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8
May 2017特集 :
組織再編税制等に関する
税制改正
はじめに 2016年 12月22 日に閣議決定された 2017(平成 29)年度 税制改正の大綱(以下、「2017年度税制改正大綱」。)では、 外国子会社合算税制(CFC税制)について、「外国子会社の 経済実態に即して課税すべき」との BEPSプロジェクトの基本 的考え方を踏まえ、経済実体がない、いわゆる受動的所得は 合算対象とする一方で、実体ある事業からの所得であれば、 子会社の税負担率にかかわらず合算対象外とする趣旨の改 正が入ることが予定されています。今回の改正は BEPS対応 の一環としての大規模な改正となっており今後の日系企業に おける税務コンプライアンス対応もさることながら今後の海 外投資や M& Aに大きな影響を及ぼす改正と考えられます。 本稿では、今回の改正の概要と日系企業による海外投資スト ラクチャーに及ぼす影響について概括的に解説します。 1
改正の概要
2017 年度税制改正大綱では、以下に列挙する改正が予 定されています(図表 1-1、図表 1-2を参照)。適用時期とし ては、外国関係会社の 2018(平成 30)年 4月1日以降に開 始する事業年度から適用されるものとされています。 ● 合算課税の枠組みとして、①会社単位の合算課税(従前ど おり)、②受動的所得の部分合算課税(資産性所得の部分 合算課税を拡充)、③特定外国関係会社に係る会社単位の 合算課税(新設)、の3つの合算課税を規定する。 ● 外国関係会社の判定について、持株割合の計算方法を見 直すとともに経済実質基準等を導入する。また、これまで 特定外国子会社の判定にあたって適用されていたいわゆる トリガー税率を廃止する。 ● ペーパーカンパニーやキャッシュボックス、情報交換協定 のない国等に所在する外国関係会社(特定外国関係会社) に対する会社単位の合算課税制度を新設する。 ● 現行の適用除外基準を、より企業の事業実態を考慮した 「経済活動基準」に改組する。 ● 部分合算対象所得について、現行の資産性所得に比して 対象所得をより拡充するとともに詳細に区分し、新たな部 分合算対象金額の算定方法を規定する。 ● 納税者の事務負担軽減に配慮し、上記①~③の適用にお いては、外国関係会社の居住地国における租税負担割合 に基づく適用免除基準を設けるとともに、少額免除基準等 に係る確定申告書への添付要件を廃止する。 (1)合算課税の枠組みの改組 現行法と改正法における合算課税の枠組みは、図表 2に 示すとおりとなります。 (2)外国関係会社の判定 ①間接保有割合の算定方法の変更 現行法では、外国関係会社の判定上、間接保有割合の算 PwC税理士法人 国際税務/M&Aタックスグループ パートナー山岸 哲也
外国子会社合算税制(CFC税制)の改正と
今後の海外投資・M&Aに与える影響
定においては資本関係の連鎖の中でそれぞれの持分比率 を乗じて求めていました。改正法では、内国法人等が 50% 超の株式等を保有する外国法人が有する判定対象の外国 法人に対する持分割合に基づいて算定することとなります (図表3参照)。 例えば、図表 4に示すとおり、現行法では外国法人と50: 居住者 又は 内国法人 居住者 ・ 内国法人等 が 合計 で 50% 超 を 直接及び 間接 に 保有 制度 の 対象外 会社単位 の 合算課税 適用除外 資産性所得 の 合算課税 外国関係会社 合算課税 な し 特定外国子会社等 租税負担割合 が 20% 未満 の 国 に 所在す る 外国関係会社 ◇納税義務者の範囲 イ 直接及び間接の保有割合が10% 以上である居住者・内国法人株主 ロ 直接及び間接の保有割合が10% 以上である同族株主グループに属 する居住者・内国法人株主 ① 事業基準 主たる事業が株式の保有等でないこと (被統括会社の株式保有を主たる事業とする統括会社は除外) ② 実体基準 本店所在地国に主たる事業に必要な事務所等を有すること ③ 管理支配基準 本店所在地国において事業の管理、支配及び運営を自ら 行っていること ④所在地国基準(下記以外の業種) 主として所在地国で事業を行っていること 