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野球内野手の送球技能パフォーマンステスト

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(1)Title. 野球内野手の送球技能パフォーマンステスト. Author(s). 板谷, 厚; 渡部, 嘉紀. Citation. 北海道教育大学紀要. 自然科学編, 67(2): 43-51. Issue Date. 2017-02. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/8212. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(自然科学編)第67巻 第₂号 Journal of Hokkaido University of Education(Natural Sciences)Vol. 67, No.2. 平 成 29 年 ₂ 月 February, 2017. 野球内野手の送球技能パフォーマンステスト 板谷 厚・渡部 嘉紀* 北海道教育大学旭川校保健体育教室 *. 旭川市立嵐山中学校. A Performance Test on Delivery Skill in Baseball Infielders ITAYA Atsushi and WATANABE Yoshiki* Department of Physical Education, Asahikawa Campus, Hokkaido University of Education *. Arashiyama Junior high school, Asahikawa. ABSTRACT The purpose of this study was to examine the usefulness of a performance test evaluating delivery skill in baseball infielders. Ten right handed male college baseball players, five infielders and five outfielders, participated in this study. They completed four performance tests, standing broad jump test (lower limb muscle power), side step agility test (agility), control throw test (throwing accuracy) and delivery skill test. In the delivery skill test, the participants were instructed to throw sixteen balls located into a 4 by 4 grid spacing of one meter on the floor to a target net in a distance of fifteen meters as quickly and accurately as possible. Duration and throwing accuracy were measured in the delivery skill test. As a significant negative correlation coefficient was detected between the duration and agility, an analysis of covariance (ANCOVA) was conducted for group comparison on the duration. The ANCOVA revealed that the duration of the infielders was significantly shorter than that of the outfielders. No significant group difference was observed in other measurements. In general, infielders’ delivery motion sequence is superior to that of outfielders in quickness and smoothness. Our results suggest the delivery skill test can detect the skill difference between infielders and outfielders as the difference in the duration. In conclusion, the delivery skill test is useful to evaluate delivery skill in baseball infielders.. 1.はじめに ベースボール型球技は,ネット型やゴール型球. 技とは異なり,攻撃と守備が明確に区別される。 プレー中に守備から攻撃に一転することはない。 ベースボール型球技の代表格である野球では,守. 43.

