シ ス テ
ム 思 考
の
応 用
に
よ
る デ
ザ イ
ン
の
思 考 プ
ロ
セ
ス
の
理 解
AComprehension
of
Design
丁
hinking
Process
by
Applying
System
Thinking
前 川 正 実 MAEKAWA
Masami
株 式 会 社 操 作デ ザイン設 計
Sosa
Design inc1 .
は じ め に1
.
1
,
デザ イン の役 割デザ インの役 割 と して
,
特 に 成 熟 市 場 に おいてはニー
ズを ウォ ン ツ に変 える側 面 が 着 目 さ れる傾 向 がみ られる.
し か し本来
の デザ イン の役 割 は,
人 や社
会 に役 立つ事 物の創 造 に 対 する 考 え 方 と方 法の提示 と実 践 とい っ た,
幅 広 く基 盤 的 な もの であ るD.
本 稿 は デ ザ インを造 形 的 側 面 か らのみ 捉 え るの でな く,
よ り広 義 す な わ ち 本 来 的 な 意 味で捉 え,
デザ イン活 動にお ける 思考
プロ セ スを 理解
し実 践へ役
立て るた めの シ ス テム 思 考の応 用につ いて述べ る,
の
特
定の狭
い領
域に対象
を絞
っ た い わ ゆ る科
学と し て で はな く,
む し ろ そ う した科学
を組
み合
わせ る媒 体
あるいは場 とし て の側
面を本 質
的に持つ のがデザイ ンだと い え る.
他 方,
サ イエ ン スやテクノ ロジー
な ど は専 門 分 化
し た体 系
を持
つ科 学
であ る.
私達に役 立つ 事 物は こ う し た複 数の分野 の知見が 組み合 わ さ れる こと に よっ ては じめて創 造 さ れ 得 る.
科 学 が 高 度 化・
先 鋭 化 さ れる につれ,
これ ら を 適 切 に 総 合 する能 力の向 上 や 方 法 の開
発 は 必 然 的 に 求 め られ る といえ る.
本質
的 なデザ イン問
題 は,
人 々 とそ の総
体である社 会 にとっ て の価 値 を 定 義し,
これ を 実 現 する事 物 を創 り出 す た め に,
物 理 や 化 学 な どのサ イエ ン ス、
機 械,
電気
印 刷 などのテ クノロ ジー,
哲 学,
宗 教,
経 済 な どのナレッジ をいか に 活 用 し 総 合 す る か ということ であ る.
特 に 近 年 は,
持 続 可 能 社 会 をつ く るた め に 資 源 消 費 を 抑 え る 目 的 や,
有 用 性,
利 便性
,
快適性
などを 高 め る 目 的、
総 体として の提 供 価 値 を高
めるこ とな どを目的
と して,
モノ・
ソ フ ト ウエ ア・
サー
ビスを 上 手 く組み合わ せ る こ とに 対 す る 関 心 が高
まっ て いる.
わか り や すい成功例
に は アッフル社の
iPod
・
iTunes
・
iTunes
Store
に よ る音 楽
の購
入 と使
用 に 関 する
包
括 的 仕 組 みのデザイン など が挙
げら れ る.
さまざ ま な要素
を適切 に組
み合わ せ総
合 するため の 思考 技 術,
構 成 技術
と しての デザインの役 割
は拡
大 しつ つあるといえる.
工
業製
品,
建物
,
衣 服 広告
な どに加 え,
サー
ビス,
社 会 環境
,
ビ ジ ネス モ デ ルな ど,
近年
は本 質 的 なデザ インが 必 要 と さ れ る 領域
は拡 大
の一
途
であ
る.
これ
は人
工物創 造
の基 盤 を な す デ ザ インの本 領が発 揮される時 代の到来
と い え,
よ り 本 質 的 な 活 動 が 求 め られ るこ とを意 味
する,
加え て,
実践
にお けるプロ ダ ク ト.
ビ ジュ ア ル,
情報
な どと いっ た 科 と して の領 域の枠 を 超 えて デ ザ イン活 動 を 行 う 人 材 は 現 実に は乏しく,
ま た デ ザ イ ン方 法の形 式 知 化 が 進 んでいない こ となどか ら,
価値
発 見と具 現 化の ノウハ ウとして いわ ゆ る 「デザ イン思 考 」 への関 心が高
まっ てき た 実 態 が ある こと は 周 知の とお りであ る.
「何 を 創 る か 」 が 重 要 な 課 題 と な り
,
イノベー
ショ ン の必 要 が 叫 ば れて久 しい.
シュ ン ペー
ター
の言う 「新 結 合」 は要 素 自 体 と そ れ ら の 結 合 の 仕 方 を 新 た に 創 ること を指
す.
各
要素
を部
分 最 適 に 設 計 して結 果 を 単 に 組 み 合 わせるの で はな く,
むし ろ 各 要 素の結 合 や 関 係のと り方 が イノ ベー
ショ ンの要 点で あ る,
システム 全 体 を 整 合 し,
総 体として革 新 を 生 む 秩 序立 っ た創 造 を 結果 とし て行うた めの考 え 方 と方 法 が 求 め られてお り,
こ の 点において デザ イン へ の期 待 は 大 きい といえ る.
しかし デザ インが 対 象 と する テー
マ は,
リッテル とウェ バー
が指
摘 し た よ う に、
定 義 しに く く,
構 造 化 しに く く.
厄 介 な も の で ある2 }.
予 め 定 義 さ れた問 題の存 在を前 提とする工 学的 ア プロー
チ が 通 用 し に くい領 域 が デザ
インの対 象範
囲に は存在
す る.
そ して こ の領 域 知 識は.
過 去も現 在も各
デザイ ナー
の属 人 的 な 暗 黙 知 と して留 ま るこ とが ほと んどであ る,
1
.
2
.
総 合 段 階の暗 黙 知い わ ゆ る 「デ
ザ
イン思考
」 はこう したデザイ ナー
の経 験則
・
暗 黙 知の一
部につ い て,
非デ ザ イ ナー
で あっ て も 理解しや す く 実 践 しや すい形 式知
と して ま と め られ た ものといえる.
具 現 化 すべ き価値
を探
る調 査と分 析
の段 階
につ いては既に形 式 知 化 さ れ て い た手 法も多
く,
これらを 体 系 化にま と め 実 践 的 なノウハ ウを付
与 する こ と に一
定程 度
の充 実 はみ ら れる.
しか し その後 の総
合 段 階は依 然 とし て ほと ん ど 暗 黙 知のま ま残っ てお り,
こ こ にプロセス の断 絶
が あると考 え る.
デザイ ン活 動の総 合 段 階では,
アイデ ア発 想 は ブレイン ス トー
ミングに依 存 し,
デザ イン具 体 化の過 程 は プロ トタ イ ピン グ に よる のが一
般 的であ る.