非関連者基準(卸売業など7業種) 主として関連者(50%超出資)以外の者と取引を行っている こと(卸売業を主たる事業とする統括会社と取引する被統括 会社を除く) 適用除外判定 (事業形態の変化への対応) 次のすべての要件を満たす 満たさない すべて満たす 資産性 所得あり 資産性 所得なし 居住者 又は 内国法人 特殊関係者 (個人・法人) 同族株主 グループ B 実体基準 本店所在地国に主たる事業に必要な事務所等を有すること C 管理支配基準 本店所在地国において事業の管理、支配及び運営を自ら 行っていること D 所在地国基準(下記以外の業種) 主として所在地国で事業を行っていること ⑤ 製造子会社に係る判定方法の整備 非関連者基準(卸売業・保険業など7業種) 主として関連者以外の者と取引を行っていること ⑥ 関連者取引の判定方法の整備 経済活動基準 全てを 満たす いずれかを 満たさない 20%未満 20%未満 30%未満
実体ある事業からの所得であれば合算対象外とし、経済実体がない受動的所得であれば合算対象とする
居住者 又は 内国法人 居住者 又は 内国法人 特殊関係者 (個人・法人) 同族株主 グループ ② ペーパーカンパニー/事実上のキャッシュボックス/ブラックリスト国所在のもの ③ 会社単位 の 租税負担割合判定 (事務負担軽減 の 措置) ③ 会社単位 の 租税負担割合判定 (事務負担軽減 の 措置) 受動的所得 の 合算課税 (対象所得 の 範囲設定) ※ 少額免除あり 会社単位 の 合算課税1
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居住者 ・ 内国法人等 が 合計 で 50% 超 を 直接及び 間接 に 保有 (④ 実質支配基準 の 導入 と 持株割合 の 計算方法 の 見直 し ) A 事業基準 主たる事業が株式の保有、IPの提供、船舶・航空機リース※ 等でないこと ※一定の要件を満たす航空機リース会社を除く 外国関係会社 (① ト リ ガ ー 税率 の 廃止) 図表1-1:外国子会社合算税制:現行制度 図表1-2:外国子会社合算税制:改正の概要 出所:財務省作成資料 出所:税制調査会・小委員会(2016年12月6日)提出資料50で組成していた外国でのジョイントベンチャー(JV)がそ のJVパートナーである外国法人(例えば外国上場企業)の株 主に一人でも日本居住者や内国法人が存在するとそのJVは 外国関係会社と認定されてしまい租税負担割合が 20%未 満であると特定外国子会社として合算課税されるといった 事態が生じておりました。本改正により、こうした合算課税 がなくなるため日系企業が海外上場企業で JVを組成する際 の外国子会社合算税制上の懸念点が解消される改正と考え られます。 ②実質支配基準の導入 改正法では、新たに実質支配基準が導入されることとなっ ており、内国法人等との間に実質支配関係がある外国法人 は外国関係会社に該当することとされています。ここでいう 「実質支配関係」とは、内国法人等が外国法人の残余財産の おおむね全部を請求する権利を有している場合における内 国法人等と当該外国法人との間の関係その他政令で定める 関係をいうとされています。より詳細は政省令が出ないとわ かりませんが、これまでにない企業の支配の実態を重んじる 新しい考え方ですので、今後のジョイントベンチャー等に係 る外国関係会社の判定においては注意する必要があります。 (3)特定外国関係会社に対する会社単位の合算課税の創設 本改正において、いわゆるペーパーカンパニー、キャッ シュボックス、ブラックリスト・カンパニーに該当する外国関 係会社を「特定外国関係会社」と定義し(図表 5参照)、特定 外国関係会社については所得の内容いかんにかかわらず会 社単位の合算課税の適用対象とされることとなりました。た だし、企業の事務負担の軽減のため、当該事業年度におけ る租税負担割合が 30%以上である場合には合算課税は免 除されることとされています。 なお、ペーパーカンパニーについて、税務当局が図表5に 記載する(イ)又は(ロ)の要件を明らかにする書類等の提出 等を求めた場合に納税者がその提出期限までに提出しない ときは、その外国関係会社は(イ)又は(ロ)の要件を満たさ ないものと推定されることになる点留意が必要です。