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レーザー経鼻内視鏡の近接観察による<I>Helicobacter pylori</I>感染診断の検討 第59巻10号2526頁

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Academic year: 2021

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レーザー経鼻内視鏡 EG-L580NW の LCI モードを用いて胃底腺粘膜の近接観察を行い集合細静脈(CV) と腺管構造(GS)の視認性を観察することが,Hp の現感染,除菌後,未感染の診断に有用か否かを後 方視的に検討した.CV および GS 視認性はそれぞれ消失・不明瞭・明瞭の 3 群に分類した.①現感染で は CV の消失と明瞭な GS 視認性,②除菌後では明瞭あるいは不明瞭な CV 視認性と GS 視認性の消失, ③未感染では明瞭な CV 視認性,が診断の特異度を上げる所見であった.また,除菌後は 2 年未満の早 期から GS 視認性の消失が観察された.LCI モードでは,色調が白色光観察と近似しており違和感なく 日常臨床で使用できる点,また,腸上皮化生巣が示唆されるラベンダー色を呈する領域を避けて胃底腺 粘膜を観察できる点で有用である.

Key words レーザー経鼻内視鏡/LCI/近接観察/Hp 胃炎/RAC/集合細静脈/腺管構造

Ⅰ 緒  言  通常内視鏡による Helicobacter pylori(以下 Hp) の感染診断は様々な内視鏡所見を把握して総合的 に行われる.2014 年 9 月に公表された京都分類1) によると現感染,除菌後,未感染の各感染状態で 診断に有用と考えられる所見は,現感染例ではび まん性発赤,粘膜腫脹,白濁粘液,除菌後例では 地図状発赤,Hp 感染所見はあるが現感染の所見 がない場合,未感染では胃角までの regular ar-rangement of collecting vesels(以下 RAC)であ る.しかしながら,これらの所見は各感染状態で 必ずしも出現するわけではない.  一方,本来どの胃にも存在する指標が現感染, 除菌後,未感染の各状態に応じて一定の変化を示 すのであれば,その変化を所見として捉えること により感染診断に役立てることが出来ると推測さ れる.拡大内視鏡を用いた八木ら2),3),大久保ら4) の報告を基にすると,集合細静脈視認性と pits 形 態が Hp 感染状態を判断する共通の指標として有 用であると考えられる.経鼻内視鏡は細径である がゆえに焦点距離が短く 3 mm までの近接観察で もピントのあった画像を得ることができる.近接 観 察 に よ り 約 30 倍 前 後 の 弱 拡 大 が 可 能 で あ る5).さらに最近の経鼻内視鏡は様々な画像強調 のモダリティーを備えている.これらの特性を応 用することにより経鼻内視鏡を用いた近接観察で 集合細静脈や pits 形態を反映する腺管構造(窩間 部と八木ら2)の言う white zone を合わせた構造) の観察が可能と考えられる.  そこで,レーザー経鼻内視鏡 EG-L580NW(富 士フイルムメディカル)の Linked Color Imaging (以下 LCI)モードを用いた近接観察により集合細 静脈(collecting vessels,以下 CV)と腺管構造 (glandular structure,以下 GS)の視認性を観察 することが,Hp の現感染,除菌後,未感染の診 断に有用か否かを後方視的に検討した. Gastroenterol Endosc 2017;59:2526-32. Yukiya YOSHIDA

Diagnosis of Helicobacter pylori Status by Close Observation Using an EG-L580NW Laser Transnasal Endoscope. 別刷請求先:〒 153-0051 東京都目黒区上目黒 5-33-12       三宿病院 消化器科 吉田行哉

