VOC削減対策の事例とメリット
東京都VOC対策アドバイザー
P&E マネジメント代表
寺 田 勝 昭
東京都VOC対策普及啓発セミナー
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1.大気汚染とVOC規制
3 塗装
クリーニング
東京印刷 大規模工場
発電所 製紙工場
製鉄所 他
SPM
スモッグ 光化学スモッグ
VOC
自動車
改善
顕在化
光化学オキシダント
NOX SOX VOC
悪化
ガソリンスタンド
青空印刷
P&Eマネジメント
大気汚染とVOC
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VOC (Volatile Organic Compounds) とは
■大気汚染防止法では排出口からガス状で排出される 有機化合物をVOC(揮発性有機化合物)としている。
※そのため沸点等の細かな規定はない。
■印刷ではインキ、湿し水、洗浄剤、希釈溶剤、ニス、
接着剤や製版クリーナー にVOCが含有さている。
■印刷業の主なVOC該当物質はトルエン(26%)、高沸点 石油系溶剤(26%)、酢酸エチル(14%)、MEK(11%)
IPA(9%)とされる。(日本印刷産業連合会調べ)
出典:印刷インキ工業連合会作成
■管理濃度は全てのVOCの合計(TVOC=総揮発性有機物質)
で単位はppmC(炭素換算濃度)が使用される。
P&Eマネジメント
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国のVOC削減目標
固定発生源 VOC総量 150万トン
平成
12年度
30 %削減
平成
22年度
規制:
10%削減 自主:
20%削減 ベスト・ミックス
30%削減
(法の担保)
H16/5
:大防法改正
H17/6:政省令公布
H18/4:施行
P&Eマネジメント
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大気汚染の改善
浮遊粒子状物質及び光化学オキシダント発生抑制
発注者 協力
印刷物の VOC排出 抑制設計+ 環境ラベル 印刷物調達の グリーン購入
調達先の選定
印刷業界 自主規制 国等
法規制
大気汚染防止法VOC規制
自主 規制 直接 規制
大規模 工場
中小規模 印刷工場
自治体
東京都 VOC
アドバイザー
啓発 活動
印刷会社 取り組み
VOC削減活動
・低VOC資材への転換
・VOC抑制工程の構築
グリーン製品 の開発・提案 環境優良工場 VOC排出抑制 排出量把握 削減結果報告
グリーン基準 削減目標 結果公表
GP認定制度 啓発活動 マニュアル、セミナー
VOC排出抑制のしくみ
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施設 規模(裾切り) 排出基準 区分
直接規制対象
自主 規制対象 施設外
乾燥のための送風機能力 能力:27,000㎥/時以上。
排出口濃度 700ppmC 測定:年2回 乾燥のための送風機能力
能力:7,000㎥/時以上。
排出口濃度 400ppmC 測定:年2回
・自主なVOC削減活動の促進
・業界の自主行動計画
・日印産連グリーン基準
なし
H22見直し?
軟包装の関係施設
3.ラミネーター 4.コーター
1.グラビア印刷 乾燥施設 2.オフセット輪転 印刷乾燥施設
(ドライヤー)
乾燥のための送風機能力
・ラミネーター: 5,000㎥/時以上
・コーター :10,000㎥/時以上
排出口濃度 1400ppmC
600ppmC
印刷関係の大防法VOC規制
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■
自主行動計画対象団体
■対象VOC物質
・ 印刷工業会(会員:104社)
・全日本印刷工業組合連合会(会員:7,085社)
・全国グラビア協同組合連合会(会員:177社)
*会員数は平成19年4月現在
VOC排出削減自主行動計画
■
実績H19年10月現在
■
VOC排出削減計画(業界全体)
トルエン、酢酸エチル、MEK、IPA、
高沸点石油系を含めた全てのVOC物質
出典:日本印刷産業連合会
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GP認定工場のVOC抑制基準
水準―2
表面加工 ・アルコールを使用時30%未満で使用すること
・自動布洗浄を使用する、または自動液洗浄の場合は循環システムを使用していること
・VOC配慮型洗浄剤を50%以上使用していること
・廃ウェス容器や洗浄剤容器に蓋をする等のVOC発生抑制策を講じていること
・廃ウェス容器や洗浄剤容器に蓋をする等のVOC発生抑制策を講じていること
グリーン原則 グリーン基準
水準―1
枚葉印刷 ・湿し水からのVOC発生を抑制していること
・水なし印刷システムを採用していること
・湿し水循環システムを採用するなど、IPA濃度を5%未満に管理していること
