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要旨 我が国においては超高齢化社会の進展に伴い 緑内障 そしてドライアイの患者数が増加傾向にあり それに伴って両疾患の治療薬を併用する患者数も増えてきていると考えられる これは どちらの疾患においても点眼薬による治療が主流であることから 2 剤以上の点眼薬を併用する患者が増加していることを意味する

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平成

25 年度新潟薬科大学薬学部卒業研究Ⅱ

点眼薬の併用治療に伴う物性変化と

薬剤の適正使用に関する研究

Studies on the change in physical properties accompanying the

combined treatment of eye drops and the rational use of medication

物理薬剤学研究室 6 年

08P054 中村 紗都美

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要 旨

我が国においては超高齢化社会の進展に伴い、緑内障、そしてドライアイの患者数が増加傾向に あり、それに伴って両疾患の治療薬を併用する患者数も増えてきていると考えられる。これは、どちら の疾患においても点眼薬による治療が主流であることから、2 剤以上の点眼薬を併用する患者が増 加していることを意味する。現在点眼薬を併用する場合いくつかの注意点が挙げられているが、あく まで一般論で個々の点眼薬について十分に検討されている訳ではなく、また併用による物性の変化 はほとんど注目されていないと考えられる。そこで本論文では、緑内障とドライアイの治療に比較的 高い頻度で使用される薬剤について、その併用時の物性変化を追うことで処方における最適な薬剤 選択や薬剤の組み合わせの提案、最適な処方設計の検討を主な目的とし研究を進めた。薬剤物性 の変化は、薬剤のぬれに関連する表面張力と持続性と深く関係する粘度の測定を用いた。点眼薬 は、緑内障治療薬では使用頻度の高いプロスタグランジン製剤を、ドライアイ治療薬では先発品に 加え後発品2 種類を用いた。 表面張力は界面活性剤が添加物として加えられている点眼薬は値が小さく、かつ2 剤混合におい ては界面活性剤が加えられていないものの混合比率を大きくすると値が大きくなる傾向が見られた。 また粘度の値は、単剤ではプロスタグランジン製剤間とヒアルロン酸製剤間で大差は見られなかった ものの、2 剤混合においてプロスタグランジン製剤を先に使用するよりもヒアルロン酸製剤を先に使用 する方が大きな値をとるという結果を得ることができた。更に、いずれのプロスタグランジン製剤にお いても、ヒアルロン酸製剤中のティアバランス®点眼液と併用する場合が最も大きな値をとっていた。 これは、いずれのプロスタグランジン製剤においてもティアバランス®点眼液と併用すると最も持続性 が高まめる効果があることがうかがわれる。 今回の2 つの物性試験結果から、点眼薬の併用の際は薬剤の混合に伴う物性変化を考慮しなけ ればならないということが明らかとなった。薬剤師が服薬指導をする際にはコンプライアンスを重視し た指導になりがちであるが、点眼薬の併用の際の服薬指導において物性変化にまで着目した根拠 ある指導を行うことができれば、患者のアドヒアランスの向上に繋がるのではないだろうか。 しかし、今回個々の点眼薬の治療成績や副作用、そして添加物の毒性などにも検討を加えるまで には至らなかった。やはり医薬品である以上それらのことに考慮する必要があるため、最終的な結論 を出すには更なる検討が必要である。

