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特別支援教育 就労をめざして

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(1)

特別支援教育

就 労 を め ざ し て

∼一人ひとりの自立・社会参加に向けて∼

平 成 2 2 年 3 月

山口県教育委員会

(2)
(3)

はじめに

障害のある生徒が自立・社会参加する上で企業等への就職は重要であり、就職は

生活を維持していくことはもちろんのこと、社会への貢献、自分の夢や希望、生き

がいといった自己実現にもつながるものです。

総合支援学校高等部の生徒は、学校における職業教育や就労支援等に加え、企業

等の協力を得て実施する現場実習を通して、就職に必要となる知識、技能、勤労態

度等を身に付けています。また、この現場実習が企業等への就職に結び付くことも

多く、実習先を確保することは、就労支援の重要な課題となります。

このため、各総合支援学校では、企業やハローワーク(公共職業安定所)、障害者

就業・生活支援センター等の関係機関の参画を得た協議会や企業訪問等を行い、就

職を希望する生徒の実習先の確保や雇用の要請に積極的に取り組んでいます。

生徒の就職に向けては、生徒自身が自己の職業に関する興味、適性、能力等を理

解し、仕事を行う上で必要となる知識・技能の向上を図るとともに、現場実習にお

ける企業等からの評価や助言を活かし、あいさつや言葉遣いなどの社会人としての

マナーやルールを習得していくための教育の充実を図っていくことが必要です。

そこで、この度、障害のある生徒一人ひとりの実状に即した職業教育や就労支援

の一層の充実を図るため、本冊子「就労をめざして」を作成しました。

本冊子は、現場実習の進め方や現場実習先の開拓の手順とともに、生徒への支援、

実習での成果や課題を活かした授業改善、家庭や関係機関等と連携した支援、就労

や職場定着を図る上での指導のポイント等についての事例等で構成されています。

また、障害のある生徒の就職のためには、早期からの指導や支援が必要ですので、

キャリア教育の視点からも、小学部や中学部における指導や支援のポイントを解説

しています。

総合支援学校の高等部には、中学校の特別支援学級出身の生徒も多く在籍してお

り、進学時の指導内容の系統性の確保や指導や支援の引継ぎが大切になります。特

別支援学級担当者が総合支援学校の取組についての理解を深めたり、保護者の方へ

職業教育や就労支援に関する情報を提供したりする際に活用することもできます。

各学校では、本冊子を参考にし、保護者の方、地域、企業、関係機関等と連携を

図りながら、早期からの一貫した、系統的な職業教育、就労支援に取り組み、校長

をはじめ、全教職員が一体となって、就職を通して生徒の自立・社会参加が実現さ

れることを期待します。

平成22年3月

山口県教育委員会

(4)

目 次

ページ

1 現場実習に向けて

(1)現場実習とは

・・・ 1

(2)現場実習の開始

・・・ 3

(3)現場実習の進め方

・・・ 4

(4)現場実習先の開拓

・・・ 5

(5)生徒への支援

① 就労に必要となる力

・・・11

② チェックリストの活用

・・・12

③ 現場実習の意義を知る

・・・15

<参考①>キャリア教育の視点に立った早期からの指導や支援

・・・16

<参考②>キャリア教育に関連が深いと考えられる各教科の内容構成の観点

・・・17

<参考③>各学部段階での指導や支援のポイント

・・・18

(6)現場実習の評価・事後指導の工夫

・・・19

(7)現場実習を活かした授業改善

・・・21

(8)保護者の方との連携

① 学校の職業教育・就労支援についての理解啓発

・・・24

② 家庭の協力による現場実習の充実

・・・25

(9)企業・関係機関等との連携∼就労支援のネットワーク∼

・・・26

(10)職業教育の充実

・・・29

2 現場実習を活かした就労支援の充実

<事例①>現場実習先からの気付きを活かした授業改善

・・・32

<事例②>企業と連携した職場定着

・・・34

<事例③>現場実習への参加に向けた指導や支援

・・・36

<事例④>生徒の長所を活かした就労

・・・38

<事例⑤>職業自立と生活自立に向けた支援∼通勤寮の活用∼

・・・40

<事例⑥>障害者就業・生活支援センターと連携した支援

・・・42

<事例⑦>離職経験のある卒業生への支援

・・・44

事例から学ぶ∼職業教育・就労支援の充実に向けて∼

・・・46

3 資料編

<資料①>就労支援のための制度の概要

・・・52

<資料②>就労支援のための相談機関・支援機関の概要

・・・57

(5)

総合支援学校高等部では、企業等の協力を得て、生徒の希望や障害の状態等に応じた現場実習 を実施しています。現場実習の在り方や進め方等、基本事項を確認しておくと、実習先への説明 の際にも役立ちます。 総合支援学校では、自立・社会参加をめざし、各教科や領域、教科等を合わせた指導の中で、 働く力や生活する力を高めるために必要な知識、技能及び態度を身に付ける学習を進めています。 <現場実習のねらい> ◎生徒にとって ・定時の出勤、勤務中は仕事に専念するなどの働く習慣を身に付けます。 ・働くことの喜びや厳しさを体験を通して学びます。 ・職場内のルールや職場の方々とのかかわり方を学びます。 ◎学校にとって ・校内での学習の成果を確認します。 ・自立・社会参加に向けた課題を探ります。 ・今後の職業教育・就労支援の取組の参考にします。 ◎保護者の方にとって ・生徒の適性や希望する職業についての理解を深めます。 ・保護者の方や生徒の希望を踏まえた現実的な進路について考えます。 ・卒業後の生活をイメージした家庭での支援について考えます。 ◎事業所にとって ・障害のある生徒の特性を理解できます。 ・雇用の可能性を探るきっかけになります。 ・従業員の教育力の向上や企業のイメージアップにもつながることが期待されます。 高等部職業学科では、従来、各教科における「課題研究」や各科目(知的障害者のある生徒に 対する教育を行う場合は各教科)の実習の一部として、産業現場等における実習(以下、現場実 習)が行われていました。現場実習は、実際に職場で必要となる知識や技術・技能に触れること ができるとともに、生徒が自己の職業適性や将来設計について考える機会となり、主体的な職業 選択の能力や職業意識の育成を図ることができます。このため、今回の学習指導要領の改訂にお いて、普通科を含めたどの学科(各教科)においても、現場実習などの就業体験の機会を積極的 に設けるとともに、地域や産業界等の協力を積極的に得るよう配慮することが示されました。 現場実習においては、職業生活や社会生活の実際を経験することを通して、働く力を身に付け、 社会に貢献することの意味を理解し、自己実現に向けた進路選択につなげることが重要です。

(1)現場実習とは

総合支援学校では、将来の自立・社会参加をめざした指導や支援を行っています。 生徒が働く力を身に付け、就労するために重要なのが企業等での現場実習です。 ◆現場実習は教育活動の一環として実施され、以下の点に留意します。 ・実習期間中は、実習先の方針に従います。 ・実習に必要な経費は、実習生が負担します。 ・教育活動の一環として実施しますので、賃金等はありません。 ・実施期間中の事故については、学校や保護者の方が対応します。 ※日本スポーツ振興センターの災害共済給付の対象となります。 本マニュアルの「現 場実習」は、学習指導 要領では、「産業現場 等における実習」と示 されています(産業現 場等とは企業、福祉施 設や地域作業所等を指 します。)。

(6)

