• 検索結果がありません。

「印刷をめぐる言説」 : 印刷技術の発明と表現

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "「印刷をめぐる言説」 : 印刷技術の発明と表現"

Copied!
25
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

「 印 刷 を め ぐ る 言 説 」

T h e S t a t e m e n t I n v o l v i n g P r i n t i n g

印刷 技 術 の発 明 と表 現

I n v e n tio n a n d E x p r e s s i o n o f P r i n t i n g T e c h n o l o g y

鈴木敏春

T o sh ih aru S u z u k i

第1 章

印 刷 は ど こ へ 行 くの か 。

はじ め に 印 刷 の 仕 事 に 関 わ り あ っ て 3 0 年 以 上 に も な る が 、 あ まり 「 印 刷 」 そ の も の を 真 剣 に 考 え る 機 会 も な く 過 ご し て来 た 。 そ れ は、 つ ね に生 活 の 中 に 「印 刷 」 が 有 り触 れ てあ り、デ ザ イ ンや 使 用 す る紙 、納 期 、価 格 の事 や らで 、 毎日 が 忙 し く翻 弄 さ れ 続 け て い た か ら で も あ る 。 9 0 年 代 か らデ ジ タ ル化 が 進 み 、 印 刷 自体 が 消 え て し まう 様 な こ と が 言 わ れ る 時 代 に な っ て 来 た 。 だ が 果 た し てそ う な の だ ろ う か 。 偶 々 、 1 0 年 程 前 か ら 大 学 で 印 刷 実技 と理 論 を教 え る 機 会 を 得 、 こ の 事 が 『印 刷 』 に つ い て考 え る き っ か け と な っ た 。 ま た 、 こ の 機 会 に 幾 つ か の 論考 を 試 み て い る 。 こ れ は そ の ま と め で あ る 。 印刷 と は何 か 「印 刷 とは 何 か 」 と聞 か れ て 、 果 た して何 と答 え が 返 って 来 る だ ろ う か 。 紙 に 刷 ら れ た も の と い う 答 え も あ ろ う。 情 報 を 伝 え る 役 割 と し て の 回 答 も あ る 。 印 刷 物 ほ ど 生活 の 中 で 日 常 化 し て い る も の は な い 。 朝 起 き て 手 に す る新 聞 、 折 り込 ま れ て い る チ ラ シ 。 予 定 を 見 る カ レ ン ダ ーや 手 帳 。 出 勤・通 学 時 に見 る車 内 広 告 を 始 め 、 単 に 乗 れば 計 器 盤 や サ イ ド ボ ー ド の 木 目 や ガ ラ ス の く も り 止 め、 道 路 に は 交 通 標 識 、 街 角 に は サ イ ン看 板 、 学 校 で 使 う本 や ノ ー ト、 携 帯 電 話 の ロ ゴ 、 昼 食 事 時 の メ ニ ュ ー 、 自販 機 で 買 っ て 飲 む コー ヒー 缶 、 仕 事 で 使 う コ ピ ー 機 、 仕事 帰 りに 一杯 飲 む ビー ル 瓶 。 寝 る 前 に磨 く歯 磨 きの チ ュー ブ 。 水 と 空 気 以 外 な ら布 や 金 属 な ど ほ と ん ど の も の に印 刷 で き る 。 私 た ち は 印 刷 物 に 囲 ま れ て 生 活 し て い る と い っ て も 過 言 で は な い 。 だ か ら 印 刷 が 無 く な る と 言 う のは 大 き な 間 違 い だ ろ う 。 確 か に 情 報 メ デ ィ ア と し て の 印刷 の 役 割 は デ ジ タ ル 化 に よ り減 少 し た か に 見 え る 。 そ れも こ こ 1 0 年 程 の 出 来 事 に し か 過 ぎ な い 。 だ が デ ジ タ ル化 に 伴 っ て 印 刷 に付 き物 の 紙 の 需 要 は拡 大 し て い る 。 それ はパ ソ コ ン の解 説 書 が 売 れ て い て 、 デ ジ タ ル化 され た事 で 逆 に 、 ハ ウ ツ ー 本 の 発 行 部 数 は伸 び続 け て い る 。 皮肉 な話 で あ る。 私 が 印 刷 の 仕 事 につ い た の は、 19 7 0 年 代 始 め の 頃 で 、 最初 、 平 版 印 刷 会 社 の デ ザ イ ン室 に 入 っ た 。 デ ザ イ ン と いっ て も 図 案 室 と 当 時 は 言 っ て い た 。「 図 案 」 も 「 図 鞍 」 と書 く時 代 の す ぐ後 で あ る 。デ ジ タ ル な ど程 遠 い 時 代 で 、 烏口 と溝 引 きの 全 盛 時 代 で あ る。 先 輩 の デ ザ イ ナ ー は烏 口を 引 く の に 5 年 は 掛 か る な ど と 、自慢 げ に 話 し て い た 。 当時 は ロ ッ ト リ ン グ と い う ペ ン が 流 行 り だ し た 頃 で 、 バ カバ カ し く な り 、 そ こ は 直 ぐ 退 職 。 そ の 後 、 孔 版 印 刷 (シ ル ク ス ク リ ー ン 印 刷 ) の 会 社 に 入 っ た 。 シ ル ク ス ク リ ー ン 印 刷 は デ ィ ス プ レ イ な ど の 展 示 用 に 活 躍 し 、 大 阪 万博 な ど の 好 景 気 に 支 え られ 、 飛 躍 的 に延 び た 印刷 方 法 であ っ た 。 ま た 当 時 は ポ ス タ ー な ど に も よ く 使 わ れ た 。 だが 、 6 0 年 代 に は 平 版 印 刷 (オ フ セ ッ ト印 刷 ) が 主 流 にな り、 私 が そ の後 、 働 い て い た 製 版 会 社 に も中 部 地 区 で始 め て ダ イ レ ク トス キ ャ ナ (写 真 分 解 の 機 械 ) と い う もの が 導 入 され た 。 そ れ以 前 は製 版 カ メ ラで 撮 影 した 原 あか 稿を 、 フ イ ル ム に 四 枚 、 4 色 、 M (M a g e n ta = 紅 )、 C ( C y a n = 藍 )、 Y (Y e llo w = 黄 )、 B (B la c k = 墨 ・ K B K B L と も 表 記 ) に 分 け て 現 像 し 、 マ ゼ ン ダ 、 シ ア ン 、 イエ ロ ー 、 ブ ラ ッ ク の 頭 文 字 を 取 り 、 M C Y B と 表 記 す る。 そ の フ イ ル ム の 網 点 を 「 レ タ ッ チ 」 と い う 職 種 の 職 人が 減 力 液 で 洗 い流 し て微 調 整 して ポ ジ又 は 写 真 の フ イ (  ̄ ルム に し て い た 。 ダ イ レ ク トス キ ャ ナ が 導 入 さ れ て 、 写 真の微 妙 な 調 節 は ス キ ャ ナ で こ な す 様 に な っ た が 、 そ れ 以外 の 仕 事 、 背 景 の色 付 け 、 白抜 き文 字 、 色 網 掛 け 、 切 り抜 き な ど の 作 業 は 依 然 と し て レ タ ッ チ と い う 職 種 に 頼 らね ば な らな か っ た 。 写 真 原 稿 以 外 の 部 分 の 色 分 け 作 業 を行 う の で あ る 。 こ の ほ と ん ど 手 作 業 と 言 っ て も い い 仕 事は 、 県 の技 術 指 導 で 認 定 試 験 ま で あ り、 毎 年 、 春 に な ると この 試 験 の た め の 特 別 研 修 会 まで 開 か れ て い た 。 こ のレ タ ッ チ の 工 程 を 経 て 、 四 色 に 分 解 さ れ た フ イ ル ム を 四版 の ポ ジ フ ィ ル ム に し て P S 版 に焼 き付 け 、 校 正 機 で 色刷 り (校 正 刷 り) を 行 う 。 こ れ が 初 稿 で あ る 。 今 の イ

(2)

ラス ト レ 一 夕 ー の ソ フ トが 実 は 、 こ の レ タ ッ チ を 行 う作 業を基 本 に して作 ら れ て い る。 ■4 版方 式/印刷 術の説 明 一 般 的 に い っ て 印 刷 は 大 き く 4 つ に分 か れ る 。① 凸 版 印刷 ② 凹 版 印 刷 ③ 平 版 印刷 ④ 孔 版 印 刷 で あ る。 た だ 、 近 代印 刷 と して 括 る場 合 、 量 産 性 、 高 品 質 、 生 産 価 格 の 点 で凸 版 印刷 、 凹版 印 刷 、 平 版 印 刷 の 3 つ を指 して 「三 版 方式 」 と言 う場 合 が あ る が 、 筆 者 は印 刷 文 化 論 と し て三 版方 式 は い さ さ か 欠 落 して い る と考 え る 。 そ れ は④ 孔 版 印刷 が た ど っ て 来 た 道 が 現 在 に至 る ま で 連 綿 と続 い て い るか ら に 他 な ら な い 。 ( 丑凸 版 印刷 版 の 凸 部 に イ ン ク を盛 って 印 刷 す る凸 版 印 刷 は 、 そ の ′ ﹀ 凸 版 ︵ 直 刷 り 方 式 ︶ 画線部 画 線部 画 練 部 く凸状 )

「 ㌧−

¶⊥

」−

頼名 が 示 す よ う に 、 画 像 部 (印刷 さ れ る 文 字 や 絵 の 部 分 ) が 凸状 に な っ て い る 。 し か も 印 鑑 の よ う に 、 文 字 も写 真 も左 右 逆 像 に 作 ら れ て い る 。 凸版 を使 っ た 印 刷 は、 版 に イ ン ク を つ け 、 紙 な ど に 直 接 押 し 当 て る 方 式 が 一般 的 で 、 版 に作 られ た左 右 逆 転 の 文 字 や 写 真 は 、 印 刷 され た 段 階 で 反 転 し、 正 像 に な る 。 こ の版 式 が 他 の 版 式 より遥 か 昔 に 発 明 さ れ 、 し か も 現 在 ま で 絶 え る 事 な く引 き継 が れ て い る 理 由 の 一 つ は 、 原 理 と し て も 分 か り易 い こと で あ る 。 そ れ は 「ハ ン コ を 押 す 」 の と 同 じ や り方 で 、 多くの 複 製 印 刷 物 を作 る方 法 で あ る か らで 、 活 版 印 刷 の 別名 を持 つ (M o v in g typeの翻訳)。 ②凹 版 印 刷 イ ン ク を版 の 凹 部 に た め て 印 刷 す る凹 版 印 刷 凸 版 と は 反 対 に 、 画 線 部 を 凹 状 に した の が 凹 版 印 刷 。 印刷 は 版 全 体 に イ ン ク を つ け た 後 、 ド ク タ ー と 呼 ば れ る 薄い 鋼 鉄 刃 で こ す っ て 余 分 な イ ン ク を 掻 き 落 と し 、 窪 み に残 っ た イ ン ク を 印 刷 素 材 に 移 す た め 、版 は逆 像 に な る 。 普通 、 凹版 と言 え ば 写 真 製 版 の 技 術 を使 わ な い 「彫 刻 凹 版」 を指 し、 紙 幣 や 証 券 な ど限 られ た 用 途 に使 わ れ て い る。 こ れ に は 腐 食 に よ る 「 食 刻 凹 版 」 と 、 彫 刻 に よ る 「 直 刻 凹 版 」 が あ る。 こ れ に 対 し 、 一 般 に よ く使 わ れ て い る の が グ ラ ビ ア