簡 単 なスケッチ や 模 型も プロ ト タ イ プ に 含 む,
これ ら は 外 見 的 に は わ か りや す く 見える が,
デザ イナー
の内 面で行 わ れる思 考は当 然な が ら見る こ と は でき ない た め,
核
心 的 なところ は暗黙
の状 態
とな りやす
い.
総
合 段 階で用い ら れ る 方 法 に は 次のよう な限 界 や 懸念
があ る.
例 え ばブ
レ イン ス トー
ミング
は参加 者
の経 験
知識
の範 囲
を 越 え ること は ほ とん どな く,
非 分割結合
す な わ ち低
い レベル の 創 造 に 留 ま り や すいと の指 摘が あ る3).
ブ ロ トタイピングでは34
デ ザ イン学研 究 特 集 号SpeGial lssueofJapaneseSooi 創yfortheSciemceefDesign VOL22
−
1 No.
852015NII-Electronic Library Service
外 部 制 約 一 図1シ ステ ムの階層 性 およ びシ ステム内の秩 序 と制約の関係性 (
1
) (10) を参考に作 成 ) 評 価 基 準の曖 昧 さ や 変 化 に よって,
結
果 的 に解
が収 束 困難
と な るお そ れ が ある4},
そ のた め 総 合 段 階 に お ける暗 黙 知 を 予 め 習 得 し備 え た 者 が 然 るべ き パフォー
マ ン スを 発揮
しな け れ ば優
れ たデザ イン の実現
は や は り難
しい現 実
があ
る,
いわ ゆ
る 「デザ
イ ン 思考」 に よっ て も革新
的創
造につ な が ら な い と の近 年の批判
5)につ い て 理由
はさ ま ざ ま考
え られ
るが,
総 合段 階
が依 然
と し て暗 黙 知の状 態にある こ と も一
因と考
え ら れ る.
総 合 段 階の形 式 知 化 が 進 展 しない ひとつ の理 由 と して
,
総 合 の対 象は個 別 的 な 案 件がほと ん どで汎 用 性 が 乏 しいた め 学 術 論文
に な りに くい こ とが指 摘
さ れてい る6},
確 か に 総 合 活 動の具 体 的 事 例 を 外 側か ら観 察 す れ ば 表 層の個 別 的 な 事 象 しか皃
えて こない.
しか しデザ
イ ナー
が そ の毎 度
全 く 異 な る 思 考 を してい る と は考え に くい7 〕.
根 底に はあ る 程 度 定 型 化 さ れた思 考 プロ セスが存在
し,
その上で思 考 さ れ るコ ンテン ツが 事 例 毎 に 入 れ 替わ っ て いる と考え る の が妥 当であろ う.
そ して根 底の思 考プ ロセ スを取
り出
すこ とができ れ ば,
総合 段 階
の形式
知化
の可能
性
をうか がう ことができる と推測
さ れ る.
他 方
,
デザ
イン外
の 分野 に 目を 向け れば,
総
合に関す る知 見・
考
え方と して シ ス テ ム 論 やシ ス テム 思考
が ある.
デザイ ン総 合
の 思考
プロ セ ス の理 解のた め にこれ ら を 応 用 する こと はひとつの策
と考
え ら れ る.
本 稿 はデザ インに お ける
創
造 的 思考
を 理解 す
るため の シ ス テ ム 思 考の応 用につ いて考 察 する,
そ し て利
用状
況か らユー
ザー
要 求 事 項 を 取 得 して事 物 が 備 え るべき 要 件 を導 出 する方 法.
ア イ デアの可 視 化 と 評 価の段 階 に お ける外 部 制 約 と 内 部 制 約の観 点 か らの思 考 プロセス につ いて述べる,
2 .
シ ステ
ム思 考
本 稿で 示すシ ス テ ム 思考は
、
ベルタラ ン フィらが提
唱し た一
般シ ス テム 理論
S〕に 基 づ く,一
般
シ ス テ ム 理論
で は事 物
を単
に構成
要素
の集積
と捉
え るの でな く,
要素
間 の多様
な 関係 性
ま でを含む か た ちで把 握 す る.
デ ザ インは 対 象 事 物とインタ ラ ク ショ ンす るユー
ザ
ー
や 利 用 状 況,
社 会 や 経 済 な ど との関 係 に お いて最適
な事
物を創 造 する活 動 なので.一
般システム理 論の考 え 方 や視
点 と 重 なるとこ ろ は大 きい と い え る.
既に述べた よう に
,
創るべ き もの,
デザイ ン すべ き も のが不 明 確 な 時 代 と なっ て久 しい、
予 めデザ イン対象
と して想 定 し た 事 物 だ け に 焦 点 を 絞る の でな く,
シ ス テム思考 を 応用 し,
関係
す る 周 辺の事 物 までを把 握 して それ ら との関係性
を考慮
に含
め ることは,
価値
創 造のた めの課
題範 囲
を 適切
に設定 す
る た め の 俯 瞰 的 かつ微 視 的 な 視 点 を得る こ と と い え,
創
るべき事 物
の発 見と明 確 化,
そ して課 題 化 につ な がると 考 えられる.
3 .
制 約
の関 係 性
シ ス テ ム思 考に拠 れ ば,
シス テ ム は 図1
に 示 す 階 層 的 な 構 造 で表
現 する こ と がで き9}1 °},
デ ザ イン対 象 事 物 はこの関 係 性 の中
に位
置 づけ られ る.
こ こで の要 点 は,
下 位 に あ る 当 該 シス テ ム内
の制 約
は 上位
シ ステ ム の 秩序
を 保つた め に あ ることであ る,
後
述 す る よ う に,
制 約 が 予 め 全て定 まっ ている状 態
で デザ インが実施
されるこ と はほぼ無
いため,
事
物 状 態 が 形 成 さ れる 過程
で事 後
的に制約
が定め られるこ と にな る.
こ のとき,
新 た な秩 序
が 形 成 さ れるよう に,
あるいは既存
の秩序
を 保 持 す る よ う に,
制 約
の内 容
が設 定
され
ると考
え られ る.
漁 毛
鞭
1
窪
:
1
∵ ∴
隠
.制約
の取 扱
いは デザイ ン の 思考
にお ける ひとつ の要
点 といえ る.
デザイ ン は多
く の制 約
の中
で の創
造活
動である.
こ こ で言 う制 約
は デザイ ナー
の意
思に反す
る状 態
の みを指
すの で はな い.
デ ザ イ ナー
の認 識の有
無に よ らず存在
す る事柄
.
例えば 重力 な
ど無意 識
に受
け 入れ
られ
て いる事柄
も含
まれ
る.
どの制約
を受け 入 れ,
あ るい は設け,
退 け る か の判 断に よっ て デ ザ イン解
は ほぼ 定ま る とい え る.
デザイン解
が 形 成さ れ る 過程
で、
制
約
の多様
で複雑
な関係 性
が構 築
され
た り.
