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中国における幼稚園教育の現状と幼稚園教諭養成について

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中国における幼稚園教育の現状と幼稚園教諭養成について

爾   寛 明

キーワード:中国、幼稚園教育、幼稚園教諭養成(幼児園教師養成) Ⅰ 問題の所在  現在の保育学、乳幼児教育学における世界的な課題が、「保育の質の向上」である。20世 紀末から、21世紀初頭にかけて、教育観が大きく変遷した。それまでの認知型教育から、 非認知型教育へと移ったのである。認知型教育では、試験による結果が、教育の結果とみ なされてきたが、非認知型の場合は、その評価が多様であり、教育の質自体を見ることが 難しくなった。そこで、保育・教育の質が新たに問われるようになったのである。  保育・教育の質とは、保育・教育内容の質のことであり、それを実施する保育者の質によ るところが大きい。この質の向上については、保育者の養成課程が重要な意味を持つもの と考えている。日本においては、保育士資格においては、長年国家試験の導入が検討され てきている。このことは、養成校での学びの質に差があるからである。  このように、世界的な課題である保育者の質の向上について、その養成課程から考えて いかなければならない。 Ⅱ 研究の目的  世界的に見て、様々な保育者の養成課程の取り組みが見られている。今回は、2015年に 「教師資格認定国家試験制度」を取り入れた中華人民共和国(中国)の保育者、幼稚園教諭 の養成課程について取り上げた。中国においては、近年教育熱の向上と共に、改革開放政 策により、教育においても自由化が進んだ。自由化と多様化のもとに、様々な保育内容を もった幼稚園(幼児園)が登場してきた。しかしながら、近年はその拡大と共に保育・教育 の質の問題がクローズアップされてきている。そのような中での教師資格認定国家試験制 度の導入は、中国全土において質の均衡を目的としている。このような中国での近年の教 育者・保育者の質の向上が求められる背景を理解して、日本の制度の全般と比較すること により、中国の幼稚園教員養成への課題について検討してみたい。

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図 1 (文部科学省 中国学校系統図より) Ⅲ 研究の方法  中国の制度的枠組みや法令等より取り上げた。また、実際に北京市や山西省大同市の幼 稚園に見学に行き、園長及び教員からの聞き取り調査を行った。  調査の期間は、2019年9月である。  調査対象は、山西省大同市の民間幼稚園1園と北京市の民間幼稚園2園(1園は、バイリ ンガル幼稚園である)。 Ⅳ 中国と日本の保育・教育について 1.中国の保育・教育制度 ①中国の学校教育体系  中国においては、図1のような学校体系を有している。

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図 2 (文部科学省 「中国の学校教育制度等」より)  小学校においては、1986年に定められた義務教育法においては、6歳からであるが、地 方においてはそれまでの7歳就学から段階的に6歳に下げられてきているので、6/7歳と なっている。 ②中国の教育行政について  中国の教育行政は、図2の通りである。  このことより、中国においては、教育は中央政府の主導によって進められている。 ③中国の保育  中国での幼児教育は、3歳から6歳までの幼稚園教育が中国教育部のもとで行われてい る。中国教育部とは、日本の文部科学省にあたる行政機関である。一方、0歳から3歳まで の託児所(日本での保育所)があり、日本の厚生労働省にあたる中国の衛生福利部が管轄 している。中国も日本と同様幼保2元体制であるが、日本との違いは、同じ年齢の子どもが、 幼稚園と保育所に通うような体制ではなく、年齢による区分になっており、日本とは異な る2元体制となっている。  中国は1978年の改革・開放政策のもと、社会主義市場経済へと移行していった。市場経 済への移行に伴い、効率的な投資が行われるようになり、託児所が閉園に追い込まれると ころが出てきた。閉園に追い込まれるようになった託児所に対して、幼稚園が吸収合併を

