)。

DEXA 検査は、骨髄腫の通常の医療では有用ではあり

ません

(推奨グレード C;証拠レベルⅣ)。

3.2. 経過観察における画像検査

溶解性骨病変は、治療の効果があった患者でも治ること

は殆どありません。そのため、単純レントゲン検査は、病

気の効果判定にはほとんど役に立ちません。一方で、新た

に骨病変ができたり、あるいは残存した病変の大きさが確

実に大きくなっていることは、病気の再発/進行の判定基

準のひとつです (表8参照)

特に症状がある箇所を撮影目標としなければなりませ

ん。以前の関連画像と比較することが重要です。以前実施

した全骨検査から

3 ヶ月以内に、新たな骨症状が無いまま

病気が進行した場合には、再度全骨検査をしても追加情報

は得られないでしょう。骨の痛みがある場合は、最初単純

レントゲン検査で調べられます。単純レントゲン写真では

(10)

病的損傷が認められないような症状がある箇所の検査に

は、

CT 検査又は MRI 検査を適用しても良いでしょう。

MRI 検査は、骨髄腫による椎骨崩壊と、付随する骨粗し

ょう症による椎骨崩壊との識別に役立つ場合があります

(Lecouvet et al 2001; Uetani et al 2004)。

骨病変の進行が臨床的に認められるかどうかに拘わら

ず、病勢進行時に全骨検査を完全に繰り返すことは必ずし

も必要ではありません。溶解性骨病変は、治療効果があっ

た患者でも治ることは殆どありませんし、連続してレント

ゲン検査を行う価値は、特に短期間で繰り返した場合には

限定されています。更に、骨髄腫患者にとって全骨検査は、

くたびれるものであり、苦痛の種にもなりかねません。ま

た、不必要な放射線暴露によって、新たな悪性疾患を発症

す る リ ス ク を 負 わ な い こ と は 重 要 な こ と で す

(Berrrington de Gonzalez and Darby 2004)。

骨髄の

MRI 検査は、非分泌型骨髄腫患者の初期検査及

び経過観察検査として有用と考えてもよいでしょう。しか

し、治療後に

MRI 画像を評価した例は殆どありません。

骨髄の

MRI 検査で異常が残存していることと予後不良と

は関係があるかもしれません(Angtuaco et al 1999)。しか

し、これは、更に研究が進めば確認されるでしょう。

PET

検査によって、治療後に残存している骨髄腫が検知できる

ようです。また、大量化学療法と幹細胞移植の後で、骨髄

内又は骨髄外に

FDG への高い親和性を維持している箇所

があるかどうかで、予後不良の患者が識別できるかもしれ

ません(Durie et al 2002)。

3.2.1. 推奨

新たに骨に症状が生じた箇所は全て、明確に画像検査

の再開や経過観察の対象とすべきです。

(グレード C;

証拠レベルⅢ)

CT 検査又は MRI 検査は、単純レントゲン写真では判

明しない、症状がある箇所の判定に適用するべきで

す。(推奨グレード B;証拠レベルⅢ)

MRI 検査及び PET 検査は、個々の患者の病態把握の

助けになる場合があります(グレード

C;証拠レベル

Ⅲ)

4.疼痛管理(ペインコントロール)

骨髄腫の骨格合併症、特に骨粗しょう症による脊椎圧迫

/破壊などの骨格合併症から生じる痛みは、最も多く見ら

れる症状です。病気の全期間を通じて、

80%の患者に発生

することが予想されます

(Kyle 1975)。痛みは全身に生じ

る場合や、局所的に生じる場合があります。疼痛管理に有

効なアプローチには、全身的な鎮痛剤投与と局所的な治療

(放射線療法及び/又は整形外科的処置を含んでも良い)

の使用を組み合わせることが必要です。

また、化学療法も病因となっている病的過程を標的とし

ているため、骨髄腫の疼痛管理においてキーとなる部分で

す。第Ⅵ次

MRC 骨髄腫臨床試験(McClosky et al 1998)に

おいて明確に実証されたように、化学療法の効果によって

痛みは緩和されます。鎮痛効果を目指した全身的アプロー

チは、骨髄腫患者の総合的な医療計画の一部でなければな

りません。

痛みのコントロールは個々の患者ごとに全く異なるも

のです。痛みを緩和する手段を組み合わせる以外に、“正

しい”治療法はありません。薬物療法は、薬の副作用をで

きるだけ少なくして、痛みを長く抑えることに主眼をおく

べきです。痛みについて相談する時間を個々の患者に十分

与えるべきです。このことは、適切な治療戦略を決めるた

めに役立つだけでなく、疼痛管理プロセスの一部にもなり

ます。

4.1. 全身的鎮痛処置

鎮痛の訴えは、臨床医療行為の一部として、正式に記録

に残すべきです。これらは、疼痛管理の貴重な“半定量的”