既存
する関係 性
の存
在
が明ら か に なっ た り す る.
こ う し た 思考 作業
に対し て,
制約
を外部 制約
と内部制 約
に分類
し て捉
えるこ と は,
デザイ ン の思 考を理 解 する の に役立つと考え られる.
図
2
要 求
可
能性
タスクー
人工物サ イ ク ル (2
)(和 訳 し一
部 加 筆 )4 .
汎用
シ ス テ ム デ ザ イ ン プ ロ セ ス山 岡ら が
提
唱 す る 汎 用シス テ ム デザ
インプロ セス1D は シス テ ム思 考の考え方を取り 入 れて お り,
プ ロ セ ス は以 下の4
種類
のステ ッ プに大 別
される,
シ ステム の概 要 システムの詳 細
可 視 化 評 価
これ ら と制 約 との関 連 は 次のよ うに捉 え ることがで き る
.
「シ ス テムの概 要」 と 「システ ムの詳 細」 は
,
調査 と 分析,
ユー
ザー
要求事
項の抽 出
及 びコ ンセプト策
定 なので,
外部制 約
の探索
と設 定,
「可視 化 」 は 発想と総 合の作 業 なの で
,
外 部 制 約 を満
足す
る事 物 状 態
の考案
と編 集
お よ び内部 制 約
の発 見 と 編集
「 評
価
」 は可視化
された事 物 状態
に対
する外部 制約
に基 づ く評 価.
こ のデ
ザ
インプロ セ ス はの
評 価 結 果
が 不十分
であ れ ば,
,
の
各
段階
へ 戻 る こ と を前
提と す る.
こ れ は外 部 制 約 の探 索
から始
ま り,
事物 状
態の考案
と編 集 す な わ ち 内 部 制 約の 編 集 が 実 施 さ れ,
外 部 制 約 を 基 準 と する評 価 に よっ て再 び 内 部制 約
の編
集 が 行 わ れ る 制 約 編 集 フロセス と捉 え ること ができ る,
本 稿で は 「シ ステ ムの詳 細 」 段 階で の ユー
ザー
要 求 事 項 の発 見 と事 物 が 備 え るべき 要 件 の導
出「可
視化
」,
「評
価
」 の ス テップ に 焦 点 を 定 め,
以 下 に 述べる.
4
.
1
.
シ ス テムの詳 細4 .
1.
1,
ユー
ザー
要 求 事 項の抽 出顧 客 やユ
ー
ザー
か ら 必 要 と さ れ競 争 力
のあ る新
たな価値
を備
え る た め に,
潜 在 的 要 求の発 見 が 重 要 なのは 言 う まで も ない.
潜 在 的 要 求は事 象に対 する解 釈の枠 組み を変え る こ と に よっ て 発 見 さ れ ることが あ る.
そのた め 観察
やコ ンテ クス チュ ア ル イ ンクワイア リー
などで は,
問 題と認 識される事 柄
だけ で な く,
確 認 さ れ た 事 象 と 状 況 を素 直 に 捉 え るこ とが 肝 要である.
事 象
は解 釈
の仕 方 や 周 囲の状 況 が 変 わ ること で問 題に なっ た り,
逆 に 望 ま しい事
に なっ た り す る か ら である.
技 術
やこれを 具現化
した事物
はユー
ザー
の行 為 や 行 動 と関 係 す る12 〕.
つ ま り新
技 術は新 た な 利 用 行 動 を 生 む,
これ は 厳 密 な 意味
の新技術
でな く と も 生 じる現 象で,
既 存 技 術の新 た な 解釈
,
新
たな組
み合
わせ,
新
分 野へ の適 用 な ど に よっ ても み ら れ る.
こ の こ と は1979
年
に 発売さ れたソニー
社のウォー
クマ ン な ど の事
例 を 見 れば
明ら か であ
ろ う,
ユー
ザー
が どのよ う に利
用 する か.
或いは ど の よ う に利用でき る よ う に す る か,
どんな 場 面で利 用され るか と いっ た 「利
用のあ り か た」 につ い て考 え るこ と は,
新た な事物 そ の も の を考え ること に通 じ る とい え る,
従っ て,
事 物 が 利 用 さ れ る 様 子 を 想 定 す ることは,
ユー
ザー
要 求 事 項 を 導 ぎ 出 す 有 効 な 手 段と考え られる.
4.
1.
2.
事 物 状 態 と 利 用 タ ス ク の 関係
上 述 した 関係 を 人工物とタス クの関 係と して示 す タス クー
人 工物サ イクルが ある (図2
参 照 〉.
こ の サ イ クルは,
タ
ス ク が変
わ れ ば 人工物
す な わ ち デ ザ イン対 象 事 物に対 す る 要求
が生
じ て人工物 が 変 化 し、
そ の結 果 タス ク が 変 化 す る 可能 性
が生
じ る サ イ ク リック な 編 集 プロセ スを 表 すT3},
これに拠 れば
,
タスク の編集
と人工物
の編 集
を別個
に行う こ と はで き ない.
しか し現実
の デザイ ン検 討
はタスク と人工物
の ど ち ら か を 起 点 に す る こ と に な る.
こ の と き,
内 容 が ある程 度定
まっ て い る人
工物
を起 点
と すると タスク を検 討
しや すい.
例 え ばユー
ザー
の目的 が 「明 日 の会議
の時 間 を 相 手に伝 える」 な らば
、
想定 手段
をPC
で のE
メー
ル送信
と するか,
固 定 電 話で の音 声 伝
達と す る か,
Skype
やLINE
のよ う な 仕 組み とす る か で具体 的
な タスク は異
なる,
そのた め 事 物の種 類 が 予 め 定 まっ て いれ ば利
用状 況
や制 約
が 明確
に な り や す く,
タス クを具 体 的に イ メー
ジしや すくなるから である.
こ のよ うに,
既存手 段
の具 体
的 な タスク と利
用 状 況 を 想 定 し,
これ を 修正すること に よっ て新 た な 事 物 をデザ インす るアプロー
チがまず
ひ とつ ある.
これ と は 逆 に
,
ユー
ザー
の目的 達 成 に おい て原 理的
に必
要と なる抽 象 的 タスク と利 用 状 況 を ま ず 設 定し.