総合支援学校高等部では、各学校に在籍する生徒の実状に応じて、1年生の段階から現場実習 を実施しています。 生徒の仕事に対するイメージ(職業観)は、通常、次のような段階を経て育ま れていくと考えられており、現場実習を経験しながら、自己理解の深化と自己受 容に基づく職業選択の意欲や態度を形成していくことが大切です。 ・夢や希望、憧れ ・理想と現実のギャップ ・進路の現実的な吟味 ・働くこと、職業 ・生き方や職業の探究 ・現実と理想との折り合い へのイメージ ・実現可能な目標設定と達成への意欲 各学校で実施する現場実習の学年別の目標や内容等の大まかな流れを下図に示しています。 <現場実習の段階(例)> 学年 生 徒 教 職 員 <働くことを経験する> ・生徒へのアセスメントを行う。 個 ・自己を理解する。 ・職業教育・就労支援に関する経験と 保 別 高 ・自分の将来を考える。 知識を得る。 の 等 「卒業したらどうするのか。」 ・企業への啓発を図る。 護 教 部 「卒業したらどうなるのか。」 ・職場体験先の開拓を進める。 育 1 「3年後社会に出る・就労する。」 者 支 年 援 「今どうすればよいか?」 の 計 「これからどうすればよいか?」 画 <進路選択の参考とする> ・実習先からの評価を活かす。 方 ・ ・自己理解を深める。 ・指導内容の充実・発展を図る。 個 高 ・自分の置かれている現実を認識する。 ・就労先としての職場の開拓を進める。 と 別 等 ・自分の課題を明確にする。 の 部 「今の自分の力はどのくらいか。」 の 指 2 「将来どんな仕事ができるか。」 導 年 連 計 「これからめざす自分の姿は?」 画 「今何を試し、努力するか?」 携 の 高 <進路決定・就労準備を行う> ・卒業に向けて支援体制を整える。 作 等 ・これまで身に付けた力を確認する。 ・事業所、地域・関係機関との連携に ・ 成 部 ・現実との折り合いを付ける。 基づく就労支援を行う。 ・ 3 ・生活の楽しみを考える。 協 活 年 用 力 卒 業 ・ 社 会 生 活 段階的な現場実習の実施により生徒の自立・社会参加を促します。

(7)

現場実習の充実を図り、生徒の自立・社会参加につなげるためには、実習を進めるに当たっ ての様々な工夫が必要となります。 総合支援学校で実施した現場実習に対する企業からの意見を以下に示します。実習の計画を立 てたり、進めたりする際の参考にしてください。

(2)現場実習の開始

<○:成果 ●:留意点> 1 事前打合せ ○実習生のできる(得意な)こと、できない(苦手な)ことを知る手段として有効だった。 ○実習(業務)内容を事前に教員に伝えることができた。 ○実習生についての情報を同じ職場の職員に周知できた。 ●緊急時の連絡先(学校以外、自宅や本人)を教えてほしい。 ●業務内容や作業量等の決定には実習生の知識・技能等に関する詳細な情報が必要である。 ●保護者の方からも実習生の日常生活に関する情報がほしい。 2 通勤指導 ○安全確保、スムーズな現場実習を行うために必要である。 ○実習生や保護者の方が企業について事前に知るために有効である。 (企業の担当者や実習内容、職場のきまりや持参物、トイレ・更衣場所、初日の受付場所等) 3 実習生 ○実習の意義を理解している実習生は、業務に取り組む姿勢が大変よい。 ○事前打合せで苦手だと聞いていた内容にも、実習生が真面目に取り組み、努力する姿が見られた。 ●困難を改善するための指導が必要である(疲れやすい、集中力が持続しないなど)。 ●自力で通勤できるとよい。 ●現場での作業速度についていけない。 4 巡回指導 ○実習期間の初めは、実習生の不安も強く、担任等からの指導・助言は心強かった。 ○定期的に巡回されていてよい。 ○事業所の担当者からの指示を分かりやすく伝えてもらい助かった。 ●事業所と学校における実習生の態度や表情の違いなどの実態把握の機会としてほしい。 ●巡回指導が多いと、実習生自身の職場意識が薄れてしまう。 ●巡回指導を実習生に気付かれないようにする工夫も必要である。 ●実習先の働く現場に行く前に、事務所に直接出向いてのあいさつが必要である。 5 保護者 ○実習に協力的であった。 ○実習生への細かい心配りに実習は難しいと感じたが、実習生は予想以上の力を発揮していた。 ●自力通勤できるように、保護者の方の協力が必要である。 ●実習生が家庭で実習について述べたことが日誌に書いてあると参考になる。 ●実習生の適性や希望する方向性について、保護者の方の意見を聞いて、実習に役立てたい。 6 事前指導 ●次のことを事前に指導しておくとよい(巡回指導の際の視点にもしてほしい。)。 ・あいさつ ・場や相手に応じた声の大きさ ・意思表示 ・分からないことは相談 ・自分から質問する姿勢 ・メモをとること ・社員として働くことの理解 ・事業所の仕組み、一日の流れ、作業の流れ、作業量 7 実習後の感想・障害者雇用の視点等 ○実習回数を重ねることで、仕事を覚え、責任感も芽生えてきた。 ○黙々と作業をこなす実習生の姿を見ていると、できるところを伸ばしたいと思う。 ●本人の適性によっては難しい職種や部署もある。 ●自信がなくおどおどする実習生は、まず一つのことに続けて長く取り組ませ、成果を出すとよい。 ●実習生の状況に応じて、雇用形態、勤務時間、賃金等を相談したい。 企業へのアンケートから

(8)

総合支援学校における現場実習実施の手順の例を示します。

現場実習先の開拓 (通年) 本人・保護者の方の実習希望先の調査 現場実習先の検討 現場実習先候補への依頼・承諾 キャリア教育全体計画、 進路指導計画の作成 (現場実習の位置付け) 進路希望調査 個別面談・家庭訪問 (個別の教育支援計画、個別の指導計画の作成・活用)

(3)現場実習の進め方

事前学習 実習先訪問・職場見学 実習前保護者懇談(三者懇談) 通勤練習

現場実習先通知・書類手続き 実習先訪問・事前打合せ(教員) ○実習の目的や方法 ○実習生の様子 ○書類手続き依頼

<教 員> ○実習初日と最終日のあいさつ ○巡回指導 ・生徒の様子の把握と必要に応じた支援 ○巡回指導連絡会の実施 ・情報共有と必要に応じて対応の検討 <保護者> ○初日と最終日の立会と宿泊手続(宿 泊を伴う場合) ○実習先訪問(家庭との連携や本人の 様子を知っていただくために設定) ○家庭での様子を学校に連絡

現場実習報告会 自己評価 礼状作成 実習後保護者懇談(三者懇談)

実習の評価 成果と課題の整理 課題の見直しと新たな課題設定 ○次の実習に向けての課題 ○今後の授業における課題

(9)

これまでも、各総合支援学校では進路指導課(部)等に所属する教員を中心として、障害のあ る生徒の現場実習先の開拓に努めており、昨今の厳しい雇用情勢の中では、生徒の現場実習を受 け入れていただける企業を開拓することがますます重要となっています。 このため、企業の担当者の方との電話でのやり取りに慣れていない教職員向けに、担当者の方 との連絡の取り方等を電話でお願いする際の資料を作成しました。 各学校では、この資料を学校の実態や地域の実状に応じて修正を加えながら、企業への働きか けに活用してください。

職場開拓マニュアル

1 職場開拓の目的 <生徒にとって> ○一人ひとりの実態に合った現場実習・就労先を見つけることができる。 ○多くの実習先を確保することで、生徒の多様な就職希望に対応できる。 ○職業選択という自己決定の機会が職業観の育成につながる。 ○実習を通じて、就労に必要な技能や態度等が身に付き、職場定着につながる。 <理解啓発> ○総合支援学校の児童生徒の実態や活動状況を地域の方々に知ってもらえる。 ○障害のある生徒も、仕事の内容や指示の仕方を工夫するなどにより就労が可能であり、 社会に貢献できることを多くの方に理解していただくことができる。 <教育の充実> ○卒業後の就労という長期的展望に立った教育活動を計画・実施することができる。 ○社会のニーズを知ることが、指導の幅を広げることにつながる。 ○様々な企業等から総合支援学校の教育に対する認識、期待、要望等を直接聞く機会となる。 ○社会の状況や経済動向等を知るよい機会となる。 ○企業の幅広い視点や新たな考え方に触れる貴重な機会となる。 企業の方にお願いをしても、すぐに実習や就労に結び付くとは限りませんが、総合 支援学校の児童生徒や教育について、多くの方に知っていただくことが職場開拓の上 で大切です。まずは、『話を聞いていただければ大成功!』という、前向きな気持ち で取り組んでいきましょう。 2 職場訪問・開拓の方法 【職場訪問・開拓の手順】 企業の選択 → 連絡(アポイント) → 企業訪問・説明 → 記録・報告

