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様々な位置関係にある無線給電用コイルのインダクタンス計算

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様々な位置関係にある無線給電用コイルのインダクタンス計算

柴田

随道

†,††a)

保谷

駿介

A Calculation Method of Inductance for Wireless Power Transmission Coils in

Various Positional Relationships

Tsugumichi SHIBATA

†,††a)

and Shunsuke HOYA

あらまし この論文は,磁界共鳴方式無線電力伝送システムの設計のためのコイルパラメータの手軽な計算手 法について述べている.送受コイルの様々な位置関係を考慮した無線電力伝送システムの設計は,位置関係に依 存するコイルの結合係数の変化を回路設計に盛り込むことで可能となる.結合係数はコイルの位置関係,形状, サイズ,巻き数などにより変わるため,回路シミュレーションを行う際に簡易にコイル定数の変化を計算する手 段が必要である.本研究では,ノイマンの公式を利用し,空芯コイルの自己及び相互インダクタンスを簡易に計 算するツールを作製した.本論文では,その計算原理を説明し,計算精度に関する考察,及び送受回路位置の移 動や回転により変化する結合係数の計算事例を示す. キーワード 無線電力伝送,コイル定数,ノイマンの公式,計算ツール

1.

ま え が き

産業分野で「インダストリー4.0」や「スマートファ クトリー」などとして機械と各種センサのネットワー ク化による生産現場の情報取得とその見える化,そし てそのデータ分析による製造工程の効率化が進展して いる[1], [2].今後,このような実世界(リアルorフィ ジカル)とデータ世界(デジタルorサイバー)を融 合する技術の生活空間への実装が進めば,安心・安全 のための見守りや日常生活の効率向上に向けた行動支 援,豊かなQoLの実現など,少子高齢化が確実に進 行する社会が抱える多くの課題の解決のための有力な 手段となるものと期待されている[3].このサイバー &フィジカルシステムの入力となるものが各種のセン サネットワークである.実世界の状況を確認するセン サネットワークを住居や公共施設,更に街なかに実装 しようとすると,図1にそのイメージを示すように, 東京都市大学大学院総合理工学研究科情報専攻,東京都

Major in Information, Graduate School of Integrative Sci-ence and Engineering, Tokyo City University, Tokyo, 158– 8557 Japan

††東京都市大学理工学部電気電子通信工学科,東京都

Dept. of Electrical, Electronics and Communication Engi-neering, Faculty of Science and EngiEngi-neering, Tokyo City University, Tokyo, 158–8557 Japan

a) E-mail: [email protected]

図 1 見守り,行動支援のセンサネットワーク Fig. 1 A sensor network for safety and security

watching and action supports.

大量のセンサを多様な場所に設置して常時稼働させる 必要が生じる.こうしたシステムを安定的に運用する ためには,センサ端末の保守性の向上が課題となる. 特に,センサ端末への電源供給は主要課題の一つであ り,電源工事や膨大な数の電池交換を要しない無線給 電技術の研究が進められている.各種無線給電方式の 中でコイルの疎結合を利用する磁界共鳴方式は数十セ ンチから数メートル程度の距離の給電手段として有望 である[4], [5].そして,その設計には送受回路の位置

(2)

関係によるコイル間の結合係数の変化を盛り込む必要 がある.送受回路のコイル間結合特性を電磁界シミュ レータにより解析した報告がある[5].磁界共鳴方式に おいてコイル自体の自己共振現象を利用するシステム ではマクスウェル方程式に基づく電磁界シミュレータ の活用が適切である.しかし,コイルとコンデンサを 用いて送受両側に共振回路を構成するシステム構成の 場合は準静的なコイルの自己インダクタンスとコイル 間の相互インダクタンスが求まれば回路シミュレータ による効率的な設計が可能である.相互インダクタン スの計算にはノイマンの公式が利用でき,今までも同 軸上の円形コイルなどコイル形状や配置に条件を付け た近似解析解を利用する設計が数多く報告されてきて いる[6]∼[9].以上の背景のもと,本研究では任意のコ イル形状と配置関係についてノイマンの公式を利用し て自己,及び相互インダクタンスの簡易計算を行うこ とができるツールを作製し,その計算結果の妥当性を 検証した.以下,2.にそこで採用したインダクタンス の計算方法を述べ,3.では,その計算過程で必要とな る線分間の2重積分について数値積分で求める場合の 計算精度を解析解との比較により評価する.4.では, コイル間の様々な配置関係の生成がコイルの並進,及 び回転移動の組み合わせで容易に実現できることを述 べ,5.に具体的なコイルのインダクタンス計算結果を 示す.

