新規オピオイド製剤の創製と臨床開発
(新規
μ/δオピオイド二量体化受容体特異的アゴニストの開発、薬剤耐
性を起こさないオピオイド製剤の独自手法による新薬開発、シーズ展
開)
研究代表者: 先端医療開発センター 支持療法開発分野 分野長 上園 保仁 共同研究者: 研究所 がん患者病態生理研究分野 研究員 宮野 加奈子 北里大学 薬学部 生命薬化学研究室 教授 藤井 秀明医療用麻薬とオピオイド受容体
現在、日本で使用できる医療用麻薬はモルヒネ、フェンタニル、オキシコドン、メサドン、 タペンタドールであり、鎮痛耐性および副作用出現の際に他の医療用麻薬に切り替える オピオイド・スイッチングが推奨されている。 医療用麻薬はGPCRであるμ、δ、κオピオイド受容体(MOR、DOR、KOR)のサブ タイプのうち、主にMORを介して鎮痛作用を発揮する。 現在のオピオイド製剤は長期使用では副作用・耐性が必発であり、耐性や副作用を 起こしにくい医療用麻薬が求められている。 オピオイド・スイッチング 各種医療用麻薬ごとに副作用の発生が異なる。 (がん緩和ケアに関するマニュアル 厚生労働省・日本医師会) 医療用麻薬(モルヒネ等)はMOR、DOR、KORにも 作用し、鎮痛を引き起こすことがわかってきた。 ・ ひとつのオピオイド製剤がさまざまな細胞内シグナルを 引き起こす。 モルヒネ フェンタニル オキシコドン タペンタ ドール メサドン単量体GPCRを刺激しても細胞内シグナルは多彩である
- 各リガンドごとに細胞内シグナルが異なる—Biased Ligand —
Biased Ligand説に加え、異なるGPCRが二量体となる
二量体化
GPCRが創薬ターゲットとして注目される
G-protein-dependent signalling Desensitization G-protein-independent signalling Endocytosis Ligand 3 Ligand 2 Ligand 1 G-protein-dependent signalling Endocytosis G-protein-dependent signalling G-protein-independent signalling Endocytosis (b) (a)二量体化GPCRが新たに引き起こす細胞反応
-細胞は二量体化GPCRを通してさらに細かく調節される-細胞反応 受容体が量体化する事により獲得された特性 リガンド認識の特異性 ・リガンド結合親和性の変化 ・二量体化受容体のみに結合する新たなリガンドの存在 受容体活性化 ・互いの結合部位にリガンドが結合することによる 細胞シグナル活性化の違い シグナルトランスダション ・二量体化受容体のみが特異的に活性化される新たな シグナル機構 トラフィッキング (細胞内受容体リサイクリング) ・細胞膜への多様な受容体発現様式 ・異なる受容体インターナリゼーション/リサイクリング機構Current Opinion in Pharmacology 2010, 10:53-58.