(4)現場実習先の開拓

(10)

(1)企業の選択 <情報収集> 現場実習をお願いする企業をリストアップする際、情報をどのようにして収集すればよ いでしょうか。 ○ハローワークの求人情報 ○地域の行事や集会、研修会等で得た情報 ○通勤の途中などで得た情報(気になっている会社や工場等) ○新聞広告やチラシ等の求人情報 ○関係機関、保護者の方等からの情報 ○過去の実績 ※ 生徒や教職員の身近に企業関係者の方がいれば、その方に仲介を依頼したり、 これまでに付き合いのある企業を選んだりすると、スムーズに交渉できます。 <依頼先の選択> ○地域的な条件 ・生徒が通勤可能な範囲(公共交通機関で通勤可能であることが必要条件) (ただし、実習先を開拓する場合は、場所を問わない。) ○業種・職種面での条件(生徒ができる仕事であること) 製造業は、比較的単調な作業が多く知的障害のある生徒に向いていると言われ、 多くの卒業生が就職してきましたが、近年はクリーニング・清掃業・流通などの求 人が増え、このようなサービス業へ就職するケースが増えています。 一般的に、知的障害のある生徒には下記のような仕事が向いていると言われています。 ①見通しがもちやすく、繰り返しの工程が一定量あるもの。 ②単純な手順の工程を指導者の指導のもとに覚えていけるもの。 ③機械の操作が簡単でセットするだけで完成するようになっているもの。 具体例として下記のような仕事があげられます。 製造系作業 ライン作業、単純な機械操作 事務系作業 パソコン入力、社内郵便物等の仕分け等、庶務、軽作業 物流部門諸作業 入庫検品・棚入、ピッキング、発送準備、梱包作業 小売販売周辺作業 商品のパック・袋詰、品出し、商品の陳列・整理、接客 飲食店・厨房周辺作業 店内フロア清掃、調理器具・食器の洗浄、盛り付け、 調理補助、接客 サービス業の諸作業 クリーニング、リサイクル、清掃、介護等の補助作業 <企業の状況等に応じた留意点> ○ 人事担当部署が設置されている企業の場合は、人事担当者に連絡するようにします。 ○ 総合支援学校ということで敬遠されることもあるかもしれませんが、多種多様な業務 を行っている企業では、生徒に適した仕事を発見できる可能性もありますので、まずは 見学をお願いするようにします。 ○ 障害者雇用率の充足に向け、雇用に関心をもっている企業も増えているので、積極的 に連絡やお願いをしてみましょう。 ○ 家庭的な雰囲気で個別の指導や臨機応変な対応が期待できる場合や、スピードや効率 性を優先し、生徒への個別の対応をお願いすることが難しい場合があるなど、様々な職 場がありますので、企業の方針を理解するように努めましょう。

(11)

○ 経営者が人事関係の窓口となっている場合、実習等の話がスムーズに進みやすい傾向 にありますが、時期によっては多忙となるため、連絡するタイミングを考える必要があ ります。 ○ 企業によっては、景気の影響を受けやすく、雇用の継続が不安定になる可能性もあり ます。 ○ 大きな集団の中で人間関係が希薄になって孤立してしまったり、比較的少人数で固定 された人間関係に馴染めなかったりするなど、人間関係のトラブルが深刻になり、離職 に至ることも考えられるので、留意が必要です。 (2)連絡(アポイントメントの依頼) 企業等を訪問してお願いする前には、必ず電話で訪問日時の約束をします。 <電話をかけるときのマナー> ○ 電話をかける時間は、一般的には午前中の方がつながる可能性が高いよう です。ただし、会社の規模や職種によって事情は異なります。例えば、食品 会社等、午前中が忙しい場合は午後がよいでしょう。また、昼の休憩時や月 曜日の朝一番などは慎みましょう。 ○ 要領よく短時間で用件を伝えます。そのため、電話をかける前に用件を整 理し、メモ用紙・筆記用具・資料等を手元にそろえておきます。 ○ 相手の方に、学校名と氏名(「△△総合支援学校の◇◇です。」)を明瞭な 発音で伝え、「今、お時間をいただいてもよろしいでしょうか。」と、相手の 都合に配慮することが必要です。 ○ 話を聞いていただけるようであれば、用件を簡潔に伝えます。 ○ 話すときには笑顔で話すことが大切です。必ず感じのよい会話になります。 ○ また、お互い顔の見えない電話では、「あいづち」が重要となります。 ○ 早口は聞き取りにくいので、電話では少しゆっくりと話すことが必要です。 ○ まわりくどい表現は伝わりにくいので、簡潔、明確さに気を付けます。 ○ 明瞭な発音に気を付け、特に、人名・固有名詞・類音語・数字等は、誤解 のないように確認が必要です。 ○ 総合支援学校で使用する専門用語は避け、相手の方が理解できるように説 明することが重要です。 【電話によるお願いの例】 ステップ1 「人事担当者への依頼」<初回> おはようございます。私は、○○○○学校の○○と申します。 突然お電話して申し訳ありません。人事を担当されている方をお願いします。 (中小企業の場合は経営者が直接電話に出られることが多い。) ※ 担当者が不在、あるいは忙しいときは、次に、いつ頃かけ直せばよいか確認して おきます。 ※ 取り次ぎの段階で、「どのようなご用件でしょうか?」と尋ねられることもありま すが、その際は、ステップ2の「訪問の目的を話す」を参考にしてください。

(12)

ステップ2 「訪問の目的を話す」 (相手の方が出られたら) 初めまして、私、○○○○学校の○○と申します。(お忙しいときにお電話をして申し 訳ありません。)お時間をいただきありがとうございます。 本日は、本校生徒の現場実習をお願いするため電話をしました。本校では、生徒の社 会自立に向けた学習の一環として、地元の企業にお願いして、2週間程度の体験実習を 実施させていただいております。その実習先を広く求めており、職員が各事業所を訪問 して、趣旨等を説明させていただいております。 ○○様(相手の方)の御都合のよいときに、お時間をいただき、お話を聞いていただ けませんでしょうか。 ※ 場合によっては、生徒の実態、実習の様子等について尋ねられる場合もあります。 そのときは、次の「(3)企業訪問・説明」を参考にしてください。 ※ 「なぜ、当社に電話をしたのか?」と情報の出所を聞かれることもありますが、 そのときは、「職業安定所に協力をいただいており、一般に募集を出されている企業 のリストを参考にお電話しました。」と説明してください。 ※ 多くの場合、この段階で、「今不況で、仕事がない。」、「人員は一杯で受け入れる 余裕はありません。」などの理由で、訪問を渋られることがあります。 しかし、すぐに諦めず、相手の方の雰囲気に応じて、「総合支援学校の教育につい て、少しでもお話を聞いていただけませんでしょうか。」と、お願いします。それで も断られた場合は、「また機会がありましたらよろしくお願いします。お忙しいとこ ろありがとうございました。」と言って、電話を切ります。 ※ また、既に実習や、障害のある方を引き受けられている企業に当たるかも知れま せんが、その場合も生徒の実習のお願いであることを伝え、話を進めてください。 ステップ3 「訪問の約束」 (相手の方に興味を示していただけたら) 訪問について、御都合のよろしい日時をお聞かせいただけないでしょうか。 (日程調整のため、事前に自分の都合が付く日を複数用意しておく。) どうもありがとうございました。それでは○月○日○時にうかがいますので、よろし くお願いいたします。失礼します。 ※ 相手が先に電話を切ったことを確認してから電話を切ります。 ※ 約束が取れたら、必ずメモをしておきます。 ※ 電話連絡の際、相手から「少し考えさせてください。」、「現場と相談してみます。」 というように、すぐに返事をいただけない場合があります。しばらく待たなければな りませんが、後日こちらから電話をすることを必ず伝えてください。「また連絡しま す。」と言われても、かかってこないこともありますので、一定の期間(数日程度) をおいて、必ず確認の電話をしてください。 (3)企業訪問・説明 相手に伝えたい用件(説明事項)は下記の通りです。 必要に応じて取捨選択して話してください。