・VOC配慮型湿し水を50%以上使用していること
・洗浄剤からのVOC発生を抑制していること
・無溶剤化(UV塗料及びサーマルフィルム使用も含む)
またはアルコール類濃度5%未満で使用すること
輪転印刷 ・熱風乾燥印刷の場合、VOC排出処理装置(脱臭装置)を100%設置し適切に運転・管理していること。またはU V印刷を行っていること
・湿し水からのVOC発生を抑制していること
・水なし印刷システムを採用していること
・湿し水循環システムを採用するなど、IPA濃度を5%未満に管理していること
・VOC配慮型湿し水を50%以上使用していること
・洗浄剤からのVOC発生を抑制していること
・自動布洗浄を使用する、または自動液洗浄の場合は循環システムを使用していること
・VOC配慮型洗浄剤を50%以上使用していること
出典:日本印刷産業連合会
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2.東京都VOC対策アドバイザー
11 東京都VOC排出量94,080t/平成12年度
金属表面処 理
4%
給油等 12%
その他 4%
ク リーニング 12%
印刷 22%
工場塗装 15%
屋外塗装 31%
東京都のVOC排出量
中小企業が 圧倒的に多い
知らない 人がいない 時間がない
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東京都のVOC対策
P&Eマネジメント
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●東京都が創設した中小企業のVOC排出量削減に向けた、自主的な取組を 支援するための「東京都VOC対策アドバイザー」を派遣する制度です。
●事業所を訪問し、対策を助言(無料)。
●派遣対象は中小企業(資本金3億円以下又は従業員数が300人以下)で、
VOCを取り扱う都内の工場(印刷、塗装、めっき工場等)
●助言内容は現場でVOCの簡易測定を行い、工程の改善、原材料の転換、
回収・処理装置の設置、融資制度の紹介など。(測定結果をその場で報告)
東京都VOC対策アドバイザー制度
1.購入している資材や製品の化学物質を確認→事前に質問
・購入している主な製品(名)をまとめる
・製品のMSDSを準備する
・役所にて提出している化学物質に関わる書類があれば用意
2.簡易測定とアドバイスの手順を説明→測定ポイントを絞る 3.主な工程を測定すると共に同時にアドバイスを実施する6.資材や製品の化学物質を確認し低VOC製品への転換を提案 7. 報告書提出→後日報告、報告書への確認㊞
・「測定データ」と「良いこと及び改善が望ましい事項」についてのまとめ
5.測定データと改善が必要な場所及び方法を指摘する
アドバイスの流れ
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Total-VOC測定器 Micro-FID FID(水素炎にてVOCを イオン化しその量を測定)
PHOTOVAC,INC.(USA)
OSP-121H
高分子薄膜の膨潤に基づく 干渉増幅反射法(IER法)
OSP(日本)
VOC簡易測定器
※簡易測定器は東京都環境科学研究所で公定法により検証(FID 測定)
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VOC
測定器
~~~~ ~~~~ ~~~~VOC
VOCの測定
P&Eマネジメント
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VOCアドバイザーの活動状況
具体的活動
P&Eマネジメント
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廃ウエスの密封管理
P&Eマネジメント
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VOC対策 蓋閉め励行
P&Eマネジメント
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3.印刷工場からのVOC排出
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I P B
~~~~~~~~~ ~~~~~~
②
⑥
④
③
⑤
⑦
② : 水船 ・水棒(運、停、)
③ : インキローラー(運、洗)
④ : インキ壺(運、洗)
⑤ : 版胴(運)
⑦ : 圧胴(洗浄)
⑥ : ブラン胴(運、洗浄)
VOC
用紙
湿し水 循環装置
~~~~~~
オフセット印刷機からのVOC発生
(運):運転時、(停):停止時
(洗):洗浄作業時
IPA H液
①
① : 湿し水装置(運、停、)
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枚葉印刷機からのVOC
0 100 200 300 400 500 600