2.

インダクタンスの計算方法

[10]

2. 1 巻き線経路の折れ線近似によるコイルの構造 表現 前述のように,磁界共鳴方式を用いた無線電力伝送 は,比較的大口径の空芯コイルを用いて数十センチか ら数メートル程度の距離を隔てた無線給電を目指す技 術である.また,図1に示したような用途への実装を 考えると,送電側と受電側のコイル間に様々な位置関 係を想定して,その相互インダクタンスを計算する必 要がある.そこで本研究では,図2に示すように,コ イルの巻き線構造を直線を連ねた折れ線経路で近似し, コイルの形状や配置を経路上の節点の座標の集合で表 現することとした.図2ではコイルを構成する巻き線 の一端から他端までの経路を電流の流れに沿ってl1, l2,l3,· · ·lpp本の向きをもつ直線からなる折 れ線経路で近似している.そして,このコイルを始点 の座標(x0, y0, z0)から終点の座標(xp, yp, zp)までの p + 1の節点座標のセットで定義する.こうすること 図 2 コイル形状の折れ線経路による表現 Fig. 2 Representation of coil shape by broken line

route. により,4.に再度述べるようにコイルの移動や回転を これらの座標ベクトルに対する移動や回転の操作に帰 着させて実行することができる. 2. 2 自己,及び相互インダクタンスの要素積分の 和への分解 次に,二つのコイルC1 とC2 を考える.C1,C2 のそれぞれの巻き線に沿ってその始点から終点に向 かって流れる電流をI1,I2 としよう.図2では,コ イルを回路の一部を構成する素子と考えて,コイルの 巻き線の始点と終点を回路端子として終端した構造を イメージしたが,実回路では終点から流れ出る電流は 始点へ外部回路を介して戻り,電流路は閉回路を構成 することになる.電流I1,I2 が作る磁束のうちC1 の電流路と鎖交する磁束をΦ1,C2の電流路と鎖交す る磁束をΦ2 とすると,それらの間に次式の関係が成 り立つ. Φ1= L1I1+ M12I2 (1-1) Φ2= M21I1+ L2I2 (1-2) 係数L1,L2 は各々コイルC1,C2 の自己インダク タンス,M12,M21(相反定理よりM12= M21)は コイルC1,C2 間の相互インダクタンスである.相 互インダクタンスM12(= M21)はノイマンの公式に 拠れば次式で計算できる. M12= μ 0  C1  C2 ds2· ds1 r (2) ここで周回積分の積分路のうち前述の外部回路の経路 をその寄与が相対的に小さいと仮定して省略すると, C1,C2はコイルC1,C2 の始点から終点に至る巻き 線経路で置き換えられる.ds1,ds2 は,積分路上の 線素ベクトル,rは線素間の距離である.更に,積分 経路C1,C2を図2に示したように直線を連ねた折れ 線経路で近似したのであるから,C1 をp本の直線経

(3)

