Title
沖縄大学構内におけるクマゼミ個体群の季節変動と鳴き
声の騒音レベル
Author(s)
中村, 和雄
Citation
地域研究 = Regional Studies(1): 3-8
Issue Date
2005-06-30
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/5421
沖縄大学構 内におけるクマゼ ミ個体群の季節変動 と鳴 き声の騒音 レベル
中村
和雄*
SeasonalFluctuationsofaCicadaC1'yptoEympaL7alacL'ah's
PopulationandltsSoundLevelontheCampusofOkinawaUniverslty
KazuoNakamura
毎年,沖縄大学構内のホル トノキに集 まって鳴 くクマゼ ミの鳴 き声の騒音 レベルを知るため,2004年7-8月に鳴 き声の レベルの日周変動 と季節変動 を求めた.また,成虫個体数の季節変動 を知るため,大学構内の3箇所のホル トノキに集 ま るクマゼ ミのそれぞれに標識再捕法を適用 した. その結果,Bailey法によって推定 された雄個体数は,7月上旬か ら増加 し始めて,中旬にピークに通 した後,減少 して, 8月上旬には終息 した. クマゼ ミは日の出前か ら鳴 き始め,主 として午前中に鳴 く.このl乳 鳴 き声の レベルは日の出直 後が最大で,その後減少 して行って,午後には終息 した.鳴 き声の レベルの季節変動は,クマゼ ミが集 まる3箇所の うち 2箇所ではほほ雄個体数の変動に近似 したが,1箇所では雄がほとんど終息 したはずの8月上-中旬で も相当高い レベルが 見 られた.この違いは,個体数の推定は12-15時に行ったのに,鳴 き声の レベルの測定は7-10時に行 ったことに起因する と考えられる.すなわち,クマゼ ミの雄は朝 と昼で集まる場所 を変更 している可能性が考えられる. 音源から距離 を変えて レベルの変化を測定 した結果,7m離れると音源の約半分の レベルに減少 し,27mでは0になっ た. 以上のことから,沖縄大学構内に集 まるクマゼ ミの鳴 き声は,7月中の午前中は騒音 レベルが高いが,20m以遠ではほ とん ど問題にならないことが予想 される.今後,学生や周辺の住民が クマゼ ミの鳴 き声をどの程度,騒音 として感 じて いるかを知る必要がある. キーワー ド :騒音 レベル,クマゼ ミ,CtypEotympanalacL'alis,個体数推定,標織再捕法
Inordertodetermi nethesoundlevelofacicada,C1'ypEoEympanaFacL'alL'S,intreesofEJaeocatpussy)vestn'S
(Elaeocarpaceae)onthecampusofOkinawaUniversity,NahaCity,Okinawa,Iobtaineddailyandseasonal fluctuationsofthesoundlevelduringJulyandAugust,2004. Thenumberofmaleadultswasestimatedateach siteofthreegrovesofthetreesbythecapture-recapturemethod.
Thenumberofmaleadultsincreasedfrom earlyJuly,attainingapeakinmid-July,anddecreasedthereaftertill earlyAugust.Thecicadabegantoslngbeforesunriseandfinishedbymidday・Thesoundleveldecreasedgradually from themaximumJustaftersumi Seto0atthemiddayorearlyaftemoon.Seasonalnuctuationsofthesoundlevel,
obtainedinthemomlng,nearlycorrespondedtothatofthemaleadultpopulationsizeintheaftemoonforthetwoof thegroves.However,thesoundwaskeptatanevenhigherlevelinearlyandmid-Augustattheother,suggestlngthat malesbehavedifferentlydependingonthetimeofday.Thesoundleveldecreasedbyabouthalfat7mfromthesound source,andattainedalmost0at27m.
