● 目次 はじめに ... 1 1. 欧州における研究開発活動の概観 ... 1 1.1 主要な共同研究開発活動 ... 1 1.2 その他の主要な研究開発活動... 3 2. EU のフレームワークプログラム ... 3 2.1 EU における共同研究開発の発展 .. 3 2.2 欧州研究領域(ERA) ... 7 2.3 FP6 のブロック構造と予算及び JRC 15 2.4 プロジェクト活動の実施手段.... 23 2.5 プログラムの実施方法... 28 3.1 COST の特徴と参加国 ... 32 3.2 COST の組織機構 ... 32 3.3 研究活動の実施方法 ... 34 4. ユーレカ(EUREKA)イニシャチブ... 37 4.1 ユーレカの特徴と参加国 ... 37 4.2 ユーレカの組織機構 ... 37 4.3 研究活動の実施方法 ... 38 4.4 ユーレカの技術分野 ... 39 4.5 ユーレカと FP との関係強化 .... 39 【付録】 FP6 の活動内容... 43 1.第1ブロック−研究開発の技術分野 .. 43 2.ERA 機構の確立... 45 3.ERA 基盤の強化... 47 4.EURATOM の原子力に関する特別プログラム47 5.JRC の FP6 における活動プログラム .. 47 主要略語表 ... 49 参考文献 ... 49
はじめに
2000年3月のリスボン会議で採択された「リス ボン戦略」は、欧州を2010年までに世界で最も競 争力と活力に富み、経済成長と雇用創出を持続できる 知識基盤型社会に変革することを目的としている。EU 行政機関の欧州委員会は、2002年11月、各加盟 国政府と欧州議会に対し「知識基盤型社会」をキーワ ードとする2003年の活動プラグラムを提示した。 活動プログラムの目標は、リスボン会議の合意に準じ、 研究開発予算を2010年までに50%超増額して EU の国内総生産( GDP)の3%に引き上げるというもので あるが、この目標達成に向けた布石の一つが、200 2年に決定され2006年まで継続される EU の研究 開発に関する第6次フレームワーク事業(FP6)である。 欧州が、今後「知的基盤型社会」を構築できるかどう かは第6次フレームワークを含む今後の研究開発政策 の成否に大きく依存すると考えて良い。EUの研究開 発予算は、今後4年間も順調に増加する計画であり、 こうしたところにEUの研究開発に対する意気込みが 感じられる。 本レポートでは、EU の技術政策として、まず第1章 で欧州における研究開発活動の概観を述べ、第2章で はフレームワークプログラム(FP)について、第3章 と第4章ではフレームワークプログラムと並ぶ2つの 欧州共同研究開発システムである欧州科学技術研究協 力機構(COST)とユーレカイニシャチブ(EUREKA)につ いて概説する。1. 欧州における研究開発活動の概観
1.1 主要な共同研究開発活動
欧州では各国が科学技術分野において独自の研究開 発活動を進めているが、それに加え各国の共同研究開 発活動や共同事業が積極的に行われている。それは西 欧を中心とする各国の協力による研究所の共同運営や 共同研究開発活動に始まり、商業的な人工衛星打ち上E U
EU の産業技術開発政策の動向
〈ジェトロ・デュッセルドルフ・センター〉 2003/8, No.449げ、欧州戦闘機の開発と製造、さらには航空機の開発 と製造を目的とした共同事業に至るまで広範囲にわた っている。 こうした多彩な共同研究開発活動の中で特に広い技 術分野を活動の対象とし、科学技術の基盤全体に対し て大きな影響を与えている活動が以下の三つの共同研 究開発活動である。 (1)共同研究技術開発フレームワークプログラム (FP) (2)欧州科学技術研究協力機構(COST) (3)ユーレカ(EUREKA)イニシャチブ 欧州では現在、これら 3 つの研究活動を中心として、 研究分野における単一共同体を形成することを目的と した取り組みが進みつつある。これは 1987 年から 1990 年代にかけて進められた経済分野における単一市場の 形成と似た動きと言える。この研究共同体により欧州 が持つ研究分野の資源を一つに束ねることが可能とな り、規模のメリットを発揮し欧州の力を最大限まで発 揮できるようになると考えられている。 フレームワークプログラム(FP)は、1984 年から欧州 連合(European Union:EU)の産業政策の一環として EU 方針に基づき、年間 5000 億円程度の EU 予算をもって 欧州委員会からのトップダウン方式で実施されている。 すなわち EU 政策を反映した公募条件が欧州委員会か ら発表され、その条件に合致した研究プロジェクトが 応募プロジェクトの中から選抜され、契約の過程を経 た上で EU から助成金を得ることとなっている。現在、 2002 年から 2006 年までの第 6 次のプログラム(FP6)の ための研究プロジェクト募集が開始される一方で、 FP5(1998-2002)における最後の研究活動が完了した段 階である。FP では実用化や市場化に近い研究プロジェ クトは除外され、いわゆる市場化前段階の研究開発だ けが対象とされる。欧州共同体設立の条約の規定によ ると、企業の市場競争における公正を損ない市場に歪 みを与える可能性のある助成措置は許されないことと なっており、従って FP では市場化前段階の研究開発が 対象とされている。この点で基礎的研究が中心となっ ている COST、あるいは実用化を目的とした EUREKA と は異なっている。FP は他の共同研究開発活動と比べ予 算規模が大きく、欧州における共同研究開発事業の中 心となっている。なお EU 加盟国は現状 15 ヶ国で、英 国、ドイツ、フランス、イタリア、ベネルクス 3 国、 アイルランド、オーストリア、デンマーク、スウェー デン、フィンランド、スペイン、ポルトガル、ギリシ ャである。またその他に 2004 年の加盟がすでに決まっ ている候補国が 10 ヶ国ある。 COST は三つの共同研究活動機構の 中では最も古く 1971 年に創設され、後年には FP の成立に貢献した。 現在は 34 欧州諸国の政府機関や公的機関がメンバー となっている。共同研究活動は各国政府がすでに個別 に取り上げている共通の課題を持ち寄り、共同研究機 構を形成する。このため欧州各地に共通する環境や食 品衛生のような問題や将来問題となる可能性がある事 項に関する基礎的研究が中心となっている。COST での 研究成果は、欧州規格(EN)や標準化のための基礎資料、 または FP や各国政府で将来の研究への足がかりとな ることが多く、この点で他の共同研究活動機構との補 完性があると考えられている。研究活動開始に先立ち 各参加者は研究活動資金を自国で用意する。その上で 相互に簡単な覚書を交わし共同研究に入るので手続き の時間が極めて短い。加えて活動の自発性と簡素な機 構による柔軟性を大きな特徴としている。EU の欧州委 員会は長年にわたり COST の事務局を務め事務局職員 を派遣しており、COST の維持費として年間に 1,300 万 ユーロ程度の資金を FP 予算の中から提供している。 ユーレカ・イニシャチブは FP と同時期に発足し、欧 州の産業や企業のニーズに基づいた応用研究や実用化 開発を目的とした活動を行っており、企業や産業団体 が活動の主体となっている。この点で上記の FP とは異 なるため両者間には補完関係があると考えられている。 現在のメンバーは 34 ヶ国であり、ユーレカ機構には独 自の産業政策や助成用の予算は存在しない。FP のよう に上部からの詳細な政策的な要求がないため、参加者 は自らの事業ニーズに合ったテーマを自主的に形成し て提案し、それに賛同する他国の研究パートナーを探 索してコンソーシアムを組織し、ユーレカへの参加を 申請する。これがユーレカの参加資格を満たしていれ ば、毎年開催される参加国の関係閣僚会議において研 究プロジェクトとして認可・登録され、ユーレカ・ス テータスを獲得する。この全過程で参加者が主導的な 立場であることから、FP とは対照的にボトムアップで 活動が展開されることとなる。ユーレカの参加者は自 国政府から獲得した助成金または自費を持ち寄り、相 互に交わした商業ベースの契約を基盤として自主的に 活動を行う。研究活動機構独自の資金源が存在しない 一方で、参加国毎に研究開発政策に違いがあるためユ ーレカへの力の注ぎ方、すなわち助成金額、助成条件 などが参加者毎に異なる点が問題として指摘されてい る。なお欧州委員会も参加メンバーであり、EU 予算に