これに対し て適切36
デ ザ イ ン学研究特 集号Special IssueofJapanese SQcietyfor the Scienceot Design
NII-Electronic Library Service
表1 プロ セ ス状況テー
ブ ルの例 アクティ ビテ ィ 自転 車で スー
パー
マー
ケットへ行 き、
お米10 と他の食 材を買っ て来る ユー
ザ 背 景 シ ス テ ム タスク 属性 嗜 好性・
認知特性 身体的状態 心理的状 態 時間 的要素 場所・
空間的要素 前 提・
制 約 要 求・
要 件 自転 車を 自宅 駐 輪 場か ら出す 主 婦、
30
歳 代、
健 康 自 転 車 を 押 したり 引いた り し て歩 く できるだけ早く帰って来た い 壁など他の と こ ろ に ぶつ け た くな い 夕 方 やや郊外、
スー
パー
ま で5 駐 輪場とそ の 周囲は狭い 雨 天 で は ない 自転 車 の機 能 は 十 分 押 し て動 か しや すい自 転 車 小 回 り が 効 く 自 転 車 道路を 走って スー
パー
まで行 く 同 サ ド ル に 乗り 自転 車をこぐ 交 通 事 故 に 遭 わ ないよ う に 注 意 狭い路地では 横 か らの衝 突 に 注 意 できるだ け 歩 道 を 走 り たい 同 車 道 と歩 道 夕 方 は 歩 行 者 や車が多い 歩 道の凸 凹でも 不安定 に な ら ない自転 車 安 定 感のあ る 自 転 車 スー
パー
の駐 輪場 に駐 輪する 同 自 転 車 か ら降りて 押して歩 く お 米 は 重いの で、
店 内出 口 近 く に 駐 輪 し たい。
同 駐 輪スペー
ス が 空い て い る。
スー
パー
に駐 輪スペー
スが ある 店建物 出口付近に充 分 な駐輪ス ペー
スが ある 駐 車 自転車 間に は、
あ る程 度の距離が ある 店 内でカ ゴ を と り カー
トに載せ る 同 歩く 手 をのば す いっ もの作 業 なの でほぼ無 意識 同 スー
パー
店 内、
少 し混 雑 し始 い つもの場 所 に カゴ とカー
が あ る な事 物 状態
を考案
す るアプロー
チがあ
る.
先
の例
で いえ ば,
抽
象 的 タスク に は,
相 手 の 指 定,
メッ セー
ジの入力
,
伝達 完
了の 確 認 などが あ る.
こうし た抽 象 的 タスク に対して 具 体 的な利 用 状 況 と そ の他 の 制 約 を 設 定 し、
この条 件
に 対 して適
切 な手
段と 要 件 を 導 出 す る 方 法で あ る.
4.
1.
3.
シ ナ リ オ法
の特性
新しい利 用の
様
子を想
定す る際
に は シ ナ リ オ法 が用 い ら れ る こと が多
いが,
次のよ う な特 性
の存在 が 指摘
されて いる14}.
ま ず
,
シナ リオ は一
般 に テ キス トで記 述され るた め網 羅 的に 状 況 を 記 述 する のが 困 難で,
記 述者
が意
識 した点 だ
け が 記 さ れ,
そ れ 以 外 は 暗 黙 的 か無考 慮
とな りや すい懸念 が
あ る.
つま り新た な利 用の想 定に シ ナ リ オ法を用い た場 合,
そ の と き 思 い つい た一
部
の断 片
し か記述
され ない こ と にな りや すく,
記 述内
容
の盲 点
や欠点
などを 発見し て編
集し,
優
れ たシ ナ リオへ 改 善 する のが困難
といえる,
こ の点
は キャ ロ ルも 懸 念 して い る15),
観
察 な どで得
た既存の利
用状 況の 記述で は,
問 題 と認 識 さ れ た内容
の み の記述
と な りや すいた め,
情 報取得
の段階
で偏
り と制
限 がか か り や す い と い え る,
そ の た め 問 題を 定 義しよう と し ても 暗 黙 的 な とこ ろが 多 く,
原 因 探 索 が 浅 く な り 結 果 と して不 適 切 な結論
へ 至るおそれ が あるといえる.
ま た
一
連の文章
形 式で表 現 さ れるた め,
想 定状 況の一
部 を変 え た場 合に影 響を受 け る 事 柄を発 見して新たな 全 体 状 況を構 築し直 すことが難
しく,
むし ろ書
き直
す ほうが容
易であ
る.
ただしこ の場
合 も意
識 さ れ た内 容
のみの記 述 に 留 ま り,
暗黙 的
なと ころ が多
く な りや す く,
書いた当 人し か 正 し く理 解で き ないもの に な り が ち と い える.
その ため シ ナリオをブ
レインストー
ミング
の材 料
と して の利 用に留め た り,
シ ナ リ オ を洗 練 する目 的で,
暗 黙
・
曖 昧な箇
所
を 発 見できるよう他者
の観 点
で シ ナ リオを吟味
し て も らったり す る な ど の対 症療
法的 な 工夫が な さ れてい る実情
が あ る.
4 .
1.
4 .
プロセス状
況 テー
ブ ル の概
要表
1
に例
示す
るプロ セ ス状 況
テー
ブル(
PrQST
:Process
State
Table
)
16〕17〕は,
あ る 目的のため にユー
ザー
が 事 物 を 利 用す
る際
のタ
スクと状 況
を分析 的
に記 述
し,
ユー
ザー
要求 事項
と事
物に求め ら れ る要件
を導 出
す る ツー
ル で あ る.
記録・
設定 した内容
の一
部
に別の状
況 を想 定 する操 作 に よっ て新 た な 要 求 事項 と 要件の発 見 を 促 す と と もに,
利 用 状 況 全 体 を 整 合 する編集作 業
を行
いや す
く する点
に特 徴
が ある.
利 用状
況 を タスク 別 かつ状 況 項 目 別に明確 化
し,
そ の後
の編集
を容
易に す る こ とを 目的
と して,
カスタ
マー
ジャー
ニー
マ ッ プのようなイ ラ ス トで はな
くテ キス トで の記述
を採
用した.
タ
スク,
利用 状 況
事物
に対す る要件
を 同一
面 上で編 集できる た め,
タスクー
人工物サ イクル に即した検 討
に適 す といえる.
テキス トベー
ス では ある が,
記 述 過 程では,
利 用 状 況 とそ こ で利 用 さ れる事 物の状 態 を 細 か くイ メー
ジ し シ ミュ レー
ションす ること に な る,
アクティビティにはユー
ザー
の目 的 を 含 む 活 動の概 要 を 設 定 し記
述 す る.
テー
ブ ルの縦 軸 にユー
ザー
のタスク,
横 軸 に 各 状 況項 目 と 要求・
要件の 項 目を 配し,
各 タスクの実 施 時の状 況 を 網 羅 的 かつ分 析 的 に 記述 す る,
状 況 項 目は 以 下の6
種 類であ る.
ユ
ー
ザー
の属 性・
嗜 好 性・
認 知 特 性ユ
ー
ザー
の身 体 的 状 態ユ
ー
ザー
の心 理 的 状 態時
間的側
面場 所
・
空
間 的 側 面前 提
・
制 約4
.
1
.
5 .