(13)

① 本校の生徒の障害の状況を説明します。 → 施設・設備面での対応から、実習の引き受けができないケースもありますので、 生徒の状況を十分に説明します。 ② 小学部・中学部・高等部の3学部からなり、それぞれ小学校・中学校・高等学校 に準じた教育を行っていることを説明します。 → 「高校生」と同じ年齢段階の生徒の実習依頼であり、高等部には中学校の特別 支援学級から入学している生徒が多いことにも触れてください。 ③ 高等部の卒業生の約3割程度が一般事業所に就職しており、卒業後の社会的自立 に向けて、「作業学習」や「職業実践」の中で様々な物を生産する学習活動等に取り 組んでいることを説明します。 → 学校の教育活動・現場実習については、学校要覧等を参考に話を進めてもよい です。また、卒業生就職先企業、及び実習協力先企業一覧を使って、数多くの企 業に協力していただいている現状も知らせてください。 ④ 作業学習の延長として、また、将来の進路決定のため、事業所で現場実習を行っ ており、高等部○年生が○月に○日間の実習を行うことを説明し、理解・協力を求 めます。 → パンフレット(各学校で作成したもの)を活用してください。 ⑤ 現場実習は、学校の教育活動の一環として実施することを説明します。 → 現場実習は、実社会で働く経験をすることに目的を置いており、無報酬である こと、担当教員が決まっており、実習時間や仕事内容は事前に協議を行い、実習 中は定期的に巡回指導を行うこと、通勤は学校や保護者の方が責任をもって行い、 万一の事故については学校の保険が適用されることなども説明をします。 ⑥ 実習を引き受けていただけるか尋ねます。 → 今回の連絡は、現場実習の依頼であり、将来的には職場開拓、職域の拡大につ ながる可能性もありますが、この段階では、具体的な実習の依頼(時期や人数等) はせずに、やり取りの中で受け入れの感触を感じ取るようにします。 → ここまで話が進めば、「実際に生徒を見なければ分からない。」といったお話を いただくことがあります。そのときには改めて担当教員が連絡し、日程を調整し た上で、必ず訪問する約束をしてください。 ⑦ 職場見学のお願いをします。 → 生徒の進路希望も多様なので、職場見学をし、仕事の様子を見せていただくよ うお願いします。 → その際、業務内容、従業員数、年齢構成等の質問を行い、実習を引き受けてい ただけるならどんな仕事内容があるか尋ねます。また、事業所の雰囲気や規模な ども確認してください。 ⑧ 詳しい問合せや疑問は学校まで連絡してほしい旨を伝えます。 → パンフレットの裏に地図と電話番号が書いてあることを伝えます。 その他、生徒について伝えておきたいことがあれば伝えます。 (例)・応用力に課題はあるが、作業手順を覚えるとコツコツと取り組める。 ・難しい読み書きが苦手だが、衣服の着脱、食事、排泄等は一人でできる。 (キラリンピック等の活躍などを宣伝すると効果的です。) ※様々な機会をとらえての訪問・開拓 場合によって、連絡を取らずに教職員が学校への通勤途上や現場実習の巡回指導の 途中に、事業所を直接訪問させていただくことも考えられます。

(14)

その際、業務の合間をぬって、わずかな時間でも取っていただけることもあります ので、十分感謝の意を伝え、説明を行います。 突然の訪問の理由を述べ、誠意をもって説明することが重要です。 人事担当の方に会うことができない場合、パンフレットを渡して、後日、連絡する こともできます。 (4)記録・報告 訪問した後は、速やかに「職場訪問記録」に必要事項を記入します。その際、率直な 感想を、「所見・感想」欄に書きます。これが、職場選択に役立つことがあります。 3 おわりに このマニュアルは、これまでの職業教育・就労支援の活動を基に、整理・作成したも ので、初めての方でも使用できるように編集しています。何度も繰り返して表現してい る箇所が多くありますが、一般の企業等へのお願いですので、丁寧な対応が求められます。 また、職場開拓に物理的、心理的な負担を感じられる方もあるかも知れません。しかし、 生徒の就労や社会自立に是非必要なものであることを認識し、前向きに取り組むことが 大切です。 平成22年7月に施行される障害者の法定雇用義務数の改正により、企業の障害者雇 用の意識は高まることが予測できます。現在は受け入れが難しいと断られた企業でも、 今後、業績や人員配置が変わる可能性もありますので、1∼2年後に再度交渉してみる 価値は十分にありそうです。 <単なる出口指導ではない現場実習> 企業等での現場実習は、生徒が社会に出ていくために行う体験学習であり、特に、高 等部3年時の実習は、進路の決定に重要なものです。 現場実習は、「卒業したらどこに行くか」という、単なる出口指導ではなく、生徒が 自己の在り方や生き方を考え、主体的に進路を選択できるようにするために行うもので す。 このため、現場実習の実施に当たっては、生徒が自己表現・自己選択・自己決定する 力を育てることに指導や支援の重点を置くことが必要です。さらに、現場実習だけでな く、各教科等をはじめとした学校生活全般において、次の3点を踏まえた指導目標や内 容を設定するようにします。また。家庭にも協力を依頼することが重要です。 ●自分のことは可能な限り自分で行う基本的生活習慣を確立する。 ●周囲の人とのかかわりにおけるマナーや常識を身に付ける。 ●周囲の人と協力したり、自分の責任を最後まで果たしたりする力を身に付ける。 進路の自己選択・自己決定 卒業後の社会生活

(15)

生徒一人ひとりに即した職業教育や就労支援を進めるためには、就労のために必要とされるこ とを整理し、生徒はどの部分が得意で、どの部分に課題があるかを的確に把握することが重要で す。また、的確な実態把握は、系統性・発展性のある実習につながります。 <就労のために身に付けさせたい課題(例)>

(5)生徒への支援

①就労に必要となる力

「基礎・基本的な知識・技能」

※障害者職業総合センター「知的障害者の就労の実現のための指導課題に関する研究」を参考に作成

「基本的な生活習慣」

【日常生活】 ・食事・排泄・着替え・清潔 【職業生活】 ・仕事に集中して取り組む。 ・仕事に責任をもつ。 ・注意を受け入れる。 ・決められたルールを守る。 【協調性】 ・あいさつができる。 ・勝手に行動しない。 ・迷惑をかけたら謝罪できる。 ・お礼が言える。 【意思表示】 ・返事ができる。 ・作業終了の報告ができる。 ・指示や説明を正しく聞き取る。 ・分からないことが聞ける。 【一般的な知識】 ・110番、119番が分かる。 ・水、ガス、電気を大切に使う。

「読み・書き・計算」

【時間の理解と管理】 ・仕事に行く日が分かる。 ・時計で大体の時刻が読める。 ・日付や曜日が分かる。 【数の理解】 ・簡単な数字を読んだり書いたりする。 ・簡単な数をかぞえる。 ・簡単な乗法・除法の計算をする。 【言葉の学習】 ・ひらがなや簡単な漢字を読む。 ・看板や標識がわかる。 ・ひらがなや簡単な漢字を書く。 【金銭管理】 ・勤労により報酬を得られることが分 かる。 【安全】 ・危険なものや危険なことが分かる。 ・危険が分かり、指示に従う。