(3) 板谷 厚・渡部 嘉紀. 備から攻撃に転じるためには3つアウトを取らな. 野守備にかかる時間を短縮できると考えられる。. ければならない。ここに,野球における守備の重. 松永3)は,この動きの習熟過程を検討するため. 要性がある。. に,大学,高校,中学の野球部員とそれぞれの一. 守備の主な目的は,打球を処理し,打者走者の. 般学生に一定スピードのグラウンダーを与え,補. 進塁を阻止してアウトを取ることである。速度,. 送球フォームの比較をした。その結果,一般学生. 方向やバウンドの高さが様々な打球に対応して確. は,捕球後一度完全に立ち上がり,肘を伸ばした. 実に捕球し,さらに,必要であれば打者走者の進. ままバックスイングするのに対し,野球経験者は,. 塁を阻止するために,すばやく正確に送球しなけ. 捕球後も腰を低く保ち,肘を曲げたままバックス. ればならない。つまり,守備は打球に対する予測. イングし,送球することを見出している。つまり,. と反応に加えて,時間的プレッシャーがかかる中. 一般学生の動きは捕球と投球が完全に分離してい. で,捕送球の動きのすばやさや正確性が要求され. るのに対して,野球部員では捕球の後半が投球の. る高度に複雑な課題である。特に内野の守備は,. 準備動作になっており,捕球動作と投球動作の融. グラウンダーの打球を捕球し,一塁または他の塁. 合がみられる3)。さらに,高年者になるほど,捕. に送球する場面が多く,打者走者の足との競争と. 球から送球に至るまでに描くボールの軌道は短く. なるため,時間的な制約が厳しい。そのため,い. なる3)。. かにすばやく打球を捕球し送球するかが内野手の. 捕球動作と投球動作の融合の程度は,動作分析. 技能として重視され,内野手は日々の練習でこの. によって捕球から送球に至るまでの時間を測定し. 動きの習熟を目指している。. たり,捕送球時のボールの軌道を描いたりするこ. 実際に,中学校新入野球部員において,部の練. とで評価できると考えられる。しかし,動作分析. 習を通じて捕送球の動きが習熟するにつれて動作. の 機 材 や 分 析 に 時 間 を 必 要 と す る こ と か ら,. 時間は短縮する1)。宮西ら2)は,発達レベルの異. フィールドで評価するのは難しい。. なる小学生,中学生,高校生および大学生の内野. ところで,外野手も打者走者の進塁を阻止する. 手の送球動作をキネマティクス的に比較した。そ. ために捕球後可能な限りすばやく正確にボールを. の結果,捕球後,送球のために投球腕と反対側の. 内野手に送球しなければならない点で,内野手と. 足を踏み出す局面(ストライド期)の時間の長さ. 同様である。ただし,外野手は打球の性質,捕球. が小学生,中学生と比較して大学生で有意に短い. 態勢や送球する場所(距離)など,内野手とは異. ことを見出している。ストライド期は,上肢の動. なる点が多い。例えば,外野手は打球の距離感が. きに着目すれば,捕球後,送球のためにボールを. 重要で,内野手ほど横方向の移動の俊敏さは求め. 投球側の手に持ち替え,バックスイングする局面. られないこと,内野手より遠投力が求められるこ. にあたる。. とが挙げられる。中でも,外野手は内野手ほど時. 3). 松永 は,打者がボールを打ってから,内野手. 間的プレッシャーにさらされる機会が多くなく,. が打球を捕送球し,ボールが一塁手に達するまで. そのため,外野手は内野手ほどボールを扱う局面. の時間を三つの部分:a.打者がボールを打って. の動きの習熟を求められないと考えられる。. から野手にボールが達するまで;b.野手が打球. そこで本研究は,野球の内野守備におけるボー. を捕球してから投球するまで;c.野手の手を離. ルが捕り手に入ってから送球するまでの動きの熟. れたボールが一塁手に達するまでに分けた場合,. 練度を簡便に評価するテスト(送球技能テスト). 全体の時間と最も相関が高いのはbの部分だと報. を試案し,実際に内野手と外野手の技能差を判別. 2). 告している。この局面は宮西ら のストライド期. することで,テストの有用性を検討することを目. とほぼ一致する。つまり,野手がボールを捕球し. 的とした。. てから送球するまでの動きに習熟することで,内. 44.

(4) 野球内野手の送球技能パフォーマンステスト. 送球技能テストの環境設定は,二塁手が一二塁. 2.方 法. 間で打球を捕球し,一塁手に送球する場面をモデ. 2.1.被験者. ルとした。被験者は,フロアに4列4行の正方形. 被験者は,本学旭川校硬式野球部(北海道学生. の格子状に配置された16個のボールを,指定され. 野球連盟1部,2015年秋時点)男子部員10名(身. た順に素手で1つずつ拾い上げ,最前列のボール. 長:1.70 ± 0.07 m,体重:66.7 ± 4.40 kg,競技. から約15m離れた集球ネット(ネット)に向けて. 歴:10.1 ± 2.73年,すべて右投げ)であった。内. 送球した(図1)。配置したボールの間隔は縦横. 野手5名を内野群,外野手5名を外野群とした。. ともに1mとした(図2)。被験者は,図1の最. 各群の被験者の体格と競技歴については表1に示. 初に投げるボールの後方1mに立ち,口頭での合. した。体格および競技歴の群間差に有意性は認め. 