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褥瘡対策チームで発揮できる理学療法技術

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Academic year: 2021

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褥瘡とは  身体に加わった外力は骨と皮膚表層の間の軟部組織の血流を 低下,あるいは停止させる。この状況が一定時間持続されると 組織は不可逆的な阻血性障害に陥り褥瘡(pressure ulcer)と なる。褥瘡は,寝たきり高齢者,脊髄損傷患者等で多く発生す る慢性潰瘍であり,各種リスクアセスメントツールを用いて発 生を予測し,予防することが重要である。万が一発症した場合 には,重症度分類と創面評価を行い,積極的に治療する必要が ある。 褥瘡の治癒過程  褥瘡の治癒過程を考えるうえで,浅い褥瘡といわれる真皮ま での損傷と,深い褥瘡といわれる皮下組織あるいはそれを越え る損傷(図 1)を区別することが重要である。浅い褥瘡では, 創傷は上皮形成によって治癒が進み,発症時に創周囲と創底に 段差を認めないことが多い。しかし,深い褥瘡では創底が深い ため創周囲との間に段差を生じ,複雑な治癒過程をたどる。皮 膚,皮下組織等が虚血性壊死を起こすことにより,黒色壊死組 織(以下,eschar),黄色壊死組織(以下,slough)を形成する。 eschar が除去された後に slough が観察されることが多いが, eschar を形成することなく slough を認めることもある。壊死 組織除去(以下,debridement)を行うと,創の“蓋”が取れ ることにより,膿や滲出液が観察されるようになる。これら の排出は感染の予防や痛みの除去のために必要である。また, debridement により壊死組織の下層にすでに形成されている肉 芽組織が観察され,除去した壊死組織の領域にさらに肉芽組織 が形成される。壊死組織が健常皮膚の下層におよぶ場合には, debridement により必然的にポケット(図 2)が生じる。その

褥瘡対策チームで発揮できる理学療法技術

前 重 伯 壮

1) 

 杉 元 雅 晴

2) 

 吉 川 義 之

2)3)

植村弥希子

4)5)

 藤島里英子

2)5)

 日 髙 正 巳

6) 

物理療法研究部会

Signifi cant Roles of the Physical Therapy in Pressure Ulcer Care Teams

1) 神戸大学大学院保健学研究科リハビリテーション科学領域 (〒 654‒0142 兵庫県神戸市須磨区友が丘 7‒10‒2)

Noriaki Maeshige, PT, OT: Department of Rehabilitation Science, Kobe University Graduate School of Health Sciences

2) 神戸学院大学総合リハビリテーション学部

Masaharu Sugimoto, PT, Yoshiyuki Yoshikawa, PT, Rieko Fujishima, PT: Faculty of Rehabilitation, Kobe Gakuin University 3) デイサービス雅の里

Yoshiyuki Yoshikawa, PT: Day-care Facility, Miyabinosato 4) 神戸大学大学院保健学研究科病態代謝学

Mikiko Uemura, PT: Department of Biophysics, Kobe University Graduate School of Health Sciences

5) 吉田病院附属脳血管研究所リハビリテーション部

Mikiko Uemura, PT, Rieko Fujishima, PT: Department of Rehabilitation, Eishokai Yoshida Hospital

6) 兵庫医療大学リハビリテーション学部理学療法学科

Masami Hidaka, PT: Department of Physical Therapy, School of Rehabilitation, Hyogo University of Health Sciences

キーワード:褥瘡,理学療法,物理療法

図 1 浅い褥瘡(上図)と深い褥瘡(下図)

図 2 褥瘡のポケット

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後,肉芽が増殖してポケットが消失し,上皮化が進行して治癒 が完了する。

