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札幌市小学校におけるプログラミング教育実施状況の現状と課題 : 文部科学省全国調査との比較を通して

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(1)Title. 札幌市小学校におけるプログラミング教育実施状況の現状と課題 ― 文 部科学省全国調査との比較を通して ―. Author(s). 佐藤, 正直. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 71(1): 263-272. Issue Date. 2020-08. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/11399. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第71巻 第1号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 71, No.1. 令 和 2 年 8 月 August, 2020. 札幌市小学校におけるプログラミング教育実施状況の現状と課題 ― 文部科学省全国調査との比較を通して ―. 佐 藤 正 直 北海道教育大学札幌校技術科教育学研究室. Current Status and Issues of Programming Education Readiness in Sapporo city Elementary School ― Through comparison with Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology national survey ―. SATO Masanao Department of Technology Education, Sapporo Campus, Hokkaido University of Education. 概 要 平成29年告示小学校学習指導要領では各教科等で論理的思考力を育成することを目的として プログラミング教育が実施されることとなった。文部科学省では各自治体のプログラミング教 育実施に向けた取組状況等について調査しており,平成29年の調査では北海道地区が全国に比 べ取組が遅れている実態が明らかとなった。しかし,文部科学省の調査では全道の自治体単位 での調査であることから政令指定都市である札幌地区の実情を表していないとも推察される。 そこで本研究では札幌市内の小学校に対して文部科学省の調査と同等の調査を実施し札幌市内 小学校におけるプログラミング教育の実施状況を調査した。その結果札幌市内小学校ではプロ グラミング教育実施に向けた研修・検討は行われているものの,人材や題材の不足,予算確保 などに課題があることが明らかとなった。 Keywords:札幌市,小学校,プログラミング教育. 1.緒 言. む情報活用能力をあげており,プログラミング教 育は各教科等で取り扱うことと総則で示した1)。. 平成29年告示の小学校学習指導要領では,育成. また,各校において担当教師が授業を実施するた. すべき資質能力の一つとしてプログラミングを含. めの参考として「プログラミング教育の手引」な. 263.

(3) 佐 藤 正 直. ども発行し各教科での事例を示す2)などプログラ. 育の実施状況を調査し実態を把握し課題を明らか. ミング教育実施に向けた準備を進めている。更に,. にすることした。. 平成29年と30年には「教育委員会等における小学 校プログラミング教育に関する取組状況等」につ いて調査し報告書を出している3,4)。この報告書 のうち,平成29年度版では各自治体単位の取組状. 2.調査概要 2.1 調査対象と方法. 況に関して報告されており,北海道地区では全国. 調査は令和元年7月~8月に札幌市内公立小学. にくらべてプログラミング教育の取組が遅れてい. 校199校に対して郵送による質問紙調査として実. る実態が明らかとなった。しかし,北海道は小学. 施した。. 校数が全国で二番目に多い都道府県でもあり,ま た,広大な面積を有することから市町村間の差も. 2.2 調査項目. 大きいことが推察される。特に政令指定都市であ. 質問項目は文部科学省の「平成29年度教育委員. る札幌市は人口190万人を超える全国有数の大都. 会等における小学校プログラミング教育に関する. 市であり,本調査から札幌市の実情が見えるもの. 取組状況等」で用いられた質問項目を参考に学校. ではないと考えられる。また,文部科学省の調査. 向けに作成し直したものを使用した。表1に質問. は各自治体の教育委員会に対して調査を実施した. 項目の概略を示す。. ものであることから,各学校の取組状況までは詳 細に把握できていない可能性もあるものと推察さ れる。