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キーワード

1.緑内障

2.ドライアイ

3.高齢化社会

4.加齢性疾患

5.点眼薬

6.プロスタグランジン製剤

7.ヒアルロン酸製剤

8.表面張力

9.ぬれ

10.界面活性剤

11.ベンザルコニウム塩化物 12.粘度

13.服薬指導

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目 次

1.はじめに

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

1

2.表面張力測定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

2

3.粘度測定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

3

4.実験結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

4

5.考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6

6.おわりに

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

9

謝 辞 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

10

引用文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

11

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1

論 文

1.はじめに

近年、超高齢化社会の進展に伴い、眼疾患の疫学像は変化しつつある。中江らの 1988 年と 2001~2004 年の視覚障害実態調査によれば、この 15 年で緑内障、黄斑変性症の有 病率は激増し、反対に白内障、先天性の視覚障害の有病率は激減している1,2。この変化に ついて、2001~2004 年の調査における患者の平均年齢が 68 歳(うち 70 歳以上が 52%を 占める)1,2ということを考えても高齢化の影響は大きいと言える。また、日本緑内障学会 が岐阜県多治見市で2000 年から 01 年にかけて行った「多治見スタディ」と呼ばれる調査 では、40 歳以上の 20 人に 1 人は緑内障にかかっており(有病率 5%)、年を重ねるごとに 有病率が増加しているという実態が明らかになった 3。つまり、緑内障は加齢によって罹 患しやすくなる疾患であるとも言える。 緑内障は、眼内圧が上昇した状態、または眼内圧の上昇によって視機能が障害された状 態をいう 4。治療としては眼圧下降が必須であり、生涯にわたって眼圧をコントロールし ていかなければならない。このため点眼薬での治療やレーザーによる治療、手術による治 療などが組み合わされて行われている。点眼薬は様々な機序のものが発売されているが、 中でもプロスタグランジン関連製剤は強い眼圧下降作用を有し、全身の副作用も少ないこ とから近年緑内障治療の中心的薬剤となりつつある 5。また、緑内障に加えて加齢ととも に有病率が上昇する眼疾患として、ドライアイが挙げられる6。ドライアイは、「様々な要 因による涙液および角結膜上皮の慢性疾患であり,眼不快感や視機能異常を伴う」とドライア イ研究会が定義している 7。症状としては眼乾燥症状、結膜充血、掻痒感、異物感などが あり、重症になると眼痛や視力障害を生じる8。近年はIT 化の進展に伴い VDT 作業に従 事する人口も増えつつあり、若年者の間でも患者数は増加している。また、加齢による生 理機能の低下を考えても汗や涙などの水分の分泌が低下するため、高齢者にドライアイの 患者が多いことは必然とも言える。治療としては点眼薬による水分補充や角膜保護、重症 例には涙液の排出部位を閉鎖する涙点プラグ挿入術や涙点閉鎖術などの外科的療法が行 われている。また、加齢によるホルモンバランスの変化が眼表面に与える影響も報告され ており、エストロゲン類やテストステロン、プロゲステロン等の開発も行われているよう である 9。二つの疾患に対する薬物療法としては点眼液による治療が主体であり、緑内障 の治療薬としてはプロスタグランジン製剤、β遮断薬、炭酸脱水酵素阻害薬などが用いら れている。また、ドライアイ治療薬としてはヒアルロン酸製剤が主に用いられているが、 ヒアルロン製剤は現在先発品に加えて後発品が数多く発売されており、その適切な選択が カギとなることが推測される。更に、どちらも近年増加傾向である疾患なため、特に高齢 者において両者の治療薬を併用する患者も増加しつつある。 点眼薬の併用では、両者の間隔は5 分程度空けることや、より効果を期待する薬剤を後 に点眼するということが一般的な注意点としてあげられる 10,11。しかし、これは一般的な

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2 注意点であって、さまざまな点眼薬の併用における相互作用、薬剤物性の変化等を十分に 検討されている訳ではない。 そこで今回、加齢性眼疾患であるとも言える緑内障とドライアイに焦点を当て、それら の治療に比較的高頻度で使用される薬剤について、それらの併用時の物性変化を追うこと で、処方における最適な薬剤選択、薬剤の組み合わせの提案、最適な処方設計の検討を主 な目的に本研究を進めた。薬剤は緑内障治療薬では使用頻度が高いプロスタグランジン製 剤のキサラタン®点眼液(一般名ラタノプロスト)12,13,14とルミガン®点眼液(同ビマトプ ロスト)、そしてヒアルロン酸製剤は先発品であるヒアレイン®点眼液と、後発品の中から ヒアロンサン®点眼液とティアバランス®点眼液を選択し、薬剤物性の変化は薬剤のぬれ に関連する表面張力と持続性に深く関連する粘度測定を用いた。そこから導き出された結 果から点眼薬の適正使用について考察する。

