7海 みψ
醗
z‘
ise Joztnra〜σ 尸5y〔
鹿θ 脚瘤〔
:Strietitce 201〕3,
Vol.
21、
No 2,
120−
B原
著論 文
幼
児
の
語 意 味 限定
に
及
ぼ す
語命 名 時
と
語
意
味
限
定 時
の
事物
の
周 辺
状 況
の
一・
致
,不
一
致
の
効 果
田
村 隆 宏
1)鳴門 教 育大 学
*The
effects
of
the
agreement
or
disagreement
of
the
surrounding
situation
of
an
object
on
word
meaning
qualification
of
young
children
,when
given
a
labeling
word
and
when
asked
to
give
word
meaning
qualification
Takahiro
TAMuRA
A
勿観 0 ひntversity
qプ
Education
“The
purpose
〔,f
this studyis
to examinothc
effects ofthe
surrounding situation of an objectQn
the
word meaning qinalificatien ofyoullg
children.
Fifty
ch 量ldren
(
Exper
正1nent1
)andForty
eight childrell (
Experiment
2
)weretested
,
all agedfive
years
old.
In
both
experiments,
the
cxperimenter
labeled
thetargct
cxamples with surr {⊃unding situation(
for
example,
“
An
elephantin
a cageLExperimcnt
1
]
”
,
“
An
elephantin
a cage and a man riding ahorse
[
Experilnent
2
]
”
)
with an ‘>vel word and sbowedthese
t
〔〕thc
sしlbjects,
Then
theparticipants
were shown choice examples with surrounding situationthe
same asthe
target
example,
and choice examples with surroundingsituation
different
to the target example,
and were asked to give nleaningqualification
for
the
novel word
.
Thc
result wasthat
the
subjects who were shQwnthe
choice examples with surround−
illg
situationthe
same asthe
target
example tended togive
word meaningqualification
including
the surrounding situati (m
.
On
the Qtherhand,
the
sublccts who were shownthe
choice exampleswith surrounding situation
different
to the target example telldedto
give
word meallillgqualification on a conceptual
level
(
for
example,
“
Elephant
”
[
Experiment
l
]
,
“
Anima1”
[
Experi−
ment
2
])
.
These
findings
suggestedthat
the
agreement ordisagreement
of surrounding situation of an objecthas
an effect ぐ)n word rneaning qua !ification
of young children whengiven
alabeling
word and when asked
to
give
word meaningqualificatlons
.
Key
words :cognltivedevelopment,
verballearning
,
lexicaHearnillg
, surrounding situation of anebject
,
word rneaningqualification
問 題
*
College
of
Education
,Naruto
University
ofEdu −
cation
,
748
Takashima
,
Naruto
−
cho,
Naruto
,
772
85021
) 本 研 究
を進
め る にあ た り, デー
タの収 集
に御 協
力 頂き まし た
奈 良 県 磯 城 郡
田原 本 幼 稚 園
の先
生方
,
園児
の皆
様
に厚
く御 礼 申
しF.
げます.
ま た本 論 文
の審
査段 階
に お い て審
査 委 員の先 生 方 か ら有
益 な ア ドバ イ ス をい ただき ま し た.
こ こ に記 して感 謝い た し ま す.
我
々が事物 名
の意味
を学 習
す ることには どの よう
な認
知
過程
が必 要
で あろうか.
“犬” とい う語
を例
に考
えて みよう
.
“
犬
”
とい う語
の意 味
を学 習
す る た めに は,“
犬
”
という語
が指
し示 す 事 物
が どの よう
な もので あ る のか を 理解
す る 必要
が ある.
具体 的
に は,
“
毛 皮
に覆
わ れてい る”
,“
4
本
足 で歩
く”
,
“
ワ ン ワ ン鳴
く”
,
“
尻 尾
が ある”
とい っ た特
徴
を持
つ事 物
が“
犬
” であ
るこ とを理
田
村 隆 宏
:幼 児
の語意 味 限定
に及ぼす語 命 名 時
と語意 味
限 定時
の事物
の周 辺状
況の一
致, 不一
致の効 果
121
解
し な け れ ば な ら ない.
