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健康づくりを追求する中で学んだこと

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Academic year: 2021

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173 ─  ─ 2018;68:173~174

 流 れ

健康づくりを追究する中で学んだこと

石川 麻衣

1 1 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学大学院保健学研究科看護学講座  私が過去に個人及びチームメンバーとして取り組んだ研 究テーマを羅列してみると,保育所看護職の活動,保健師 の危機管理(災害看護)活動,地域ケアシステム構築にお ける行政保健師の看護実践知,行政保健師の政策関与能力, 地域看護実践における予防的戦略,高齢者の予防的支援及 びサポートネットワーク,文化的視点を基盤とした子育て 支援,健康づくりのライフストーリー,保健ボランティア 住民の活動支援,乳児全戸訪問事業の効果,行政保健師の 健康増進計画推進活動,地域看護の基礎教育方法,保健師 の業務研究支援,自治体のミドルマネージャー保健師の役 割行動,後期高齢者の保健指導方法,行政保健師の地区マ ネジメント等です.  こうやってテーマを見ると,対象者もばらばら,活動領 域もばらばらで,一貫性がないように見えますし,飽きっ ぽい性格を反映しています.その一方で,このようなテー マの変遷が,私の専門とする公衆衛生看護学の特質,もし くは保健師の専門性を表しているようにも思えます.  公衆衛生看護とは,「集団に焦点をあてた、コミュニティ 志向の看護活動であり,その目標は,すべての人々を対象 に,人々が健康になることができる状態を創造し,疾病と 障害を予防すること」1 だと言われています.私は,大学 卒業後,東京都特別区の保健師として働きました.特別区 を選んだ理由は,保健所機能と市町村の機能双方をもって いるため,それこそ乳児からお年寄りまで,健康な人から 病を抱えた人まで,日常的な生活支援から健康危機の対応 まで,ありとあらゆる人に対し,より健康になれるような 関わりができると思ったからです.  公衆衛生看護学の中での自分のテーマは何かと聞かれた ら,私は,まず「健康づくり」と答えます.では,健康づ くりをテーマに,どのように研究を積み重ねてきたかをご 紹介したいと思います.  学士課程の時の地域看護関連分野における総合実習で, 家庭訪問時に健診の受診勧奨をしてくるよう指導を受けま した.この時,未受診者全員に本当に受診勧奨する必要が あるのだろうかと疑問に思ったことを発端に,卒業研究に 取り組みました.この卒業研究では,総合実習の際に健診 未受診だった方27名に訪問し,了解の得られた方7名に, 今どのような生活をしているかお話を伺いました.そして, 生活の中に健診の機能を担うものが他に存在するかという 視点から分析を行った結果,未受診の理由や健診目的の達 成方法の有無から,どのような援助が健康の保持増進に有 効であるかを考えることができました.しかし,本当のと ころ行政保健師の支援は住民にとってプラスとなっている のだろうか? という新たな疑問の種が蒔かれました.こ れが十数年後にやっと芽吹き,住民の健康づくりの発展と 行政保健師の支援との関連をテーマに博士研究に取り組み ました.  健康づくりの発展を博士論文のテーマにすると決めたも のの,ここでいう健康づくりの発展の様相をどう捉えるか で壁にぶつかりました.保健医療専門職の視点でみた発展 文献情報 投稿履歴:  受付 平成30年6月15日  採択 平成30年6月18日 論文別刷請求先:  石川麻衣  〒371-8514 群馬県前橋市昭和町3-39-22        群馬大学大学院保健学研究科看護学講座  電話:027-220-8927  E-mail: [email protected]