そこで,本研究では札幌市内の小学校に対 して文部科学省の調査とほぼ同一内容の調査を実 施し,札幌市内小学校におけるプログラミング教. 3.調査結果 3.1 回収率 札幌市内公立小学校199校を対象に質問紙を送. 表1 質問項目の概要 Q1:貴校では,2020年度のプログラミング教育の全面実施に向けて何に取り組んでいますか。 Q2:Q1で「②学校内でプログラミング教育の担当を決めて今後の取組を検討しているが実施はしていない。 」 , 「③学校主導の取組は実施していないが一部の教員がプログラミング教育の研究会などを行っている。」 「④ , 学校主導でプログラミング教育の研究会などを行っている。 」と回答した場合どのような教科等について検 討や研究会を行っていますか。 Q3:Q1で「②学校内でプログラミング教育の担当を決めて今後の取組を検討しているが実施はしていない。 」 , 「③学校主導の取組は実施していないが一部の教員がプログラミング教育の研究会などを行っている。」 「④ 学校主導で、プログラミング教育の研究会などを行っている。 」を選択した場合,今後2020年度までにどの ような取組を予定していますか。 Q4:Q1で「⑤教員に対してプログラミング教育の研修を行っている。 」と回答した場合どのような研修をして いますか。 Q5:Q1で「⑥一部の授業でプログラミング教育の授業を実践している。」,「⑦学校全体でプログラミング教育 の授業を実践している。 」と回答した場合その実施内容はどのような内容ですか。 Q6:Q1で「①プログラミング教育の情報を収集している。もしくは特に取組はしていない。」と回答した場合 その理由をお答え下さい。 Q7:プログラミング教育を実施するにあたり,困難と感じることは何ですか。 Q8:プログラミング教育を進めるにあたり,企業・団体・大学・高専等の支援を受けている場合はどのような 支援等を受けていますか。 Q9:小学校のプログラミング教育を進めるにあたり,企業・団体・大学・高専等にどのような取組(支援内容 も含む)を期待していますか。. 264.

(4) 札幌市におけるプログラミング教育実施状況の現状と課題. 付し,そのうち73校から回答を得た。回収率は. 表2 Q1の調査結果. 36.7%であった。 3.2 プログラミング教育全面実施に向けた取 組に関する調査. 文科省調査. 本調査. 全国. 北海道. 札幌市. ステージ0. 57%. 82%. 31.50%. ステージ1. 13%. 0%. 27.40%. Q1としてプログラミング教育全面実施に向け. ステージ2. 13%. 12%. 23.20%. て何に取り組んでいるかを8個の選択肢から調査. ステージ3. 16%. 2%. 16.40%. した。選択肢は,①プログラミング教育の情報を 収集している,もしくは特に取組はしていない。 ②学校内でプログラミング教育の担当を決めて今 後の取組を検討しているが実施はしていない。③. 3.3 検討・研修実施と回答した学校に関する 調査. 学校主導の取組は実施していないが一部の教員が. Q2では,②学校内でプログラミング教育の担. プログラミング教育の研究会などを行っている。. 当を決めて今後の取組を検討しているが,実施は. ④学校主導でプログラミング教育の研究会などを. していない。③学校主導の取組は実施していない. 行っている。⑤教員に対してプログラミング教育. が,一部の教員がプログラミング教育の研究会な. の研修を行っている。⑥一部の授業でプログラミ. どを行っている。④学校主導でプログラミング教. ング教育の授業を実践している。⑦学校全体でプ. 育の研究会などを行っている。と回答した25校の. ログラミング教育の授業を実践している。⑧その. 学校がどのような取り組みを行っているかについ. 他とした。文部科学省の平成29年「教育委員会等. て,①新学習指導要領の算数,理科で例示されて. における小学校プログラミング教育に関する取組. いる単元で実施するもの,②新学習指導要領の総. 状況等」において①の回答をステージ0(特に取. 合的な学習の時間において実施するもの,③ ①,. 組をしていない) ,②の回答をステージ1(担当. ②以外の教科等で実施するもの,④その他の4つ. を決めて検討中),③④⑤の回答をステージ2(研. のカテゴリーから選択式で複数回答可として回答. 究会や研修を行っている) ,⑥⑦の回答をステー. を求めた。Q2の質問項目を表3に示す。①新学. ジ3(授業を実施している)とカテゴリー分けし. 習指導要領の算数,理科で例示されている単元で. ている。本調査結果を同様のカテゴリーに分けた. 実施するもののカテゴリーでは,プログラミング. と こ ろ, ス テ ー ジ 0 と 回 答 し た 学 校 が23校. 教育の教材について検討,研究会をしていると回. (31.5 %) , ス テ ー ジ 1 と 回 答 し た 学 校 が20校. 