8 8

画綾部 画凍 部 面線 部(凹 状) 、版 印刷 業村 イン ク ドクタ ー インク 皿 (正 式 に は フ ォ ト グ ラ ビ ア )で あ る 。 写真 の 再 現 に は 連 続調 の ポ ジ フ ィ ル ムを使 い 、 版 全 体 を 小 さ な マ ス で 区 切っ た 上 で 、 明 る い部 分 は セ ル ( イ ン ク が 溜 ま る 凹 点) を 浅 く 、 暗 い 部 分 は 深 く 製 版 す る 。 そ れ に よ っ て 、 セル の 大 き さ は 一 定 で も 凹 部 に つ ま る イ ン ク の 量 に よ っ て階 調 が 表 現 で き る。 しか し、 一 度 版 を作 っ た 後 は修 正 がで き な い と い う 難 点 が あ る 。 そ の 欠 点 を 改 め 、 さ ら に 印刷 表 現 を 高 め る べ く 開 発 さ れ た の が 、 網 点 フ イ ル ム を 併用 す る 方 法 で 、 綱 点 フ イ ル ム か ら起  ̄こ し た 平 版 ( オ フ セッ ト) で 校 正 刷 り を 行 な い 、 フ イ ル ム 上 で 修 正 を 行 な った 後 、 グ ラ ビア 用 の版 を作 っ て 本 番 印 刷 を行 な う。 現 在は 、 グ ラ ビ ア と 言 え ば こ の 綱 点 を 併 用 し た グ ラ ビ ア を 指す 。 別 名 グ ラ ビ ア 印 刷 。 一 般 的 に 凹 版 と は ど う い う も のか と い え ば 、 そ れ は 銅 版 画 あ る い は エ ッ チ ン グ と い え ば通 りが 良 い 。 ( 釘平 版 印刷 表 面 は 平 で 水 と油 の 反 発 を利 用 す る平 版 印 刷 ミ ク ロ ン単 位 の 僅 か な 凹 凸 を つ け た平 凹 版 や 平 凸 版 を 含め 、 基 本 的 に平 版 の 表 面 は平 らで あ る 。 こ の 印 刷 方 法 は、 炭 酸 カル シ ウ ムが 主 成 分 の石 を使 っ た 石 版 印 刷 が 始 画琴部 平 版 ︵ オ フ セ ッ ト 印 刷 方 式 ︶ 画綾部 画 綾部(親油 性 )

非画線 部

非画 綾部(親 水 性) イン クロ ー ラ ー 水 インク

〆二

「 一ヽ 版 リ

L 豊望 ニ

イモク こ:ニ:ニ:ニ : イー ■ 州インク 、水 芝‡㌶ =====卦 印刷 素材 ま りで 、 画 線 部 を 親油性、 非画線 部 を親 水 性 に し、 版 を水 で 湿 らせ て か ら 油 性 の イ ン ク を 付け る と、 画 線 部 だけ に イ ン ク が 付 く。 水 と抽 が 反 発 する性 質 を利 用 し てい る。 昭和 初 期 まで ア ル バ ム や 複 製 絵 画 、 高 級 美 術 印 刷な ど に 使 わ れ た コ ロ タ イ プ も平 版 印 刷 の 一 種 。 コ ロ タ イプ は ゼ ラ チ ン を 使 っ た 感 光 液 を ガ ラ ス に 塗 り 、 図 版 の 連続 調 ネ ガ を 焼 き付 け て 出 来 た ゼ ラ チ ン の し わ に イ ン ク を着 け て 印 刷 す る も の 。 版 に 耐 久 性 が な く多 く の 印 刷 が 不可 能 な た め 姿 を 消 した 。 現 在 は 、 ア ル ミ を使 っ た 金 属 平版 、 P S 版 が 主 流 。 ま た 、 油 性 イ ンク が 付 着 し な い シ

(3)

「 印 刷 を め ぐ る 言 説 」 印 刷 技 術 の 発 明 と表 現 リ コ ン ゴ ム を 非 画 線 部 に 使 い 、 湿 し 水 な し で 印 刷 す る 「 水 な し平 版 」 もあ る 。 平 版 を 使 っ た 印 刷 は ほ と ん どブ ラ ン ケ ッ トに 転 写 す る オ フ セ ッ ト (o ffse t) 方 式 で あ る 事か ら別 名 「 オ フ セ ッ ト印 刷 」 と 呼 ば れ る 。 オ フ セ ッ ト印 刷は 、 版 に つ け た 印 刷 イ ン ク を 一 度 ブ ラ ン ケ ッ ト に 転 写 し て か ら、 紙 な ど に 印刷 す る 方 式 の た め 、 使 用 す る版 は 左右 逆 像 で は な く正 像 に な る 。 そ の た め 間違 い も少 な い ④孔版 印刷 版 に イ ン ク を 通 して 印 刷 す る 孔 版 印刷 は、 枠 に絹 や テ ′ .才 孔 版 ︵ 直 刷 り 方 式 ︶ 画繰 部 ク ン ー ︻ イ ↑ 画 線 1 部 画緑部 スキ ー ジ −} ト w 〝版 鳩叫素 材 〉W 版 ト ロ ン な ど の ス ク リー ン を 張 り 、 乳 剤、 樹 脂 な どで 布 面を ブ ロ ッ ク し 、 イン ク を 通 さ な い よう に す る 。 画 線 部だ け が イ ン ク を 通し、 印 刷 素 材 に 写る 。 印庄 はス キ ージ と い う ゴ ム ヘ ラ で 押 し 付 け る 。版 は 正 像 に 作 ら れ る 。 現在 使 わ れ て い る も の で は 、 シ ル ク ス ク リ、− ン 印 刷 が 代 表的 な も の で 、 先 端 技 術 の IC チ ッ プ の 回 路 な ど も シ ル クス ク リ ー ン 印 刷 に な る 。 た だ し ス ク リ ー ン の 部 分 は ス テン レ ス を 使 用 。 ま た 、 7 0 年 代 ま で は 「 ガ リ 版 印 刷 」 と呼 ば れ た 「 謄 写 版 印 刷 」 が 大 活 躍 し た 。 8 0 年 代 に 家 庭な ど で 流 行 っ た 年 賀 状 印 刷 「 プ リ ン ト ゴ ッ コ 」 も孔 版 の原 理 を 応 用 し た も の で あ る 。 ま た 事 務 機 と し て 多 くの 支持 を 得 て い る 理 想 科 学 の リ ソ グ ラ フ も孔 版 印 刷 で あ る。

第2 章

凸 版 印刷 (活 版 印刷 )

■凸 版 印 刷 の 歴 史 最 近 は 印 刷 の 事 を 知 ら な い 『 デ ザ イ ナ ー 』 と い う の が 大き な 顔 を し て い る 。 パ ソ コ ン の モ ニ タ ー の 画 面 で 作 ら れた も の を カ ラ ー プ リ ン タ ー で 出 力 す る 。 出 力 し た ペ ー パー を 「 印 刷 」 と 宣 う 。学 校 で は 印 刷 を 教 え な く な っ た 。 印刷 現 場 で 覚 え れ ば 良 い と い う 考 え も あ ろ う が 、 キ ー ボ ードか ら 打 ち 出 さ れ る 活 字 一 つ と っ て も 物 に は 歴 史 が あ り、 そ れ を 作 り 上 げ た 人 々 の 心 が あ る 。 活 字 の 特 質 は 、 自 由 な 組 み換 えが 可 能 で、 同 じ字 形 を 無限 に 生 産 す る こ と が で き る 点 。 そ う で あ る と す れ ば 、 今日 の デ ジ タ ル フ ォ ン ト も「活 字 」 と 言 う こ と が で き る 。 そして 、 間 違 い な くそ の 原 点 に あ る の が 金 属 鋳 造 活 字 で ある。 鋳 造 活 字 を用 い た 近 代 印 刷 術 に よ っ て 、 さ ま ざ ま な印 刷 メ デ ィ ア が 生 み 出 さ れ 、そ れ は 社 会 を 大 き く変 え 、 文化 を 支 え て きた 。 活 字 の 特 質 や 歴 史 は ま た 、 近 代 社 会 の特 質 と み ご と に 重 な っ て い る よ う に も 思 え る 。 活 字 に よっ て も た ら さ れ た 恩 恵 を 我 々 は 忘 れ て い る 。 ま ず は 日本 の 活 版 印 刷 の歴 史 を振 り返 っ て 見 た い 。 グ ーテ ンペ ル グ の 「4 2 行 聖 書 」(14 5 5 年 頃 ) が 作 られ て か ら 15 0 年 前 後 に 日 本 で も 活 字 の 製 造 が 始 ま る 。 キ リ シ タ ン活 字 で あ る 。 だ が 本 格 的 な 活 字 が 作 られ 活 版 印刷 が 行 われ る の は 幕 末 か ら 明 治 に か け て で あ る 。 開 国 に よ り西 洋列 強 か ら身 を守 る た め 、 西 洋 で は 「聖 書 」 だ っ た も の が日本 で は 「辞 書 」 で あ っ た こ とに 我 が 国 の 活 版 印 刷 の 特長 を見 る 事 が 出 来 る。 駿 河 版 銅 製 活 字 は 国 内 で 最 初 に 造 られ た 銅 活 字 と言 わ れて い る が 、 日本 で 最 初 に鋳 造 され た金 属 活 字 は 、 キ リ シタ ン 版 用 に 鋳 造 さ れ た 鉛 活 字 で あ る が ( キ リ シ タ ン 活 字に つ い て は 印 刷 学 会 出 版 部 か ら研 究 書 が 出 て い る 。)、 次に現 れ た の が 、 駿 河 版 銅 製 活 字 だ b た 。 豊 臣 秀 吉 が 朝 鮮に 出 兵 した 翌 年 、 15 9 3 年 (文 禄 2 年 ) に 手 中 に した 李朝 銅 活 字 が 日本 に持 ち 帰 られ た 。 秀 吉 は こ れ を後 陽 成 天皇 に 献 上 し た 。 1 6 0 3 年 (慶 長 8 年 ) 徳 川 家 康 は 征 夷 大 将軍 とな り、 江 戸 幕 府 を樹 立 した 。 そ の 後 、 家 康 が この 李朝 銅 活 字 に 習 い 、 競 っ て遣 らせ た の が 駿 河 版 銅 製 活 字 に な る 。 こ れ は後 陽 成 天 皇 を 介 して の 秀 吉 ・ 秀 頼 と家 康 の活 字 に よ る 出 版 へ の 意 欲 と学 問 で の 優 位 を競 うた め の 政治 的 駆 け 引 き に利 用 さ れ た 。 こ れ で 印 刷 され た 『大 蔵 ぐんしょ ち よう 一覧 』 や 『群 書 治 安 』 な どは 江 戸 時 代 初 期 の 大 出 版 事 業 を生 み 出す 原 動 力 と な っ た 。『群 書 治 安 』 は 中 国 の 「唐 」 ▲駿 河版 銅製 活字 の時 代 の 治 世 に 関 す る もの を抜 粋 し編 集 した 書 物 。 当 時 の権 力 者 の 虚 勢 本 で あ る 。 駿 河 版 銅 製 活 字 は 1 6 0 7 年 ( 慶 長 12 年 ) 当 時 の 駿 府 、 現 在 の 静 岡 県 に 隠 居 した 徳 川 家康 が 林 道 春 と金 地 院 崇 伝 に 命 じて 遣 らせ た 金 属 活 字 で 総数 は 約 1 1 万 本 強 と推 定 さ れ る 。 木 製 の 種 字 か ら父 型