プ
ロ セ ス状 況
テー
ブ
ルを
用いた制約
の精緻 化
プロセ ス状 況テ
ー
ブ
ル に記 述され る 利 用 状 況,
要 求・
要 件に は関連
が あ り,
事 物状 態
を制約
す る働
き を持
つ,
例 えば店 舗
の レ ジであ れ ば,
屋外へ の設 置 や 暗い環 境で の使 用といっ た利 用蘇 騰
∴ ∵ ∴
1
監
NII-Electronic Library Service
状 況 は 想 定 さ れに くい.
しかし仮
に屋外
へ の設 置を想 定
す れ ば,
雨天や 暗い時 間 帯で の使用が 想 定 さ れ照 明 や防
水へ の配慮
を 要 す る だろう.
ある いは商 品
全て にR
日D
タ グ を付
け,
クレ ジッ ト カー
ドな どで の電子決 済を前 提と す れば,
レジに求め ら れ る 要 件 や 空 間 的 な 利 用 状 況 な どは変
わるだろ う.
こ のよう に 利 用 状 況 と要 求・
要件は相
互 に関 連し,
全体
と し て整 合し た状 態 と なるよ う相
互編 集
さ れる.
この例
で示し た運 用方 法
の ほ か,
利
用 する テ ク ノ ロジー,
適
用され る 法 律 や 規 制,
物 理 的 な 条 件,
社
会 的な条件
.
事 故
防止 の考 慮な ど は 「前 提・
制 約 」 に記
さ れる.
これは当該
タスクに お い て可視 化
されにくい背
景 的 な 外 部 制 約 を網羅的に把 握・
認 識す る た め の項 目で あ る.
可 視化
さ れ ず把 握
し にくい事柄
を意 識 的
に想 定
す るこ とに よっ て,
より高 次
の制 約
編集
につな がり や す くな ると考える.
なお
制約 編集
の要点
は,
事 物
が位 置づけ ら れる階 層 的システ ム内
に お いて制 約が 全体と して平 衡 状 態を保つ必 要があ ること であ
る.
そ れ ぞ れの制約
が 全て成
立 し合 えるよ う に 利 用 状 況 と 要件
を 記 述 し編 集 す るこ とに よっ て制 約 は 精 緻 化 さ れ る.
4
.
1
.
6
.
プロ セ ス状
況 テー
ブ
ル と シナ リオ 法 の 補 完 的 活 用プロ セ ス
状況
テー
ブ
ルとシ ナ リオ 法 の 補 完 的 な 活 用 が 考 え ら れ る18).
シ ナリ オ は 発 想 し た 断 片 的 な 利 用ス トー
リー
を 記 述 し や すい利 点 が あ る一
方で,
プロセス状 況テー
ブ ル は 形 式 的で 記 述が難しいとの印 象を与え る欠 点がある.
またシナリオ は 断片 的
で暗黙 的
な箇
所が多
く精 緻 化 が 困 難とい う 欠 点 が ある一
方 で,
プ ロ セ ス状況 テー
ブル は利 用 状 況を網 羅 的に把 握して整 合性
を確 認
し編集
しや すい利点
が ある.
両者
に はこう し た相
反 す る特 性
が あるため,
まず
アイデ アをシ ナ リオで記述
し,
次に プ ロ セ ス状
況 テー
ブル に分 析的 に転
載し,
暗 黙 的な点 や 考 慮され ず 空欄
となっ て い る セ ル を埋
め た り.
内容
を編 集
し たりす る作
業
を 通 じ て利
用状
況を精
緻化
する方法
が考
え られ る,
これによ り,
双方の欠 点
を補
い利点
を 生 かす
こ と になる と考
え る.
な お プロ セ ス状況 テ
ー
ブル の記 述 が 難し い と の印象
を与え る一
因 と して,
業
務機 器
な ど利
用 方 法 が複雑
なシ ス テムへ も対 応 できる形 式である点 が 挙 げられる.
よ り簡 単 な,
例えばパー
ソ ナ ルユー
ス の事 物 や 利 用 場 所 な ど が 予 め 決 まっ ている場 合 な ど であ れ ば 記 述 項 目を 減 ら しても構
わ ない,
た だ し各
項 目 は網 羅
性 を 高 め 幅 広い検 討 と編 集 を し や す くする要 素 なの で,
無 闇に 項 目 を 削 減 す れ ば 考 慮 に 含 む状
況・
制約
が 減 少 し プロセス状 況 テー
ブ
ル の効 果 を 損 な う おそれ が ある.
4.
2.
「可 視 化 」 と 「評 価」4
.
2.
1
.
既 存の問題 点こ こまで の過 程で事 物 に 対 す る 要 求 や 要 件
,
コ ンセ プ トが 定 義 さ れるが,
こ こか ら た だ一
つの デザ イン解 を 導 き 出 すのは 当 然 な が ら 容 易でない,
当 初の コ ンセ プ トは 抽 象 的 なことが 多 く,
解釈
で きる幅 は 広 く,
考 え 得 る 解の範 囲も広いか らであ38
デ ザ イ ン 学 研究特 集号Special lss
凵
eofJapanese SocletyfortheScienGe of DesignVo!
.
22−
1 No.
85 2015 る.
その た め、
プロ トタ イピング す な わ ち ア イ デ アの可 視 化 と 評価
の反復
に よっ て 具 体 的 な事
物 状 態の洗 練 を 行 うこと が一
般的
であ る.
し か し従前
の可視 化
と洗練
の方法
に は 少 な くとも 以 下に示 す 問題が あ る.
ま
ず
,
デザ イン案
の機
能 的側 面と感 性
的 側 面 が 混 合 さ れ た 状 態で評 価され や すい点があ る.
デ ザ イン案 は,
ユー
ザー
の機 能 要 求,
感
1
生的 嗜 好 性,
プロバイダ
ー
の意
思,
デザ イ ナー
の意
思 社 会 的・
物 理 的・
経 済 的 な 制 約 な ど 多 くの要 素 が 組 み 合 わ さ れ た 結 果であ る.
評 価 はこ の総 体 に 対 して行 わ れ る た め,
結 果 がどうであ れ,
そ の 原 因 の特 定 は 困 難 と な りや すい,
次に,
発 見された問 題に対 す る 個 別 的かつ表 層 的 な 改 善に留 ま りや すいお そ れ が あ る,
先 に 述べた よ う に 原 因 が 不 明 確 に な り や すいた め,
問 題 を 効 率 よ く効 果 的 に 改善
でき そ うな部
分 だ けの修正 に留め る のが 合理的 と判 断 さ れる こと が ある,
ま たそ も そ も そ う した 表 層 的で部 分 的 な 改 善 方 法 に しか 考 え が 至 ら な いケー
スもみ られる.
しか し表 層 的 な 問 題 解 決 策 は,
改 善 案 ど う しの矛 盾,一
部 分 だ けの不 十 分 な 解 決,
更
に,
新 た な 問 題 原 因 に なるな どの懸 念 が ある19}.