A号上1-2ユニット間 1色目(K)壷上 上3-4ユニット間 4色目(B)壷上 B号デリベリー前 2色目壷上大豆油インキ 2色目ローラ上大豆油インキ 3色目壷上(停止)W2インキ 3色目壷上(運転)W2インキ C号デリベリー前 3-4ユニット間(運転) 1-2ユニット間(運転) 1インキ壷上 4インキ壷上 D号デリベリー前 3-4ユニット間(運転) 1-2ユニット間(運転) E号デリベリー前 3-4ユニット間(運転) 1-2ユニット間(運転) 水無し平均値102ppmC 水あり平均値377ppmC
水無し 平均値
ppmC
水あり
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*有意差有り 水無し102ppmC 水あり377ppmC
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輪転印刷機からのVOC
0.0 50.0 100.0 150.0 200.0 250.0 300.0 350.0 400.0 450.0
デリバリ 前
(オペレター台)
1-下ユ ニット(湿し
水舟水)
1-上ユ ニット(湿し
水舟水)
1-上ユ ニット(イ
ンキングローラー部)
1-下ユ ニット(イ
ンキ壷上)
2-上ユ ニット(湿し
水舟水)
2-上ユ ニット(イ
ンキングローラー部)
2-上ユ ニット(イ
ンキ壷上)
1-2 上ユ
ニット間
3-上ユ ニット(湿し
水舟水)
3-上ユ ニット(イ
ンキングローラー部)
3-上ユ ニット(イ
ンキ壷上)
2-3 上ユ
ニット間
4上ユ ニット(湿し
水舟水)
4-上ユ ニット(イ
ンキングローラー部)
4-上ユ ニット(ブ
ランケット)
上ド ライヤー入口 湿し
水処理装置周辺 湿し
水処理装置タ ンク蓋閉
湿し 水処理装置タ
ンク蓋開放 1-2
下ユ ニット間
2-下ユ ニット(湿し
水舟水)
2-3 下ユ
ニット間 3-4
下ユ ニット間 下ド
ライヤー入口 下ド
ライヤー出口 上ド
ライヤー出口 デリバリ
刷本 脱臭装置周辺
脱臭装置周辺手前燃焼室N O1
脱臭装置周辺手前燃焼室N O2
脱臭装置周辺横手燃焼室N O1
脱臭装置周辺裏手排気出口
ppmC
※処理装置を設けないと
1700ppmC程度に上昇する
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スクリーン印刷工程のVOC濃度
1,200
390 390 370 370 360
290
0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400
版面 機上
乾燥ラック 廃ウエス
床
装置(天井) 排気口(
外部)
ppmC
スクリーン印刷機からのVOC
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4.VOC排出抑制策
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VOC排出源と対策
オフッセト 枚葉印刷 作業改善
湿し水
水なし印刷 IPA
5%以下
IPAレス
H液
エチレングリコール
低VOC・植物系
インキ
UVインキ
植物系へ転換
大豆油インキ
洗浄剤
布洗浄装置
水・植物系 塩素系 石油系混合溶剤 含浸布
ノンVOCインキ
ダンプニング装置
廃ウエス・残肉容器 洗油容器
廃棄物置き場
密封化
グリーン購入
自動供給
低VOC製品への転換
P&E マネジメント
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大豆油インキ アロマフリーインキ
顔料
助剤 樹脂
50%
顔料
助剤 形
分 樹脂
油分
50%
亜麻仁油他
植物油
石油系
30 %
芳香族1%以下
固
~40
50%
顔料
助剤 形
分 樹脂
油分
50%
大豆油
(20%以上)
石油系
%
芳香族1%以下
固
~
3020
50%
顔料
助剤 形
分 樹脂
油分
50%
大豆油他
植物油 固
50%
石油系 1%未満
ノンVOCインキ
枚葉オフセットインキのVOC
※日印産連グリーン基準では石油系由来の揮発性有機化合物をVOCと定義
UV イ ン キ ・ ハ イ フ ゙リ ット ゙ UV イ ン キ 水洗浄牲インキ
新
P&Eマネジメント
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インキからのVOC発生
P&Eマネジメント
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湿し水のVOC排出抑制
●湿し水のIPA濃度を5%未満で管理
※ 抜き取り検査データを記録する。比重計、糖度計が一般的に使用されて いる。計器がない場合は濃度カーブにしたがって配合量を記録する。
●IPA(イソプロピルアルコール)の不使用
※代替IPAはIPA以外のアルコールを使用するケースが多いく、VOC削減には つながらないので注意!