褥瘡の評価

 褥瘡の重症度は,NPUAP(National Pressure Ulcer Advisory Panel;米国褥瘡諮問委員会)/ EPUAP(European Pressure Ulcer Advisory Panel;ヨーロッパ褥瘡諮問委員会)による 褥瘡分類を使用し,深達度に応じて,Ⅰ∼Ⅳ度,判定不能, DTI(deep tissue injury;深部損傷褥瘡)疑い1)に分類され る(表 1)。治癒過程を詳細に評価するツールとして,日本褥 瘡学会が考案した DESIGN2)がある。DESIGN は評価項目の 頭文字を並べた表記方法であり,D は褥瘡の深さ(Depth),E は滲出液の量(Exudate),S は褥瘡の大きさ(Size),I は炎 症・感染の有無(Infl ammation/Infection),G は肉芽組織形成 の程度(Granulation tissue),N は壊死組織の性状(Necrotic tissue)である。ポケット(Pocket)がある場合には最後に -P をつける。2006(平成 18)年に DESIGN-R2)が発表され,重 症度を予測するスコアが算出できるようになった(表 2)。こ の DESIGN-R では深さは総得点に加えないとされている。 褥瘡発生リスクとアセスメント  褥瘡発生の危険性,および誘発した因子のスクリーニング評 価として,各種リスクアセスメントツールの使用が提唱されて いる。ブレーデンスケール3)(表 3),K 式スケール4)5)(表 4), OH スケール6)(表 5),厚生労働省提示の褥瘡危険因子評価表 等がある。これらの評価は,知覚の認識,皮膚の湿潤,活動性, 体位変換能力,栄養状態,圧迫やずれの存在,骨突出,浮腫, 関節拘縮等の項目を基に評価する。この評価により患者が有す る危険因子があきらかになれば,その改善を試みればよい。血 清アルブミン値の低下や体重減少を認めれば,栄養サポートを 行い,関節拘縮を認めれば,関節可動域運動を行う。骨突出が 観察されたら骨突出周囲の筋肥大を図るために筋力増強運動, 電気刺激療法等の実施が求められる。しかし,患者の基礎疾患 によっては改善できない要因もある。一方,褥瘡発生の直接的 因子である「圧迫やずれ」は,マットレス調整等の環境調整が 影響する因子であるため,対応および解決の余地がある。 理学療法士による褥瘡予防・治療への関わり  障害者の日常生活活動能力を向上させるとき,褥瘡は運動の 阻害因子となる。従来から,水治療法を中心に理学療法士が褥 瘡の治療に関わってきたが,理学療法の治療手段が運動療法に 偏重したため,物理療法による取り組みが少なくなり,褥瘡治 療を他の医療職種にゆだねるようになった。最近になり,理学 療法士が褥瘡予防と治療に再び関わりはじめた。  2012 年度版の褥瘡予防・管理ガイドライン7)に本邦で実施 してきた超音波療法,電気刺激療法の効果が示され,推奨度が 設定されるようになった。これらの臨床研究は,それぞれの有 効な刺激条件を検討するために,培養細胞および動物実験や医 療用材料を分析した物質工学的な基礎研究に基づいて実施され ている。基礎研究の結果をヒトに適用する,あるいは臨床での 疑問から基礎研究を実施することをトランスレーショナル・リ サーチ(translational research;図 3)といい,この研究概念 が治療法の改善・確立に重要であることが確認された。臨床研 究が先行しがちである理学療法をもう一度,病態生理学的視点 から効果の意味づけを考える必要がある。  さらに,褥瘡治療(down stream)を開始するときには,発 生に関与した因子(up stream)の管理を考える必要がある。 治療を開始する前に,褥瘡が起きた原因を明確にしてその問題 を改善し,そのうえで慢性潰瘍を自然治癒過程に誘導する手 段として物理療法を実施する必要がある。臨床経験からする 表 1 NPUAP / EPUAP による褥瘡の分類 *:エスカー,スラフは壊死組織である. EPUAP(ヨーロッパ褥瘡諮問委員会)/ NPUAP(米国褥瘡諮問委員会)著,宮地良樹,真田弘 美監訳:褥瘡予防&治療クイックリファレンスガイド(Pressure Ulcer & Treatment)より一部 改変して引用. 分類 説明 ステージⅠ 通常骨突出部位に限局する消退しない発赤を伴う,損傷のない皮膚.暗色部 位の明白な消退は起こらず,その色は周囲の皮膚と異なることがある. ステージⅡ スラフを伴わない,赤色または薄赤色の創底をもつ,浅い開放潰瘍として現 れる真皮の部分欠損.破れていないまたは開放した / 破裂した血清で満たさ れた水疱として現れることがある. ステージⅢ 全層組織欠損.皮下脂肪は確認できるが,骨,腱,筋肉は露出していないこ とがある.スラフ * が存在することがあるが,組織欠損の深度がわからなく なるほどではない.ポケットや瘻孔が存在することがある. ステージⅣ 骨,腱,筋肉の露出を伴う全層組織欠損.黄色または黒色壊死が創底に存在 することがある.ポケットや瘻孔を伴うことが多い. 判定不能 創底で,潰瘍の底面がスラフ(黄色,黄褐色,灰色または茶色)および / ま たはエスカー *(黄褐色,茶色,または黒色)で覆われている全層組織欠損. (つまり創底を観察できない.) DTI 疑い 圧力および / またはせん断力によって生じる皮下軟部組織の損傷に起因する, 限局性の紫または栗色の皮膚変色,または血疱.