加 えて
,
評 価 基 準 が プロ トタ イ ピングの過 程で変 化 して案 が 収 束 し ないおそれ が ある.
評 価 基 準 に は,
コ ンセ プ ト,
評 価 者 の意思
ユー
ザ ビ リティ原 則 な ど が ある.
しか し可 視 化 と評 価 が 繰 り返 される度にコ ン セ プ トが 精 緻 化 さ れることは 知 られて お り20 }、
基 準 自体 が 変 化 する のは 当 然である.
従っ て案の収 束 困 難の問 題は、
コ ンセ プ ト更 新の非 明 文 化,
評 価 基 準の矛盾
不十
分 なコ ンセ プ ト、
評価 者
の不安 定
な意
思 な どに起
因 す る もの と考
え られ る.
この よ う に,
種々 の要 素を総 合して全体 構 成を可 視 化し評 価 す るこ とを 繰 り返 して洗練
す る 従来
の過 程 に はいくつか の間 題 が存 在 す る,
これら の根 底には,
事 物の構 成 要 素と要 素 間の関係
の理解
不 足 や,
各
要素
と状 態
が当 該
デザイ ン案
に お い て選 択
さ れ た根
拠の不明確
さ な ど が あ る と推
測 さ れ る.
4.
2.
2.
シス テム思 考
の応用
シ ス テ ム 思考の応用 は
,
以 上の問 題 を 解 決 する ひとつ の方 策 と 考 え ら れる,
図1
に 拠 れ ば,
上 位 シス テムの秩 序 保 持 す な わ ち 外部
制約
を満
足 す ること は当
該 事 物 が 存 在 し得 る た めの必 須 条 件である.
しか しデザ イン活 動の初 期 段 階 は も ちろん,
総 合 段 階 に おいても 当 初の 外 部 制 約 は一
部 しか把 握できず
不 十 分で 曖 昧である.
そのた め デ ザ イン の可 視 化 と評 価 は 不 明 確 な 制 約 条 件の中で の実 施 と な ら ざるを 得 ない.
外 部 制 約 は 可 視 化 案に対 する評 価 基 準 とな る が,
不 十 分 な ので適 切 な 評 価 基準
が 見当
たらない こ と が当 然 起こり得 る,
この際に新た な評 価基準が考案
・
発 見さ れ,
これが外部
制 約と し て追 加
された り,
既存
の外部 制 約
が精
緻 化さ れ た り す る こ と に な る と考え ら れ る.
他 方,
内 部 制 約 は _ _副
_NII-Electronic Library Service
ニー
ズ に 莟 つ く 外部馴 約先行アプロー
チ シー
ズ に 基 づ く 事物 状餓先 行アブロー
チ 図3 外部 制約と内部制 約の編 集に関 する思考プロ セ ス (1)事物 状 態
の可視 化
の 過程
で精緻 化
さ れ る,
つま り事物
の具体
的 なイ メー
ジ が無
い時点
で の内部 制約
は曖 昧
だ が,
状態
が イメー
ジされ構成
要素
が仮
に で も特
定され れ ば,
内部制 約
が認識
され るよう になる.
そ し て内部 制約
間 や外部 制約
と の問の不整 合
を 回避 する事 物 状 態の探 索と編 集 が 行わ れ る.
シ ス テ ム 思考に お ける シ ス テムの秩序
と制 約
の関 係性
か ら は,
以
上の思考
プロセ スを描
く こ とがで ぎ る(
図3
参
照)
.
4
.
2.
3.
シー
ズ起 点
のデザイ
ン アプロー
チ
汎 用シ ステムデ
ザ
インプ
ロ セ スで は,
可視 化
に先
立 ちユー
ザー
要 求 事 項の抽 出 を 行 う,
これ は す な わ ちニー
ズに基づいて事物
状態
を考案
す る アプロー
チであ る,
これとは 逆 に,
シー
ズ に基 づいて事物
の 可視 化
を先 行す る ア プロー
チ が あ る.
この場合
の シー
ズ と は,
デザイ ナー
や
プロ バ イダ
ー
が保有 す
る知 識
感 性,
観 念 な ど を 指 す.
シ
ー
ズ 起 点アプロー
チ が採
用 さ れる理由
に はいくつか考
え ら れる,一
つめ は,
顕 在 的 な 要 求 事 項に応え ても 差 別 化し に く く コ モ デ ィティ化 しや すいた め,
これ を 避 ける目
的で競争
力のあ る独 創 的 なデザ インが 求 め られる ことへ の対 応である.
ニー
ズ 起 点であっ ても 競 争 力のある潜 在 的 要 求 〔ユー
ザー
や顧客 自身 が気づい て いない要 求 ) を 発 見 しデ ザ インの起 点 とすること は当
然で き る が,
そ れ をシー
ズ に依 存 して求 めるということであ る.
これ は恣意
的 と は 言 え ないも の の 暗 黙 的 な 判 断 に基づ く理 想 的 な 事 物 状 態 を 想 定 してその 実 現 を 目指 すこと か ら,
ゴー
ル 設 定 型シー
ズ 起 点 ア プロー
チとい うこ と ができ よ う,
二 つめ は,
ユー
ザー
や顧客
の価
値 感の多
様 化と変 容しや す さへ の 対 応 である,
デザ
イナー
や
プロ バイダ
ー
の意
思 に基
づいて まず何
か を 作 り,
こ れ をユー
ザー
や顧客
な ど が評 価す る過 程で解を発 見 する方 が 的確
で効率
が良
いとの考
え方
に基 づく アプロー
チ とい える.
これ は 全 く見 え ないゴー
ルへ 辿 り着くため の探 索 が目的 の た め,
ゴー
ル 探 索 型 シー
ズ 起 点アプロー
チ といえる.
いず れ も事 物 状 態がま ず 構 築 さ れるが,
そ の目 的 は 全 く異
なる.
シ
ー
ズ
起 点で デザ インさ れ た 事 物であっ ても,
上位
シ ス テ ム か ら の外 部制 約
を満
足 し な け ればむ る ん存 在
し得な い.
ゴー
ル探 索型
で は外 部制 約
を 発 見し追 加 す
るこ とが 主 目的な
の で評価
は不 可欠
だが,
ゴー
ル設 定 型で は事
物の造 形 デ ザ インのみに注力
され,
評価
が疎
か になる お それがあ る.
仮
に評価
が疎かだっ た な らば、
市
場や社
会の受容 度
につ い て の不確
実性
が大 き く,
通 常
の経 済活 動
と しては成
立し にく
いだろ う.
そ のため現 実 的
に は,
ニー
ズ 起点
と シー
ズ起 点
の 思考
は結 果 的に ほぼ 同じ内容
を辿
ること にならざ
る を得ず
,
図3
に示 さ れ る よ う に 両者
の相
違
点 は プロセ ス の 起 点 と 順 序 だ け に な る と 考 え られ る9}.