(4)

を と り、 銅 を 流 し 込 ん で 鋳 造 さ れ た 。 鋳 造 は 1 6 0 6 年 か ら1 6 16 年 に か け 、 3 度 に わ た っ て な さ れ た 。 活 字 の 鋳 造技 術 は 貨 幣 鋳 造 の そ れ と 共 通 して い る 。 家 康 の 没 後 (1 6 16 )、 火 災 に遭 っ て 焼 け た が 、 一 部 が 紀 州 徳 川 家 の 南葵 文 庫 に伝 え ら れ 、 昭 和 1 5 年 に 凸 版 印 刷 株 式 会 社 の 所有 と な っ た 。 現 在 、 銅 大 字 一 箱 8 6 6 個 、 銅 小 字 1 7 箱 3 万13 0 0 個 、木 活 字5 箱 5 ,8 1 3 個 、銅 罫線 8 8 個 、銅 輪 郭 18 個、 摺 板 2 面 が 保 存 さ れ て い る。 幕 府 は 家 康 の 死 後 、 継 承す る推 進 力 を失 い、 金 の 掛 か る 出版 事 業 か ら撤 退 す る が、 江 戸 文 化 や 町 人 文 化 の 中 で 出 版 事 業 は大 き く花 開 く こ と に な る 。 こ れ は 木 版 活 字 が 流 通 し て い た と い う 、 当 時の 社 会 的 な下 地 が あ っ た 事 実 、 木 版 活 字 だ け で な く彫 刻師 の活 躍 も あ り、 江 戸 時 代 に は 活 字 や 版 画 を売 買 す る 問屋 の 存 在 も あ っ た 。(木 版 や 浮 世 絵 に つ い て は本 論 か ら外 れ る の で 割 愛 す る) 主 な活 字 に は次 の もの が あ る。 ●江 戸 中期 国 産 欧 文 木 活 字 蘭 語 訳 選 オ ラ ンダ 将 来 欧 文 金 属 活 字 17 9 6 年 ●市 川 兼 恭 ・ 山 本 勘 右 衛 門 製 鋳 造 金 属 活 字 1 8 4 9 ∼ 5 8 年 (嘉 永 2 年 ∼ 安 政 5 年 ) オ ラ ン ダ語 教 科 書 ( レー ス ブ ッ ク ) ●三 代 木 村 嘉 平 製 蝋 型 電 胎 法 金 属 活 字 18 5 4 ∼ 6 4 年 (安 政 元 年 ∼ 元 治 元 年 ) 英 文 辞 典 ●幕 末 国 産 木 活 字 一 1 8 5 6 年 ●大 鳥圭 介製 鋳造 金属 活 字 1 8 5 7 年∼ 1 8 6 0 年 (安 政 4 年 ∼ 万 延 元 年 ) 大 鳥 圭 介 は幕 末 、 新 撰 組 の 土 方 歳 三 ら と共 に 函 館 ・ 五 稜郭 で幕 臣 と して 明 治 新 政 府 と戟 っ た こ と は有 名 。 元 々 幕府 の 大 学 校 の 責 任 者 で もあ っ た 大 鳥 は 、 当 時 の 外 国語 の主 流 で あ っ た オ ラ ンダ語 の 翻 訳 用 の 辞 書 を編 纂 し て い る。 明 治 に な っ て 大 島 圭 介 は貴 族 に な る が 、 印 刷 につ い ては 後 の 本 木 の 活 躍 に 焼 き も ち を 焼 い て い る 。 こ の よ う に考 え る と 「 活 字 」 と 言 え ど も歴 史 と 密 接 に 関 わ っ て い ると 言 え る 。 キ リ シ タ ン版 と駿 河 版 活 字 の 消 滅 後 、 ほ ぼ 2 4 0 年 、 よ うや く長 崎 に お い て 本 木 昌 造 (18 2 4 ∼ 7 5 ) が 鋳 造 活 字 の製 作 に成 功 す る ま で 、 日本 に あ っ て は本 格 的 な活 版 印 刷は存 在 しな か っ た 。 ■日 本 の 近 代 印 刷 の 功 労 者 、 本 木 昌 造 (18 2 4 ∼ 18 7 5 、 5 2 才 で 病 没 ) 長 崎 に 生 ま れ た 本 木 昌 造 は、 二 男 と して 生 まれ 、 養 子

9 0

と し て 本 木 家 に 入 っ た 。 1 6 才 で 通 詞 末 席 と な り 通訳 と し て 活 躍 。 1 8 6 4 年下 田 ペ リ ー 来 航 時 は 、 通訳 と し て 江 戸 ま で 出 張。 ロ シ ア の 海 軍 、 プ チ ャー チ ン の 来 航 の 時 も 出 張。 デ イ ア ナ 号 が 津 波 で 沈没 した 折 に は、 下 田 で 船大 工 を指 揮 し代 船 を建 造 した 。 そ の 時 の 技 術 で 長 崎 に 鉄 製 の橋 を 日本 で 初 め て 建造 し て い る 。 彼 は 上 海 に 渡 航 し た 折 、 ウ イ リ ア ム ・ ガ ン ブ ル か ら活 版 印 刷 で刷 ら れ た 聖 書 を 見 せ られ て 、 活 版 印刷 の虜 に な る 。 明 治 に な っ て 本 木 昌 造 の 「 活 版 鋳 造 法 と 印 刷 法 」 (1 8 5 1 年 ) に よ っ て 日 本 で も 活 字 文 化 が 盛 ん に な る 。 し か し欧 文 で 使 用 す る文 字 は わ ず か 2 6 文 字 で あ る の に対 し て 、 漢 字 は 『 康 興 字 典 』( こ う き じ て ん ) に 収 録 さ れ た も の だ け で も約 4 7 ,0 0 0 字 も あ る●。 日 本 の 近 世 に お け る 出版 文 化 の担 い 手 は 木 版 印刷 だ っ た 。 木 版 印 刷 は 版 面 に 文字 や 絵 を刻 み 、 そ の 上 に 墨 や 絵 の 具 を均 等 に塗 っ て か ら紙 を の せ 、 上 か ら バ レ ン と い う 道 具 で こ す る 方 法 で あ る。 現 在 の 目か らみ る と、 木 版 が ペ ー ジ単 位 で 文 字 や 絵 を配 置 す る ア ナ ロ グ 的 技 術 で あ る の に 対 して 、 活 版 は文 章を 1 字 1 字 に 分 解 す る デ ジ タ ル 的発 想 で あ る。 昌 造 も 最初 は 木 版 の 方 法 に と ら わ れ て い た の で 、 日本 字 を 活 版 で刷 る と い う ア イ デ ィ ア を 直 ぐ 思 い つ か な か っ た 。 や が て活 版 の ほ う が す べ て の 面 で合 理 的 、 か つ 能 率 的 で あ る こ と に気 づ く。 しか し、 日本 語 活 字 の 開 発 は 苦 難 の 連 続 で、 変 体 仮 名 を ふ くめ 約 2 0 0 種 の 「か な 」 の 活 字 母 型 を つくる だ け で も、 1 年 以 上 か か っ た 。 そ れ ぞ れ の 活 字 は でき て も 、 こ ん ど は 活 字 の 高 さ が そ ろ わ な い た め 、 印 刷 さ れ た 文 字 に ム ラ が で き て し ま う。 な に よ り も 、 日 本 語 は 画 数 の 多 い 漢 字 が あ る の で 、 ▲本 木昌 造 これ を活 字 に仕 上 げ る の は 困 難な作 業 だ っ た 。 昌造 は や む なく将 棋 の 駒 に 用 い る 黄 楊 (つ げ ) な ど を利 用 して 木 活 字を つ く り、 鉛 活 字 と ま ぜ て 使用 した 。 黄 楊 は 後 に活 字 の 母型 を作 る の に 使 用 さ れ た 。 犬山 市 の 博 物 館 『明 治 村 』 に

(5)