●水なし印刷方式の採用→バタフライマーク
●低VOC型、ノンVOC型湿し水への転換
※MSDS(化学物質等安全データシート)と共にアルコール等VOC物質の含有を メーカーに確認する。併せて、H液にもアルコールが30~80%含有するケースが 多いので確認する。
●湿し水循環装置とアルコール自動濃度管理シス テムを導入する
P&Eマネジメント
30 VOC
拡散度
洗浄作業とVOC
2
1,400
400 300
10 41 140 1500
36 230 900
53 566
55 70 40 12 70 2000
400600 1,000800 1,200 1,400 1,600
イ ンキ ロー ラ ー ブ ラ ンケ ッ ト 圧胴 イ ンキ ロー ラ ー ブ ラ ン ケ ッ ト ( 手洗い ) 圧胴 印刷室中央 ロ ー ラ洗浄前 ロ ー ラ液吐出中 ロ ー ラ洗浄中 イ ンキ ツボ 洗浄前 イ ンキ ツボ 洗浄中 洗浄中ブ ラン 表面 圧胴洗浄中( 雰 囲気
A洗浄液
B洗浄液 圧胴洗作業員上着 圧胴洗作業員手袋 圧胴洗作業員靴 印刷室中央洗浄前 印刷室中央洗浄後
洗浄前 1階5号機
洗浄中 1階5号機
洗浄中 地下9号
ppm
C① ②
~
7,500ppmC
洗浄剤 の差大
洗浄作業によるVOC発生
P&Eマネジメント
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洗浄作業のVOC排出抑制
●VOC排出抑制手順の確立
(蓋閉め、ウエスの再利用・レンタルウエスの推進等)
●低VOC洗浄剤への転換
●ノンVOC洗浄剤への転換
(オレンジ、大豆油等の植物性洗浄剤、水洗浄)
●自動液洗浄循環システム型の採用→再生装置
●自動布洗浄方式の採用 (洗浄剤含浸布◎)
P&Eマネジメント
塩素系、フロン系の排除 低→高沸点、低含有量、
消防法、有機則、毒劇法の考慮
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作業基準及び手順書の作成
●廃ウエス、洗浄剤容器、廃油等の密閉管理
●インキ・湿し水の管理
●印刷室の区分・換気回数・風流れコントロール
●洗浄作業の標準化
●換気扇・換気装置等の運転管理
●VOC/脱臭処理装置の日常点検・定期点検メンテナンス
●ルール順守状況のパトロールと定期評価の実施
P&Eマネジメント
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装置及び機械の改善
●VOC処理装置の導入
※枚葉オフセットは必要なし
●水なし印刷システムの導入
●安全カバーの密封化や印刷ユニットへの小型 給排気装置(小型ファン)取り付け
●洗浄装置の改良(液→布洗浄→プレパック洗浄布)
●廃ウエスからの溶剤及びウエスの回収
●洗浄廃液の再生装置の導入
P&Eマネジメント
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廃ウエス容器
一斗缶20ℓ インキ缶 一斗缶20ℓ 溶剤容器
溶剤汲み置 きバケツ
容器蓋閉めの効果測定
出典:印刷産業におけるVOC排出抑制自主的取組推進マニュアル
廃ウ エ ス 容器か らの 揮発量が 大きい
経済効果
200円/㎏×0.28㎏
/8時間=7円/時/台
※ 1年間蓋閉めしないと約60,000円
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メリット(派遣先の声)
自社の水準がわかった 受注が増えた
VOC削減のエコ提案ができた
定期メンテナンスの実施
作業標準の作成(手順書)
洗浄剤のジクロロメタン削減
GP
認定工場の取得 顧客からの信頼が向上 作業環境の改善
低
VOC資材への転換 廃ウエスの蓋閉め順守 顧客が増えた
苦情の原因が理解できた
経費節約を実現したい 化学物質管理が整った
ゴミ置き場のリスクがわかった
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大防法等 法規制の遵守
光化学スモッグ の発生抑制
浮遊粒子状物質
(SPM)の低減
光化学スモッグ の発生抑制
浮遊粒子状物質
(SPMの発生抑制)
+ 職場環境
の改善 有害化学物質
の低減
悪臭発生 の抑制 廃液発生
の削減
資材費や処理費の削減 コストダウン
VOC排出削減 法規制の遵守
VOC排出抑制の効果
P&Eマネジメント
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