新規受容体作動活性測定法:CellKey™ systemの原理
底部に電極を取り付けた専用プレートを使用し、その上に細胞を培養して電極間の 電気抵抗(impedance)を測定する。この impedance は以下の影響を受け、 共役するG蛋白質により異なるimpedanceの変化が検出される。 ①細胞間相互作用、②細胞接着性、③細胞形態、④細胞容積 vehicleに対する各 濃度における imepdance変化の 割合を定量 Time (s) Im pe da nc e (Δ Z ) 500 1000 1500 2000 -50 0 50 100 150 vehicle 10 pM 100 pM 1 nM 10 nM 100 nM 1 uM [ SNC80 ] injection -14 -12 -10 -8 -6 -4 -2 0 100 200 300 400 500 600 Log [ SNC80 ] (M) % o f ve hi cl e EC50:44 nM Electrode Electrode Electrode Electrode Well Plate ElectrodeCellKey™ 96-well microplate
Fig. 5. Principles of the CellKey™ system
T7-DOR細胞 濃度曲線
Plate Well Electrode
CellKey™ 96-well microplate
ラベルフリーアッセイ
簡便&ハイスループット
(薬物処置の自動化・
96 well plate assay)
リアルタイムで測定可能
新規GPCR作動活性測定法
CellKey™ systemによる受容体活性評価
-14 -12 -10 -8 -6 -4 -2 100 200 300 400 500 600 Log[Agonist] (M) % o f c on tro l ( M a x-M in ) ( oh m s) SNC80 morphine fentanyl oxycodone Bottom Top LogEC50 SNC80 134.5 499.8 -7.354 morphine 95.18 268.2 -5.951 fentanyl 90.31 237.5 -6.748 oxycodone 60.11 ~ 11775 ~ 4.921 -14 -12 -10 -8 -6 -4 -2 0 100 200 300 400 500 600 700 800 Log[Agonist] (M) % o f c on tro l(M a x-M in ) ( oh m s) morphine fentanyl oxycodone Bottom Top LogEC50 DAMGO 119.8 425.9 -8.482 morphine 126.2 539.4 -7.346 fentanyl 139.9 529.2 -8.822 oxycodone 124.6 524.3 -6.914 DAMGO MOR DOR OR選択的アゴニスト:DAMGO dOR選択的アゴニスト:SNC80 kOR選択的アゴニスト:(-)-U50488H KOR -14 -12 -10 -8 -6 -4 -2 0 100 200 300 400 500 600 Log[Agonist](M) % o f c on tro l ( M ax -M in ) ( o hm s) U50488H morphine fentanyl oxycodone Bottom Top LogEC50 U50488H 115.5 531.8 -7.962 morphine 68.47 329.1 -6.037 fentanyl 76.02 242.6 -5.706 oxycodone 75.26 142.1 -5.224μ/δ二量体化受容体が
新たな創薬ターゲットとして注目されている
μ/δ二量体特異的リガンドの
開発が求められている
μOR、δOR単量体とは別のシグナルを介するμ/δ二量体受容体は、
オピオイド(モルヒネ)による耐性および便秘を引き起こしにくい
本研究に着目した経緯
1. 構築したμ/δスクリーニング系でMolecular Libraries Probe Production
Centers Networksの有する335,461種をスクリーニングした結果、μ/δ
specific agonist
CYM51010
が見出された。
2.
CYM51010
は細胞アッセイ系において
μOR、δOR(単量体)の両者に
親和性を示し、かつ
μ/δORに2〜2.2倍程度の高親和性を示した。
3.
CYM51010
はモルヒネと同等の鎮痛特性を有していた(
in vivoモデル
動物)。
4. モルヒネ連投により作製したモルヒネ耐性マウスに
CYM51010
を投与
すると、モルヒネの効かない耐性マウスでも鎮痛効果を示した。
5.
μ/δ-biased ligand CYM51010
はモルヒネ等と異なり、副作用を起こし
にくい、新しいタイプの鎮痛薬である。
by Gomes I, et al. Identification of a μ-δ opioid receptor heteromer-biased agonist with antinociceptive activity. Proc Natl Acad Sci USA, 110: 12072-7, 2013.