また、 理論上、上記(イ)又は(ロ)のいずれかの要件を満たしさえ すれば、ペーパーカンパニーに該当しないわけですが、例 えば単純にその国で事務所を借りていたら従業員が存在し なくても上記(イ)の要件を充足できると考えてよいのか等、 実務上明確なところが多いため慎重に検討するとともに実 務上の蓄積が待たれるところです。 図表2:現行法と改正法における合算課税の枠組みの比較 外国関係会社の 租税負担割合 (ペーパーカンパニー等)の該当性特定外国関係会社 適用除外基準または経済活動基準の充足性 現行法 改正法 30%以上 - - 合算課税なし 合算課税なし 20%以上30%未満 該当する - 合算課税なし 会社単位の合算課税あり 該当しない - 合算課税なし 合算課税なし 20%未満 - 充足する 資産性所得の部分合算課税あり 受動的所得の部分合算課税あり - 充足しない 会社単位の合算課税あり 会社単位の合算課税あり P社 S1社 S2社 <間接保有割合の判定> 現行法:80%(P社→S1社)× 60%(S1社→S2社) = 48% ※外国関係会社に該当しない 改正法:60%(P社とS1社の間に50% 超の支配関係があることから S1社のS2社に対する持分割 合で判定する) ※外国関係会社に該当する 日本 海外 80% 60% P1社 X社 P2社(上場) S社 <間接保有割合の判定> 現行法: 50%(P1社→S社)×0.5% (=X社→P2社1%×P2社→S社50%)= 50.5% ※外国関係会社に該当する 改正法: 50%(X社とP2社の間に50%超の支配関係がないことから P2社のS社に対する持分割合は考慮しない) ※外国関係会社に該当しない 日本 海外 50% 50% 1% 99% 他の株主 図表3:外国関係会社の判定方法の変更 図表4:50:50のJVにおける外国関係会社の判定
(4)経済活動基準の導入(現行法における適用除外基準を 衣替え) 上記で説明したペーパーカンパニー等の特定外国関係会 社を除く外国関係会社については、会社単位の合算課税と 対象となる「対象外国関係会社」となるのかもしくは受動的 所得の部分合算課税の対象となる「部分対象外国関係会社」 となるのかを判定する上で経済活動基準を充足できるかど うか検討する必要があります。ここでいう経済活動基準とは、 より企業の事業実態を考慮すべく従来の適用除外基準に以 下の一定の見直しを加えたものとなります(図表6参照)。 改正法では、企業の事業実態に即した課税となるように、 本店所在地国において主体的に航空機リース事業を行って いる場合には事業基準を満たすものとされるとともに、これ までの所在地国基準ではなく新たに非関連者基準の適用対 象事業と整理することでリース対象となる航空機そのものが 本店所在地国以外に所在していたとしても取引の過半が関 連者以外の者との取引であれば経済活動基準を満たすもの とされています。現行法ではアイルランドで航空機リース事 業を行う外国法人は適用除外基準を充足できず合算課税の 対象となっているケースが多くありましたが、これらの手当 てにより事業実態のある航空機リース事業を営む外国関係 会社は合算課税の対象から除外されることとなると考えられ ます。また、所在地国基準についても企業の事業実体に即 した課税となるように改正され、これまで合算課税の対象と されていた来料加工を営む香港法人等についても今後は所 在地国基準を満たすものとされる予定です。 なお、上述した特定外国関係会社と同様に、税務当局の 職員が外国関係会社が経済活動基準を満たすことを明らか にする書類等の提出等を求めた場合に、納税者がその提出 期限までに提出しないときには、その外国関係会社は経済 活動基準を満たさないものと推定されることとされておりま すのでやはり留意が必要です。 