た だ し シー
ズ 起 点で はニー
ズ 起 点 と は 幾 分 異 なる懸 念 が あ る.
まず
,
評 価 基 準 とな る 外 部 制 約 が 予 め 明 示 さ れ ないた め に 評 価が不 安 定に な り,
事 物 状 態の 改 善 方 向が定ま らず 解が収 束 し にくい おそ れ が相 対的
に 大 きい と考
え ら れ る.
ま た 評価
の 結 果 外部
制 約と の 不整 合 が 大き け れば プロ トタイ ピングに要す る時間
と労
力 が多大
とな りやす
い,
特
にゴー
ル探 索型
では、
最初
は外部 制約
が暗
黙的
で不 明確
な た め評価 基 準
が乏 し い こ と か ら,
場 当
た り的
に評価 基 準
が乱
立され 矛盾
を多
く含
む 評価
とな るおそれ
が ある.
ま た外 部制 約
が 不 明確
な状 態
とは す な わちデ ザイ ン さ れ た事物 状
態を 正 し い結 論
と判
断す る根
拠が 乏 しいこ と を 意味
し,
矛盾
を含
む評価結
果 を受 容 す
る素 地
を有
する こ と にな りや すい.
結果 と し て デザイ ン 品質は も と よ り製 品と し て の価 値 が 低いものを 生 むこと に な りや すいと推
測 さ れる.
ま た ゴー
ル 設 定 型であっ ても 何らかの外部 制約
は想 定 され て い る と 考 え られ る が,
暗 黙 的で内容
が わ か りに く く妥 当性
も確
認し に くいた め、
想 定 さ れていた 外 部 制 約 とは異 なる基準
で事 物 状 態 が 評 価 さ れ ること が 起こり得 る,
その結果
,
評価
が 適 切 に実
施 されに くいとい っ た懸 念 が ある といえる.
以 上か ら
,
シー
ズ 起 点アプロー
チで の デザ インが 成 功 する条件
に は少
な く と も次の要 素があ ると考 えられ る.
適 切 な 外 部 制約
の発 見、
外 部制 約
の累積
的集
積と体 系 化,
評 価 基 準 (外 部 制約 )
の顕在化
,
そ して適
切 な 評 価マネ ジ メン トであ る.
し か し こ れ ら は シー
ズ 起 点ア プロー
チ に 限っ た もの では な く,
ニー
ズ飆
欝
二
ll
:
∴
鳳
r
外 鄙制 約 抽象的 な 槻 能 属 性無し∠
r
属性の付 与 内部 制 約 a
− 一一一一
レ\
一 デ ザ イン対象 事 物 具体 的な事 物 状 態 属 性 有 り・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
…
レ
構 成 要 素 の 特 定 と 内部制約の 発見 具 体 的な 事物 状 態 搆 成要紊A 〆 内 部 制 約βr
内 部制 約 Y 構 成聾素B哩
愈
属 性 有 り 図4 事物 状 態の可視化と総合に お け る内部 制約の編 集 起 点 ア プロー
チ に おいても 同 様 に必 要 な 条 件であ る.
従っ てデ ザ イン活 動で創 造 さ れる価 値 を 高め ること に おい て、
ニー
ズ起 点か シー
ズ 起 点か という違
いは 本質
で は な く,
各ステ ップで の 思 考と作 業の品質が大 き く寄 与 す ると言っ て よいだ ろう.
4.
2.
4.
事 物 状 態の編集
に お け る 思 考 プロセス デザ イン の総 合 段 階 が ほ ぼ 暗 黙 知の状 態である こと は 既 に 述 べ た と お りだ が,
特に事 物 状 態の編 集におい て は内 面 的 な思考 が ほ と ん どのため外部
から の形
式 知化
は難
し いと 予期
さ れる,
そ のため主 観によるバ イ ア スが か かる こと を認識 したう え で、
内 観 に よっ て思 考 プロセスを 把 握 す る 方 法 を 採っ た,
そ の 際 の 拠 り所を シス テム思 考に基づく 内 部 制 約の編 集に求め た.
結 果 を 分 析 す ると
,
内部
制 約 は 次の3
種 類 に 大 別で き ると考
え られ た.
外 部 制 約 に 即 して秩 序立 った 事 物 状 態 を 構 成 す る 要 素 とそ の状 態 を 定 める基 準 と して の内 部 制 約α,
その結 果 選 ば れ た 各 要 素の性 質 と して の内 部 制 約β
,
そ して要 素 間の相 互 関 係から 生 じる 性 質として の 内 部 制 約rであ る,
内
部 制 約αは事物
を構 成
す る 要素
の属性
と値
の選択 基準
と し て働 く制 約である,
事 物 状 態が曖 昧な段 階で は曖 昧な状 態に留 ま り,
事物 状 態
が 明確 化
される過程
で精 緻化
さ れる と考
え られ る.
この理由
は,
事 物
状態
が具体
的に想 定さ れ る につれ,
事物
状 態 全 体 を整
合 す る ための基準
が 明ら か にな るか らである.
次
に,
内 部 制 約 βは事
物の構 成 要素
に備
わ る制 約
で あ る.
事 物を構 成
する各
要素 (
実体 集合 )
は それ特 有
の性 質
す な わ ち属性
と その値
の集 合
によっ て記述
できるため21),
これは各 要 素
の属
性を由 来と す る制 約と 理解
さ れ る.
例えば 持 ち運 びしや すいPC
との外 部制 約
に対 しては,
ディスプ レ イ,
キー
ボー
ド,
持 ち運 ぶため の ハ ン ドルな ど が 要 素 と して選 択 さ れ、
その属 性 と値
が制 約
と なる,
内部
制 約r は 各 要 素の関 係 か ら生 じ る 制 約で ある.
先の例でい え ば,
PC
の筐 体 はできるだ け 小 さ く す る た め中 身
が詰
まっ てい て空間
が 無いという状 態 と,
八 ン ドル は 指 が 掛か る部 分 が 必要 という状 態 から,
筐 体 にハ ン ドルを 取 り付 け る とPC
全体
のサ イ ズ が 大 き く な ること な ど が 該 当 す る.
次
に これ
ら内部 制約
の編 集
プロセスにつ いて述べ る.
先の例 でいえ ば、
上 記の内 部 制 約r
はPC
の サ イズ
を 大 き くす る た め,
持ち運 びしや すいという外 部 制 約と整 合し ない こ と がわか る.
内
部 制 約が明ら か にな ること によっ て制約
間の不整 合
が 発 見さ れ るの であ る.
こ うし た不 整 合の解 消に は カ テゴリ還 元が有効
と さ れる22〕,
カテゴ
リ還 元 と は,
対象 事 物
を もとの水 準
で の カテゴ リ化 か ら よ り 抽 象 的 な 背 後 特 性で のカ テゴ
リ化へ の シフ トである.