「 働 く 意 欲 」

<参考:就労可能と考えられる段階(例)> 概ね8∼10歳の発達年齢で、就労や社会生活の基本的な準備がほぼ整ったと考えること ができます。 課 題 主に学習する段階(教育要領・学習指導要領) 基本的な 排泄・着替え・清潔等 幼稚園 生活習慣 あいさつ・返事、責任感、きまり、仕事等 幼稚園、小学校1・2年(道徳)∼ ひらがな・漢字の読み・書き 小学校1年∼ 読 み ・ 時刻の読み方 小学校1年 書 き ・ 時間の単位(日) 小学校2年 計 算 等 整数の乗法 小学校2年(九九)・3年 整数の除法 小学校3年∼

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職業教育や就労支援を組織的・計画的に進めるために、各学校における指導内容・方法の設定 と、授業改善の取組を進めるための参考資料として、「就労支援のための訓練生用チェックリス ト」(高齢・障害者雇用支援機構:障害者職業総合センター.平成20年3月)を紹介します。 領域 No. チェック項目 内 容 評価 1 生活のリズム 起床、食事、睡眠などの生活リズムは規則正しい。 I 2 健康状態 健康に気をつけ、自分で服薬管理し、良好な体調を保っている。 日 3 身だしなみ 場に合った服装をし、清潔であるなど身だしなみはきちんとしている。 常 4 金銭管理 小遣い等を計画的に使う、必要なものを買う、保管するなど金銭管理ができる。 生 5 交通機関の利用 通学(通所、通勤)に交通機関を一人で利用できる。 活 6 規則の遵守 規則や決められたことを守る。 7 危険への対処 危険と教えられたことをせず、自分の安全を考えて行動する。 8 出席(出勤)状況 正当な理由(通院、病気、電車の遅れ等)のない遅刻・早退・欠席(欠勤)はない。 II 1 挨拶・返事 相手に応じた挨拶・返事ができる。 対 2 会話 会話に参加し、話についていくことができる。 人 3 意思表示 自分の意思(参加したい、トイレ休憩をとりたい、助けてほしい等)を相手に伝えることができる。 関 4 電話等の利用 用件を伝えるのに電話、メール、FAXを利用できる。 係 5 情緒の安定性 感情のコントロールができ、安定している。 6 協調性 他人と力を合わせて助け合うことができる。 1 体力 1日(7∼8時間)を通して作業ができる体力がある。 Ⅲ 2 指示内容の遵守 指示通りに作業をする。 作 3 機器・道具の使用 作業機器や道具類を教えられた通りに正し<使える。 業 4 正確性 ミスな<正確に作業する。 力 5 器用さ 器用に作業する。 6 作業速度 必要とされる作業速度(指導員の作業速度)がこなせる。 7 作業変化への対応 作業の内容、手順等の変化に対応できる。 Ⅳ 1 就労意欲 社会に出て働く意欲がある。 作 2 質問・報告・連絡 必要な時に適切な質問・報告(作業の終了、失敗等)・連絡ができる。 業 3 時間の遵守 時間(作業開始時間、締切り等)を守る。 ヘ 4 積極性 作業に自分から積極的に取り組む。 の 5 集中力 作業への集中力はある。 態 6 責任感 与えられた作業や当番などは最後までやる。 度 7 整理整頓 作業場の整理整頓ができる。 評価の段階 4(できる・ある) 3(だいたいできる・だいたいある) 2(あまりできない・あまりない) 1(できない・ない) このチェックリストは、①就労を目指す生徒の現状を把握し、②就労に向けた具体的な課題 を設定するとともに、③個別の教育支援計画・個別の指導計画を作成し活用するための資料に もなります。 チェックリストの利用に当たっては、最初から、「就職は難しい」と判断するのではなく、 「できる仕事」と「できるようになるための指導や支援」を考えることが重要です。

(5)生徒への支援

②チェックリストの活用

就労に必要な力を見てみると、非常に基本的な生活習慣や知識であるこ とが分かります。つまり、就労するための力は、複雑で難しいものではな く、日常生活の中でごく普通に求められるレベルです。これらの基礎的・ 基本的な力が、日常の授業や生活を通してしっかりと身に付くように、小 学部の段階から指導や支援を繰り返して行うことが大切です。

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現場実習の事前・事後指導や校内実習を充実させたい!

現場実習を進める際には、生徒一人ひとりに即した目標の設定が必要です。チェックリス トの項目は生徒の実態把握と目標の設定に役立ちます。また、具体的な目標を実習先と共有 することは、客観的な評価につながります。

卒業後の自立・社会参加を進める力を知りたい!

チェックリストは、卒業までに重点的に身に付けさせたい課題を整理したものとして捉え ることができますので、生徒が高等部3年間の学習全体の中でどのような位置にあるのかを 把握して、必要な指導や支援を進めることができます。 小・中学部の児童生徒にとっても、高等部に進学した場合の学習内容をイメージして指導 や支援を考える材料となります。

自立・社会参加に向けたよりよい授業づくりをしたい!

例えば、高等部での指導だけでなく、小・中学部における作業学習や生活単元学習、日常 生活の指導等で指導計画を作成する際に、チェックリストの項目を参考にして、他教科等と 関連を図りながら、内容や方法等について検討することができます。

生徒一人ひとりの今後の学習課題を明らかにしたい!

一人ひとりの生徒が学習した内容や身に付けた力を確認して、今後の学習課題を検討する ための参考にすることができます。 高等部3年生などでは、卒業後の生活をイメージしながら、卒業までに重点的に身に付け させたい課題や必要な支援を考える参考になります。

チェックリストの活用

3年生では、現場実習の評価を参考 にして、指導目標に優先順位を付ける など、重点的に指導や支援を進めるこ とも必要です。 進路指導や就労支援を進める際は、「この学習は、卒業後の自立・社会参加 にどのようにつながるのだろうか。」「どこに重点を置いて指導や支援をする とよいのだろうか。」という視点で学習のねらいや内容を常に見直していくこ とが大切です。

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総合支援学校卒業生の中で、これまでに就労した生徒を対象としたチェック リストによる現場実習中の評価を、在校生の授業改善に活かした例を示します。 <チェックリストの評定> ※評定は1∼4 点の4点満点 ◎生徒Aは、「Ⅲ 作業力」や「Ⅳ 作業への態度」に高い能力を示している。 ●長時間持続して取り組める体力や精神力、真面目に取り組む態度、勤労意欲が必要である。 ●課題となる項目は、「Ⅰ 日常生活」の「3 身だしなみ」と「4 金銭管理」である。この 内容は就労後の社会生活にも必要となる内容であるが、家庭の協力が必要である。 ●「Ⅱ 対人関係」の「2 会話」と「3 意思表示」、「Ⅳ 作業への態度」の「2 質問・ 報告・連絡」は、職場での適応に必要となる内容である。 ● 作業遂行における報告・連絡・相談は必須であり、また、職場での人間関係の形成、職場 適応など、職場定着に必須の項目である。言葉による意思表示、自己主張等のコミュニケー ション能力の育成が課題である。 チェックリストの活用例 <企業の気付き∼実習日誌の例> ●30分間の作業ごとに5分間の休憩をとるようにしているが、自分の分 担が15分間で終わっても、残りの15分間は一人でぼんやりしていた。 ●話をせずに黙々と作業に取り組むが、休憩時間も一人で過ごし、他の従 業員と話をすることはない。一対一で慣れてくると自分の好きな歌手や 歌のことを話し始める。 ●与えられた仕事には丁寧に取り組む。仕事を早く済ませようと自分なり に工夫するなどの意欲的な姿勢があるとよい。 <作業学習の改善> ◆学校では、「個別の指導計画」の評価と併せて、次の項目に着目し作業学習の改善を図った。 領 域 No. チェック項目 内 容 Ⅱ 対 人 関 係 2 会話 会話に参加し、話についていくことができる。 3 意思表示 自分の意思を相手に伝えることができる。 Ⅳ 作業ヘの態度 1 就労意欲 社会に出て働く意欲がある。 2 質問・報告・連絡 必要な時に適切な質問・報告・連絡ができる。 ◆作業内容はボールペンの組立て(30分間の作業ごとに5分間の休憩を設定) 【Ⅱ 対 人 関 係】生徒が好む話題を中心に、会話や意思表示の機会を毎日、できるだけ多く設定 ①休憩は生徒同士の会話の時間とする。(教員が仲立ちして生徒を会話に誘う。) ②朝の会の中で、生徒が簡単なスピーチを行う時間を設定する。 【Ⅳ 作業への態度】①から③を段階的に繰り返し実施し、報告・連絡・相談や質問の場面を意図的に設定 ①30分間より前に達成できる目標を与え、終了の報告と残り時間の過ごし方を相談させる。 ②30分間で組み立てる本数を生徒と話し合って決め、自己評価により作業意欲を喚起する。 ③生徒が設定した目標よりも高い目標を与え、部品の配置や組み立ての順番などを生徒自身 に考えさせ、作業時間の短縮や本数の増加が見られた場合は積極的に称賛する。 ※生徒の自己評価と併せて、毎月のチェックリストの評定結果を用いて授業評価を行う。