2.表面張力測定

表面張力は滴重法を用いて測定した。 点眼薬は先述の通り、プロスタグランジン製剤2 種類(キサラタン®点眼液 0.005%(以 下XT):ファイザー株式会社、ルミガン®点眼液 0.03%(以下 LG):千寿製薬株式会社) とヒアルロン酸製剤3 種類(ヒアレイン®点眼液 0.1%(以下 HL):参天製薬株式会社、 ヒアロンサン®点眼液 0.1%(以下 HS):東亜薬品株式会社、ティアバランス®点眼液 0.1% (以下TB):千寿製薬株式会社)を用いた。これらの点眼薬について、図 1 に示す装置を 用いてそれぞれ10 滴分の重さを 3 回以上計測し、その平均値を算出後以下の式を用いて 表面張力を求めた。

γ=mgφ/2πr

通常プロスタグランジン製剤 もヒアルロン酸製剤も 1 回 1 滴 ずつ点眼する製剤であるので本 来なら 1:1 の比率で使用される はずである。しかし、正確に 1 滴ずつ滴下できず出しすぎて 2 滴滴下してしまった場合を想定 してヒアルロン酸製剤:プロスタ グランジン製剤=2:1 の比率で も測定を行った。その結果を表1 に示す。なお、文献値はIF 等に 記載がないため省略した。 図1 表面張力の測定器具 γ:表面張力(mN/m)、m:液滴 1 滴の重さ(g)、g:重力加速度(9.8m/s2)、 φ:ハーキンスの補正因子、π:円周率、r:キャピラリーの半径(cm) ※ハーキンスの補正因子φはr/V1/3より求める。

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3 表面張力はぬれと密接な関わりがある。ぬれとは、固体の表面が消失し固体と液体の界 面に置き換わる現象をいう。固体の表面張力と、液体の表面張力、そしてぬれには図2 で 示すように次のYoung の式が成立する。通常、ぬれは接触角(θ)の大きさにより表され、 θが大きいほどぬれにくく、θが小さいほどぬれやすいことを意味する15 γS=γSL+γL cosθ ・・・・・・ Young の式 この式からわかるように、固体の界面張力が一定ならば液体の表面張力(γL)や固体-気 体の界面張力(γSL)を小さな値にすれば、ぬれは良くなる。 図2 表面張力とぬれの関係

3.粘度測定

粘度はオストワルドの毛細管粘度計法を用いて測定した。 点眼薬は表面張力測定と同様にプロスタグランジン製剤2 種類(XT、LG)、ヒアルロン 酸製剤3 種類(HL、HS、TB)を用い、図 3 に示したように毛細管粘度計の右側球部の 上部標線から下部標線までの落下時間をそれぞれ3 回以上測定後、平均値を算出した。 また点眼薬を2 剤併用する場合 に、点眼の順序によって粘度が変 化するのかということを検討する ために、単に2 剤を混合するので はなく粘度計に入れる順序を変え て測定を行った。その結果を表 2 に示す。 図3 オストワルド毛細管粘度計 粘度とは、次式で示されるようなニュートン流動を示す流体において、S をせん断応力、 D をせん断速度とすると比例定数ηのことである。 S=ηD

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4 流動性は粘度の逆数で表されるので、粘度が小さいほど流動性は良いと言える。流動性は 液体の流れやすさの指標であり、大きいほど液体が流れて動きやすいことを示している15