語
が 示す 事 物
に どのよう
な特 徴
が ある か に関
す る知 識
を内 包 (
intensiOn
)
とい う が,
事 物 名
の意 味
を学 習
す る た めには その語
が指
し示 す事 物
の内 包
を認 識
す るこ とが重 要
な課 題
の ひ とつ で あ る とい え る.
語
意味 学 習
に関
す る従 来
の研 究
において は,特 定
の事
物 (
標 本 事例
)に新 奇 語
を命 名
し,
そ の語
が他
の ど の事
例
にあ
て は ま る か を判 断
さ せ る という実 験 課 題
の中
で様
々な 要 因
が検 討
されて き た.
この種
の研 究
の中
で も,
語
が命 名
さ れ た事物
の内包
を認 識 させ ることに関 わ る 要因
が語 意味 学 習
において重 要 な役割
を果
た してい るこ と が 示 さ れている.
事 物 名 は
,
例
え ば“
コ リー
(下
位 水準 )
”
,
“
犬 (基礎
水 準 )
”
,“
動 物 (
上位 水 準 〉
”
とい うよう
に概 念 水 準
(
Rosch,
1978
)
に対 応
して存 在
してい るが,
事 物
に命 名
さ れ た語
が いず
れ の概 念 水 準
に属 する か を 決定
す る際 に,
事 物
の内 包
を認 識
させ る情 報
が関 与
し てい ること を示
す研 究
があ
る.Waxman ,
Shipley
,
&Shcppcrson
(
1991
) は3
歳 児
を被
験者
と し て,犬
の事 例 (
例
え ば, コ リー
や テ リア)
に対
し て新 奇 語
を命 名
す る際
に,各 事
例
の下位
水準
に対 応 し た特 黴 情 報
(
例
えば.
コ リー
に対
して“
羊
の世 話
を手 伝 う
”
,
テリ
アに対
して“
ラ ッ トを
とるた めに動
き回
る”
) を与 え
ると,
新 奇 語
の意 味 を ド
位 水 準 名 (
“
コ リー”
や“
テ リア”
)
としての意 味
限定
が促
さ れ る こと を 明 ら か に し た.
ま た, 田村
(
1994
) は5
,
6
歳
児 を被 験 者
として,標 本 事
例
“ 犬”
に対
して新
奇 語 を命
名 す る 際に, 基 礎 水 準“
犬”
に共 通
する特 徴 情
報
“
ワン ワ ン鳴
く”
や.
.
卜位 水 準
“
動 物
”
に共 通 す
る特 徴
情 報
“
エ サ を食
べ る”
を与
えた と こ ろ,
新 奇 語
を基 礎 水
準 名
“
犬”
や.
h
位
水準 名
“
動 物
”
と し て の意 味
限定
が促
さ れ る こ とを明
らか に し てい る.
これら の研 究 結 果
は,
語
の教 授 者
が与
える特 徴 情 報
によっ て,
被 験 者 が その事物
の特
定
の特徴
を認 識
し, それに基づい て語 意味
の概 念
水 準
が 決定
さ れ てい ること を示 してい る.
こ の こ と は,
事 物の内 包 を 認 識 させ る情 報 が 語 意 味の概 念 水 準 を 決定
す る ため の重 要 な 手掛
か りになっ てい る こ とを 示唆 す
る もの で あ る.
さ らに,
母 親
が子
ど もに事 物 名
を教
える場
面
の分 析
か ら,
母 親
が事 物 名
の み な らず
, そ の名称
の概
念 水 準
に応
じ た事 物
の特 徴
に関
す る情 報
を与
え てい るこ とも明
らかに さ れ て おり (
Callanan,
1990
)
,
現実
の語
意 味
学 習 に おいて事物
の内包
を認識
させ る情 報
が与
え ら れ てい ること も裏
づ け ら れ てい る.
この こ とか ら も,実
際に事物
の内包
を認識
させ る情 報
が語
意味 限定
に お いて 重要
な役 割
を果
た してい る こ とが窺
えよう
.
ま た,
事 物
の内
包 を認 識
さ せ る情 報
が語意 味
の カ テ ゴリ
ー
の決 定
に お い て重 要 な役 割 を果
た すこ とを 示唆
す る 研 究 も ある.