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経験■レーザー経鼻内視鏡の近接観察による Helicobacter pylori 感染診断の検討 2527 Vol. 59 (10), Oct. 2017 Ⅱ 対象・方法  ①対象:2014 年 8 月~2016 年 10 月までの間, 経鼻内視鏡 EG-L580NW による近接観察が可能 であった Hp 感染診断が確定した 235 例 238 回 (男 123・女 112 例,平均年齢 62.7±13.2 歳)の内 視鏡所見である.このうち 3 例が現感染から除菌 後への経過観察例である.内視鏡施行時の Hp 感 染診断は現感染 77 回,除菌後 108 回,未感染 53 回である.除菌後の中で除菌療法後の経過年数が 明確な 75 回の経過年数別の内訳は 2 年未満 17 回, 2 年以上 5 年未満 34 回, 5 年以上 10 年未満 15 回,10 年以上 9 回である.  ② Hp 感染診断:血清抗 Hp 抗体価(E プレー ト栄研 H. ピロリ抗体Ⅱ),UBT,内視鏡的萎縮 (L580NW による観察)の組み合わせで行った. ( 1 )Hp 抗体価< 3 で,内視鏡的萎縮なしの場合 は未感染,内視鏡的萎縮ありの場合は除菌後とし た.( 2 ) 3 ≦Hp 抗体価<10 で UBT 陰性の場合 は,内視鏡的萎縮なしは未感染,内視鏡的萎縮あ りは除菌後とした.一方, 3 ≦Hp 抗体価<10 で UBT 陽性の場合は現感染とした.( 3 )10≦Hp 抗 体価で,UBT 陰性の場合は除菌後,UBT 陽性の 場合は現感染とした.  ③機器の設定と判定:近接観察は光量をピーク に設定して行い,ピントの合う最近接の real time の画像で判断した.判定は一人の同一の内視鏡医 によって行われた.内視鏡医は被検者の Hp 感染 についての情報は知らされないで検査を実施した.  ④観察部位:血管透見像を認める領域性を伴っ た萎縮粘膜の大彎側 2 カ所の胃底腺粘膜を近接観 察した.領域性を伴った萎縮粘膜を認めない場合 は体中部前壁および体中部大彎の胃底腺粘膜を観 察した.隆起や陥凹を呈する領域,あるいは,LCI モードでラベンダー色を呈する領域は観察対象か ら除いた.  ⑤観察項目:⑴ CV 視認性:LCI モードで観察 し,視認性を以下の 3 群に分類した.明瞭(Fig-ure 1 ):CV のヒトデ状形態における腕の部分も 鮮明に見えるもの.分布が均一・不均一にかかわ らず明瞭とした.不明瞭(Figure 2 ):ヒトデ状 形態の腕の部分が一部欠損しているもの,腕のす べてが欠損し dot 状に見えるもの,血管の輪郭が 鮮明でないもの.消失(Figure 3~6 ):CV が観 察されないもの.⑵ GS 視認性:LCI モードで観察 し,視認性を以下の 3 群に分類した.消失(Fig-ure 1,2,4 ):GS が見えない場合,あるいは, 分別困難な GS が密に観察される場合.不明瞭 (Figure 5 ):溝状の white zone が観察され,窩 間部の発赤が軽度である場合.明瞭(Figure 3, 6 ):溝状の white zone の観察が容易であり,窩間 部の発赤が高度である場合.観察部位によって所 見が異なる場合は,CV 視認性はより不良なもの, GS 視認性はより明瞭なものを所見とした. Figure 1 集合細静脈(CV)視認性 明瞭,腺管構造(GS)視認 性 消失. Hp 未感染例.ヒトデ状の形態を示す明瞭な集合細静脈を認める. 僅かに腺管構造を認めるが,その分別は難しい. Figure 2 集合細静脈(CV)視認性 不明瞭,腺管構造(GS)視 認性 消失. Hp 除菌後例.一部にヒトデ状の集合細静脈も認められるが,矢印 で示すように,血管の輪郭は不鮮明で腕の欠落したドット状のもの が多い.僅かに腺管構造を認めるが,その分別は難しい.

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Ⅲ 成  績  ① CV 視認性(Figure 7 ):現感染では消失が 88.3%,未感染では明瞭が 92.5%を占めた.除菌 後では不明瞭が 55.6%,次いで明瞭が 28.7%であ った.  ② GS 視認性(Figure 8 ):現感染では明瞭が 84.4%,除菌後では消失が 78.7%を占めた.未感 染では全例が消失であった.  ③除菌後の経過年数別 ⑴ CV 視認性(Figure 9 ): 2 年未満では 3 群は同等の頻度であったが, 年数が経過するに伴い消失例が減り 5 年以上経過 した例には消失例は認められなかった.一方,明 瞭例が経年的に増える傾向を認め,不明瞭例は経 過年数にかかわらず一定の割合を占めた.⑵ GS 視認性(Figure 10):消失が 2 年未満から 64.7% を占め,さらに,経年的に増加する傾向を認め 10 年以上経過した例では全例が消失であった.明瞭 は 2 年以上経過した例では認められず,不明瞭も 経年的に減少し 10 年以上経過した例では認めら れなくなった. Figure 4 集合細静脈(CV)視認性 消失,腺管構造(GS)視認 性 消失. Hp 除菌後例.やや遠景からの画像である.腸上皮化生巣が示唆さ れるラベンダー色の領域が認められる.ラベンダー色以外の領域で は,集合細静脈や分別可能な腺管構造は認められない. Figure 5 集合細静脈(CV)視認性 消失,腺管構造(GS)視認 性 不明瞭. Hp 除菌後例.集合細静脈は認められない.溝状の white zone は 認められるが,窩間部の発赤は軽度である. Figure 6 集合細静脈(CV)視認性 消失,腺管構造(GS)視認 性 明瞭. Hp 現感染例.集合細静脈は認められない.溝状の white zone が 明瞭に観察され,窩間部の発赤が高度である. Figure 3 集合細静脈視認性 消失,腺管構造視認性 明瞭. Hp 現感染例.集合細静脈は認められない. 溝状の white zone の観察が容易で,窩間部の発赤が高度である.