図表5 特定外国関係会社 定義・要件 ペーパーカンパニー 次のいずれの要件も満たさない外国関係会社 (イ)その主たる事業を行うに必要と認められる 事務所等の固定施設を有していること (ロ)その本店所在地国においてその事業の管 理、支配及び運営を自ら行っていること、のいず れの要件も満たさない外国関係会社 キャッシュボックス 次の2つの基準を充足する外国関係会社 <外国金融子会社以外の外国関係会社の場合> 図表7-1に記載する①から⑩までの 受動的所得の合計額 総資産の額 >30% 有価証券、貸付金及び 無形固定資産等の合計額の額 総資産の額 >50% <外国金融子会社に該当する外国関係会社> 図表7-2に記載する⑫の受動的所得または ⑧から⑩の合計額のうちいずれか大きい方 総資産の額 >30% 有価証券、貸付金及び 無形固定資産等の合計額の額 総資産の額 >50% ブラックリスト・ カンパニー 租税に関する情報の交換に関する国際的な取組への協力が著しく不十分な国又は地域として財 務大臣が指定する国又は地域に本店等を有する 外国関係会社 図表6:経済活動基準の概案 要件 内容 改正内容 事業基準 株式もしくは債券の保有、工業所有権等もし くは著作権等の提供または船舶・航空機の 貸付けを主たる事業とするものでないこと 航空機の貸付けを主たる事業とする外国関係会社について、例外的にその役員または使用人 がその本店所在地国において航空機の貸付けを的確に遂行するために通常必要と認められる 業務の全てに従事していることその他の政令で定める要件を満たすものは事業基準を満たす 実体基準 主たる事業に必要な事務所、店舗、工場等 の固定施設を本店所在地に有していること 保険業を営む一定の外国関係会社(「保険委託者」)からその免許の申請等の際に保険業に関する業務を委託するものとして申請等をされた者で一定の要件を満たす者(「保険受託者」)が実 体基準又は管理支配基準を満たしている場合には、その外国関係会社(保険委託者)は実体基 準または管理支配基準を満たす 管理支配基準 本店所在地国においてその事業の管理、支 配を自ら行っていること 非関連者基準 (卸売業、銀行業、信託業、証券業、保険業、 水運航空運送業、航空機貸付け業) 取引(売上または仕入)の過半を関連者以外 の者と行っていること (イ)非関連者との間で行う取引対象資産・役務提供が、関連者に移転又は提供されることがあ らかじめ定まっている場合にはその非関連者との間の取引は、関連者との間で行われたも のとみなす (ロ)保険委託者と保険受託者の間で行う取引は関連者取引に該当しないものとする (ハ)航空機の貸付けを主たる事業とする外国関係会社については、非関連者基準を適用する 所在地国基準 (上記以外の事業) その事業を主としてその本店所在地国にお いて行っていること 製造業を主たる事業とする外国関係会社のうち、本店所在地国において製造に主体的に関与 していると認められるものは所在地国基準を満たす
(5)会社単位の合算課税に係る適用対象金額の計算に関 する特例(資源投資法人の例外) 会社単位の合算課税に係る適用対象金額の計算について は大きな改正が予定されていませんが、資源投資法人に関 して1点改正が入ることが予定されております。現行法にお いても改正法においても保有割合が 25%以上の株式に係る 受取配当は適用対象金額の計算上除外することが認められ ています。しかしながら、資源関連の投資において 25%以 上を投資するケースが稀である実態に鑑みて、主たる事業 が化石燃料(原油、石油ガス、可燃性天然ガスまたは石炭) を採取する事業である外国法人で日本と租税条約を締結す る国に化石燃料を採取する場所を有するものは、その持株 割合要件を10%以上に引き下げられることとなりました。 (6)受動的所得に対する部分合算課税 ①受動的所得の範囲 現行法においても適用除外基準を充足する特定外国子会 社については資産性所得の部分合算課税制度の対象とされ ていますが、改正法では部分対象外国関係会社を「外国金 融子会社等」と「外国金融子会社等以外の子会社」に区分し た上で、その区分ごとに部分合算課税の対象となる受動的 所得を規定しています。具体的には、それぞれ図表 7-1、図 表 7-2に記載のとおりですが、改正法における受動的所得 の範囲は現行の資産性所得の範囲に比べて大幅に拡充され ています。ここでいう「外国金融子会社等」とは、本店所在地 国の法令に準拠して銀行業、金融商品取引業又は保険業を 営む外国関係会社で、本店所在地国においてその役員また は使用人がこれらの事業を的確に遂行するために通常必要 と認められる業務の全てに従事していること等の要件を満た すものをいいます。 ②部分合算課税に係る部分適用対象金額の計算 部分合算課税に係る部分適用対象金額の計算は、図表 8 に記載するとおりです。 金融子会社以外の外国関係会社に係る部分適用対象金 額の計算においては、図表 8に記載する(イ)と(ロ)で損益 通算が認められない点に留意が必要です。例えば、ある事 業年度に多額の有価証券の譲渡損(図表 8(ロ)がマイナス) が生じたとしても当該事業年度に稼得した利子や配当等(図 表 8(イ)がプラス)とは相殺できず、その利子や配当等は全 額部分合算課税の対象となります。ただし、図表 8(ロ)に掲 げる金額がマイナスとなる場合には部分適用対象金額の計 算上欠損金として 7 年間繰り越すことが認められることとな り、将来年度において図表8(ロ)の所得が生じる場合に相殺 できる手当てがなされています。金融子会社についても同 様の措置が手当てされています(図表 8(二)の計算上損益 図表7-1:外国金融子会社等以外の部分対象外国関係会社に係る受動的所得 所得の種類 除外項目等 ① 剰余金の配当等 持分割合25%以上等の要件を満たす法人(資源投資法人の場合には持分割合10%以上等の要件を満たす外国法人)から受ける配当等は除く ② 受取利子等 金銭の貸付けが主たる事業でありかつ業務実体がある場合や通常の業務の過程で生じる預金利子等は除く ③ 有価証券の貸付けの対価 - ④ 有価証券の譲渡損益 持分割合25%以上等の要件を満たす法人の株式等に係る譲渡損益は除く ⑤ デリバティブ取引損益 デリバティブ取引を業として行う場合でかつ業務実体がある場合等は除く ⑥ 外国為替差損益 通常の業務の過程で生じる外国為替差損益等は除く ⑦ 上記①から⑥までに掲げる所得を生ずべき資産から生ずるこれらの所得に類する所得 - ⑧ 固定資産の貸付けの対価 本店所在地国で使用に供される固定資産の貸付け、本店所在地国にある不動産等の貸付け及び固定資産の貸付けに係る業務実体がある場合等は除く ⑨ 無形資産等の使用料 自己開発した無形資産及び相当の対価を支払って取得しまたは使用許諾された無形資産で事業の用に供しているものは除く ⑩ 無形資産等の譲渡損益 自己開発した無形資産及び相当の対価を支払って取得しまたは使用許諾された無形資産で事業の用に供しているものは除く ⑪ 外国関係会社の当該事業年度の利益の額から上記①から⑩までに掲げる所得種類の所得の金額(除外項目を考慮しない)及び所得控除額を控除し た残額に相当する所得 所得控除額=その外国関係会社の総資産額、減価償却累計額及び人件費 の額の合計額に50%を乗じた額
通算ができない)。 なお、納税者の事務負担を軽減する目的から、外国関係 会社の租税負担割合が 20%以上であれば、この受動的所 得に係る部分合算課税の適用は免除されることとされてい ます。また、これまでの部分合算課税に係る少額免除基準 が現行の 1,000万円から2,000万円に引き上げられるとと もに、少額免除基準を満たす旨を記載した書面の確定申告 書への添付要件及びその適用があることを明らかにする資 料等の保存要件を廃止しています。 (7)適用免除基準としての租税負担割合(現行法における 特定外国子会社判定に係る租税負担割合と同様) 現行法では租税負担割合が 20%未満の外国関係会社に 加えて、そもそも法人所得税がない国に所在している外国 関係会社はその租税負担割合の多寡にかかわらず特定外 国子会社として取り扱われて会社単位の合算課税の適用対 象とされています。この点、現地国の規制等、事業上の理由 からその現地国に法人を設置できず、やむなくケイマンや バミューダのように会社法制が緩やかな軽課税国に法人を 設置してその支店として現地国で事業を遂行するケースも 実務上ありました。こうしたストラクチャーにおいて当該外 国法人の支店で税金負担している実態があるにもかかわらず (租税負担割合が 20%以上)合算課税されるのは不合理で あるとの声もあり、改正法では法人税がない国に所在する 外国関係会社を合算対象とする旨の規定は削除されて、租 税負担割合による判定が 20%以上であれば合算課税の適 用が免除される規定に一本化されることが予定されていま す。 2