「 印 刷 を め ぐ る言 説 」 印刷技術 の発明 と表現 は本 木 昌 造 の活 版 印 刷 機 が 展 示 し て あ る。(前 頁 上 写 真 ) 本 木 昌 造 は 使 用 頻 度 の 調 査 を基 に 作 っ た 漢 字 セ ッ ト に、 や カナ を加 え て活 字 を鋳 造 し た が 、 投 資 額 も膨 大 に なっ て し ま っ た 。 彼 自身 の 『武 士 の商 法 』 も災 い し、 本 木昌造 が創 立 した 「長 崎 陽 新 塾 」 は一 年 で 早 くも経 営 危 機に見 舞 わ れ た 。 や む な く彼 は、 目 をか け て い た 門 人 、 平野 富 二 ( 1 8 4 6 ∼ 9 2 ) に 経 営 を ま か せ る こ と に し た 。 富二 は 18 7 2 年 、 近 代 化 の す す む 首 都 東 京 に 進 出 、 神 田 佐久 間 町 に工 場 をか ま え 、 つ ぎ に築 地 に 移 転 し、 社 名 を 「 東 京 築 地 活 版 製 造 所 」 と し た 。 こ こ で 製 造 さ れ た 活 字 が有 名 な 『築 地 活 字 』 で あ る 。 は昭 和 の 初 め ま で 続 き 、 多 く の活 字 職 人 を 輩 出 す る 事 に な る。 活 字 の 制 作 に は種 字 彫 り の専 門 職 人 を 必 要 と した 。 彼 らは 戦 地 に 赴 く時 、 遺 品 と し て木 製 種 字 を 家 族 に 預 け て い る。 今 日 、 簡 単 に キ ー ボ ー ド を叩 く と 出 て く る 活 字 は 、 こ れら職 人 た ち の 血 と汗 の 結 晶 であ る 。 「 東 京築 地 活 版製 造所 」 ▲平 野富 二 日本 で の 写 真 印 刷 を 三 色 版 法 と して確 立 した の は小 川 一真 (1 8 6 0 ∼ 1 9 2 9 ) で 、 1 8 9 6 年 の 「写 真 新 報 」 に 仏 画 の彩 色 画 を三 色 版 に して 、複 製 挿 絵 と し て 印刷 して い る。 日 清 ・ 日 露 戟 争 な ど に よ り情 報 と し て の 写 真 の 重 要 性 が 増し、 写 真 が 印刷 に重 要 な 位 置 を 占 め て い く。 因 み に 当 時 の 活 版 製 造 所 と して は、 ほ か に紙 幣 寮 (の ちの 大 蔵 省 印 刷 局 ) な どが あ り、 ま た 日本 の 印 刷 物 の 6 0 % を 占 め る 秀 英 舎 (現 、 大 日本 印 刷 )、 凸 版 印刷 な ど の印 刷 所 が 1 9 0 0 年 ま で に 創 業 して い る 。 秀 英 舎 を 設 立 した 佐 久 間 貞 一 は「工 場 法 」を 日本 で 初 め て 制 定 させ た 。 当時 の 職 人 の 平 均 寿 命 が 4 0 歳 と い う労 働 条 件 を社 会 主 義者・ 片 山 潜 ら と共 に 政 府 に働 きか け労 働 基 準 法 の 基 礎 と な っ た 「 工 場 法 」 を 制 定 さ せ た 。 明 治 の 印 刷 メ デ ィ ア の貢 献 者 、 本 木 、 平 野 、 小 川 、 佐 久 間 らの 多 くが 幕 臣 の 出身 で あ っ た事 も不 思 議 な事 で あ る。 明 治 政 府 に よ る 薩 長藩 閥政 治 が 正 統 と さ れ る歴 史 観 は見 直 さ れ な くて は な ら な い 。 新 聞 ・ 雑 誌 と い う 新 し い メ デ ィ ア に と っ て 、 活 字 は そ の中 核 と な る ハ ー ド ウ ェ ア で 今 日 の 電 子 機 器 に お け る 半 導体 に あ た る 。「東 京 築 地 活 版 製 造 所 」 な どで 製 造 さ れ た活 字 の 供 給 を受 け る た め に、 当 時 多 くの 新 聞社 が 隣接 地の銀 座 を拠 点 と した 。 こ れ が 中 央 の 出版 文 化 の 始 ま り にな る 。 映 像 も音 声 も な い 時 代 、 激 動 す る 政 治 経 済 の 情 報は全 て 活 字 を介 して 日本 中 に発 信 さ れ た の で あ る。 今 日の よ う な 映 像 や 音 声 の な い 時 代 だ か ら手 書 き文 字 と活 字は ど ち ら が す ぐ れ て い る か 、 な ど と い う 議 論 は お き な かっ た 。 む し ろ活 字 を信 奉 し、 活 字 に の め りこ む “活 字 読者 ” を生 ん で い っ た 。 現 代 の ゲ ー ム 中毒 人 た ち の よ う に。 漢 字 を制 作 す る の は現 代 で も大 変 な作 業 で 、 パ ソ コ ン、 ウ イ ン ド ウ ズ で お 馴 染 み 、 マ イ ク ロ ソ フ ト社 の ビ ル・ ゲ イ ツ の 世 界 戦 略 で 問 題 と な っ た も の に 漢 字 が あ る。 ビル・ ゲ イ ツ は 日本 で成 功 した の で 中 国 本 土 の 戦 略 に自 信 を 得 た と 言 わ れ て い る 。 ■グ ー デ ンベ ル グの 4 2 行 聖 書 印 刷 と い え ば 1 5 世 紀 の グ ー デ ンベ ル グ を抜 き に は 語 れな い 。 そ れ は グ ー デ ンベ ル グが 、 冷 却 時 に 膨 張 凝 固 す る活 字 合 金 を 考 案 して 、 非 常 に精 巧 な鉛 活 字 の 制 作 を実 現し、 こ の 活 字 か ら組 版 を 作 り、 プ レ ス に よ っ て 刷 り上 げる と い う プ ロ セ ス を 完 成 さ せ た こ と に あ る 。 4 2 行 聖 書は 一 段 あ た り4 2 行 で 組 ま れ た 2 段 組 み の ラ テ ン語 の 聖書 で 1 8 0 部 程 印刷 した 。 こ れ が 『 グ ー デ ンベ ル グ 4 2 行 聖書 』 で あ る 。 グ ー デ ンベ ル グが 初 め て実 現 し た平 圧 印 刷機 は 、 木 製 の 葡 萄 絞 り機 に ヒ ン ト を 得 て 改 良 し た も の だと伝 わ っ て い る。 彼 は聖 書 とい う大 冊 の 本 文 印刷 を一 挙に 完 成 させ た 。 こ れ を皮 切 りに 、 1 5 世 紀 の 後 半 に は 全ヨ ー ロ ッパ に 怒 涛 の ご と く印 刷 術 が 普 及 し た 。 こ の 5 0 年 間 に 活 版 印 刷 で 制 作 さ れ た 印 刷 物 を 初 期 揺 藍 期 本 (イ ン キ ュ ナ ビ ュ ラ ) と い っ て 、 今 日 で は こ れ を 大 変 珍 重す る 。 当 時 の ヨ ー ロ ッパ は 写 本 に よ る 出 版 活 動 が 最 も 発達 して い た 時 代 で あ っ た。 今 日の我 わ れ に は信 じ難 い ほど高 度 な技 法 を駆 使 し、 手 間 暇 を か け た 手 仕 事 で 制 作 され た 高 級 制 作 物 か らい わ ゆ る量 産 品 ま で 、 あ らゆ る種

メ脚

仰山∬小叔さ○柑01脚 血

糊忠

地畿濫怒 張認濫監

護檻 蛋

諒整

㌫芸

▲グーデ ンベル グの 印刷機 (模 型) と4 2 行聖書

(6)

類の 文 書 、 図 像 、 図 書 が 制 作 され て い た が 、 こ れ らは 印 刷術 の 登 場 で 一 気 に 滅 び た 。 これ は 現 在 で い え ば技 術 の デジ タ ル 化 に も 似 て い る 事 件 で あ る 。 グ ー デ ン ベ ル グ は 活 版 印 刷 の 開 祖 と さ れ て い る 。 ヨ ハ ン ネ ス ・ グ ー デ ンベ ル グ とい う 人 物 は 、 ほ と ん ど正 体 不 明 の人 で 、 1 3 9 4 ∼ 13 9 9 年 の 幅 な か の 、 ど こか で 生 ま れ た と 推 定 さ れ る 。 ド イ ツ の マ イ ン ツ の 貴 族 出 身 の 彫 金 師 だ っ た と い わ れ て い る 。 ス ト ラ ス ブ ー ル に 亡 命 、 1 4 4 4 ∼ 1 4 4 8 年 の 間 に マ イ ン ツ に 帰 り 、 14 5 0 年 ご ろ 活 版 印 刷 機 の発 明 を 完 成 さ せ た と 考 え ら れ る 。「 こ の 頃 」 と し か 言 え な い の は 彼 に 関 す る歴 史 的 な 記 述 が な い た め で 、 彼 の 記 録で 一 番 詳 し い の が ヨ ハ ン ・ フ ス ト な る 男 か ら 金 を 借 り、 返 せ な く な っ て 起 こ さ れ た 訴 訟 記 録 だ と 言 う の は 皮 肉な 話 だ 。 人 間 と 言 う の は な か な か マ ス コ ミ な ど に 取 り 上げ ら れ た りす る こ と は 無 い が 、悪 い こ と を した 時 位 し か 、 取り上 げ ら れ な い 。 ま し て 歴 史 に 名 が 残 る こ と な ど な い 。 話 を 戻 し て 、 こ の ヨ ハ ン ・ フ ス ト の 主 張 だ と 2 ,0 0 0 グ ルデ ン を グ ー デ ン ベ ル グ に 貸 し た 。 グ ー デ ン ベ ル グ も 1 ,8 0 0 グ ル デ ン 借 り た こ と は 認 め て い る 。 彼 は 裁 判 に 負 け て 印 刷 所 を フ ス トに 取 ら れ て し ま う 。 そ し て 失 意 の 内 に 死 ん だ と さ れ る 。 死 ん だ の は 1 4 6 8 年 2 月 3 日 。 彼 に つ いて の 記 録 とい う の は借 金 の 裁 判 記 録 と死 亡 届 け の他 は 何も な い 。 あ と は 2 0 世 紀 に な っ て ヒ ッ ト ラ ー の ナ チ ス ド イ ツ が 小 説 化 し て 民 族 主 義 に 利 用 し た く ら い しか な い 。 と こ ろ で グ ル デ ン と い う 通 貨 が 出 て く る が こ の 時 期 、 マイ ン ツ 市 の 官 房 長 の 年 俸 が 1 3 0 グ ル デ ン、 数 年 後 に 2 0 8 グ ル デ ン に な っ て い る 。 彼 は 中 々 の い い 暮 ら し を し てい た と 言 わ れ て い る 。 つ ま り フ ス トの 投 資 は 当 時 の か な りの 金 額 で 、 都 市 政 治 家 の ほ ぼ 年 俸 1 0 年 分 に相 当 す る 。 1 7 8 7 年 に 宮 廷 作 曲 家 に 就 任 し た モ ー ツ ア ル ト の 年 俸が 8 0 0 グ ル デ ン で あ り、 相 当 な 高 額 所 得 者 で もあ っ た。 そ れ か ら考 え て も 、 高 額 な 借 金 を フ ス トか ら グ ー デ ン ベ ル グ は し た こ と に な る 。 で は 、 グ ー デ ンベ ル の 『4 2 行 聖 書 』 を 印 刷 す る の に、 どの 位 の お 金 が か か る の か 。 グ ー デ ンベ ル の 印刷 機 は 6 台。 14 7 0 年 に修 道 院 に 印 刷 機 を 2 台 、 16 5 グ ル デ ン で 納 めた 記 録 が 残 っ て い る。 1 台 8 0 グ ル デ ン だ が 、 グ ー デ ン ベ ル グ の 場 合 は 2 0 年 前 。 言 う ま で も な く 新 規 に 印 刷 機を 作 ら ね ば 成 ら な か っ た と見 る の が 妥 当 だ ろ う 。 か り に 1 台 、 1 0 0 グ ル デ ン か か っ た と し て 6 台 で 6 0 0 グ ル デ ン。 大 変 な金 額 だ 。 ま た 当 時 は 紙 が ま だ な く、 紙 の か わ り に 仔 牛 皮 を 使 用 し て い た の で 、 1 部 つ く る の に 17 0 頭 も の 子 牛 の 皮 が 必 要 と な る 。 印 刷 さ れ た も の を 3 5 部 と する と 5 ,9 5 0 頭 も の 子 牛 が 要 る こ と に な る 。 こ の 紙 代 で 3 9 0 グ ル デ ン。 膨 大 な 経 費 が か か る 。 紙 の 出現 に よ る 生 産 増 大 が 印 刷 業 の 展 開 を助 け た こ と が良 く分 か る 。 6 0 0 +3 9 0 + 9 0 0 = 1 8 9 0 グ ル ≠ ン 。 フ ス ト から借 りた 金 が 1 ,8 0 0 グ ル デ ン。 活 字 、 工 房 の 設 備 も考 え た ら も う 赤 字 。 さ ら に 活 字 を 運 ん だ り 、 雑 用 係 の 人 件 費も か か る 。 お ま け に 『 4 2 行 聖 書 』 を 印 刷 す る ’の に 、 2 年 もか か っ て い る 。 こ れ で は破 産 しな い 方 が 不 思 議 な く らい だ 。 ち な み に 19 9 7 年 に 慶 応 義 塾 大 学 が 創 立 1 0 0 周 年事 業 と し て 湘 南 藤 沢 キ ャ ンパ ス で 『4 2 行 聖 書 』 を購 入し た 。 購 入 価 格 は 明 らか で な い が 、 1 9 8 7 年 の 落 札 価 格が 約 8 億 円 で あ る 。 つ ま り 『4 2 行 聖 書 』 を所 有 す る 事は そ れ 程 ス テ ー タス な事 な の だ 。 話 を 戻 し て 、 なぜ 『4 2 行 聖 書 』 を グ ー デ ンベ ル グ は 印刷 した の だ ろ う。 当 時 の 識 字 率 の 低 い 時 代 に あ っ て 、 教会 や 王 侯 、 貴 族 に と っ て 聖 書 は ブ ラ ン ド品 で あ り 自 ら を か ざ る ス テ ー タ ス な 商 品 だ っ た 。 な ん と 、 全 部 予 約 注 文完 売 品 。 た だ 政 情 不 安 な 時 代 だ か ら教 会 や 王 侯 の 庇 護 な し に 始 め る に は ひ ど く危 険 な 賭 け で は あ っ た 。 じ つ は 金を 貸 し た フ ス トは 儲 か る と 見 込 ん で グ ー デ ン ベ ル グ の 弟子 を丸 め 込 ん で グ ー デ ンベ ル グ か ら権 利 を全 部奪 お う と し た と の 説 も あ る 。 そ れ ほ ど 活 版 印 刷 が 新 し い 仕 事 と し て 注 目 さ れ て い た こ と に な る 。 確 か に こ の 後 、 有 名 な ル タ ー に よ る 宗 教 改 革 が あ り聖 書 が 大 量 に 印 刷 さ れ 民 衆 の問 に 広 ま っ て 行 く こ と に な る 。 1 5 世 紀 の 印 刷 業 者 に ど ん な 人 が な っ た か と言 う と、 グ ー デ ンベ ル グ の 印刷 術 以 前 は、 多 くは写 字 生 な ど修 道 士が 中 心 で あ っ た。 聖 書 、 な か で も福 音 書 や 詩 篇 が 豪 華 な装 飾 写 本 と して 生 み 出 され て い た 。「小 説 」 の 発 生 が キリ ス ト教 の 告 解 と い う 罪 の ゆ る し を 神 に 乞 う 事 か ら 、 文学 と し て 発 生 し て 登 場 し た 。 こ の 『 告 解 』 と い う 書 簡 の形 式 一 神 へ の 私 的 書 簡 − が 変 質 を と げ た の が 、 1 7 世 紀で あ る。 背 景 に は 印 刷 革 命 に よ っ て もた ら さ れ た 技 術 変革 が あ っ た 。 14 5 0 年 頃 に グ ー デ ンベ ル グ に よ っ て 発 明さ れ た 活 版 印 刷 技 術 は 、 1 4 7 6 年 に は イ ギ リ ス で ウ イ リ ア ム ・ キ ヤ ク ス ト ン (1 4 2 2 ∼ 14 9 1 頃 ) が 印 刷 所 を 創 設す る な ど、 ヨ ー ロ ッ パ 各 国 へ と順 調 に 普 及 し 、 ち ょ う ど 製 紙 技 術 の 中 国 か らの 導 入 ・ 発 展 と あ い ま っ て 、 1 5 世紀 の 終 わ りに は 、 印 刷 本 は 約 3 万 種 類 、 6 0 0 万 冊 に及 んだ と 試 算 さ れ て い る 。 キ ヤ ク ス ト ン は イ ギ リ ス に 印 刷 術を 伝 え な が ら 国 王 ら の パ ト ロ ン を 得 て 、 英 語 で ト ロ イ 9 2