TheseresultssuggestthaHhesoundofthiscicadaontheuniversltyCampusWillbeperceivedasanunpleasant noisebyresidentswithinabout30mofthegrovesonlyinthemomlnginJuly・
Keywords'・Soundlevel,Cicada,CTyptolympaL70facialL'S,Estimationofnumberofmales,Capture-recapturemethod
*沖縄大学法経学部,902-8521那覇市国場555,[email protected]
C藷一ブロ
「地域研究」1号2005年6月 クマゼミCIW)[CD,mpanafacja〃sは,わが国の関東 以西の太平洋岸沿いに分布する種で,琉球列島では沖 永良部島から先島諸島までで見られている(環境庁の 1995年の調査結果による).沖縄では,市街地や平地の 林で普通に見られるが,沖縄島北部山地には生息しな い(東,1987).那覇市では,成虫は6月下旬に出現す る(平年値は6月22日)(沖縄気象台,2003).ホルトノ キEノaeocaIpussyノves伽(ホルトノキ科),センダンMeノja azedarach(センダン科),その他の木に数匹~数十匹 の個体が集まって鳴くため,相当にうるきい 那覇市内に位置する沖縄大学では,例年7月上~中 旬から構内に植栽された数本のホルトノキでクマゼミ が鳴き始め,8月上~中旬まで続く.筆者は,1998年 以降,毎年,クマゼミに標識再捕法を適用して,個体 群パラメータの推定を行ってきた.その結果の一部は, すでに報告した(中村,2000). ここでは,2003~2004年の個体群を対象にして,ク マゼミの鳴き声の強ざの日周・季節変動を求めた.また, 標識再捕法によって推定した個体数と鳴き声の強さと の関係も明らかにしたこれらの結果から,騒音とし てのクマゼミの鳴き声の特'性を明らかにしようとした. 方法 1.調査場所 クマゼミの個体群パラメータの推定と鳴き声の特性 を求めた沖縄大学構内には,3箇所(場所A-C)に ホルトノキが植栽きれている(図1,表1).このうち, 場所Aでは1本の木の枝が民家の入り口を覆う形に伸び ているため,この民家でのクマゼミによる騒音は相当 犬きいと考えられる.それに対して,場所BおよびC は民家からも大学の教室からも離れているため,クマ ゼミの鳴き声の影響はそれほど大きくないと考えられ る.SZ)
A、 適躍 孚甥 塗館 体育鯛 204060m ’111 図1沖縄大学構内の地図ACは,ホルトノキの植栽場所で,黒丸は木の位置を示す.Xは,騒音 のバックグランド測定場所.CからX付近を通る直線上の数値は,音源Cからの距離と鳴き声 のレベルを測定した地点で,数値の単位はpaces. 4での騒音レベルを測定した.この時期は,後で見るよ うに,クマゼミの個体数がピークから減少に至る時期 であった(図2). 鳴き声の強さの季節変動をみるため,2004年7月21日 ~8月16日の間の16日について,0700-1000の間に,鳴 き声の騒音レベルを測定した. 次に,音源からの距離と騒音レベルとの関係を求め るため,2004年7月26日0700と7月28日0630に,場所C からlOpaces(6.7m),Z0paces(12.3m),40paces(26.9m),
60paces(40m)離れた4地点(図l)で,騒音レベルを
測定した. また,音源からの距離と平均周波数との関係を見る ため,7月26日に同じ4地点で鳴き声を録音した.録音した鳴き声は,AvisoftSASLabPro(RaimundSpecht,
Germany)を用いて,各地点における平均周波数を求め
た. 表1調査場所とそこにおけるホルトノキの本数と樹高RL了
位置鮒lA
科学実験室ウラ 1号館ウラ B Cl本館と体育館の間 2.標識再捕法の適用 ホルトノキに止まっているクマゼミ成虫を捕虫網で 捕獲し,翅に不透明ペイントマーカーで個体ごとに番 号をつけ,雌雄の別と番号を記録してから,同じ場所 に放した.l~数日後に成虫を捕獲して同様に番号を つけて放したが,成虫にすでに番号がついているとき には,その番号を記録してから放した.こうして,場 所ごとに雌雄ごとに新しくつけた個体番号,前回まで に放したもののうち再捕獲された個体番号を記録した. 2003年は,7月3~11日,14~17日,7月28日~8月2日の 3回の期間の毎日,放逐一捕獲を繰り返した.2004年は, 7月15日~8月6日の期間にl~3日の間隔で,放逐一捕 獲を繰り返した.この作業は,1200-1500時に行った. 得られてデータは,農業環境技術研究所山村光司博士作成のプログラムを用いてBailey法(Bailey,1951)へ