Kobayashi
(1997
)や小 林 (1998
,
1999
) は,
卵
形状
のガ ラス片(
標 本
事例 〉
に対 して新 奇
語 を命
名
する と 同 時に標
本 事例
の形の特 徴
を 示 す動 作 (
“
標 本
事 例
を 転 が す”
)
を提
示 する場 合
と,
材 質
の特 徴
を 示す動 作 (
“
標 本 事 例
を透
か して見
る”
)
を提 示 す
る場 合
で,
新 奇 語
が ど の ような事 物
にあ
て は ま る かを判 断
さ せ た.
その結
果,
転
がす動 作
を し た 場 合に は, 同 じ形
の木
片に あ て は ま る と判 断
さ れ や すい の に対
し て,透
か し て 見 る 動 作 を し た 場 合に は, 同 じ 材 質の ピ ラ ミッ ド形状
のガ ラ ス片
にあては ま る と判 断
さ れ やす
か っ た.
この結 果
は,
実 験 者
が 示 す事 物
の特徴
に関
わる動 作
に よっ て被 験 者
が語
の指
示物
が持
つ特 定
の特 徴
を認 識
し,
そ れ に基
づ い て新 奇 語
が形
の一
致
し た事 物
に語
が あ て は め ら れ る の か,
材 質
の一
致
し たも
の に語
があ
て は めら
れ るのかが 決 定
さ れてい るこ とを 示 す もので あ る.
こ の こ と は,事 物
の内
包
を 認識
させ る情 報
が語
意味
のカ テゴ リー
を決定
す る手
掛か りになっ ている こ とを 示 唆す る もの である.
さ らに,
Kemler
Nelson
,
Russell
,
Duke
,
&Jones
(
2000
)
は,特 定
の部 分
が動
か せる機 能 を持
つ標 本 事 例
に新 奇 語
を命 名
し な が ら,
そ の機能
を実
験 者が実
演で示 し,
さ ら に被 験 者
に も同様
に実 演
を させ た 場合
,標 本 事
例
との形 状
な どの類 似 性
と は無 関 係
に, 同 じ機 能
を持
つ 事 物に新 奇 語 が あて は ま る と判断
さ れ や すい こと を明
ら かに し てい る.
この研 究
は,事 物
の特 定
の特 徴
を認 識
す る こ とが直 接 的
に語 意 味
の学 習
に結
びつ くこ と を 示 し た点
で注 目
に値
する.
以 上
の研 究
から
.
語 意 味 学 習
に おい て事 物
の内包
の認
識
に関
す る情
報が極
め て重 要 な役 割
を 果 た し てい ること が理解
で きるで あろう.
語 意 味 学
習におい て語
が命 名
さ れ る 事物
の内包
の認 識 が 重 要であ るこ と は疑 うべ き 余 地のない もの であるが,実 際
の語 意 味 学 習場 面
に おい ては,事 物
の内 包 を認 識 す
る こ とが容 易
で はない状 況
に溢
れてい る.
“
犬
”
とい う語
につ い て考
え て み る と,
例
えば,
飼
い主
が犬に首 輪
を つ けて散 歩
さ せ てい る の を見
な が ら,
他
人が “ あ れ は 犬 だ よ”
と命 名 す
るのを聞 く
といっ た場 面
が語 意 味 学 習場
面にな るであ ろ う.
この場面
には,語
の対 象事 物
の周 囲
には本 来
の語
意味
と は直 接
的に関係
のない事 物
C“
首 輪
”
や “飼
い 主”)
が存 在
し, その事物
と の関 係か ら生 じる特 徴
(
“
首 輪
がつ い てい る”
,“
飼
い主
に引
かれて い る”
な ど)
が含
まれ
て い る.
当然
これ ら
の特 徴
は語意 味
に関
わ る内包
と し て は認 識
すべ き も の で は ない.