よりユーレカプロジェクト活動に参加することもある。 このようにユーレカには FP の様に研究テーマを設定 するプログラムは存在しない。 <表1>には、フレームワーク、COST、ユーレカの 研究開発活動機構についてそれぞれの特徴を比較して 示す。
1.2 その他の主要な研究開発活動
なお上記の 3 共同研究開発活動機構の他にも科学技 術に関連し多くの研究開発活動が実施されており、そ の主要なものについて以下で簡単に紹介する。 欧州における国際的に特に著名な共同研究施設とし て、まず高エネルギー物理の基礎研究に取り組む欧州 合同原子力研究機関(CERN) を挙げることができる。 1954 年に創立され研究施設はジュネーブにある。現在 のメンバーは EU 加盟国を中心とした欧州 20 ヶ国で、 その他に日本、米国、ロシアと欧州委員会を含む 7 オ ブザーバーが参加しており、従業員数は約 2500 名。参 加国の中でもドイツ、フランス、イギリス、イタリア の 4 ヶ国で CERN 予算の約 70%を負担している。CERN に は加速器関連の高度な技術が蓄積されており、現在は 2006 年の操業を目指し重粒子を衝突させるための大規 模なハドロンコライダー(Hadron Collider) の建設が 進められているが、本プログラムには年間予算のほと んどが投資されている。CERN は、世界各国の研究者と の交流の経験を活かし、インターネット用のワール ド・ワイド・ウェブ(www)を生みだしたことでも知られ ている。 さらにバイオ科学技術の基礎研究を行っている欧州 分子生物学研究所(EMBL)も世界的に高いレベルの研究 を行っている機関として知られている。これは原子物 理の CERN に影響され、それをモデルとして生物学に関 連する研究機関として 1974 年に設立された。EU に加 盟する 13 ヶ国の他、欧州2カ国とイスラエルの 16 ヶ 国が参加している。ハイデルベルグに本部が置かれ、 英独仏の支部を加えて 4 研究所を有しており、従業員 数は約 1000 名。CERN と同様、EMBL 予算の約 70%をド イツ、フランス、イギリス、イタリアの 4 ヶ国が負担 している。活動の主要分野は、分子生物学の基礎研究 及び生物学関連の情報システム運営、その他欧州の研 究者の訓練にも力を入れている。 また、基礎的科学技術の促進を目的として諸国の科 学アカデミーが共同で運営するいくつかの機関がある が、その最大は 1974 年に創立された欧州科 学基金 (ESF)である。EU の欧州議会があるシュトラスブルグ に本部を置き、活動資金の一部は EU の助成金で賄われ ている。欧州における科学技術、研究面での長期的利 益を確保するためのロビー活動機関であり、欧州の科 学技術政策の立案に影響力を有している。 商業面では、欧州宇宙機関(ESA)でアリアンロケット による人工衛星打ち上げが行われている。前身の欧州 宇宙研究機関等が合併して 1980 年に創立され、現在、 欧州 15 ヶ国が参加しており、従業員数は約 1700 名。 パリの本部に加え、打ち上げセンターを含む 5 施設を 有し、オランダの欧州宇宙研究技術センターでは約 1000 名が科学技術関連の活動に従事している。ESA は 入札により設備やサービスのみならず研究開発業務も 外注しているが、予算の支出配分は ESA 方式に基づき、 各出資国が支出した費用相当金額が各国の産業界に還 元されることとなっている。 上記宇宙開発に加え、エアバスインダストリー社の 発展と欧州戦闘機トルネードの開発は、航空技術にお ける欧州の共同研究開発を含めた共同事業の成功例と 言える。特にエアバス事業では独、仏、英、伊、オラ ンダ、スペインの主要航空メーカーが参加して欧州合 弁会社を組織し、過去 30 年間で世界第 2 位の規模の民 間航空機製造会社へと成長した。同社の従業員数は約 6000 名で、現在は新開発のエアバス A380 の 2005 年に おける初飛行を目指し生産が始まりつつあり、すでに 数多くの航空会社から 100 機近くを受注している。 A380 は標準仕様の座席数が 550 以上とジャンボジェッ トを大幅に上回る大型機で、欧州の過密化する航空ニ ーズに対応するためには不可欠の新製品である。消費 燃費が大幅に改善されると同時に有害排気ガスが少な い将来の航空機である。 上 記 以 外 に も 共 同 研 究 セ ン タ ー や 機 構 と し て 、 ESO(欧州南天文台)、ESRF(欧州シンクロトロン放射施 設)、ILL(物理施設のラウエ・ランジュバン物理研究所)、 ECMWF(欧州中期天候予測センター)、EFDA(欧州融合開 発協定)等がある。2. EU のフレームワークプログラム
2.1 EU における共同研究開発の発展
欧州連合(EU)は 1993 年に欧州共同体(EC)から発展 したが、その裏付けとなるマーストリヒト条約では研 究技術開発の地位が一段と高められて現在に至ってい る。ここでは FP6(2002-2006)に到るまでの EU 研究開<表1> フレームワーク、COST、ユーレカの研究開発活動機構の比較
比較項目
フレームワーク
COST機構
ユーレカ
プログラム
イニシャチブ
創立年
1984
1971
1985
主要参加メンバー
EU 加盟国、加盟
34メンバー国
33ヶ国と
候補国、準参加国
欧州委員会
研究内容と
EU の政策に準拠
参加国の共通関心。
企業・業界ニーズ。
活動の法的基礎
して予め設定。設
参加者同士の簡単
参加者間の提携業
立条約と
EU 指令
な覚書
務契約書
主導する参加者
企業、大学、研究
参加国の政府機関
民間企業や
機関等に分散
が主体
業界団体の主導型
研究テーマの設定と
欧州委員会からの
参加国政府からの
参加国の企業等か
活動の開始
トップダウン、
ボトムアップ
らボトムアップ、
4 年計画、公募
随時提案、無公募
随時提案、無公募
組織機構や
複雑な組織、
簡素で柔軟性に
簡素で柔軟性に富
手続きの煩雑さ
応募手続きは煩雑
富む組織
む組織、研究パートナ
ー探しに重点
研究活動の対象
競争(市場化、規格 競争(市場化、規格
市場化・実用化
化)前段階の研究
化)前段階の研究
につながる課題
活動資金の調達と
EU 助成金(2003 か 参加者自己負担
自国政府補助金か
予算規模(ユーロ)
ら
4 年間 1 億 7,500
万)
(1,043 万ユーロ
自己資金
(4 億 500 万
:2002 年度予算)
:2002 年度新規)
プロジェクトの選抜 公募−評価−交渉
一般的な規則適合
一般的な規則適合
−研究契約
性のチェックのみ
性のチェックのみ
EUの欧州委員会
欧州委員会が実施 COST 事務局は委
欧州委員会は
との関係
員会内に設置
メンバー