答した学校が20校(80%),プログラミング教育. (27.4 %) , ス テ ー ジ 2 と 回 答 し た 学 校 が17校. の指導方法について検討,研究会をしていると回. (23.2 %) , ス テ ー ジ 3 と 回 答 し た 学 校 が12校. 答した学校が5校(20%),プログラミング教育. (16.4%) ,その他と回答した学校が3校(4.1%). を支援する外部人材の確保や活用方法について検. であった。 これを文部科学省の調査と比較すると,. 討, 研 究 会 を し て い る と 回 答 し た 学 校 は 0 校. ステージ0と回答した割合は全国の57%よりも低. (0%),その他1校(4%)であった。. く,文部科学省の調査から1年以上の時間の開き. 次に,②新学習指導要領の総合的な学習の時間. もあり各校における準備が進められているものと. において実施するもののカテゴリーでは,プログ. 推察される。しかしながらステージ3と回答した. ラミング教育の教材について検討,研究会をして. 学校の割合は全国の16%とほぼ同じ結果であり実. いると回答した学校が20校(80%),プログラミ. 際に授業を展開するまでには至っていない現状が. ング教育の指導方法について検討,研究会をして. 明らかとなった。表2にQ1の調査結果を示す。. いると回答した学校が4校(16%),プログラミ ング教育を支援する外部人材の確保や活用方法に. 265.

(5) 佐 藤 正 直. 表3 Q2の質問項目 ア)プログラミング教育の教材について検討,研究会をしている。 ①新学習指導要領の算数, イ)プログラミング教育の指導方法について検討,研究会をしている。 理科で例示されている単 ウ)プログラミング教育を支援する外部人材の確保や活用方法について検討,研究 元で実施するもの 会をしている。 エ)その他 ア)プログラミング教育の教材について検討,研究会をしている。 ②新学習指導要領の総合的 イ)プログラミング教育の指導方法について検討,研究会をしている。 な学習の時間において実 ウ)プログラミング教育を支援する外部人材の確保や活用方法について検討,研究 施するもの 会をしている。 エ)その他 ア)プログラミング教育の教材について検討,研究会をしている。 イ)プログラミング教育の指導方法について検討,研究会をしている。 ③①,②以外の教科等で実 ウ)プログラミング教育を支援する外部人材の確保や活用方法について検討,研究 施するもの 会をしている。 エ)その他 ア)プログラミング教育の教材について検討,研究会をしている。 イ)プログラミング教育の指導方法について検討,研究会をしている。 ④その他. ウ)プログラミング教育を支援する外部人材の確保や活用方法について検討,研究 会をしている。 エ)その他. ついて検討,研究会をしていると回答した学校が. の結果を文部科学省の調査と比較すると,プログ. 0校(0%) ,その他1校(4%)であった。. ラミング教育の教材について検討,研究会をして. ③①,②以外の教科等で実施するもののカテゴ. いると回答した学校の割合が多いが,調査対象の. リーでは,プログラミング教育の教材について検. 規模や実施時期の違いを考慮する必要があり単純. 討, 研 究 会 を し て い る と 回 答 し た 学 校 が11校. に結論を出すことはできないものの,プログラミ. (44%) ,プログラミング教育の指導方法につい. ング教育の実施に向けての教材レベルでの検討は. て検討,研究会をしていると回答した学校が2校. 進んでいることも明らかとなった。表4にQ2の. (8%) ,プログラミング教育を支援する外部人. 調査結果を示す。また,Q3としてこれらの学校. 材の確保や活用方法について検討,研究会をして. が具体的にどのような取組を行っているか回答を. いると回答した学校が0校(0%),その他2校. 求めた。選択肢として,ア)学校主導で研究会を. (8%)であった。. 実施・検討。イ)教員に対して研修会を実施・検. ④その他のカテゴリーでは,プログラミング教. 討。ウ)一部の教員がプログラミング教育の授業. 育の教材について検討,研究会をしていると回答. を実施・検討。エ)全ての教員がプログラミング. した学校が3校(12%),プログラミング教育の. 教育の授業を実施・検討。オ)その他の5つの選. 指導方法について検討,研究会をしていると回答. 択肢から複数回答可として回答を求めた。. した学校が0校(0%),プログラミング教育を. その結果,ア)学校主導で研究会を実施・検討. 支援する外部人材の確保や活用方法について検. と回答した学校が1校(5%),イ)教員に対し. 討, 研 究 会 を し て い る と 回 答 し た 学 校 が 0 校. て 研 修 会 を 実 施・ 検 討 と 回 答 し た 学 校 が22校. (0%) ,その他1校(4%)であった。これら. (88%),ウ)一部の教員がプログラミング教育. 266.