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するなどした結果、0歳から6歳までの保育を行う幼稚園が出現するようになった。結果 として、幼保2元体制ではあるが、保育を担う機関としては、幼保一体化ということになっ た。 ④中国の託児所の分類1  中国の託児所は次のように分類することができる。 ⅰ 保育時間による分類 ・半日 ・終日 ・24時間 ⅱ サービスによる分類 ・養護と早期教育 ・子育て支援と早期教育 ⅲ 実施主体 ・公立 ・私立 ・共同 ⑤中国の幼稚園教育の目的  中国の幼稚園教育の目的は、2001年に策定された「幼稚園教育指導要領」から読み取る ことができる。以下は、英語版からの日本語訳である。(英語版は文末に入れる。2 1. 中華人民共和国教育法に基づき、幼稚園における運営の規則と幼稚園での労働規則、 幼稚園における教育の質のためにこの指導要領を作成した。 2. 幼稚園教育は基礎教育の重要なコンポーネントは、学校教育および中国における生涯 教育の基礎段階である。都市部や農村部を問わず、すべての幼稚園は子どもの生活の 発展のための良い基礎を築くために、現実を把握して、地域の状況に応じて質の高い 教育を実施する必要がある。 3. 幼稚園は家庭と緊密に連携する必要があり、小学校と連携し、子どもの発達のために 適切な条件を作り出すために、様々な地域資源を活用していかなければならない。 4. 幼稚園は、心身の発達のため、幸福な経験をするために、発達の諸側面のニーズを満 たすために、健康的、豊かな生活と生活環境を提供する必要がある。 5. 幼稚園教育は、個性と心身の発達の規則、学びの性格を尊重する権利を尊ばなければ ならない。そのためには、基本的な活動や教育方法としての遊びを通して、個人差に 配慮して、個々の子どもの個性を助長していかなければならない。 このことから、中国の幼児教育の目的は、子どもの心身の健康的な発達であると考える。

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⑥中国の幼児教育の内容(カリキュラム)  中国の幼児教育の内容(カリキュラム)も、「幼稚園教育指導要領」にある。それによると、 5つの分野に分けられている。①健康②言語③社会④科学⑤芸術である。  各々の目的を要約すると次のようになる。  健康は、主体的に心身の健康について維持していくことができるようにすること。  言語は、物語を好んで聴いたり、相手の話すことを丁寧に聞いたりすることや中国語(標 準語)を理解したりすることである。  社会は、社会のルールを学び、困難を乗り越えていく力を身につけ、他者と協力するこ とを学ぶこと。  科学は、周りの自然環境は現象に興味を持ち、好奇心を育み、五感や脳を使って、問題を 解決して、適切な方法で、結果を伝えたり、算数に興味を持ち、動植物を大切にして、環境 を保護に気づくようになること。  芸術は、環境や生活、芸術の美しさを感じ、芸術的な活動に積極的に関わり、自己表現が できるようになる。  以上が各々の内容である。 ⑦中国の幼児教育の現状  改革開放政策の下、教育においても一定の自由化が進んだ。また、一人っ子政策や経済 的な発展により、子どもにかけるお金が増加した。その結果、幼児教育に求めることが増 加した。以前は、寄宿舎制などの形態があり、子どもの教育は国家の仕事であったが、現在 では、保護者が幼稚園を選択するような時代となっている。しかし、これも、都市部のこと であり、少数民族が住んでいるようないわゆる「農村部」と呼ばれているところでは、十分 な幼児教育を受けることさえ困難な地域も存在する。それは、教員の不足や中央で制定さ れた教育課程が伝わってこないことによるものである。このように現在の中国の幼児教育 は、地域間格差、経済力による格差などが広がっている。  また、保護者が責任を持って幼稚園を選択するようになってきたことにより、保護者に 教育内容や質を見極める力を求められるようになってきている。それらを補うかのように、 特に都市部においては、幼稚園のランク付けをしている。行政が、教育内容や教育設備等 によりランク付けをするのである。これにより、授業料も変わってくるのである。保護者 が選択する責任を求められるようになり、幼稚園もブランド化が進んでいる。フランチャ イズ的な手法も見られ、加盟料金を払い、同じ教育課程で、同じような園長、教員、保育員 研修を行い、質の均一化が図られている。  現在中国の幼稚園は、競争下にあると言ってもよい。 ⑧中国の教員養成  中国の幼稚園においては、2種類の保育者がいる。1つが幼稚園教諭で、もう1つが保育