な評価項目になります。普通、鎮痛の訴えが少なくなるこ

とは、治療が成功していることを意味しています。ほとん

どの患者は、骨髄腫に対する化学療法の効果が認められ、

局所的治療の恩恵をこうむるにつれて、強い痛みから抜け

出す事ができます。痛みをうまく管理するには、患者や家

族/介護者を含んだ、多くの専門医療分野による共同アプ

ローチが必要です。

鎮痛剤の使用について、表

9

にまとめています。処方用

鎮痛剤の使用は、

WHO(世界保健機関)が定めている“鎮

痛剤段階的処方”指針に従うべきです

(World Health

Organization 1986; Niscola et at 2004 Fig1)。但し、非ス

テロイド系抗炎症薬

(NSAID)は、腎機能へ有害な影響を及

ぼしたり、胃の不快感を引き起こす原因となったりする可

能性があるため、使用を避けるか、そうでなければ、十分

注意して使用すべきです。強いオピオイドを使用している

患者には、便秘や吐き気などの副作用が頻繁に生じるため、

下剤や制吐剤(例えば、シクリジン、メトクロプラミド、

ハロペリドールなど)を処方するなど、積極的な管理を行

うべきです(

Niscola et al, 2004

).。

元々鎮痛薬ではない補助用薬剤を加えることも、ある状

況では有用な場合があります。アミトリプチリン、カルバ

マゼピン、ガバペンチンは、神経の痛みに有用かもしれま

せん。コルチコステロイド(特にデキサメサゾン)は、病

期が進んだ段階での骨の痛みを和らげるために使用され

る場合があります。多くの病院では、専門のペインクリニ

ックを行っており、帯状疱疹後神経痛などの永続的な局所

的痛みによる困難な問題には、その支援や利用できる専門

知識の協力を得るべきです。リラクゼーション法、アロマ

セラピー、催眠療法などの代替医療の利用が、個々の患者

に有益な場合があります。

4.1.1. 推奨

以下の推奨は、全てグレード

C、証拠レベルⅢです。

痛みの程度に応じた鎮痛剤を使用すべきです。

(11)

非ステロイド系抗炎症薬は避けるべきです。

鎮痛剤は、正しく処方すべきです。

可能であれば経口の鎮痛剤が望ましい。

副作用は、積極的に管理すべきです。

鎮痛の訴えは正式に記録すべきです。

鎮痛剤以外の薬を加えることを、個々の状況で検討す

べきです。

ペインコントロールの別の手法を、全ての患者で検討

すべきです。

表9

骨髄腫で使用される鎮痛剤

クラス

備考

単純非オピオイド

パラセタモール:

1mg(4-6 時間間隔)

軽度から中度の痛みに有用です。

錠剤や液剤として経口投与

(座薬でも利用可能)

非ステロイド系

抗炎症薬(NSAID)

避けるべきであるが、さもなくば注意

して使用する。

弱いオピオイド

中度の痛みに有効な鎮静効果があります。例え

ば、

ココダモル錠剤として、コデイン

8mg/パラセタ

モール

500mg(通常6時間間隔で2錠を投与)、

コ デ イ ン

30-60mg 又 は ジ ヒ ド ロ コ デ イ ン

30-60mg(最低4時間間隔)

精神錯乱、傾眠は、普通下剤が必要な

便秘を引き起こすような数種の弱い

(及び、強い)オピオイドの最初の使

用法と関係している場合があります。

腎臓障害に注意する。

強い(通常の)

オピオイド

中度から重度の痛みに有効な鎮静効果がありま

す。

モルヒネ;錠剤又は液剤で最初

5-10mg の経口服

用で始め、4 時間間隔で投与することが重度の痛

みの治療に選択されます。

日々の投与量が確立したら、効果が持続する除放

製剤へ切り替えることも可能です。また一時的な

激しい痛みには、必要に応じて短期間しか効果が

でない処方として

5-10mg のモルヒネを追加投与

して治療することができます。

ジアセチルモルヒネは、非経口用途に好まれて使

用されており、溶解性が良く、連続投与注射装置

による使用、又は

4 時間間隔の注射として最適で

す。

精神錯乱、傾眠、便秘

―より弱いオピオイドに関してはいく

つか方式があります。

合成オピオイド

中度から重度の痛みに有効な鎮静効果がありま

す。

オキシコドン(経口投与される場合もある)、フ

ェンタニルは除放経皮貼布として使用され、中度

から重度の慢性的な痛みに対して、除放性モルヒ

ネの貴重な代替治療になる場合があります。

(12)