(6) 札幌市におけるプログラミング教育実施状況の現状と課題. 多くの学校で検討が行われているものの授業実践. 表4 Q2の調査結果. ②. ③. ④. 選 択 肢. カテゴリー. ①. 文科省調査. 本調査. まで検討している学校は少なく,全面実施に向け た準備が十分でないことがあきらかとなった。図. 全国. 北海道. 札幌市. ア. 89%. 0%. 80%. イ. 80%. 0%. 20%. ウ. 82%. 0%. 0%. 次にQ1で⑤教員に対してプログラミング教育. エ. 69%. 0%. 4%. の研修を行っている。と回答した12校を対象に研. ア. 57%. 0%. 80%. 修内容に関する回答を求めた。選択肢として,ア). イ. 59%. 33%. 16%. プログラミング教育に用いるツール(Scratchな. ウ. 47%. 33%. 0%. ど)の研修を行っている。イ)実際の授業におけ. エ. 54%. 0%. 4%. る指導方法等の研修を行っている。ウ)その他の. ア. 9%. 0%. 44%. 3つの選択肢から複数回答可として回答を求め. イ. 14%. 0%. 8%. た。その結果,ア)プログラミング教育に用いる. ウ. 24%. 0%. 0%. ツール(Scratchなど)の研修を行っていると回. エ. 15%. 0%. 8%. 答した学校が12校(100%),イ)実際の授業にお. ア. 0%. 0%. 12%. ける指導方法等の研修を行っていると回答した学. イ. 0%. 0%. 0%. 校が1校(8%),ウ)その他と回答した学校が. ウ. 0%. 0%. 0%. 1校(8%)であった。また,ウ)その他と回答. エ. 12%. 0%. 4%. した学校では,「プログラミング教育ができそう. 1に取組状況を示す。 3.4 研修会に関する調査. な単元を抽出した」との回答を得られた。これを の授業を実施・検討すると回答した学校が2校. 文部科学省の調査と比較すると,ア)プログラミ. (8%) ,エ)全ての教員がプログラミング教育. ング教育に用いるツール(Scratchなど)の研修. の授業を実施・検討すると回答した学校が0校. を行っている(84%),イ)実際の授業における. (0%) , オ) その他と回答した学校が0校(0%). 指導方法等の研修を行っている(35%),ウ)そ. であった。これらの結果から,校内での研修会は. の他(13%)となり,Scratchなどの教材に関す. 図1 ステージ1各校の取組状況. 267.