図でテストを開始した。配置したボールを拾う際,. られなかった。実験に先立ち,ヘルシンキ宣言に. 投球腕ではない腕(本研究では全員左)の手で取. 準じて口頭にて研究目的および方法,プライバ. り,投球腕の手に持ち替えて送球するように指示. シーの保護を遵守する旨を説明し,同意を得た。. した。被験者には「できるだけすばやく正確に」 行うよう指示し,送球しにくい場合は小さく踏み. 表1 群別の各被験者の体格および競技歴. 出してもよいとした。始めの合図から最後の送球. 外野群 A B G H J 平均 標準偏差. 身長[m] 1.69 1.70 1.83 1.73 1.77 1.74 0.06. 体重[kg] 67.0 60.0 74.0 70.0 71.0 68.4 5.32. 競技歴[年] 7.0 7.0 13.0 10.0 10.0 9.4 2.51. がネットにかかるかネットまでの距離に届くまで. 内野群 C D E F I 平均 標準偏差. 身長[m] 1.70 1.65 1.68 1.65 1.60 1.66 0.04. 体重[kg] 67.0 66.0 68.0 62.0 62.0 65.0 2.83. 競技歴[年] 13.0 8.0 7.0 13.0 13.0 10.8 3.03. 1)を見て正確性得点をつけ評価した。. の時間(タイム)と送球の正確性を測定した。試 技は2回行い,タイムの速い方を分析対象とした。 タイムは手動のストップウォッチによって測定 した。送球の正確性は,送球技能テスト終了後, テスト実施中のネットを撮影したビデオ映像(図 正確性得点は次のように定めた。まず,ネット (200 × 200 cm)に入れば捕球者が確実に捕れ る範囲に送球できたと想定した。次に,最も捕球 しやすい部分として,ネット上辺中央から50cm 下が上端となるように直径86cmのフープを取り 付けた。得点は,フープを通過したら3点,ネッ. 2.2.実験の手順. ト中央部の集球部分(140 × 140 cm)に入れば. 送球技能テストとそれに関連する体力・運動能. 2点,それ以外のネットの部分であれば1点,ネッ. 力テストを実施した。体力・運動能力テストとし. トにかからなければ0点とした(図3)。. て,反復横跳び,立ち幅跳びおよび送球テストを. 2.2.2.体力・運動能力テスト. 行った。反復横跳び,立ち幅跳び,送球テスト,. 送球テストは送球の正確性のみを評価するため. 送球技能テストの順に測定した。. に行った。被験者は,送球する位置から15m離れ. 2.2.1.送球技能テスト. た位置に設置した捕球ネットに向かって,足元に. 送球技能テストでは,守備時間に関係する運動. おいたカゴに入った10個のボールを取り上げて送. 局面,すなわち,野手がボールを扱う局面2,3)を. 球した。ボールの拾い方と投げ方は送球技能テス. 抽出・反復することで,所要時間を重畳し,被験. トと同様とし,「できるだけすばやく正確に」投. 者の技能差を時間差として顕在化させることをね. げるよう指示した。正確性の評価も送球技能テス. らいとした。. トと同様に行った。試技は2回とし,より高い得. 45.

(5) 板谷 厚・渡部 嘉紀. 点を測定値として採用した。 それぞれ満点(送球技能テストは48点,送球テス. 140 cm. φ 86 cm. 50 cm. 0. 送球技能テストと送球テストの正確性得点は, トは30点)で規格化した正確性[%]で評価した。. 200 cm. 力テスト (20~64歳対象)4)にしたがって実施した。. 140 cm. 反復横跳びと立ち幅跳びは,文部科学省の新体. スタート位置. 2. 1m. 1m. 3. 1m. 1 200 cm. 図3 ネットと正確性得点. ☓ 送球テストの送球位置 ビデオカメラ. 2.3.統 計 予備的な分析として,各測定項目間の関係性を 検討するために,全被験者を対象に,項目のすべ ての組合せにおけるPearsonの積率相関係数を計 算した。その結果,タイムと反復横跳びの測定値 間にのみ有意な強い負の相関関係が認められた. 10 m. (r = -0.755, p = 0.012,表2)。 予備分析の結果を受けて,内野群と外野群間に タイムの差があるかどうか検討するために,反復 横跳びの測定結果を共変量とする共分散分析を 行った。その他の各測定項目に群間の差があるか どうか検討するために,対応のない t 検定を実施 ネット. 図1 テスト環境の設定 二塁手が一二塁間で打球を捕球し一塁に送球する場 面を想定し,テスト環境を設定した。. 各群における送球技能テストにおけるタイムと 正確性の間の関係性を検討するために,反復横跳 びの測定結果を制御変数とする偏相関分析を行っ た。. スタート位置. 有意水準はα = 0.05とした。相関係数による相. 1. 4. 8. 5. 9. 12. 16. 13. ☓. 送球テストの送球位置. 図2 ボールとスタート位置. 46. した。. 関関係の強さの評価は,│ r │ < 0.2をほとんどな し,0.2 ≦ │ r │ < 0.4を弱い,0.4 ≦ │ r │ < 0.6 を中程度,0.6 ≦ │ r │ < 0.8を強い,0.8 ≦ │ r │ を極めて強いとした。結果の表記は平均値±標準 偏差とした。なお,統計処理はSPPS Statistics ver. 21(IBM社製)を用いて行った。.