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経験■レーザー経鼻内視鏡の近接観察による Helicobacter pylori 感染診断の検討 2529 Vol. 59 (10), Oct. 2017 Figure 7 Hp 感染状態別にみた集合細静脈(CV)視認性. 現感染では消失が,未感染では明瞭がほとんどを占めた.除菌後では不明瞭,次いで明瞭が多かった. Figure 8 Hp 感染状態別にみた腺管構造(GS)視認性. 現感染では明瞭,除菌後では消失が多かった.未感染では全例が消失であった.

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Ⅳ 考  察  八木ら2)は非萎縮胃底腺粘膜領域の拡大内視鏡 所見を CV や pits 周囲の毛細血管網および pits 形態の観点から B-0~B-3 に分類し,B-0 が Hp 未感染,B-1~B-3 が Hp 現感染の状態と述べてい る.また,八木ら3)は,除菌 1 年後 25 例の体中部 前壁~大彎の拡大内視鏡による観察で,pits 間の 発赤や浮腫の消失が 100%,white pits から pin-hole-like pits への変化が 96%,CV の視認性の回 Figure 9 除菌後の経過年数別にみた集合細静脈(CV)視認性. 2 年未満では 3 群は同等の頻度であったが,年数が経過するに伴い消失例が減り明瞭例が増える傾 向を認めた.一方,不明瞭例は経過年数にかかわらず一定の割合を占めた. Figure 10 除菌後経過年数別にみた腺管構造(GS)視認性. 消失が 2 年未満から多くを占め,さらに,経年的に増加する傾向を認めた.10 年以上経過した例で は全例が消失であった.

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経験■レーザー経鼻内視鏡の近接観察による Helicobacter pylori 感染診断の検討 2531 Vol. 59 (10), Oct. 2017

