下記は、特に断わらない限り、推奨グレード
C
、証拠レ ベルⅢです。再発時期、年齢、治療歴、骨髄機能、及び、他の臨床 状態が異なる個々の患者毎に、それぞれ最も適切な管 理を決めなければなりません。
初期治療としての
MP
療法によってプラトーや寛解 に至った後で、再発したほとんどの患者に最も適切な 化学療法は、経口メルファラン±プレドニゾンの治療 を再開することです(推奨グレードB
;証拠レベルⅢ)。その他の患者にはサリドマイドを検討すべきです
(
推 奨グレードB
;証拠レベルⅡa)
。サリドマイドは単独 投与で始め、6
~8
週間経っても効果の証拠がない場 合には、デキサメサゾンを追加することが適切です(
推奨グレードC
;証拠レベルⅣ)
。治療継続期間につ いては推奨することができません。ボルテゾミブは、全身状態と臓器機能が適度で、予測 寿命が妥当な患者に対する
3
度目の治療に適切です。患者は、可能な限り、臨床試験の枠内で治療を受ける べきです。
十分な支持療法が不可欠です。
16.病後期の管理
骨髄腫は、慢性的に再発を繰り返す難治性の疾患です。
そのため、治療が厳密な意味で緩和医療になる時点を判断 することは難しいことです(Aurel et al 2003)。しかし、治 療を行う主な目的が、病勢の抑制を得るというよりは、日 常生活に支障をきたす症状を緩和することであれば、緩和 医療という言葉を使用することが適切と言えるでしょう。
一般的に骨髄腫では、治療は病態改善と緩和的目的を組み 合わせて行います。
良好な医療を継続することと平行して、臨床チームと患 者の間に良好な関係を保つことが不可欠です。病状が末期 になった場合に行う医療行為及び医療全般について、患者 の希望を積極的に取り上げるべきです。ある患者にはホス ピス介護が適切かもしれませんが、一方で、初期の医療チ ームを通じて支援が受けられる特別な場合には、自宅介護 を希望される患者がいるかもいれません。いずれの場合で も、緩和医療チームは積極的に関与すべきです。
骨の痛みがある場合の管理は、医療行為の重要な部分と なります。鎮痛の方法は第
4
節に記載しています。高カル シウム血症の管理にはビスフォスフォネート製剤が有用 であり、骨の痛みの緩和にも有効であるという報告も行わ れています。骨髄腫の病後期にもビスフォスフォネート製 剤が痛みの緩和に有効かどうかについては、単独で研究さ れていないため、未解決の問題となっています。放射線治 療は病後期でも痛みの緩和に使用できます。また、椎体形 成術や圧迫骨折セメント固定術によって、迅速に痛みを緩 和することができます。他に、病初期であれば簡単に治療できる高カルシウム血 症、腎不全、及び感染症などの合併症が、病後期でもしば しば発生します。そして、このような合併症にどれが適切 な管理法か、或いは、通常病初期に行う治療法をまだ使用 すべきかどうかについて判断することは、医者にとって細 心の注意が必要な課題です。患者や家族に情報を十分提供 して、患者の病状や適切な治療法について、医師と話す機 会をもつことは重要なことです。
16.1.
推奨以下は、いずれも推奨グレード
C、証拠レベルⅢです。
この段階における主な目的は、症状の緩和です。
十分な支持療法と医療を継続することが不可欠です。
緩和医療チームが積極的に関与すべきです。
患者や家族の希望を積極的に取り上げるべきです。
17.患者に対する情報提供と支援
患者が骨髄腫の診断を受け入れ、十分な情報を得て、治 療法を選択肢から選ぶことを助けるには、患者や介護者へ の情報の提供と支援が不可欠です。良好な人間関係のコミ ュニケーション、情報の交換、及び、治療方針決定に対す る患者の円滑な関与は、悪性疾患患者の治療効果に好まし い影響を与えます
(Arora 2003)
。また、時として非常につ らいものになる可能性がある治療レジメンを遵守する重 要性を理解させるのにも役立ちます。診断は、遅滞なく、正直に、かつ細かい注意を払って患 者 に 伝 え る 必 要 が あ り ま す
(Fallowfield and Jenkins 2004)。告知は、プライバシーが保てる静かな場所で、で
きれば近親者や友人と一緒に、専門の看護師も同席して伝 えるべきです。患者とその配偶者/介護者には、適切な質 問をする時間を十分与えるべきであり、数時間から数日間 の間隔をあけて行うのが良いでしょう。個々の患者毎に、聞きたいと望む情報の程度は様々です(Kirk et al 2004)。
患者や家族にとって、治療によって、治癒には至らない が、症状が緩和され、生存期間が延びることになるという ことを理解することが重要な点です。さらに、将来の展望 は、明るくなりつつあり、多くの新しい治療選択肢がある ことを、正しく理解することも重要な点です。通常、治療 を開始した後に、その後の患者の生活の質(QOL)の改善が、
期待できる場合があります(Gulbrandsen et al 2004)。
色々な治療選択肢の利点と副作用のバランスについても、
概要を話しておくべきです。
専門医は、患者のニーズや希望に沿った治療や介護を達 成するように努力すべきです。患者の幅広いニーズに応え るために、基本的な臨床医療行為の範囲を超えて治療を広 げるべきです。医療管理計画については、分かりやすく伝 える必要があり、患者や介護者と相談して決める必要があ ります。また、病例記録にはっきりと記録しておくべきで
す。医療管理計画の変更又は修正があれば、患者へその情 報を伝えるべきです。実際には、医療管理計画に、全ての 内容を網羅すべきであり、治療選択肢が複数ある場合は患 者の好みを反映すべきです。治療決定へ参加する機会を患 者に与えるべきであり(Turton and Cook 2000)、もし患者 が希望すれば、ひとつ以上のセカンドオピニオンを受ける 機会を与えるべきです。