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員である。中国では、幼稚園のクラスごとに2人の幼稚園教諭と1人の保育員を置くことを 義務付けている3 ・保育員  保育員とは、日本での「養護」を担当する職員のことである。子どもの衛生や生活の管理 を担っている。現在中国には、保育員の資格が初級から上級まで3種類ある。その養成課程 は、劉らの翻訳及びまとめ4によると次のようになる。 ○初級保育員(以下の条件を1つ満たさなければならない) ①中学校卒業して本職を2年以上担当した者。 ②中学校卒業して1年間保育訓練を受けて、本職を1年間担当した者 ③高校卒業して2年間保育訓練を受けた者。 ④幼児師範学校、幼児師範業高校卒業者。 ○中級保育員(以下の条件を1つ満たさなければならない) ①「初級職業資格証書」取得後、本職を4年以上担当した者 ②幼児師範学校、幼児市販職業高校卒業後、本職を4年以上担当した者 ③ 中郷職業教育の関連専門学科卒業後、本職を4年以上担当し、保育の仕事で優れた成績 を修めた者 ④中学校卒業して本職を6年以上担当した者 ○高級保育員(以下の条件を1つ満たさなければならない) ①「中級職業資格証書」取得後、本職を5年以上担当した者 ②中学校卒業して本職を10年以上担当した者 ③幼児師範学校、幼児師範職業高校卒業後、本職を8年以上担当した者 ④中等職業教育の関連専門学科卒業を、本職を8年以上担当した者 ・幼稚園教諭(幼児園教師資格)  幼稚園教諭は、日本の幼稚園教諭と同じで、幼稚園での教育を担っている。中国の教師 法によれば、幼児園教師資格(日本での幼稚園教員免許状)を取得するためには、規定され た学歴を満たさなければならない。規定された学歴とは、3つのレベルがあるが、資格と しての差はない。学歴については、保育員と同じく劉らの翻訳よりまとめると以下のよう になる。 ①中等教育レベルの養成機関 ・ 幼児師範学校、普通師範学校及び職業高校に付設する幼児教師クラス(日本には相当 する教育機関はない) ②高等専門教育レベルの養成機関(日本の短大または専門学校に相当) ・ 幼児高等師範専門学校や普通の高等専門教育機関 ③四年生本科大学レベルの養成機関 ・ 師範大学・師範学院(単科大学)及び普通の大学・学院における就学前教育学部・学科 等

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 2015年度より、教師資格認定国家試験制度が始まり、卒業するだけでは教員資格を取得 することができなくこの試験に合格しなければならなくなった。この試験は、筆記試験と 面接試験で行われる。また、それまでは、教員資格は1度取得すると期限なしに所有するこ とができたから、この制度以降、資格取得後3年以内に教職に就かないと無効となる。また、 5年ごとに更新が義務付けられている。 2.日本の就学前教育 ①日本の学校教育体系  ここでは、中国との比較のために日本の学校教育体系を載せておく。 ②日本の学校教育行政  日本の学校教育にかかわる行政については、中央に文部科学省があり、都道府県に教育 委員会があり、また、その下に市町村教育委員会がある。 ③日本の保育  日本の保育は、1872年の学制をもとに、1876年に東京女子師範学校附属幼稚園が開園 した。また、保育所は、現在の制度としては、1947年の児童福祉法制定によるものであるが、 制度以前に子どもを預かり、育児の代替をしていた人々はいた。また、それらを組織的に 行ってきた人々もいた。それらを汐見らは「保育所的保育施設」と呼んでいる5。それらの初 期のものとしては、1871年横浜にできた「亜米利加婦人教授所」である6。また、2008年の「就 学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律」を基に誕生した 「こども園」がある。幼稚園は、満3歳から小学校就学までを対象とした、文部科学省が管 轄する学校であり、保育所は、0歳から小学校就学までを対象とした厚生労働省が管轄す る、児童福祉施設であり、こども園は、幼稚園機能と保育所機能を併せ持った、内閣府が管 轄する幼児教育・保育の施設である。このように日本の保育は、対象とする子どもの年齢 を同じにする3元体制なのである。  また、上記以外に、都道府県や市町村が独自で認証する認可外保育施設や厚生労働省が 管轄する小規模保育事業、家庭的保育事業、居宅訪問型事業などがある。 ④日本の幼児教育の目的  日本の幼児教育の目的について、法令をもとに考えてみたい。  日本の教育基本法第11条には次のように述べられている。「幼児期の教育は、生涯にわ たる人格形成の基礎を培う重要なものであることにかんがみ、国及び地方公共団体は、幼 児の健やかな成長に資する良好な環境の整備その他適当な方法によって、その振興に努め なければならない。」また、学校教育法第22条において、幼稚園教育の目的が次のように述 べられている。「幼稚園は、義務教育及びその後の教育の基礎を培うものとして、幼児を保