(7) 佐 藤 正 直. る研修を実施している割合は全国よりも高いもの. 3.6 ステージ0に該当する学校に関する調査. の,実際に教材を利用した指導方法に関する研修. Q6として,Q1でステージ0に該当する①プ. は十分に実施されていない現実が明らかとなっ. ログラミング教育の情報を収集している,もしく. た。尚Q4に関する文部科学省の調査は地域別の. は特に取組はしていないと回答した23校を対象と. データが公開されていないため全国平均との比較. して取組ができていない理由を調査した。回答は. である。表5にQ4の調査結果を示す。. 11の選択肢から複数回答可として回答を求めた。 表6にQ6の選択肢を示す。. 表5 Q4の調査結果 文科省調査. 本調査. 表6 Q6の選択肢一覧. 全国. 札幌市. ア)プログラミング教育に 用いるツールの研修を 行っている. ア) プログラミング教育の趣旨,目的,基本的な 考え方などの情報が不足している。. 84%. 100%. イ) 学校内で,プログラミング教育を担当できる 人材が不足している。. イ)実際の授業における指 導方法等の研修を行って いる. 35%. 8%. ウ) プログラミング教育を推進するための予算 (ICT機器等の整備等)が不足している。. ウ)その他. 13%. 8%. エ)プログラミング教育を推進するための予算(教 材費等)が不足している。. 選択肢. オ)プログラミング教育を推進するための予算(研 修実施経費等)が不足している。. 3.5 授業内容に関する調査 Q5ではQ1で⑥一部の授業でプログラミング. カ)適切な教材が見つからない。 キ)プログラミング教育の指導事例が見つからない。. 教育の授業を実践している。⑦学校全体でプログ. ク)研修を行える者がいない,見つからない。. ラミング教育の授業を実践している。と回答した. ケ) 企業,団体,大学・高専等と連携したいが, そのような連携先が見 つからない。. 12校を対象に授業内容について記述式で回答を求 めた。記述された回答を分類すると学年別では6 年生9校(75%)と最も多く, 5年生6校(50%), 4年生6校(50%),3年生1校(8%),2年生. コ) プログラミング教育に対して,どのような支 援が必要かわからない。 サ)その他. 2校(17%) , 1年生0校(0%)であった。また, 教科別では総合的な学習の時間9校(75%)が最. 調査の結果,ア)プログラミング教育の趣旨,. も多く,算数7校(58%),理科6校(50%),生. 目的,基本的な考え方などの情報が不足している。. 活1校(8%) ,学級活動1校(8%)であった。. と回答した学校が14校(61%),イ)学校内でプ. 具体的な内容の記述としては, 「パソコンを使お. ログラミング教育を担当できる人材が不足してい. う(生活科) 」 「電気の利用(理科)」 「正多角形(算. る。と回答した学校が14校(61%)と最も多く,. 数) 」 「合同な図形(算数)」「割り算(算数)」な. 次いで,ウ)プログラミング教育を推進するため. どであった。文部科学省の調査では個別具体的な. の予算(ICT機器等の整備等)が不足していると. 内容であるためとの理由からQ5の回答を公開し. 回答した学校が10校(43%),カ)適切な教材が. ていないため全国との比較はできないが,プログ. 見つからない9校(39%),エ)プログラミング. ラミング教育を取り入れている学校では,文部科. 教育を推進するための予算(教材費等)が不足し. 学省の「プログラミング教育の手引」に記載され. ている8校(35%)であった。文部科学省の調査. ている例示を参考に実施していることが明らかと. では,これらの選択肢を「情報不足」(選択肢ア,. なった。. カ,キ,コ),「人材不足」(イ,ク,ケ),「予算. 268.

(8) 札幌市におけるプログラミング教育実施状況の現状と課題. 情報不足 人材不足 予算不足. 図2 ステージ0各校の状況. 不足」 (ウ,エ,オ)の3つのカテゴリーに分類. が突出して高く,予算面での改善が必要であると. して分析を行っている。本調査においてもこの3. 考えられる。図2にステージ0各校の状況校の状. つのカテゴリーに分類すると,情報不足のカテゴ. 況を示す。を示す。. リーでは文部科学省の調査結果よりも低い値を示 している項目が多く,札幌市内の小学校ではプロ グラミング教育に関する情報がある程度は提供さ. 3.7 プログラミング教育を実施している学校 が抱える困難に関する調査. れているものと推察される。人材不足のカテゴ. Q7として,Q1でステージ0以外の回答をし. リーでは,イ)プログラミング教育を担当できる. た50校を対象にプログラミング教育を実施する上. 人材が不足しているの項目が突出して高く,ク). で困難だと感じている事を調査した。回答は11の. 研修を行える者がいない,見つからないの項目も. 選択肢から複数回答可として回答を求めた。また,. 文部科学省の調査よりも高い値を示していること. 選択肢はQ6と同一の内容とした。調査の結果,. から人材に課題を抱えていることが伺える。予算. ク)研修を行える者がいない,見つからないと回. 不足のカテゴリーにおいても,ウ)プログラミン. 答した学校が36校(72%)と最も多く,次いでカ). グ教育を推進するための予算(ICT機器の整備等). 適切な教材が見つからない29校(58%),オ)プ. が不足している,エ)プログラミング教育を推進. ログラミング教育を推進するための予算(研修実. するための予算(教材費等)が不足しているの値. 施経費等)が不足している23校(46%),キ)プ. 269.