家族の情報のニーズは、多くの場合患者のものとは異な ることがあるため、可能な限りそれに応えるべきです。患 者やその家族/介護者には、病状に関する情報が記載され た、文章化された情報を手に入れることを推奨します。可 能な限り、その情報は、個々の患者に特有なものであり、
その病気に関連した専門的なものであり、治療と介護を受 けている場所に特有なものであるべきです。患者には、そ の医療行為を担当している専門医チームの主要メンバー の氏名を伝える必要があります。そして、そのチームから 助言や支援を求める際の、はっきりとした情報を患者へ提 供しなければなりません。
感情的で心理的な支援は、体系的な形で行うべきです。
補完療法に関して提供される情報は、コンセンサスが得ら れたものでなければなりません。緩和医療の情報は、診断 された時点から提案し提供すべきです。
専門医チームは、その地域や全国的な支援ネットワーク や社会奉仕事業についての情報を、それが骨髄腫に特化し たものであろうと、がん全般に関するものであろうと、患 者や家族に対して情報を提供することができなければな りません。また、現状で利用可能な経済的支援や社会的支 援に関する情報も提供すべきです。骨の症状によっては、
長期の身体的障害につながり、多くの患者で仕事への復帰 の妨げになる場合があります。また、大量化学療法や従来 型化学療法のレジメンも、数ヶ月間にわたって雇用を非現 実的なものにします。一般的に、病状やその治療が原因に なる社会経済的問題に関しても、患者は助言を必要として います。
患者とその家族/介護者には、その地域や全国的な情報 サービス、がんバックアップ(CancerBACUP)、国際骨髄 腫 財 団 英 国 支 部 (
IMF-UK)
、 及 び 白 血 病 研 究 財 団(Leukaemia Research Fund)を紹介すべきです。また、イ
ンターネットで得られる膨大な無規制の情報についても 注意を喚起すべきであり、適切なサイトに関してのみ推奨 を行うべきです(Basch et al 2004)
。17.1.
推奨以下は、いずれも推奨グレード
C、証拠レベルⅢです。
病気の全期間を通じて、患者にはいつでも治療の決定 に関与する機会を与えるべきです。
可能な限り、情報は書類で提供すべきです。
感情的で心理的な支援は、体系的な形で提供すべきで す。
謝辞
こ の ガ イ ド ラ イ ン は 、 国 際 骨 髄 腫 財 団 英 国 支 部
(IMF-UK)からの教育的助成金の支援で作成されました。
管 理 上 の 支 援 に つ い て は 、
Ms Kirsty Jamieson, Sarah-Jane King
及び、Ellen Mossman [IMF(UK)]
に 対し、また、議論や助言提供については、他の専門の次の 代表者: Dr Helen Lucraft (
臨床腫瘍学),
北部がん治療セン ター(ニューカッスル); Dr Neil Iggo (
腎臓病学),
王立サ セックス州病院(
ブライトン); Dr Margaret Hall-Craggs (
放射線医学),
ミドルセックス病院(
ロンドン); Dr Mary Reilly (
神経学),
国立神経科・脳神経外科病院(
ロンドン);
Dr Penny Shaw (放射線医学),
ロンドン大学(ロンドン)に 対して感謝します。補足資料1
編集グループメンバー
UK Myeloma Forum (UKMF): Dr Supratik Basu, New Cross Hospital, Wolverhampton; Dr Judith Behrens, St Helier Hospital, Carshalton; Dr Jenny Bird, Bristol Royal Infirmary, Bristol; Dr Mark Drayson, Queen Elizabeth Medical Centre, Birmingham; Dr Shirley D’Sa, Mount Vernon Hospital, Northwood; Dr Graham Jackson, Royal Victoria Hospital, Newcastle-upon-Tyne; Dr Atul Mehta, Royal Free Hospital, London; Dr Guy Pratt, Birmingham Heartlands Hospital, Birmingham; Dr Hamish Ross, Northampton General Hospital, Northampton; Dr Simon Rule, Derriford Hospital, Plymouth; Dr Richard Soutar, Glasgow Western Infirmary, Glasgow; Dr Charles Singer, Royal United Hospital, Bath; Dr Alastair Smith, Southampton General Hospital, Southampton; Dr Jane Tighe, Aberdeen Royal Infirmary, Aberdeen; Dr Cathy Williams, Lincoln County Hospital, Lincoln; Ms Shirley Crofts, Royal South Hants Hospital, Southampton.