(6) 野球内野手の送球技能パフォーマンステスト. 表2 予備分析による各測定項目間の相関係数 タイム 正確性 送球 立ち幅跳び. 正確性 0.010. 送球 立ち幅跳び 反復横とび -0.086 -0.332 -0.755 * 0.360 -0.117 -0.364 0.234 -0.144 0.283 *. : p < 0.05. 4.考 察 4.1. 体力・運動能力テストと送球技能テスト の関係 予備的な分析の結果から,送球技能テストのタ イムと反復横跳び間の強い負の相関関係が明らか になった。すなわち,敏捷性に優れる者ほどタイ. 3.結 果. ムが短かった。換言すれば,送球技能テストのタ. 3.1.内野群と外野群の比較. イムは,捕送球の動きのすばやさだけでなく,左. 反復横跳びは,内野群で63.40 ± 4.62回,外野. 右方向への移動のすばやさや切り返しの鋭さをも. 群で59.40 ± 3.51回であった。これらの間の差に. 反映している。このことから,送球技能テストの. 有意性は認められなかった(t = -1.543, p = 0.161,. タイムを評価する際には,反復横跳びの記録を考. 図4A) 。. 慮する必要があることが示唆される。さらに,反. 立ち幅跳びは,内野群で2.48 ± 0.09 m,外野. 復横跳びの結果と送球技能テストの正確性との間. 群で2.44 ± 0.25 mであった。これらの間の差に. に弱い負の相関関係が見出された。移動がすばや. 有意性は認められなかった(t = -0.339, p = 0.743,. く切り返しも鋭いほど移動時間が短縮し,後述す. 図4B) 。. るように,送球時のバックスイングの動きもすば. 送球テストの正確性は,内野群で74.7 ± 16.77. やくなる可能性がある。このため,送球に時間的. %,外野群で76.0 ± 10.11 %であった。これらの. 余裕が生まれ,正確性も高まると考えられる。. 間の差に有意性は認められなかった(t = 0.152, p. 立ち幅跳びの結果は送球技能テストのタイムと. = 0.883, 図4C)。. の間に弱い負の相関関係が認められた。下肢の筋. 共分散分析の結果,送球技能テストのタイムに. パワーは,移動のすばやさや切り返しの鋭さを介. ついて,内野群-外野群間の差に有意性が認めら. して間接的にタイムに貢献していると考えられ. れ, 内 野 群 で 外 野 群 よ り も 短 か っ た( 内 野 群:. る。立ち幅跳びと反復横跳びとの間の弱い正の相. =. 関関係は,このことを裏付けている。さらに,立. 15.469, p = 0.006, 図5A)。送球技能テストの正. ち幅跳びと送球テストの結果との間にも弱い正の. 確性は,内野群で75.8 ± 9.84 %,外野群73.3 ±. 相関関係が認められた。下肢の筋パワーは運動連. 4.75 %であった。これらの間の差に有意性は認め. 鎖を通じて送球動作に貢献すると考えられる。送. られなかった(t = -0.512, p = 0.623, 図5B)。. 球テストでは静止状態から投げるために,下肢の. 18.70 ± 1.83秒, 外野群: 27.52 ± 4.13秒, F(1,. 7). 筋パワー発揮の大小が,送球の正確性に影響しや 3.2.反復横跳びを制御変数とする偏相関分析. すいのかもしれない。. 反復横跳びを制御変数とする偏相関分析の結. 送球技能テストの正確性と送球テストの正確性. 果,内野群の送球技能テストにおけるタイムと正. には弱い相関関係が認められた。送球技能テスト. 確性との間に有意ではないが極めて強い正の相関. では,静止状態から投げる能力に加えて,左右に. 関係が認められた(r = 0.838, p = 0.162)。対照的. 移動しながら,すばやく正確に投げる能力が求め. に,外野群ではタイムと正確性との間に有意では. られる。このため,テスト内容の類似性にかかわ. ないが極めて強い負の相関関係が認められた(r. らず,両者間の相関関係は弱にとどまったと考え. = -0.923, p = 0.077)。. られる。. 47.