発活動を概観する。 (1)フレームワークプログラム発足以前 第二次大戦後の欧州は、戦災で疲弊した経済を立て 直し、復興を推進するため、西欧 6 ヶ国における協力 体制として、1951 年、エネルギーと基礎資材に重点を 置いた欧州石炭鉄鋼共同体を設立した。次いで 6 ヶ国 は、1955 年頃から協力体制をさらに強化する準備に入 り、1958 年には欧州原子力共同体と EU の前身となる 欧州経済共同体(EEC)を発足させた。これと並行して、 原子力と石炭及び鉄鋼の生産技術に重点をおいた加盟 国の共同研究開発活動が開始された。その後、1965 年 に既述の 3 共同体が統合し欧州共同体(EC)が誕生した が、1980 年代後半に至るまで長年にわたりエネルギー 分野が欧州機関における研究活動の主流を占めていた。 特に 1970 年代におけるオイルショックの後は石炭や 原子力に加えて再生可能エネルギーに関する研究が開 始されるようになった。また欧州共同体における研究 活動とは別に、欧州政府間の共同研究を実現するため 1971 年から COST プログラム機構が活動を開始した。 しかし 1970 年代後半から 1980 年代に入り、米国と 日本を中心に IC とマイクロコンピューターを駆動力 とする急速な技術革新が始まった。それに呼応して EU では 1983 年に情報通信分野の共同研究開発プログラ ムである ESPRIT が開始された(注:この ESPRIT は後の フレームワークプログラムの中で最大の研究プログラ ムとして FP4 まで継続された)。しかし、エレクトロニ クスやコンピューター製品の国際市場が急速に変貌す る時代の流れの中で、欧州委員会や EU 加盟諸国の政府 と議会においては、欧州における関連製造業の国際競 争力が日米と比較し遅れているとの認識が著しく高ま ってきた。それを背景とし、急速な技術発展に対応す るため加盟国の力を結集して相乗効果を上げる狙いか ら、EU では科学技術の共同研究開発に一層力を入れる ことが決定された。 (2)フレームワークプログラム発足後 その主要な施策として、従来から別々に実施されて いた各種の研究活動を一つの枠組みに取り込んだ共同 研究開発機構の「フレームワークプログラム」が 1984 年に発足した。研究対象も伝統的なエネルギーに加え 情報通信、製造技術、農業食品、バイオテクノロジー、 素材、公害等に拡大された。この FP は 5 年周期で進め られることとなったが、その最後の 1 年間は次期 FP の 初年と重なって同時進行する形で継続され、現在の FP6 へ至っている。 研究の方向とテーマは EU の政策に沿って決定され るため、研究プロジェクトに必要な活動資金の約半分 は EU 予算から支出される。したがって、EU 条約の規 定に準拠し共同市場における企業の公正な競争原理に 違反してはならない。そのため助成金が与えられる研 究の内容は、実用化や市場導入とは直接関係してはな らず、それに先行する前段階的な内容に限定されると いう制約がある。 EU 行政機関の欧州委員会では EU の政策に沿った FP のテーマと予算に関する法案の原案を発議する。この 原案は立法機関である EU 加盟国の研究担当閣僚理事 会と欧州議会とに提出されるが、そこでは共同審議が 行われ共同決定手続きに則り EU 法規として採択され、 欧州委員会がその実施にあたる。以前は理事会のみが 立法権を有していたが、欧州議会の権限は特に EU とな ってから拡大され、研究開発や環境等の多くの分野で 共同決定が行われるようになっている。 フレームワークプログラム機構が発足した直後の 1985 年には、フランスが提唱したユーレカ(EUREKA)プ ログラム機構が欧州委員会と EU 加盟国の合意を得て 設立された。そこでは商業的実用製品、サービス及び 実用工程技術を開発する市場志向型の活動により、欧 州企業の国際競争力を強化することを目的とし、実用 化研究を除外する上記の FP を補完する狙いが込めら れていた。 その後 1987 年には単一欧州議定書が成立し、1992 年までに EC 単一市場を確立することが決定されたが、 議定書の中では研究開発に特別な規定が設けられ、欧 州共同体(EC)の研究開発政策は欧州市場統合のための 重要な役割を担うことが明らかとなった。 (3)欧州連合(EU)の成立と FP4 の開始 単一欧州議定書が目標としていた欧州市場統合が名 目的に完成した 1993 年、マーストリヒト条約の発効を 通じ、従来の欧州共同体(EC)は欧州連合(EU)へと発展 し EU では通貨同盟や経済同盟及び社会同盟のように より高い次元での欧州共同体の統合を目指した。 (注:EU の成立にともない、従来からの EC 委員会の 呼称は欧州委員会(European Commission)に変わった) EU に変わった直後の 1994 年からは、FP4(1994-1998) が開始された。それに先立ち欧州委員会では「経済成 長、競争力及び雇用に関する白書(21 世紀に向けての 挑戦と前進への道)」を発行し、欧州における技術開発 の現状を分析し、新たな科学技術政策の基本的思想を
明らかにした。ここで指摘された欧州の弱点は次の三 点である。 (1) EU 全体では、主要競合相手である米国と日本と 比較し、対 GDP 比の研究開発支出、研究者数及び 技術者数が少ない。 (2) EU 加盟国間等のあらゆるレベルで研究開発政策 や活動の調整が進行していない。 (3) 科学的研究成果や技術面での成功が産業面での 活性化に十分結びついていない。 この分析結果を踏まえ、白書では EU が経済成長を達成 し産業競争力を強化し雇用を創出するために EU 及び 加盟国が全体として実施すべき事項として、加盟国レ ベルでの規制緩和や研究開発費に関する優遇税制措置 の拡充の重要性を強調するとともに、研究開発を EU の 産業政策の一つとし位置付けた。したがって FP4 では、 新たな大型研究開発プロジェクトを開始し、これまで 枠外にあった開発や実証の活動及び産業競争力の強化 のための施策も FP4 の政策の一つとされたことにより、 FP4 の予算は FP3 と比べて倍増されるにいたった。こ のように、新しく発足した EU の中で、研究開発活動の 位置付けとそれに対する期待はかつてない程に高まっ た。 (4)FP6 に向けて 本稿で述べる FP6(2002-2006) の原案策定作業は、 2000 年 10 月における第一回討議資料の発行をもって 始められた。その文書で提案された FP6 の新しい内容 と取り組みを見ると、そこには過去 5 年間における FP の研究活動(FP3、FP4 及び FP5 の一部)に対する評価作 業から得られた数多くの教訓を生かす方向が認められ る。この評価作業は 2000 年 7 月までの 7 ヶ月間にわた り、11 ヶ国の専門家による評価委員会の手で実施され、 総合的評価報告書と 9 件の技術分野別評価報告書とが 7 月に発行された。 評価委員会では結論として、欧州首脳理事会(サミッ ト)が 2000 年 3 月に 21 世紀を期してリスボンで採択し た将来目標(EU を世界最高の知識主導型経済とする)を 達成するには、「FP の継続だけに専念する従来の EU 研 究政策では全く不十分」であり、さらに「加盟国と EU と が互いの政策を整合させ相乗効果を生むように統合し た真の意味で EU 的研究政策を確立」すると同時に、全 EU における研究開発の総支出金額の対 GDP 比率を今後 10 年間に「1.8%から最低 3%へと大幅に高める」よう求 めた。 また、評価委員会ではこの指摘に加えて多くの改善 提言を行っている。これらは以下の項で述べる FP6 の 中に生かされているため、以下、その主要なものを記 す。 ・中東欧諸国、特に EU 加盟候補国での研究技術開発活 動に対し一層の支援を与える。 ・FP はこれまで高い活動実績を積んだが、今後の発展 のために EU の基本条約をより有効に活用すべきであ る。例えば、ローマ条約第 168 条の活用をすれば特 定加盟国だけが参加する研究開発プログラムの導入 が可能となる。 ・FP6 は、FP5 の形式を基礎とすべきだが、特に「リス ボン合意による知識主導型経済の確立と EU 拡大の両 目標の達成への貢献」及び「優れた研究能力を有する 研究チームや研究機関のネットワークの確立」に配 慮すること。 ・現在の FP 管理機構と事務手続きを抜本的に見直し、 簡素で判りやすく柔軟なものに改善し、欧州委員会 内部では責任と権限をより末端に移譲する。 ・今後 10 年間に予想される人材不足への緊急な対応 (頭脳流失対策、若者の関心向上、女性の活躍等)を FP6 では主要課題の一つとする。 ・欧州委員会は、EU 構造基金を活用し地域における研 究開発やイノベーション関連の活動に対する支援の 優先度を高める。また研究成果をイノベーションへ と発展させ、革新的技術を効率よく活用する努力を 強化する。 (5)フレームワークプログラムの法的基礎 フレームワークプログラムの法的基礎として最も基 本的な文書は、欧州経済共同体(EEC)とその後の欧州共 同体(EC)を設立するための条約であり、その調印は 1957 年ローマにおいて独仏伊とベネルックス 3 国の 6 ヶ国の代表によって行われたためローマ条約と呼ばれ ている。これは 1992 年の欧州連合に関するマーストリ ヒト条約と共に EU の土台となる法律である。 このローマ条約では 163 条から 173 条において EC に おける研究技術開発に言及している。163 条では EC が 研究開発活動を行うべきことを宣言し、164 条では共 同研究技術開発実証プログラムとその成果の普及と活 用及び研究者の訓練と交流等について、165 条では EC と加盟国が相互に政策の調整を行うべきこと、166 条 ではフレームワークプログラムの内容とその実施方法 について、167 条では FP を実施するために理事会がな すべき業務について述べている。168 条から 171 条ま では FP を実施する際に採用できる 4 種類の法を示して
いる。172 条から 173 条までは FP 原案に関する採択の 方法と欧州委員会による年間活動報告の義務を規定し ている。なお第 169 条の目的は、複数の加盟国が共同 実施する研究プログラムに欧州共同体の参加を許す点 にある。この法規はこれまで使われたことはないが、 FP6 では初めてその活用を決めた(下記の 2.4 節を参 照)。 なお FP の中には原子力関係の研究開発が含まれて いるが、これは EU 予算により EC とは別組織のユーラ トム(欧州原子力機関)が実施するもので、その法的基 礎は欧州原子力共同体の設立に関するユーラトム条約 の 7 条から 11 条に記されている。 以上から分かるように、FP はこのユーラトム条約に 基づく原子力に関する「ユーラトムプログラム」と EC 設立条約に基づく原子力以外の分野に関する「EC プロ グラム」とから構成されている。 この条約に基づき欧州委員会は FP6 を立案し、その 原案(draft)は加盟国の研究担当閣僚による理事会及 び欧州議会の両方に同時に提出されて審議・修正・共 同決定が行われる。採択された最終の法的文書及び FP6 プログラムへの参加規則は 2002 年 8 月 29 日の EU 官報 (Official Journal of the European Communities:OJ) に発表された。また FP6 の具体的プログラム内容は 2002 年 10 月 29 日の OJ に発表された。 欧州委員会では上記の文書を基礎として FP6 を開始 するが、まず最初に個々の特別プログラムについて当 面の優先研究課題を具体的に示すための「作業プログ ラム」を決定して発行する。なお、この文書の内容は 毎年改訂を受ける。次いでこの作業プログラムに基づ き、第 1 回のプロジェクト公募が 2002 年 12 月 17 日に 開始された。そこでは、各活動分野毎に公募対象と申 請方法及び選抜方法等の実務的「ガイドライン」文書 が発行された。 <表2>には、共同体の設立条約を起源として FP6 の開始までに発行される文書の階層的関係ならびにそ の入手先を示す。
2.2 欧州研究領域(ERA)
(1)FP6 と ERA との関係 第 6 次のフレームワークプログラム(FP6)における 政策目的の一つは、欧州委員会による原案の表題(下注 参 照 ) が 示 す よ う に 、「 欧 州 研 究 領 域 (European Research Area:ERA)」の創設である。したがって、本 節ではまず ERA の考え方とその必要性について説明し、 2000 年におけるその提案から現在までの 3 年に行われ た活動とその今後の課題について要点を記す。 (注:FP6 原案の表題は「ERA 創設を目的とした EU 研 究 技 術 開 発 実 証 活 動 の フ レ ー ム ワ ー ク プ ロ グ ラ ム (2002-2006)に関する欧州議会と理事会による決定の ための提案」COM(2001)94final, OJ 21.2.2001)) 2000 年 3 月リスボンにおける欧州理事会(欧州首脳 会議または欧州サミット)では、10 年間で欧州経済を 世界で最もダイナミックな経済の一つとして発展させ、 欧州に知識主導型の経済と社会を確立するとの目標を 決定した。それと同時に、この野心的目標を達成する ためにはイノベーションと経済成長及び雇用創出を刺 激することが必要であり、科学技術における研究開発 はその重要な原動力になるとの認識が示された。知識 主導型経済においては特に、重要分野であるバイオテ クノロジー、情報通信技術、ナノテクノロジー、クリ ーンエネルギー技術等での研究によって得られた成果 を産業において活用することが経済成長を加速させる。 しかしその一方で、欧州の研究開発が長年抱える問題 点が指摘されている。この問題を解決しリスボン理事 会が掲げた目標の達成に十分な貢献を果たす手段とし て、欧州研究領域(ERA)の創設が不可欠とされ活動の中 心とすることが決定された。この ERA の究極目標は、 欧州の研究開発共同体において EU 加盟国の研究開発 力が調和の中で結集・統合され相乗効果を実現できる ような真の意味での「単一内部市場」を確立すること である。 次いでリスボン理事会では欧州委員会に対し、ERA 実現に向けた活動計画の作成を指示した。その指示を 受け、欧州委員会では直ちに ERA イニシアティブの施 策提案書をまとめ、それに対する関係者の意見聴取と アンケート調査が実施された。そこでは EU 加盟国の科 学技術関係者から 300 件を越える提案支持の意見が寄 せられたが、逆に関係者が懸念を抱く問題点としては 下記が指摘された。 ・研究開発のために好ましくない法的及び経済的環境 の存在 ・欧州における研究者のモビリティーが不十分 ・政策の基盤として役立つ科学技術リファレンスの欠 如 ・起業家精神の欠如 ・頭脳流出 ・技能教育を受けた人材の不足 ・イノベーションに対する欧州人の消極的態度<表2> 共同体の設立条約を起源とし FP6 の開始までに発行される
関連文書の階層的関係ならびにその入手先
EC 設立条約 163-173 条、 ユーラトム条約7-11 条、 (OJ C325, 24.12.2002)
www.europa.eu.int/eur-lex/en/trearies/index.html
フレームワークプログラム(FP6)
下記を含む全ての法律文書は次のサイトからダウンロード可能
http://europa.eu.int/comm/research/fp6/documents/en.html
EC プログラム(除原子力):OJ L232, 29.8.2002 p.1-33(www.cordis/lu/fp6/find-doc.htm)
EURATOM プログラム(原子力):OJ L232, 29.8.2002, p.34-42
FP6 プログラムへの参加に関する規則
EC プログラム(除原子力):OJ L232, 29.8.2002 p.1-33(www.cordis/lu/fp6/find-doc.htm)
EURATOM プログラム(原子力):OJ L232, 29.8.2002, p.34-42(同上)
欧州の研究の統合化、
ERA ERA機構の確立
原子力研究特別プログラム 、
基盤強化(理事会決定
(理事会決定、2002/835/EC)
理事会決定、
2002/837/Eur.