本改正による潜在的な影響及びその対応
本改正が日系企業に与える潜在的な影響と考えられる対 応は以下のとおりです。 (1)外国関係会社の判定方法の変更 外国関係会社の判定方法が変更となることにより、これま で適用対象となっていた外国関係会社が適用対象でなくな る、あるいは、逆に実質支配基準等の適用により新たに対象 となることが見込まれます。従って、自社グループの外国子 会社の持分比率や支配の状況等を把握して本改正後に適 用対象となる外国関係会社を分析、把握することが必要と なります。 (2)ペーパーカンパニーの該当性(オランダ等)と海外投 資ストラクチャーの見直し 現行法では、たとえペーパーカンパニーであっても租税負 担割合が 20%以上であれば会社単位の合算課税も資産性 図表7-2:外国金融子会社等に係る受動的所得 所得の種類 除外項目 ⑧ 有形固定資産の貸付けの対価 有形固定資産の貸付けに係る業務実体がある場合等は除く ⑨ 無形資産等の使用料 自己開発した無形資産及び相当の対価を支払って取得しまたは使用許諾された無形資産で事業の用に供しているものは除く ⑩ 無形資産等の譲渡損益 自己開発した無形資産及び相当の対価を支払って取得しまたは使用許諾された無形資産で事業の用に供しているものは除く ⑪ 外国関係会社の当該事業年度の利益の額から上記①から⑩までに掲げる所得種類の所得の金額(除外項目を考慮しない)及び所得控除額を控除し た残額に相当する所得 所得控除額=その外国関係会社の総資産額、減価償却累計額及び人件費 の額の合計額に50%を乗じた額 ⑫ 金融子会社等の異常な水準の資本に係る所得 - 図表8:部分合算課税に係る部分適用対象金額の計算 外国関係会社 部分適用対象金額 外国金融子会社等以外の 部分対象外国関係会社 (イ)配当等、利子、有価証券の貸付の対価、有形固定資産の貸付の対価、無形資産等の使用料、及び図表7-1に記載する⑪に掲げ当該事業年度の次に掲げる金額の合計額 る所得の金額の合計額 (ロ)有価証券の譲渡損益、デリバティブ取引損益、外国為替差損益、無形資産の譲渡損益、図表7-1に記載する⑦に掲げる所得の 金額の合計額(当該合計額が零を下回る場合には、零) 外国金融子会社等 当該事業年度の次に掲げる金額のうちいずれか大きい額 (ハ)金融子会社等の異常な水準の資本に係る所得 (ニ)有形固定資産の貸付けの対価、無形資産等の使用料、図表7-2に記載する⑪に掲げる所得の金額並びに無形資産の譲渡損益 (当該合計額が零を下回る場合には、零)の合計額所得に係る部分合算課税の適用もありません。一方、改正 後は租税負担割合が 30%未満のペーパーカンパニーは会 社単位の合算課税の適用対象とされることになります。典型 的には、オランダやルクセンブルクなどが該当しますが、法 定税率が 20%以上 30%未満である国に SPCを有する場合 には、固定施設の状況や管理支配の状況を勘案して特定外 国関係会社(ペーパーカンパニー)に該当しないか慎重に検 討、判定する必要があります。これまでは 25%未満の海外 投資にあたってはオランダやルクセンブルク等の投資ビーク ルを通じて間接投資するケースがありましたが、改正後は当 該投資ビークルがペーパーカンパニーに該当すると当該保 有比率25%未満の株式に係る配当は合算課税の対象となっ てしまいますので留意する必要があります(図表 9参照)。既 存の海外投資のなかでこれに該当する投資がある場合に は、本改正が適用される前に、当該投資ビークルが上記で 述べた実体基準または管理支配基準のいずれかを満たせる だけの事業実態をもたせるか、あるいは、単純譲渡、資本取 引または組織再編等により合算課税の適用対象となる配当 の基因となる株式(保有比率 25%未満)を別会社に移管す る、さらには逆に持分比率を 25%以上に引き上げるなど何 らかの手当てをする必要があります。別会社への移管に際し て現地国で非課税となる譲渡益が生じる場合には現行法に おいて合算課税される可能性があるため、事前配当や自己 株式取得等を通じて非課税譲渡益を極力小さくすることでス トラクチャー変更に係る税負担を軽減することが肝要です。 (3)受動的所得の範囲拡大による影響と部分合算課税の 回避 持分割合が 25%未満である場合の株式に係る配当や株 式譲渡益が受動的所得として部分合算課税の適用対象とな りますので、まずは自社グループにおける株式の持ち合い関 係を把握した上で、持分割合が 25%未満に該当する保有関 係が確認できた場合には、その潜在的な影響を把握する必 要があります(図表 10)。そして、その影響が無視できない ときには、本改正が適用される前に単純譲渡、資本取引ま たは組織再編等により当該株式を日本親会社や合算課税の 対象とならない別の外国法人に移管する、あるいは、逆に 出資等を通じて持分割合を 25%以上に引き上げるなど、改 正による潜在的な影響を軽減するための施策を検討、実行 していく必要があります。なお、持分割合が 10%未満であ る株式を別会社へ移管する際には、現行法では持分割合が 10%未満の場合、剰余金の配当は資産性所得として部分合 算課税の対象となる一方、株式譲渡益は市場での売買によ り生じたものでない限り部分合算課税の対象とされないた め、移管に際して単純譲渡や現物分配など株式譲渡益が生 じる取引により移管するほうが税負担の観点からは有利とな る可能性が高いことにご留意ください。 (4)英国、米国の法定税率の引き下げによる影響 英国は近く法定税率を 20%未満に引き下げることを予定 していますので、あらためて改正法における経済活動基準 を充足できるか否かを確認するとともに、改正法における受 動的所得の有無、課税される場合の影響額を把握した上 で、必要に応じて影響を軽減するための手当てをする必要 があります。特に、日系企業の英国子会社は欧州の統括機 能を有する場合も多く、その一環として持分割合が 25%未 満の株式やグループ内貸付けを有しているケースも散見さ れるところですので、特に注意が必要です。また、米国にお いてもトランプ政権による税制改正が実現すると法定税率 が 20%未満に引き下げられる可能性もあるため、今後の動 向に注意を要します。 (5)受動的所得に関する情報収集プロセス構築の必要性 現行法では、適用除外基準を充足する特定外国子会社に P社 S1社 (オランダ) S2社 (X国) ※S1社は実体基準及び管理支配基準を満たさない持 株会社であり、かつ、S2社からの配当収入のみ有する と仮定 ①現行法 : S1社の租税負担割合は25%(オラ ンダ法定税率)となるため、特定外 国子会社に該当しない ⇒会社単位の合算課税なし ②改正法 : S1社の租税負担割合が25%(オラ ンダ法定税率)となることには変わ りはないが、特定外国関係会社 (ペーパーカンパニー)となる ⇒会社単位の合算課税あり、ただ し、S2社からの配当が適用対象金 額計算上除外されるため(持分割 合が25%以上であるため)実質的 に合算所得は生じない 日本 オランダ X国 100% ≧25% P社 S1社 (オランダ) S2社 (X国) ※S1社は実体基準及び管理支配基準を満たさない持 株会社であり、かつ、S2社からの配当収入のみ有する と仮定 ①現行法 : S1社の租税負担割合は25%(オラ ンダ法定税率)となるため、特定外 国子会社に該当しない ⇒会社単位の合算課税なし ②改正法 : S1社の租税負担割合が25%(オラ ンダ法定税率)となることには変わ りはないが、特定外国関係会社 (ペーパーカンパニー)となる ⇒会社単位の合算課税あり、かつ、 S2社からの配当が合算対象となる (持分割合が25%未満であるため) 日本 オランダ X国 100% <25% 図表9:オランダ経由間接投資ストラクチャーへの影響
ついて部分合算課税される資産性所得は持分割合が 10% 未満の株式に係る配当や債券の利子等限定的ですが、本改 正後はより広範な所得が受動的所得として合算されることと なっています。現行法では合算課税の対象となっていない 貸付金の利子や為替差損益などはこれまで捕捉するための 手続きも未整備であると考えられますので、海外子会社との 間で受動的所得を正確に捕捉するための報告、情報共有プ ロセスの整備が必要となります。 (6)今後の海外投資やクロスボーダーM&Aへの影響 本改正は今後の海外投資やクロスボーダーM&Aに大き な影響を及ぼすことが見込まれます。