(7) 板谷 厚・渡部 嘉紀. A. A. 回数. タイム [s]. *. 正確性. B. 距離 [m]. B. 図5 送球技能テストの群間比較. 正確性. C. タイム(A)と正確性(B)の平均値を比較したと ころ,タイムの群間差に有意性が認められ,内野群 が外野群よりも短かった。エラーバーは標準偏差を 示す。*: p < 0.05。. るまでとc.野手の手を離れたボールが一塁手に 達するまでは,実際の守備場面と同様の経過をた どる。送球技能テストでは,これらの動きを16回 繰り返し,所要時間が重畳される。 図4 体力・運動能力の群間比較. 野球内野手の守備場面全体の時間を短縮するの. 反復横跳び(A) ,立ち幅跳び(B)および送球テス ト(C)の平均値に群間の差は認められなかった。 エラーバーは標準偏差を示す。. に最も関係するのは,bの野手が捕球して投球す るまでの時間である3)。これに対応する運動経過 は,捕球の主局面から終末局面と送球の準備局面 から主局面である。捕球も送球も主局面はごく短. 4.2.実際の守備と送球技能テストの動きの対応. 時間なので,問題となるのは,捕球の終末局面と. 送球技能テストの動きを松永3)にしたがって局. 送球の準備局面である。具体的には,ボールを投. 面分けすれば,次のボールへの移動がa.打者が. げ手に持ちかえ,送球のためバックスイングする. ボールを打ってから野手にボールが達するまでに. 部分を指す。これについては送球技能テストでも. 相当する。b.野手が打球を捕球してから投球す. 同様である。. 48.

(8) 野球内野手の送球技能パフォーマンステスト. 送球技能テストの目的は,捕球動作と送球動作. り返しと振り返りを鋭くするほど,慣性力と体幹. の融合の程度=熟練度を,タイム差または正確性. の回転によって投球腕がバックスイングもすばや. の差として評価することである。cは投げる距離. く投球に有利になることを示唆する。. が短い内野では守備全体の時間とほとんど相関関. 以上から,移動のすばやさは移動そのものにか. 3). 係がないことが分かっている 。そこで,aをど. かる時間に加えて,捕送球の動きにも影響すると. う扱うかが問題となる。. 考えられる。ただし,後者について検討するには. まず,移動のすばやさがタイムに影響している. 詳細なバイオメカニクス的分析が必要であり,本. かどうか検討する。内野守備全体の時間に対して,. 研究の範疇を越える。したがって,ここでは,移. aは,bの次に相関が高い3)。このことから,送. 動のすばやさは反復横跳びの記録に反映されると. 球技能テストにおいて被験者が次のボールに移動. みなし,その影響を送球技能テストのタイムから. する時間も,タイムに影響していることが推測で. 除外する統計処理を施す。その上で,送球技能テ. きる。実際に,予備的な分析の結果,タイムと反. ストのタイムを捕送球の動きの円滑さの指標とし. 