路の和,C2 をq本の直線経路の和へと分解して,式 (2)は式(3)のように書き換えられる. M12= μ 0 p  i=1 q  j=1 mij (3) 式中のmij は,折れ線近似した積分路の中のコイル C1 のi番目の直線経路li とコイルC2 のj 番目の 直線経路ljとの組み合わせ部分の要素積分値であり, 次式で与えられる. mij=  li  lj ds1· ds2 r (4) すなわち,相互インダクタンスM12(= M21)は,コ イルの巻き線経路を構成する直線線分liljの組み 合わせに対する要素積分 mij の総和に残りの係数を 乗じたものとして計算できる. 通常,ノイマンの公式は複数のコイル間の相互イン ダクタンスを与える式として知られている.以下にそ れを形式的に拡張し,自己インダクタンスL1,L2の 計算にも適用できるようにしよう.式(2)が2重積分 となる物理的意味を考えると,一つがコイルを流れる 電流が作る磁場(ベクトルポテンシャル)を積算し, もう一つがそのコイルに鎖交する磁束を計算するも のである.したがって,2重積分の積分路をどちらも 同一コイルの巻き線経路とすれば,そのコイルの自己 インダクタンスが計算されることになる.このように 考えると式(3)に対応する自己インダクタンスの計算 式は, L1= μ0 p  i=1 p  j=1 mij (5-1) L2= μ 0 q  i=1 q  j=1 mij (5-2) と表すことができる.ただし,ここでのmij は,式 (5-1)ではコイルC1 のi番目とj番目の直線経路の 要素積分値,式(5-2)ではコイルC2 のi番目とj番 目の直線経路の要素積分値であり,いずれにおいても i = j のときに同一の直線経路に対する2重積分が現 れる.これに式(4)をそのまま適用するとr = 0で値 が発散してしまうという困難が生じる.この同一直線 経路に対する自己インダクタンス要素積分値について は,その導体断面の電流分布を考慮して計算すること により発散を回避することができる.本研究では,こ れに対して電磁気学のテキスト等でもよく採り上げら れている以下の解析式[11]を断面形状と電流分布の条 件に応じて使い分けることとした. まず,直線経路の長さをl,導体断面形状を半径a の円形とし,その断面内を電流が一様に分布して流れ るとすれば,自己インダクタンスの要素積分miiは, mii= 2l  ln2l a 3 4  (6-1) で与えられる.同様に断面形状が半径aの円形である が,周波数が高く表皮効果により電流が導体表面に一 様に集中して流れるとするとmiiは次式となる. mii= 2l  ln2l a − 1  (6-2)

3.

二本の直線経路間の要素積分の計算

3. 1 要素積分mij の数値計算 ここまでで,コイルの巻き線構造を直線の折れ線経 路で近似することによって,複数のコイル間の相互イ ンダクタンス計算が各コイルを構成する直線経路間の 相互インダクタンス要素である式(4)の積分計算に帰 着すること,また,各コイルの自己インダクタンスに ついても,同一直線経路の自己インダクタンス要素の 積分計算に留意すれば,残りは相互インダクタンスの 場合と同様に直線経路間の要素積分の計算に帰着でき ることが判った.式(4)で与えられる二本の直線経路 間の要素積分値は,直線経路同士の位置関係に応じて 解析解が詳しく求められている[12].しかしながら, 解析解を用いるためには任意の二本の直線経路の相対 位置関係を全て分類して場合分けし,それぞれに適切 な解析式を適用する必要がある.計算機性能が大きく 向上した今日,こうした分類アルゴリズムを加えて解 析プログラムのコードを複雑にするよりも,一律の処 理が可能な数値積分を採用してコードを単純化し,可 読性を高めるメリットの方が大きいと考えられる. 図3は,任意の二本の直線経路の線分lilj を 抜き出して描いたものである.この二本の経路間の要 素積分を数値積分で求める場合,li の始点と終点を A,B,lj の始点と終点をC,Dとして,線分ABと CDをそれぞれ等間隔のN 個の区間(区間の長さを ΔAB,ΔCD とする)に分割し,各区間の中心点を離 散化点として順に1からN まで番号を振る.そうす ると式(4)の要素積分は次式で計算できるはずである.

(4)

図 3 折れ線経路 i(線分 AB)と j(線分 CD)の要素 の数値積分

Fig. 3 Numerical integration of an elemental integral between broken lines i (line AB) and j (line CD). mij= ΔAB× ΔCD× N  u=1 N  v=1 1 r × cos θ (7) ここで,添え字uvは各々線分AB,CD上の離散化 点の番号,rはそれらの離散化点の間の距離である.θ は向きをもつ二つの線分liljの成す角であり,cos θ は始点から終点へ向かうベクトル同士の内積により計 算できる.すなわち,要素積分値は各線分の始点と終 点,A,B,及びC,Dの座標が与えられれば,分割 の細かさNをパラメータとして一律に計算でき,2. 1 で定義したコイル形状データから全て求めることがで きる. 3. 2 要素積分の解析式と数値計算精度の検証 既に述べたように二本の直線経路間の要素積分は経 路間の相対位置関係を限定すると解析的に求めること もできる.以下にG. A. Campbell [12]による例を二 つ挙げる. (1) 経路ABとCDが並行の位置関係にある場合 経路ABを含む直線上への点Cと点Dの射影点を C’,D’とすると, mij= AB log CB+ C B DB + DB + AD log DB+ DB DA + DA − AClog CB+ CB CA + CA − (−AC + AD + BC − BD). (8) ただし,AB等は二点間の距離,アンダースコアー付 きのAD’等は向きを含む距離でAD’の向きがABの 向きと同一であれば正,逆向きであれば負を採る. (2) 経路ABとCDが連続する経路であり,点B = Cの場合 この場合は, 図 4 (a) 並行な二本の折れ線経路と (b) 一端を接して連 続する二本の折れ線経路

Fig. 4 (a) two parallel broken line paths, and (b) two consecutive broken line paths connected by one ends.