4.実験結果

4.1.表面張力 表1 表面張力測定結果 点眼薬名 表面張力(mN/m) HL 41.2 HS 49.6 TB 50.5 XT 29.3 LG 38.3 HL+XT(1:1) 30.2 HL+XT(2:1) 32.5 HS+XT(1:1) 29.4 HS+XT(2:1) 31.8 TB+XT(1:1) 30.8 TB+XT(2:1) 33.6 HL+LG(1:1) 39.6 HL+LG(2:1) 40.6 HS+LG(1:1) 39.5 HS+LG(2:1) 48.1 TB+LG(1:1) 41.3 TB+LG(2:1) 42.6 図4 表面張力測定結果グラフ 0 10 20 30 40 50 60 表 面 張 力 (m N/m)

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5 ヒアルロン酸製剤ではHL、プロスタグランジン製剤では XT が最も小さな値をとった。ま た2 剤混合の場合では、混合比率をヒアルロン酸製剤:プロスタグランジン製剤=1:1 から 2: 1 に変えたことによって明確な差が現れたのは HS+LG の組み合わせのみであった(約 9mN/m の差が現れた)。 4.2.粘度 表2 粘度測定結果 点眼薬名 上部標線から下部標線 までの落下時間(秒) HL 675.05 HS 667.32 TB 738.17 XT 148.56 LG 137.84 HL→XT XT→HL 320.00 157.03 HS→XT XT→HL 275.22 174.31 TB→XT XT→TB 358.36 141.59 HL→LG LG→HL 380.68 166.19 HS→LG LG→HS 398.91 150.12 TB→LG LG→TB 460.60 155.54 *HL のみ文献値として 3.0~4.0mm2/s(動粘度)の記載有(IF より引用)。

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6 図5 粘度測定結果グラフ ヒアルロン酸製剤間、そしてプロスタグランジン製剤間で値に大きな違いは見受けられなか った。しかし、2 剤混合の場合、毛細管粘度計に入れる点眼薬の順番により粘度に大きな差が 現れており、ヒアルロン酸製剤を先に入れた方が、プロスタグランジン製剤を先に入れた場合 より150~250 秒程度落下時間が延長した。また、ヒアルロン酸製剤と XT との組み合わせで はHS<HL<TB の順で、LG との組み合わせでは HL<HS<TB の順で値が大きくなっていた。

4.考察

表面張力は小さいほどぬれが良くなり眼全体に点眼薬が行き渡りやすいため、点眼薬は 表面張力が小さい方が望ましいということが言える。このことを踏まえると、表面張力の 測定結果より添加物であるベンザルコニウム塩化物の界面活性剤としての重要性が示唆 される。点眼薬に用いられる添加物は、主成分を溶解させる可溶化剤や微生物の繁殖を防 止する防腐剤など様々なものがある。一般的に点眼薬の添加剤として用いられるものを表 3 にまとめた10,15。また、今回扱った点眼薬の添加剤については表4 にまとめた。表 4 よ り、ヒアルロン酸製剤ではHL のみに、プロスタグランジン製剤にはどちらにも添加物と してベンザルコニウム塩化物が含有されている。ベンザルコニウム塩化物は点眼剤には防 腐剤として使用されるが、その毒性(接触性皮膚炎等)も問題になっている物質である10,16 一方で、ベンザルコニウム塩化物はカチオン性の界面活性剤としての働きももつ。界面活 性剤は液体の表面張力を下げ、ぬれを良くする作用があるが、これがヒアルロン酸製剤の 中でHL が最も表面張力が低い要因と考えられる。また、ヒアルロン酸製剤とプロスタグ ランジン製剤の混合ではいずれもプロスタグランジン製剤の表面張力の値に近いものと 0 100 200 300 400 500 600 700 800 上 部 標 線 から 下 部標 線 まで の 落下 時 間 () 秒