上述したとおり、ペー パーカンパニーに対する会社単位の合算課税の導入や 10%以上 25%未満の株式に係る配当の受動的所得化の影 響により、これまで頻繁に利用されてきたオランダ、ルクセ ンブルク、英国に所在するSPCや地域統括会社を中間投資 ビークルとして使うのが必ずしも税務上有効ではないケース も出てくると考えられます。特に、保有割合が 25%未満の 海外投資については、オランダ、ルクセンブルクの代わり に、法定税率が 30%以上で、かつ、配当の受払に対する課 税がないあるいは僅少であるとともに広範な租税条約ネット ワークを有する国、例えばドイツやフランスなどを通じて海 外投資するケースも出てくるものと考えられるところです。 日系企業の場合、自動車メーカーをはじめドイツやフランス に地域統括会社、工場、販社等を有していることも珍しくあ りませんので、そうした企業においてはより経済実態、管理 支配に合致した投資ストラクチャーとなることが見込まれま す。
山岸 哲也
(やまぎし てつや) PwC税理士法人 国際税務/M&Aタックスグループ パートナー 1999年 PwC税理士法人へ入所。2004年より2007年までPwC 米国 シカ ゴ事務所へ出向。2007年イリノイ大学アーバナシャンペーン校(UIUC)ビ ジネススクール(Master of Tax)を卒業。 PwC税理士法人M&Aタックスグループの責任者として培ったM&A及び国 際税務に関する豊富な経験に基づき、ストラテジック・バイヤー、フィナン シャル・バイヤー双方にデュー・ディリジェンスや買収ストラクチャリング を中心としたM&A税務サービスを提供するとともに、国内外のさまざまな 企業に対して国際税務プランニング、クロスボーダー組織再編に関する国 際税務アドバイスを提供している。 また、PwC税理士法人税務ガバナンス支援チームのメンバーとして主に日 系多国籍企業に対する税務管理体制の構築支援、税務戦略・ポリシーの 導入支援、PwCが提供する海外税務リスク管理のためのITプラットフォー ムであるTax Operations Managerの導入支援等に深く関与している。 日本租税研究協会「国際的組織再編等課税問題検討会」、「国際課税等実 務検討会」専門委員 公認会計士・税理士・米国公認会計士(イリノイ州) メールアドレス:[email protected] P社 S1社 (シンガポール) S2社 (X国) ※S1社は適用除外基準(経済活動基準)を満たすシン ガポール法人であると仮定 ①現行法 : 適用除外基準を充足する ⇒会社単位の合算課税なし、かつ、 ⇒S2社からの配当も部分合算課税 もなし(持分割合が25%以上であ るため) ②改正法 : 経済活動基準を充足する ⇒会社単位の合算課税なし、かつ、 ⇒S2社からの配当も部分合算課税 もなし(持分割合が25%以上であ るため) 日本 シンガポール X国 100% ≧25% P社 S1社 (シンガポール) S2社 (X国) ※S1社は適用除外基準(経済活動基準)を満たすシン ガポール法人であると仮定 ①現行法 : 適用除外基準を充足する ⇒会社単位の合算課税なし、かつ、 ⇒(持分割合が10%以上である場 合)S2社からの配当も部分合算課 税なし ⇒(持分割合が10%未満である場 合)S2社からの配当は部分合算課 税あり ②改正法 : 経済活動基準を充足する ⇒会社単位の合算課税なし、かつ、 ⇒S2社からの配当は部分合算課 税あり(持分割合が25%未満であ るため) 日本 シンガポール X国 100% <25% 図表10:適用除外基準(経済活動基準)を満たすシンガポール法人経由間接投資ストラクチャーへの影響PwC Japanグループは、日本におけるPwCグローバルネットワークのメンバーファームおよびそれらの関連会社(PwCあらた有限責任監査法人、PwC京都監 査法人、PwCコンサルティング合同会社、PwCアドバイザリー合同会社、PwC税理士法人、PwC弁護士法人を含む)の総称です。各法人は独立して事業を 行い、相互に連携をとりながら、監査およびアシュアランス、コンサルティング、ディールアドバイザリー、税務、法務のサービスをクライアントに提供してい ます。
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