図 5 並行な 2 直線経路の数値積分の離散化分割数と精度 Fig. 5 Fineness and accuracy of discretization of numerical

integration for two parallel line paths.

mij= ABlog AD+A D AB +AC− C Dlog DA+DA CD+DB. (9) ここでもプライム付きの点は,相手方の線分の直線上 への射影点を表し,アンダースコアー付きの量は向き を含む距離である. 以下では,これらの解析式を使って,前節に示した 数値積分の計算精度を評価してみる.数値積分の計算 精度は有限積分線素の区間ΔAB,及び ΔCD の細か さ,すなわち離散化点数N に依存すると考えられる. そこで図4に示す長さl をもつ並行経路間の積分値, 及び連続する二経路間の積分値について,解析解を正 解と仮定し,数値積分解の相対誤差を次式により評価 した. 誤差ε =数値積分解解析解 解析解   (10) 図5に図4 (a)の並行配置の場合の評価結果を示す. 線分の長さl = 1に対して線分間の距離dを1から

(5)

図 6 一端を接する折れ線経路の数値積分の離散化分割数 と精度

Fig. 6 Fineness and accuracy of discretization of nu-merical integration for a continuous line paths connected by one ends.

0.001まで狭めていったときの相対誤差の離散化点数 依存性をプロットしている.この図から判るように, 二本の線分間の距離が離れている場合は比較的粗い離 散化でも誤差を小さく抑えることができるが,距離が 近づき,d/l が小さくなるに従って相対誤差が増大す る.そもそも近い距離にある線分同士の要素積分ほど その値自体が大きくなり誤差への影響が支配的となる と考えられるので,そのような組み合わせについては 離散化点数を大きく採って計算精度を確保する必要が ある.具体例として,一辺が数十センチの方形コイル をコンマ数ミリのピッチで巻くと,隣り合う直線経路 の距離dと長さlの比が10−3程度となる.このワー ストケースの組み合わせに対して相対誤差を10−3以 下に抑えるには,図5の評価結果からN = 1000程 度とすれば十分であろうことが判る. なお,図4 (a)のように長さの等しい二経路が完全 に並走している場合,数値積分解は解析解より絶対値 が大きい方から解析解へ収束して行く.しかし,この 大小関係は二本の直線経路の位置関係によって異なり, 絶対値が小さい側から収束していくものもある.更に 分割が粗くN が小さい条件では振動しながら収束す ることもある. 図6は図4 (b)の連続する二本の経路の場合の評価 結果である.ここでは,経路の内角αを横軸に採って グラフにした.二本の経路が直交するα = 90度では mij= 0であり,式(10)は不定となるが,この図では その前後のα = 89度と91度で式(10)を評価して作 図している.後に円形コイルの多角形近似について述 べるが,図より,内角が鈍角の範囲ではこの組み合わ せについてもN = 1000程度に採れば相対誤差10−3 以下を十分に確保できることが判る.なお,鈍角の範 囲ではmij自体は正の値であり,数値積分解は解析解 よりも小さい値から解析解に収束して行く.一方,内 角が鋭角になるとmij 自体は負の値となり,45度付 近で相対誤差が落ち込む角度がある.これより大きな 角度では数値解析解の mij の絶対値が解析解より小 さな値から解析解へ収束し,小さな角度ではこれが反 転して絶対値が大きな値から解析解に収束している. コイルとしては非常に特異な構造であるが,内角が10 度以下の鋭角となる部分は相対誤差が劣化しており, このような構造を含む場合は個別の精査が必要かも知 れない.

4.