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図 3 (文部科学省学校系統図より7 育し、幼児の健やかな成長のために適当な環境を与えて、その心身の発達を助長すること を目的とする。」  保育所保育については、保育所保育指針第1章総則にその目的が明示されている。それ は次のとおりである。「保育所は、児童福祉法(昭和22年法律第164号)第39条の規定に基 づき、保育を必要とする子どもの保育を行い、その健全な心身の発達を図ることを目的と する児童福祉施設であり、入所する子どもの最善の利益を考慮し、その福祉を積極的に増

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図 4 (文部科学省教育委員会についてより8 進することに最もふさわしい生活の場でなければならない。」  幼保連携型認定こども園については、「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な 提供の推進に関する法律」第1条において次のように述べられている。「この法律は、幼児 期の教育及び保育が生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであること並びに我が 国における急速な少子化の進行並びに家庭及び地域を取り巻く環境の変化に伴い小学校就 学前の子どもの教育及び保育に対する需要が多様なものとなっていることに鑑み、地域に おける創意工夫を生かしつつ、小学校就学前の子どもに対する教育及び保育並びに保護者 に対する子育て支援の総合的な提供を推進するための措置を講じ、もって地域において子 どもが健やかに育成される環境の整備に資することを目的とする。」  これらのことから、日本の乳幼児教育の目的は、「人間形成の土台として、健やかに育成 すること」と考えられる。 ⑤日本の保育者養成制度  日本の保育者養成は、乳幼児教育施設により異なっている。

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別表第一(第五条、第五条の二関係) 図 5 (教育職員免許状別表一) 第一欄 第二欄 第三欄 所要資格 基礎資格 大学において修得することを必要 とする最低単位数 免許状の種類 教科に関する 科目 教職に 関する 科目 教科又 は教職 に関す る科目 特別支 援教育 に関す る科目 幼稚園 教諭 専修免許状 修士の学位を有すること。 六 三五 三四 一種免許状 学士の学位を有すること。 六 三五 一〇 二種免許状 短期大学士の学位を有すること。 四 二七 小学校 教諭 専修免許状 修士の学位を有すること。 八 四一 三四 一種免許状 学士の学位を有すること。 八 四一 一〇 二種免許状 短期大学士の学位を有すること。 四 三一 二 中学校 教諭 専修免許状 修士の学位を有すること。 二〇 三一 三二 一種免許状 学士の学位を有すること。 二〇 三一 八 二種免許状 短期大学士の学位を有すること。 一〇 二一 四 高等学 校教諭専修免許状 修士の学位を有すること。一種免許状 学士の学位を有すること。 二〇二〇 二三二三 四〇一六 特別支 援学校 教諭 専修免許状 修士の学位を有すること及び小学校、中学校、高等学校又は幼稚園の教諭の 普通免許状を有すること。 五〇 一種免許状 学士の学位を有すること及び小学校、中学校、高等学校又は幼稚園の教諭の 普通免許状を有すること。 二六 二種免許状 小学校、中学校、高等学校又は幼稚園の教諭の普通免許状を有すること。 一六 ・幼稚園  幼稚園教諭には、幼稚園教員免許状が必要である。教員免許状の1つであるので、原則、 大学、短期大学での養成となっている。ただし、歴史的な流れの結果としての一部の専門 学校でも養成している。短期大学では、2年課程で2種免許状、4年制大学では、1種免許状、 そして、大学院で専修免許状を取得できる。教育職員免許に示されている幼稚園教員免許 状の内容について図5で紹介する。 ・保育所  保育所で勤務する保育士については、学校に限らず、厚生労働省の指定した養成施設(大 学、短期大学、専門学校、NPO法人等)で養成を行っている。また、養成施設を卒業しなく ても、都道府県の実施する保育士試験において合格することにより、資格を取得できるよ うになっている。養成施設において学ばなければならない科目等については、図6におい

