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HR図による散開星団M41の距離と年齢推定

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Academic year: 2021

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0 12S1-043 菅原 慶裕

HR 図による散開星団M41の

距離と年齢推定

明星大学 理工学部 総合理工学科 物理学系 天文学研究室 12S1-043 菅原 慶裕 12S1-048 髙松 謙太朗

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1

要旨

過去の卒業論文を参考に、明星大学天文台での観測から散開星団までの距離 と年齢を求めることを研究目的とした。目標天体をM41とし、40cm 反射望遠 鏡と冷却CCDカメラでBバンド及びVバンドの観測を行った。撮影した写真 から各バンドでの星の見かけの等級を求め、既に絶対等級の分かっている太陽 近傍の恒星と同じグラフの上にHR図(CM図)を作成した。星団の主系列の 絶対等級は太陽近傍の恒星と同じであると仮定したところ、見かけの等級と絶 対等級の差は9等級と求められ、ここから距離が 2461 光年と推定された。また、 HR図上から転回点(恒星の進化が進み、主系列を離れる点)を選定したとこ ろ、そこでの色指数はB-V=-0.14324 であった。ここから転回点の恒星の質量 を求め、さらに理論に基づいて、その質量の星が主系列に滞在する年数(星団 の年齢と同等と仮定)を求めたところ、星団の年齢は 8.4×107年と推定された。

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2

目次

第1章 星団 ··· 3 1.1 星団 ··· 3 1.2 星団の種類 ··· 3 1.2-1 球状星団 ··· 3 1.2-2 散開星団 ··· 4 1.3 目標天体 M41 について ··· 5 第2章 距離・年齢の求め方 ··· 6 2.1 原理 ··· 6 2.1-1 距離を求める ··· 6 2.1-2 HR図について ··· 7 2.1-3 年齢を求める ··· 8 2.1-4 UBV測光系 ··· 9 2.1-5 ポグソンの式 ··· 10 第3章 観測方法と画像処理 ··· 11 3.1 観測と処理 ··· 11 3.1-1 観測・撮影 ··· 11 3.1-2 画像合成 ··· 14 3.1-3 測光 ··· 15 第4章 観測結果 ··· 16 第5章 計算結果 ··· 19 第6章 考察 ··· 21 引用文献 ··· 22 謝辞 ··· 23

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3

第1章 星団

1.1 星団

狭い範囲内に、多数の恒星が密集して見えるもののうち、物理的(主に重力) な関連をもったものを星団という。星団内の星は、どれも同じ起源の星である と考えられている。星団の種類には大きく分けて球状星団と散開星団の2種類 がある。

1.2 星団の種類

1.2-1 球状星団 数万~数百万個の恒星から構成される星団。恒星の年齢は、100億歳以上 と老歳であり、ほとんどが太陽より寿命が長い。銀河創生の初期段階に誕生し たと考えられている。恒星は星団の重力によって束縛されており、そのため長 い時間がたっても球状を保っている。銀河を包み込むように存在しているので、 地球からは全天で観測することができる。恒星の集中が密な順に、タイプⅠ~ ⅩⅡに細分類されている。代表的な球状星団は、さそり座のM4、ヘラクレス 座のM13(図1)などがあげられる。 図1 M4(さそり座) Astro Arts サイトより

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4 図2 M45(おうし座) Astro Arts サイトより 1.2-2 散開星団 数十~数百個の恒星が集まった星団。球状星団より星の数が少なく、集まり 方も球状星団と比べるとまばらでゆるやかである。暗黒星雲の中で星が生まれ ると同時に誕生した若い星が多く、その星の年齢は数百万~数億歳である。銀 河系のディスクに多く存在している。地球からは、天の川銀河に沿うような位 置で観測することができる。恒星の集中がゆるい順にタイプc,d,e,f,gと 細分類されている。代表的な散開星団はおうし座のプレアデス星団(M45)、 かに座のプレセぺ星団(M44)などがあげられる。

(6)

5

1.3 目標天体について

M41(NGC2287)