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現場実習は、生徒が自分の進路や自分に適した仕事を決定するだけでなく、生徒が自立・社会 参加に向けて大きく成長するチャンスでもあります。 教職員が現場実習のねらいを十分理解して臨むことは当然ですが、生徒も 働くことや実習の意義を理解して取り組むことが重要です。 生徒自身が現場実習の意義を理解することが重要です。 ◆働く目的 「人はどうして働くのでしょうか?」 ○自分が成長するため ・自信がつく ・人間関係が広がる ・人の役に立つ ・周囲の人が喜ぶ 等 ○経済的な自立のため ・給料を得て生活費にする ・自分の好きなものを買える ・貯金ができる 等 ◆会社での労働 「会社とはどんなところでしょうか?」 ○仕事をして給料をもらう ○一日中働く(8時間、休憩は昼の1時間、残業 等) ○休みが少ない(週に1∼2日、長い休みは盆と正月 等) ○決められた仕事は最後までやり遂げる ◆社会人と生徒の違い 「会社と学校はどんなところが違うのでしょうか?」 学 校 会 社 同じ年齢の仲間が集まる。 年下から年上までいろいろな人がいる。 →場や相手に応じた付き合い方が必要 授業をうけても給料はもらわない。 働いて、給料をもらう。 →金銭管理が必要 勉強やスポーツを自分のペースでできる。 協力して働くので、わがままや勝手は言えない。 →がまんをすることも必要 生徒(学生)として見られる。 社会人(大人)として見られる。 →社会人として基本的なマナーやルールを守ること ◆働くために必要なこと(社会人のマナーとルール) 「社会人として働くために、守らなければならないマナーとルールは何でしょうか?」 ○返事やあいさつをする ○報告や連絡をする ○身だしなみを整える ○遅れるとき、休むときは連絡をする 生徒への説明(例)

(5)生徒への支援

③現場実習の意義を知る

就職してがんばっている卒業生 に直接話を聞いたり、企業訪問等 で卒業生の働く姿を見たりするこ とも、生徒の理解を深め、見通し をもたせるとともに、意欲を喚起 するために有効です。

(20)

早期からの職業教育・就労支援のためには、キャリア教育の視点に立った小学部・中学部から の取組が大切です。キャリア教育は、児童生徒自身の生き方についての指導や支援であり、その 出発点は、自己表現・自己選択・自己決定する力を育てることにあります。その積み重ねの結果 として、卒業後に社会の中で自己の力を発揮し、様々な社会参加や就労が可能となります。 卒業後の社会生活を見通して、小学部や中学部の段階から、働く意欲や職業に関する知識や技 能、態度等を育てる指導を展開することが重要です。児童生徒の学年や発達段階等に応じた実際 的な経験の拡大、職業に必要な知識や技能の獲得、態度の育成等に留意するとともに、将来像を 踏まえた「個別の教育支援計画」に基づく、長期的な視点に立った支援が大切です。 小 学 部 中 学 部 高 等 部 ・自己及び他者への積極的関心の形成・発展 ・肯定的自己理解と自己有用感の獲得 ・自己理解の深化と自己受容 ・身の周りの仕事や環境への関心・意欲の向上 ・興味・関心等に基づく職業観・勤労観の ・選択基準としての職業観・勤労観の確立 ・夢や希望、憧れる自己イメージの獲得 形成 ・将来設計の立案と社会的移行の準備 ・勤労を重んじ目標に向かって努力する態度の ・進路計画の立案と暫定的選択 ・進路の現実吟味と試行的参加 形成 ・生き方や進路に関する現実的探索 夢 づ く り ・ 働 く こ と の 意 義 ・ 人 と の か か わ り 高等部における充実した職業教育・就労支援のためには、早期からの取組が重要です。

<参考①>キャリア教育の視点に立った早期からの指導や支援

(各教科) 生活、国語、社会、家庭など 国語、社会、技術・家庭など 国語表現、国語総合、現代社会、 倫理、政治・経済、家庭基礎、 家庭総合、生活技術、 産業社会と人間など (各領域) 道徳、特別活動、総合的な学習の時間、自立活動 特別活動、総合的な学習の時間、 自立活動 日常生活の指導 遊びの指導 生活単元学習 作業学習 職場体験 現場実習 <教育活動全体を通して> ①早い段階から発達段階に応じて ◇健康や安全への配慮 自己の健康管理や安全への配慮は、生活の中で身に付く。 ◇基本的な生活習慣の確立 就労には、時間を守る、身だしなみ、あいさつ、マナー等の基本的生活習慣も大切である。 ◇円滑な人間関係 就労先などに適応するには、良好な人間関係を形成する能力が大切である。 ◇働く意欲 児童生徒が、意欲的に物事に取り組む姿勢を育てるための環境づくりが大切である。日々の 活動場面で認められることや成就感を得る体験をすることが、働くことへの意欲につながる。 ◇社会人としての基本的な知識、スキル 学習活動の中に、金銭管理、交通機関や公共施設などの利用等の体験学習を取り入れる。 また、余暇活動の充実は、より豊かな生活を実現していく上でも大切である。 ②体験的な学習を通じて 働くことの意義を理解し、働く意欲を育てるには、職場体験やインターンシップ等の実際的・ 体験的な学習が有効である。職場体験等は、卒業後の社会参加や自立に必要な力を身に付ける大 切な学習の機会となるので、一人ひとりの実態に即した指導計画を立てるようにする。 体験的な活動 知的障害の児童生徒を教育する場合(指導の形態)

(21)