こ の場 面
の中
で本 来
の語 意 味
を限 定
す る た めには,
語の対象事 物
と周 辺 状 況
を切
り離
して考
え,
語 意 味
とは無 関係
な事 物
と122
基礎
心 理 学研 究 第
21
巻 第
2
号
の関
わ りか ら生
じ る特 徴
を語
の内包
として は無 視
し なけ
れば
な ら ない とい える.
しか し な が ら, 語が
命
名
さ れ る状 況
に よっ て は内 包
と し て無 視
すべ き特 徴
が無
視
さ れず
に語 意味
に 反映
さ れ て し まう場 合
が ある こ と を 示 し た 研究
が あ る.
田村
(
1997
)
は5
歳 児
を被験 者
として,例
え ば檻
に入 っ た象
を提 示
して新 奇 語
を命 名
し, その新 奇 語
が どの よ う な事
物
にあては め ら れ るか を判 断
さ せ た と こ ろ,
檻
に入
っ た象
のみ に あ て は ま る と判 断
す る被験 者
が多
かった
こ とを
明 ら かに してい る.
この結 果
は,
新 奇 語
が指
し示
す事 物
の内 包 と して“
檻に入っ て い る”
とい う特徴
が認 識さ れ たこと を 示 して お り,事 物
の内 包
と し て は無 視
さ れ るべ き特 徴
が無視
さ れない場 合
が ある こ とを 示唆
して い る.
子ど も は
実 際
に本 来
,
内包
として は無 視
すべ き特 徴
を語 意 味
に反映
さ せ ると い っ た誤
りを示 す
であ
ろ うか.
現
実の子どもの 語 彙 獲得
に おい て は,
例
えば“
ワ ン ワ ン”
とい う語
を 覚 え た ら,本 来
の意 味
である犬だけで な く,
猫
,
馬
,
ラ イ オンな ど他
の動
物
も“
ワ ン ワン”
と呼
ぶ と い っ た 過 拡張
(over extension ) が 特。こ1
歳 台 に 見 ら れ る こ と は よく知
られ
てい る.
こ の種
の用 法
上の誤
り は,本 来
,
認 識
し な ければ な ら ない内
包 を認識
していない こ と に よっ て生
じ る もの であ
る と考
えら れ る.
しか し な が ら,過 拡 張
と は 正 反対
の認 知 過 程
にな
る“
内包
とし
て は無
視 すべ き特
徴
を語 意 味
に反映
さ せ る”
とい っ た誤
りに つ い て はほ と ん ど目
立っ て い ない といえ る.
こ の こ と は,現 実
の語 意 味 学 習 場 面
に こ の種
の誤
り を修 正 さ せ る何
ら か の要 因
が存 在
し て い る こ とを示唆
してい る の で は ないだ
ろう
か.
その よ う な
要 因
が存 在
してい るとす
れ ば,
どの よ う な もの が考 え られ るので あろうか.
こ の問題
につ い て考
え る た めには, 内包
と し て は無
視 すべ き特 徴
を語 意 味
に反映
さ せ る誤
りが 生 じ た 田村 (
1997
)
の実
験 場 面 を改 め て捉
え直
す こ とが必 要
で あろう.
田村
(1997
)で は新 奇 語命 名 時
の事 例
の周 辺 状 況
と語 意 味 限定 時
の周
辺状 況
が同
じ場 面 を提
示 し た.
ヒで,
被 験 者
に語 意 味
を判 断
さ せ てい る.
つ ま り,語
が命 名
された事 物
に再
び接
する際
に,
事
物
の周
辺状
況
が語命名
時
と一
致
していた と いう
こ と にな
る.
しか し な が ら, この よ う な 場 面 は 実 際の語 意 味 学 習場 面
と は少
なか らず 異
なっ ている とい え る.
実 際
の語
意味 学 習 場 面
で は語
が命 名
さ れ た事 物
に接
す る 場合
,
最 初
の語 命 名場 面
と まっ たく同
じ事 物
,
まっ た く同
じ状
況で接
す ること は ど ち らか とい う と稀
であ
ろう
.
例 えば
,
最
初
に飼
い 主 が 犬に首
輪
をつ けて散 歩
させ てい る状 況
で“
あ れは犬 だ よ”
と命 名
さ れ た 子 どもが, 次に犬に接 す る際
には犬
小屋
で寝
て い る 犬 や 走っ てい る野良
犬 を見 る とい っ た よ うに最 初
の語 命 名
時の周 辺状
況 と は異なっ た状
況で犬に接
す る 場合
が多
いので は ない だ ろ う か.