星座 おおいぬ座 距離 2,470 光年 推定年齢 1.9☓𝟏𝟎𝟕 赤径 06h 46.0m 赤緯 -20°44’ 視等級 +4.5 等級 視直径 38’ 図3 M41(おおいぬ座) Astro Arts サイトより

(7)

6

第2章 距離・年齢の求め方

2.1 原理

2.1-1 距離を求める 恒星までの距離を求めるには、絶対等級と見かけの等級の関係から

m-M = 5log(r/10)

…(1.1)

m:天体の見かけの等級 観測した時に観測点で見える明るさ M:天体の絶対等級 太陽から一定の距離(10pc=32.6 光年)に天体を置いた時の明るさ r:天体までの距離(pc) また(1.1)式を変形すると、

r =

10

𝑚−𝑀+5

5

となる。 本研究では、星団の恒星がHR図上で主系列星に位置していると考え、 絶対等級 → 太陽近傍の星の等級 見かけの等級 → 観測して得られた等級 を上記の式に代入して距離を求める。

(8)

7 2.1-2 HR 図 Heltzsprung-Russell(ヘルツスプルング・ラッセル)図の略で、デンマーク の天文学者 E・ヘルツスプルングとアメリカの天文学者 H・N ラッセルによって 考案されたものである。(図4)光度と温度が分かっている星をHR図に乗せる と、理論計算による軌跡と比較することで、星の進化段階を推測することがで きる。HR図は星の進化の様子を知る上で、非常に重要な図である。 HR図を作成するには、星団の星一つ一つのスペクトル測定を行う必要があ る。スペクトル測定には分光器が必要であるため、今研究では簡易的に2種類 のフィルターによる観測で得ることができるCM図をHR図の代わりに作成し た。CM(Color-Magnitude)図とは、横軸に色指数、縦軸に見かけの等級を用 いたものである。星団に属する星は、太陽からほぼ等距離にあると考えてよい ので、恒星の絶対等級の代わりに見かけの等級を用いても差し支えが無い。 ※色指数…天文学で天体の色を表す指標。 色指数は天体の等級を2種類の異なる色のフィルターを用いて測定し、 その等級の差を取ることで求められる。 今研究では、観測により得られた数値を用いて、CM図を作成し、距離を求 める。 図4 HR図

(9)

8 主系列星の 有効温度 色指数 質量 Vバンド絶対等級 スペクトル型 (K) B-V (等) (太陽質量) (等) O5 45000 -0.3 40 -5.5 B0 29000 -0.3 15 -4 B5 15000 -0.16 6 -1 A0 9600 0 3 0.5 A5 8300 0.15 2 1.8 F0 7200 0.33 1.7 2.4 F5 6600 0.45 1.3 3.2 G0 6000 0.6 1.1 4.4 G5 5600 0.68 0.9 5.1 K0 5300 0.81 0.8 5.9 K5 4400 1.15 0.7 7.2 M0 3900 1.4 0.5 8.7 M5 3300 1.6 0.2 12

質量(太陽質量)

主系列を終える年齢(年)

100

2.7E+06

50

5.9E+06

20

1.0E+07

10

2.6E+07

5

1.0E+08

2

1.3E+09

1

1.0E+10

0.7

4.9E+10

0.5

1.7E+11

2.1-3 年齢を求める 天体の年齢を求めるためには、HR図上で転回点にあたる星を選定する。観 測値をもとにして得た転回点の色指数と、理科年表の数値を用いて年齢を推定 した。 ※転回点…主系列の左上端の点。古い星団ほど転回点が右下にある。転回点に ある星は、今まさに中心で水素を消費し尽して赤色巨星に進化し始めている。 赤色巨星に進化するということは主系列を離れるということを意味している。 図5 主系列星の物理量 理科年表より 図6 主系列星の寿命 (現代物理学の基礎「宇宙物理学」p.183より)

(10)

9 2.1-4 UBV測光系 2種類の異なるフィルターを使用して撮影を行い、その等級の差を色指数と して用いる。各フィルターの透過率は以下の通りである。(図7参照) 今回使用する冷却CCDカメラには、ジョンソンフィルターが使われている。 Bフィルター青色光(青色透過フィルター)350~550nm Vフィルター緑色光(緑色透過フィルター)480~650nm を使用した。 B,Vフィルターのそれぞれの見かけの等級を出すには、ポグソンの式を使う。 図7 ジョンソンフィルターの透過率と波長