復横跳びの記録は強い相関関係にあり,移動のす. たい。. ばやさがタイムに影響していることが確認されて いる。. 4.3.群間比較による検討. 次に,移動のすばやさが捕送球の動きに影響す. 反復横跳びの記録を共変量とする共分散分析の. るかどうかを検討する。ストライド期の時間の長. 結果,群間のタイム差に有意性が認められ,内野. 2). さは, 小中学生と比較して大学生が有意に短い 。. 群で外野群よりも短かった。一方,送球の正確性. これは,発達レベルが高いほどストライド期に踏. の群間差に有意性は認められなかった。加えて,. み出す足が地面につくタイミングが早くなるから. 反復横跳びおよび送球テストの群間差にも有意性. である2)。上肢の動きに目を向ければ,これはバッ. は認められなかった。つまり,タイムを左右する. クスイングを完了するタイミングが早いことを意. 敏捷性や送球のコントロールに両群の違いはない. 味する。内野守備に習熟するほど送球方向へのア. ものの,内野群は外野群よりもすばやく,しかも. プローチの移動速度が高いために,あえて腕を後. 同等の正確さで送球技能テストを行った。. 方へ引かなくてもバックスイングできるとの指摘. 内野群と外野群との間のタイムの差は,ボジ. 1). もあり ,送球技能テストにおいても,送球方向. ションによる捕送球の動きの違いを反映している. への移動がすばやいほど投球腕のバックスイング. と考えられる。前節での仮定に基づけば,移動の. の完了も早いことが示唆される。. すばやさの影響を除外した送球技能テストのタイ. 送球技能テストでは,送球方向とは逆方向にあ. ム差は,捕送球の動きの円滑さの違いを示す。. るボールへアプローチすること(図2の6~8と. 内野手の送球動作は,投手のピッチング動作と. 14~16)もあり,この場合も移動のすばやさが捕. 比較して,投球腕の肘を大きく曲げた状態から上. 送球の動きに影響するかどうか検討する。バック. 体を前後左右にあまり動かさず,体幹の長軸まわ. スイングは,解剖学的には肩関節の水平外転であ. りの回転を主体とした投げ方である5)。この投げ. る。肩関節を水平外転するには,腕を後方に引く. 方は,慣性モーメントが小さくなり,すばやく回. 他,水平外転する肩と逆方向に体幹を長軸回転さ. 転することが可能になる一方で,骨盤が送球方向. せることでも可能である。捕送球では,右投げの. を向かないため上体の後方ひねり角が小さく,投. 場合,体幹を急激に左側に向けることでバックス. げ手を加速するには不利である5)。このことと,. イングと同様の肢位にできると考えられる。送球. 内野守備全体の時間と最も相関が高いのは野手が. 技能テストにおいて,送球方向と逆方向への移動. 捕球して投球するまでの時間だとする指摘3)とを. からの送球では,高速で移動し,送球方向への切. 合わせれば,内野手は,送球スピードを高めるよ. 49.