μ/δヘテロダイマー安定発現細胞株の作製
下記ベクターをHEK293細胞にco-transfectionし、G418で薬剤セレクションを行い作製した。
HaloTag融合MOR発現ベクター + T7-tag融合DOR発現ベクター
作製方法
1) HaloTag Ligand、Tag抗体を用いた蛍光画像による細胞膜上の発現確認 2) CellKey™ systemを用いた各受容体の機能性確認発現確認方法
Halo T7 MOR DOR染色結果
T7抗体 HaloTag AF488 Ligand marge HEK293 T7-DOR発現 HEK293 T7-DOR+HaloTag-MOR 発現HEK293 #28 T7-DOR+HaloTag-MOR 発現HEK293 #32CellKey™ systemを用いた各受容体の機能性確認
<用いた細胞>HEK293細胞・・・negative control
HaloTag融合MOR安定発現HEK293細胞・・・MOR単独発現細胞 T7-tag融合DOR安定発現HEK293細胞・・・DOR単独発現細胞
HaloTag融合MOR+T7-tag融合DOR安定発現HEK293細胞 #32
①Halo-MOR/T7-DOR
(#32) ・・・MOR, DOR共発現細胞 MORとDORが共発現している安定発現細胞を作製 0 200 400 600 800 % o f c on tro l(M ax -M in )( oh m s) SNC80 1nM SNC80 100nM Halo-MOR T7--DOR HEK293 #32 vehicle DAMGO 10nM 0 200 400 600 800 % o f c on tro l(M ax -M in )( oh m s) SNC80 1nM SNC80 100nM Halo-MOR T7--DOR HEK293 vehicle DAMGO 10nM
CellKey™ systemを用いた
CYM51010
のMOR及びDORに対する活性
SNC80..... DORに選択的な作動薬
DAMGO.... SNC80程の受容体選択性はないが、MORに選択的な作動薬
CYM51010...MOR、DOR両者間でのEC50は同等、Emaxは各受容体選択的作動薬と同等
MOR DAMGO SNC80 ML335 EC50(nM) 13.2 92.6 392.5 DOR DAMGO SNC80 ML335 EC50(nM) 1178 7.3 707.8 (nM)に換算すると (nM)に換算すると FLAG-MOR -12 -10 -8 -6 -4 0 200 400 600 800 1000 1200 % o f c o nt ro l(M ax -M in )( oh m s) Log[Agonist](M) DAMGO SNC80 ML335 LogEC50 DAMGO -7.880 SNC80 -7.033 ML335 -6.406 Halo-DOR -12 -10 -8 -6 -4 0 100 200 300 400 500 600 700 Log[Agonist](M) % o f c on tr o l(M a x-M in )( oh m s) DAMGO SNC80 ML335 LogEC50 DAMGO -5.929 SNC80 -8.135 ML335 -6.150 実験日:2014-10-17-001(MOR)、003(DOR) CYM51010 CYM51010 DAMGO SNC80 CYM51010 LogEC50 -7.880 -7.033 -6.406
MOR DAMGO SNC80 CYM51010
EC50(nM) 13.2 92.6 392.5 DAMGO SNC80 CYM51010 LogEC50 -5.929 -8.135 -6.150 DAMGO SNC80 CYM51010 EC50(nM) 1178 7.3 707.8
MOR、DORに反応する
FLAG-MOR Halo-DORHalo-MOR/T7-DOR発現細胞を用いたCellKey
TMassay
Halo-MOR/T7-DOR #32 Log[Agonist](M) -14 -12 -10 -8 -6 -4 0 200 400 600 800 DAMGO SNC80 ML335 Bottom Top LogEC50 DAMGO 92.98 516.6 -7.610 SNC80 86.45 630.4 -7.642 ML335 49.23 580.2 -5.885 Halo-MOR/T7-DOR #32 DAMGO SNC80 CYM51010 DAMGO SNC80 CYM51010 Bottom 92.98 86.45 49.23 Top 516.6 630.4 580.2 LogEC50 -7.610 -7.642 -5.885 T7-DOR+HaloTag-MOR 発現HEK293 #32 CYM51010は μ/δに高い親和性を 有するわけではない CYM51010は μ/δ、μ、δ受容体 アゴニストである私たちが同定したSYK775の開発において
魅力となる点、およびAdvantageとなるポイント
1.
μ/δ 二量体specificであり、μ、δ単量体およびκ単量体にはno-effectである。
2. Sci. Finderで構造検索するもヒット0。—
全く新しい化合物
3. Sci. FinderでPatent検索するもヒット0。—
物質特許取得の可能性あり
4. 創薬ネットワーク(AMED)への提案として魅力的な案件。
5. 疼痛関連製薬企業と別案件で、同アッセイ系を用いた
新型オピオイド鎮痛剤
の共同開発
を平成
29年度より行っている。
したがって創薬ネットワークを介さずとも同社への直接導出も可能か?
SYK775は
μ-δOR δOR μOR κOR
化合物μ-δOR活性順位 % of ML335 % of SNC80 % of DAMGO % of U-50488