この よう
に語
が命 名
さ れた際
に接
する事 物
の周 辺状
況 と, そ れ以 後
に接 す
る事 物
の周 辺 状 況
が一
致
して い ない こ と が,
本 来
の語 意 味
と は関 係
のない周 辺 状 況
と の関係
か ら 生 じる特
微 を語
の対 象事 物
の内包
と し て は無 視
さ せ,
語
が指
し示 す 事物
の本 来
の内包
の認 識
を容 易
に し てい る の で はない か と 思 わ れ る。
そこ で
本 研 究
では, その点
を確
か め る た め に,語 命 名
時
の事 例
の周 辺状 況
とそ れ以後
に接
す る事 物
の周 辺状
況 が一
致
し てい る場 合
と一
致し ていない場合
を 設定
し,
そ れ ぞ れ の語 意 味 限 定 を比 較
す るこ と によっ て,
こ の要 因
が内 包
と して無視
すべ き特 徴 を語 意 味
に反 映
さ せ るとい う誤 りの 生 起に影 響 を 与 えてい る か否か につ いて検 討す る.
さ らに
,
田村
(1997
)
で無視
すべ き特
徴 を語 意 味
に反映
さ せ る とい う誤
りが,
基礎
水準 名
と ヒ位 水 準名
という2
つ の異
なる概 念 水 準 名
に関 す
る語 意 味 限 定
のい ず れに お いて も生
じ る とい う こ と が明
ら か に さ れ てい る こ と か ら,本
研究
で もこ の2
つ の概 念 水 準 名
の語 意 味 限 定
に お い て 周 辺状
況の一
th
・
Z
〈一
・
一
致
が ど の よう
に影 響 す
るか に つ いて検
討 す る.
し た がっ て,
田 村 (1996a
)に よっ て 丘位 水 準 語
の解 釈
が可 能
であ るこ と が確 認
されてい る5
歳 児
を被 験 者
とす
る.
実 験
1
実
験1
では 基礎 水 準 名
の語 意 味 隈 定
に関
し て周 辺 状 況
が どの よ う な影 響
を及
ぼ しているか にっ い て検 討
する こ と を目的
と す る.
田村
(
1996a
> は,標
本 事例 1
事 例
に対
し て新 奇 語
が命 名
さ れ た 場合
,
語 意 味
が その事 例
の基
礎 水 準
の名 称
と し て語 意 味
が限 定
され や すい こと を 示 し てい るこ と から
,
実 験
1
で は標 本 事 例
を1
事 例
とす
る課
題 を 用い る.
田
村
(1997
>
の実
験 で は 周 辺状 況
として動 物
が“
檻
に 入っ てい る” とい う状
況の みが 用い ら れ ている が,
本研
究
で は,
語
を命 名
した 場 面 と語 意味
を判 断 す る 場 面で異 なる周 辺 状 況
を提
示す
る必 要
が あ る た め,複 数
の 異 な る 周 辺状
況 が 必要
に な る.
そ こ で,
本 研 究
で は 田村
(1997
)で用い られた“
檻
に人っ て い る”
とい う状 況
に加
え,
“ 人 が乗
っ てい る”
という状 況 を 用
いる.
動 物
が“
檻
に入っ て いる”
とい う状 況 は,
動物
園 な どで よ く見
られ る もの であり
,周
辺状 況
として は不自
然 な もの で は ない と考
え られる.