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図 6 (指定保育士養成施設の指定及び運営の基準 厚生労働省) 教科目 〈必修科目〉 【保育の本質・目的に関する科目】 ・保育原理(講義2単位)・教育原理(講義2単位)・子ども家庭福祉(講義2単位) ・社会福祉(講義2単位)・子ども家庭支援論(講義2単位)・社会的養護Ⅰ(講義2単位) ・保育者論(講義2単位) 【保育の対象の理解に関する科目】 ・ 保育の心理学(講義2単位)・子ども家庭支援の心理学(講義2単位)・○子どもの理解と援 助(演習1単位)・子どもの保健(講義2単位) 【保育の内容・方法に関する科目】 ・ 保育の計画と評価(講義2単位)・保育内容総論(演習1単位)・保育内容演習(演習5単位)・ 保育内容の理解と方法(演習4単位)・乳児保育Ⅰ(講義2単位)・乳児保育Ⅱ(演習1 単位)・ 子どもの健康と安全(演習1単位)・障害児保育(演習2単位)・社会的養護Ⅱ(演習1単位)・ 子育て支援(演習1単位) 【保育実習】 ・保育実習Ⅰ(実習4単位)・保育実習指導Ⅰ(演習2単位) 【総合演習】 ・保育実践演習(演習2単位) 〈選択必修科目〉 【保育の本質・目的に関する科目】 ・養成校ごとに設置 【保育の対象の理解に関する科目】 ・養成校ごとに設置 【保育の内容・方法に関する科目】 ・養成校ごとに設置 ・ 保育実習Ⅱ(実習2単位)・保育実習指導Ⅱ(演習1単位)・保育実習Ⅲ(実習2単位)・保育実 習指導Ⅲ(演習1単位) て示す。 ・認定こども園  保育教諭については、文部科学省が、制定時に以下のように説明している。  このことより、幼稚園教員免許状と保育士資格の両方を持つことにより、保育教諭にな ることができる。 ⑥カリキュラム  日本の乳幼児教育においては、保育施設ごとに国が定めたカリキュラム(指針を含む) 図 7 (文部科学省「幼保連携型認定こども園と保育教諭」より) ○ 新たな「幼保連携型認定こども園」は、学校教育と保育を一体的に提供する施設であるた め、その職員である「保育教諭」については、「幼稚園教諭免許状」と「保育士資格」の両方の 免許・資格を有していることを原則としている。

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がある。幼稚園においては、「幼稚園教育要領」、保育所においては、「保育所保育指針」そ して、幼保連携型認定こども園においては、「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」が 定められている。そして、これらは、上位法(幼稚園においては、学校教育法施行規則、保 育所においては、児童福祉施設の設備及び運営に関する基準、幼保連携型認定こども園に おいては、就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律)に よって定められ、実施することが義務付けられている。 Ⅴ 中国の幼稚園調査 1. 質の向上のために特定のブランド化された幼稚園では、均質的な保育者養成を行って いる。次に示す写真は、園長や教師、保育員などの責務が明示されている現状を示すも のである。

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2.園の環境  次に示す写真は、北京市内と大同市の幼稚園の園庭の環境である。地面は舗装され、遊 具は一箇所に集められているのがわかる。 3.保育内容  プライバシー保護のため写真を載せることはできないが、バイオリン、バスケットボー ル、縄跳びなどの一斉保育が見られ、また、昼食の最中もモニターを見ながらの学習時間 とされていた。 4.保育時間  保育時間は、朝7時から、夜7時までとなっていて、3食を幼稚園で食べている。また、食

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1 MoreCare发布《中国托育服务行业白皮书》,幼有所育 应放 槛、制定标准 http://www.jingmeiti. com/archives/22873

2 Part I General Provisions

I. in order to implement the People's Republic of China education law, the regulations on the administration of kindergartens and the rules of work in kindergartens, and guide the kindergarten to carry out quality education in depth, this outline is formulated.

Two, kindergarten education is an important component of basic education, and it is the foundation stage of school education and lifelong education in china. All types of kindergartens in urban and rural areas should proceed from reality and carry out quality education according to local conditions, so as to lay a good foundation for the development of children's life.

Three, kindergartens should work closely with families and communities to connect with primary schools and make full use of various educational resources to create favorable conditions for the development of children.