Nordic Myeloma Study Group (NMSG): Dr Niels Abildgaard, A°rhus Universitetshospital, A° rhus C, Denmark; Dr Kristina Carlson, Akademiska Sjukhuset, Uppsala, Sweden; Dr Inger Marie S Dahl, Med avd A A, Hematologisk seksjon, UNN, Tromso, Norway; Dr Peter Gimsing, Rigshospitalet, Kobenhavn O, Denmark; Dr Erik Hippe, Med-hamat afd L,KAS Herlev, Herlev, Denmark; Dr Martin Hjorth, Sjukhuset i Lidko¨ping, Lidko¨ping, Sweden; Dr Gunnar Juliusson, Universitetssjukhuset, Linko¨ping, Sweden; Dr Lene Knudsen, Rigshospitalet, Kobenhavn O, Denmark; Dr Stig Lenhoff, Specialmedicinska klinik/hematologi, Univ.sjukhuset, Lund, Sweden; Dr Olle Linder, Unviersitetssjukhuset, O¨ rebro, Sweden; Dr Ulf-Henrik Mellqvist, Sahlgrenska Univsjukhuset, Gothenburg, Sweden; Dr Ingemar Turesson, Universitetssjukhuset MAS, Malmo¨, Sweden; Dr Anders Waage, St. Olavs Hospital, Trondheim, Norway;
Dr Jan Westin, Specialmedicinska klinik/hematologi, Univ.sjukhuset, Lund, Sweden; Dr Finn Wisloff,
Ulleva°l Universitetssykehus, Oslo, Norway.
International Myeloma Foundation (UK) [IMF (UK)]:
Mr Eric Low, Ms Tracy King.
補足資料2
英国の医療組織に対する推奨
英国の適切な医療環境において責任ある医師は、UK
NHS
戦略に従って、承認を受けたがんネットワークの一 部として働くべきです。そして、英国の医療センターは、英国標準化委員会の血液学・臨床血液学専門委員会(1995) が定義したレベル1の医療行為に要求される規格に適合 しなければなりません。また、センターは照会に対して
2
週間の政府規格を達成する能力がなければなりません。そ して、登録や診療評価のための症例データベースを保存し なければなりません。学際的医療チームの機能(以下の推奨はレベルⅣの証拠に 基づいたグレード
C
です。)骨髄腫患者に対する臨床サービスは、学際的(血液学と 腫瘍学)チーム(MDT)によって行わなければなりません。
全ての骨髄腫患者に、一様に高い規格の医療を与えるべき であり、これは、学際的医療チーム(MDT)を基にしたアプ ローチにより最大限に達成されます。英国の国立臨床研究
所
(NICE)
のガイドラインでは、学際的医療チーム(MDT)
が少なくとも
50
万人以上の人にサービスを行うべきこと が推奨されています。がん標準規格マニュアルに記載されている、学際的医療チ ーム(MDT)の目的を以下に示します。、
個々の患者の診断、治療、及び介護に関する全ての局 面での決定や、チーム運営上のポリシーに関連する決 定は、学際的な決定となるため、指名された専門医が チームと一緒に効率よく働けることを保障するため。
臨床上の判断情報や臨床管理/評価の支援のために 収集された適切な情報を有する、広く認められている ガイドライン(前に照会したガイドラインも含む)に 従って医療行為を提供することを保証するため。
臨床試験に適格な患者の参加を支援するために必要 となるメカニズムを保障するため。
骨髄腫患者にとって、学際的医療チームのアプローチは、
部分的に重要です。なぜなら、通常がんセンターに専門医 を見出すことが困難なことに関連して、骨髄腫患者の診断、
治療、及び介護が非常に困難な場合が有り得るからです。
学際的医療チーム(MDT)によって、患者の病期、一般状態、
及び患者の優先順位や好みなどに注意を払った、個人的な 医療進路を個々の患者に与えるために必要となる共通の プロトコルが保障されます。
中心となるチームには以下のメンバーを含めるべきで す。