復が 32%に認められたと報告している.また,大 久保ら4)は除菌 12 週後 30 例の体部大彎を拡大観 察し,enlarged or elongated pits から small oval or pinhole-like pits への変化と fine irregular vesseles の減少が高度萎縮や腸上皮化生がない 24 例では 100%に認められたと報告している.除菌後では 炎症の消退により窩間部の微細血管増生や浮腫が 軽減すると伴に上皮の再構築が起こり pits の小 型化や pinhole 状の pits が出現すると推測され る.しかしながら,経鼻内視鏡による近接観察で は,このような除菌後の変化に伴った pinhole 状 の pits や,Hp 未感染例に観察される八木ら2) 提唱する B-0 で認められる pinhole 状の pits を必 ずしも明瞭に観察できるとは限らない.そこで, 今回の検討では,white zone と窩間部を合わせた 構造を GS とし,GS が見えない場合や分別困難な GS が密に観察される場合を GS 視認性消失とし て,pinhole 状あるいは小型の pits を示唆する所 見とした.  未感染では CV 視認性が明瞭である所見は,未 感染と感染(現感染と除菌後)との鑑別において 感度 92%,特異度 82%,正診率 84%であった. 一方,CV 視認性が明瞭で同時に GS 視認性が消失 である所見は,感度 93%,特異度 83%,正診率 85%であり,GS 視認性の上乗せ効果は認められな かった.  現感染では CV 視認性が消失している所見は, 現感染とその他(未感染と除菌後)との鑑別にお いて感度 88%,特異度 89%,正診率 89%であっ た.また,CV 視認性が消失し同時に GS 視認性が 明瞭である所見は,感度 79%,特異度 97%,正診 率 91%であり,GS 視認性の評価を加えることに より特異度の改善を認めた.  内視鏡で Hp 感染診断を行う際に最も判断に難 渋するのは現感染と除菌後の鑑別である.胃粘膜 に萎縮や腸上皮化生巣は存在するが,現感染に特 徴的とされる内視鏡所見に乏しい場合や RAC を 認める場合には除菌後を疑わせる所見と捉えるこ とが多い.しかしながら,除菌後の CV を詳細に 観察すると未感染の時に見られる明瞭なヒトデ状 形態を示すものは少ない.ヒトデ状形態の腕の部 分が一部欠損しているもの,腕のすべてがほとん ど欠損し dot 状に見えるもの,血管の輪郭が鮮明 でないものなど,多様な所見を呈するものが多 い.今回の検討ではこのような形態を示す CV を 不明瞭としたが,除菌後の 55.6%が不明瞭であり, 明瞭の 28.7%よりも多かった.CV 視認性が明瞭 である所見は,現感染と除菌後の鑑別において感 度 29%,特異度 97%,正診率 67%であったが, 不明瞭に明瞭を加えると感度 84%,特異度 88%, 正診率 86%であった.したがって CV 視認性不 明瞭は除菌後の診断に有用な所見であると考えら れる.一方,GS 視認性については除菌後で消失と したものが 78.7%と最も多かったが,GS 視認性消 失である所見は,現感染と除菌後の鑑別において 感度 77%,特異度 99%,正診率 87%であった. さらに,CV 視認性が明瞭あるいは不明瞭で同時 に GS 視認性消失である所見は,現感染と除菌後 の鑑別において感度 66%,特異度 99%,正診率 80%であった.除菌後と現感染の鑑別に CV 視認 性の観察の他に GS 視認性を加えることにより特 異度は 88%から 99%に改善した.  症例数が少ないという問題点はあるが,除菌後 の経過年数別に所見を検討した.CV 視認性は 2 年未満では 3 群でほぼ同等の頻度であったが,GS 視認性は消失例が 64.7%を占め,除菌後早期の感 染診断には GS 視認性の評価が重要と考えられ た.また,CV 視認性は年数が経過するに伴い消 失例が減り明瞭例が増える傾向を認めたが,不明 瞭例は経過年数にかかわらず一定の割合を占め た.一方,GS 視認性の消失例は経年的にさらに増 加し 10 年以上経過した例では全例が消失であっ た.したがって CV 視認性不明瞭である場合には GS 視認性の評価が診断に有用であると考えられ る.  胃底腺粘膜の CV や GS 視認性を近接観察する 場合には腸上皮化生巣を避けて観察する必要があ る.LCI モードにおけるラベンダー色を呈する領 域6)は腸上皮化生巣と考えられており,Figure 4 に示すように,ラベンダー色の領域を避けつつ注 意深く近接観察を行うことが大切である. Ⅴ 結  論  経鼻内視鏡の短波長レーザー光による画像強調 を近接観察で,胃底腺粘膜の集合細静脈と腺管構 造の視認性を評価することにより Hp 感染診断が 可能であった.除菌後と現感染の鑑別において, 非典型的な形態を示す集合細静脈を捉えることで

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ings before and after eradication of Helicobacter

pylo-同 受理 平成29年 6 月21日

DIAGNOSIS OF HELICOBACTER PYLORI STATUS BY CLOSE

OBSERVATION USING AN EG-L580NW LASER TRANSNASAL ENDOSCOPE

Yukiya YOSHIDA1),2), Susumu NAKAMATA1), Nobuo MIYASAKA1), Jinghua YIN1), Yoko HAYAMI1)AND Satoshi NAKAYAMA1)

1)Department of Gastroenterology, Mishuku Hospital. 2)Akasaka Toranomon Clinic.

  It was examined whether observing the visibility of collecting vessels (CV) and the glandular structure (GS) by close observation of the gastric fundic mucosa using the EG-L580NW laser transnasal endoscope, can be used to diagnose the Helicobacter pylori (Hp) status. CV and GS vis-ibility were each classified into three groups of disappearance, or unclear or clear visvis-ibility, re-spectively. ① In the case of present Hp infection, the CV had disappeared but the GS was clearly visible ; ② in the case of post-Hp eradication, the CV were clearly or unclearly visible, and the GS had disappeared ; ③ in the case of non-infection, the CV were clearly visible. It is suggested that these findings improve the specificity of the diagnosis of Hp status. Disappearance of GS was ob-served less than 2 years after Hp eradication. For diagnosis of Hp status, it is important to closely and carefully observe the gastric mucosa while avoiding lesions of intestinal metaplasia which are suggested by lavender coloration using the LCI (Linked Color Imaging) mode.

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