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と,褥瘡を治癒機転に誘導するには,原因をなくすだけではな く,さらによい創環境にしないと治癒しない。予防には,姿勢 (static phase;臥位姿勢・座位姿勢)の調節により圧迫・ずれ を管理することが重要である。さらに,姿勢の管理にとどまる ことなく,活動時(dynamic phase)にも圧迫・ずれを最小限 にすることが重要である。  以下に,圧迫・ずれに対する対策と物理療法を実施する視点 について解説する。 圧迫・ずれ対策 1.問題点の抽出  はじめに,褥瘡発生部位に着目して,原因となった動作を推 察する必要がある。一般的には,尾骨・坐骨部であれば座位保 持上の問題が,仙骨部であれば臥位や頭側挙上位の問題が疑わ 表 2 DESIGN-R® 表 3 ブレーデンスケール 知覚の認知 圧迫による不快感に対して適切に対応できる能力 1.まったく知覚なし 2.重度の障害あり 3.軽度の障害あり 4.障害なし 湿 潤 皮膚が湿潤にさらされる程度 1.常に湿っている 2.たいてい湿っている 3.時々湿っている 4.めったに湿っていない 活動性 行動の範囲 1.臥 床 2.座位可能 3.時々歩行可能 4.歩行可能 可動性 体位を変えたり整えたりできる能力 1.まったく体動なし 2.非常に限られる 3.やや限られる 4.自由に体動する 栄養状態 普段の食事摂取状況 1.不 良 2.やや不良 3.良 好 4.非常に良好 摩擦とずれ 1.問題あり 2.潜在的に問題あり 3.問題なし Total ©Braden and Bergstrom. 1998

訳:真田弘美(東京大学大学院医学系研究科)/大岡みち子(North West Community Hospital.IL.U.S.A)を 一部抜粋して引用.

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れる。そのうえで,患者の 1 日の生活様式をすべて確認する。 そして,問題となっている動作,姿勢を再現し,圧迫やずれを 評価することにより褥瘡発生の原因を解明する。圧力の評価機 器としては,簡易体圧測定器(図 4)や圧力分布測定装置(図 5) を使用する。測定面積の小さい簡易体圧測定器を使用する場合 には,測定前に摩擦低減加工がなされた専用のグローブを使用 して,強い接触部位を確認する必要がある。動作上の圧力分布 の変化を評価するためには,シート状の圧力分布測定装置を使 用するべきである。圧力測定によって問題のある姿勢があきら かになれば,その数値を患者,患者家族,その他介護者に伝え, 次に減圧・除圧させる姿勢,動作を提案する。 2.解決手段の検討  車椅子座位であれば,プッシュアップにより除圧できること はもちろんのこと,アームサポート上に前腕部を位置させて肩 甲骨の下制を行う動作や,前方にテーブルを置いた状態で体 幹を前傾することによっても十分坐骨部が減圧される(図 6)。 「これなら会議中にも静かに除圧ができる」と喜ぶ障害者は多 い。また,この方法であればプッシュアップが短時間しか行え ない障害者でも比較的長い時間除圧ができる。しかし,プッ シュアップと異なって目に見えて臀部が離床しないため,前傾 位保持したときに上肢にかかる負担を事前に学習する必要があ る。臥位姿勢管理であれば,側臥位角度を調整することで仙骨 部,上後腸骨棘,腸骨稜,大転子部の圧は変化し,除圧できる。 骨盤帯に骨突出を認める患者では,これらの骨突出部の局所に 圧迫が集中すると,接触圧が高くなるため,可能な限り均等な 接触圧になるように側臥位角度を調整する必要がある。経験的 表 5 OH スケール 危険要因 点数 自力体位変換能力 できる 0 どちらでもない 1.5 できない 3 病的骨突出 なし 0 軽度・中等度 1.5 高度 3 浮腫 なし 0 あり 3 関節拘縮 なし 0 あり 1 表 4 K 式スケール 図 3 トランスレーショナルリサーチの概念