特別支援学校学習指導要領解説には、知的障害のある児童生徒を教育する際、各教科の内容を 構成するに当たっての観点が解説されています。 以下の表は、特にキャリア教育に関連が深いと考えられる観点を示したものです。小学部・中 学部段階からの系統的な職業教育や就労支援の計画を作成する際の参考にしてください。 <小学部> 教 科 名 内 容 構 成 の 観 点 「基本的生活習慣」 食事、用便、寝起き、清潔、身の回りの整理、身なり 「健康・安全」 健康管理、危険防止、交通安全 「遊び」 遊具の後片付け 「交際」 身近な人との交際、電話や来客の取次ぎ、気持ちを伝える対応 「役割」 集団の参加や集団内での役割、共同での作業と役割分担 生活科 「手伝い・仕事」 手伝い、整理整頓、戸締まり、掃除、後片付け 「きまり」 自分の物と他人の物の区別、学校のきまり、日常生活のきまり、マナー 「日課・予定」 日課・予定 「金銭」 金銭の扱い、買い物 「自然」 動物の飼育・植物の栽培、季節の変化と生活 「社会の仕組み」 いろいろな店、社会の様子 「公共施設」 公共施設の利用、交通機関の利用 国語 「聞く・話す」「読む」「書く」 算数 「数量の基礎、数と計算」「実務」 音楽 「音楽遊び」「鑑賞」「身体表現」「器楽」「歌唱」 図画工作 「表現」「材料・用具」「鑑賞」 体育 「基本的な運動」「運動遊び」「きまり・安全」 <中学部> 教 科 名 内 容 構 成 の 観 点 国語 「聞く・話す」「読む」「書く」 社会 「集団生活ときまり」「公共施設」「社会の出来事」「地域の様子や社会の変化」「外国の様子」 数学 「数と計算」「実務」 理科 「人体」「生物」「事物や機械」「自然」 音楽 「鑑賞」「身体表現」「器楽」「歌唱」 美術 「表現」「材料・用具」「鑑賞」 保健体育 「いろいろな運動」「きまり」「保健」 職業・家庭 「働くことの意義」「職業に関する基礎的な知識」「道具・機械等の取扱いや安全・衛生」「役割」 「産業現場等における実習」「家庭の役割」「家庭に関する基礎的な事項」「情報」「余暇」 外国語 「英語とその表現への興味や関心」「英語での表現」 ※この表は、「知的障害者の確かな就労を実現するための指導内容・方法に関する研究」(国立特別 支援教育総合研究所平成18・19年度課題別研究報告書)に掲載された表を一部改変しました。 ※小・中学校に準ずる教育課程におけるキャリア教育のねらいと関連する各教科・領域の主な内容 (活動例)については、以下の資料等を参考にしてください。 ・ 「自分に気付き、未来を築くキャリア教育」-小学校におけるキャリア教育推進のために-・「自分と社会をつなぎ、未来を拓くキャリア教育」−中学校におけるキャリア教育推進のために− 国立教育政策研究所HP(http://www.nier.go.jp/)に掲載

<参考②>キャリア教育に関連が深いと考えられる各教科の内容構成の観点

(22)

早期からの職業教育・就労支援のためには、キャリア教育の視点を活かした指導計画の作成や 授業づくりが大切です。以下の表を参考に、各学部・学年の指導目標を具体化し、目標間のつな がりを明確にしながら、児童生徒が主体的に学習活動に取り組むことができるよう、指導内容や 方法を工夫していくことも有効です。 <職業的発達段階と指導のポイント(例)> 職業的発達段階 職 業 的 発 達 課 題 「 働 く こ と 」 の 指 導 の ポ イ ン ト 職業及び生活 ○学校及び生活に関連する諸活 ○食事の準備、後片付け、掃除、洗濯物の整理などの日常的な活動を学習 にかかわる基 動のすべてにおいて自発性と し、身辺自立の確立を図る。 小 礎的な力を獲 意欲を育てる。 ○教室のゴミ捨て、給食の配膳など、人の役に立つ活動を大切にする。 得する時期 ○働くことに対する夢や期待を ○感謝されたり、感謝を伝えたりすることで、役に立った、喜んでもらえ 学 育てる。 たという経験を重ねることで、意欲を育てる。 ○意図的に共同作業を必要とする活動を設定し、相手に合わせたり、合わ 部 せてもらったりする体験を積み、協力することを学ぶ。 ○家庭と連携し学校でできることは家でもできるように、家でできている ことは学校でもできるようにする。 職業及び生活 ○職業生活に必要な自己及び他 ○一つのことを成し遂げる充実感や達成感を感じることができる機会を多 中 にかかわる基 者理解(自らのよさや仲間の く設定し、働くことの楽しさや喜びを教える。 礎的スキルを よさ)を深める。 ○共同作業をとおして、自己と他者の役割を理解し、協力して作業をする 学 土台に、それ ○自らの適性に気付き、職業の 経験を積ませる。 らを統合して 意義や価値を知る。 ○作業学習等で、生活の中で役に立つ物を作る、正しく作る、よい品物を 部 働くことに応 ○自己の判断による進路選択を 作るなどの生産的な活動を行う。 用する力を獲 経験する。 ○規格品等を作る際、できるだけ一人で取り組むとともに、できたかどう 得する時期 かを自分で判断させることで、ものを作ることの喜びや自信につなげる。 職業及び卒業 ○自らの適性の理解、やりがい ○現場実習や実際的な経験をできるだけ多く設定する。 後の家庭生活 等に基づいた意志決定を行う。 ○作業学習等の質を高める。 高 に必要なスキ ○働くことの知識・技術を獲得 ・品質の高い製品、販売できる製品を作るなど目標を高く設定する。 ルを、実際に する。 ・納期の設定や販売会の企画など明確な目標を設定し、意欲をもたせる。 等 働く生活を想 ○職業従事に必要な態度及び習 ・自分の役割と目標を教員と相談し、確実に果たすことで有用感や達成感 定して具体的 慣を形成する。 を味わわせる。 部 に適用するた ○必要な支援を求め、指示・助 ・作業工程を細かく分析し、役割分担や補助具の利用などを工夫し、一人 めの力を獲得 言を理解し実行する力を獲得 でできる状況を設定する。 する時期 する。 ・一日の作業の流れや自分の作業が全体の中でどのような意味をもつのか ○経済生活に必要な知識と体験、 といった見通しをもたせる。 余暇活用の在り方等を学ぶ。 ・休憩時間等の過ごし方を教員と一緒に考えたり、自分で工夫させたりする。 <授業づくりの視点(例)> 領 域 幼 児 小 学 部 中 学 部 高 等 部 ・人とのかかわり ・自己理解、他者理解 遊 ・集団参加 ・協力・共同 人間関係形成能力 び ・意思表現 を ・あいさつ、清潔、 ・場に応じた言動 卒 中 身だしなみ 心 ・様々な情報への関心 ・情報収集と活用 業 情報活用能力 と ・社会のきまり ・法や制度への理解 し ・金銭の扱い ・金銭の管理 ・消費生活の理解 後 た ・役割の理解と分担 ・働くことの意義 発 ・役割の理解と実行 の 達 ・習慣形成 将来設計能力 全 ・夢や希望 生 体 ・生きがい の ・進路計画 活 促 ・目標設定 意思決定能力 進 ・選択 ・選択(決定、責任) ・振り返り ・肯定的な自己評価 ・自己調整 ※上の2つの表は、「知的障害者の確かな就労を実現するための指導内容・方法に関する研究」(国立特別支援 教育総合研究所平成18・19年度課題別研究報告書)を一部改変しました。

<参考③>各学部段階での指導や支援のポイント

(23)

現場実習を各学校で工夫・改善していくためには、生徒一人ひとりの活動と現場実習の内容や 方法等のプログラムの両面について、生徒間、教職員、保護者の方、実習先の方、地域の方等、 様々な立場の人から、多様な観点で評価し、今後の指導に活かしていくことが重要です。 各総合支援学校では、現場実習の実施に当たって、評価表や日誌を作成し、活用しています。 これらの資料を下記の視点から見直すことにより、実習の評価と工夫・改善を充実することがで きます。