2002/834/EC),OJL294/1
OJL294/44、29.10.2002
OJL294/74、29.10.2002
作業プログラム(欧州委員
作業プログラム(欧州委員
作業プログラム(欧州委員
会決定:毎年更新
)
会決定:毎年更新
)
会決定:毎年更新
)
第
1 回 第 2 回
以下
第1 回 第 2 回
以下
第
1 回 第 2 回 以下
提案
提案
同様
提案
提案
同様
提案
提案
同様
公募
公募
公募
公募
公募
公募
提案プロジェクトの評価手順(欧州委員会決定:www.cordis.lu/fp6/)
応募者用の公募情報パッケージ(www.cordis.lu/fp6/calls.htm)
欧州委員会の ERA に関するアンケート調査は、159 の企業、研究機関、学術機関、政府機関等に対して行 われたが、多くの回答者が指摘した優先対策事項は次 の 7 件。 ・研究開発とイノベーション活動を優遇する法的、財 政的、経済的環境の整備 ・研究開発とイノベーションの「単一市場」内におけ る人材の地理的移動と転職を容易にする施策 (各種 資格、社会保険、健康保険、給与レベル、年金等) ・EU 特許制度の導入と確立 ・電子ネットワークの改善による情報交流の速度、信 頼性、安全性の向上 ・科学技術に関する就業機会を増やし、欧州の若者を 始め欧州域外から科学技術者を引きつけ頭脳の流失 を流入に逆転 ・科学とイノベーションに関する広報活動と公共の場 での討議活動を活発化し、産業人や政策立案者及び 政治家における理解と認識を高める。 ・グローバル化に対応する欧州の長期的ビジョンの開 発と維持 (技術や産業の部門毎の長期的ビジョンを 含む) 上記の展開を背景として、欧州委員会における FP6 の立案準備は 2000 年 10 月 4 日「ERA の実現:EU 研究 活 動 (2002-2006) の ガ イ ド ラ イ ン 」 (COM(2000)612final)文書が理事会と欧州議会に提出 された時点から公式に開始され、そこでは ERA 実現に 向けた基本方針が示された。 FP6 立案作業と並行して、欧州研究領域(ERA)の確立 に不可欠な多数にわたる準備作業が開始された。その 項目としては、加盟国政策及びその評価基準の調整と 比較、EU 内の優れた研究活動センターを明確にする地 図作成、研究者の交流促進イニシアティブ、欧州の研 究インフラ基盤に関する検討等があり、これらに関す るこれまでの活動経過と今後の課題については、以下 の(4)項において記述する。 (2)EU における研究開発の状況 欧州の研究開発が抱える下記の三つの問題点を解決 することが知識主導型経済の発展のためには不可欠と する認識が欧州委員会を始め理事会や欧州議会で確認 されたが、ERA の確立を今後の政策目標とする背景は こうしたところからきている。それは(a)研究開発への 投資が少ないこと、(b)研究活動や研究成果を活用する 環境が醸成されていないこと、(c)欧州における研究活 動や資金・人材等の資源の運用が国境等により分断さ れていること、である。リスボン理事会ではこうした 状況の解決に向けた政治的意志を明確にしたが、とり わけ上の第三番目の問題に取り組み、3 億以上の人口 を抱える欧州がその持てる能力を十分に活用できる道 を開くことが EU の大きな課題として、下記のような現 状認識が示された すなわち、グローバル化が一層進み科学技術が重要 な役割を担う 21 世紀の知識主導型経済の中で、EU を 中心とする協調活動を一層促進しなければ欧州経済は 成長力を弱め競争力がさらに低下し、世界の競合相手 国との間に生まれた技術格差は一層拡大し、知識主導 型経済へのスムーズな移行が妨げられる可能性がある。 研究と技術開発に対する将来のための投資がこれほど 重要になったことはかってなく、欧州が科学技術の知 識において先端水準を維持できなければ将来は暗いも のとなろう。明日の雇用創出のためには技術的発展が 必要であるが、明日以後の雇用創出に寄与するのは研 究開発である。欧州が科学技術の研究開発において世 界のリーダーになるためには「真の意味で欧州共通の 研究開発政策」を産み出すことが不可欠である。 欧州委員会ではこうした欧州が抱える研究開発にお ける問題的状況を下記のような数字を挙げることによ り、競合相手とされる日米と比較している。 ・研究開発支出額の対 GDP 比率を見ると、EU15 ヶ国平 均値は 1.94%であり、米国 2.70%、日本 2.99%に比べ て小さい(なお EU 内のバラツキは大きく、最低水準 のギリシャ 0.67%から最高水準のスウェーデン 3.78% までの間にある)。 2004 年に EU 加盟予定の 8 ヶ国と 2007 年に加盟予 定の 2 ヶ国の 10 ヶ国及びトルコを含めた EU15+加盟 候補国の合計では上の数字は 1.76%に低下する(加盟 候補国では最低がキプロスの 0.25%、最高はスロベニ アの 1.51%で平均は 0.71%) ・公的部門と民間部門をあわせた研究開発支出総額で は、EU と米国との間の格差は一層拡大する傾向にあ り、1992 年の 120 億ユーロから 1998 年の 600 億ユー ロに増大した。また 2001 年には前年比で 9%以上増加 している。 ・就業人口 1000 人に占める研究者数は、米国では 6.7 人、日本では 6 人であるが、EU では 2.5 人に過ぎな い。 ・ハイテク製品における貿易収支では、EU は 1988 年 以降過去 10 年間にわたり年間約 200 億ユーロの赤字 を続けており、日本は 400-500 億ユーロの黒字を続 けている。
・大学学部レベルの留学生数では、米国で学ぶ欧州学 生数は欧州で学ぶ米国学生数の 2 倍である。また米 国大学の博士課程で学ぶ欧州学生の 50%は、米国に長 期滞在しており永住する場合も多い。 <表3>には、EU 諸国における研究開発支出の対 GDP 比及び支出に占める産業と政府との比率を示す。 (3)ERA の目的 欧州の公的な研究活動の主体は加盟各国が各々の政 府予算によって実施する活動である。一方、EU 加盟各 国の公的研究システムは閉鎖的で相互の協調に欠け、 加盟国と EU の研究政策を同時に実施するための調整 は行われてこなかった。すなわち、欧州共同体の内部 市場が形成された経済活動や通貨同盟に比べて、研究 開発活動の分野では国境の障壁が依然として残ってい る。 EU 全体が一丸となって活動を行う共通の研究分野は ほとんど存在していないため、EU 及び加盟国政府間で 行われる国際的な共同研究開発に対する支出金額は公 的研究開発に対する全支出金額の 17%以下に過ぎず、 80%以上は各国内で支出されている。また EU フレーム ワークプログラム予算は全公的研究支出の約 6%を占め るに過ぎない。そのため EU における科学技術の研究活 動は事実上、15 加盟国に EU を加えた 16 の領域に分割 され相互に孤立し分散して進められ、活動の重複も生 まれて規模のメリットが生かされていない。FP は欧州 の研究開発で重要な役割を果たすと評価されてはいる が、それだけではリスボン理事会で研究開発に課され た大きな課題を解決することはできない。 