Four, kindergarten should provide children with healthy, rich living and living environment, to meet their needs in many aspects of development, so that they can get in the happy childhood experience beneficial to

事は幼稚園の調理室で調理されたものを食べる。 Ⅵ まとめ  中国においても、保育の歴史は長い。特に、社会主義国であるので、保育制度は充実して いる。しかし、その内容においては、歴史的見ると、様々な国の影響を受けてきた。社会主 義時代は、ソ連であり、今は、アメリカや日本の影響を受けている。そのような中での保育・ 幼児教育熱が高まり、多様な保育がなされている。このようなことは日本においても70年 代に見られたことである。日本においては、幼稚園教育要領や保育所保育指針でその質の 維持を図り、養成校については、その課程申請及び教員審査で質の維持を図ってきた。し かしながら、少子化とともに、養成校に入学してくる学生の質の低下が見られ、それだけ では十分に保育者としての質の維持が難しくなってきている。中国はいち早く養成校の卒 業だけではなく、国家試験制度を導入し、将来的に教師にならない学生への資格付与がで きないようにした。また、日本は10年ごとの教員免許更新であるが、中国では、5年ごと になり、それも講習を受けるのではなくて、勤務校(園)における実績が求められるように なっている。このような中国でのやり方は、教師の多様性を否定するのではないかという 考えもあるが、それ自体は、試験の内容に関わってくることであると考える。したがって、 今後の保育者の質の向上のためには、入口における統一的な国家試験の導入と教師として やる気のある人たちが養成校に通い、集約した指導体制のもとで、授業を受けかつ、実習 においても、集約的な指導ができるように、資格取得後の期限を定めること、そして、定期 的な更新が必要であるが、それも単なる受動的な講義ではなくて、通常の勤務状況なども 鑑みられるような更新体制を取ることが必要ではないかと考えた。

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the development of the body and mind.

Five, the kindergarten education should respect the personality and the right to respect the laws of physical and mental development and learning characteristics, to the game as the basic activities, teaching methods, pay attention to individual differences, promote the development of each child personalized.

3 教育部「教育部関于印発《幼児園教職工配備標準(暫. 行)》的通知」2015年10月19日 4 劉、李、王「日本と中国における保育者養成システムに関する比較検討」『福山市立大学教育学部 研究紀要』2016年vol、pp..137-147 5 汐見稔幸ら『日本の保育の歴史 子ども観と保育の歴史150年』p.93、萌文書林2017年 6 汐見稔幸ら、同掲書、p.94、2017年 7 http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/others/detail/1318188.htm 8 http://www.mext.go.jp/a_menu/chihou/05071301.htm

図 1 (文部科学省 中国学校系統図より)Ⅲ 研究の方法  中国の制度的枠組みや法令等より取り上げた。また、実際に北京市や山西省大同市の幼稚園に見学に行き、園長及び教員からの聞き取り調査を行った。 調査の期間は、2019年9月である。 調査対象は、山西省大同市の民間幼稚園1園と北京市の民間幼稚園2園(1園は、バイリンガル幼稚園である)。Ⅳ 中国と日本の保育・教育について1.中国の保育・教育制度①中国の学校教育体系 中国においては、図1のような学校体系を有している。
図 2 (文部科学省 「中国の学校教育制度等」より)  小学校においては、1986年に定められた義務教育法においては、6歳からであるが、地方においてはそれまでの7歳就学から段階的に6歳に下げられてきているので、6/7歳となっている。②中国の教育行政について 中国の教育行政は、図2の通りである。 このことより、中国においては、教育は中央政府の主導によって進められている。③中国の保育 中国での幼児教育は、3歳から6歳までの幼稚園教育が中国教育部のもとで行われている。中国教育部とは、日本の文部科学省にあたる行政機
図 3 (文部科学省学校系統図より 7 ) 育し、幼児の健やかな成長のために適当な環境を与えて、その心身の発達を助長すること を目的とする。」  保育所保育については、保育所保育指針第1章総則にその目的が明示されている。それ は次のとおりである。 「保育所は、児童福祉法(昭和22年法律第164号)第39条の規定に基 づき、保育を必要とする子どもの保育を行い、その健全な心身の発達を図ることを目的と する児童福祉施設であり、入所する子どもの最善の利益を考慮し、その福祉を積極的に増
図 4 (文部科学省教育委員会についてより 8 ) 進することに最もふさわしい生活の場でなければならない。」  幼保連携型認定こども園については、 「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な 提供の推進に関する法律」第1条において次のように述べられている。 「この法律は、幼児 期の教育及び保育が生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであること並びに我が 国における急速な少子化の進行並びに家庭及び地域を取り巻く環境の変化に伴い小学校就 学前の子どもの教育及び保育に対する需要が多様なものとなっていること
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