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には 30 ∼ 50°程度の傾斜角度で大転子部と仙骨部の接触が同 等になることが多いが,大 骨頸部骨折の既往や,下肢屈曲拘 縮の程度等により大転子部の位置が変化するため,骨盤傾斜角 度と骨突出部における圧迫を各患者で正確に評価する必要があ る。また,中等度傾斜した側臥位では,ベッド側の下肢の股関 節が重力によって外旋しやすい。この外旋運動をクッションで 防ぎ,正中位に保持することによって大転子部の圧が減少する ことが報告されているため8)(図 7),その管理も重要である。 また,真皮より深い大転子部褥瘡では,大転子の位置変化に よって褥瘡周囲の健常皮膚と褥瘡の創底にずれが生じ,ポケッ トを形成する。ポケットは褥瘡治癒の阻害因子であるため,不 用意な股関節運動,特に股関節内・外旋運動は避けるべきであ る。股関節の深屈曲が大転子部にずれを生じることも示唆され ているため9),深い褥瘡を有する患者では,端座位や標準型車 椅子の座位を避けて,可能な限り股関節屈曲角度を少なくした 状態での移乗動作,座位保持姿勢が求められる。具体的には二 人介助での臥位移乗,ティルティング機構を併用したリクライ ニング車椅子の使用等が検討される。  外力によるずれの評価については,簡易式の測定器によりず れ力を評価することや,圧力分布測定器を用いて最大圧力部の 変化からずれの潜在性を推測することが可能である。また,接 触部位に摩擦低減加工がなされたグローブを挿入したときに, 体がグローブのうえを滑って移動した場合には,接触部位に静 止摩擦力が加わっていたことが推察される。ずれが生じる典型 例として,ベッド上での頭側挙上があり,ここでは大 近位部 後面とベッドの間にクッションを挿入すること10)や,背抜き (図 8)によりずれ力を減少できる。車椅子上のずれ力の軽減 方法としては,座面のティルティング角度の増加や,アンカー サポートつきクッションの使用等がある。 3.外来患者への対応  入院患者であれば,上記のような問題を直接確認できるが, 外来患者の場合には車椅子座位以外は実際場面の評価が難し く,その他の生活上の情報は患者あるいは患者家族から聴取す ることになる。発生に関与した問題を患者および患者家族から 伝えられることもあるが,問題となる行動に気づいていないと きも多く,場合によっては気づいていても明言を避けているこ ともある。そのため,入浴方法,トイレ動作および環境,屋内 での移動方法,車の運転方法などについて,具体的に質問する ことが重要である。尾骨部に褥瘡を有する患者において,車椅 子座位では褥瘡部の圧が低値であるものの一向に褥瘡が治癒し ないことがある。このようなときには,自宅の床で骨盤が後傾 した座位姿勢を保持していることが多い。この場合,車椅子で の座位保持を勧めることがまず優先されるが,屋内で車椅子を 図 4 簡易体圧測定器による尾骨部褥瘡の接触圧測定 図 5 ドアの開閉時の接触圧分布状況

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使用できない患者もいる。その場合には,骨盤後傾位を防ぐ工 夫,または床で使用するクッションの提案(図 9)が必要とな る。ときには,下肢の支持性が低下しているにもかかわらず, 自力で下衣の上げ下げを試み,床への転倒を繰り返すことに よって坐骨部に褥瘡を発生させることもある。社会的役割をも つ障害者にとって,職場で他者の介助を求めることが離職と同 じ意味をもつことがある。このような場合には,職場のトイレ 環境の改修や,下肢の支持性を向上させる短下肢装具の提案等 図 6 体幹前傾位による坐骨部の除圧 左図:自然な座位姿勢 右図:体幹前傾位 破線部:坐骨部 図 8 背抜き方法 背部をベッドから離すことでずれ力が解消される. 図 7 股関節内外旋による大転子部接触圧の変化 自然位は重力により股関節が外旋した肢位である.グラフ下の図は骨盤と足部の傾斜 を模式的に示している.破線部は自然位と正中位の有意差を示す.