図1

WHO の痛みの治療段階

痛みの持続や増大

痛みの持続や増大

痛みの発生

4.2. 局所的鎮痛

4.2.1. 疼痛緩和用放射線治療

局所的な放射線治療が、骨病変の痛み緩和に有効であり、

軟組織病変の痛みも緩和できる場合があります。比較的少

ない放射線量で十分であり、同様に副作用の発生率も少な

くて、局所的な症状の再発に対しても必要であれば再照射

できます。骨髄腫を対象に報告された照射量と奏効率に関

するデータは、ごく限られたものです。ミルとグリフイス

(Mill & Griffith, 1980)は、患者

128 名を対象に、広範囲

の照射量で治療を行い、計

278 箇所の照射部位について報

告しています。1回の照射量が

2~3Gy で計 10~15Gy の

線量(中央値)によって、患者の

91%(完全緩和は 21%)

に痛みの緩和がありました。僅か

6%の部位にのみ再照射

が必要でしたが、この箇所と最初の線量との関係はありま

せんでした。レイ(

Leigh et al, 1993)

は、患者

101 名を対

象に

316 箇所の分析を実施しました。平均 25Gy(範囲 3

60Gy)の線量で、患者の 97%(完全緩和は 26%)に痛み

の緩和がありました。中央値

16 ヶ月の間隔で、6%に再発

が認められ再照射が行われました。線量と、奏効率又は再

発率との間に相関は見られませんでした。

6 件の無作為化対照比較試験で、骨髄腫を含む様々な疾

患の骨転移の痛みの緩和に対する分割照射放射線治療と

して、1回の放射線照射線量(通常8

Gy )が有効なこと

が示されました(Hoskin et al 2001)。 骨髄腫は、少な

くとも他の骨転移疾患と同程度に、放射線感受性が高い疾

患であるため、このエビデンスを骨髄腫の痛みの緩和に応

用することは合理的です。従って、1 回8Gy の線量が、

痛みのコントロールのための通常の線量として推奨され

ます。

4.2.2. 長骨の骨折

長骨が骨折した場合には、骨を固定した後に、放射線治

療が必要です。放射線治療は、痛みを良くコントロールす

るのに有用で、骨折箇所の治りを早める場合もあります。

上述したような同様の放射線量の考え方が当てはまりま

す。1 回8Gy の放射線量が推奨されます。

4.2.3. 脊椎の不安定/痛み

脊椎の崩壊は、永続性の痛みや骨の不安定/神経障害に

至る場合があります。不安定な背骨/神経障害は、緊急に

整形外科又は神経外科への照会が必要です。最近、不安定

な 脊 椎 に 対 す る 様 々 な 外 科 手 術 の 選 択 肢 が 、

UKMF/BCSH の形質細胞腫管理ガイドラインで述べられ

ています

(Soutar et al 2004)。脊髄の痛みの管理は、骨の

不安定/神経障害がない場合は、多くの場合控えられます

が、痛みが永続性/難治性の場合は、整形外科又は介入放

射線科の助言を検討すべきです。椎体形成術や圧迫骨折セ

メント固定術などの新しい医療技術は、脊椎崩壊に伴う痛

みのコントロールに対する代替の選択肢です。

4.2.3. 椎体形成術

この手術は、局所麻酔で軽い鎮静処置を行った後、レン

トゲン画像を利用して、ポリメタクリレート又は同等の生

体 材 料 を 椎 体 の 中 に 経 皮 的 に 注 入 し ま す

(Jensen &

Kallmes, 2002)。幾つかの椎骨を同時に治療可能です。注

入によって局所の痛みが緩和され、骨が強化されますが、

脊椎の高さが回復することはありません。骨髄腫を対象に

椎体形成術を利用した無作為化比較試験は発表されてい

ません。しかし、最近の症例研究(Diamond et al 2004)で

は、本手術によって、痛みスコアと身体障害指標値の有意

な改善が実証されています。

4.2.4. 圧迫骨折セメント固定術

この手術は、小さくて膨らますことが出来る風船を、脊

椎内に経皮的に挿入し、その風船を膨らませて脊椎の高さ

を回復させます。その後、風船を取り出して、空隙を埋め

るために骨セメントを注入します。この方法を使えば、脊

椎の高さを回復することができ、痛みの緩和と身体機能の

改善の両方に有益となる可能性があります。現時点では、

骨髄腫を対象に圧迫骨折セメント固定術を適用した報告

は、複数の症例報告と小規模な症例研究に限られています

(Fourney et al, 2003; Masala et al, 2004)。英国の NICE

(国立臨床品質研究所)(NICE 2003)は、脊椎圧迫骨折に

対する圧迫骨折セメント固定術のエビデンスを検討し、次

の推奨を行っています。

非オピオイド鎮痛剤

+/-補助薬

軽度・中度用のオピオイド

+/-非オピオイド鎮痛剤

+/-補助薬

中度・重度用のオピオイド

+/-非オピオイド鎮痛剤

+/-補助薬

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