(7)

「 印 刷 を め ぐる 言 説 」 印刷技術 の発 明 と表現 リ物 語 『 トロ イ 歴 史 集 成 』 を 献 上 。 印刷 革 命 が 与 え た 影 響は 多 く、 数 え 上 げ る こ と は で き な い が 、 第 一 に あ げ て おきた い の は 、 印 刷 本 と読 者 層 の 登 場 に よ っ て 書 物 の 権 威づ け シ ス テ ム が 根 本 的 に 変 わ っ て し ま っ た こ と で あ る。 従 来 な らば ロ ー マ 教 皇 庁 に よ っ て 書 物 に 示 さ れ た 教 義の 検 討 が あ り、 究 極 的 に は正 統 / 異 端 裁 判 が あ っ て 、 その書 物 が もつ 価 値 が 一 元 的 に計 られ た の で あ る 。 マ ル ティ ン ・ ル タ ー の 登 場 に 象 徴 さ れ る と お り 、 印 刷 さ れ た 書物 を、 そ れ 自体 が 教 皇 庁 を批 判 す る書 物 で あ っ た と し ても、 読 者 が 直 接 手 に 入 れ る事 が 可 能 に な り、書 物 の も つ影 響 力 は 、 現 在 の わ れ わ れ の 社 会 にお い て 見 られ る と おり 、 発 行 部 数 と い う ス ケ ー ル に よ っ て 計 ら れ る よ う 変 わっ て 行 っ た 。 ま た イ ギ リ ス に お け る 清 教 徒 革 命 を 経 て 印 刷 術 は ニ ュ ース メ デ ィ ア と し て の 新 聞 の 発 行 に 貢 献 す る こ と に な る。「商 人 な ど大 陸 の情 報 に 具 体 的 利 害 の あ る 人 間 (大 体、 独 自 の 情 報 網 を 持 っ て い る ) を 除 い て 、 こ う し た 対 外ニ ュ ー ス 読 者 の 一 つ の 核 は 、 熱 心 な ピ ュ ー リ タ ン の 諸 君で あ っ た 。 か れ ら は 『世 界 』 を 神 ( プ ロ テ ス タ ン ト) と 悪 魔 (カ ト リ ッ ク ) が 闘 争 す る 一 つ の 舞 台 と み た 。 そ う した頭 の な か の 『戦 場 』 の 動 向 、 外 国 ニ ュ ー ス に、 彼 ら は 一 喜 一 憂 し た の で あ る 。 そ こ に 見 ら れ る 関 心 ・ 態 度 が、 しだ い に、物 質 上 も観 念 上 も本 人 の 利 害 も もた な い、 ふつ う の 人 間 に も 拡 散 し 、浸 透 し て ゆ く も の と 思 わ れ る 。 『 定 期 的 』 な ニ ュ ー ス に な れ 、 そ れ を 日 常 化 と し て 欲 望 する 人 間 の 誕 生 で あ る 。」(「読 者 の 誕 生 」 香 内 三 郎 ) グ ーデ ンベ ル ク 以 後 の 印刷 物 を イ ン キ ュ ナ ブ ラ (金 属 活 字 で印刷 され た 印 刷 物 ) とい う こ と で 、 そ れ 以 前 の 木 版 印 刷と分 け る ほ ど 、 メ デ ィ ア と し て の 印 刷 革 命 は 衝 撃 的 で あっ た 。 そ の 後 の 書 物 を読 む 市 民 社 会 の 成 熟 、 ジ ャー ナ リ ズ ム の 誕 生 、と 続 く プ ロ セ ス は お 定 ま りの 議 論 で あ る 。 ■活版 印刷・ 実践編 川 端 康 成 が 「人 生 劇 場 」 激 賛 の 一 文 を寄 せ た の は 、 昭 和1 0 年 4 月 1 6 日付 け の 読 売 新 聞 で あ っ た 。 そ れ は 文 芸 欄の 与 え ら れ た 全 紙 面 を 費 や し て 、 し か も 次 の よ う な 書 き 出 し で 始 ま る 感 銘 的 な も の で あ る 。『 彼 岸 の 中 日 、 雪 の日 、 (特 に そ の 日付 を こ こ に 誌 し て 置 き た い 程 )、 私 は よ き 日の 思 い に溢 れ た。 尾 崎 士 郎 氏 の 「人 生 劇 場 」 に感 動し て で あ る 。 そ の 日 の 後 、 私 は こ の 小 説 と こ の 作 者 を 思っ て 、 幾 夜 か 眠 れ ず 、 房 総 の旅 に 出 た が 、 ま だ 眠 れ ぬ 程で あ っ た 。 聞 け ば、 印刷 所 で は 、 職 工 達 が 校 正 刷 り を 奪い合 っ て 読 ん だ とい ふ 。 私 の 家 庭 で もそ う で あ っ た。』 昔の 印 刷 所 は 文 化 の 拠 点 で あ っ た 。「人 生 劇 場 」 の げ ら 刷り を奪 い合 う よ う に読 ん だ 文 選 工 た ち が 活 躍 した 時 代 は印刷 ・ 出 版 は知 識 、 学 問 の 象 徴 と して存 在 した 。 活 字 は無 くな っ た が 、 原 稿 用 紙 に 型 枠 の 面 影 を 留 め て い る。 し か し 、 パ ソ コ ン を 導 入 し て も 未 だ に 原 稿 用 紙 の プ リ ン ト を し て い る 人 が 居 る が 、 そ れ も 一 つ の 思 い 出 作 り な の かも 知 れ な い 。 人 は ヒ ス ト リ ー (歴 史 ) を 失 っ て も ス ト リ ー (物 語 ) の 中 に 生 き る こ と が 出 来 る 。 東 京 か ら帰 り、 印 刷 業 を継 い だ 伊 藤 形 成 さ ん と知 り合 い、 名 古 屋 活 版 さん の鈴 木 宗 夫 さ ん に お 会 い す る機 会 を 得た 。 名 古 屋 活 版 は南 区 に あ る 活 字 製 造 か ら印 刷 ま で こ なす 、 数 少 な い 活 版 印刷 の 会 社 で あ る 。 早 速 、 名 古 屋 活 版 地 金 精 錬 所 の 鈴 木 宗 夫 さ ん を お 訪 ね した 。 目的 は活 版 印 刷 の 現 場 見 学 会 。 活 版 印刷 は もっ と も古 い 印刷 術 と言 わ れ て い る 。 ほ とん ど産 業 遺 跡 と言 わ れて も過 言 で は な い が 、 こ こ は 大 い に 違 っ て い る。 伊 藤 成形 さ ん ご夫 妻 の 紹 介 で 取 材 が 実 現 した 。 名 古 屋 活 版 地 金 精 錬 所 は名 古 屋 市 南 区要 町 に あ る 。 工 場裏 の事 務 所 の 応 接 室 の 棚 に 手 刷 りの 活 版 印 刷 機 が 赤 錆 た物 も含 め て 数 台 置 か れ て い る。 以 前 、 友 人 の タ イ ポ グ ラ フ ィ ー デ ザ イ ナ ー 味 岡 伸 太 郎 さ ん の 処 で 目 に し た イ ギ リ ス 製 の も の と は 違 っ た 、 日 本 製 手 動 フ ー ト印 刷 機 で あ る。 私 や マ ニ ア に近 い 伊 藤 夫 妻 に 感 動 の笑 み が もれ る。 工 場 内 は 現 役稼 動 中 の5 0 台を超 え る 活 字鋳 造機 が ガ チャ ボ コ と 細 い通 路 に 面 し てフ ル 稼 働 中。 ほ と ん ど が年季 が入 っ た機 械 で 、 昭 ▲手 動 フ ー ト印 刷 機 和3 0 年 代 か ら 4 0 年 始 め の も の で あ る 。 な ぜ こ ん な に も 年季 の 入 った 機 械 が 動 い て い る の か とい う と、 全 国 に 活 版印 刷 会 社 が 名 簿 上 で も2 5 0 0 社 あ り、 毎 月 4 0 0 ∼ 5 0 0 社 から活 字 の 注 文 が くる 。 名 古 屋 活 版 地 金 精 錬 所 は北 海 道 から九 州 ま で 全 国 の 注 文 に 応 じて 対 応 し て い る点 が 特 長。また 活 字 は東 京 や 関東 地 方 と名 古 屋 ・ 大 阪 な どで は 、 同じ号 数 で も活 字 の 大 き さが 違 う。 無 い 文 字 は原 字 の デ ザイ ン か ら 行 い 、 母 型 が な く て も 、 ベ ン ト ン 彫 刻 機 で 制