つま り事 物の構 成 要 素の属 性 を 除 去 す ること に よっ て属 性 由来
の内部 制 約
を一
緒 に除 去 す る.
先の例でいえ ば,
例 えば 素 材 を樹 脂 と するこ とや 筐 体と一
体 成 型 す るこ となど が暗 黙 的 な 属 性 と して想 定 さ れ ていた八 ン ドルを,
「手
でPC
を 吊 り下げ る と きの支え と な る (何か)」 といっ た 水準まで 抽象
化 す るこ とを指
す,
そして、
抽象 化
した だ けで は具体 的
な事物
に なら ないので.
新しい属 性を次に 選択し直
す,
例えば八 ン ドル が 不 必 要 な 時 は 畳んでおけ る布
や紐
を素材
とす
るような 選択
が 考 え ら れ る.
こう した思 考プロセ ス によっ て当初
の内部 制約
の 不 整 合を解 消し た事 物 状 態が創案
さ れ る と考
え ら れ る.
以
上
か ら図4
に示す
思考過程
を記
述できる.
ま ず外部 制 約
を 満足 す る事物
を規 定す る曖昧
かつ不十
分 な 内 部 制 約αが 設 定 さ れ.
初
期の事物状
態 が構 築
さ れる.
次 に 事 物の各 構 成 要 素 が 備 え る内部
制 約 β が 発見さ れ,
内 部 制 約 β 間の相 互 関 係 を 検 討 す ることで内部 制約
r が発 見
さ れる.
内部
制 約のα,
β
,
r
お よ び 外 部 制 約と の関 係に何らかの 不整 合 が あ れ ば,
構 成 要 素 自体 や 構 成 要 素の属 性 や 値 を 変 更 す る 前 処 理 と してカ テ ゴ リ還 元 が 実 施 さ れ.
属 性
が 除 去 さ れ た抽 象 的 な 機 能とな る.
この過 程で 発見さ れ た制 約 間の 不整 合 はいわば
失 敗 例とな り,
内部 制 約
α を 精 緻 化 す る 情 報とな る.
更新
された内部 制約
α を抽象
的 な機
能 に 対 して適
用 し,
再 び 具体 的
な事物 状態
が発
想 さ れる.
以 上 の 繰 り返 しに よっ て 対象 事物
は編 集
さ れ洗 練
さ れる.
5 ,
お わ り
にシステ ム思 考の 応 用 に よ る デザイ ン創 造に お け る 思考の理 解 とそのプロ セ ス の モ デ ル
化
につい て述べた.
本
稿で用いた シス テム思考
の要点
は,
「シ ス テ ム の階 層 構 造」,
「下 位シ ス テムの40
デ ザ イ ン 学 研 究 特集号 Special lssueofJapaneseSocietyfortheScienceDfDesign VOL22−
1 No.
85 2015NII-Electronic Library Service
制 約と上 位システ ムの秩 序の関 係」,
「構 成 要 素の相 互 関 係への着
目」 であ る.
特 に 制 約 に着
目 し,
これ を基軸
に総 合
段階
にお け る 思 考の理 解 を 試 み た,
デザイ ンさ れる事 物 は 直 接 的・
間 接 的 に 人 に 利 用 さ れるた め に ある,
これ は 事 物 が 満 足 しな け れ ば な ら ない根 本 的 な 制 約で あ り,
こ の他,
ユー
ザー
を 含 む 利 用 状 況 と タスク,
その 背 景で あ る社 会 的,
技 術 的,
経 済 的 な 側 面 な ど さ ま ざ まな 制 約 が 存 在 する.
更
に,
社
会 や市
場 に お ける価 値
や 効 用 を 定 義 す るコ ンセ プ トや 事 物の構 成 要 素 も 事 物 状 態 を 制 約 する働 き を 持つ.
制 約 の発見
と編集
は デ ザ イン倉1」造 に お け る 思 考の本 質の一
部 を 成 す と言え るだろ う,
結 果 と して創 造 さ れ る デ ザ イン対 象 事 物 に 関係 す る 制 約の全 てを 予 め 把 握 する こと は不可 能であ り,
これ が プロセス状 況 テー
ブ ル やシナ リオ な どで利
用の様
子 を イ メー
ジ した り,
プロ トタイ ピング を 必要とした りする 理由でも ある.
これら の過 程 の創造 的 思考
の品質
と効 率
の向
上 は,
デザ イン品質
を高
める こ とにつな が
ると考
え る.
本稿
では制約 編集
の観 点か
ら こ の思考
プロセ ス を内
観 し考察
し た結 果を 述べ た.
事
物 状 態の評 価基準
となる外 部制 約
,
外部 制 約
を満
足する事 物 状態
を形 成
する内部
制約
の関係性
に基 づい て編集
プロ セ スを理解
する こ と で,
デザ イ ン創 造
の総 合段 階
にお ける 思考
を把握
し,
暗
黙 知の形 式
知化
へ つ なげ得
る ひ とつ の視
座を得
ら れ た と考
え る.
今後
の課題
には.
上 位
シ ス テ ム の秩 序形 成
と事物 状態 形成
に 関 す る 思 考プロセ ス の解 明がある.
デ ザイン対 象 事 物が利 用さ れ るのは将 来
の社 会
なの で,
そこに おけ る 秩序
を予め確
定して お くことはむろん 不可能
である.
そ のため現実
に は,
将 来
の外
部 制 約 を 推 測し,
そ の仮 説に基 づい て デザイ ン活 動 を 開 始 する他
ない.
そ して創 造 さ れ た 事 物 は,
上 位 シス テムの将来
の秩
序 を 結 果 と して形 成 する こと に なる.
つま り事 物 状 態 から いわ ば ボ トムアップ 式 に 上位
シ ス テムの秩 序
が形
成 さ れ,
そして そ の 秩 序に 即 し て トップ ダ ウン式に事 物 状 態のあるべき 姿 が 形 成さ れる循 環
現 象 が ある,
本 稿 はこ の点 につい て十 分 な 考 察 と言
及 を していないが,
将 来の私 達の生 活 や 社 会のあ り方 を 指 し示 し 形 成 す るという デ ザ インの機 能と役 割 に着
目す る な ら ば,
この循
環 現象
につ い て詳し く見て い く必 要が あ る.
そ の た め に は,
本稿
で主
に応
用した第
一
世 代
シ ステム論
に加
え,
第
二,
第
三世
代シ ス テ ム論
の応
用が有 効
で あ ろ う.
【
参考 文献 】
1
)
Simon
,
H
,
,
稲葉
元吉
,
吉
原 秀樹
訳:シ ス テ ム の科 学 第3
版,
パ
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ソナル メ デ ィ ア,
1999
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2
)
Rittel
,
H
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,
Webber
,
M
.
;Dilemmas
in
aGeneral
Theory
of