(9) 佐 藤 正 直. 情報不足 人材不足 予算不足. 図3 プログラミング教育実施各校の状況. ログラミング教育の指導事例が見つからない13校. ら,民間企業等に研修を依頼しようとしても講師. (44%) であった。Q6と同様に3つのカテゴリー. 費用が賄えないといった課題があるものと推察さ. に分類し文部科学省の調査と比較すると,情報不. れる。. 足のカテゴリーでは,文部科学省の調査結果より. 図3にプログラミング教育実施校の状況を示す。. も低い値を示した項目が多いが,カ)適切な教材 が見つからないの値が他の項目より高く,プログ ラミング教育を適切に実施するための教材を開. 3.8 企業・団体等の支援に関する調査 Q8としてプログラミング教育を実施するにあ. 発したり提供する必要があると考えられる。人. たって企業・団体等から支援を受けている場合,. 材不足のカテゴリーでは,ク)研修を行える者が. どのような支援を受けているか7つの選択肢から. いない,見つからないの項目が突出して高い値を. 回答を求めた。選択肢として,ア)授業において. 示している。このことから学校現場に対して研修. プログラミング教育を指導する外部講師を受け入. を行う人材情報の提供や大学,企業などが積極的. れている。イ)教員がプログラミング教育の授業. に関与する必要があるものと推察される。予算不. を行っている時に授業支援を行う人材を受け入れ. 足のカテゴリーでは,オ)プログラミング教育を. ている。ウ)教員の研修に関して研修講師を受け. 推進するための予算(研修実施経費等)が不足し. 入れている。エ)プログラミング教育の教材の提. ているの値がやや高い傾向を示した。このことか. 供を受けている。オ)ICT機器等の提供を受けて. 270.

(10) 札幌市におけるプログラミング教育実施状況の現状と課題. いる。カ)プログラミング教育の指導案の提供も. (27.4%),ステージ2に該当する研究会や. しくは指導案作成のサポートを受けている。キ). 研修を実施している学校17校(23.2%),ス. その他から複数回答可として回答を求めた。尚,. テージ3に該当する授業を実施している学校. 回答は実際に支援を受けている11校から回答を得. 12校(16.4%)であった。. られた。その結果,ア)授業においてプログラミ. 3.ステージ1およびステージ2の学校では新学. ング教育を指導する外部講師を受け入れていると. 習指導要領に例示されている内容から検討,. 回答した学校が6校(54.5%)と最も多く,次いで,. 研修している学校が20校(80%),総合的な. ウ)教員の研修に関して研修講師を受け入れてい. 学習の時間で使用する教材の検討20校(80%). る5校(45.5%),エ)プログラミング教育の教. であった。また具体的な取組として教員に対. 材の提供を受けている3校(27.3%)であった。. する研修会を実施している学校が20校と最も. 更にQ9として,今後プログラミング教育を進め. 多かった。. るにあたり企業・団体等からどのような支援を期. 4.研 修を実施している学校ではScratchなどの. 待しているか7つの選択肢から回答を求めた。選. 教材の研修はすべての学校で実施されている. 択肢は,ア)プログラミング教育の概要や新学習. ものの,プログラミング教育の指導方法に関. 指導要領に関する講演・研修等,イ)プログラミ. する研修を実施している学校は1校のみで. ングの実技研修,ウ)プログラミングを取り入れ. あった。. た授業の事例研修,エ)プログラミングを取り入. 5.授業を実施している学校では,高学年に対し. れた授業参観,オ)教材開発や教材研究,カ)教. て実施している学校が多く,教科別では総合. 材の提供や授業支援,キ)その他から複数回答可. 的な学習の時間,算数,理科が多かった。. として回答を求めた。その結果,最も多かったの. 6.ステージ0の学校がプログラミング教育に取. が, イ)プログラミングの実技研修49校(67.1%). り組めていない理由として基本的な情報の不. 次いで, カ)教材の提供や授業支援44校(60.3%),. 