(8)

作し て い る 。 初 号 (4 2 ポ イ ン ト) の 大 き な も の か ら 7 号(5 .5 ポ イ ン ト) も し く は 6 ポ イ ン ト ま で 様 々 な 書 体 を 取 り揃 え て あ る 。 ▲エ 場 内 で 稼 働 し て い る 活 字 製 造 機 ▲活 字鋳造 機 ▲ベ ン トン 彫 刻 機 活 版 が ま だ 元 気 な の は 、 東 京 で は 出 版 社 が 集 中 して お り、 現 在 も漫 画 週 刊 誌 な ど主 要 な漫 画 誌 、 週 刊 誌 、 月刊 誌、 ク ル マ や 競 馬 の 雑 誌 に使 用 され 、 週 刊 誌 な ど で は押 し の あ る 活 版 印 刷 の 方 が 紙 面 に 強 さ と 迫 力 が 出 る こ と を 好む編 集 者 が 多 い 事 に 由 来 す る 。 ま た 突 発 的 な 記 事 の 差 し替 え も手 文 選 で 行 う活 版 印 刷 の 方 が 便 利 で あ る とい う 事情 も あ る 。 鈴 木 宗 夫 さ ん の 話 だ と 「活 版 印 刷 は オ フセ ッ ト印 刷 と 比べ て も 、 文 字 が く っ き り と シ ャ ー プ で 礎 色 も 少 な く 長 ▲ 2 階の 活字 の山 そ れ らの 書 体 も含 め て 、 工 場 の 2 階 に は 3 万 個 以 上 の 様々 な活 字 が 所 狭 し と並 ぶ 。 こ れ らの 中 に は廃 業 に 追 い 込まれ た 印 刷 所 の 活 字 もあ る。活 版 印 刷 の技 術 の よ う に、 廃業 した ら二 度 と再 び復 元 困 難 な 場 合 が 多 い。 鉛 と錫 と アセ テ ン の 合 金 で あ る 鉛 活 字 だ け で も百 ト ン を 越 え る 活 字が ゴ ミ と な る 。 工 場 の 周 り に は 廃 業 し た 活 版 業 者 か ら 引き取 っ た 活 字 鋳 造 機 や 活 版 印刷 機 が ブ ル ー シ ー トを か ぶせ た 状 態 で 置 か れ て い る 。 す で に 部 品 が 製 造 され て い ない 活 版 印刷 で は 、 こ れ ら は活 版 機 械 の補 修 用 の 部 品 と し て 使 わ れ る 。 活 字 部 の 工 場 に は ピ カ ピ カ の ハ イ デ ル の 印刷 機 が あ り奇 麗 に 磨 か れ 晴 れ 姿 で 鎮 座 す る。 そ の 美 し い姿 に改 め て 惚 れ惚 れ と した 。 名 古 屋 活 版 地 金 精 錬 所 で は 活 字 鋳 造 だ け で な く、 詩 集 や小 説 、 俳 句 集 な どの オ リ ジ ナ ル な 印 刷 物 の 制 作 も積 極 的に行 っ て い る。 また 手 漉 き和 紙 な どの 新 製 品 の 開 発 も 進め て い る 。 名 古 屋 は 出版 社 も少 な く、 この 地 域 で の 活 字文 化 の 貴 重 な 担 い 手 の 会 社 で あ る 。 名古屋 活版地 金精錬所 〒4 5 7 −0 8 0 2 名 古 屋 市 南 区 要 町 4 −4 電話 0 5 2 −6 1 3 −0 7 4 0

(9)

「 印 刷 を め ぐる 言 説 」 印刷技術 の発 明 と表現 ▲ハ イデル の活版 印刷機

第3 章

凹 版 印 刷 (グ ラ ビ ア 印 刷 )

■版 画 の 成 立 と銅 版 画 自 ら 運 営 す る N P O 法 人 愛 知 ア ー ト・ コ レ ク テ ィ ブ の 紙版 画 の 講 座 で 、 黒 イ ン ク を ロ ー ラ ー に つ け て 刷 る と J 参加 して い る 子 供 た ち か ら 「 わ ー つ」 と歓 声 が 上 が る。 この 場 合 、 転 写 で は 無 い の だ が 「刷 る 」 行 為 に感 動 して いる 事 に な る 。 凹 版 印 刷 の イ メ ー ジ は 一 般 的 で は な い 。 版 画 ( 凹 版 ) と い う ジ ャ ン ル が 独 自性 を 発 揮 し て か ら 久し い が 、 版 画 を 英 語 で プ リ ン ト と い い 、 そ れ は 印 刷 を 意味 す る言 葉 で あ る。 そ う した 言 葉 か ら何 ら掛 け離 れ る こと な く、 刷 る こ と = プ リ ン テ ィ ン グ が 拡 大 さ れ て 、 今 日の 多 彩 な 版 画 表 現 の 多 く を 生 み 出 し て い る 。 刷 る こ と のは 多 く は 版 に ゆ だ ね た イ メ ー ジ を 紙 に 置 き換 え る こ と であ る が 、 元 の イ メ ー ジ の 変 質 、 あ る い は 再 表 現 と が 、 現代 美 術 の 中 で 版 画 へ の 関心 を巻 き起 こ した 。 ま た そ れ は印刷 とい う複 数 性 、 複 製 技 術 へ の 関 心 へ とつ なが っ て 行っ た 。 美 術 評 論 家 の 岡 田 隆 彦 は 「 物 体 の 記 号 化 」 ( 1 9 7 4 年 美 術 手 帖 ) の 中 で 「現 代 版 画 の 現 代 的 な 魅 力 は やは り 、 複 数 性 よ り も 〈刷 る こ と 〉 に あ る の だ と 思 う 。」 と述 べ て い る 。 14 5 5 年 ご ろ の グ ー デ ンベ ル グ の 印刷 術 の 発 明 か ら5 6 0 年余 。 1 8 3 9 年 に ダ ゲ ー ル が 始 め た 写 真 の ダ ゲ レオ タ イ プか ら 1 6 7 年 余 り 。 1 9 8 5 年 に ア ッ プ ル コ ン ピ ュ ー タ ー が 発売 さ れ て か ら2 2 年 。 版 画 も 大 き く変 化 し た 。 既 成 の も の を コ ピ ー す る と い う こ と が 版 画 の 方 法 と し て自 覚 さ れ る と 、 そ れ と 複 数 性 と い う 条 件 と は 必 ず し も 結び つ か な い 場 合 が 出 て くる 。 こ の場 合 、 複 数 性 よ りモ ノタ イ プ の 制 作 に こだ わ り、 禁 欲 的 な 即 興 性 に優 れ た 仕 事を 展 開 し て い る 鈴 木 広 行 さ ん の よ う な 作 家 も い る 。 銅 版 画 は 15 世 紀 の 中 葉 ま で に は 、 極 め て ヨ ー ロ ッパ 的な 図 像 を生 み 出 す た め の格 好 の 印刷 方 式 と して 活 版 に 劣ら ぬ 勢 い で 浮 上 し て く る 。 ヨ ー ロ ッ パ 版 画 に は デ ュ ー ラ、 ク ラ ナ ッハ な どが い る 。 木 版 と比 べ て 版 材 の クセ が なくて 均 質 な た め 画 面 全 体 に 均 質 な 描 線 が 施 せ る 。 最 近 では 、 デ ジ タ ル カ メ ラ の 普 及 に よ り画 像 自体 を デ ジ タ ル プリ ン タ ー で 出 力 に す る 場 合 も 多 い 。 転 写 と し て の 複 製 化の 技 術 的 な 発 展 は 8 0 年 代 に 始 ま るパ ー ソ ナ ル コ ン ピ ュー タ に よ る と こ ろ が 大 き い 。 版 画 は趣 味 と して存 在 を続 け る価 値 もあ ろ う が 、 本 来 は複 製 化 し た メ デ ィ ア と し て の 価 値 に あ る 。 だ が 、 版 画 は「刷 る」 とい う 人 間 の 身体 的 行 為 で あ る 。 そ の 思 想 的 な役 割 は重 要 で あ る 。 ■ グ ラ ビ ア 印刷 英 語 で 表 記 さ れ る [G r a v u re ] と は 、 グ ラ ビ ア 印 刷 (術 )、 あ る い は 写 真 凹 版 (術 ) を 意 味 す る言 葉 で あ る 。 方 法 と し て は 、 版 を 削 り取 り、 凹 ん だ 部 分 に イ ン ク を 乗 せ て 印 刷 す る 。 ふ く ら ん だ 部 分 に イ ン ク を 乗 せ る 凸 版 と は、 正 反 対 の 印 刷 方 法 に な る 。 グ ラ ビ ア は 金 属 や 布 、 ビ ニ ー ル な ど に も 文 字 や 絵 柄 を ク ッ キ リ と描 き 出 す こ と が 可 能 。 そ れ だ け 、 応 用 範 囲 も広 い 印刷 術 とい え る 。 グ ラ ビ ア 印刷 は、 版 胴 の 表 面 が 非 印 刷 部 分 に な る 食 刻 凹 版 や ラ ッ プ ア ラ ウ ン ド版 を 使 う。 版 は イ ン キ 容 器 の 中 を 回 転 し 、 イ ン キ は エ ッ チ ン グ さ れ た 溝 に 残 る 。 グ ラ ビ ア 印 刷 に は 、 コ ン ベ ン シ ョ ナ ル 法 、 綱 グ ラ ビ ア 法 、 電 子 彫 刻 グ ラ ビ ア 法 の 3 種 類 が あ る 。コ ン ベ ン シ ョ ナ ル 法 は 、 高 品位 な 印刷 の た め に使 わ れ る。 網 グ ラ ビ ア法 は 、 新 聞 の 付 録 ( 日 曜 版 な ど ) や 雑 誌 、 ダ イ レ ク ト メ ー ル な ど の 、印 刷 に優 れ て い る 。 電 子 彫 刻 グ ラ ビ ア法 は 、 主 に 包 装 紙 の 印刷 に使 わ れ る 。 グ ラ ビア 印 刷 の 最 大 の 特 長 は 大 量 の 印 刷 物 を得 意 とす る 点 で あ る 。 週 刊 誌 や 月刊 誌 な どの カ ラ ー ペ ー ジ が あ る 雑 誌 は 身 近 な も の の ひ と つ と な っ て い る。 グ ラ ビ ア 印 刷 の 版 は 円 筒 形 の鉄 で 出 来 て い る 。 こ の 鉄 製 円 筒 形 の 表 面 は0 .0 8 か ら0 .1 ミ リの 厚 み で 銅 メ ッ キ さ れ て お り 、 こ の 銅 メ ッ キ の 層 を 彫 っ て 版 に し て い る 。 版 が真 円 形 を して い る の で 、 高 速 で 印 刷 す る こ とが 可 能 で あ り、大 量 の 印 刷 物 に こそ 向 い て い る 印 刷 方 式 で あ る。 だ が 、 こ の鉄 製 の版 が 非 常 に 高 い 。 オ フ セ ッ トの 版 と比 べ る と、 約 10 倍 く らい の 価 格 で 、 概 ね 1 本 ( 1 色 に つ き 1 本 必 要 ) あ た り 、 4 万 円 か ら 6 万 円 に も な る 。