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が求められる。  褥瘡発生・悪化の原因として,多くの患者が車椅子座位以外 の姿勢や動作にも問題を抱えている。褥瘡部位と生活動作の関 係性を,深くかつ正確に分析することが必須である。 物理療法  褥瘡に対する物理療法では,ずれ・圧迫の管理状況を確認し ながら,褥瘡創面を評価したうえで実施する必要がある。褥瘡 予防・管理ガイドラインに記載されている物理療法には,電気 刺激療法,超音波療法,水治療法,光線療法,電磁波刺激療法, 陰圧閉鎖療法があるが,それぞれで改善できる病態が異なる (図 10)ため,創面評価に対応しない物理療法は必然的に無効 となる。本邦の理学療法士が使用可能な物理療法手段は,電気 刺激療法,超音波療法,水治療法,光線療法であり,創の縮小 や壊死組織の除去など臨床における効果が示されている。しか し,本邦では欧米諸国に比べ実施頻度は非常に低く,電気刺激 療法においては実施頻度が低いことが理由で推奨度が A ラン クから B ランクに引き下げられている。  ここでは,今後本邦での実施が期待される水治療法,超音波 療法,電気刺激療法について解説する。 1.水治療法  褥瘡に対する水治療法は日本褥瘡予防・管理ガイドラインの 壊死組織の除去および感染・炎症の制御の 2 要素において推奨 度 C1 とされている。不感温度(35.5 ∼ 36.6℃)に加温した温 水あるいは渦流による物理的な刺激を全身(ハバード浴療法), 部分的(渦流浴療法)に与えるものである。明確なエビデンス は未だ報告されていないが,温浴およびジェット噴流は全身の 循環も改善し得るため,積極的な臨床適用が望まれる。また, 創洗浄は水治療法の一部であり,創面および創周囲を弱酸性洗 剤で洗浄する。創洗浄は正確な創面評価のためにも必要なケア である。したがって,他の物理療法と並行して理学療法士自身 によって実施されることが望まれる。 2.超音波療法  褥瘡に対する超音波療法の有効性については明確な根拠がな いとされてきた。しかし,創傷被覆材の超音波透過率を明確に して行った臨床研究において,創の収縮が促進することが確認 されている11)。この研究により,日本褥瘡予防・管理ガイド ラインにおいて推奨度 C1 となった。その後,創閉鎖の際に必 要な線維芽細胞を用いた培養実験において,低出力のパルス 図 9 割り座姿勢におけるクッション導入効果 A: クッション非使用での割り座姿勢における 体圧分布 B: クッション(ROHO クッション,アビリティー ズ社)挿入方法.割り座姿勢において,クッ ションが下腿部の長軸に沿うようにして骨 盤帯の下に挿入している. C: クッション挿入後の体圧分布.白丸部分が 坐骨部,白破線部が尾骨褥瘡部を示す.褥 瘡部の圧が半減している.接触面積の拡大 も確認される.

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超音波が線維芽細胞の活性化を促すことが確認されている12)。 このことを根拠とした臨床研究においても低出力パルス超音波 の長時間照射(創面照射強度:0.2 ∼ 0.3 W/cm2,照射時間率: 20%,照射時間:40 ∼ 60 分,固定法)の効果が確認されてい る13)(図 11)。褥瘡に対する超音波療法は創の収縮において有 効であると考えられるため,実施する理学療法士が増え,臨床 効果がより多く報告されることが期待される。 3.電気刺激療法  褥瘡に対する電気刺激療法は日本褥瘡予防・管理ガイドラ インの創の縮小において推奨度が B ランクで行うように勧め られている。杉元らが行った線維芽細胞の遊走の基礎研究14) を臨床研究に適応した症例研究15)においても有効性が示され ている(図 12)。また,ポケットを有する褥瘡に対しても有効 性が示されている16)。その後,植村らが細胞遊走の最適電流 強度を調査するため新たな培養細胞実験を行った。その結果, 200 μA で細胞遊走が促進され,300 μA で抑制することが確認 された17)。これらの結果を踏まえ,現在はさらなる有効性を 期待して臨床研究が実施されている。このように,基礎研究結 果を基に臨床適用方法を改善することにより,褥瘡に対する電 図 10 褥瘡に対する物理療法の推奨度 図 11 固定法による超音波照射方法 A: フィルムドレッシング材の接着面に水道水で湿らせたガーゼを留置し,粘着性を除去する(フィ ルム除去時の新生上皮剥離の防止). B: フィルムドレッシング材を創面・創周囲へ貼付する.フィルムと創面を密着させ,気泡が生じな いようにする. C:創面直上のフィルムドレッシング材にカップリングゲルを塗布する. D:超音波導子をバンドやテープで固定する.