動 物
に“
人 が乗
っ てい る ”状
況 は,例
えば馬
や象
で は よ く見
られ る もの で あ り,同
じ く周 辺状 況
と し て は不 自然
なも
の で はな
い と考 え
られ
る,
加
え田
村 隆 宏
:幼 児
の語 意 味
限 定に及ぼす 語命
名
時 と語 意味 限定 時
の事 物
の周 辺状
況の一
致,不
一
致
の効 果
123
て“
檻
に入
っ て い る”
が無
生物
の事 例
が周 辺
に存 在 す
る とい う状
況で あっ た の に対
し,
“
人が乗
っ て い る”
は生物
の事 例
が周 辺
に存 在
す る状 況
とい う よ うに, 周 辺に存
在
す る事 物
に質 的
な偏
り が生
じ ない よ う 工夫
す る とい う観 点
か らもこれ ら2
っ を 用い るこ と が 妥 当であると考
え ら れ る、
子 ど も が
内
包 と して は無 視
すべ き特 徴
を語 意 味
に反 映
さ せ る といっ た誤
りをfi
立た せず
に語 意 味
を学 習
し てい る こと は,
現 実
の場 面
で は事 物
に語
が命 名
さ れ た際
の周
辺状 況
と それ 以後
に そ の事 物
に接
し た 際の周 辺 状 況 が一
致
し てい ない こ と に起 因
する の で はない か とい う仮 説
に基
づ いて結
果 を 予想
し て み る.
語 が命
名
さ れ た際
の事 例
の周 辺 状 況 と語 意 味 を 限 定 する際
の周 辺状
況 が一
致 し て い る場 合
には,周
辺状 況
との関 係
か ら生
じ る特 徴 を語
が指
し 示 す事 物
の内 包
と して認 識
し や すい た め,
田 村
(1997
)
で も見
ら れ た よう
に,
周 辺状 況
を関 与
さ せ た語意 味 限驚
がな されやすいと予想
され る.
そ れ に対 して,
語
が命 名
された際
の周辺 状 況
と語 意 味
を限 定
す る際
の周辺 状 況
が一
致
してい ない場合
では, 周 辺状
況 との関係
か ら生
じ る特
徴 を 語 意 味 の内 包
と し て は無 視
し や すいた め,
周 辺状
況 を関 与
させ ない語 意味 限 定
が な さ れ や す い と予想
さ れ る.
方
法
被
験
者
被 験 者
は幼 稚 園 児
50
名 (
男 児
20
名
,
女 児
30
名 )
であ
り,
平 均 年 齢 (
範
囲)
は5
歳
8
ヵ月(
5
歳
0
ヵ月
〜
5
歳
11
ヵ月 〉
であっ た.
材 料
本 実 験
で は語が命 名
さ れ た事 例
の周 辺状
況 と語
があ
ては ま るか否
か を判 断
す る た めに提
示 さ れ る判 断事
例の 周 辺 状 況が一
致 してい る 群 (周 辺 状 況一
致 群 )と一
致 してい ない群
(周 辺状
況 不一
致群
) を 比較
す ることに な り,
各 群
で提
示される事 例
は異
なっ て い る.
周 辺状 況
一
致群
の標 本 事 例
は檻
に入っ た象
a ま た は人
の乗
っ た馬
a で あっ た.
周 辺 状 況 不
一・
致 群
の標 本 事 例
は人
が乗
っ て い る象
a また は檻
に入っ て い る 馬a で あっ た.
事
例
の後
に付
し た a やb
は 見か けが異 な る事 例
で あ るこ と を 示 し ている.
判 断 事 例
は象
a,象
b
,檻
に入っ た象
a,
檻に入っ た 象b
, 馬a, 馬b
, 人 が乗
っ た 馬 a, 人 が乗
っ た馬
b
, ハ ト ,檻
に入
っ たハ ト,鉛 筆
, ハ サ ミであ
っ た.
これ らの判 断 事例
に は,
例
え ば象
を標 本 事 例
とし た場 合
,
基礎 水 準 (
象 )
で等 価
で あ る象
,
上位 水 準 (
けも
の)
で等価
であ
る馬
,
さ ら に 上位 水 準 (
動 物
〉 で等 価
であ
るハ ト,
動 物
の カテ ゴ リー
とは無 関 連
の鉛 筆
とハ サ ミを含
ん でい る.
判
断事 例
に上 位 水準
に属
す る事 例
を含
め たのは,被
験者
の語
意味 限定
がいず れの概 念
水準
で語
意 味
限定
してい る か を明確
に査 定 する た め で ある.
