閉塞性睡眠時無呼吸症候群患者における
鼻型持続陽圧換気療法の血中レプチン値早期改善効果
清
水
泰
生
は じ め に 肥 満 合 併 症 の 一 つ に 閉 塞 性 睡 眠 時 無 呼 吸 症 候 群 (OSAS) がある. OSAS は夜間の強度の低酸素血症を呈 し, 耐糖能異常, 不整脈, 高血圧, 心不全などの合併症を 来すので肥満を起因とする OSASは食事療法をはじめ として鼻型持続陽圧換気療法 (nCPAP) が必要である. レプチンは脂肪減少, 食欲抑制性ホルモンであるが肥満 症の患者の中にはレプチンが高値であるのに肥満である 患者がいてレプチン抵抗性をもっていると えられる. 我々は肥満を伴う OSAS患者で nCPAP療法導入によ る夜間低酸素血症からの離脱が血中レプチン濃度に影響 を与えるかを検討した. 方 法 不眠, 鼾や昼間の眠気を訴える肥満を伴った患者に睡 眠時無呼吸確定診断のための polysomnographyを施行 した. 睡眠時無呼吸を呈する患者群と睡眠時無呼吸を呈 さないコントロール群において血液サンプ リ ン グ を polysomnography施 行 日 の 昼 12時, 夜 9 時, 翌 朝 6時, 昼 12時の 4ポイ ン ト で お こ なった. Polysomnography は 2回行い nCPAP治療前後に行った. 血液中のレプチ ンおよびそのレセプターである soluble leptin receptor を測定し, nCPAPがこれらに与える影響を検討すると ともに, polysomnographyにて得られた平 夜間最低酸 素飽和度との相関を検討した. 結 果 肥満を伴う OSAS患者ではコントロール群と比較し 全ての血液サンプリング時間においてレプチン濃度は高 値だった. nCPAP療法導入 1週間以内に血中レプチン 濃度は日内変動を保ったまま低下した. 未治療の OSAS 患者の血中レプチン濃度は平 夜間最低酸素飽和度と逆 相関した. 血中 soluble leptin receptor値は OSAS群とcontrol群で差はなく, nCPAP治療の影響も受けなかっ た. 察 レプチンは脂肪減少, 食欲抑制性ホルモンであるが肥 満症の患者の中にはレプチンが高値であるのに肥満であ る患者がいてレプチン抵抗性をもっていると えられ る. 肥満を伴う OSAS患者で夜間低酸素血症がレプチン 抵抗性に関与している可能性及び nCPAP療法導入によ る低酸素血症の解除がレプチン抵抗性を改善する可能性 が えられた. レプチン抵抗性に, 血中レプチンに結合する血中 sol-uble leptin receptorが関与している可能性を検討したが nCPAP療法導入による低酸素血症の解除がこれらの結 合に関与するという所見は得られなかった. レプチン欠 損マウスにレプチンを投与すると換気回数が増加すると の報告や,呼吸にかかわる Central nervous systemとレプ チンとの関与が報告されており, 今後低酸素血症とレプ チンとのさらなる検討が必要と思われた. 151 Kitakanto Med J 2007；57：151∼152 １ 群馬県前橋市昭和町3-39-15 群馬大学医学部病態制御内科学呼吸器・アレルギー内科⑴ 平成18年12月１日 受付 論文別刷請求先 〒371-8511 群馬県前橋市昭和町3-39-15 群馬大学医学部病態制御内科学呼吸器・アレルギー内科⑴ 清水泰生
謝 辞 本研究のご指導を賜りました群馬大学大学院医学系研 究科病態制御内科学 森 昌朋教授, 群馬大学保 学科 土橋邦生教授, 病態制御内科学 清水弘行講師, 群馬大 学附属病院 検査部 福村幸仁先生, 病態制御内科学の堀 江 夫先生 (現前橋日赤) はじめ多くの医会員の諸先生 方に深謝致します. 参 文 献
1. Dobashi K, Shimizu Y, Endou K, Shimizu H, Horie T, Koga Y,Shimomura K,Yoshii A,Utsugi M,Tsuchiya T, Iizuka K, Nakazawa T,Mori M. Effect of nCPAP ther-apy on insulin resistance in OSAS patients. Occupa-tional and Environmental Allergy 2004; 11: pp.33-39 (Japanese)
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