こうした現状を改善するため、ERA イニシアティブ では、FP の管理運営だけにとどまらずその範囲を一層 広げており、その目的は下記の三点にまとめられる。 ・知識や研究者及び技術が自由に移動できる領域とし て研究活動の「単一内部市場」を創設する。それと 同時に協調と競争を促進し研究資源のよりよい配分 を実現する。 ・欧州における研究活動の構造改革を進める。特に欧 州の研究業務と資金のほとんどを担っている加盟国 の相互間における研究活動と研究政策の調整を改善 する。 ・欧州全体の研究政策を開発し、その中では研究活動 の助成だけではなく、その他の関連する EU と加盟国 の政策分野にも考慮を払う。 (4)ERA イニシャチブの活動内容 EU の研究開発に対する上述の様な課題を前に ERA の 目的達成に向け、欧州委員会では 2000 年から数多くの 分野で準備活動を進めてきた。活動開始から 30 ヶ月経 った 2002 年 10 月、それまでの経過を総括し反省を加 え、FP6 の開始と歩調を揃えて ERA イニシャチブの勢 いを取り戻すため、欧州委員会は 2003 年春の理事会で の採択を目指し新たな施策の提案を行った。ここでは その文書(下注参照)に基づき、これまでの活動の経過 と今後の課題や施策について概要を紹介する。また新 しく提案されている活動方向については、次項(5) で述べる。 (注)「ERA に対する新しい活力の付与 − これまで の活動の強化と方向転換及び新しい活動方向の提案」 (COM(2002)565final,16.10.2002) これまでの活動は下記の分野で行われ、それなりの 成果を上げてきた。しかし改めて ERA イニシャチブの 勢いをさらに増すためには、これまで不十分であった 加盟国の政府や公的機関の参加度合いを一層高め、そ れを通じて活動の影響力を強めることが不可欠となっ ておりそれが全体的課題である。これまでの活動と一 般的成果には次のものがある。 (a)下記の主要分野における活動の推進 ① 加盟国政策及びその評価基準の調整とベンチマー キング ② EU 内の優れた研究活動センターのマッピング ③ 研究者の交流促進イニシアティブの確立 ④ 欧州の研究インフラ基盤 ⑤ 加盟国における研究プログラム間のネットワーク 形成 ⑥ 研究開発に対する民間投資の促進 ⑦ 知的財産 ⑧ 研究のための欧州横断電子ネットワーク (b)特定技術分野における加盟国の活動と政策の調 整を改善するためのフォーラムや交流組織の形 成(航空、鉄道、環境、エネルギー等に関する研 究活動分野) (c)ERA 確立と基盤強化に貢献する新しい FP6 の立 案と採択 (d)欧州委員会直属のジョイント・リサーチセンタ ー(JRC)では、下記の分野において加盟国の研究 実施体制を結ぶネットワークを確立する業務を 強化した(原子力安全、化学度量衡、環境災害、 遺伝子操作作物の検出と分析の分野) (e)主要加盟国における研究組織の相互間における
<表3> EU 諸国における研究開発支出の対 GDP 比
及び支出に占める産業と政府との比率
研究開発支出
EU 加盟国名
対 GDP 比率(%)
産業負担比率(%)
政府負担比率(%)
ベルギー
1.97
66.2
23.2
デンマーク
2.07
58.0
32.6
ドイツ
2.52
66.0
30.7
ギリシャ
0.67
24.2
48.7
スペイン
0.97
49.7
38.6
フランス
2.13
54.1
36.9
アイルランド
1.21
64.1
21.8
イタリア
1.04
43.0
50.8
ルクセンブルグ
−
−
−
オランダ
2.02
49.7
35.8
オーストリア
1.86
40.1
40.3
ポルトガル
0.76
21.3
69.7
フィンランド
3.67
70.3
26.2
スウェーデン
3.78
67.8
24.5
イギリス
1.86
49.3
28.9
EU15 ヶ国
1.94
56.3
34.2
米国
2.70
68.2
27.3
日本
2.98
72.4
19.6
原データの出所:OECD 及び欧州委員会研究総局
交流基盤が自主的に確立された(フランスの CNRS、ス ペインの CSIC、イタリアの CNR、ドイツのマック ス・プランク協会、イギリスのリサーチカウンシ ル、オランダの TNO 等) (f)加盟国間における研究者交流の新しいスキーム が EUROHORCS(リサーチカウンシルの代表者によ る EU 研究組織)の枠内で生まれつつある(例、ド イツ研究協会 (DFG)とイギリス王立協会(ローヤ ル・ソサエティー)との間) (g)研究支出増加を求める欧州委員会の呼びかけ文 書の発行:「欧州の研究支出を GDP の 3%へ増加」 COM(2002)499、11.9.2002(バルセロナの理事会に おいては 2010 年までに 3%を達成する目標を決定 したが、その決定を受け目標を達成するための方 法についての討議を開始するための措置) (h)欧州委員会による欧州における大学の役割に関 する討議用文書の発行:「欧州の至上課題:教育 訓 練 に 対 す る 効 果 的 な 投 資 」 COM(2002)779 、 10.1.2003 以下では(a)にあげた主要な 8 項目について概 要を紹介する。 ① 加盟国の研究政策のベンチマーキング 加盟国の研究政策を相互に比較すること (ベンチマ ーキング)は調整や整合化あるいは共通目標に向かう 活動の前提となる作業であり、ERA の発展には不可欠 である。これまでの活動成果として、比較基準とする 20 個の定量的指標(例、研究支出金額、研究人材数、 成果の商業的活用度)を選択し、その 15 個についてデ ータ収集と分析が行われた。また、5 分野の問題(研究 開発人材、公的・民間研究支出、経済競争力と雇用へ の影響、科学技術活動の生産性、科学技術文化の普及) についての分析を行った。これらのパイロット段階の 成果はワークショップや会議を通じて普及されている。 また欧州委員会では 2002 年 10 月、研究開発分野に おける加盟国の政策決定作業を進める際に「オープ ン・コーディネーション法(OCM)」(下注参照)と呼ばれ る作業手段を用いることを決定したが、2003 年春の理 事会ではその決定が承認される予定である。 今後の課題は、少数の分野に分析の焦点を絞った上 でその分野毎に加盟国代表による運営委員会を設置す る。同時に加盟国政府が指名した専門家による作業グ ループを組織し分析業務を発展させる。この分野とし ては、人材と研究者の移動と交流、基礎研究への公的 助成、民間研究投資に対する加盟国政府の振興策、研 究開発資源(資金、人材、インフラ)の地域的クラスタ ー、政府による科学技術の普及施策等が考えられてい る。 (注)OCM は欧州統合を進める手段の一つで、リスボ ンでの欧州理事会がその戦略的目標を達成するための 基本的手段として導入を決めた。これは、従来からあ る通常手段のギャップを埋める形で、加盟国間の単な る調整と EU 法規による強制的統合の中間に位置して いる。加盟国の自主性と国内事情に重点を置いた柔軟 な枠組みの中で、加盟国は「共通目標」の実現に向か い個々の事情に合う国内政策を徐々に開発する。