適用し,場所A-Cごとに雌雄別の個体数を推定した. 結果 1.個体数の変動 2003年および2004年に実施した標識再捕法の結果か ら,クマゼミの個体数をBaUey法によって推定した.こ こでは,場所A-Cのそれぞれにおける雌雄別および雌 雄合わせた成虫数を求めたが,再捕獲数がoであったた めに,個体数の推定ができなかった場合もあった.こ こでは,クマゼミの鳴き声のレベルを対象としたから, 以下では主として雄の個体数の変動のみを見る. 図2は,こうして得られた2003年および2004年にお ける場所ACごとの雄個体数の季節変動である.2003 年では7月上旬から個体数が上昇し始め,中旬前半にピ ークに達した後,減少して行って,8月上旬にはほぼ終 息した.これを場所間で比較してみると,個体数がピ ークに達するまでは,AとBでの個体数はほぼ同じで, 変動曲線はほとんど重なっていた.それが,ピーク後 の個体数では,Bの個体数の方がAよりも多かった. 場所Cでの個体数は,A,Bよりも少なく,このため 変動曲線を求めることはできなかった. 2004年における個体数の変動は,調査を開始した7 3.鳴き声の騒音レベルと特'性の測定 クマゼミの鳴き声の騒音レベルは,積分型騒音計 (アコー製6626)を用いて測定した10秒間の等価騒音 (A特』性)レベルで表した.測定場所は,場所A-Cの ホルトノキの樹幹から3m離れた地点と,Cから27m離 れた地点X(図1)とした.地点Xでは,クマゼミの 鳴き声はかすかにしか聞こえなかったので,ここでの 騒音レベルをバックグランドのレベルとした.測定は, 同一場所で継続して3回行い,3回の平均値を求めた. 各場所の平均値から地点Xでの測定値を差し引いた値 を,クマゼミによる騒音レベルとした. 鳴き声の強さの日周`性をみるため,2004年7月21日と 30日にO600-1600時の1~2時間おきに場所A-Cと地点X 5C藷一支-つ
「地域研究」1号2005年6月 月中旬後半にピークに達した後,減少して行った.場 所間の違いは,2003年とほぼ同じで,個体数のピーク 後はBにおける個体数の方がAよりも多かった.Cで の個体数は,A,Bよりもはるかに少なかった(図2). dB 000000 54321 日の出|日、こ
04/7/21 B C 1000 2003年 4 dB 681012141618 時 A 500 54321 000000 日の出|:、
B 04/7/30 C 0 A 10 20 30 10 8月日 7月 1000 2004年 CC A9-AB 500 4681012141618 時 C 0 図32004年7月21日および7月30日における場所A-Cのクマ ゼミの鳴き声の日周変動鳴き声のレベル(縦軸)は, バックグランドでの値を引いたもの(以下同じ). 10 20 10 8月日 30 7月 図22003年および2004年の場所A-Cにおけるクマゼミ雄個 体数の推定値 3.鳴き声の季節変動 2004年における場所A-Cでのクマゼミの鳴き声のレ ベルの季節変動を見ると(図4),7月下旬の調査開始 時から8月上旬までは,場所AとBとでほぼ同じレベ ルであったしかし,その後はBでは0近くに減少し たのに対して,Aでは8月中旬までそれほど減少しな かった場所Cでのレベルは,A,Bのレベルより低 く,8月上旬以降はOになった 2.鳴き声の日周'性 2004年における場所A-Cでのクマゼミの鳴き声の騒 音レベルの日周変化を図3に示した.個体数がピーク 近くに達していた7月21日には,鳴き声の強さは場所A とBではほぼ同じで,Cは小さかった.この傾向は, 個体数が前者よりも減少した7月30日でも同じであっ た.これは,場所間の雄個体数の違いを反映したもの と考えられる. 7月21日には日の出後が最も大きく,その後減少して 行った場所A,Bでは,10時頃再び上昇したが,そ の後は減少に転じ,午後はO近くまで下がった.その 傾向は,7月30日も同じであったが,1000-1100にはO になった. これらの結果から,クマゼミの鳴き声は日の出直後 が最も高く,その後,時間の経過とともに減少するこ と,0600-1000の間では比較的安定した高さを保ってい ることが分かる. 。B 000000 54321 1020301020 7月8月日 図42004年の場所A-Cにおけるクマゼミの鳴き声のレベル の季節変動 4.音源からの距離の増加に伴う騒音レベルの減少 場所Cからの距離を増加きせていったときのクマゼ ミの鳴き声のレベルの変化は,調査を行なった2004年7 6月26日,28日の両日とも,6.7m(l0paces)で音源での