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174 ─  ─ 健康づくりを追究する中で学んだこと と,住民自身の見方での発展が本当に同じものなのか,疑 問が生じました.たとえば,保健事業の参加による効果を 明らかにした報告などは数多くありますが,それは事業参 加者の立場から見ると,その人がこれまで取り組んできた 健康づくりの一側面でしかありません.参加者本人の人生 を通した健康づくり全体において,一つの健康づくり活動, さらにその健康づくり活動に関わる保健師の支援がどのよ うな意味を持つのかを明らかにしたいと思いました.そこ で,ライフストーリーに着目しました.語るという作業を 通じて,その人の主観的な経験に意味付けがなされます. この意味付けを発展として捉えられないかと考えました. しかし,それまでのライフストーリー研究では,人生全体 や病の経験に対する意味付けが明らかにされていたのです が,健康づくりの経験を語ることができるのかが,わかっ ていませんでした.  そこで,多様な健康づくりを行っており,また豊富な人 生経験の中から健康づくりが意味付けられていると思われ る独居女性高齢者のライフストーリーを聴取し,健康づく りを構造的に明らかにするという研究2 に取り組みました. その結果,語りを通じてこれまでの人生や現在の生活,未 来の見通しに立脚した独自性の高い健康づくりの意味付け が構成されることを見出し,次の段階に移りました.  次の研究では,一つの同じ健康づくりを目的とした自主 サークルに参加している12名のライフストーリーのテー マ分析を行いました.3 これは,同じ時に同じ場所で同じ プログラムを実施することを通じて,各々の人生を通した 健康づくりにどのような影響を受けているかを見出すため です.年代や性別,健康状態,これまでの仕事などが異な るメンバーのライフストーリーは,語り方やテーマの内容 など多彩でした.参加者の具体的な状況や体験の内容は異 なっていましたが,家族のつながり,タイミング,友だち の存在,受病や健康状態の悪化による健康管理の強化が, 共通性の高いテーマとして見出されました.また,メンバー の語りは,サークルが,より質の高い健康づくりを行うた めの勉強の機会であり,健康づくりを継続するための手段 の一つとして価値付けられていることを示していました.  上記の研究を礎に,博士論文4 では,コミュニティの健 康づくり活動参加者のライフストーリーからみた健康づく りの発展と行政保健師の支援との関連を明らかにすること を通じて,コミュニティの健康づくり発展に貢献する行政 保健師の支援とは何かを探究しました.コミュニティにお ける健康づくり活動3事例を対象に,活動参加者24名の ライフストーリーインタビューと行政保健師3名へのイン タビューを行い,活動参加者の健康づくりの主観的な経験 と保健師の支援内容を事例毎に質的に分析した後,分析結 果を統合しました.  博士研究ののち,援助者の立場からも健康づくりを追究 する必要性を感じ,研究費を獲得して保健師の健康増進計 画推進モデル作成5 に取り組みました.  この一連の研究を通じて,自分の中で芽生えた疑問の芽 を大切に育てることと,研究を積み重ねることの重要性を 学びました.原点に立ち返ることと一歩ずつでも発展させ ること,この2つを常に胸にとどめて,教育研究者として の道を歩んでいきたいと思います. 文献 1.宮﨑美砂子.最新公衆衛生看護学第2 2017年版 総論, 2017. 2.石川麻衣,宮﨑美砂子.高齢者のライフストーリーから捉 えた健康づくりの構造-独居女性高齢者の健康づくりの意 味付けを通して.千葉看護学会誌 2008; 14: 10-19. 3.石川麻衣,宮﨑美砂子.自主グループ参加者のライフストー リ ー か ら み た 健 康 づ く り の テ ー マ. 文 化 看 護 学 会 誌  2009: 1: 12-21. 4.石川麻衣.コミュニティにおける健康づくり活動参加者の ライフストーリーからみた健康づくりの発展と行政保健師 の支援との関連.千葉大学大学院看護学研究科博士論文. 2010. 5.科学研究費補助金,若手研究(B),研究成果報告書「行政 保健師の健康増進計画推進活動モデルの開発(研究代表 者:石川麻衣,課題番号:3792737),2014.

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