した がって、各国の政策間に整合性を求めて最終的に一つ の同じ政策に収斂させるような調整作業を必要としな い。例えば研究開発支出の「3%目標」を達成する場合 には、強制的拘束力のある EU ディレクティブ(指令) の施行または欧州委員会による通常の調整業務ではな く、OCM により参加意志のある加盟国は自主的に国内 施策を決定する。 ② 優れた研究活動センターのマッピング この目的は欧州に現存する研究能力(研究ユニット や研究チームのレベルまで)について詳細な地図を作 製する点にあり、特に生まれつつある新しい研究集団 を欧州の研究共同体や政策立案者に周知させる狙いが ある。これまでのパイロット段階では、ライフサイエ ンス、ナノテクノロジー、経済学の 3 分野での作業が 行われ、2002 年 11 月には中間報告が行われている。 これまでの活動から数多くの技術的及び方法論的問 題点が明らかになり、作業には当初の予想以上の時間 と費用を要することがわかってきた。そのため当面は これまでの成果を普及する活動に重点をおき、その他 の残る科学技術分野でも作業を継続するかどうかにつ いては詳細な検討を行う予定である。 ③ 研究者の交流促進イニシアティブの確立 EU では経済活動の単一内部市場における人、物、資 本の自由移動の原則が確立されている。例えばベルリ ンで建設ブームが起こり、建設労働者が不足すると、 他の EU 加盟国の労働者が容易に出稼ぎに行くことが できる。一方 FP ではその発足以来、加盟国間における 研究者の交流に力を入れてきている。しかし研究者の 場合には現実問題として、その自由な移動を妨げる各 種の障害(例えば、法規的、行政的、文化・言語的、情 報不足による障害等 )が他の部門に比べてより多く残
存している。そのためこの活動ではこれら障害の除去 を目的としている。この活動の成果もあり FP6 では研 究者の移動促進に一層大きな重点が置かれるようにな り、その予算は FP5 に比べてほぼ倍増されている。さ らに支援方法にも改善があり、研究者移動のための奨 学金は研究経歴の全段階をカバーできるように対象の 幅を広げ、奨学金の支給期間も従来より延長された。 また FP6 では EU 域外の第三国からの研究者に対しても、 EU への移動及び EU 加盟国間での移動を促進するため の規定や助成措置が導入されている。 この他には加盟国政策の相互調整とも関連する措置 として、研究者移動センター欧州ネットワーク(約 40 研究機関を含む)を 2003 年始めに発足させる計画であ る。また電子情報システムにより研究者の雇用機会及 び加盟国の法規や行政規定の情報を提供する「研究者 移動のウェブサイト」を 2003 年内に導入する予定であ る。 今後の課題として、欧州委員会では第三国からの研 究者の EU での滞在と移動に関する規定案を 2003 年内 に提案し、また EU 研究者のキャリア開発を改善するた めの施策を提案する文書を発行する。 ④ 欧州の研究インフラ基盤 この活動の目的は、加盟国レベルでは効率的に利用 できない大型研究設備等のインフラ基盤を EU レベル で整備することで、そのための EU 政策の開発を目指し ている。これまでの活動成果としては、FP6 における 欧州のインフラ基盤を一層強化する施策の導入、欧州 のインフラ基盤の開発と利用に関する政策研究を行う 「欧州インフラ基盤戦略フォーラム」の設立、三つの 設備分野(自由電子レーザー、中性子放射源、海洋研究 船)においてパイロットプロジェクトを開始したこと がある。 今後は上記のフォーラムにおける検討作業を基に、 インフラ基盤分野における政策立案の協議に必要なる 公式メカニズムを確立する方向での提案を行う。 ⑤ 加盟国における研究プログラム間のネットワーク 形成 ネットワーク形成には各種のものがあり、単なる情 報交換から EC 設立条約の第 169 条の援用までを含んで いるが、ERA 創設のためには最も重要なものの一つで ある。これまでの活動では下記の 4 つの成果が得られ ている。 ・加盟国が相互に開放でき、かつ開放が極めて望まし いと評価されている 4 つの研究活動分野が明確にさ れた(海洋科学、化学、植物ゲノミックス、天体物理) ・FP6 の中で予算 1 億 6,000 万ユーロの ERA-NET プロ グラムが確立された。これは加盟国の研究プログラ ムの相互開放とネットワーク形成を目的とし、情報 交換から共同研究プログラムの推進まで各種レベル において必要となる調整業務を助成する。 ・第 169 条の対象となり得る分野についての提案(マラ リヤとエイズと肺病のように貧困と結びついた伝染 病の臨床対策、交通管理と制御技術、持続可能な発 展) 今後の活動では、第 169 条を援用する可能性のある 他の分野の探索(例、ナノテクノロジー)、地域的研究 開発協力に対して第 169 条を適用する可能性の検討、 加盟国の主要な公的研究組織の戦略担当幹部のための 協議用フォーラムの設置等が予定されている。 ⑥ 研究開発に対する民間投資の促進 2000 年のリスボン理事会では、民間の研究投資を巡 る環境を改善する施策の必要性が唱われた。2002 年の バルセロナ理事会では、2010 年までに EU 全体におけ る研究支出の対 GDP 比を現状の 1.9%から 3%とする目標 が決定され、その増加の大部分は民間投資の振興によ ることが指摘された。それを受けて欧州委員会では「欧 州の研究支出を GDP の 3%へ増加」(COM(2002)499、 11.9.2002)と題する資料文書を発行し、目標達成のた めに EU や加盟国レベルで実施すべき政策についての 関係者討議を進めてきた。 また欧州委員会では欧州投資銀行(EIB)と共同で、民 間の研究投資を活性化するために必要な準備を進めつ つあり、これまでには下記の成果が得られている。 ・FP6 と EIB のイノベーション 2000 イニシャチブとの 間での相乗効果を実現し、研究成果の活用や研究イ ンフラ基盤及びハイテク企業での研究支出を支援す るための共同作業に係る覚書が調印された(2001 年 7 月)。 ・EIB では欧州委員会の協力により研究に対する新し い融資制度を導入した。それには中型企業に対する 借款制度、及び複数企業が提携する戦略的研究開発 プロジェクトを支援するメカニズム等がある。 ・EIB で は 研 究 に 対 す る 投 資 額 を 著 し く 増 加 し た (1990-1999 年の総額 2 億 4,500 万ユーロに対し 2000 年初頭以後の投資決定金額は 46 億ユーロ)。投資対 象の例には研究インフラ基盤(フィンランドのツル ク)やテクノロジーパーク(マドリッド)やインキュ