(10)

▲グ ラ ビ ア 印 刷 機 カ ラ ー 印 刷 の場 合は 4 色 だ か ら、 版だ け で 2 0 万 円 以上 に な る 。 小 口 ッ ト、 小 部 数 の 印 刷物 や 紙 袋 の 注 文 には 向 い て い な い。 大 口 ツ トで 継 続的 に消 費 さ れ る場 合 は 、 版 が 高 くて も印刷 代 が 安 くな るの で 、 コ ス トパ フ ォ ー マ ン ス に 優 れ て い る 。 グ ラ ビ ア 印刷 の 印刷 用 紙 は 巻 取 紙 の み 。 オ フセ ッ ト印 刷 に も巻 取 紙の 機 械 が あ るが 、 印 刷 方 式 に は 印 刷 の 内 容 に よ って 決 定的 な 違 い が あ る 。 オ フ セ ッ ト印 刷 は グ ラ デ ー シ ョ ン (徐 々 に 濃 く な っ て い く デ ザ イ ン ) が き れ い に 出 る 。 グ ラビ ア 印 刷 は グ ラ デ ー シ ョ ン が 出 来 な い 。 グ ラ ビ ア 印 刷 はイ ン キ の 層 が 厚 く な る た め 、 濃 い べ た 印 刷 に 優 れ て い る。 オ フ セ ッ ト印 刷 は べ 夕 印 刷 で は グ ラ ビ ア 印 刷 に 勝 て ない 。 そ れ と グ ラ ビ ア 印 刷 に し か で き な い こ と が あ る 。 それ は フ イ ル ム に 印 刷 す る こ と で 、 フ イ ル ム の 印 刷 は グ ラビ ア 印刷 で しか で き な い 。 一 般 に パ ンや 菓 子 の包 装 資 材フ イ ル ム な ど は す べ て グ ラ ビ ア 印 刷 で あ る 。 紙 袋 で も 表面 加 工 で 、 P P フ イ ル ム を 使 う 。 逆 に フ イ ル ム の 方 に 印刷 し て 、 そ の 後 、紙 と 張 り合 わ せ る こ と が 可 能 に な る 。 フイ ル ム に 印 刷 す る と 、 イ ン キ が 湊 ま な い の で べ た が き れい に見 え る 。 実 際 に は 印刷 方 式 の特 長 と製 造 ロ ッ トを 考慮 して 印刷 方 法 を 決 め て い く。

第4 幸

平 版 印 刷 (オ フ セ ッ ト印 刷 )

■現 代 を 代 表 す る版 式 ・ ブ ラ ンケ ッ ト (オ フ セ ッ ト印刷 機 の登 場) 1 9 0 4 年 に ア メ リ カ の ヒ ュ ー ブ ナ ー と プ ラ イ シ ュ タ イ ンは 、 二 人 の頭 文 字 を 取 っ た 『 H B プ ロセ ス 』 と呼 ば れ る色 修 正 の 方 法 を 開発 し た。 凸 版 印刷 の 原 色 版 で は版 そ のもの を修 正 す るが 、 この プ ロセ ス 平 版 で は分 解 ネ ガ を スリ ガ ラ ス 板 の ポ ジ に 反 転 し こ れ を 修 整 す る 方 法 を 取 っ た。 修 正 が 終 わ っ た ポ ジ は、 再 び綱 ネ ガ に反 転 し、 版 に 焼付 け る 。 ス リ ガ ラ ス は 、 や が て フ イ ル ム に 代 わ り、 そ れ以 降 、 平 版 で も カ ラ ー 印 刷 が 可 能 とな っ た。 平 版 印 刷 、 別 名 、 オ フ セ ッ ト印 刷 は 19 1 4 年 に 日本 へ 輸入 さ れ て い た 。 本 格 的 に 稼 働 す る の は 1 9 3 0 年 代 に入 って か ら で あ る 。 戟 前 、 戦 後 と 日 本 の デ ザ イ ン 界 を リ ー

9 6

ド し て き た 原 弘 ( 19 0 3 ∼ 1 9 8 6 ) に つ い て 川 畑 直 道 は 次 のよ うに 書 い て い る 。「原 が 『僕 達 の 新 活 版 術 』 を唱 え た1 9 3 0 年 代 は 、 2 0 世 紀 か ら連 な る 印刷 術 の 拡 充 − 1 9 19 年に 日本 へ 導 入 さ れ た 多 色 写 真 製 版 技 術 『H B プ ロセ ス 』 (プ ロ セ ス 製 版 )」 の 普 及 や 、 2 9 年 1 0 月 の 写 真 植 字 (写 植) 実 用 機 の 完 成 、 そ して 同 年 1 2 月 の 工 業 品 規 格 統 一 調査 会 に よ る洋 紙 標 準 寸 法 ( 日本 標 準 規 格 「紙 の 仕 上 寸 法」) の 決 定 な ど 、 印 刷 環 境 そ の も の が 大 き く様 変 わ り した 時 代 で あ っ た 。」(原 弘 と 「僕 た ち の 新 活 版 術 」 川 畑 直道 ) 文 字 や 画 像 を 直 接 、 紙 に刷 る 場 合 、 極 め て大 き な 印庄 を必 要 と し た が 、 オ フ セ ッ ト印 刷 は 、 一 度 ゴ ム ブ ラ ン ケ ッ ト に 転 写 す る こ と で 印 庄 の 問 題 を 解 決 し た 。 つ ま り 平 版上 の 図 柄 を ゴ ム ロ ー ラ ー ( ブ ラ ン ケ ッ ト) に 転 写 す る 。 図柄 が 付 着 した ロ ー ラ ー を用 紙 の 上 で 転 が せ れ ば 、 紙 面 の上 に絵 柄 が 転 写 され る とい う仕 組 み で あ る。 オ フ セ ッ ト印 刷 は 、 水 と抽 の 反 発 を利 用 した 印 刷 方 式 であ る 。 版 か ら ブ ラ ン ケ ッ ト と い う 中 間 の 胴 に 一 度 転 写 され 、 そ こ か ら 紙 に 印 刷 さ れ る 。 水 を は じ く部 分 ( 抽 ) と 、 は じ か な い 部 分 で 、 イ ン ク が 乗 る 部 分 と 乗 ら な い 部 分に 分 か れ る原 理 を応 用 して 印刷 す る。 た だ 水 を使 う こ と で イ ン ク の 劣 化 に 悩 ま さ れ 続 け た 。 1 9 7 0 年 代 に 入 っ て高 分 子 化 学 の イ ン ク の 改 良 が 進 み P S 版 の 発 明 と共 に 飛躍 的 な発 展 を とげ る。 ■印刷 の版・ P S 版物 語 19 4 4 年 ( 昭 和 1 9 年 ) に ドイ ツ の カ レ社 で 、 ジ ア ゾ 化 合物 と感 光 性 樹 脂 を組 み 合 わ せ た オ フ セ ッ ト印 刷 用 の感 材、 P S 版 (P r e se n sitiz e d plate)が生れる。この感 光材 は 今 日の 半 導 体 微 細 加 工 に お い て もな くて は な らな い感 光 材 と な っ て い る 。 オ フ セ ッ ト印 刷 は ナ チ ス の 宣 伝 相ゲ ッペ ル ス が 大 量 の 印 刷 物 を生 産 す る の に P S 版 の 研 究を 行 な っ て い た 。 1 9 4 5 年 、 ベ ル リ ン へ と 進 行 し た 米 軍は 、 ドイ ツ の カ レ社 を摂 取 し て P S 版 の 製 造 ・ 研 究 成 果を ア メ リ カ に 持 ち 帰 っ た 。 軍 か ら の 資 料 提 供 を 受 け た デュ ポ ン 社 が 1 9 4 7 年 に は ア セ テ ー ト フ イ ル ム ベ ー ス の ネガ タ イ プ の P S 版 を 発 表 し て い る 。 4 9 年 に は ポ ジ タ イ プの ア ル ミ P S 版 を 開 発 。 オ フセ ッ ト印 刷 の 版 は元 々卵 白平 版 、 平 凹 版 と言 っ て 大理 石 や 亜 鉛 版 を使 用 して い た 。 印刷 を終 え た 版 を再 研 磨して使 用 。 再 生 の た め の専 門 の 業 者 が 存 在 した 。 た だ 平凹版 の 感 光 材 に重 ク ロ ム塩 酸 を用 い た た め に公 害 の 原

(11)