(11)

10 2.1-4 ポグソンの式 星の等級を数式で定義したもの。1等星と6等星の等級差は5等級、明るさ は 100 倍明るい。これより、1 等級差あたりでは 100 の5乗根で約 2.5 倍明るい ということになる。

m = n –2.5 × log ( Im / In )

…(1.2)

m:目標星団の等級 n:標準星の等級 Im:目標星団内の恒星の明るさ In:標準星の明るさ ※ここでは明るさの数値に測定カウント数の値を使用する カウント数・・・光子数、星の明るさに相当 ポグソンの式を用いて、Bフィルター、∨フィルターそれぞれの見かけの等 級を求めることができ、得られた等級からB-∨色指数が求められる。 今観測における標準星は以下の通りである。数値は、Simbad に示されている 数値を使用した。標準星は、撮影したB,Vフィルターの写真のどちらにも撮 影されている恒星を選定した。 名前

CPD-20 1603

座標

06h46m03s

-20

°

45’03”

B 等級

10.75

V 等級

10.70

(12)

11

第3章 観測方法と画像処理

3.1-1 観測・撮影

使用機材

 望遠鏡:明星大学天文台の反射望遠鏡 (写真左)  カメラ:冷却CCDカメラ BITRAN社 BN-82L (写真右)  フィルター:B,Vフィルター  画像処理ソフト:マカリィ、ステライメージ7

(13)

12

撮影について

撮影日時: 2015年 12月10日 AM1:00~AM4:00  ライトフレーム 撮影枚数 Bフィルター 100枚 Vフィルター 100枚 < 露出時間 6秒 >  ダークフレーム 撮影枚数 Bフィルター 10枚 Vフィルター 10枚 < 露出時間 6秒 >

(14)

13  フラットフレーム 撮影枚数 Bフィルター 10枚 Vフィルター 10枚 < 露出時間 1秒 > ※ライトフレーム レンズのキャップを開けて撮影した画像。天体情報以外にバイアス情報 (偏り)やダークノイズ情報が含まれる。 ※ダークフレーム レンズのキャップをして光が入らないようにし、ライトフレームと同じ露 出時間で撮影した画像。暗電流によるノイズやバイアス情報が含まれている。 ※フラットフレーム 均一な光源を撮影した画像。周辺減光やフィルター上のゴミの影が映る。

(15)

14 2.2-2 画像合成 各フィルターでそれぞれ撮影した画像を合成し、各フィルターで 1 枚の画像 にまとめるために、天体画像処理ソフトウェア・ステライメージを使用した。 この作業で観測画像をダーク、フラット補正後、コンポジット(合成)した。 ステライメージでの作業中の画面

(16)

15 2.2-3 測光 ステライメージで合成処理したBフィルター、Vフィルターの写真を天体教 育画像解析ソフト:マカリィを使って測光した。 B及びV画像から得られたカウント値から色指数を求め距離を求めた。 ※色指数を出すためにカウント値B-Vの引き算を行うので、BとVで同じ 星をマーク(上図の黄色丸)していき、番号を付けて混同を防いだ。 M41の測光画像

(17)

16

第4章 観測結果

以下は観測画像である。また、各フィルターでのカウント値を次ページに載せ た。

Bフィルター

Vフィルター

(18)

17

B カウント値

1 83718 31 29732 61 19841 2 39974 32 598830 62 53266 3 80876 33 16822 63 63067 4 616245 34 19739 64 24317 5 527522 35 91363 65 19174 6 567004 36 48766 66 305538 7 44732 37 259495 67 89695 8 40696 38 17797 68 98912 9 79917 39 140116 69 62970 10 79917 40 222405 70 30884 11 16954 41 413764 71 27652 12 338750 42 64382 72 52683 13 48749 43 128048 73 381871 14 62440 44 543822 74 114723 15 24077 45 1102912 75 56745 16 35117 46 655934 76 31526 17 269798 47 69516 77 13923 18 595388 48 43687 78 72213 19 150196 49 5594 79 39243 20 257613 50 64522 80 18654 21 711257 51 23343 81 84103 22 59865 52 17204 82 7843 23 36572 53 89944 83 46281 24 58473 54 168642 84 410344 25 39460 55 47253 85 34930 26 382170 56 63062 86 21096 27 185037 57 260460 87 411415 28 112303 58 47030 88 27101 29 13526 59 324391 89 11845 30 1096314 60 213130 90 67716