様々なコイル位置関係の生成

2. 1に述べたように,コイルの構造を折れ線経路の 節点座標の集合で表現することによって,空間内での コイルの位置や向きの移動操作がそれらの節点座標 の並進移動や回転移動といったベクトル計算の一括処 理によって容易に実現可能となる.一つのコイルがp 本の折れ線経路で成り立っているとすると,その並進 移動は,並進移動量ベクトルをa = (ax, ay, az)と与 えて, ⎛ ⎜ ⎝ xi yi zi ⎞ ⎟ ⎠← ⎛ ⎜ ⎝ xi yi zi ⎞ ⎟ ⎠+ ⎛ ⎜ ⎝ ax ay az ⎞ ⎟ ⎠ (11) の操作をi = 0からpまでの節点に施すことにより 完了する.また,一例としてz軸を中心とした角度β の回転は, ⎛ ⎜ ⎝ xi yi zi ⎞ ⎟ ⎠← ⎛ ⎜ ⎝ cos β − sin β 0 sin β cos β 0 0 0 1 ⎞ ⎟ ⎠ ⎛ ⎜ ⎝ xi yi zi ⎞ ⎟ ⎠ (12) の操作で実現できる.こうした並進移動や回転移動の 操作を組み合わせることで,複数のコイル間の様々な 位置関係を生成することが可能である.本論文の最後 に,この機能を活用して二つのコイルの位置関係を動 かしたときの結合係数の変化の解析例を示す.

5.

コイルのインダクタンスの計算結果

ここまで述べてきた計算手法に基づく自己,及び相 互インダクタンスの簡易計算ソフトウェアを試作した.

(6)

以下に,解析結果の例を示す. 図7に概略の形状を示す方形コイル,及び円形コイ ルをポリウレタン被覆銅線を巻いて作製した.表1に それらのサイズ,巻き数,巻き線ピッチ,銅線幅,そ して本手法による自己インダクタンスの計算結果を示 す.銅線は隙間を空けずに巻いたので巻き線ピッチδ は銅線幅0.8mmに等しい.方形コイルは四方の辺を それぞれ一本の直線経路として四隅の角の座標の集合 でコイル全体の形状を定義して計算した.また,円形 コイルは,この表には一周を24角形の正多角形で近 似して計算した結果を示している.mijの数値積分は 全てN = 1000とした.同一経路の二重積分miiの 値には,給電周波数を1 MHz程度と想定して銅線の 表皮厚さを60∼70μmと見積もり,電流の大部分が銅 線の表面付近に集中するとして式(6-2)を適用した. 参考として同じく表1にベクトルネットワークアナラ イザによるインピーダンス測定から求めたインダクタ ンス値も掲載している.測定周波数は1 MHzでコイ ルの自己共振周波数より十分低い周波数領域での測定 である.計算結果と測定結果は,おおむね良い一致が 得られている. 円形コイルの多角形近似についてその影響を確認 するため,表1に示した円形コイルを六角形から360 角形まで様々な多角形折れ線近似で表現した場合の自 図 7 (a) 方形コイルと (b) 円形コイル Fig. 7 (a) a rectangular coil and (b) a circular coil.

表 1 方形及び円形コイルの自己インダクタンス計算結果と実測結果 Table 1 Calculation and measurement results of self inductances of rectangular

and circler coils.

己インダクタンスの計算結果を比較した.その結果を 図8に示す.この多角形近似は折れ線経路の頂点が円 周上に乗るようにしたため,折れ線の経路長が元の円 形コイルの経路長より短くなる.したがって,多角形 近似のインダクタンスは元の円形コイルのものより低 く計算されると推測される.図8の結果はそれを支持 するものであり,六角形,八角形,12角形,24角形 と角数を増やすとインダクタンス値が増大して円形コ イルの値に収束して行くものと解釈できる.同図の右 縦軸に収束に至る値からの差分を示すメモリ軸を付加 した. 次に,自己インダクタンスの計算結果に対する数値 積分の分割の細かさN の影響を見た.ここでは,敢 えてN を1000から100,10と粗くした計算を行っ た.その一例として,表2に円形コイルの多角形近似 のうちの六角形コイルの自己インダクタンス計算結果 を示す.3. 2では二本の直線経路間の要素積分の数値 誤差を詳しく調べて分割数N を大きくすることで相 対誤差がおおむね単調に減少する状況を見たが,要素 積分の総和から計算されるインダクタンス値への影響 は単調ではなく複雑な振る舞いを示している.表2の 六角形コイルの場合はN = 1000からN = 100へ精 度を落とすとインダクタンスは微減するがN = 10ま 図 8 円形コイルと多角形近似の差分 Fig. 8 Difference between the circular coil and its

(7)

表 2 六角形コイル自己インダクタンス計算結果の N 依 存性

Table 2 Dependence of N on the calculated self-ductance of the hexagonal coil.

