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保育実践における気付きと子ども理解の変容との関係についての一考察(要旨のみ)

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Academic year: 2021

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2019年度修士論文要旨 ─ 225 ─ 2019年度 桜花学園大学大学院人間文化研究科人間科学専攻修士論文要約

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人間文化研究科人間科学専攻 51117001

 田中弘美

 本研究の目的は、保育者の気付きと子ども理解の変容との関係を明らかにすることである。 そのために、課題追求型の気付きであるポジティブな感情語の「楽しさ」を使って、保育者が どのように子どもを捉え理解しているかを探った。そして保育者の振り返りの中で気付きの契 機の存在が、保育者が㧝人で振り返るときに有効に働き、気付きを広げたり深めたりすること に繋がり、子ども理解をも深めるという仮説を立て検討した。研究対象者は、経験年数を統一 するため入職㧝年目の㧠人の保育者とした。この保育者達が、出会った子ども達との園生活の 中でどのように子ども理解を育むかということに焦点を当て、日週案記録簿㧝年間分(39週 ą㧠名分)を多角的に分析した。分析㧝では記録簿からポジティブな感情語を抽出した。その 結果、11種類602語を抽出した。この11種類は、菅原ら(2018)が分類したポジジティブの感 情語(130)の8.5%に当たる。11種類の中で出現頻度は、「楽しい(楽しそう・楽しんでいた の語も含む)」が42.9%、「嬉しい(嬉しそうの語も含む)」が33.6%であり、㧞語を合わせると、 選出した総数(602回)の76.5%を示した。他の㧥種類の語は10.0%以下であった。これらの 結果から、研究対象者が限られた言葉で自身の感情や子どもを理解しているということが判明 した。言い換えると限られた言葉でしか理解できないため、研究対象者の子ども理解が漠然と した捉えになってしまっていたと推察した。  分析㧞から㧡では、分析㧝で抽出したポジティブな感情語の中で「楽しい」に分類された記 述に注目した。新任保育者が、捉えた子どもの「楽しさ」に注目し、何を以て「楽しい」と捉 えて記述したかを振り返るとき、そこに気付きの契機があれば振り返りやすく、気付きが深まっ たり広がったりして子ども理解に反映されると考えた。そこで保育者が「楽しい」と記述する ときに、何を以て「楽しい」と理解したのかを判断する基準として、岸井(1990)の「子ども の『楽しさ』10項目」を用いた。分析㧞では、この判断基準に当てはめた結果514項目を分類 できた。高頻出の内容は「自発・主体性の発揮」30.0%であり、その他の内容は15.0%以下であっ た。保育者ごとの結果も同様であった。分析㧟では、分類の信頼性を担保するため、筆者以外 の㧞名の保育者に分析を依頼した。集計は、筆者が㧝事例ごとに、㧟名一致項目(㧝事例中㧟 名が一致した項目)、不一致、未記入(10項目に該当しなかった項目)で分類した。分析㧠では、 分析㧟で明らかになった分析対象資料168項目を期別・月別・項目別・行事前後で分析し、保 育者の「楽しい」という捉え方を明らかにした。園の㧝年の生活を㧟つに区切り、内容と出現 回数を分析した。結果は㧝期(㧠∼㧣月)が54.6%、㧞期(㧥∼12月)が30.5%、㧟期(㧝∼

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─ 226 ─ 桜花学園大学保育学部研究紀要 第21号 2020 㧟月)㧝が4.9%であった。保育者別で見ても、㧭・㧯・㧰保育者は㧝期、㧮保育者は㧞期が 多く、それぞれの総数の47%以上であった。月別で見ても㧝位が㧢月、㧞位が㧡月、㧟位が 㧠月で、㧝期に出現回数が多かった。項目別の結果は、「自発・主体性の発揮」が23.8%と「創 造」が20.2%、他の内容は15.0%以下であった。運動会・作品展・発表会の行事前後の分析では、 直接確率計算から、運動会は両側検定で、発表会は片側検定で有意差が認められた。行事によっ て、また行事前後によって 「 楽しい 」 の内容や出現回数が異なるのは、行事が保護者から評価 を受ける場であることが大きな要因であると考えた。分析㧡では、保育者別、入職時・㧝年経 験後、および月別に捉え方の変容の分析を行なった。㧯と㧰保育者は、㧝年経験後の記述が書 けていない日が週㧞回以上あり、比較対象外とし、㧭と㧮保育者で分析を行った。結果は㧭と 㧮保育者とも入職時より、㧝年経験後の方が内容と出現回数共に減少した。しかし、㧭保育者 は入職時より㧝年経験後に新しく㧟つ内容が増え、㧮保育者は、入職時より㧝年経験後に出現 回数が㧝回増えていた。  これらの分析結果から明らかになったことは、次の㧟点である。㧝つ目は入職㧝年目の保育 者は、子どもの情報を積み重ねて把握するのでなく、目の前の子どもが心地よく過ごせている かという観点から姿を捉え、子どもを理解しようとしていた。㧞つ目は㧝年経験後の記述が、 漠然から具体的な背景へ、集団から個別的な捉えに変容していた。㧟つ目は「楽しい」という 捉えが保育者によって「楽しい」という内容は異なり、それぞれ保育スタイルによって気付き の出現回数が異なったことである。気付きが子ども理解に繋がる事例として、子どもの言葉か ら自身の保育を振り返ることにつながった事例が㧝例みられた。  本研究結果からは、一人で保育を振り返る時に気付きの契機の存在が新しい気付きや視点に 繋がり、それが子ども理解の深化に繋がるという仮説を立証するまでには至らなかった。しか し、記述の変化の乏しさや他者が読み取れなかった49事例からも、㧝人で客観的に保育を振 り返る時、子ども理解の深化を試みるためには、気付きの契機が必要であると考える。  子ども理解の変容と、課題追求型の気付きの有効性を立証できなかったが、その要因として は研究対象者の属性と研究内容を途中から一部変更したこと、および研究期間の短さが考えら れた。入職㧝年目保育者は、日々発生する問題を解決することで手一杯であり、気付きの契機 を理解し、それを振り返りに活用できるようになるにはもう少し時間や先輩保育者、園長など が振り返りを具体的かつ丁寧に伝えることが必要であると感じた。研究の課題の㧝つ目は、契 機の存在の有効性の有無を保育経験者で確認することと、㧞つ目は、「楽しさ」の10項目を、 一人で振り返る契機として有効に機能させるため、先輩保育者、園長など支援の在り方を検討 することである。㧟つ目それぞれの保育者の保育スタイルと子どもの理解の深化の関連性の検 証することである。

参照

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