「 印刷 を め ぐ る 言 説 」 印刷技 術の発 明と表現 因の 一 つ と さ れ 、 戦 後 高 度 経 済 成 長 の な か 姿 を 消 す 。 1 9 6 5 年 に 日 本 で も 富 士 フ イ ル ム が ア メ リ カ か ら 特 許 権 を得 て P S 版 の量 産 体 制 に 入 る 。 以 後 日本 で も P S 版 が 主流 に な る 。 だ が 特 許 権 を巡 り、 戟 後 しば しば 日米 の貿 易摩 擦 の 原 因 と も な っ て い る 。(8 0 年 代 の コ ダ ッ ク 社 と 富士 フ イル ム の市 場 開放 論 等 ) ポス タ ー ・ ポ ス トカ ー ドの 登 場 オ フ セ ッ ト印刷 の 登 場 は 図 版 や 文 字 を組 み 入 れ た デ ザ イン の世 界 に好 意 を持 っ て 受 け入 れ られ た 。 また 情 報 の 伝達 だ け で な く大 量 の 商 品 を販 売 、 広 告 す る の に ポ ス タ ーが 登 場 し、 人 び と の消 費 意 欲 と欲 望 を掻 き立 て 心 を捉 え た 。 「 ま た 絵 葉 書 は様 々 な 風 景 を 商 品化 し、 そ の 価 値 を 決 定し た と も い え る だ ろ う 。 こ の こ と は 、 今 日 の 広 告 の 図 像と商 品 と の 関 係 に ち か い 。 つ ま り、 今 日 の 商 品 は 、 広 告さ れ る こ と に よ っ て は じ め て 商 品 化 さ れ 価 値 を 与 え ら れる か らで あ る。 本 来 、 経 済 の 回路 に 乗 らな い はず の風 景が 市 場 の 原 理 に従 い 始 め る と、 風 景 に価 格 が 付 け られ てい る こ と に 、 疑 問 を 抱 か な く な る 。 た と え ば 、 旅 館 で 『 こ ち ら の お 部 屋 は 見 晴 ら し が よ ろ し い の で 、 お 値 段 が 少し 高 く な っ て い ま す 』 な ど と い わ れ た り す る 。 ま さ に 風景 に価 格 が 付 け ら れ て い る の で あ る 。」(「制 度 化 され た まな ざ し」 柏 木 博 ) 印 刷 され た絵 葉 書 か ら 日本 三 景 や 全国 に 富 士 山 が 生 ま れ た 。 7 0 年 代 、 一 世 風 靡 した 「 デ スカ バ ー ジ ャ パ ン」 の ポ ス タ ー は ま た 、 オ フ セ ッ ト印 刷 の最 高 期 を 示 し て い る 。 図像 と イ ラ ス ト・ 百 科 事 典 の 成 立 オ フセ ッ ト印 刷 の 飛 躍 的 な 発 展 は 、 従 来 の 凸 版 印 刷 に 代わ っ て 出 版 事 業 を 展 開 させ た。 そ れ は 百 科 事 典 の 登 場 であ る 。 日 本 の 近 代 印 刷 の 始 ま り が 「 辞 書 」 で あ っ た よ う に、 戟 後 の 日本 人 の 知 識 欲 を捉 え た の が 「百 科 事 典 」 であ っ た 。 ア メ リ カ 文 化 に よ る 生 活 習 慣 の 変 化 が 日 本 家 屋に 応 接 間 を 生 み 、 イ ン テ リ ア と し て 「 百 科 事 典 」 が 並 べら れ た 。 だ が 、 凸 版 印刷 で は膨 大 な活 字 の 在 庫 を抱 え 込ま か ナれ ば な ら なか っ た 。 平 凡 社 の創 業 者 、 下 中 弥 三 郎(1 8 7 8 ∼ 1 9 6 1) は 写 植 シ ス テ ム の 登 場 に逸 早 く着 目 し、 導 入 に踏 み切 り、 日本 で の 「百 科 事 典 」 を 最 初 に完 成させ た 。 日本 文 字 の タ テ 組 み 、英 文 の ヨ コ組 み 写 真 植 字 機 が 完 成 し た の は 1 9 2 5 年 で 石 井 茂 吉 (1 8 8 7 ∼1 9 6 3 ) と森 沢 信 夫 (1 9 0 1 ∼ 2 0 0 0 ) に よ っ て 発 明 され た。 も と も と イ ギ リ ス の 雑 誌 に ア イ デ ア 段 階 で 発 表 さ れ たも の が あ り、 大 正 末 期 に製 薬 会 社 の 印 刷 部 門 に従 事 し てい た石 井 茂 吉 と森 沢 信 夫 の 二 人 が 着 目 し、 イ ギ リス よ り先 に 実 用 化 した もの だ 。 会 社 を退 職 し た 二 人 は そ れ ぞ れ「写 研 」(石 井 )、「 モ リサ ワ」(森 沢 ) の創 業 者 に な る 。 写 真 植 字 機 は 従 来 の 活 版 印刷 の 文 字 組 み を 版 下 と し て 1 枚 の 印 画 紙 に 焼 き付 け る事 で 百 科 事 典 な どの ペ ー ジ物 を印 刷 す る事 に向 い て い た。 日本 文 字 の タテ 組 み 、 英 文 のヨ コ組 み も種 字 の 文 字 版 か ら拾 い 出 し、 文 字 に 平 体 、 長体 を 懸 け る 事 も 自 由 自 在 で あ っ た 。 ま た 、 そ の 都 度 、 焼き付 け る事 で 凸 版 印 刷 の よ う な 文 字 活 字 の 在 庫 を抱 え るこ と な く 印 刷 が 可 能 と な っ た 。 ▲写 真写 植機 原 弘 が 影 響 を 受 け た と さ れ る ヤ ン ・ チ ヒ ョ ル ト は ニ ュ ー・ タ イ ポ グ ラ フ ィの 原 理 で 「現 代 人 の 生 活 の 周 辺 は 印 刷物 で 埋 ま っ て い る。 印刷 物 に 関 して 、 時 代 の新 と旧 を 分か つ も の は 、 そ の 形 式 よ り も む し ろ 量 で あ る 。 し か し 量が 殖 え る につ れ て 、 形 式 も変 わ らざ る を得 な い 。 何 故 なら、 今 日の 印刷 物 の消 費 者 は 、 印 刷 物 を迅 速 に受 け 入 れな け れ ば な らな い が 、 時 間 が 不 足 して い る の で 、 読 む と い う プ ロ セ ス に 最 高 度 の 経 済 性 を 要 求 さ れ る か ら で あ って 、〈形 式 〉 も ま た 、 現 代 生 活 の 条 件 に適 応 せ ざ る を 得な い の で あ る 。」( 1 9 6 6 年 ) と 述 べ て い る 。 印 刷 を と り ま く状 況 が 大 き く変 わ っ て き た の で あ る 。 前 出 の ポ ス ター 、 百 科 事 典 な ど印刷 文 化 の 拡 大 は 情 報 処 理 の 迅 速 化 を 促 し た 。 こ の 事 を 実 現 す る の に オ フ セ ッ ト印 刷 は 最 善 の方 法 で あ っ た 。

(12)

■イ ン ク と イ ン キ ヲ苦 警 の l 手 で書 く イン ク l 三 ; 言 ジ l 静 電 印 刷 言‡ ; 去 】無 版 印刷 ‡言 ; 呈 l 芋 竿 遠 雷 雷 鳥 版 、 ドラ イ オ フ セ ッ 言; 言 ア ‡冒 警 告。孟 ク リ ー ン 、 フ レ キ ソ 、 パ イン キ 活版 イ ン キ 凸版、 原色版、樹 脂版 印刷 苦版 イ ン ‡ガ リ 版 印 刷 上 の 表 は 東 洋 イ ンキ の広 報 室 で ま と め た 表 。 海 外 か ら 輸入 され た 時 の 発 音 の 違 い か ら、 文 具 の 一 部 と して 入 っ てき た も の が 「 イ ン ク 」 と さ れ 、 工 業 製 品 の 一 部 と し て 入っ て き た も の が 「 イ ン キ 」 と い う 説 も あ る 。 パ ソ コ ン のプ リ ン タ ー な ど は イ ン ク と い う の で 納 得 す る 部 分 も あ る。 す で に イ ン ク ・ イ ン キ の 生 産 で は パ ソ コ ン の プ リ ン ター の イ ン ク の 方 が 、 印 刷 所 で 使 用 す る イ ン キ の 量 を 越 えた 。 イ ン ク は 消 耗 品 と し て パ ソ コ ン メ ー カ ー が 純 正 品 と銘 打 っ て 販 売 。 コ ス トは 印 刷 所 で 使 用 す る イ ン キ の 半 分以 下 と い わ れ る 。 リ サ イ ク ル イ ン キ が 裁 判 沙 汰 に な っ てい るが 、 パ ソ コ ンメ ー カ ー は省 資 源・ 循 環 型 社 会 を考 えれ ば 、 儲 け す ぎで あ る。 ■イ ン キの 主 成 分 イ ンキ の 主 成 分 は色 科 (顔 料 )、 ビ ヒ ク ル 、 助 剤 に 分 かれ る。 色料 r顔料 ) イン キ の種 類 カ ラ ー 印 刷 に 使 う イ ン キ は 藍 (C y a n =C シ ア ン )、 紅 ( M a g e n t a =M マ ゼ ン ダ )、 黄 ( Y e llo w =Y )、 墨 ( B la c k =K ま た は B L 、 B K )、 こ の 4 色 の イ ン キ を 「 プ ロセ ス イ ン キ 」 ま た は 「セ ッ トイ ン キ 」 と 呼 ぶ 。 カ ラ ー 印刷 は原 稿 を 4 色 に分 解 し て、 焼 き付 け た P S 版 に そ れ ぞれ の 対 応 す る イ ン キ を付 け て 、 一 枚 の 紙 に重 ね 刷 りす るこ と で 原 稿 の 色 を 再 現 す る 。 ▲プ ロ セ ス イ ン ク こ れ に 対 し て 「 特 色 イ ン キ 」 も 通常 印 刷 で は よ く 使わ れ る。 特 色 イ ン キ は 基 本 と な る 数十種 類 の イ ンキ を特 別 に調 合 して 作っ た カ ラ ー イ ン キで 、 調 合 に よ っ て様 々 な色 を作 る こ とが 可 能 。 印刷 で 表 現 で きる 色 の範 囲や 濃 度 域 は カ ラ ー フ ィ ル ム に 比 べ て 非 常 に 狭 い た め 、 印刷 で は再 現 す る た め に色 数 を増 や して 4 色 プ ロ セ ス イ ン キ + 特 色 イ ン キ を 加 え 、 5 色 、 6 色 で 印 刷 す る が 、 色 数分 だ け製 版 代 や 印 刷 代 が 加 算 され る。 特 色 イ ンキ は補 色と し て 使 う だ け で な く 、 単 色 印 刷 や 2 色 印 刷 に も 使 用 する 。 会 社 の ロ ゴ マ ー ク や コ ー ポ レ ー トカ ラ ー を 使 っ た 商品 パ ッケ ー ジ な ど決 ま っ た 色 物 を印 刷 す る場 合 に は 4 色掛 け 合 わ せ を利 用 す る よ り も、 特 色 を使 っ た 方 が きれ いに 安 定 し た 色 を 再 現 で き る 。 特 色 を選 ぶ と きは 発 注 先 の 印 刷 会 社 が 使 用 して い る イ ンキ メ ー カ ー の 色 見 本帳 を使 用 す るの が 最も確 実 で あ る 。 大日 本 イ ン キ D I C

参照

関連したドキュメント

[r]

印刷物をみた。右側を開けるのか,左側を開け

②企業情報が「特定CO の発給申請者」欄に表示

[印刷]ボタンを押下すると、印刷設定画面が起動します。(「3.1.7 印刷」参照)

目印3 目印4 目印5 目印6 目印7. 先端の重り12

印刷物の VOC排出 抑制設計 + 環境ラベル 印刷物調達の

特に有機溶剤規制の遵守 作業環境濃度 特殊健康診断 消防法 危険物の表示と適正管理 危険物倉庫. 防爆仕様機械設備 悪臭防止法

東京都 VOC対策ガイド