例え ば,被 験 者
が新 奇 語
が“
象
”
の み にあ
て はまる と判 断
し た場 合
に は基 礎 水 準
“
象
”
の意 味
,
新 奇 語
が“
象
”
と“
馬
”
の み に あ て は ま る と判 断 し た場 合 に は 上位 水
準“
け もの”
の意 味
とし て限定
し てい る とい う よ うに,
被
験 者
の反 応
によっ て限 定
され た語 意 味
の概 念 水 準
が 明確
に査 定
で き る.
周 辺
状
況…
致群
の判 断 事 例
には標 本 事 例
(
例
え ば,繿
に入っ た象
a)
と同
じ周
辺状
況 が存 在
す る同
・』
の事 例
が含
ま れ,
周 辺 状 況 不
一
致群
の判 断 事 例
に は,
標 本 事 例
工
24
基 礎 心 理 学 研 究 第
21
巻 第
2
号
Table
l
The
nulnber andpercentage
of sublects answered“
Yes
”
to
each choice examplcrin
Experiment
1.
Numbers
hl
parenthesesindicate
the
percentage,
“
Bas,
”
in
Table
meansbasic
level
examper、“
Sup
.
”
meansSuperor
−
dinate
level
exampler.“
Pis
,
”
meansPigeon
.“
Pen.
”
meansPencil
,
“
Sci,
”
meansScissors
Examplers
with surround situationExamplers without surround situationUnrelatedBas
.
aBas
.
b
Sup.
aSup.
b
Pis. Bas.
aBas,
b
Sup.
aSup.
bPis
.
Perl,
Sci.
Agreement
GroupDisagreement
Group
24
21
2
1
1
(
96
.
0
)
(
84
.
0
)
(
8
,
0
)
(
4
.
)
(
4
.
0
)
13
12
1
0
1
(
52
.
O
)
(
48.
0
)
(
4.
0
)(
4.
0
)(
O,
0
)13
11
1
0
(
52
.
0
)
(
44
.
{〕)
(
4
.
0
)(
0
.
)20
18
1
1
(
80
.
〔})
(
72.
〔})
(
4
.
0
)
(
4
.
0
)
0
(O
.
0
)(
0
.
0
)
o
(
0.
0
)
(
0,
0
)
0
0
(
0
,
0
)
(
O
.
0
)
(例
え ば, 人 が乗
っ た象
a)
と 同 じ 周 辺状 況
が存 在
す る同
一
の事 例
は含
ま れ ない とい う関係
になっ ている,
両 課 題
の各 事 例
は,10cm
×10
cm のカー
ド ヒに黒の線 画
で描
か れ た も のを提
示 し た.
実 際
に提
示 した標 本事
例
の例
をFigure
l
に示
し た.
標 本 事 例
に命
名
す る新 奇 語
に つ い て田村
(
1997
)
と同
様の ケク とワ モ を 用い た.
手 続
き実
験 者
は被
験者
と机
を 挟 ん で向
かい合
い,
個
別
で以 下
の手 順
に従
っ て進
め られ た.
新 奇 語 命 名
:周 辺状
況一・
致 群 に対 して は, 標 本 事例
として檻
に入っ た象
a,
または人
の乗
っ た馬
a を提
示 し て指さ し な が ら“
こ れ は よ そ の国の言 葉
で ケ ク とい い ま す.
も う一
度
い い ま すよ.
これは よ そ の国
の言 葉
で ケ ク とい い ま す” と新 奇 語
を命
名
した.
新 奇 語
命
名
に際
し て“
よ その国
の言 葉
で〜”
とい う文 脈 を 用いたの は, 単 に“
こ れ は ケ ク です”
と命 名
した場 合
には,被 験 者
は ケ クがEli
本 語
の未 知
の単 語
だ と考
えて,
既に獲 得
して いる“
犬”
や」
’
け もの”
や“
動 物
”
な ど の語
の意 味
を排 除
し て語 意 味
を限 定
して し まう
お そ れ があ
り,
これを避
ける ためで あっ た.