図 9 距離 d を隔てて配置した二つの方形コイル Fig. 9 Two rectangular coils spaced a distance d

part. で落とすと誤差がマイナスからプラスへ転じて大きく 増加している.このような複雑な振る舞いは,インダ クタンスが様々な割合で誤差を含む要素積分の和によ り計算されていることを考えると理解できる.プラス の誤差をもつ要素とマイナスの誤差をもつ要素が加算 されることで結果的に精度が保たれることがある.し かしながら,加算によって誤差が打ち消し合うか強め 合うかをあらかじめ予測することは難しく,インダク タンスとしての精度を確保するには3. 2で行ったよう に要素積分の段階での最大誤差を評価しておく必要が あると考えられる. 以上,方形コイルと円形コイルを例として自己イン ダクタンスの計算例について述べ,特に円形コイルの 計算結果を用いて精度に関する考察を行った.本論文 では最後に二つの方形コイルの位置関係を変化させた ときの結合係数の変化の計算結果を示す. 表1に挙げた方形コイルを二つ用意してコイルC1, C2とし,それらを図9のように対向させたときのC1 とC2 の間の相互インダクタンスM を計算した.二 図 10 対向する二つの方形コイルの結合係数の距離依存性 Fig. 10 Variation of the coupling coefficient against the distance between two rectangular coils facing each other.

図 11 一方のコイルを回転させたときの結合係数の変化 Fig. 11 Change in coupling coefficient when one coil

is rotated. つのコイルの結合係数kは,両者の自己インダクタン スをLとして次式で与えられる. k = M L (13) 4.に述べた方法でコイル C2 の位置をC1 の位置か ら並進移動させてコイル間の距離d に対する結合係 数kの変化を計算した.その結果を実測結果とともに 図10に示す.距離が離れると一方のコイルの作る磁 束の他方への鎖交数が減少し相互インダクタンスが小 さくなり結合係数が減少する.結合係数の測定は,自 己インダクタンスの測定と同様にベクトルネットワー クアナライザを用い,2ポートのS パラメータから換 算した.計算結果が実測値と良く一致する結果を得た. また,図11には,コイルC2の回転操作と並進移動 を組み合わせて図9に記載の回転軸に沿って回転させ た配置を作り結合係数kの変化を計算した結果を示し

(8)

ている.この結果についても計算値と実測値の良い一 致が得られた.このようにコイル間の様々な位置関係 を生成してコイル定数を計算することが可能となった.

6.

む す び

本研究では,各種センサ端末への無線給電応用を念 頭に置いて,磁界共鳴方式無線電力伝送用コイルのイ ンダクタンス計算手法を検討した.様々なコイルの位 置関係を簡単に生成するためにコイル形状を直線を連 ねた折れ線経路で近似し,ノイマンの公式によるコイ ル定数算出を各直線経路同士の要素積分の和として計 算した.要素積分の数値計算精度について考察し,幾 つかの計算例と実測値の比較により計算の妥当性を検 証した.本論文に示した解析例題以外にも様々な形状 のコイルのインダクタンスを求めて計算結果の妥当性 を検証している. 文 献

[1] Plattform Industrie 4.0, https://www.plattform-i40. de/PI40/Navigation/EN/Home/home.html [2] 日本再興戦略 2016,内閣府,https://www.kantei.go.jp/

jp/singi/keizaisaisei/pdf/2016 zentaihombun.pdf [3] 内閣府ホームページ,“Society 5.0,” https://www8.cao.

go.jp/cstp/society5 0/index.html

[4] A. Kurs, A. Karalis, R. Moffatt, J. Joannopoulos, P. Fisher, and M. Soljacic, “Wireless power transfer via strongly coupled magnetic resonances,” Science, vol.317, pp.83–86, 2007.

[5] A. Karalis, J. Joannopoulos, and M. Soljacic, “Effi-cient wireless non-radiative mid-range energy trans-fer,” Annals of Physics, 323, pp.34–48, 2008. [6] T. Imura and Y. Hori, “Maximizing air gap and

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図 1 見守り,行動支援のセンサネットワーク Fig. 1 A sensor network for safety and security
Fig. 3 Numerical integration of an elemental integral between broken lines i (line AB) and j (line CD)
図 6 一端を接する折れ線経路の数値積分の離散化分割数 と精度
表 1 方形及び円形コイルの自己インダクタンス計算結果と実測結果 Table 1 Calculation and measurement results of self inductances of rectangular
+2

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