(19)

18

V カウント値

1 77759 31 1498920 61 275473 2 39782 32 57771 62 175649 3 121453 33 521533 63 30742 4 549096 34 17396 64 50540 5 1206174 35 21975 65 71958 6 599597 36 82244 66 24921 7 44137 37 47100 67 21759 8 39959 38 221211 68 266569 9 77456 39 20207 69 84074 10 90413 40 121047 70 91420 11 48277 41 194060 71 128253 12 298271 42 352149 72 60038 13 48576 43 67439 73 37432 14 60270 44 115027 74 53978 15 47926 45 424007 75 672020 16 32530 46 856326 76 97347 17 241682 47 566442 77 56734 18 486775 48 62556 78 40959 19 94674 49 43524 79 15785 20 213402 50 21757 80 65480 21 2092723 51 60904 81 38349 22 69229 52 24097 82 19397 23 44059 53 18909 83 317066 24 37991 54 194601 84 20279 25 52845 55 144301 85 48483 26 315109 56 45243 86 886738 27 220057 57 57585 87 34519 28 99800 58 219974 88 21522 29 62818 59 44757 89 882946 30 15224 60 90408 90 62818

(20)

19

第5章 計算結果

※青プロットでは、縦軸を「見かけの等級」 赤プロットでは、 「絶対等級」と置いている。 m:M41の等級 - 10等級 M:太陽近傍の星の等級 - 1等級 とおいて、m-M=9等級とした。 この値を第2章で紹介した(1.1)式に代入して計算すると、 M41までの距離rは、以下のようになった。

m-M=5log(r/10)

9=5log(r/10)

r=755(pc)=

2461光年

(21)

20 上記CM図より、転回点の色指数:-0.14324 とする。 この値と、第2章の図5、6からの値を用いてM41の年齢を算出すると以下 のようになった。 M41の年齢 ≒

8.4×

𝟏𝟎

𝟕

(年)

となった。 引用文献:Stoyan-Ronald(2008)

(22)

21

第6章 考察

今回求めた計算結果で、距離に関しては文献の値と近い値を求めることがで きた。今年度から導入された新しい冷却CCDカメラを使用したため、より正 確なデータを得られたことや、観測が良い条件(天候や月の明るさ等)ででき たからであると思われる。 しかし、年齢に関してはあまり近い値を出すことができなかった。文献に近 い値を出すには、転回点の色指数が約-0.275 にならなければならない。そのた め、選定した色指数はもう少し低くならなければならなかった。作成したHR 図に、-0.275 よりも低い色指数の星が観測できていることから、測光時に星を 見落としてしまい、転回点とする星が正確ではなかったことが考えられる。

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22

引用文献

 「散開星団までの距離」 明星大学卒業論文

10s1-010 大枝 克弥 10s1-004 阿久津 貴晃

 「M38までの距離」 明星大学卒業論文

09s1-027 生田目 旭

 Astro Arts

 メシア天体ガイド

 理科年表 (平成28年) 国立天文台

 星雲・星団ガイドマップ 誠文堂新光社

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謝辞

本研究を進めるにあたり、望遠鏡の使い方やCCDカメラの撮影方法、天文 学の知識など、大変多くのご指導を小野寺先生、井上先生、日比野さん、院生 の皆様からいただきました。 また、研究発表を合同で行った富沢・新谷ペアの二人、夜遅くに一緒に観測 してくれた矢口氏、古市氏など天文研究室の同級生に支えられて研究を行うこ とができました。 天文研究室で過ごさせていただいた 1 年間、私達二人の見苦しい点がいくつ もあったと思います。本当にお世話になりました。最後まで温かく見守ってく ださった皆様に大変感謝しております。ありがとうございました。

参照

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