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7 なっているが、これも同様の要因と考えられる。先述したようにベンザルコニウムはその 毒性が問題になっている物質ではあるが、物理化学的な側面から見てみると、点眼薬の表 面張力を下げるという利点がある。つまり、ベンザルコニウム塩化物は表面張力を小さく する狙いで、むしろ積極的に使用していくことも考慮すべき物質であるということが示唆 された。 HS+LG の結果では、混合比率が 1:1 のものと比較して 2:1 のものでは 9mN/m 程度表 面張力が大きな値をとっている。この結果から、点眼液は出しすぎに注意すべきであり、 このことに関連する服薬指導が重要と思われる。HS には添加物としてベンザルコニウム 塩化物は含まれていない。界面活性剤の含まれていない点眼薬を誤って滴下しすぎてしま うと、表面張力が大きくなってしまいぬれが悪くなってしまう可能性が示唆される。しか し、同じようにベンザルコニウムが含まれていないTB+LG の組み合わせではそのような 実験結果は得られなかった。 プロスタグランジン製剤ではXT よりも LG の方が大きな値を取っているが、これは添 加物に含まれる無機塩類が異なることが主な要因と推測される。点眼薬に含まれる無機塩 類は多くの場合等張化や液性の調整を目的に加えられることが多い。塩化ナトリウムや水 酸化ナトリウムの添加はその代表例である。一般的に無機塩類の添加は液体の表面張力を わずかに増加させる傾向にある15。表4 のとおり、XT には塩類は含まれていないが、LG には塩化ナトリウムや水酸化ナトリウムが含まれていることが分かる。これにより、表面 張力の値に差が表れたのではないかと考えられる。 表3 点眼薬の主な添加物 添加剤 おもな役割 物質名 等張化剤 点眼薬の浸透圧を体液(涙)に 近づける 塩化ナトリウム、グリセリンなど pH 調整剤 点眼薬のpH を調整する リン酸塩、塩酸など 防腐剤 微生物汚染を防止する ベンザルコニウム塩化物、 パラベン類など 可溶化剤 主成分を溶解させる ポリソルベート 80、ポリオキシエチ レン硬化ヒマシ油60 など 安定化剤 酸化・分解・着色などを防止する EDTA、亜硫酸ナトリウムなど 粘稠化剤 主成分の結膜嚢内滞留時間を 延長させる カルボキシビニルポリマー、ヒドロキ シプロピルメチルセルロースなど 表4 今回実験で用いた点眼薬の添加物 薬剤名 有効成分 区分 添加物 XT ラタノプロスト 先発 ベンザルコニウム塩化物、無水リン酸一水素 Na、リ ン酸二水素Na 水和物、等張化剤