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気刺激療法の有効性があきらかになってきている。超音波療法 と同様,実施する理学療法士が増えることにより,推奨度が A となる日がくることを待ち望んで止まない。 おわりに  褥瘡患者の病態像を正しく理解するために,定期的に褥瘡の 状態を観察し,評価する必要がある。そのうえで,褥瘡予防 と治療のプロセスの全体像を示したアルゴリズム(algorithm) に基づいて臨床実施計画を立案し,実践することが重要であ る。最適なタイミングでの予防手段や治療技術を吟味し,褥 瘡患者に実施することは重要な「臨床での意志決定」(clinical decision making in physical therapy)である。

文  献

1) 立花隆夫,青木和恵,他:日本褥瘡学会で使用する用語の定義・ 解説─用語集検討委員会報告 3 ─.褥瘡会誌.2009; 11: 554‒556. 2) 日本褥瘡学会(編):褥瘡ガイドブック─褥瘡予防管理ガイドライ

ン(第 3 版準拠).照林社,東京,2012.

3) Brown SJ: The Braden Scale. A review of the research evidence. Orthop Nurs. 2004; 23: 30‒38. 4) 真田弘美,須釜淳子,他:褥創発生予測試作スケール(K 式スケー ル)の信頼性と妥当性の検討.日本創傷・オストミー・失禁ケア 研究会誌.1998; 2: 11‒18. 5) 大桑麻由美,真田弘美,他:K 式スケール(金沢大学式褥瘡発生 予測スケール)の信頼性と妥当性の検討─高齢者を対象にして─. 褥瘡会誌.2001; 3: 7‒13. 6) 大浦武彦,菅原 啓,他:看護計画を立てる際の褥瘡危険因子を 評価する大浦・堀田スケールの用い方.Expert Nurse.2004; 20: 128‒137. 7) 坪井良治,田中マキ子,他:褥瘡予防・管理ガイドライン(第 3 版).褥瘡会誌.2012; 14: 165‒226. 8) 吉川義之,杉元雅晴,他:仙骨部と大転子部の体圧分散を配慮し たポジショニングの検証と安楽度の検討―股関節回旋角度に着目 して―.褥瘡会誌.2013; 15: 1‒7. 9) 前重伯壮,藤原秀太郎,他:股関節運動により大転子と皮膚の間 に生じるずれについての検証.第 6 回日本褥瘡学会近畿地方会学 術集会.2009. 10) 宮嶋正子,阿曽洋子,他:45°ヘッドアップ時の殿部下挿入クッ ションの有無が寝たきり高齢者の坐骨部圧迫力とずれ力および経 皮酸素分圧に及ぼす影響.褥瘡会誌.2008; 10: 103‒110.

11) Maeshige N, Fujiwara H, et al.: Evaluation of the combined use of ultrasound irradiation and wound dressing on pressure ulcers. J Wound Care. 2010; 19: 63‒68.

12) 前重伯壮,鳥井一宏,他:超音波の照射時間率がヒト皮膚由来線 維芽細胞のα-SMA 発現に対して与える影響.日本物理療法学会会 誌.2012; 19: 44‒48.

13) Maeshige N, Ueyama T, et al.: Case report on wound healing promotion of an intractable pressure ulcer by long irradiation of low-intensity pulse mode ultrasound ̶ Based on in vitro study ̶ . 12th International Congress of the Asian Confederation for Physical Therapy. 2013.

14) Sugimoto M, Maeshige N, et al.: Optimum microcurrent stimulation intensity for galvanotaxis in human fibroblasts. J Wound Care. 2012; 21: 5‒11.

15) 吉川義之,杉元雅晴,他:褥瘡部を陰極とした微弱直流電流刺激 療法による創の縮小効果.理学療法学.2013; 40: 200‒206. 16) 吉川義之,杉元雅晴,他:直流微弱電流刺激療法がポケットを有

する褥瘡に与える効果.日本物理療法学会会誌.2012; 19: 82‒86. 17) Uemura M, Maeshige N: Critical point of direct microcurrent

stimulation intensity to promote galvanotaxis in human dermal fibroblasts. 12th International Congress of the Asian Confederation for Physical Therapy. 2013.

図 12 褥瘡に対する直流微弱電流刺激療法

褥瘡部の創傷被覆材(滲出液吸収領域)に陰極の塩化銀電極を挿入し,関電極と する.不関電極を創面から 10 cm 程離れた健常皮膚に貼付する.刺激終了直後に, 蓄電圧を放電するために,両電極をリード線で短絡する.

図 2 褥瘡のポケット
図 12 褥瘡に対する直流微弱電流刺激療法

参照

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