(6)現場実習の評価・事後指導の工夫

現場実習評価表や日誌を工夫しましょう。 <現場実習評価の在り方> ○生徒にとって ・自己の適性を確認したり、今後学ぶことや身に付けること等を知ることができる評価 ○保護者の方にとって ・子どもの生き方や家族の支援、就労観を具体的に考え、家庭における生活習慣を見直す 機会となる評価 ○学校にとって ・生徒一人ひとりの指導内容の検討、個別の教育支援計画・個別の指導計画 の見直しにつながる評価 ・職業教育や実習の実施計画、指導体制等の見直しにつながる評価 ○企業や関係機関等にとって ・障害のある生徒への指導や適切な職場環境づくりにつながる評価 <現場実習評価表・日誌作成のポイント(例)> ○実習の目的に即していること ・体験なのか、就職を目的とする実習なのかによって評価表を分ける。 ・就職を目的とする場合には、家庭等からの通勤や持ち物、金銭管理等も評価項目とする。 ○学校での授業と関連づけていること ・評価項目は学校での作業学習の作業日誌等の評価項目と同じにする。 ○具体的な作業内容が盛り込まれていること ・作業態度や遂行状況以外に、実習先の業種や仕事に必要な内容に関する評価項目を設定 し、同様の業種での実習と比較したり、生徒に具体的な目標をもたせたりする。 ○評価者にとって分かりやすいこと ・評価項目の内容や表現を分かりやすくする。 ・評価の段階の基準を明確にする。 ・記入が大きな負担にならないようにする。 ・本人や保護者の方に見せて説明ができるようにする。 家庭生活や服装等につ いて、保護者の方が評価 できるようなチェック表 の作成と活用も、自立に 向けた支援について考え る機会となります。

(24)

<現場実習の評価のポイント(例)> ◆生徒による自己・相互評価−活動全体を通しての評価− ・評価表(チェック表) ・現場実習日誌 ・報告書 ・発表会(体験新聞やプレゼンテーション等) ・生徒間の感想発表等の相互評価 等 ◆現場実習にかかわる様々な人からの評価 教 職 員 に よ る 評 価 生 ○生徒の取組の評価 ○事前・実習・事後指導の流れ、実習先や関係機関と 場 徒 ・全体を通しての活動の観察 ・評価表 の連携、保護者の方等との連携 等 実 の ・現場実習日誌 ・報告書 ・発表会 ・感想文 等 ・保護者アンケート ・現場実習日誌 等 習 取 保 護 者 の 方 に よ る 評 価 の 組 ○子どもの取組の評価 ○学校の事前・実習・事後指導の活動、現場実習全般 活 に ・実習中の子どもの様子 ・評価表 ・現場実習日誌 について 等 動 対 ・報告書 ・発表会 ・感想文 等 ・保護者アンケート ・現場実習日誌 等 に す 実 習 先、関 係 機 関 等 に よ る 評 価 対 る ○生徒の取組の評価 ○実習時期・期間の評価、学校との連携、実習先とし す 評 ・実習中の生徒の観察 ての成果・課題、現場実習全般について 等 る 価 ・実習先評価表 ・現場実習日誌 ・報告書 ・実習先評価表(アンケート) ・現場実習日誌 評 ・感想文 ・礼状 ・事後訪問 ・発表会 等 ・学校や関係機関との事前・事後打合せ 価 ・進路懇談会・相談会 等 現場実習による職業教育や就労支援の充実のためには、事後指導の過程が重要となります。 現場実習での様々な成果が、日常的な学習活動への意欲の向上、進路選択に向けての動機付け の高まり、新たな学習課題の発見等に発展していけるよう、事後指導を工夫することが必要です。 <事後指導の流れと工夫(例)> 事後指導の流れ 生徒の活動 指導上の留意点/体験先・家庭との連携 ○記録のまとめ ○実習に関する記録の整理 ○実習終了直後の生徒の記録のまとめ ・評価表、日誌、記録、ノート等 ・実態にあった評価表の作成・集計 実習 ・実習全体の感想 ・生徒に対する教員からの評価 終了 ・実習の自己評価・相互評価 ・保護者の方からの評価表の作成・集計 直後 ・教員、保護者の方、実習先からの評価 ・実習先からの評価 ○礼状作成 ○生徒から実習先への礼状の作成 ○学校からの礼状の作成・送付 (学校、生徒、保護者) ○保護者の方からも簡単な形で礼状作成 ○報告書作成 ○報告書の作成 ○報告書の形式の工夫・作成 事後 ○報告書等を持参して ○報告書、礼状(学校、生徒、保護者)等を ○事後訪問を現場実習の再評価とする。 訪問 の事後訪問 持参しての事後訪問と現場実習の再評価 ○発表会等があれば、招待をする。 実習 ○発表資料の作成 ○発表資料の作成 ○発表会の検討 発表 ・新聞 ・ポスター ・発表内容、方法 ・会場、次第、準備 会に ・コンピュータによるプレゼンテーション等 ・招待者(実習先、保護者、地域の方、関係 向け 機関、後輩等) て ○実習発表会 ○体験の内容の発表 ○発表会の工夫 ○生徒間での体験の共有化 ・代表発表、全員発表 ・制作物等の掲示 等 ○現場実習の総括 ○現場実習全体を終えてのまとめ ○現場実習全体への総括 実習 (事前・実習・事後を終えて) ・生徒、保護者の方、実習先、教員の評価の を終 ○次年度に向けての課題設定 まとめ えて ・現場実習、日々の授業、個別の教育支援 計画、個別の指導計画等の見直し 多 様 な 形 で の 成 果 の 活 用 ・学校便り、進路便り ・学校ウェブページ ・生徒制作物の掲示(実習先、地域センター等) ・実習発表会、実習報告書 ・進路懇談会・相談会等 事後指導を工夫しましょう。 現場実習評価のポイントを確認しましょう。

(25)

現場実習は、学校や家庭で身に付けた知識や技能を、企業という実際の場面で確認・再現する とともに、実習を通して明らかにされた課題や評価を、以後の指導計画や指導内容・方法の改善 に活かすことにより、学校における職業教育を充実させるための重要な取組です。 <現場実習の評価を活かした授業改善の例> ○作業学習の内容を実際に働く職場に近い作業種とする。 ○タイムカードの利用や達成目標の設定、休憩時間の見直しにより緊張感のある環境にする。 ○日常生活の指導や国語の授業において、あいさつや話し方を指導する。 ○生活単元学習と数学の授業において、電卓を活用する機会を多くする。 ○学校生活全体で、報告・連絡・相談の機会を意図的に設定する。 ○授業の中で、生徒自身が選択・決定する機会を意図的・計画的に設定する。

(7)現場実習を活かした授業改善

現場実習の成果・評価を活かす

教員(学校) 実習生(生徒) 企業・事業所 実習事前・事後指導 学習指導、生徒指導 生活指導、進路指導 職場訪問・現場実 習等における指導 や助言 進路懇談会・相談会 職場訪問・開拓 現場実習事前打合せ・巡回指導 現場実習の評価・気付き ◆授業改善 ・作業種、作業工程、 手順、作業時間、 作業量の見直し ・自立活動、日常生 活の指導、各教科 等の内容の見直し ・個別の指導計画、 個別の教育支援計 画の見直し 等 <授業改善の視点∼メタ認知の考え方を参考にした授業改善∼> メタ認知は、自分の思考や行動を客観的に捉えて、自分の思考や行動をよりよい方向にコントロール したり、弱点を補ったりする能力といえます。この能力は、主体的な学習につながるものとして、授業 の中で意図的に養うことが期待されます。具体的には、以下のような能力が考えられます。 ・どのようなやり方が有効か、十分に考えてから課題に取り組む。 ・自分がどの程度理解できているかについて判断できる。 ・問題が解けたとき、自分がどういう方法を用いたか分かっている。 ・課題に向かうときには、計画を立て、目的に合わせてやり方を変える。 ・課題を解決するときに、これまでの経験から最適な方法を考える。 ・問題に取り組んでいるときに、うまくいっているかどうか、定期的に自分でチェックする。 ・うまくいっていないときには、他の方法を考えてみる。 これらは、生徒が就労し、自立・社会参加していくためにぜひ育てていきたい力です。しかし、特定 の教科や領域の指導だけで育つものではありません。教員が授業を構想する中で、メタ認知の視点から、 学習内容や授業の流れ、支援の方法を検討していくことが大切です。 助言や評価を活かす(授業改善の参考) より意図的・実際的な授業へ

参照

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