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8 LG ビマトプロスト 先発 ベンザルコニウム塩化物、NaCl、リン酸水素 Na 水和 物、クエン酸水和物、塩酸、NaOH HL ヒアルロン酸 先発 イプシロン-アミノカプロン酸、エデト酸 Na 水和物、 プロピレングリコール、NaCl、ベンザルコニウム塩 化物、pH 調節剤 HS ヒアルロン酸 後発 ホウ酸、クロルヘキシジングルコン酸塩、ホウ砂、 NaCl、KCl TB ヒアルロン酸 後発 NaCl、ホウ酸、ホウ砂、イプシロン-アミノカプロン 酸、エデト酸Na 水和物、パラオキシ安息香酸メチル・ プロピル、pH 調整剤 粘度の測定結果より、単剤ではヒアルロン酸製剤の方が値が大きく、2 剤混合ではヒア ルロン酸製剤を先に粘度計に入れた方が値が大きくなる傾向が見られた。粘度が小さい (=流動性が良い)ということはすぐに眼表面から流れ出てしまい、持続時間が短いとい うことが考えられる。実際に持続性を維持するために眼表面でゲル化する点眼薬(リズモ ンTG®点眼薬:わかもと製薬株式会社等)も発売されており、コンプライアンスの向上に 大きく貢献する薬剤として注目を集めている17。今回の粘度測定においてプロスタグラン ジン製剤間、そしてヒアルロン酸製剤間では粘度の大きな差異はみられなかった。XT と LG、HL と HS と TB はそれぞれ同程度の持続性をもつと考えられる。また、ヒアルロン 酸製剤を先に毛細管粘度計に入れた場合と、プロスタグランジン製剤を先に入れた場合で は明確な違いが現れており、同じ組み合わせであっても順番を変えるだけでそれぞれ150 ~250 秒程度の差がみられる。組み合わせるプロスタグランジン製剤が何であれ、ヒアル ロン酸製剤を先に入れた方が粘度が大きくなった。このことよりヒアルロン酸製剤を先に 点眼することで次に点眼する薬剤の持続性を高める効果があることがうかがわれ、プロス タグランジン製剤とヒアルロン酸製剤の組み合わせにおいてはヒアルロン酸製剤を先に 使用した方が緑内障に効果的と思われる。 ヒアルロン酸製剤とXT との組み合わせでは HS<HL<TB の順で、LG との組み合わせ ではHL<HS<TB の順で粘度が大きくなっている。それぞれの製剤の単剤の粘度は大きな 差が現れなかったにも関わらず2 剤を混合した場合にこのような違いが現れた。XT と LG それぞれの製剤について至適な組み合わせが存在しており、緑内障に合併するドライアイ の治療では、それぞれの第一選択薬を製剤物性の観点を考慮し選ぶことで、それぞれの症 状改善をさらに実感できることにつながると思われる。今回の実験結果では、LG と TB との併用が最も高い薬剤持続性の確保ができることが分かった。 この2 つ物性試験結果から、臨床現場において点眼薬を併用する次のような提案ができ る。①保存剤に界面活性剤が含有されている点眼薬は表面張力を低下させることとなり、 薬剤のぬれを良くすることができる。②界面活性剤が含有されていない点眼薬を滴下しす ぎるとぬれを悪くすることにつながる。③プロスタグランジン製剤とヒアルロン酸製剤の

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9 組み合わせでは、ヒアルロン酸製剤を先に点眼することで持続性の向上につながる。④今 回実験で用いた点眼薬において、ヒアルロン酸製剤ではTB を選択するのが最良である。 しかし、プロスタグランジン製剤はXT と LG のどちらの方が良いかという結論を出すま でには至らなかった。

5.おわりに

今回の実験を通して、点眼薬の併用時に薬剤の混合に伴う物性変化に対する熟慮が重要で あることが明らかとなった。一般に薬剤投与の際の服薬指導は、用法や用量、副作用情報などコ ンプライアンス向上のための配慮や指導を重視しがちである。しかし今回の実験結果より、点眼 薬の服薬指導をする際は添加物や物性の変化のことも考慮した根拠のある指導ができれば、患 者のアドヒアランスの向上につながるのではないだろうか。 今回界面活性剤としてのベンザルコニウム塩化物の有用性を述べたが、それはあくまで物理 化学的な側面から見た場合である。先述した通りベンザルコニウム塩化物は毒性も問題になって いる物質であり、毒性についても検討を加えたうえで最終的に含有したものが良いのか、そうでな いのかという結論を出す必要がある。また、今回扱ったそれぞれの点眼薬について個々に治療 成績を検討するまでには至らなかった。やはり医薬品である以上、治療成績、あるいは副作用の 重篤性や発生頻度等を考慮する必要があるので、今後はその方向からも検討を加えなければな らないだろう。

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謝 辞

本論文を作成するにあたり、終始ご指導頂きました新潟薬科大学物理薬剤学研究室准教授飯 村菜穂子先生、助手桐山和可子先生に心より感謝申し上げます。また、本論文作成にあたり有 益なご意見、ご助言を賜りました新潟薬科大学臨床薬学研究室教授坂爪重明先生に心より感謝 申し上げます。

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引 用 文 献

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参照

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