ベーター(ハイデルベルグの EMBL)等がある。 今後の課題として欧州委員会では、研究支出 3%の目 標の達成方法に関し 2003 年春の理事会での結論及び 関係者討議から得られた意見を加味し、この問題に関 する第二回協議文書を発行する。さらに EIB では欧州 委員会の協力を得て、FP6 での研究活動と共同して相 効果を実現できるような研究やイノベーション活動の ために、各種の支援手段(ローン、リスクキャピタル支 援制度、債務保証等)を開発する。 ⑦ 知的財産 この分野の主要目標は EU 特許制度の新設であるが、 この提案は理事会での合意が得られず長年ペンディン グ状態が続いてきた。意見の調整が難航した問題は、 使用する言語と翻訳作業、各加盟国の特許庁が果たす 役割、審判裁判所の設置等に関するものである。 しかし、2003 年 3 月 3 日の EU 競争理事会において EU 特許制度にようやく合意が得られたため、間もなく その設立準備を開始できることになった。これで 1975 年の「ルクセンブルグ条約」の調印以来延々と続いた EU 特許制度に係る議論に終止符が打たれる。 今後の課題としては EU 特許制度を発足させる作業 の他に、国際的合意を得た知財権保護システムを EU レ ベルで整合化して採択するための継続的活動、産学連 携による共同研究スキームで開発された知識保護と技 術移転の優れた経験や事例を普及し交流すること等が ある。 これ以外で進展の見られた活動としては、欧州にお けるバイオテクノロジーとソフトウェアの分野で知財 権に関して整合性に優れた制度的フレームワークを開 発するために必要な法規の立案と採択及び施行がある。 ⑧ 研究のための欧州横断電子ネットワーク 欧州全体に広がる研究用の超高速情報伝送ネットワ ークを確立する作業はすでに長年続けられているが、 近年は特に次の 2 点に進展が見られた。 ・グリッド分散型データ処理技術に基づくシステム開 発のために 20 件の活動が開始されている。特に素粒 子物理学部門では、4 つの国立機関と 2 つの欧州機関 (CERN、ESA)が中心となり 17 研究機関を結ぶ大型高 速データ伝送ネットワークを確立する DataGrid プロ ジェクトを進めている。 ・FP6 の中では優先テーマ領域「情報社会のための技 術」に 1 億ユーロ、欧州の GRID 開発支援に 2 億ユー ロの助成が決定されている。 今後は GRID タイプのアーキテクチャーの開発を天 体物理学や生物学、ゲノムや地球気象変化の分野にも 拡大するとともに、そのネットワークを中東欧の EU 加 盟候補国にも延長する予定である。また FP5 から始ま っている GEANT は、加盟国の研究と教育に関連する電 子ネットワークを相互接続するプロジェクトであるが、 FP6 でもそれをさらに継続実施して完成させ、全欧州 を結ぶ高速高容量のネットワークを確立する計画であ る。 (5)新しい活動方向 上記の(4)項で述べた従来の活動に加え、欧州委 員会では今後の課題として下記のようないくつかの新 しい活動方向を 2003 年春の理事会に提案した。 (a)研究政策の調整効果を上げるための条件整備 すでに(4)項①でも述べたように、リスボン理事 会は「2010 年までに世界で最も競争力に溢れた知識主 導型経済を欧州に確立する」ための活動に利用できる、 新しい手段として「オープン・コーディネーション方 法」(OCM)を採択した。これは中央集権的な強制手段と は反対に分権分散性のある自主的手段であり、理論先 行とは逆に経験を通じての学習を重んじ国や地域の多 様性とサブジディアリティーを尊重した方法である。 各加盟国の政策を一つのモデル政策を基に整合化する ことは避け、各国は自国の状況に適合する相互に異な る政策を採用しつつ同じ共通目的に向かって努力する。 この項では別の角度から、OCM 法の基礎となる過程を 論理的順番にしたがって以下にまとめる。 ・EU レベルにおいて一般的共通目的とガイドラインと を設定 ・各加盟国は共通目的を自国に翻訳し独自の目標と政 策及び活動計画を設定 ・進捗度を推定するために役立つ定量的指標及び定性 的指標を確定 ・活動分野毎に加盟国や地域の政策と成果や業績を比 較 ・情報や経験及び best practices(優れた事例)の交換 による学習と自己改善 ERA の創設に向けて OCM はまだ十分に活用されてお らず、これまでの利用は第 5 番目の過程である加盟国 間での情報や経験の交流だけにとどまっている。研究 政策において実効ある永続的な真の調整を実現するた めには、OCM の活用をさらに徹底し上の全過程を完全 に実施する必要がある。そのため欧州委員会では、下
記の活動計画を 2003 年春の理事会に提案した。 ・研究政策の調整を実施するための正式なメカニズム の定義 ・OCM 手法の完全実施(共通目的や自国目標の設定も含 めた上記の全過程) ・この調整を実効ある形で実施できる組織機構の確立 (欧州委員会の中にある既存の CREST(科学技術研究 委員会)の組織改革を行う予定) (b)法的手段の有効活用 ERA イニシャチブを推進する手段としては OCM や資 金助成措置に加え、第三の道として法的手段がある。 これは内部市場の確立とそれに関連した EC 政策の展 開に多用されてきており、それには指令、規則、勧告 等がある。ここに指令(directive)と規則(regulation) は拘束力が最も強い EU 法規であるから、それが施行さ れた場合、関連する国内法に優先する。規則はそのま まの形で加盟国の国内法となるが、指令では EU 法規の 主旨を損なわない条件で各国の事情を加味して国内法 化される。 欧州委員会では法的手段の利用を今後より積極的に 進める予定であり、その対象としては例えば研究者の モビリティー改善、特に EU 域外国からの研究者の受入 や EU 内の移動を改善するための法的措置がある。さら に EU 全体の研究支出を GDP の 3%にまで高める上で重 要な貢献が期待されている民間での研究投資を振興す るためには、法的環境及び行政的環境を改善する課題 がある。 (c)欧州における研究活動間の連携強化 欧州における科学技術分野の研究開発活動のプログ ラムやセンターや協力機構の主要なものについては第 1 章で述べたが、その主要な研究センター(CERN、ESA、 EMBL、ESO、ESRF、ILL、EFDA)は、欧州委員会の呼びか けに答え ERA 確立に関する共通の問題に取り組むため EIROFORUM をすでに設置している。さらに欧州委員会 では今後の課題として下記の 3 点を提案している。 ・EU 及び 欧州科学基金(ESF)の活動の相互間における 結合を強化する。特に ESF が行う EUROCORES イニシ ャチブ(欧州諸国の研究活動間のネットワーク形成) に EU は 2,000 万ユーロの補助金を与える。 ・COST の改革と EU 活動との結合の強化 ・過去 3 年間にわたって続けられている EU の研究活動 と EUREKA との協力の幅を一層拡張する。 (d)EU 加盟候補国の完全参加 EU 加盟を希望する中東欧の加盟候補諸国における科 学技術分野の研究開発体制は全体として資源の欠乏に 悩んでおり、その改善のために EU の支援を必要として いる。加盟候補諸国は FP6 でも FP5 の場合と同様に研 究活動に参加している。 また欧州委員会と EU 加盟国レベルでは、加盟候補国 における研究開発政策及び研究管理能力の改善強化に 役立つ措置についての調査検討を FP6 の中で進める。