(9) 板谷 厚・渡部 嘉紀. りも,捕球と送球を一体とした動きでボールを扱. ら,送球技能テストは内野手の特性を把握するた. う時間を可能な限り短縮する投げ方をしていると. めに利用できる可能性がある。具体的には,捕送. 推測できる。. 球の動きはすばやいが,送球の正確性に劣る選手. 一方, 外野手は遠投を求められるため,捕球後,. なのか,捕送球の動きはやや緩慢だが,送球は正. 投手と同様に骨盤を投球方向に向け,上体の後方. 確な選手なのか,それらの中間にあたる選手なの. ひねりを大きくし投げ手の加速を重視した投げ方. かを客観的に判別できる可能性がある(図6下)。. になると予想される。この動きは,捕球時に打球. これらは対戦相手や試合状況に応じて選手を選択. 方向に向いている骨盤を,送球方向に正対させる. する際に有用な情報となるかもしれない。. 必要があり,その分,捕球から送球への運動経過 の円滑さを損なう。送球技能テストのタイム差は,. 4.5.結論および今後の課題. このような内野手と外野手の捕送球の動きの違い. 以上より,本研究で試案した送球技能テストは,. を反映していると考えられる。. 反復横跳びと組み合わせることで内野手に要求さ. タイムとは対照的に,正確性は群間の差を検出. れる捕球からのすばやい送球の熟練度を測定する. することができなかった。これについては,外野. テストとして有用であると判断する。本研究にお. 群のタイムが内野群に大きく遅れている(外野群 は内野群の約1.5倍の時間を要している)ことが. 外野群. 関係すると推測する。運動は速くしようとするほ 技能高. ど不正確になり,正確にしようとするほど遅くな 6) と呼ぶ。外野群は (speed-accuracy trade-off). 内野群と同等の正確さを達成するために,動きを より遅く丁寧に行う必要があったと考えられる。. 正確性. る。この交換関係を速さと正確さのトレードオフ. 4.4.指導現場への応用. 技能低. 偏相関分析の結果,外野群ではタイムと正確性. タイム. の間に極めて強い負の相関関係が認められた。外 野群では,捕送球の動きがすばやい者ほど正確に. 内野群. 送球できたことを意味する。このことと外野群が 内野群よりもタイムが遅いことを考え合わせれ ば,送球技能テストは,内野群ほど捕送球の動き の熟練度をタイムに反映することを示唆する(図 6上) 。. すばやいが正確性に やや劣る選手. 正確性. に習熟していない者を対象とした場合,その動き. やや遅いが正確な選手. 内野群における偏相関分析の結果は,外野群と は対照的に,タイムと正確性間の極めて強い正の 相関関係を示した。内野群では,タイムが速いも のほど正確性に劣ることを意味する。内野群の被. タイム. 験者は, みな同等に捕送球の動きに習熟しており,. 図6 偏相関分析の結果に基づく選手の技能特性. タイムと正確性の結果に速さと正確さのトレード. 灰色の楕円は選手の分布,横細線と縦細線はそれぞ れ正確性とタイムの群内平均値を示す。. オフ関係があらわれたと考えられる。このことか. 50.

(10) 野球内野手の送球技能パフォーマンステスト. ける外野群のように,この動きに十分習熟してい ない場合,タイムにその熟練度が反映される。本 研究における内野群のようにこの動きに習熟して いる場合,タイムや正確性によって熟練度の違い を検出することは難しいかもしれない。しかし, タイムと正確性の関係から,その選手の特性を判 別できる可能性がある。 本研究の被験者はすべて地方大学野球連盟1部 に所属するチームの選手である。したがって,本 研究の結果は,この競技レベルにおいてのみ一般 化できるものである。今後,より幅広い競技レベ ルの選手を対象とした検討が必要である。. 謝 辞 データ収集にご協力くださいました,北海道教 育大学旭川校硬式野球部のみなさまに御礼申し上 げます。. 引用文献 1)松永尚久:内野手の投球動作の習熟.体育の科学, 24: 448-452, 1974. 2)宮西智久,櫻井直樹,遠藤壮:発達レベルの異なる 野球内野手の送球動作のキネマティクス的比較―体幹 と上肢の動作に着目して―.体育学研究,60: 53-69, 2015. 3)松永尚久:野球内野手の守備.体育の科学,29: 546549, 1979. 4)文部科学省:新体力テスト実施要項.http://www. mext.go.jp/a_menu/sports/stamina/03040901.htm, 2016年9月14日閲覧. 5)宮西智久,櫻井直樹,遠藤壮:守備位置の異なる野 球選手の投球動作のキネマティクス的比較―体幹と投 球腕に着目して―.体育学研究,60: 551-564, 2015. 6)Fitts PM.: The information capacity of the human motor system in controlling the amplitude of movement. Journal of Experimental Psychology, 67: 103-112, 1954.. (板谷 厚 旭川校准教授) (渡部 嘉紀 旭川市立嵐山中学校). 51.

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