足やプログラミング教育を担当できる人材の. ウ)プログラミングを取り入れた授業の事例研修. 不足,ICT機器の整備予算不足と回答した学. 43校(58.9%) ,ア)プログラミング教育の概要. 校が多かった。. や 新 学 習 指 導 要 領 に 関 す る 講 演・ 研 修 等33校. 7.プログラミング教育を実施している学校が抱. (45.2%)であった。これらのことから教材の提. えている課題として,適切な教材の不足や研. 供や授業支援,事例に関する研修が求められてい. 修を行える人材の不足,研修実施の為の予算. ることが明らかとなった。. 不足と回答した学校が多かった。 8.外部の企業・団体に対する支援としては実技. 4.結 言. 研修や教材の提供および授業支援に期待して いる学校が多かった。. 本調査において文部科学省の「平成29年プログ. 以上のことから,札幌市内の小学校ではプログ. ラミング教育実施に向けた準備状況調査」と比較. ラミング教育の実施に向けて何らかの検討・準備. する形で札幌市内小学校の現状を調査した。以下. が進められているが,その多くが学習指導要領に. に本調査で得られた知見をまとめる。. 例示された内容を基礎とした教員向け研修にとど. 1.札幌市内199校中73校から回答を得た。. まっており,更に研修内容としてはプログラミン. 2.プログラミング教育実施に向けた状況として. グ教育に使用するツールに関する研修会であるこ. 特に取組をしていないステージ0に該当する. とが明らかとなり,授業実践に向けた指導方法の. 学校が23校(31.5%)と最も多く,担当を決. 研修などへの取組が課題である。また,特に取組. めて検討中のステージ1に該当する学校20校. を行っていないステージ0に該当する学校が取組. 271.

(11) 佐 藤 正 直. できない理由としてあげたものは,基礎的な情報 の不足,プログラミング教育を担当する人材の不 足,ICT機器の整備費用の不足であり,各校に対 して情報の提供や予算配分などの対応が急がれ る。さらに,すでにプログラミング教育に取り組 んでいる学校の課題としては,適切な教材の不足, 研修を行える者がいない・見つからない,研修実 施予算の不足をあげており,小学校各教科および 各単元に対応した教材の開発や提供,研修機会の 充実, 研修に必要な予算の確保などが必要である。 本調査で得られた知見を活かし,教材の開発や研 修機会の提供などを通して札幌市内小学校のプロ グラミング教育の推進と充実に貢献していきたい。. 引用文献 1).文部科学省:小学校学習指導要領(平成29年告示) 解説,http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs /1387014.htm(最終閲覧日:2019年11月14日) 2).文部科学省:小学校プログラミング教育の手引(第 二版),http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouh ou/detail/1403162.htm(最終閲覧日:2019年11月14日) 3).文部科学省:教育委員会等における小学校プログラ ミング教育に関する取組状況等について(平成29年 度 ),http://www.mext.go.jp/component/a_menu/edu cation/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2018/11/12/ 1411018_1.pdf(最終閲覧日:2019年11月14日) 4).文部科学省:教育委員会等における小学校プログラ ミング教育に関する取組状況等について(平成30年 度 ),http://www.mext.go.jp/component/a_menu/edu cation/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/05/28/ 1417283_002.pdf(最終閲覧日:2019年11月14日). . 272. (札幌校講師).

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