“
よ その国
の言 葉
で〜”
という文 脈
で新
奇語
を命名
し た場 合
には, 既に獲得
し てい る 語の意味
の 可 能性
を排
除 せ ずに意 味
を 限定
す る た め,
幼 児 が最 初
に未知
の語
を聞
い て意味
を限
定 する場 面 を 再現
した中
で周辺状 況
の影 響 を検 討
で きる.
周辺 状 況
不一
致 群
で は,
標 本 事 例
として人
の乗
っ た象
a,
ま た は檻
に入っ た馬
a を提
示し て同様
に新 奇 語
を命
名
し た.
各
群 と も被 験 者
の半 数
に象
の事 例
,
半 数
に馬
の事 例
を提
示 し た.
新 奇 詰 適 合 判 断 :
12
事 例の判 断 事 例 すべ て を 提 示 して,
“
こ の中
にケ ク が あ るか探
して く だ さい”
と教
示 し,
実 験者
が1
事 例 ず
つ指
さ し て“
こ れ は ケ クだ と思
い ますか ?”
と質 問
し,
“
はい”
か“
い いえ”
で答
え さ せ た.
結 果
と考 察
結 果
に つ い て は,各
判 断事 例
に対 する“
はい”
反
応者
の数 を分 析
の対 象
と し た.Table
l
は実 験
1
の周 辺 状 況
一
致群
と周 辺状
況 不一
致 群
の各 判 断 事 例
に対
す る“
は い”
反 応 者
の数
と割 合 (
%)
を 示 し た もので あ る.
Table
1
の基 礎事 例
と は,
提
示 さ れ た標 本 事 例
と基 礎水 準
で等 価
で あ る判 断事 例
を示し た もの である.
例
えば
,
標 本 事 例
と し て檻
に入
っ た象
aを 提 示
され た被 験
者
の場 合
,周 辺 状 況 あ り
の基 礎 事 例
a と基 礎 事 例
b
は そ れ ぞ れ 檻 に入っ た 象 a と檻に入っ た象
b
とい うこ と にな り,周
辺状
況 な しの基 礎事 例
a と 基 礎 事例
b
は そ れ ぞ れ象
a と象
b
とい うこ と になる.
これに対
して標
本 事 例
と し て人
の乗
っ た馬
a を 提 示 さ れ た 被 験 者の場合
,
周 辺 状 況 あ
りの基 礎 事 例
a と基 礎 事 例
b
は そ れ ぞ れ 人の乗っ た 馬 a と人の乗っ た馬b
とい うこ と に な り,
周 辺状
況 な しの基礎 事例
a と基 礎 事 例
b
は そ れ ぞ れ馬
a と馬
b
とい う こ と に な る.
Table
l
の上位 事
例 と は 標本
事 例 と 上位
水 準 (け も の)
で等 価
であ
る判 断 事 例
を 示 し た もの で あ る.
例
え ば,
標 本 事 例
として檻
に入っ た象
を提
示 さ れ た被
験 者の 場合
,
周 辺状
況 あ りの ヒ位 事 例
a と上位 事 例
b
は そ れ ぞ れ 人 の乗
っ た馬
a と人
の乗
っ た馬
b
という
こ とにな り, 周 辺状 況
な しの上 位 事 例
a と上 位 事 例
b
はそ れ ぞ れ馬
a と馬
b
とい うこ とにな る.
これに対 し て,
標 本
事 例
と して人の乗
っ た 馬 を提
示 さ れ た被 験 者
の場合
,
周
辺 状 況 あ
りのH
位 事
例
a と上位
事
例
b
は, そ れ ぞ れ檻
に 入 っ た象
a と檻
に入
っ た象
b
という
こ とになり
,周
辺状 況
な しの上位 事 例
a と.
.
ヒ位 事 例
b
は そ れ ぞ れ象
a と象b
とい うこ と に な る.
周 辺
状
況一
致 群に おいて,
周 辺状
況 あ りの事 例
に“
は い”反 応
し た とい うこ と は,標本 事
例
と判 断 事 例
の周辺
状
況 が同
じであるこ とか ら,命
名 時の周 辺 状 況に制約
さ れて語 意 味
を限定
し た こと を 示 してい る.
周
辺状
況 不一
致 群に おいて,
周 辺状 況
あ り の事 例
に“
はい”
反 応 し た田